【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的は、本発明によれば、半径方向カーカス補強材を備えたタイヤであって、タイヤは、補強要素の少なくとも2つの実働クラウン層で作られたクラウン補強材を有し、1つの実働クラウン層は、円周方向と10°から45°までの角度をなして次の実働クラウン層とクロス掛け関係をなし、ゴム混合物の層Cが、少なくとも、少なくとも2つの実働クラウン層の端相互間に配置され、クラウン補強材には半径方向にトレッドが被せられ、トレッドは、2つのサイドウォールを経て2つのビードに接合され、クラウン補強材は、円周方向補強要素の少なくとも1つの層を有する、タイヤにおいて、層Cの10%伸び率における引張り弾性率は、9MPaを超え、層Cのtan(δ)
maxで表されるtan(δ)値の最大値は、0.100未満であることを特徴とするタイヤによって達成される。
【0026】
損失係数(ロスファクタ)であるtan(δ)は、ゴム混合物の層の動的性質である。これは、規格ASTM・D5992‐96に従ってMetravib VA4000という商標名で知られている粘度分析装置で測定される。10Hzの周波数、100℃の温度で単純な交番正弦剪断応力を受けた加硫済みゴム配合物のサンプル(厚さ4mm、断面積400mm
2の円筒形試験片)の応答を記録する。ピークトゥピーク変形振幅スキャンを0.1%から50%まで実施し(外方サイクル)、次に50%から1%まで実施する(戻りサイクル)。戻りサイクルに関し、tan(δ)
maxで表されるtan(δ)の観察される最大値が示される。
【0027】
転がり抵抗は、タイヤが転動しているときに現れる抵抗である。これは、一回転中、タイヤの変形と関連したヒステリシスロスによって表される。タイヤの回転と関連した周波数の値は、30〜100℃で測定されるtan(δ)値に対応している。かくして、100℃におけるtan(δ)値は、タイヤが転動しているときのタイヤの転がり抵抗の指標に対応している。
【0028】
また、60℃の温度での設定エネルギーレベルでのサンプルのリバウンドによって百分率として表されるエネルギーの損失を測定することによって転がり抵抗を推定することが可能である。
【0029】
有利には、本発明によれば、ゴム混合物の層CのP60で示される60℃における損失は、20%未満である。
【0030】
ゴム混合物の層Cにより、上述の実働クラウン層を結合解除するために使用でき、その目的は、厚い厚さにわたって剪断応力を分布させることにある。
【0031】
本発明の目的上、結合層は、それぞれの補強要素が1.5mm以下だけ半径方向に隔てられた層であり、ゴムの厚さは、かかる補強要素のそれぞれの上側母線と下側母線との間で半径方向に測定される。
【0032】
弾性率が9MPa以上であり、tan(δ)
maxの値が0.100未満のかかる混合物を使用することにより、転がり抵抗に関してタイヤの性質を向上させる一方で、満足の行く耐久性を保つことができる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、ゴム混合物の層Cは、天然ゴムを主成分とし又は大部分がシス‐1,4鎖を含む合成ポリイソプレンを主成分とし且つ場合によっては少なくとも1つの他のジエンエラストマー(天然ゴム又は合成ポリイソプレンは、配合の場合、用いられる他の1つ又は複数のジエンエラストマーの比率に対して大部分の比率で存在する)及び
a)構造指数がどのようなものであれ、40〜100phr、好ましくは60〜90phrの比率で用いられるBET比表面積が60m
2/g未満のカーボンブラックか、
b)40〜100phr、好ましくは60〜90phrの比率で用いられるBET比表面積が30〜260m
2/gの沈降シリカ、熱分解法シリカ、アルミナ又はアルミノシリケートから成る群から選択されたSiOH及び/又はAlOH表面官能基を含むシリカ及び/又はアルミナ系の白色充填剤(ホワイトフィラー)又は合成中又は合成後に
SiOH及び/又はAlOH官能基で少なくとも部分的に覆うことによって改質されたカーボンブラックか、
c)又は、a)に記載されたカーボンブラックとb)に記載された
白色充填剤(ホワイトフィラー)及び/又は改質されたカーボンブラックとのブレンド(充填剤の全体的比率は、40〜100phr、好ましくは60〜90phrである)かのいずれかで構成された補強用充填剤を主成分とするエラストマー混合物である。
【0034】
BET比表面積は、1987年11月の規格NFT45007に対応した1938年2月の「ザ・ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(The Journal of the American Chemical Society)」,第60巻,第309頁に記載された“BRUNAUER, EMMET and TELLER”方法を用いて測定される。
【0035】
透明な充填剤又は白色充填剤が使用される場合、当業者に知られた作用剤から選択された結合剤及び/又は被覆剤を用いることが必要である。好ましい結合剤の例としては、ビス‐(3‐トリアルコキシルイルプロピル)ポリスルフィニド型の硫黄含有アルコキシシラン及び純粋な液体製品の場合、商標名Si69及び固体製品の場合、商標名X50S(ブラックN330を含む重量で50/50ブレンド)でデグサ・コーポレーション(DEGUSSA Corporation )により市販されているビス‐(3‐トリエトキシルイルプロピル)テトラスルヒドが挙げられる。被覆剤の例として、脂肪族アルコール、アルキルアルコキシシラン、例えば商標名Si116及びSi216でデグサ・カンパニーによってそれぞれ市販されているヘキサデシルトリメトキシ又はトリエトキシシラン、ジフェニルグアニジン、ポリエチレングリコール、場合によってはOH若しくはアルコキシ官能基で改質されたシリコーン油が挙げられる。被覆剤及び/又は結合剤は、充填剤≧1/100且つ≦20/100に対して重量を基準とした比率で、好ましくは、透明な充填剤が補強充填剤の全てである場合、2/100〜15/100、補強充填剤がカーボンブラックのブレンド及び透明な充填剤から成る場合、1/100〜20/100で用いられる。
【0036】
上述したシリカ及び/又はアルミナ型の材料のモルフォロジー並びにSiOH及び/又はAlOH表面官能基を有し、これら材料の完全代替物又は部分代替物として本発明に従って使用できる補強充填剤の他の例として、合成中、炉原料油へのシリコン及び/又はアルミニウムの化合物の添加により或いは合成後、珪酸ナトリウム及び/又はアルミネートの溶液に溶けたカーボンブラックの水性懸濁液に酸を添加してカーボンブラックの表面をSiOH及び/又はAlOH官能基で少なくとも部分的に覆うことによって改質されたカーボンブラックを挙げることができる。表面のところのSiOH及び/又はAlOH官能基を含むこの種の炭素含有充填剤の非限定的な例として、1997年5月6〜9日カリフォルニア州アナハイムで開催されたエーシーエス・ミーティング,ラバー・ディビジョン(ACS Meeting,Rubber Division )」の会議番号24に記載されると共に欧州特許出願公開第0799854号明細書に記載されたCSDP型充填剤を挙げることができる。
【0037】
透明な充填剤が唯一の補強充填剤として用いられる場合、ヒステリシス及び粘着特性は、沈降若しくは熱分解シリカ又は変形例として沈降アルミナ又は変形例として30〜260m
2/gのBET比表面積を有するアルミノシリケートを用いることによって得られる。この種の充填剤の非限定的な例としては、アクゾー・コーポレーション(Akzo Corporation)によって市販されているsilicasKS404、デグサ・コーポレーションによって市販されているUltrasil VN2又はVN3 及びBW3370GR、ヒューバー・コーポレーション(Huber Corporation )によって市販されているZeopol 8745 、ローディア・コーポレーション(Rhodia Corporation)によって市販されているZeosil 175MP又はZeosil 1165MP 、ピーピージー・コーポレーション(PPG Corporation )によって市販されているHI-SIL 2000 等が挙げられる。
【0038】
天然ゴムを含むブレンド又は主としてシス‐1,4鎖を含む合成ポリイソプレンとして用いることができるジエンエラストマーのうち、好ましくは主としてシス‐1,4鎖を含むポリブタジエン(BR)、スチレン‐ブタジエンコポリマー(SBR)溶液又は乳濁液、ブタジエン‐イソプレンコポリマー(BIR)又は変形例としてスチレン‐ブタジエン‐イソプレン(SBIR)ターポリマーを挙げることができる。これらエラストマーは、重合プロセス中又は重合プロセス後、分岐剤、例えばジビニルベンゼン又は星形成剤、例えばカルボネート、ハロゲン‐錫化合物、ハロゲン‐ケイ素化合物又は変形例として酸素化カルボニル、カルボニル官能基の鎖若しくは鎖の端又は変形例としてアミン官能基の鎖又は鎖の端へのジメチル又はジエチルアミノベンゾフェノンの作用によるグラフトをもたらす官能化剤を用いて改質されたエラストマーであるのが良い。天然ゴム又は上述したように1つ又は2つ以上のジエンエラストマーを含む主としてシス‐1,4鎖を含む合成ポリイソプレンのブレンドの場合、天然ゴム又は合成ポリイソプレンは、好ましくは、主要な比率で、より好ましくは70phrを超える比率で用いられる。
【0039】
層Cを形成するゴム混合物中に用いられる補強充填剤の選択は、10%伸び率における引張り弾性率の値を得ると共にtan(δ)
maxの値を得る際の一要因である。しかしながら、補強用充填剤に関する値の上述の範囲内において、当業者であれば、他の通常の成分、例えば顆粒剤又はコバルト誘導体の量を適合させることができ又は混合方法を改造して引張り弾性率及びtan(δ)
maxの上述の値を得ることも又可能であろう。
【0040】
より通常用いられるタイヤ設計例は、実働クラウン層の端相互間に配置され、本発明の層Cの10%伸び率における引張り弾性率と実質的に等価な10%伸び率における引張り弾性率を有するが、0.130を超える層Cのtan(δ)
maxで示されたtan(δ)の最大値を有するゴム混合物の層を含む。
【0041】
本発明の目的上、粘着性ゴム混合物は、特に亀裂に対して耐性のあるゴム混合物である。かくして、混合物の粘着性は、試験片“PS”(純粋剪断)について行われる疲労亀裂試験によって評価される。この疲労試験では、試験片を切り欠いた後、エネルギー解除レベル“E”(J/m
2)の関数として亀裂伝搬速度“V
p(nm/サイクル)を求める。測定によりカバーされる実験ドメインは、空気又は窒素雰囲気中で温度が−20℃〜+150℃の範囲内にある。試験片に加えられる荷重は、振幅が0.1mm〜10mmであり、パルス型荷重(正接「ヘイバーサイン(haversine)」信号)の形態をしており、このパルスの持続時間に等しい休止間隔の状態で加えられる動的変位であり、信号の周波数は、平均で10Hzのオーダーのものである。
【0042】
測定は、3つの部分を含み、即ち、
・27%変形率における1000サイクルに関する試験片“PS”の適応、
・関係式“E”=f(変形率)を求めるためのエネルギー特徴付け。エネルギー解除率“E”は、W0・h0に等しく、W0=単位サイクル当たり且つ単位体積当たりの材料に供給されるエネルギー、h0=試験片の初期高さである。かくして、力/変位の読みを利用することにより、“E”と荷重の振幅の関係が与えられる。
・試験片“PS”を切り欠いた後の亀裂の測定。得られた情報を利用すると、加えられた荷重レベル“E”の関数として亀裂伝搬速度“V
pを求めることができる。
【0043】
本発明者は、本発明の層Cの粘着性が満足の行く状態のままであるということを実証することができた。
【0044】
本発明者は、特に、円周方向補強要素の少なくとも1つの層の存在が層Cの粘着性の変化の減少に寄与していることを実証した。事実、実働クラウン層の端相互間に配置され、0.130を超えるtan(δ)
maxの値を有するゴム混合物の層を含む最も一般的に用いられているタイヤ設計例により、実働クラウン層の端相互間に配置されたゴム混合物の層の粘着性が変化し、かかる変化は、この粘着性を弱くする傾向がある。本発明者は、実働クラウン層の端相互間の剪断応力を制限し、更に温度の減少を制限する円周方向補強要素の少なくとも1つの層の存在の結果として、層Cの粘着性のわずかな変化が生じることを発見した。したがって、本発明者は、最も一般的に用いられているタイヤ設計例で見受けられた粘着性よりも低い層Cの粘着性が本発明のタイヤ設計例において満足の行くものであると考えている。
【0045】
本発明者は又、円周方向補強要素の少なくとも1つの層の存在により、9MPaを超える層Cの10%伸び率における引張り弾性率と0.100未満の層Cのtan(δ)
maxの値の組み合わせで、特に耐久性の面で、しかしながら耐摩耗性の面においても、満足の行く性能を維持することができるということを実証することができた。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも2つの実働クラウン層は、互いに等しくない軸方向幅を有し、軸方向に幅の最も狭い実働層の端とゴム混合物の層Cによって軸方向に幅の最も狭い実働層から隔てられた実働層との間の距離dは、1.1φ<d<2.2φであるようなものであり、φは、円周方向補強要素の少なくとも1つの層の補強要素の直径であり、子午線平面で見て、ゴム混合物の層Cの厚さは、層Cの軸方向内端と軸方向に幅の最も狭い実働層の端との間の軸方向幅にわたって実質的に一様である。
【0047】
本発明の目的上、距離dは、層Cの表面に実質的に垂直な方向においてコードからコードまで、即ち、第1の実働層のコードと第2の実働層のコードとの間で測定される。換言すると、この距離dは、第1の層の厚さ並びに半径方向内側の実働層のコードの半径方向外側に位置するゴムスキム混合物及び半径方向外側の実働層のコードの半径方向内側に位置したゴムスキム混合物のそれぞれの厚さを含む。
【0048】
本発明の目的上、ゴム混合物の層Cの厚さは、一方の表面の一点の他方の面上への正投影像に沿う層Cの2つの表面相互間で測定される。
【0049】
本発明の目的上、ゴム混合物への層Cの厚さが実質的に一定であるという表現は、これが0.3mmを超えるばらつきを持たないことを意味している。厚さのこれらばらつきは、タイヤの成型及び硬化中におけるクリープ現象にのみ起因している。半完成品の形態、即ち、いつでもタイヤ製造のために使用できる要素の形態をした層Cは、かくして、有利には、一定の厚さを有する。
【0050】
厚さの種々の測定は、タイヤの横断面について実施され、かくして、タイヤは、非インフレート状態にある。
【0051】
最も一般的に用いられているタイヤ設計例は、特に幅の最も狭い実働層の端のところに厚い厚さを備えると共に幅の最も狭い実働層をタイヤの子午線断面に沿って見たときに非一様な厚さプロフィールを備えた実働クラウン層の端相互間に配置されたゴム混合物の層を含み、その目的は、かかる厚さの実現を可能にすると共に幅の最も狭い実働層の端の環境の過度の外乱を阻止することにある。上述したように、このゴム混合物の存在により、特に、実働クラウン層の端相互間の剪断応力を制限することができ、これら実働クラウン層の円周方向剛性は、これらの端のところではゼロである。上記dの定義に従って測定した軸方向に幅の最も狭い実働層の端とゴム混合物の層によって軸方向に最も幅の狭い実働層から隔てられた実働層との間の距離は、通常、3.3mmを超える。これは、少なくとも2.5mmのゴム混合物の層の厚さに対応しており、これに対し、一般に、その厚さは、その端の各々のところで、0.5mm未満の値に近づく傾向がある。
【0052】
本発明者は、厚さが層Cが層Cの軸方向内端と軸方向に最も幅の狭い実働層の端との間の軸方向幅にわたり実質的に一様であり且つ距離dが1.1φ〜2.2φであるようなゴム混合物と共に円周方向補強要素の少なくとも1つの層を設けることにより、特に耐久性の面で、しかしながら耐摩耗性の面においても満足の行く性能を保持することができるということを実証することができた。事実、円周方向補強要素の層の存在が特にフットプリントの通過中、実働クラウン層の端相互間の剪断応力を減少させるほど十分に円周方向張力の少なくとも何割かの吸収に寄与するように思われる。
【0053】
加うるに、ゴム混合物の層Cは、半完成品の状態にあるとき、かくして、有利には、製造するのが容易であり、しかも容易に貯蔵することができる一定厚さの層の形態を取る。事実、上述したように、断面で見て厚さのばらつきを有する形状の通常用いられる層は、一方において、製造するのが困難であり、他方において、貯蔵するのが困難である。事実、厚さのばらつきにより、貯蔵の問題が生じ、これら半完成品は、通常、リールに巻き取られた形態で貯蔵される。本発明の層Cは、半完成品の状態にあるとき、半完成品の状態にあるときに実質的に丸形のプロフィールを備えた断面を有する通常用いられるタイヤと比較して実質的に平べったいプロフィールを備えた断面を有する。
【0054】
半完成品の形態をした本発明のゴム混合物の層の製造及び貯蔵は、この上にかかる程度まで単純化されているので、その結果として、タイヤが通常のタイヤと比較して円周方向補強要素の追加の層を有する場合があるとしてもタイヤの製造費を減少させることができる。
【0055】
本発明の有利な実施形態では、軸方向に幅の最も広い実働クラウン層は、他の実働クラウン層の半径方向内側に位置する。
【0056】
また、好ましくは、ゴム混合物の上記層Cの軸方向最も内側の端と軸方向に幅の最も狭い実働クラウン層の端との間に位置するゴム混合物の層Cの軸方向幅Dは、
3φ
2≦D≦25φ
2
であるようなものであり、上式において、φ
2は、軸方向に幅の最も狭い実働クラウン層の補強要素の直径である。この関係式は、ゴム混合物の層Cと軸方向に幅の最も狭い実働クラウン層との係合面積を定める。かかる係合面積の大きさが軸方向に幅の最も狭い実働クラウン層の補強要素の直径の3倍未満である場合、特に軸方向に幅の最も狭い実働クラウン層の端のところの応力の減少を得る目的上、実働クラウン層の結合解除をもたらすには不十分である場合がある。かかる係合面積の大きさが軸方向に幅の最も狭い実働クラウン層の補強要素の直径の20倍を超える場合、これによりタイヤのクラウン補強材のドリフト剛性(コーナリング剛性)の過度の減少が生じる場合がある。
【0057】
好ましくは、ゴム混合物の層Cの軸方向最も内側の端と軸方向に幅の最も狭い実働クラウン層の端との間のゴム混合物の層Cの軸方向幅Dは、5mmを超える。
【0058】
厚さの種々の測定は、タイヤの横断面について実施され、かくして、タイヤは、非インフレート状態にある。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、ゴム混合物の少なくとも1つの層が実働クラウン層の端を境界付けた状態で、実働クラウン層の端を境界付けているゴム混合物の少なくとも1つの層の10%伸び率における引張り弾性率は、9MPa超であり、実働クラウン層の端を境界付けているゴム混合物の層のtan(δ)
maxで表されるtan(δ)の最大値は、0.100未満である。
【0060】
本発明の目的上、「〜を境界付ける」という表現は、実働クラウン層の端を境界付けているゴム混合物の層が実働クラウン層の軸方向外端に対して軸方向且つ/或いは半径方向に隣接して位置していることを意味するものと理解されるべきである。
【0061】
この場合も又、有利には、本発明のこの変形実施形態によれば、実働クラウン層の端を境界付けているゴム混合物の層は、ゴム混合物の層Cと同様、天然ゴムを主成分とし又は大部分がシス‐1,4鎖を含む合成ポリイソプレンを主成分とし且つ場合によっては少なくとも1つの他のジエンエラストマー(天然ゴム又は合成ポリイソプレンは、配合の場合、用いられる他の1つ又は複数のジエンエラストマーの比率に対して大部分の比率で存在する)及び
a)構造指数がどのようなものであれ、40〜100phr、好ましくは60〜90phrの比率で用いられるBET比表面積が60m
2/g未満のカーボンブラックか、
b)40〜100phr、好ましくは60〜90phrの比率で用いられるBET比表面積が30〜260m
2/gの沈降シリカ、熱分解法シリカ、アルミナ又はアルミノシリケートから成る群から選択されたSiOH及び/又はAlOH表面官能基を含むシリカ及び/又はアルミナ系の白色充填剤(ホワイトフィラー)又は合成中又は合成後に
SiOH及び/又はAlOH官能基で少なくとも部分的に覆うことによって改質されたカーボンブラックか、
c)又は、a)に記載されたカーボンブラックとb)に記載された
白色充填剤(ホワイトフィラー)及び/又は改質されたカーボンブラックとのブレンド(充填剤の全体的比率は、40〜100phr、好ましくは60〜90phrである)かのいずれかで構成された補強用充填剤を主成分とするエラストマー混合物である。
【0062】
層Cの場合のように、ゴム混合物の層Bを形成するゴム混合物中に用いられる補強用充填剤の選択は、10%伸び率における引張り弾性率の値を得ると共にtan(δ)
maxの値を得る際の一要因である。しかしながら、補強用充填剤に関する値の上述の範囲内において、当業者であれば、他の通常の成分、例えば顆粒剤又はコバルト誘導体の量を適合させることができ又は混合方法を改造して引張り弾性率及びtan(δ)
maxの上述の値を得ることも又可能であろう。
【0063】
本発明のこの実施形態によれば、一般的に用いられているタイヤの設計例とは対照的に、実働クラウン層の端を境界付ける少なくとも1つの層及び有利には実働クラウン層の端を境界付ける層の全ては、9MPaを超える弾性率及び0.100未満のtan(δ)
maxの値を有し、かくして、タイヤの設計例においてこれらの場所で通常用いられるゴム混合物の層よりも粘着性が低い。
【0064】
本発明の変形実施形態によれば、少なくとも1つの実働クラウン層の少なくとも1つのスキムコート(圧延層)の10%伸び率における引張り弾性率は、9MPa超であり、少なくとも1つの実働クラウン層の少なくとも1つのスキムコートのtan(δ)
maxで表されるtan(δ)の最大値は、0.100未満である。
【0065】
実働クラウン層のスキムコートのtan(δ)
maxの値は、通常、0.120MPaを超え、スキムコートは、良好な粘着性を有する。
【0066】
層Cの場合のように、本発明者は、実働クラウン層のスキムコートが9MPa超の実働クラウン層のスキムコートの10%伸び率における引張り弾性率及び0.100未満のtan(δ)
maxの値を有する場合、実働クラウン層のスキムコートの粘着性が満足の行くままであるということを実証した。
【0067】
本発明者は又、円周方向補強要素の少なくとも1つの層の存在が実働クラウン層のスキムコートの粘着性の変化を減少させるのに役立つことを実証した。事実、本発明者は、特に温度の上昇を制限しながら車両が曲がりくねった道筋を辿るとき、実働クラウン層の補強要素を圧縮下に置く度合いを制限するのに役立つ円周方向補強要素の少なくとも1つの層の存在の結果として、かくして、スキムコートの粘着性の変化は僅かであることを発見した。したがって、本発明者は、最も一般的に用いられているタイヤ設計例に見受けられる粘着性よりも低い実働クラウン層のスキムコートの粘着性が本発明のタイヤ設計例では満足の行くものであると考えている。
【0068】
ゴム混合物の層Cの場合と同様、弾性率が9MPa超であり、tan(δ)
max値が0.100未満である少なくとも1つの実働クラウン層の少なくとも1つのスキムコートの使用により、転がり抵抗に関してタイヤの特性を向上させる一方で、満足の行く耐久性を保つことが可能である。
【0069】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの実働クラウン層の少なくとも1つのスキムコートは、天然ゴムを主成分とし又は大部分がシス‐1,4鎖を含む合成ポリイソプレンを主成分とし且つ場合によっては少なくとも1つの他のジエンエラストマー(天然ゴム又は合成ポリイソプレンは、配合の場合、用いられる他の1つ又は複数のジエンエラストマーの比率に対して大部分の比率で存在する)及び
a)構造指数がどのようなものであれ、40〜100phr、好ましくは60〜90phrの比率で用いられるBET比表面積が60m
2/g未満のカーボンブラックか、
b)40〜100phr、好ましくは60〜90phrの比率で用いられるBET比表面積が30〜260m
2/gの沈降シリカ、熱分解法シリカ、アルミナ又はアルミノシリケートから成る群から選択されたSiOH及び/又はAlOH表面官能基を含むシリカ及び/又はアルミナ系の白色充填剤(ホワイトフィラー)又は合成中又は合成後に
SiOH及び/又はAlOH官能基で少なくとも部分的に覆うことによって改質されたカーボンブラックか、
c)又は、a)に記載されたカーボンブラックとb)に記載された
白色充填剤(ホワイトフィラー)及び/又は改質されたカーボンブラックとのブレンド(充填剤の全体的比率は、40〜100phr、好ましくは60〜90phrである)かのいずれかで構成された補強用充填剤を主成分とするエラストマー混合物である。
【0070】
透明な充填剤又は白色充填剤が使用される場合、当業者に知られた作用剤から選択された結合剤及び/又は被覆剤を用いることが必要である。好ましい結合剤の例としては、ビス‐(3‐トリアルコキシルイルプロピル)ポリスルフィニド型の硫黄含有アルコキシシラン及び純粋な液体製品の場合、商標名Si69及び固体製品の場合、商標名X50S(ブラックN330を含む重量で50/50ブレンド)でデグサ・コーポレーション(DEGUSSA Corporation )により市販されているビス‐(3‐トリエトキシルイルプロピル)テトラスルヒドが挙げられる。被覆剤の例として、脂肪族アルコール、アルキルアルコキシシラン、例えば商標名Si116及びSi216でデグサ・カンパニーによってそれぞれ市販されているヘキサデシルトリメトキシ又はトリエトキシシラン、ジフェニルグアニジン、ポリエチレングリコール、場合によってはOH若しくはアルコキシ官能基で改質されたシリコーン油が挙げられる。被覆剤及び/又は結合剤は、充填剤≧1/100且つ≦20/100に対して重量を基準とした比率で、好ましくは、透明な充填剤が補強充填剤の全てである場合、2/100〜15/100、補強充填剤がカーボンブラックのブレンド及び透明な充填剤から成る場合、1/100〜20/100で用いられる。
【0071】
上述したシリカ及び/又はアルミナ型の材料のモルフォロジー並びにSiOH及び/又はAlOH表面官能基を有し、これら材料の完全代替物又は部分代替物として本発明に従って使用できる補強充填剤の他の例として、合成中、炉原料油へのシリコン及び/又はアルミニウムの化合物の添加により或いは合成後、珪酸ナトリウム及び/又はアルミネートの溶液に溶けたカーボンブラックの水性懸濁液に酸を添加してカーボンブラックの表面をSiOH及び/又はAlOH官能基で少なくとも部分的に覆うことによって改質されたカーボンブラックを挙げることができる。表面のところのSiOH及び/又はAlOH官能基を含むこの種の炭素含有充填剤の非限定的な例として、1997年5月6〜9日,「エーシーエス・ラバー・ディビジョン・ミーティング(ACS Rubber Division Meeting)」,文献番号24,カリフォルニア州アナハイムに記載されると共に欧州特許出願公開第0799854号明細書に記載されたCSDP型充填剤を挙げることができる。
【0072】
透明な充填剤が唯一の補強充填剤として用いられる場合、ヒステリシス及び粘着特性は、沈降若しくは熱分解シリカ又は変形例として沈降アルミナ又は変形例として30〜260m
2/gのBET比表面積を有するアルミノシリケートを用いることによって得られる。この種の充填剤の非限定的な例としては、アクゾー・コーポレーション(Akzo Corporation)によって市販されているsilicasKS404、デグサ・コーポレーションによって市販されているUltrasil VN2又はVN3 及びBW3370GR、ヒューバー・コーポレーション(Huber Corporation )によって市販されているZeopol 8745 、ローディア・コーポレーション(Rhodia Corporation)によって市販されているZeosil 175MP又はZeosil 1165MP 、ピーピージー・コーポレーション(PPG Corporation )によって市販されているHI-SIL 2000 等が挙げられる。
【0073】
天然ゴムを含むブレンド又は主としてシス‐1,4鎖を含む合成ポリイソプレンとして用いることができるジエンエラストマーのうち、好ましくは主としてシス‐1,4鎖を含むポリブタジエン(BR)、スチレン‐ブタジエンコポリマー(SPR)溶液又は乳濁液、ブタジエン‐イソプレンコポリマー(BIR)又は変形例としてスチレン‐ブタジエン‐イソプレン(SBIR)ターポリマーを挙げることができる。これらエラストマーは、重合プロセス中又は重合プロセス後、分岐剤、例えばジビニルベンゼン又は星形成剤、例えばカルボネート、ハロゲン‐錫化合物、ハロゲン‐ケイ素化合物又は変形例として酸素化カルボニル、カルボニル官能基の鎖若しくは鎖の端又は変形例としてアミン官能基の鎖又は鎖の端へのジメチル又はジエチルアミノベンゾフェノンの作用によるグラフトをもたらす官能化剤を用いて改質されたエラストマーであるのが良い。天然ゴム又は上述したように1つ又は2つ以上のジエンエラストマーを含む主としてシス‐1,4鎖を含む合成ポリイソプレンのブレンドの場合、天然ゴム又は合成ポリイソプレンは、好ましくは、主要な比率で、より好ましくは70phrを超える比率で用いられる。
【0074】
層Cの場合のように、少なくとも1つの実働クラウン層の少なくとも1つのスキムコートを形成するゴム混合物中に用いられる補強充填剤の選択は、10%伸び率における引張り弾性率の値を得ると共にtan(δ)
maxの値を得る際の一要因である。しかしながら、補強用充填剤に関する値の上述の範囲内において、当業者であれば、他の通常の成分、例えば顆粒剤又はコバルト誘導体の量を適合させることができ又は混合方法を改造して引張り弾性率及びtan(δ)
maxの上述の値を得ることも又可能であろう。
【0075】
また、有利には、本発明によれば、層Cの10%伸び率における引張り弾性率と少なくとも1つの実働クラウン層の少なくとも1つのスキムコートの10%伸び率における引張り弾性率の差は、2MPa未満である。
【0076】
第1の実施形態によれば、少なくとも、幅の最も狭い実働クラウン層のスキムコートの弾性率は、ゴム混合物の層Cの弾性率よりも大きく、その結果、これらの層のスタックは、幅の最も狭い実働クラウン層の端のところの亀裂の開始の抑制に望ましい弾性率の勾配を示すようになっている。
【0077】
第2の実施形態によれば、実働クラウン層のスキムコートの弾性率とゴム混合物の層Cのスキムコートの弾性率は、同一であり、この場合も又有利には、ゴム混合物は、タイヤの製造にとっての工業的条件を単純化するために同一である。
【0078】
本発明の有利な実施形態によれば、少なくとも1つの実働クラウン層の補強要素は、飽和層状コードであり、少なくとも1つのインナーライナは、少なくとも1つのジエンエラストマーを主成分とするポリマー配合物、例えば架橋不能な、架橋可能な又は架橋済みのゴム配合物から成る層で外装されている。
【0079】
「層状」(「層状コード」)又は「多層」と呼ばれるコードは、中央コアと、この中央コアの周りに配置された撚り線又は細線の1つ又は2つ以上の事実上同心の層とで形成されたコードである。
【0080】
本発明の目的上、層状コードの飽和層は、少なくとも1本の補充の細線を追加するのに十分なスペースが存在しない細線から成る層である。
【0081】
本発明者は、実働クラウン層の補強要素として作用する上述のコードの存在が、耐久性の面で良好な性能に寄与することができるということを実証できた。
【0082】
事実、上述したように、実働クラウン層のスキムコートのゴム混合物により、タイヤの転がり抵抗を減少させることができるように思われる。これは、タイヤの使用中にこれらゴム混合物の温度が低下することによって明らかであり、その結果、タイヤを使用する幾つかの場合において酸化現象からの補強要素の保護が軽減される場合がある。これは、酸素の遮断に関連したゴム混合物の性質が熱で劣化し、酸素の存在の結果として、最も過酷な走行条件においてコードの機械的性質の漸次劣化が生じる場合があり、しかもこれらコードの寿命に悪影響が生じる場合があるからである。
【0083】
上述したコード内におけるゴムシースの存在は、シースが酸素の遮断に寄与するので補強要素の酸化のこの考えられる恐れを補償する。
【0084】
「少なくとも1つ(1種類)のジエンエラストマーを主成分とする配合物」という表現は、公知のように、かかる配合物が主として(即ち、50%を超える重量%)ジエンエラストマーを含んでいるということを意味するものと理解されたい。
【0085】
本発明によるシースは、有利にはほぼ円形の断面を有する連続スリーブを形成するようシースが覆っている層の周りに連続的に延びている(即ち、このシースは、コードの半径方向に垂直なコードの「正放線(orthoradial)」方向に連続している)ことに注目されるべきである。
【0086】
また、このシースのゴム配合物は架橋可能であり又は架橋済みであり、即ち、かかるゴム配合物は、定義上、これが硬化された状態でゴム配合物が架橋状態になることができる(即ち、これが溶融しないで硬化することができる)よう設計された適当な架橋系を含むことに注目されるべきであり、かくして、このゴム配合物を非溶融性と呼ぶことができる。というのは、このゴム配合物をどのような温度に加熱してもかかるゴム配合物を溶融することができないからである。
【0087】
「ジエン」エラストマー又はゴムという用語は、公知のように、少なくとも一部(即ち、ホモポリマー又はコポリマー)がジエンモノマー(共役であるか否かを問わず、2つの炭素‐炭素2重結合を備えたモノマー)から得られるエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0088】
好ましくは、ゴムシースの架橋系は、「加硫」系であり、即ち、硫黄(又は硫黄供与体)及び第一加硫促進剤を主成分とする系である。種々の公知の第二促進剤又は加硫活性剤をこの主成分としての加硫系に添加するのが良い。
【0089】
本発明によるシースのゴム配合物は、上記架橋系に加え、タイヤ用ゴム配合物に使用できる全ての通常成分、例えば、カーボンブラックを主成分とする補強充填剤及び/又は無機補強充填剤、例えば、シリカ、アンチエージング剤(例えば老化防止剤)、エキステンダー油、可塑剤又は未硬化状態の配合物を加工しやすくする加工助剤、メチレン受容体、メチレン供与体、樹脂、ビスマレイミド、「RFS」(レゾルシノール/ホルムアルデヒド/シリカ)形式の公知の接着促進剤系又は金属塩、特にコバルト塩を含む。
【0090】
好ましくは、ゴムシースの配合物は、本発明のコードが補強用のものである場合のゴムマトリックスに使用される配合物と同一のものが選択される。かくして、シース及びゴムマトリックスのそれぞれの材料間に潜在的不適合性の問題は生じない。
【0091】
本発明の変形形態によれば、少なくとも1つの実働クラウン層の上述のコードは、[L+M]構造の層を備えたコードであり、このコードは、ピッチ
1で螺旋の状態に一緒に巻かれた直径d
1のL(Lは、1〜4である)本の細線から成る第1の層C1をピッチp
2で螺旋の状態に一緒に巻かれた直径d
2のM(Mは、3〜12である)本の細線から成る外側層C2によって包囲したものであり、少なくとも1つのジエンエラストマーを主成分とする架橋不能であり、架橋可能であり或いは架橋済みであるゴム配合物によって構成されたシースが、構造中、第1の層C1を覆っている。
【0092】
好ましくは、第1の層又は内側層(C1)の細線の直径は、0.10〜0.5mmであり、外側層(C2)の細線の直径は、0.10〜0.5mmである。
【0093】
より好ましくは、外側層(C2)の細線の螺旋巻きピッチは、8〜25mmである。
【0094】
本発明の目的上、螺旋ピッチは、コードの軸線に平行に測定された長さを表し、その後、このピッチの細線は、コードの軸線回りに丸一回転し、かくして、軸線がこの軸線に垂直であり且つコードの構成層の細線のピッチに等しい長さだけ隔てられた2つの平面によって区分された場合、これら2つの平面内に位置するこの細線の軸線は、問題の細線の層に相当する2つの円上に同一の位置を占める。
【0095】
有利には、コードは、次の特性のうちの1つ、より好ましくは全てを有する。
‐層C2は飽和層であり、このことは、この層中には、少なくとも直径d
2の第(N+1)番目の細線をこれに追加するには十分なスペースが存在せず、この場合、Nは、層C1の回りに層として巻回できる細線の最大本数を表す。
‐ゴムシースは更に、内側層C1を覆うと共に/或いは外側層C2の隣り合う細線を互いに隔てる。
‐ゴムシースは、事実上、このゴムシースがこの層C2の隣り合う細線を互いに隔てるよう層C2の各細線の半径方向内方の周囲半分を覆う。
【0096】
好ましくは、ゴムシースの平均厚さは、0.010mm〜0.040mmである。
【0097】
一般に、本発明のコードは、任意の種類の金属ワイヤ、特にスチール(鋼)ワイヤ、例えば炭素鋼ワイヤ及び/又はステンレス鋼ワイヤを用いて製作可能である。炭素鋼を使用することが好ましいが、当然のことながら、他のスチール又は他の合金を使用することが可能である。
【0098】
炭素鋼を用いる場合、その炭素含有量(スチールの重量%)は、好ましくは、0.1%〜1.2%、特に0.4%〜1.0%であり、これら含有量は、タイヤに必要な機械的性質とワイヤの加工性との良好な妥協点となっている。注目されるべきこととして、0.5%〜0.6%の炭素含有量は、最終的に、安価である。というのは、これらは、引き抜き加工が容易だからである。また、本発明の別の有利な実施形態では、標的用途に応じて、特にコストが安く且つ引き抜き加工性が非常に良好なので、低炭素含有量、例えば0.2%〜0.5%の炭素含有量のスチールを用いることができる。
【0099】
本発明のコードは、当業者に知られている種々の技術によって、例えば2つのステップで、即ち、まず最初に、押出ヘッドを用いてコア又は層C1を外装し、第2ステップにおいて、次にこのようにして外装された層C1周りにM本の残りのワイヤ(層C2)をケーブリング又はツイスティングする最終作業によって得ることができる。中間巻回作業及び巻出し作業中にゴムのシースにより引き起こされる未硬化状態におけるくっつきの問題は、例えば差し込みプラスチックフィルムを用いることによって当業者には知られている仕方で解決可能である。
【0100】
少なくとも1つの実働クラウン層のかかるコードは、例えば、国際公開第2006/013077号パンフレット及び同第2009/083212号パンフレットに記載されたコードから選択される。
【0101】
本発明の有利な変形実施形態によれば、円周方向補強要素の層は、0.5×Sを超える軸方向幅を備える。
【0102】
Sは、タイヤがその常用リムに取り付けられてその推奨圧力までインフレートされたときのタイヤの軸方向最大幅である。
【0103】
補強要素の層の軸方向幅は、タイヤの横断面について測定され、かくして、タイヤは、非インフレート状態にある。
【0104】
本発明の好ましい具体化例によれば、少なくとも2つの実働クラウン層が互いに異なる軸方向幅を備える場合、軸方向に幅の最も広い実働クラウン層の軸方向幅と軸方向に最も幅の狭い実働クラウン層の軸方向幅の差は、10〜30mmである。
【0105】
本発明の好ましい実施形態では、円周方向補強要素の層は、2つの実働クラウン層相互間に半径方向に配置される。
【0106】
本発明の実施形態では、円周方向補強要素の層は、実働層の半径方向外側に配置された類似の層よりもカーカス補強材の補強要素の圧縮を大きく制限することができる。円周方向補強要素の層は、好ましくは、かかる円周方向補強要素に加わる応力を制限すると共にこれらの過度の疲労を阻止するよう少なくとも1つの実働層によってカーカス補強材から半径方向に隔てられる。
【0107】
また有利には、本発明によれば、円周方向補強要素の層に半径方向に隣接して位置する実働クラウン層の軸方向幅は、円周方向補強要素の層の軸方向幅よりも大きく、好ましくは、円周方向補強要素の層に隣接して位置する実働クラウン層は、赤道面の各側に位置し、その後、少なくとも2つの実働層に共通の幅の残部にわたってゴム混合物の層Cによって結合解除されるために、円周方向補強要素の層のすぐ隣りの軸方向延長部において軸方向幅にわたって互いに結合されている。
【0108】
円周方向補強要素の層に隣接して位置する実働クラウン層相互間におけるかかる結合部の存在により、この結合部の最も近くに位置する軸方向最も外側の円周方向要素に作用する引張り応力を減少させることができる。
【0109】
本発明の有利な一実施形態によれば、円周方向補強要素の少なくとも1つの層の補強要素は、10〜120GPaの0.7%伸び率における割線モジュラス及び150GPa未満の最大接線モジュラスを示す金属補強要素である。
【0110】
好ましい実施形態によれば、補強要素の0.7%伸び率における割線モジュラスは、100GPa未満であり且つ20GPaを超え、好ましくは30〜90GPa、より好ましくは80GPa未満である。
【0111】
この場合も又、好ましくは、補強要素の最大接線モジュラスは、130GPa未満、好ましくは120GPa未満である。
【0112】
上述のモジュラスは、20MPaの予荷重を補強要素の金属の断面に加えた状態で求められた引張り応力‐伸び率曲線に基づいて測定され、引張り応力は、張力の測定値を補強要素の金属の断面積で除算して得られた値に対応している。
【0113】
同一の補強要素に関するモジュラスは、10MPaの予荷重を補強要素の金属の断面全体に加えた状態で求められた引張り応力‐伸び率曲線に基づいて測定され、引張り応力は、張力の測定値を補強要素の全断面積で除算して得られた値に対応している。補強要素の全断面は、金属及びゴムで作られた複合要素の断面であり、ゴムは、特に、タイヤ硬化段階の際、補強要素に侵入する。
【0114】
補強要素の断面全体に関するこの構成によれば、円周方向補強要素の少なくとも1つの層の軸方向外側部分及び中央部分の補強要素は、0.7%伸び率における割線モジュラスが5〜60GPaであり、最大接線モジュラスが75GPa未満の金属補強要素である。
【0115】
好ましい実施形態によれば、0.7%伸び率における補強要素の割線モジュラスは、50GPa未満であり且つ10GPaを超え、好ましくは15〜45GPaであり、より好ましくは40GPa未満である。
【0116】
また、好ましくは、補強要素の最大接線モジュラスは、65GPa未満であり、より好ましくは60GPa未満である。
【0117】
好ましい実施形態によれば、円周方向補強要素の少なくとも1つの層の2つの軸方向外側部分の補強要素は、低い伸び率については緩やかな勾配を有し、高い伸び率については実質的に一定で且つ急な勾配を有する引張り応力‐歪曲線を有する金属補強要素である。追加のプライのかかる補強要素は、「バイモジュラス(bi-modulus)」要素と通称されている。
【0118】
本発明の好ましい実施形態によれば、実質的に一定で且つ急な勾配は、0.1%〜0.5%の相対伸び率から現われる。
【0119】
補強要素の種々の上記特性は、タイヤから取り出された補強要素について測定される。
【0120】
本発明の円周方向補強要素の少なくとも1つの層を作るのに特に適した補強要素は、例えば規格21.23の集成体であり、その構成は3×(0.26+6×0.23)4.4/6.6SSであり、この撚りコードは、規格3×(1+6)の21本の単位細線で構成され、3本の撚り合わせストランドは各々、7本の細線で構成され、1本の細線は、直径が26/100mmに等しい中央コアを形成し、6本の巻き細線の直径は、23/100mmに等しい。かかるコードは、20MPaの予荷重を補強要素の金属の断面に加えた状態で求められた引張り応力‐伸び率曲線に基づいて測定して、0.7%伸び率における割線モジュラスが45GPaに等しく、最大接線モジュラスが98GPaに等しく、なお、引張り応力は、張力の測定値を補強要素の金属の全断面積で十算して得られた値に対応している。10MPaの予荷重を補強要素の金属の断面全体に加えた状態で求められた引張り応力‐伸び率曲線に基づいて測定して、規格21.23のこのコードは、23GPaに等しい0.7%伸び率における割線モジュラス及び49GPaに等しい最大接線モジュラスを有する。
【0121】
同様に、補強要素の別の例は、例えば規格21.28の集成体であり、その構成は3×(0.32+6×0.28)6.2/9.3SSである。このコードは、両方とも20MPaの予荷重を補強要素の金属の断面に加えた状態で求められた引張り応力‐伸び率曲線に基づいて測定して、0.7%伸び率における割線モジュラスが56GPaに等しく、最大接線モジュラスが102GPaに等しく、なお、引張り応力は、張力の測定値を補強要素の金属の断面積で除算して得られた値に対応している。10MPaの予荷重を補強要素の金属の断面全体に加えた状態で求められた引張り応力‐伸び率の曲線に基づいて測定して、規格21.28のこのコードは、27GPaに等しい0.7%伸び率における割線モジュラス及び49GPaに等しい最大接線モジュラスを有する。
【0122】
かかる補強要素を円周方向補強要素の少なくとも1つの層中に用いることにより、特に、従来の製造方法における付形又は膨らませ(シェーピング)及び硬化ステップ後であっても、満足の行く層の剛性を維持することができる。
【0123】
本発明の第2の実施形態によれば、円周方向補強要素は、最も短い層の周長よりも極めて短いが、周長の0.1倍を超える長さの部分を形成するよう切断された金属補強要素で形成されるのが良く、部分相互間の切れ目は、互いに軸方向にオフセットしている。また、好ましくは、追加の層の単位幅当たりの引張り弾性率は、同一条件下で測定した最も伸長性の高い実働クラウン層の引張り弾性率よりも低い。かかる実施形態により、簡単な仕方で、円周方向補強要素の層に合わせるために容易に調節できる(同一の列の部分相互間の間隔を選択することによって)が、あらゆる場合において、連続である同一の金属要素で構成された層のモジュラスよりも低いモジュラスを与えることができ、追加の層のモジュラスは、タイヤから取られた切断要素の加硫済み層について測定される。
【0124】
本発明の第3の実施形態によれば、円周方向補強要素は、波形金属補強要素であり、波の振幅と波長の比a/λは、せいぜい0.09に等しい。好ましくは、追加の層の単位幅当たりの引張り弾性率は、同一条件下で測定した最も伸長性の高い実働クラウン層の引張り弾性率よりも低い。
【0125】
金属要素は、好ましくは、スチールコードである。
【0126】
本発明の好ましい実施形態によれば、実働クラウン層の補強要素は、非伸長性である。
【0127】
また、有利には、本発明によれば、軸方向最も外側の円周方向要素に作用する引張り応力を減少するため、実働クラウン層の補強要素と円周方向とのなす角度は、30°未満、好ましくは25°未満である。
【0128】
本発明の好ましい一実施形態では、クラウン補強材の半径方向外側には、「弾性」補強要素の少なくとも1つの追加の層(これは、保護層と呼ばれている)が設けられ、弾性補強要素は、円周方向と10°〜45°の角度をなすと共に保護プライに半径方向に隣接して位置する実働プライの非伸長性要素のなす角度と同一の方向に差し向けられている。
【0129】
保護層は、幅の最も狭い実働層の軸方向幅よりも小さな軸方向幅を有するのが良い。かかる保護層は、幅の最も狭い実働層の軸方向幅よりも大きな軸方向幅を有しても良く、その結果、保護層は、幅の最も狭い実働層の縁とオーバーラップし、この保護層が、幅の最も狭い半径方向最も内側の層である場合、保護層は、追加の補強材の軸方向連続部として、軸方向幅にわたって幅の最も広い実働クラウン層に結合され、その後、厚さが少なくとも2mmの異形要素によりこの幅の最も広い実働層から軸方向外部が分離されるようになる。弾性補強要素で形成された保護層は、上述の場合、一方において、2つの実働層の縁を互いに分離する異形要素の厚さよりもかなり小さい厚さの異形要素により上述の幅の最も狭い実働層の縁部から潜在的に分離される場合があり、他方、幅の最も広いクラウン層の軸方向幅よりも小さな又は大きな軸方向幅を有する。
【0130】
本発明の上述の実施形態のうちのいずれか1つによれば、カーカス補強材の半径方向内側には、カーカス補強材とこのカーカス補強材の最も近くに位置する半径方向内側実働層との間で、半径方向に最も近いカーカス補強層の補強要素相互間のなす角度と同一の方向で円周方向と60°よりも大きな角度をなすスチールで作られた金属補強要素の三角形構造形成層が更に設けられるのが良い。
【0131】
かくして、変形実施形態として説明したばかりの本発明のタイヤは、従来型タイヤと比較して転がり抵抗の構造を示す一方で、耐久性及び耐摩耗性の面で同等な性能を保つ。
【0132】
本発明のこの有利な細部及び特徴は、
図1〜
図3を参照して行われる本発明の具体的な実施例の説明から以下において明らかになろう。