(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被測定流体が流れる配管に中心軸と交差する方向に挿入される外側管と、前記外側管の先端部に前記中心軸と平行に設けられて連通する管状のキールと、これら外側管とキールとに挿入された熱電対およびその配線と、前記配線と前記外側管との間に設けられて前記配線を前記外側管の内部の所定位置で支持する内側管と、前記外側管の一端が固定されるとともに、平面状に延在するフランジと、を有する温度測定装置の製造方法であって、
前記内側管と前記配線とを互いに固定するろう付け部を設けるろう付け工程と、
前記ろう付け部とは前記中心軸と交差する方向において異なる位置で、前記外側管と前記内側管とを互いに固定する溶接部を設ける溶接工程と、
を含む温度測定装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の温度計測器は、保持部に伝播した温度を間接的に測定することによって主温度センサの測定値の補正を行って測定を行うため、ガスの温度変化に対して十分な応答性が得られない可能性がある。
また、受感部がガスに対して露出しているため、高圧下での使用には制限が伴う可能性もある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、流体の温度変化に対する十分な応答性を有するとともに、高圧下での測定を行うことができるような温度測定装置、及び温度測定装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の温度測定装置、及び温度測定装置の製造方法は、以下の手段を提案している。
本発明の一態様に係る温度測定装置は、被測定流体が流れる配管に該配管の中心軸と交差する方向に挿入される外側管と、外側管の先端部に中心軸と平行に設けられて連通するとともに、該配管の内部に向かって開口する管状のキールと、これら外側管とキールとに挿入された熱電対およびその配線と、配線と外側管との間に設けられて配線を外側管の内部の所定位置で支持する内側管と、外側管の先端部とは反対側の基端部が固定されるとともに、外側管の径方向を含む平面状に延在するフランジ部と、外側管と内側管とを互いに固定する溶接部と、内側管と配線とを互いに固定するろう付け部と、を有し、溶接部とろう付け部とは中心軸と交差する方向においてそれぞれ異なる位置に設けられている。
【0008】
この構成によれば、熱電対が流体に対して露出しながらも、ろう付け部によって、内側管と配線との間の間隙が閉塞される。したがって、高圧下の環境であっても、該間隙から温度測定装置の内部に流体が流入することを抑制することができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る温度測定装置では、配線は内側管に加締められて固定されていてもよい。
【0010】
この構成によれば、加締めによって熱電対の配線の相対位置を決定することができる。ここで、温度測定装置の先端部に位置するキールを設けるに当たっては、外側管に内側管、及び配線(熱電対)を挿通したのち、例えば、該外側管と内側管とに対して同時に曲げ加工を施す工程を経る。加締めによる位置決めを行わない場合、曲げ加工に伴って内側管に対する配線の相対位置がずれる可能性がある。しかしながら、内側管の加締めによって配線の位置を決定すれば、そのようなずれを抑制することができる。したがって、前述のろう付け部を設けるに際して、配線40が長さ方向にずれることで生じる位置ずれが抑制される。
【0011】
さらに、本発明の一態様に係る温度測定装置では、フランジ部と配管とが互いに溶接されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、内部に流体が流通する配管に対して、フランジ部が溶接固定されているため、たとえ高圧の流体が配管に流通する場合であっても、十分な耐圧性能を得ることができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る温度測定装置では、外側管は、長さ方向に複数に分割されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、外側管内部の長さ方向における中央部付近に上述の溶接部を設ける場合であっても、所望の外側管長さに比して、単位長さ当たりの外側管長さを短くすることができる。したがって、工作機械や加工治具等が容易に外側管の該中央部付近に到達しやすく、外側管に対して内側管を溶接する作業が容易になる。
加えて、長さ方向における単位長さごとに分割された複数の外側管を互いに接続することで、所望の長さの外側管を容易に得ることができる。ここで、外側管のような筒状の部材を流体の流れに対して交差する方向に配置した場合、外側管の交流にはカルマン渦が形成されることが知られている。カルマン渦は、外側管の長さ寸法によっては共振現象を誘発する要因となるが、上述のように外側管の長さ寸法を調節することで所望の長さを得ることが可能である場合、このような共振現象を回避できる長さを有する外側管を容易に得ることができる。
【0015】
さらに、本発明の他の態様に係る回転機械は、内部に被測定流体が流通する回転機械であって、上述の各態様に係る温度測定装置を備える。
【0016】
この構成によれば、回転機械の内部を流通する高圧の被測定流体に対しても、高い応答性を伴って温度測定を行うことができる。
【0017】
また、本発明の他の態様に係るガスタービンは、上述の態様に係る回転機械を備える。
【0018】
この構成によれば、ガスタービンの内部を流通する高圧の流体に対しても、高い応答性を伴って温度測定を行うことができる。
【0019】
さらに、本発明の一態様に係る温度測定装置の製造方法では、被測定流体が流れる配管に中心軸と交差する方向に挿入される外側管と、外側管の先端部に該配管の中心軸と平行に設けられて連通するとともに、該配管の内部に向かって開口する管状のキールと、これら外側管とキールとに挿入された熱電対およびその配線と、配線と外側管との間に設けられて配線を外側管の内部の所定位置で支持する内側管と、外側管の一端が固定されるとともに、平面状に延在するフランジ部と、を有する温度測定装置の製造方法であって
、前記内側管と前記配線とを互いに固定するろう付け部を設けるろう付け工程と、前記ろう付け部とは
前記中心軸と交差する方向において異なる位置で、前記外側管と前記内側管とを互いに固定する溶接部を設ける溶接工程と、を含む。
【0020】
この方法によれば、高圧下の環境であっても、該間隙から温度測定装置の内部に流体が流入することを抑制することができるような温度測定装置を得ることができる。
【0021】
さらに、本発明の一態様に係る温度測定装置の製造方法では、配線を内側管の内部に加締めることで、配線の内側管に対する相対位置を決定する位置決め工程を含んでいてもよい。
【0022】
この方法によれば、キールを設けるための、外側管、内側管に対する曲げ加工時に生じる内側管と配線とのずれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の温度測定装置によれば、高圧の流体に対しても十分な応答性を得ることができる。また、本発明の温度測定装置の製造方法によれば、高圧の流体に対しても十分な応答性を得ることができる温度測定装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る温度測定装置1は、例えば
図1に示す遠心圧縮機200(回転機械)に適用される。遠心圧縮機200は、ケーシング2と、ケーシング2を貫通するように配置された軸線O1を中心に延在する回転軸3と、キーを介して回転軸3に一体に回転可能に固定された複数のインペラ5と、を主に備えている。
【0026】
ケーシング2は、略円柱状の外郭をなすように形成されたもので、中心を貫くようにして回転軸3を配置している。ケーシング2のうち回転軸3の軸線O1の延びる方向である軸線O1方向の両端には、ジャーナル軸受61が設けられ、一端には、スラスト軸受62が設けられている。
【0027】
ケーシング2は、軸線O1方向の一方側(
図1における紙面左側)の端部には、ガス等の流体Fを外部から流入させる吸込口63が設けられ、他方側(
図1における紙面右側)の端部には、流体Fを外部に吐出する吐出口64が設けられている。ケーシング2は、吸込口63及び吐出口64にそれぞれ連通して、縮径及び拡径を繰り返す内部空間が設けられている。この内部空間にはインペラ5が収容される。そして、インペラ5を収容した際にインペラ5同士の間となる位置にインペラ5を流通する流体Fを上流側から下流側に流通させるケーシング流路4が形成されており、吸込口63と吐出口64とはインペラ5及びケーシング流路4を介して連通している。
【0028】
回転軸3は、ケーシング2に収容されたインペラ5が外嵌されて、これらと共に軸線O1を中心に回転する。また回転軸3はジャーナル軸受61及びスラスト軸受62によってケーシング2に対して回転自在に支持されており、また図示しない原動機によって回転駆動される。
【0029】
さらに、遠心圧縮機200は、上述のケーシング流路4上に温度測定装置1を備えている。この温度測定装置1は、ケーシング2の外表面からケーシング流路4の内部に向けて挿通されている。
【0030】
以下、本発明に係る温度測定装置1の実施形態について
図3、
図4を参照して説明する。
【0031】
温度測定装置1は、例えば上述の遠心圧縮機200を流通する流体Fの温度を測定するためのものである。なお、ここでは上述のケーシング流路4を含む流体流路の総称として、配管100と呼ぶことにする。
配管100は外形視で略円筒状に形成された公知の部材であり、その内部には流体Fが流通するための内部空間Vが形成されている。
図3中の矢印で示すように、流体Fは後述のキール21に設けられた開口部32と対向する方向から、配管の中心軸Oに対して概ね平行な方向に沿って流通する。本実施形態では、配管100の内部には比較的高圧に圧縮された流体Fが流通することを想定している。一方で、配管100の外側には大気が存在している。また、配管100には、配管100の内外を貫通するとともに、温度測定装置1を挿通するための挿通孔101が設けられている。
【0032】
温度測定装置1は、配管100の内部から外部に向かって延びる管状の支持管10と、基端部が支持管10の内部に挿通されるとともに先端部が支持管10から内部空間Vに対して露出する外側管20と、外側管20の内部に配される内側管30と、内側管30の内部に配される熱電対41及びその配線40と、を備えている。さらに、外側管20の先端部、すなわち配管100の内部空間V側に位置する端部には、外側管20と交差(本実施形態では略直角に交差)する方向に延在するとともに、配管100の中心軸Oと平行な方向に設けられたキール21を備えている。加えて、支持管10における配管100の外側に位置する一端側には、フランジ80が設けられている。
【0033】
支持管10は、外形視で円筒状の部材であり、耐熱性を有する金属によって形成される。ここで言う耐熱性とは、被測定流体Fに長期間曝露しても溶融劣化等を生じない程度の耐熱性能を指す。
支持管10の一端には、径方向の寸法が他の部分に比して拡大するように設定された拡径部11が設けられている。拡径部11の寸法は、配管100に設けられた前述の挿通孔101の開孔径よりも大きく設定されている。
【0034】
外側管20は、支持管10の内部に挿通された、内部が中空の円筒状部材である。外側管20は支持管10に対して、任意の箇所を溶接することで互いに分離不能に固定されている。なお、外側管20を支持管10に対して固定する方法としては、上述の溶接の他、圧入を用いてもよい。すなわち、支持管10の内径と外側管20の外径の各寸法を略同一に設定し、外側管20を支持管10の内部に圧入する等の方法が考えられる。
【0035】
外側管20の先端部には、上述のように配管100の中心軸と平行な方向に向かって延在するキール21が設けられている。キール21は、外側管20を形成する円筒状部材の先端部側の箇所を略直角に曲げる曲げ加工を施すことで設けられる。この直角をなす部分は屈曲部23とされている。キール21の一端、すなわち外側管20が位置する側と反対側の端部は開口して、開口部32とされている。開口部32の詳細な形状については後述する。
また、本実施形態においては、キール21と外側管20とは一の部材によって一体に形成されている。一方で、キール21を別の部材とし、これを溶接等の方法によって外側管20に固定するものとしてもよい。
また、外側管20は、支持管10と同様に耐熱性を有する金属によって形成される。
【0036】
内側管30は、外側管20の内部に挿通された部材であって、外側管20と同様に、内部が中空の円筒状部材である。内側管30の径は外側管20の径よりも小さく設定されている。さらに、内側管30は外側管20よりも長さ寸法が小さい。言い換えると、内側管30は
図3、又は
図4に示すように外側管20の長さ方向における一部のみに延在するように配置される部材である。また、本実施形態では、内側管30は外側管20の内部に、外側管の長さ方向で互いに離間して複数設けられている。
また、内側管30は外側管20に対して、溶接部51に溶接を施すことによって所定の位置で互いに分離不能に固定される。本実施形態において、溶接部51は
図3、
図4に示すように、外側管20の長さ方向において支持管10と重複せず、キール21に及ばない領域に設けられる。
また、上述の開口部32の詳細な形状は下記の通りである。すなわち、
図4に示すように、キール21は、屈曲部23から開口部32に向かうにしたがって、次第に拡径して漏斗状をなすように形成されている。さらに、該拡径する部分とキール21の直管部分とがなす角度を角度θとした場合、角度θの値は約20〜30°の範囲に含まれるように設定されている。これにより、所定量以上の流体Fが開口部32から流入する流体Fの量を制限することができ、温度測定装置1が規定以上に高感度となることを抑制することができる。
また、後述のろう付け部52とは外側管20の長さ方向において異なる位置に設けられる。さらに、溶接部51は、支持管10と外側管20との間に存在する径方向の間隙を閉塞するように設けられる。すなわち、溶接部51は外形視で円環状を呈している。
【0037】
溶接の方法として、種々の手段がこれまでに提案されているが、本実施形態においては、様々な性情の金属に対して適用可能なTIG(Tungsten Inert Gas)溶接の採用が好適である。
【0038】
さらに、キール21上の所定の位置には、前述の外側管20の外部と内側管30の内部とを径方向に連通する複数の脱気孔22が設けられている。このように脱気孔22を設けることにより、被測定流体がキール21の内部で滞留することを抑制することができる。
【0039】
熱電対41及びその配線40は、異なる2種の金属における温度差によって生じる熱起電力によって温度を測定する温度測定装置である。
熱電対41は、前述のキール21に収納されて、その先端が配管100の内部空間Vに対して露出している。また、熱電対41の配線40は、その一部が内側管30の内部を通るとともに、延在する長さ全体にわたって外側管に挿通されている。さらに、配線40は内側管30に対して、ろう付け部52によってろう付けされることで、互いに脱落不能に固定される。
【0040】
ろう付け部52は、上述の溶接部51とは、内側管30(外側管20)の長さ方向において互いに異なる位置に設けられる。また、ろう付け部52は、内側管30と配線40との間に存在する径方向の間隙を閉塞するように設けられる。すなわち、ろう付け部52は外形視で円環状を呈している。
なお、熱電対41が位置する側とは反対側の配線40の端部には、不図示の表示装置等が接続される。
【0041】
フランジ80は、支持管10の径方向外側を囲むようにして略平面状に延在する、外形視厚肉円盤状の部材である。より詳細には、フランジ80は配管100の中心軸Oと直交する方向から見た平面視で円形を成すとともに、断面円形の配管100の外周形状に沿うように湾曲した形状を成している。すなわち、配管100の中心軸Oと直交する方向から見た断面の形状が概略円弧状となるように湾曲している。また、フランジ80の厚さ方向の2面を形成する面のうち、配管100に当接する側の面(以下、下方向とする)には径が段差状に縮小する縮径部82が設けられている。さらに、縮径部82径方向内側には、平面視円形の凹溝が設けられており、該凹溝にはOリング81が挿入される。
【0042】
また、
図3に示すように、フランジ80は支持管10の外周面に対して溶接によって互いに分離不能に固定されている。
【0043】
さらに、フランジ80の縮径部82の下側の面には固定部Wが設けられている。固定部Wは、溶接部51と同様にTIG溶接等のビードによって構成されており、該固定部Wによってフランジ80は配管100の外周面に対して固定される。すなわち、温度測定装置1はフランジ80及び固定部Wを介して配管100に固定されている。
【0044】
次に、温度測定装置1の製造方法について説明する。
まず、所定の長さに形成された内側管30の内部に熱電対41、及び配線40を挿通する。本実施形態では2つの内側管30が用いられる。次に、内側管30に配線40が挿通された状態で、内側管30の外方から径方向内側に向けて内側管30を加締める(加締め部)。この加締め部によって配線40は内側管30に対する相対位置が位置決めされる。すなわち、後続のろう付け工程において、配線40が内側管30の長さ方向にずれることで生じる位置ずれが抑制される(位置決め工程)。
【0045】
続いて、内側管30の内部に配線40が挿通された状態で、上述の加締め部とは長さ方向で異なる位置で、配線40と内側管30の内周との間の間隙を閉塞するようにろう付けして、ろう付け部52を設ける(ろう付け工程)。このとき、配線40は内側管30の軸線に概ね沿う状態でろう付けされることが望ましい。
【0046】
さらに、内部に配線40がろう付けされた状態の内側管30を、外側管20の内部に挿通し、内側管30を外側管20に対して相対移動不能に固定する溶接工程を実施する。溶接工程では、内側管30と外側管20の内周との間の間隙を閉塞するように溶接して溶接部51を設ける(溶接工程)。また、溶接部51は上述のろう付け部52とは長さ方向で異なる位置に設けられる。さらに、このとき、ろう付け部52と同様に、内側管30は外側管20の軸線に概ね沿う状態で溶接されることが望ましい。
【0047】
次に、上述のように内部に内側管30等が挿通された外側管20を形成する円筒状部材
の先端部を、曲げ加工することによって略直角に折り曲げる。本工程により前述のキール21が構成される。
【0048】
続いて、上述のようにキール21が構成されるとともに、内部に内側管30等が挿通された状態の外側管20を、支持管10の内部に挿通する。さらに、支持管10に対して外側管20を、溶接によって固定する。なお、該固定手段は溶接に限らず、圧入等によってもよい。
【0049】
続けて、支持管10の外周で、かつ上述の拡径部にフランジ80を溶接固定する。なお、フランジ80の凹溝には予めOリング81が挿入されている。以上により、温度測定装置1の製造が完了する。
【0050】
次に、温度測定装置1の取扱方法、及び作用を説明する。
まず、上述の製造方法によって製造された温度測定装置1を、キール21が配管100の内部に向かうようにして、配管100に設けられた挿通孔に挿入する。ここで、温度測定装置1は、支持管10に設けられた拡径部と、フランジ80の縮径部82によって相対移動不能に位置決めされる。続いて、フランジ80の縮径部82と配管100の外表面が当接する部位を溶接することによって固定部Wを設ける。これにより、温度測定装置1は配管100から脱落不能に支持固定される。以後、配管100に接続された機器の運転休止の状態を問わず、常態的に温度測定装置1は配管100に固定された状態となる。その後、配管100を流通する被測定流体Fの温度を測定する。
【0051】
被測定流体Fの温度を測定するに際しては、
図4に示すように、内側管30と配線40との間の間隙がろう付け部52によって閉塞されているため、被測定流体Fがろう付け部52よりも支持管10側、すなわち温度測定装置1の内部に漏洩することがない。ここで、ろう付け部52を設けない場合は、内側管30と配線40との間の間隙から高圧の被測定流体が流入し、温度測定装置1を損傷する可能性がある。
【0052】
しかしながら、本実施形態ではろう付け部52が設けられていることにより、そのような可能性が低減されるとともに、熱電対41が被測定流体に対して露出した状態で、温度測定を行うことができる。これにより、被測定流体が高圧である場合でも、十分な応答性を維持しながら温度測定を行うことができる。
【0053】
さらに、このろう付け部52は、外側管20と内側管30とを互いに固定するための溶接部51とは、外側管20の配管100の中心軸と交差する方向、すなわち外側管20(内側管30)の長さ方向で異なる位置に設けられている。したがって、溶接部51を設けるに際して、溶接による高熱が伝搬してろう付け部52を溶融してしまう可能性が低減される。
【0054】
加えて、本実施形態に係る温度測定装置1では、配線40が内側管30に対して加締められることによって固定されている。したがって、前述のろう付け部52を設けるに際して、配線40が長さ方向にずれることで生じる配線40の位置ずれが抑制される。この構成によれば、加締めによって熱電対41及びその配線40の相対位置を決定することができる。ここで、温度測定装置1の先端部に位置するキール21を設けるに当たっては、外側管20に内側管30、及び配線40(熱電対)を挿通したのち、例えば、該外側管20と内側管30とに対して同時に曲げ加工を施す工程を経る。加締めによる位置決めを行わない場合、曲げ加工に伴って内側管30に対する配線40の相対位置がずれる可能性がある。しかしながら、内側管30の加締めによって配線40の位置を決定すれば、そのようなずれを抑制することができる。
【0055】
また、フランジ80と配管100とは互いに溶接されて固定されている。したがって、他の固定手段(例えば、ねじ等)によって固定されている場合に比して、より強固に温度測定装置1を配管100に固定することができる。これにより、被測定流体が高圧である場合でも、温度測定装置1を適用することができる。
【0056】
さらに、本実施形態に係る温度測定装置1の製造方法によれば、上述のような構成を備えた温度測定装置1を製造することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0058】
なお、上述の実施形態では、外側管20は、長さ方向に複数(本実施形態では2つ)に分割されるとともに、継ぎ部33において溶接によって互いに接続される構成としてもよい。この構成によれば、例えば外側管の長さ方向における中央部に上述の溶接部を設ける場合であっても、工作機械や加工治具等が容易に該中央部に到達しやすく、外側管に対して内側管を溶接することが容易となる。
加えて、長さ方向における単位長さごとに分割された複数の外側管を互いに接続することで、所望の長さの外側管を容易に得ることができる。ここで、外側管のような筒状の部材を流体の流れに対して交差する方向に配置した場合、外側管の交流にはカルマン渦が形成されることが知られている。カルマン渦は、外側管の長さ寸法によっては共振現象を誘発する要因となるが、上述のように外側管の長さ寸法を容易に調節することが可能である場合、このような共振現象を回避できる長さを有する外側管を容易に得ることができる。
【0059】
なお、本実施形態に係る温度測定装置1が適用される対象は、上述の遠心圧縮機に限定されない。例えば、
図2に示すガスタービン300の圧縮機301に適用することも可能である。
ガスタービン300は、多量の空気を内部に取り入れて圧縮する圧縮機301と、圧縮機301にて圧縮された空気に燃料を混合して燃焼させる燃焼器302と、燃焼器302で発生させた燃焼ガスがその内部に導入されるとともに燃焼ガスの熱エネルギーを回転エネルギーに変換して回動するタービン303と、該タービン303の回動する動力の一部を圧縮機301に伝達して圧縮機301を回動させるロータ5とを有している。
【0060】
上述のような構成のガスタービン300において、タービン303は、ロータ305に設けられた動翼307に燃焼ガスを吹き付けることで燃焼ガスの熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生する。タービン303には、ロータ305側の複数の動翼307の他に、タービン303のケーシング308側に複数の静翼306が設けられるとともに、これら動翼307と静翼306とが、ロータ305の軸方向に交互に配列されている。
動翼307はロータ305の軸方向に流れる燃焼ガスの圧力を受けて軸線回りにロータ305を回転させ、ロータ305に与えられた回転エネルギーは軸端から取り出されて利用される。
【0061】
圧縮機301はロータ305にてタービン303と同軸で接続されており、タービン303の回転を利用して外気を圧縮して圧縮空気を燃焼器302に供給する。ここで、圧縮機301と燃焼器302とは、互いにケーシング流路309aを介して接続されており、圧縮空気はこのケーシング流路309aの内部を流通する。
また、タービン303と同様に、圧縮機301においてもロータ305に複数の動翼307と、圧縮機301のケーシング308側に複数の静翼306が設けられており、動翼307と静翼306とがロータ305の軸方向に交互に配列されている。
【0062】
温度測定装置1をガスタービン300に適用するに際しては、例えば圧縮機301におけるケーシング流路309aに温度測定装置1が設けられることが望ましい。しかしながら、温度測定装置1を設ける位置や個数は本実施形態によっては限定されず、設計に応じて任意に決定されてよい。
さらに、温度測定装置1が適用される対象は圧縮機301に限らず、タービン303に設けられて、内部の流体温度を測定する構成であってもよい。