【実施例1】
【0016】
本発明の実施例による遠心機について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る遠心機1の構成を示す断面図である。遠心機1は、分離する試料を保持して回転するロータ2と、ロータ2を収容するロータ室3と、ロータ室3へロータ2の出し入れを行うために設けられた開口部を閉塞するように開閉自在に設けられたドア5と、ロータ室3を減圧する2つの真空ポンプ(油回転真空ポンプ6と油拡散真空ポンプ7)と、ユーザによる遠心分離条件の設定操作を受け付けると共にユーザに対して運転状態等の各種情報の表示する操作表示部8と、ロータ2を回転させる駆動部であるモータ9と、ロータ室3への空気の流入を行うために設けられた開閉自在なエアリークバルブ26と、ロータ室3内部の圧力を測定する真空センサ12と、ロータ2の温度を測定する図示しない温度センサと、ボウル4を冷却することで間接的にロータ2の温度制御を行う図示しない冷却装置と、装着されたロータ2を識別するためのロータ識別センサ14と、これらを制御するための制御装置30を含んで構成される。
【0017】
ボウル4の下部には、ボウル4の内外を連通する貫通孔が設けられ、モータを有するモータ9から延びるシャフトケース9a内を通る図示されていない回転軸がシャフトケース9aと共に貫通孔を貫通し、さらに回転軸の先端の嵌合部9bにロータ2が取り付けられる。尚、貫通孔においてシャフトケース9aは図示せぬシール部材によってシールされ、ロータ室3の気密性が保持できる構造となっている。ロータ2には、試料を入れるチューブ等を挿入するための孔2aが複数形成される。本実施例では、モータ9の回転速度は、例えば最高で毎分15万回転で運転可能であり、この回転によって発生する遠心力により試料が遠心分離される。通常、大気圧下でロータ2が高速回転すると、風損によりロータ2が発熱し、空気抵抗によりロータ2の高速回転化が抑制される。このためロータ2を高速で回転させる場合は、ロータ室3内の空気を抜いて減圧または真空状態にし、風損を抑制することが重要である。
【0018】
油拡散真空ポンプ(DP)7は、吸引側が真空配管21によりロータ室3に接続され、排出側が真空配管22を介して油回転真空ポンプ(RP)6の吸引口に接続される。油拡散真空ポンプ7は内部に液体の油を備え、この油の内部での蒸発・凝縮によってロータ室3内の空気を排出させる公知の装置である。本実施例においては、ロータ室3を減圧させる真空ポンプとして、油拡散真空ポンプ7と油回転真空ポンプ6を直列に接続している。油回転真空ポンプ6の排出側は、排気に含まれるオイルミストを補足するためのオイルミストトラップ23が設けられる。
【0019】
制御装置30は、遠心機1の全体の制御をするもので、後述するマイコンや、ROM/RAM等の記憶装置を含んで構成される。制御装置30は図示しない信号線により真空センサ12および温度センサ13の信号を入力し、モータ9の回転制御や、油回転真空ポンプ6の起動・停止制御、油拡散真空ポンプ7の起動・停止制御、コンプレッサの運転制御による冷媒配管の冷却制御、操作表示部8への情報の表示と入力データの取得、エアリークバルブ26の開閉等の遠心機1の全般の制御を行う。
【0020】
図2は本発明の実施例に係る遠心機1の外観を示す斜視図である。遠心機1の“筐体”は、前後左右及び底面を形成する筐体本体部10と、その上面を覆うトップカバー11の2つの部材によって主に構成される。トップカバー11にはロータ室3へアクセスするための開口部11aが形成され、開口部11aの下側にはドア5が設けられる。
図2の状態はドア5によってロータ室が密閉されている状態を示す。ドア5を開けるには、ロータ2の回転が完全に停止してから、バキュームボタン230を押すことで真空ポンプ(6、7)が停止して、エアリークバルブ26(
図1参照)の解放によりロータ室3の気圧が大気圧になってから、レバー5aの上端を手前から後方に倒すようにしてドア5を前方から後方へスライドさせる。トップカバー11の後方側にはスライドされたドア5を収納するための、ドア収納部15が設けられる。開口部11aの右側にはゴム等の弾性部材28が張られており、遠心作業に用いられる部品等の仮置き台として利用できる。
【0021】
遠心機1の筐体上面、開口部11aよりも前側であって、筐体部分の上面(トップカバー11)と前面で接合部10aよりも上側部分(トップカバー11の前面部分)が交わる角部(稜線部)には、所定の横幅を有する発光部40が設けられる。発光部40は帯状の細長い形状であって、遠心機1の通電中に発光され、外部から見える全体部分が発光する。実際には外部から見える素材自体が発光しているのでは無いが(光を透過又は拡散している)、外部からは発光しているように見える。発光部40にて発光させる光源をどのような形態で実現するかは任意であるが、本実施例の発光部40は、筐体本体部10の内部に配置される後述するLED42の光を透過させる半透明の樹脂部材で構成した。発光部40を透明の樹脂にて内部のLEDが見えるように構成しても良いが、本実施例のように半透明で白色系の樹脂製とすれば、面発光をしているような発光状態となる上に、カラーLEDを用いることにより任意の色にて発光させることが可能となる。尚、EL(エレクトロルミネッセンス)パネル、EL照明のような面発光素子を用いて発光部40を実現するようにしても良い。さらに、発光部40は、直接光にて発光状態を実現しても良いし、間接光にて発光状態を実現しても良い。
【0022】
トップカバー11
の上面右側、前方側であって、発光部40の右側には、操作表示部8が設けられる。操作表示部8は例えば、タッチパネル式の液晶表示装置又ELパネルであって、情報を可視的に表示する表示手段(表示部)としての機能と、ユーザが指又はタッチペンでタッチすることにより情報を入力するための入力手段(入力部)としての機能を果たす。尚、操作表示部8はタッチパネル式の液晶表示装置だけでなく、入力キーを有する入力装置と、タッチ機能無しの表示装置によって構成しても良い。筐体本体部10の右側側面の上方には、遠心機1の電源スイッチを配置するためのスイッチ部29が形成される。本実施例では、スイッチ部29は蓋にて覆われており、蓋を開けると図示しない電源スイッチをアクセスできるが、スイッチ部29の構成はこれだけに限らずに、筐体本体部10の外縁からくぼんだ部分に電源スイッチを配置するように構成しても良い。
【0023】
図3は本実施例に係る遠心機1の上面図である。発光部40は、上面図で見たときにその一部又は全部が見えるような位置に配置し、かつ、正面図(図示していない)で見たときにも発光面の一部又は全部が見えるような位置に配置することが重要である。ここでは、トップカバー11の開口部11aの直径D1に対して、発光部40の幅Wが十分大きくなるように構成した。この際、ロータの軸心の左右方向線(位置)と発光部40の左右中心線(位置)が一致するように配置される。通常、ユーザがロータ室3内にロータ2を装着する際には、ロータ2を遠心機1の前方側から矢印で示すように開口部11aに移動させる。この際、発光部40の上側を通るようにしてロータ室3内にロータ2を移動させることになる。遠心機1で用いられるようなロータ2は、チタン製の一体成形品であり、重量で10〜30kg程度であって片手で容易に扱えるほど軽くない。そこでユーザは体の前方側にロータ2を位置づけて両手でしっかりと把持しながら移動させる。この際、遠心機1において横幅D1の発光部40全体が発光していると、この発光位置を目安としてロータ2をロータ室3の内部に導くことができる。また、発光部40によってロータ2の下側から照らすことにより、ロータ2の下側付近が見やすくなるため、ロータ2の下端付近に設けられている部材、例えば、オーバースピードアダプタや、ロータの識別情報を記憶させる磁気リング等をぶつける恐れを低減させることができる。さらに、発光部40の横幅Wが開口部D1よりも左右にそれぞれ幅Sの分だけ広くなっているので、ユーザが把持しているロータ2を上から見ると、ロータ2の左右端部より見える発光部の一部の長さが左右で等しくなるようにロータ2を移動させると、ロータ2をロータ室3の左右方向中心位置に効果的に導くことができる。
【0024】
操作表示部8は発光部40の右側近傍に位置している。操作表示部8の横幅W1は開口部11aに対して大きくないが、発光部40の横幅Wと横幅W1の間は距離にしてRだけの間隔が開いている。この間隔Rを所定量だけ確保することにより、ロータ2の装着行為の最中においても操作表示部8に干渉することを効果的に防止できる。尚、本実施例では
図2から理解できるように、発光部40は角部を有する様に形成されるが、操作表示部8は角部を有しないように斜めに配置される。従ってユーザから見やすい角度とすることができる上に、操作表示部8と発光部40との間に発光しない空間(間隔Rの部分)が存在するので、発光部40をロータ2の装着の際に位置合わせ用のガイドとして用いるときの誤認を効果的に防止できる。
【0025】
図4は
図3のA−A部の部分断面図である。本実施例ではトップカバー11の前面側の角部分に樹脂製の発光部(透過窓)40を設け、透過窓を介して内部に配置されたLED42の光が外部に照射または拡散されるように構成した。発光部40は樹脂製のトップカバー11と一体に構成(鋳込む)しても良いし、樹脂製又は金属製のトップカバー11に帯状のスリットを設け、スリットの開口部に樹脂製の透過部材を取り付けるように構成しても良いし、その他の構成としても良い。LED42はその性質上、光の直進性が強いので、発光部40を半透明の合成樹脂製の部材とすると光を適度に拡散するうえに、発光部40を直視したユーザが過度にまぶしくないように最適な光拡散状況を実現できる。
【0026】
発光部40を設ける位置は、筐体の開口部11aから筐体の前面に至る部分であって、
図3のように上面図で図示した際と、図示しない正面図で図示した際のいずれにも発光部40の一部が見えるような位置に配置する。この位置は箱状の筐体ならば筐体の上面と前面の交わる角部近傍、好ましくは筐体の上面と前面の交わる稜線上に発光部40(透過面、光拡散面)を設けるようにすると好ましい。本実施例では、複数のLED42を帯状の基板41上に搭載し、その基板41を取付アーム45にネジ止め固定するようにした。取付アーム45は、ネジ46によってトップカバー11の内側に固定されるが、この際、スペーサ44、47を用いることにより基板41の取付位置、取付角度を容易に設定できる。LED42による光の照射方向は斜め前方に向くようにすると好ましく、本実施例ではLED42の照射方向θが、水平面より45度になるようにした。発光部40は、筐体の上面と前面の交わる角部の稜線上に設けたので、発光範囲が水平方向から垂直方向に広がるように構成できた。ここで発光方向を上方のみとすると、遠心機とユーザの距離が離れるほど上面を視認しづらくなるという問題があり、筐体前面に発光部を設ける構成とすると発光方向が前方のみとなり上方向からの視認が困難になるという問題があるので、本実施例のように角部に配置して上方側からも前方側からも見えるように発光部40を配置することにより、様々な方向から容易に視認できるように構成できた。尚、
図4の断面図で見た際の発光部40の前後方向幅をどの程度にするかは任意であるが、正面から遠心機を見た際に帯状に見えるような発光部40とすると好ましい。また、発光部40の形状を更に工夫して、光を任意の方向に拡散する拡散部を有した窓とすることにより、光源(LED42)の点灯状況を任意の方向から見えるように構成することも可能である。拡散部としては、例えば樹脂製の発光部40の表側又は裏側に断面形状が三角形のギザギザ状部分を形成し、プリズムの役割をさせて中から照射される光を屈折させるように構成すれば良い。
【0027】
図5は
図4の基板41の上面図である。ここでは基板41上に等間隔で16個のLED42を配置した例を示しているが、複数個のLEDを用いて、発光部40の発光状態が点でなくて面発光状態となれば良いので、LED42の個数は任意である。基板41は、例えばプリント基板で構成でき、基板上には図示しない配線が形成されており、図示しないリード線によって後述するLED駆動回路35(
図6参照)に接続される。LED42はそれぞれの発光色を変更できるように構成すると好ましく、例えば市販されている“3色RGBカラーLED”を用いることにより、任意の色にて発光させることができる。これらのLED42は、複数個のLEDを同一形態にて発光させるように制御して表示するように構成すればLEDドライバ(点灯駆動回路)を単純化できるが、数個ずつのLED42をグループ化し、グループごとにLEDドライバを設けて異なる表示態様で点灯するように構成しても良い。さらには、各LEDごとにLEDドライバを個別に準備して多彩な点灯形態を実現するようにしても良い。第1の実施例では複数のLED42に対して一つのLEDドライバを準備して、それぞれにオンオフ、発光色、発光パターン、輝度等を一体に制御するように構成した。
【0028】
次に
図6を用いて本実施例に係る遠心機1の制御ブロック図を説明する。制御装置30は内部にマイコン(マイクロコンピュータ)31と、遠心機を動作させるためのプログラムや制御情報データを記憶しておくための不揮発性メモリ34と、演算や一時的なデータを保持するためのRAM(ランダムアクセスメモリ)33と、タッチ式液晶ディスプレイである操作表示部8の入力制御及び出力制御を行う入出力制御回路32と、LED42を点灯させるためのLED駆動回路35と、モータ9を駆動するためのインバータで構成されたモータ駆動回路36と、ロータを冷却するためのペルチェ素子(冷却装置)18を駆動させための冷却装置駆動回路37と、油回転真空ポンプ6と油拡散真空ポンプ7を駆動するための真空ポンプ駆動回路38を有する。マイコン31には、ロータ2の温度を測定するための温度センサ13と、ドア5の開閉状態を検出するドアセンサ16と、ロータ室3内の気圧を測定する真空センサ12と、ロータ2の装着とその識別情報を認識するロータ識別センサ14と、モータ9の回転を検出する回転センサ9cが接続され、その出力がマイコン31に入力される。モータ駆動回路36、冷却装置駆動回路37、真空ポンプ駆動回路38には、交流100V又は交流200V等の商用電源39が供給され、マイコン31によってモータ9、ペルチェ素子18、油回転真空ポンプ6、油拡散真空ポンプ7への電源供給が制御され、それらの起動、停止、及び運転の制御が行われる。複数のLED42の点灯は、ON又はOFF、発光色、点滅パターン、明るさ等はマイコン31がLED駆動回路35に制御信号を送信することによって制御される。このLED42の制御は、マイコン31においてコンピュータプログラムを実行することによりソフトウェア的に制御できるので、マイコン31は遠心機1の運転状況に応じてLED42の発光形態を任意に変更することが可能である。
【0029】
次に、
図7のフローチャートを用いて本発明の実施例に係る遠心機1の制御手順を説明する。これらの処理手順はマイコン31によりプログラムを実行することによりソフトウェア的に実行できる。本処理手順はユーザが遠心機1の電源スイッチをオンにすることにより開始される。まずマイコン31は操作表示部8から遠心分離運転の開始を意味するスタートボタンがユーザによってオンにされたかどうかを判定する(ステップ51)。ここで、オンになっていない場合は、マイコン31は“停止”状態用の指定された点灯形態にてLED42を点灯させてステップ51に戻る(ステップ52)。ステップ51にてスタートボタンが押された場合は、真空ポンプ(6、7)をオンにしてモータ9を起動する(ステップ53)。次にマイコン31は加速用の点灯形態にて発光部40を点灯させる(ステップ54)。モータ9を起動した制御部は、モータ9を所定の低速回転数、いわゆる真空待機回転速度まで加速させる(ステップ55)。次にマイコン31は、ロータ室3内が目標真空度に達成したかを判定し(ステップ56)、達成していなかったら整定状況にて、真空ポンプ(6、7)の動作によってロータ室3内が所定の真空度に到達するまで待機し(ステップ57)、
真空待機時用の点灯形態にて発光部40を点灯させ、ステップ56に戻る(ステップ58)。尚、ステップ51におけるスタートボタンのオンが、タイマー予約により設定された時間に遠心分離運転を行う予約運転の開始の場合には、その予約時間に合わせてステップ53を実行するように構成し、その予約待機時は専用の形態にて発光部40を点灯させるように構成しても良い。
【0030】
ステップ56にてロータ室3内が所定の真空度に到達したら、マイコン31はモータ9を真空待機速度から設定された回転速度まで加速させて、設定回転速度にて一定回転させる(ステップ59)。この際、マイコン31は、ロータ2の回転状況に応じて、“加速”、“整定”用のいずれかの点灯形態にて点灯させる(ステップ60)。次に、マイコン31は何らかのエラーが発生したかを検知し(ステップ61)、検知した場合はエラー発生を示すアラーム用の点灯をして(ステップ66)、ロータ2の回転を停止させる(ステップ67)。その後、真空ポンプを停止させるためのボタン(図示せず)が押されたら真空ポンプ(6、7)を停止させて遠心分離運転を終了させる。尚、エラー発生を検知するステップ61、66、67は、ステップ55やステップ58の後にも同様に介在させるように構成しても良い。
【0031】
ステップ61でエラーが発生していない場合は、マイコン31は遠心運転の終了時間に到達したかを判定し(ステップ62)、終了していなかったらステップ59に戻り、終了したら減速制御を行いロータが停止するまでLED42を減速用の点灯として(ステップ63)、ロータが停止したらモータ9の回転を停止させ(ステップ64)、LED42を運転終了用の形態にて点灯させる(ステップ65)。その後、ユーザにより真空ポンプを停止させるためのボタン(図示せず)が押されたら真空ポンプ(6、7)が停止してエアリークバルブ26が解放されるので、ドア5を開くことができる状態になり、遠心分離運転が終了する。
【0032】
次に
図8を用いて本発明の実施例に係るLED42の発光形態を設定する画面例を説明する。画面70はLED42の発光形態を設定する際に操作表示部8に表示されるものである。画面70には9つの運転状態(停止、真空待機、加速、予約運転、整定、減速、ゾーナル加速、ゾーナル減速、アラーム)ごとの表示形態をそれぞれ任意に設定できる。各表示は、左側にロータ2の運転状態71と、それに対応するLED42の表示形態72と、設定の試灯(試しに点灯させる)を行うアイコン73が表示される。本実施例では、LED42の色、輝度、発光パターン等によって表示形態を設定することにより、発光部40による発光形態によって遠心機1の動作状態をユーザに報知できる。尚、
図8は白黒にて図示しているが、実際の画面70はカラー表示であるので、表示形態72の四角内は指定された色と同じように表示され、ユーザは設定された色を即座に識別できる。このカラー表示に加えて、運転状態71の四角内は指定された色の左下に文字にて何色かが表示される。
図8の例では、停止時には青、加速時には青、減速時には赤、アラーム時には赤のように設定され、また、連続点灯か、遅い点滅か、早い点滅かを図の例では多彩に設定されている。
【0033】
図8において、ユーザが特定の運転状態71の欄をタッチすると、操作表示部8の表示が
図9で示す画面75に切り替わる。ここで表示される発光色のなかから任意の色を選択することによって、選択された運転状態の表示形態を任意に設定できる。
図9では白黒にて図示したため斜線等で表示しているが、実際には色付きで表示される。ここで、“消灯”を選択すると特定の運転状態の時に発光部40を消灯させることができる。
図9の画面76内からユーザが所望の色をタッチすると、次に
図10に示す画面80が表示され、点滅パターンと明るさを設定する画面に移行する。ここではポップアップ画面81が表示されて、その画面には表示可能な点滅パターンをアイコン82で表示する。ここでは、アイコン82は4つ表示されることにより、ユーザは“点灯”、“点滅はやい”、“点滅ゆっくり”、“フェード”の中から選択する。次に、ユーザは明るさを7段階の中から設定するが、明るさの度合いを示すバーグラフ83を、アップボタン84a、ダウンボタン84bによって調整することによって任意の明るさに設定できる。点滅パターンと明るさの設定が終了したら、ユーザは閉じるボタン81aをタッチすることによって
図8の画面70に戻る。
【0034】
以上のように本実施例では、運転状態毎に発光部40を任意の色、点滅パターン、明るさで表示させることができるので、ユーザにとっては遠心機1から離れた位置からでもおおよその運転状態が一目で分かる。本実施例では、
図8に示した運転状態71毎に任意の表示形態とするようにしたが、特定の状態、例えば“異常状態”とその他の状態の発光パラメータが同一または類似になることを防止することにより、ユーザに異常が認知されやすく設定することも可能である。例えば、
図8において、ユーザが特定の運転状態71の欄をタッチすると、操作表示部8の表示が
図9で示す画面75に切り替わるが、この際、重複する色や、設定を許可しない色についてはユーザによる選択を受け付けないように構成すると共に、
図11に示すようにポップアップ画面86に選択不可マーク87を重畳して表示するようにしても良い。この画面上ではユーザが“赤”をタッチしても“赤”の選択を受け付けないように構成される。この赤”をタッチした際の画面表示をさらに説明するのが
図12である。
【0035】
図12は発光部40での表示色を選択する際に表示されるアラーム表示例を示す図である。
図12(1)は、ユーザが
図9にてアラームと同じ色(例えば“赤”)を選択しようとした際に表示される警告画面である。これはユーザがLED42の発光色を任意に設定変更できるようにすると、異常状態に対して異常とは認知されにくい色に設定され、必要とされる早急な処置が遅れてしまう可能性がある。そこで本実施例では、ユーザが整定時の表示色をアラームと同じ“赤”にしようとして、
図9の画面にて赤の部分をタッチすると、
図12(1)の画面91が画面上に表示され、遠心機1の異常状態に対して設定される発光パラメータと、他の動作状態に対して設定される発光パラメータが同一または類似であることを設定が完了する前に警告メッセージとして表示する。画面91には、メッセージ文たる「アラームと同じ色です。(中略)よろしいですか?」に加えて、“適用”を選択するアイコン92と“キャンセル”を選択するアイコン93が表示される。この注意喚起画面によってユーザは、遠心機1の特定の運転状態を示す色が重複して設定するか、しないかを注意深く設定できる。
【0036】
特定の運転状態のうち、表示色を変えることを許可しないように構成することも可能である。これは、遠心機1の異常状態に対して設定可能な発光パラメータは、他の動作状態に対して設定される発光パラメータよりも選択範囲が限定されるべきとの考えに基づくものである。限定される範囲は、好ましくは赤または黄色系であり、好ましくは輝度が所定値より高く、好ましくは所定値より短い周期の点滅パターンである。このような特定の表示形態についての変更を阻止、例えばアラーム色だけは変更不可にしたい場合は、
図11の選択不可マーク87が付与されている色を選択すると、(2)の画面94としてメッセージ文たる「アラームと同じ色は選択できません」とポップアップ画面にて表示し、“戻る”アイコン95だけが表示される。
【0037】
図12(3)は、同一色の設定を警告する例であり、
図8にて状態として減速を選択し、
図9にてある色を選択した際に、選択された色が別の状態を示す色と同一の場合には、同様にして設定が完了する前に警告メッセージを表する。ここでは遠心機1の運転状態の少なくとも一つに対して設定される発光パラメータと、停止中に対して設定される発光パラメータが同一または類似であるので画面96のようにメッセージ文を表示すると共に、“適用”を選択するアイコン97と“キャンセル”を選択するアイコン98を表示する。このように警告画面を設けることによりユーザが誤って同一色を複数の状態に割り当ててしまうことを防止できる。尚、同一色を割り当てる場合であっても、一方は点灯、他方は点滅というように表示形態が異なることがあるので、その場合ユーザは、画面96のような警告画面に関わらずに“適用”アイコン97を選択して、続く
図10にて点滅パターンと明るさが異なるように設定できる。尚、(3)での警告画面は、
図10の点滅パターンと明るさの設定の際に表示するようにしても良い。
【0038】
以上、本実施例によれば、遠心機において発光部40に表示される色、輝度、発光パターン等の発光パラメータによって動作状態を報知できるので、運転状況を外部から容易に視認することができる遠心機を実現できた。また、異常状態とその他の状態の発光パラメータが同一または類似になることを防止することにより、ユーザに異常が認知されやすい遠心機を実現できた。さらに、運転状態(加速・整定・減速)のうち少なくとも1つの発光パラメータが停止状態の発光パラメータが同一または類似になることを防止することにより、運転中か停止中かの誤認を防止することが可能となった。停止状態が認識できれば、ロータが停止した時に速やかに試料の取出し作業に移行でき、停止後の放置による試料の状態変化(劣化等)を防止できる。さらに、異常発生時には一般的に警告的な意味合いを持つ発光パラメータだけに限定すれば、設定者個人の色彩感覚に依存した警告とならないので、第三者にも異常が認知されやすい遠心機を実現できる。