特許第6354018号(P6354018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354018
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】オートバイ後進装置
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/10 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   B62B3/10 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-242206(P2012-242206)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-80170(P2014-80170A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2014年10月27日
【審判番号】不服2016-9068(P2016-9068/J1)
【審判請求日】2016年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】596098759
【氏名又は名称】相原 雅彦
(73)【特許権者】
【識別番号】509127088
【氏名又は名称】有限会社オートスタッフ末広
(72)【発明者】
【氏名】中村 正樹
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 島田 信一
【審判官】 和田 雄二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第2556270(US,A)
【文献】 仏国特許出願公開第1563890(FR,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第784007(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B1/00-5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状が円形の棒状部材、又はパイプ、又は車輪で構成されたローラーを、オートバイや自動車の駆動輪と地面との間に挿入し、ローラーが駆動輪とは逆方向に回転する事で、通常の前進操作を行った際に、オートバイを後進させる後進装置において、駆動輪と地面の間に挿入して駆動力を地面に伝える第1軸のローラーと、第1軸のローラーの前側で、地面に接しない空間に回転自在の第2軸のローラーを設け、さらに、第1軸のローラーの前側で、地面に接する位置に第3軸のローラーを設け、第1軸から第3軸は、所定の位置関係を保持するように軸支され、後進時にタイヤは、第1軸のローラーと、第2軸のローラーのみに接し、第3軸のローラーにはタイヤが接しない位置関係としたオートバイを後進させる装置であって、以下のいずれか、又は、以下のいずれか複数の特徴を有するオートバイ後進装置。
(1)第1軸は、その両側に設けたプレート、又は板状部材、又は棒状部材、又はパイプ材、又は軸受部材(以下、「プレート等」という。)を備えた構造部材のいずれかにより、回転自在に軸支した。
(2)第2軸は、上記(1)と同等の構成により、軸支した。
(3)第1軸と第2軸と第3軸の回転軸を略平行に配置した。即ち、各軸を平板上に置いて転がした時に、ほぼ同一方向に転動する構成とした。
(4)第1軸と第2軸のいずれか、又は両方のローラーの形状を、中央部が細い鼓形とし、鼓形とは、回転しながら各軸に接するタイヤが、振動等で左右に振れても、必ず中央部に寄せ戻す為の代表的な形態を指し、直径が異なる複数の部材を組合せて、鼓形と同様の機能が得られる形状のローラーを構成した場合も含む。
(5)上記(1)の構成において、第3軸は第1軸と同等の構成とした、又は独立した滑車やキャスターや車輪により、タイヤから受ける重量を支えながら、転動可能に装置した。
(6)上記(1)又は(2)の構成において、第2軸の取付け位置を変更可能に装置し、タイヤの直径が変更された場合でも、常に上記(1)又は(2)の位置関係が得られる様に装置した。
(7)上記(1)に記載のプレート等に固定された、板状部材、又は棒状部材、又はバネ、又はベルト、又はワイヤー、又はパイプ状部材の一部を、第1軸又は第3軸の回転部分に接触させ、又は押し付け抵抗を与える事を可能に装置し、板状部材等を着脱式とした構成や、取り付ける位置や向きを変更可能とし、接触又は押し付けを解除可能に装置した構成も含む。また、各軸のローラーに鋸刃状の凹凸を設け、板状部材等を接触、又は押し付けた際、ローラーが一方向だけに回転可能に装置した。
【請求項2】
第1軸と第2軸と第3軸とを軸支するプレート等を、以下のいずれか、又は以下のいずれか複数の構成とした事を特徴とする、請求項1に記載のオートバイ後進装置。
(1)材質を、スチール、アルミ合金、チタン合金、木、又は硬質樹脂とした。
(2)貫通孔、又は凹部、又は凸部、又は薄肉部を複数設けた。
(3)貫通孔、又は凹凸、又は薄肉部の形状をデザインされた意匠形状とし、意匠形状には、商品名や商品を表すロゴマークも含む。
(4)第1軸から第3軸の回転を妨げず、後進時にタイヤに接しない位置で、前記左右のプレート等を連結し、連結とは、各軸を取り去った状態でも、左右のプレート等が所定の位置関係や形態を保持可能となる様に、所定の強度を有する連結用部材を介在させて左右のプレートを保持する構成を指し、締結部材を使用した着脱可能な構成や、ダイカスト又は削り出しによる一体成形構造も含む。
(5)各プレート等の内側面に、硬質樹脂製のプレート、又はフィルム、又は滑車を装置し、タイヤと接触した際の摩擦抵抗を軽減し、接触による異音発生やタイヤの傷付を防止可能とした。
(6)上記5の構成において、摩擦低減部材を装置した部分をプレート等とは別部品とし、プレートに取付けた。また、摩擦低減部材を装置した部分と、プレート等との位置を可変自在とし、タイヤの幅に応じて、摩擦低減部材を装置した部分の間隔を変更可能に装置した。
【請求項3】
第2軸を両側から軸支する部分は、第1軸及び第3軸を軸支するプレート等の部材とは別部品とし、以下のいずれかの構成により、設置位置を可変自在とした事を特徴とする、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のオートバイ後進装置。
(1)第2軸を軸支する部分を含む部材を、締結部材を用いてプレート等に取付け、プレート等には、複数箇所に、締結可能な貫通孔やネジの取付け装置を設けた。
(2)第2軸を軸支する部材を板状部材とし、1箇所以上のメネジを設け、第1軸と第3軸を軸支する左右のプレート等に設けた複数の貫通孔を通したボルトで固定し、貫通孔とメネジを設ける部材を逆にした構成も含む。
(3)第2軸を軸支する部材を板状部材とし、1箇所以上の貫通孔を設け、第1軸と第3軸を軸支する左右のプレート等に設けた複数の貫通穴とを連通した、ボルトとナットで固定する。
(4)第1軸と第3軸を軸支するプレート等に、揺動自在のプレート又はアーム状の部材をピン結合すると共に、所定の位置で揺動を規制する部材を設け、ピン結合とは、リベットによる固定や、ボルト及びナットによる固定や、ピン及び抜け止め用割ピンの組合せによる、双方に設けた貫通孔を通して回転自在に固定する方法全般を指し、揺動を規制する部材とは、別部材をネジ止めする方法や、ピンなどの突起物で揺動を邪魔する構成全般を指す。
(5)第1軸と第3軸を軸支するプレート等に、伸縮自在のアーム部材を取付け、伸縮自在とは、長円形の貫通孔を設けた部材をボルトで固定する構成を指し、ボルトで双方の部材を締め付けて固定する場所を変更する事により、伸縮及び固定を可能にした構成全般を指し、内外筒を組合せた伸縮装置も含む。
(6)第2軸を軸支する部材、又はプレート等のいずれかに、長円形の貫通孔を設け、ボルトによる締結部材が、この長円形の孔に沿って移動可能に構成する事で、第2軸の保持位置を移動可能とし、長円形の貫通孔とは、円形の穴が連続している形状を指し、円形の穴の配置は直線に限らず、曲線の場合も含む。また、孔が貫通していない場合も含む。
(7)左右のプレート等、又は第2軸を軸支する部材のいずれかに、第2軸を軸支する部材の取付け位置と、適合するタイヤサイズの関係が、識別可能となる表示を施した。
(8)上記(1)から(4)のいずれかの構成において、ネジの回転によって第2軸を軸支する部材の位置を伸縮する構成とし、ネジの回転による伸縮とは、固定されたメネジとオネジの組合せによって、オネジ側に設けた軸支部の位置を変更する構成や、オネジとオネジの間にメネジを設けたターンバックルを指す。
【請求項4】
少なくとも第1軸と第2軸のいずれか又は両方が、以下のいずれかの構成である事を特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載のオートバイ後進装置
(1)左右のプレート等を、両端部にオネジを設けたシャフトで連結し、各ローラーは、そのシャフトの外周を回転する。即ち、ローラーは、ローラーの内部を貫通したシャフトに回転自在に保持され、シャフトが中空構造である構成も含む。
(2)棒状、又はパイプ状のシャフトの両端にメネジを設け、このシャフトを左右のプレートの間に装置し、各プレート等の両外側から締結部材を用いてシャフトを固定する。各ローラーは、このシャフトの外周を、上記(1)と同様に回転可能とする。
(3)各ローラーの両端にメネジを設け、その両側のプレート等には貫通孔を設け、プレート等の両外側から貫通孔を通したボルトでローラーを固定する。ボルトの首下部分にはオネジの無い円筒部を設け、この円筒部を各プレート等の貫通孔が軸受として支える事により、ローラーを回転自在に保持する。
(4)左右のプレート等の一端側から長い通しボルトを設け、プレート等を連結する。各ローラーは、上記(1)と同様の構成により、回転自在にボルトの外周に保持され、ボルトは先端近傍のみにオネジを設け、ローラーと接する部分には、オネジを設けない構成も含む。
(5)各プレート等の片側に、棒状、又は円筒状の突起を一体成形し、その先端部を、他方のプレート等に締結部材を用いて接合する。各ローラーは、この突起の外周を、上記(1)と同様の構成により、回転自在に保持される。
(6)上記1から5のいずれかの構成において、棒状部材、又はパイプ状部材、又はシャフトに、略円錐状の外径が連続して変化する、硬質樹脂製、又はゴム製、又はアルミ合金製のカバーを装着する構成により、略鼓形のローラーを形成し、このカバーは、前述のシャフトの一部だけを覆う構成又は全てを覆う構成とし、略円錐状のカバーと円筒形状のカバーを複数組合せて略鼓形を形成した構成も含む。また、シャフトを固定し、その外周上を、カバーだけが回転自在となる様に装置した。また、回転自在に保持されたシャフトに、カバーを固定し、固定とは、ネジによる締結、又は圧入、又は焼き付け、又はインサート成形、又はキーやスプラインによる嵌合により、一体的に回転可能とした構成や、左右の両端部から、カバーが抜けない様に、突起物やワッシャの邪魔板を用いて押えた構成とする。
(7)上記(1)から(6)のいずれかの構成において、相対回転する部位に、軸受メタル、またはベアリング、又は硬質樹脂製の軸受を装置した。
【請求項5】
以下のいずれか、又はいずれか複数の構成により、本発明品を使用して後進操作を行う際の、オートバイの急激な後方への発進、即ち飛び出しを、防止可能に装置した事を特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のオートバイ後進装置。
(1)第1軸のローラーの材質、又は第1軸のローラーに装置したカバーの材質を可変式とし、地面の状態に応じて摩擦係数を変更可能に装置する事で、設定を超える急激な発進操作を行った場合は、第1軸のローラーが地面とスリップして空転する様に装置した。
(2)クラッチレバーとハンドルを、輪ゴム状の弾性部材で連結する、又はスプリングや緩衝装置で連結する事により、クラッチを急激に繋ぐ操作を行った場合でも、クラッチレバーが急激に作動せず、緩やかに駆動力がタイヤに伝達される様に装置した。
(3)第一軸に、遠心力によって作用するブレーキ装置を取付け、回転速度や回転加速度が一定以上に達した場合、自動的に第一軸にブレーキがかかる構成とした。
(4)第1軸のローラーの中央部近傍でタイヤが乗る位置に、パイプ状のスペーサを装置し、急激な発進操作時は、タイヤから駆動力を受けるスペーサと、ローラーとの間で滑りを発生させる様に装置した。尚、スペーサには、外径が一定の場合の他、鼓形に代される外径が場所によって変化する形状や、請求項4に記載のカバーも含む。
(5)サイドプレートに、ワイヤー又は紐状部材を取付け、その他端をアンカーとして地面に固固定又は地面に置いた重りに取付け、一定以上の距離を後進すると、本発明品がタイヤから外れる様に装置した。
(6)上記(4)の構成において、スペーサとローラーの間を、一定以上の負荷によって破壊するヒューズ部材で連結し、設定以上の加速度が加わった場合はヒューズ部材が破壊され、スペーサとローラーの間で滑り、スペーサが空転する様に装置した。
(7)上記(4)の構成において、スペーサとローラーの間に、グリスやオイル等の高粘度の流体を封入又は介在させ、スペーサの回転数が一定速度以上になった場合のみ、ローラーに駆動力が伝わる様に装置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後進装置を備えていないオートバイなどの、駆動輪の下に挿入し、車両を前進させる為の通常の動力を利用して、車両全体を後進させる、簡易的な後進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
極一部の大型オートバイでは、エンジン始動用のスターターモーターを使用し、エンジン内部に後進専用のギアを装置する事で、後進可能とした車両が存在する。従って、この様な車両では、車重が重くても、車庫から後進で出る場合などに、非常に利便性が高い。
【0003】
しかし、オートバイを後進させる為には、上記の通り、特別製の動力源や、専用の装置が必要であり、それが100年以上続くオートバイの歴史の中で、当業者や使用者の常識となっている。オートバイを後進させる為の、汎用性の高い簡易装置を作ろうとの発想は、過去の歴史の中で出た事は無く、誰も発想せず、誰も考えなかった事実は、長い歴史が証明している。
【0004】
オートバイ本体には装置せず、通常は車庫に保管しておく簡易的な装置で、後進を可能にした先行技術としては、唯一、本発明品の出願人が出願した、特願2011−290706が存在するが、この先願の構造は、オートバイの後輪の下に2本の駆動用ローラーを挿入するため、以下の重大な問題が発生し、危険で、製品として全く成立しない事がテストによって判明した。
1、駆動輪、即ちタイヤと地面の間にローラーが介在する為、ローラーの直径を大きくしても、地面とタイヤの間に挟まれたローラーが、巻き込まれる状態となり、必ずタイヤがローラーを乗り越えてしまう。つまり、従来技術では、後進する事ができない。
2、ローラーの乗り越えを防止する為に、ローラーの直径を大きくすると、オートバイの下に挿入する事ができない。つまり、物理的に成立せず、使用できない。
3、地面に駆動力を伝える為の駆動ローラーが2本の為、軸受のガタなどにより、平行度が僅かでも低下すると、真っ直ぐに後進できず、曲がってしまう。
4、タイヤが2本の駆動用ローラーの上に乗っている為、各ローラーとの僅かな摩擦力の差により、タイヤが左右に振れるなどの危険が発生する。
5、タイヤが2本のローラーの上に乗っている為、各ローラーの軸受の回転抵抗が僅かでも異なると、どちらかのローラーにスリップが発生し、異音が発生する。
6、ローラーの直径は、オートバイの最低地上高で限界が決まってしまい、タイヤの直径に応じて最適な直径を選定する事が不可能。従って、タイヤがローラーを乗り越える問題を解決できず、製品として成立しない。
【0005】
尚、本発明は、既に商品化を目指して開発が最終段階に達しており、その際、大手オートバイメーカーや、オートバイ用品製造販売会社など、合計10社以上の当業者に照会したが、どの当業者も、本発明の斬新な発想に驚くだけで、この様な方法は考えた事も無いと回答している。従って、特開2013−133095も公開されていない時期において、当業者が本発明を行う事は不可能であり、そもそも、簡易的な後進装置を作ろうなどと言う発想は、どこからも生まれない事が証明されている。即ち、本発明の背景技術は存在しないと言う事実が、結論である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−133095
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術文献である、特開2013−133095によれば、一見すると後進可能と思われるが、実際に試作品を作って確認した結果、前述の様な数々の重要問題が発生し、後進する事は不可能と判明した。つまり、技術として一切確立しておらず、机上の空論であった。
そこで、前述の背景技術[0004]に記載された全ての問題を解決し、高齢者や女性が、大型のオートバイを安全かつ簡単に後進させる事が可能な、実現できる技術を提供する事が本発明の課題である。従って、色々な既存技術が有ったとしても、前述の課題を1つでも解決できなければ、機能不足や危険となり、商品として成立しないので、本発明とは一切競合しない。簡単に言えば、オートバイを安全に後進させる簡易的な装置が、古今東西、どこにも存在しない現状において、現実に、後進可能な装置を提供する事が本発明の課題であり、本発明以外に、この課題を解決する方法・手段・技術は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
オートバイの駆動輪から回転力が加わった場合でも、物理的に巻き込まれる事が無く、駆動輪が絶対に乗り越える事ができない、空中に浮かせたローラーを設ける。空中ローラーは、駆動用ローラーの前側に配置し、オートバイの駆動輪、即ち後輪タイヤは、駆動用のローラーと空中ローラーの2本に接して後進する。また、請求項1から5に記載された、いずれかの構成とする。
【0009】
つまり、駆動力を地面に伝えるローラーは1本とし、後輪タイヤの乗り越えを防止する為の、空中に浮かせたローラーを装置した事が、特開2013−133095との根本的な相違点であり、この発想は、特開2013−133095の構造で試作品を作り、大失敗を繰り返さなければ絶対に生まれない発想である。しかし、本発明の出願時点では、特開2013−133095は公開されていないから、当業者や一般市民は、その試作品を作ってテストする事も不可能である。結局の所、古今東西、前述の課題を解決する方法は、本発明以外に存在しない。
【0010】
また、請求項1から請求項5に記載された構成の内、いずれか1つ、又はいずれか複数の組み合わせを選定して実施すれば良い。具体的には、以下の通り。
【請求項1】
【0011】
断面形状が円形の棒状部材、又はパイプ、又は車輪で構成されたローラーを、オートバイや自動車の駆動輪と地面との間に挿入し、ローラーが駆動輪とは逆方向に回転する事で、通常の前進操作を行った際に、オートバイを後進させる後進装置において、駆動輪と地面の間に挿入して駆動力を地面に伝える第1軸のローラーと、第1軸のローラーの前側で、地面に接しない空間に回転自在の第2軸のローラーを設け、さらに、第1軸のローラーの前側で、地面に接する位置に第3軸のローラーを設け、第1軸から第3軸は、所定の位置関係を保持するように軸支され、後進時にタイヤは、第1軸のローラーと、第2軸のローラーのみに接し、第3軸のローラーにはタイヤが接しない位置関係としたオートバイを後進させる装置であって、以下のいずれか、又は、以下のいずれか複数の特徴を有するオートバイ後進装置。
(1)第1軸は、その両側に設けたプレート、又は板状部材、又は棒状部材、又はパイプ材、又は軸受部材(以下、「プレート等」という。)を備えた構造部材のいずれかにより、回転自在に軸支した。
(2)第2軸は、上記(1)と同等の構成により、軸支した。
(3)第1軸と第2軸と第3軸の回転軸を略平行に配置した。即ち、各軸を平板上に置いて転がした時に、ほぼ同一方向に転動する構成とした。
(4)第1軸と第2軸のいずれか、又は両方のローラーの形状を、中央部が細い鼓形とし、鼓形とは、回転しながら各軸に接するタイヤが、振動等で左右に振れても、必ず中央部に寄せ戻す為の代表的な形態を指し、直径が異なる複数の部材を組合せて、鼓形と同様の機能が得られる形状のローラーを構成した場合も含む。
(5)上記(1)の構成において、第3軸は第1軸と同等の構成とした、又は独立した滑車やキャスターや車輪により、タイヤから受ける重量を支えながら、転動可能に装置した。
(6)上記(1)又は(2)の構成において、第2軸の取付け位置を変更可能に装置し、タイヤの直径が変更された場合でも、常に上記(1)又は(2)の位置関係が得られる様に装置した。
(7)上記(1)に記載のプレート等に固定された、板状部材、又は棒状部材、又はバネ、又はベルト、又はワイヤー、又はパイプ状部材の一部を、第1軸又は第3軸の回転部分に接触させ、又は押し付け、抵抗を与える事を可能に装置し、板状部材等を着脱式とした構成や、取り付ける位置や向きを変更可能とし、接触又は押し付けを解除可能に装置した構成も含む。また、各軸のローラーに鋸刃状の凹凸を設け、板状部材等を接触、又は押し付けた際、ローラーが一方向だけに回転可能に装置した。
【請求項2】
【0012】
第1軸と第2軸と第3軸とを軸支するプレート等を、以下のいずれか、又は以下のいずれか複数の構成とした事を特徴とする、請求項1に記載のオートバイ後進装置。
(1)材質を、スチール、アルミ合金、チタン合金、木、又は硬質樹脂とした。
(2)貫通孔、又は凹部、又は凸部、又は薄肉部を複数設けた。
(3)貫通孔、又は凹凸、又は薄肉部の形状をデザインされた意匠形状とし、意匠形状には、商品名や商品を表すロゴマークも含む。
(4)第1軸から第3軸の回転を妨げず、後進時にタイヤに接しない位置で、前記左右のプレート等を連結し、連結とは、各軸を取り去った状態でも、左右のプレート等が所定の位置関係や形態を保持可能となる様に、所定の強度を有する連結用部材を介在させて左右のプレートを保持する構成を指し、締結部材を使用した着脱可能な構成や、ダイカスト又は削り出しによる一体成形構造も含む。
(5)各プレート等の内側面に、硬質樹脂製のプレート、又はフィルム、又は滑車を装置し、タイヤと接触した際の摩擦抵抗を軽減し、接触による異音発生やタイヤの傷付を防止可能とした。
(6)上記5の構成において、摩擦低減部材を装置した部分をプレート等とは別部品とし、プレートに取付けた。また、摩擦低減部材を装置した部分と、プレート等との位置を可変自在とし、タイヤの幅に応じて、摩擦低減部材を装置した部分の間隔を変更可能に装置した。
【請求項3】
【0013】
第2軸を両側から軸支する部分は、第1軸及び第3軸を軸支するプレート等の部材とは別部品とし、以下のいずれかの構成により、設置位置を可変自在とした事を特徴とする、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のオートバイ後進装置。
(1)第2軸を軸支する部分を含む部材を、締結部材を用いてプレート等に取付け、プレート等には、複数箇所に、締結可能な貫通孔やネジの取付け装置を設けた。
(2)第2軸を軸支する部材を板状部材とし、1箇所以上のメネジを設け、第1軸と第3軸を軸支する左右のプレート等に設けた複数の貫通孔を通したボルトで固定し、貫通孔とメネジを設ける部材を逆にした構成も含む。
(3)第2軸を軸支する部材を板状部材とし、1箇所以上の貫通孔を設け、第1軸と第3軸を軸支する左右のプレート等に設けた複数の貫通穴とを連通した、ボルトとナットで固定する。
(4)第1軸と第3軸を軸支するプレート等に、揺動自在のプレート又はアーム状の部材をピン結合すると共に、所定の位置で揺動を規制する部材を設け、ピン結合とは、リベットによる固定や、ボルト及びナットによる固定や、ピン及び抜け止め用割ピンの組合せによる、双方に設けた貫通孔を通して回転自在に固定する方法全般を指し、揺動を規制する部材とは、別部材をネジ止めする方法や、ピンなどの突起物で揺動を邪魔する構成全般を指す。
(5)第1軸と第3軸を軸支するプレート等に、伸縮自在のアーム部材を取付け、伸縮自在とは、長円形の貫通孔を設けた部材をボルトで固定する構成を指し、ボルトで双方の部材を締め付けて固定する場所を変更する事により、伸縮及び固定を可能にした構成全般を指し、内外筒を組合せた伸縮装置も含む。
(6)第2軸を軸支する部材、又はプレート等のいずれかに、長円形の貫通孔を設け、ボルトによる締結部材が、この長円形の孔に沿って移動可能に構成する事で、第2軸の保持位置を移動可能とし、長円形の貫通孔とは、円形の穴が連続している形状を指し、円形の穴の配置は直線に限らず、曲線の場合も含む。また、孔が貫通していない場合も含む。
(7)左右のプレート等、又は第2軸を軸支する部材のいずれかに、第2軸を軸支する部材の取付け位置と、適合するタイヤサイズの関係が、識別可能となる表示を施した。
(8)上記(1)から(4)のいずれかの構成において、ネジの回転によって第2軸を軸支する部材の位置を伸縮する構成とし、ネジの回転による伸縮とは、固定されたメネジとオネジの組合せによって、オネジ側に設けた軸支部の位置を変更する構成や、オネジとオネジの間にメネジを設けたターンバックルを指す。
【請求項4】
【0014】
少なくとも第1軸と第2軸のいずれか又は両方が、以下のいずれかの構成である事を特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載のオートバイ後進装置。
(1)左右のプレート等を、両端部にオネジを設けたシャフトで連結し、各ローラーは、そのシャフトの外周を回転する。即ち、ローラーは、ローラーの内部を貫通したシャフトに回転自在に保持され、シャフトが中空構造である構成も含む。
(2)棒状、又はパイプ状のシャフトの両端にメネジを設け、このシャフトを左右のプレートの間に装置し、各プレート等の両外側から締結部材を用いてシャフトを固定する。各ローラーは、このシャフトの外周を、上記(1)と同様に回転可能とする。
(3)各ローラーの両端にメネジを設け、その両側のプレート等には貫通孔を設け、プレート等の両外側から貫通孔を通したボルトでローラーを固定する。ボルトの首下部分にはオネジの無い円筒部を設け、この円筒部を各プレート等の貫通孔が軸受として支える事により、ローラーを回転自在に保持する。
(4)左右のプレート等の一端側から長い通しボルトを設け、プレート等を連結する。各ローラーは、上記(1)と同様の構成により、回転自在にボルトの外周に保持され、ボルトは先端近傍のみにオネジを設け、ローラーと接する部分には、オネジを設けない構成も含む。
(5)各プレート等の片側に、棒状、又は円筒状の突起を一体成形し、その先端部を、他方のプレート等に締結部材を用いて接合する。各ローラーは、この突起の外周を、上記(1)と同様の構成により、回転自在に保持される。
(6)上記1から5のいずれかの構成において、棒状部材、又はパイプ状部材、又はシャフトに、略円錐状の外径が連続して変化する、硬質樹脂製、又はゴム製、又はアルミ合金製のカバーを装着する構成により、略鼓形のローラーを形成し、このカバーは、前述のシャフトの一部だけを覆う構成又は全てを覆う構成とし、略円錐状のカバーと円筒形状のカバーを複数組合せて略鼓形を形成した構成も含む、また、シャフトを固定し、その外周上を、カバーだけが回転自在となる様に装置した。また、回転自在に保持されたシャフトに、カバーを固定し、固定とは、ネジによる締結、又は圧入、又は焼き付け、又はインサート成形、又はキーやスプラインによる嵌合により、一体的に回転可能とした構成や、左右の両端部から、カバーが抜けない様に、突起物やワッシャの邪魔板を用いて押えた構成とする。
(7)上記(1)から(6)のいずれかの構成において、相対回転する部位に、軸受メタル、またはベアリング、又は硬質樹脂製の軸受を装置した。
【請求項5】
【0015】
以下のいずれか、又はいずれか複数の構成により、本発明品を使用して後進操作を行う際の、オートバイの急激な後方への発進、即ち飛び出しを、防止可能に装置した事を特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のオートバイ後進装置。
(1)第1軸のローラーの材質、又は第1軸のローラーに装置したカバーの材質を可変式とし、地面の状態に応じて摩擦係数を変更可能に装置する事で、設定を超える急激な発進操作を行った場合は、第1軸のローラーが地面とスリップして空転する様に装置した。
(2)クラッチレバーとハンドルを、輪ゴム状の弾性部材で連結する、又はスプリングや緩衝装置で連結する事により、クラッチを急激に繋ぐ操作を行った場合でも、クラッチレバーが急激に作動せず、緩やかに駆動力がタイヤに伝達される様に装置した。
(3)第一軸に、遠心力によって作用するブレーキ装置を取付け、回転速度や回転加速度が一定以上に達した場合、自動的に第一軸にブレーキがかかる構成とした。
(4)第1軸のローラーの中央部近傍でタイヤが乗る位置に、パイプ状のスペーサを装置し、急激な発進操作時は、タイヤから駆動力を受けるスペーサと、ローラーとの間で滑りを発生させる様に装置した。尚、スペーサには、外径が一定の場合の他、鼓形に代表される外径が場所によって変化する形状や、請求項4に記載のカバーも含む。
(5)サイドプレートに、ワイヤー又は紐状部材を取付け、その他端をアンカーとして地面に固固定又は地面に置いた重りに取付け、一定以上の距離を後進すると、本発明品がタイヤから外れる様に装置した。
(6)上記(4)の構成において、スペーサとローラーの間を、一定以上の負荷によって破壊するヒューズ部材で連結し、設定以上の加速度が加わった場合はヒューズ部材が破壊され、スペーサとローラーの間で滑り、スペーサが空転する様に装置した。
(7)上記(4)の構成において、スペーサとローラーの間に、グリスやオイル等の高粘度の流体を封入又は介在させ、スペーサの回転数が一定速度以上になった場合のみ、ローラーに駆動力が伝わる様に装置した。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、勢い良くオートバイを発進させたとしても、空中に浮いたローラーが空転してしまい、絶対に乗り越える事ができない為、本体が後部方向に飛び出す事は無い。
その為、微妙なクラッチ操作も不要で、安心して誰でも大型オートバイを後進させる事が可能となり、想定されている課題は、全て解決される。
また、世の中には、大型オートバイに乗りたいが、車庫から出す時に、重たいオートバイを転倒しない様に支えながら後進させる事が体力的に難しく、大型オートバイに乗る事を諦めている高齢者や女性が存在する。その人達が抱える唯一の問題を解決する事で、縮小傾向にある日本国内のオートバイ販売が活性化され、広く、産業の発展に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】 本発明の平面図を表す。 尚、図1から図4は、機能を説明する為の模式図である。
図2】 本発明の正面図を表す。
図3】 本発明の正面図であり、サイドプレートを分割した構成を表す。
図4】 本発明品を使用してオートバイが後進する状態の、正面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施し、課題を解決する為の形態は、請求項1から請求項5に詳述された通りであり、いずれか1つ、又はいずれか複数の組み合わせを選定して実施すれば良い。その一例を、図を使用して説明する。
【0019】
図1は、本発明品の基本構成を示す平面図であり、図2は、オートバイの後輪タイヤの下に本発明品を挿入し、使用している状態の位置関係を表す正面図である。
1は、オートバイを後進させる為の駆動輪となる小径ローラーであり、この上にオートバイの後輪タイヤ6が乗り、矢印7の方向に回転駆動する事で、オートバイは、その進行方向8とは逆の方向に進む。2は、タイヤ6が、本発明品の本体を乗り越える事を防止する為の空中ローラーであり、3は転動するガイドローラーである。また、各ローラー1、2、3、は、それぞれ4のサイドプレートに5のボルトを用いて回転自在に保持される。
【0020】
本発明品を使用して後進する際、タイヤ6は地面9から図2に示す通り浮き上がっている為、後輪が前進しようとする駆動力は、地面9には伝わらず、1のローラーを介して伝わり、後進する事ができる。また、その際の位置関係は、図2の様に、ローラー1の回転中心よりもタイヤ6の回転中心の方が後にある。この位置関係により、後輪の前部に本発明品を置き、通常の前進操作を行うと、6の駆動力によってローラー1に乗り上げ、図2の状態になり、後進を開始する。前進操作をやめ、6の駆動力が無くなると、6の回転中心、即ち重心位置がローラー1よりも後にある為、自然にタイヤ6は地面9の上に降りてしまい、後進を停止して本体を取り外す事ができる。タイヤ6に接する1と2のローラーは、中央部が細くなった鼓形なので後進中に後輪が左右に振れる事も無い。以上が、請求項1に記載の本発明の実施例である。
【0021】
各ローラーを保持する左右のプレート4は、各ローラーを所定の位置関係で保持する事ができれば、色々な構成や製造方法に対応できる。また、16の連結装置によって左右のプレート等を保持しておけば、ローラーの軸受部分を簡素化する事が可能となり、コストダウンが図れる。以上が、請求項2に記載の本発明の実施例である。
【0022】
図3は、本発明品の正面図であり、空中ローラー2を保持するサイドプレートを別体構造とし、2のローラーの保持位置を可変式とした構成を示す。
10は、4と同様のサイドプレートであるが、2のローラーを保持するサブプレート11を取付ける為の固定ボルト12を色々な位置に移動可能な貫通孔が多数設けてある。この構成により、12の取付け位置を変更すれば、1と3のローラーに体する2のローラーの位置を変化させる事ができる為、タイヤ6の直径が異なるオートバイでも、常に、図2に示す位置関係を保つ事ができる。また、図4は本発明品14をオートバイ13の下に挿入し、後進させる状態の全体を示す正面図であり、後進状態では15に示す通り、1のローラーよりもタイヤ6の車軸が後にある。以上が、請求項3に記載の本発明の実施例である。
【0023】
各ローラーの構造、及び各ローラーを回転自在に保持する構成は、その材質やコストに応じて色々な製造方法や構造が可能で、具体的には、請求項4に記載のいずれかの構成とすれば良い。以上が、請求項4に記載の本発明の実施例である。
【0024】
本発明品を使用してオートバイを後進させる際、万が一、操作ミスによって急発進してしまうと危険である。そこで、請求項5のいずれかに記載の構成を採用すれば、万が一の場合でも急激に後進して飛び出す事が無く、安全である。以上が請求項5に記載の本発明の実施例である。
【符号の説明】
【0025】
1、オートバイのタイヤを乗せ、駆動力を地面に伝える小径ローラーであり、第1軸と言う
2、地面から離れた空間に、回転自在に軸支されたローラーであり、第2軸と言う
3、ガイドローラーであり、第3軸と言う
4、サイドプレート
5、回転軸として使用するボルト、又はローラーを回転自在に保持するシャフト
6、オートバイの駆動輪であり、図4の後輪を示す。タイヤと言う。
7、オートバイが前進する際の、タイヤの回転方向を表す矢印
8、オートバイの、通常の進行方向を表す矢印
9、地面
10、サイドプレートであり、請求項においてはプレート等と呼んでいる
11、サブプレートであり、請求項においては第2軸を軸支する部材と呼んでいる
12、サブプレートをサイドプレートに固定する締結装置であり、ボルトを示す
13、オートバイ本体
14、オートバイの下に挿入し、後進装置として使用中の、本発明品
15、第2軸とタイヤとの、回転軸中心のズレを表す
16、左右のプレート等を所定の位置に保持する、連結部材
図1
図2
図3
図4