【実施例】
【0021】
汚水の浄化用資材として、表1に示すものを用いて、汚水の脱色試験を行うとともに、アロフェン含有量を調べた。
【0022】
【表1】
【0023】
すなわち、浄化用資材の黒ボク土としては、栃木県鹿沼市、鳥取県大山町、群馬県前橋市、三重県鈴鹿市、熊本県阿蘇市の各産地で採取した5種を実験対象とした。以下、これらの黒ボク土を、それぞれ「黒ボク土鹿沼」、「黒ボク土大山」、「黒ボク土前橋」、「黒ボク土鈴鹿」、「黒ボク土阿蘇」の略称で記す。
【0024】
また、黒ボク土以外の「その他」の浄化用資材として、次の6種を実験対象とした。
・活性炭(フタムラ化学工業社の商品名「太閤CW130A」)
・鹿沼土(栃木県鹿沼市産)
・赤玉土(栃木県鹿沼市産):火山灰土である。
・みそ土(鳥取県大山町産):黒ボク土の下層(風化軽石層)に堆積する火山灰土である。
・アロフェン粒状製品(品川化成株式会社の商品名「セカードOW」): 水分、臭い成分、色成分等の吸着剤である。以下「アロフェン粒状」の略称で記す。
・アロフェン粉末製品(品川化成株式会社の商品名「セカードP1」): 水分、臭い成分、色成分等の吸着剤である。以下「アロフェン粉末」の略称で記す。
【0025】
上記の各浄化用資材は、吸着実験における微生物の影響を排除するため、105℃で24時間加熱してから用いた(以下、同じ)。
【0026】
1.浄化用資材による汚水の脱色実験
上記の各浄化用資材を用いて、汚水の脱色実験を行った。汚水としては、某物流倉庫に設置されている大型浄化槽(し尿系の排水)の処理水を用いた。この処理水は有色水(茶色)であり、水質は表2に示すとおりである。
【0027】
【表2】
【0028】
ここで、、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、浮遊物(SS)、総窒素量(T−N)、総窒素量(T−P)は、何れも日本工業規格に規定された方法により測定したものである。アンモニア態窒素量(N−NH
4)はネスラ−法により測定したものである。硝酸態窒素量(N−NO
3)は、ブルシン法により測定したものである。色度は、笠原理化工業社製の色度センサーCR−30により測定したものである。
【0029】
図1に示すように、容積300mlの三角フラスコに、汚水と浄化用資材とを入れた。配合割合は、汚水100mlに対し、浄化用資材を有機物を含んだ絶乾状態の質量比で1%とした。これを、スターラーにより30分撹拌した後、1時間静置した。その後、沈殿物を取り除き、上澄み液を、ガラス繊維ろ紙で吸引ろ過してから、色度を測定し、色度除去率(%)(=(実験前の色度−実験後の色度)÷実験前の色度×100)を算出した。
【0030】
各浄化用資材による色度除去率を、上掲の表1に示す。
アロフェン粉末、アロフェン粒状、みそ土、赤玉土は、色度除去率が一様に高かった。
黒ボク土鹿沼、黒ボク土阿蘇、鹿沼土は、次いで色度除去率が高かった。
黒ボク土大山、黒ボク土前橋は、色度除去率が低く、活性炭も、同様に低かった。
黒ボク土鈴鹿は、攪拌による濁りが発生し、色度がマイナスとなった。
【0031】
2.アロフェン含有量の分析
続いて、黒ボク土鹿沼、黒ボク土大山、黒ボク土鈴鹿、みそ土、アロフェン粉末の各浄化用資材について、有機物を含んだ絶乾状態の浄化用資材におけるアロフェン含有量(質量%)を分析した。その分析は、「北川靖夫;土壌中のアロフェンおよび非晶質無機成分の定量に関する研究、農技研報29、1〜48頁(1977)」の33頁に掲載の方法により行った。すなわち、浄化用資材1gを秤取し、重量既知のガラス製ふた付遠心管に入れ、8N・HClを50ml加えて30分間振とうし、遠心分離(2000rpm、5分間)して上澄みを捨て、沈殿を1度蒸留水で洗浄した後、0.5N・NaOHを50ml加えて、煮沸した湯浴中に遠心管ごと5分間浸し、遠心分離後上澄みを捨てる。以上の処理を必要な回数繰り返して最後に0.5N・NaOH処理後の沈殿を水洗して105℃で24時間乾燥後秤量して減量を求める。処理回数に対する減量をx軸、y軸にそれぞれプロットして溶解曲線を描き、その直線部分を延長してy軸との交点を求め、その値をアロフェン含有量とした。
【0032】
各浄化用資材のアロフェン含有量(質量%)を、上掲の表1に示す。
アロフェン粉末は、最もアロフェン含有量が高かった。
みそ土、黒ボク土鹿沼は、次いでアロフェン含有量が高かった。
黒ボク土大山、黒ボク土鈴鹿は、アロフェン含有量が黒ボク土鹿沼の1/3程度と少なかったが、全く含有してないわけではなかった。
【0033】
3.色度除去率とアロフェン含有量との関係
上記1.で求めた色度除去率と、上記2.で分析したアロフェン含有量(質量%)との関係を、
図2に示す。
アロフェン含有量が高いアロフェン粉末、みそ土、黒ボク土鹿沼は、色度除去率も高い。
アロフェン含有量が低い黒ボク土大山、黒ボク土鈴鹿は、色度除去率も低い。
図2に近似曲線を加えると、アロフェン含有量が20質量%以上であると、特に色度除去率が高くなることが分かる。
【0034】
4.カラムでの汚水の土壌浄化処理実験
続いて、次に示す比較例1及び実施例1〜3の各土壌を用いて、カラムでの汚水の土壌浄化処理実験を行った。
・比較例1:黒ボク土大山であり、アロフェン含有量は13.5%である。
・実施例1:黒ボク土鹿沼であり、アロフェン含有量は31.7%である。
・実施例2:黒ボク土大山とみそ土とを質量比2:1で混合した土であり、混合後のアロフェン含有量は20%である。
・実施例3:黒ボク土大山とアロフェン粉末とを質量比2:1で混合した土であり、混合後のアロフェン含有量は39%である。
【0035】
図3に示すように、直径(内径)65mm、長さ270mmの樹脂製の円筒形カラム管を立て、その内部に、一番下に粒径3〜5mmの砂利を厚さ10mmの砂利層となるように入れ、その上に比較例・実施例の土壌を厚さ30mmの土壌層となるように入れ、さらにその上にケイ酸カルシウム系ろ材(粒径1〜4mm)を厚さ30mmのろ材層となるように入れて、実験用カラムを製作した。この実験用カラムは、土壌層の厚さが、後述する実規模の土壌浄化処理装置の約1/10規模のものであり、実規模よりも色度の飽和を早期に発現させる目的で行った。
【0036】
汚水としては、上記「1.浄化用資材による汚水の脱色実験」で説明した大型浄化槽の処理水(有色水、水質は表2のとおり)を用いた。この汚水を、1日に4回(6時間毎)、1回あたり45ml、定量ポンプで、実験用カラムの最上部のろ材層の上に散水し、砂利層から処理水を流出させた。散水開始して1日経過する毎に、砂利層から流出する処理水をビーカーに回収し、この処理水の色度を測定し、色度除去率(%)を算出した。
【0037】
比較例1及び実施例1〜3の経過日数に対する色度除去率の変化を、
図4に示す。
比較例1では、散水開始して6日目から色度除去率が急激に低下した。
実施例1〜3では、色度除去率の低下が抑えられ、散水開始して10日目においても十分な色度除去率が得られており、安定処理できていた。上記のとおり、このカラム実験は実規模よりも色度の飽和を早期に発現させる目的で行ったものであり、実規模ではさらに長期にわたって安定処理できると推定される。
【0038】
5.実規模での汚水の土壌浄化処理
比較例1の土壌と実施例1の土壌をそれぞれ、
図5及び
図6に示す実規模の土壌浄化処理装置に用いて、実規模での汚水の土壌浄化処理を行った。
【0039】
この土壌浄化処理装置は、上述した特許文献1記載の装置と基本的に同一構造であり、大きく分けて土壌浸潤槽1と多室型腐敗槽40と分水桝41と消毒槽42とから構成されている。土壌浸潤槽1は、地中に、外部から断続的に供給された汚水を散水する散水装置8と、散水装置8から散水された汚水を通過させて浄化処理する土壌層9と、土壌層9を通過した処理水を集めて取り出す集水管4とを備えている。より詳しくは、土壌浸潤槽1は、大地に掘られた溝2内に形成されており、溝2の内側に張りめぐらされた遮水槽3と、該遮水槽3の底部の幅方向中央部に配設された集水管4と、該遮水槽3の底部から順に積層された厚さ約100mmの砂利・礫層5、厚さ約270mmの下部土壌層6、ケイ酸カルシウム系ろ材を用いた厚さ30〜40mmの汚水拡散層7、散水装置8及び厚さ320〜400mmの上部土壌層9とから構成されている。
【0040】
散水装置8は、複数のプラスチック製のユニット10を長さ方向に連結して形成され、外部から供給された汚水を長さ方向に流す吐水孔30付きの通水管25を備える。また、散水装置8はろ材受け26を備え、その上にはケイ酸カルシウム系ろ材27が厚さ約80mmに敷かれている。ろ材27の上には透水性シート28が被せられている。その他、外部の空気を自然に取り込む給気管38、給気管38に時折強制的に空気を送るブロアー39、取り込んだ空気をろ材27及び下部土壌層6に送り込む通気管29、通気管29に取り込んだ汚水を汚水拡散層7に散水するための左右の散水口32等を備える。
【0041】
上記の土壌浄化処理装置は、比較例1の土壌を下部土壌層6に用いたものと、実施例1の土壌を下部土壌層6に用いたものの2つを構築した。なお、何れも上部土壌層9には真砂土を用いた。
【0042】
それぞれの土壌浄化処理装置において、汚水としてのトイレ排水を、多室型腐敗槽40と分水桝41を経て、土壌浸潤槽1の散水装置8にポンプにより断続的に供給した。散水装置8から散水された汚水は、汚水拡散層7の幅方向全体に行き渡った後、下部土壌層6に拡散浸潤し、下部土壌層6を通過して浄化処理される。この処理水は、砂利・礫層5に下降し、集水管4に集められ、集水管4から排出される。
【0043】
比較例1の土壌を下部土壌層6に用いた土壌浄化処理装置では、集水管4から排出される処理済水の色度が、処理開始時点で10以下と推定されたが(目視で無色透明)、6年経過した時点においては10を超えたと推定され(目視でごく薄い黄色)、8年経過時点においては32であった(目視で薄い黄色)。
【0044】
実施例1の土壌を下部土壌層6に用いた土壌浄化処理装置では、集水管4から排出される処理済水の色度が、処理開始時点で10以下と推定され(目視で無色透明)、6年経過時点においては5であった(目視で無色透明)。
【0045】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で任意に変更して具体化することもできる。