特許第6354080号(P6354080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354080
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   B25F5/00 H
   B25F5/00 C
   B25F5/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-184777(P2014-184777)
(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公開番号】特開2016-55392(P2016-55392A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】河野 祥和
(72)【発明者】
【氏名】小泉 俊彰
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/118523(WO,A1)
【文献】 特開2009−233783(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0132079(US,A1)
【文献】 特開平03−190684(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/118475(WO,A1)
【文献】 特開2010−110881(JP,A)
【文献】 特開2016−022566(JP,A)
【文献】 特開2006−297574(JP,A)
【文献】 特開2014−054703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックを着脱可能に装着する電動工具であって、
ロータと、複数のコイルを有するステータとを有し、前記複数のコイルの励磁を切り替えることで前記ロータを回転させるモータと、
前記複数のコイルの励磁を切り替えるスイッチング素子を有し、前記モータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部を制御する制御部と、
作業者により操作され、前記電池パックから前記モータへの電力供給のオンオフを切り替える機械式接点を有する操作スイッチと、
前記操作スイッチの入力側と前記制御部との間に設けられ、前記電池パックから前記制御部への電力供給を保持する保持回路と、
前記操作スイッチの入力側と前記保持回路との間に設けられ、電池パックの装着から所定時間経過後に前記保持回路の電源電圧の立ち上げを完了する遅延回路と、
前記操作スイッチの出力側と前記保持回路との間に設けられ、電池パックが装着され且つ前記操作スイッチがオンされると、前記保持回路に起動の契機となる信号を一時的に供給する起動回路と、を備え、電動工具。
【請求項2】
前記操作スイッチは前記電池パックと前記モータとの放電経路に設けられ、前記操作スイッチがオフの場合に、前記電池パックから前記モータ駆動部及び前記制御部への電力供給を遮断するように構成した、請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記操作スイッチは、前記制御部及び前記駆動部よりも前記電池パック側に設けられている、請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記遅延回路が積分回路である、請求項1からのいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項5】
前記起動回路は、前記操作スイッチの出力側と前記保持回路との間に設けられたコンデンサを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項6】
電池パックを着脱可能に装着する電動工具であって、
モータと、
前記モータを制御する制御部と、
装着した電池パックから前記モータへの電力供給のオンオフを切り替える操作スイッチと、
前記操作スイッチの入力側と前記制御部との間に設けられ、前記電池パックから前記制御部への電力供給のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の制御端子に、前記スイッチング素子がオンするために必要な電圧を印加、保持する保持回路と、
前記操作スイッチの入力側と前記保持回路との間に設けられ、電池パックの装着から所定時間経過後に前記保持回路の電源電圧の立ち上げを完了する遅延回路と、
前記操作スイッチの出力側と前記保持回路との間に設けられ、電池パックが装着され且つ前記操作スイッチがオンされると、前記保持回路に起動の契機となる信号を一時的に供給する起動回路と、を備える、電動工具。
【請求項7】
前記遅延回路が積分回路である、請求項6に記載の電動工具。
【請求項8】
前記起動回路は、前記操作スイッチの出力側と前記保持回路との間に設けられたコンデンサを含む、請求項6又は7に記載の電動工具。
【請求項9】
前記操作スイッチがオフされた後、前記保持回路を停止すると共に前記コンデンサを放電するシャットダウン回路を備える、請求項8に記載の電動工具。
【請求項10】
前記制御部は、前記操作スイッチがオフになったことを検出した後、前記保持回路を停止させるシャットダウン信号を送出する、請求項6から9のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項11】
前記スイッチング素子を経由して前記制御部に電力が供給されているときに前記保持回路の電源電圧を低下させる放電回路を備える、請求項6から10のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項12】
前記操作スイッチのオン状態を維持するオンロック機能を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックを着脱可能に装着する電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
着脱可能に装着した電池パックの電力で動作するコードレスタイプの電動工具が従来から知られている。コードレスタイプの電動工具では、使用者が操作スイッチ(例えばトリガスイッチ)をオンすると、電池パックからモータに電力が供給される。使用者が操作スイッチから手を離しても前記操作スイッチのオン状態を維持するオンロック機能を備える電動工具も知られている。下記特許文献1は、コードレスタイプの電動工具において、トリガスイッチがオンされた状態で電池パックが装着された場合に、モータに電力の供給がされて不意に動作を始めてしまうことを防止する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−62343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動工具では、電池パックを装着した状態では、同文献図1の点Aを経由して同図のFET410を常にオンさせているため、低消費電力化の点で改善の余地があった。特に、電池パックの残容量が少ない状態で長期間放置された場合には、FET410での電力消費により電池パックが過放電状態になるリスクがあった。
【0005】
また、電動工具の制御は複雑化しており、モータ等の制御にはマイコンを用いることも多くなっている。例えばステータ側に複数のコイルを有し、このコイルの励磁を切り替えることでロータを回転させるブラシレスモータや誘導モータを駆動源とする電動工具の場合、制御部にはマイコンを用いて細かなデューティ制御を行うのが一般的である。このため、上記のような技術を用いる場合に、マイコンでの電力消費が発生する構成にすると、低消費電力化に反し、また長期間放置された場合に制御部での電力消費により電池パックが過放電状態になるリスクがあった。
【0006】
また、このモータを駆動源とする場合、トリガスイッチはモータを駆動するインバータ回路の制御信号を発生させるために設けられており、電池パックとモータとの放電経路とは別の場所に配置し、機械式接点を持たないものが一般的であった。そのため、トリガスイッチの状態にかかわらず、電池パックとモータ(それを駆動するインバータ回路)は常に接続された状態となっており、モータやインバータ回路等により電池パックの電力が消費されていた。
【0007】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、電池パックの消費電力を抑える電動工具を提供することにある。また、別の目的は、操作スイッチがオンの状態で電池パックが装着された場合にモータの回転を防止する機能を備える低消費電力の電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、電池パックを着脱可能に装着する電動工具であって、
ロータと、複数のコイルを有するステータとを有し、前記複数のコイルの励磁を切り替えることで前記ロータを回転させるモータと、
前記複数のコイルの励磁を切り替えるスイッチング素子を有し、前記モータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部を制御する制御部と、
作業者により操作され、前記電池パックから前記モータへの電力供給のオンオフを切り替える機械式接点を有する操作スイッチと、
前記操作スイッチの入力側と前記制御部との間に設けられ、前記電池パックから前記制御部への電力供給を保持する保持回路と、
前記操作スイッチの入力側と前記保持回路との間に設けられ、電池パックの装着から所定時間経過後に前記保持回路の電源電圧の立ち上げを完了する遅延回路と、
前記操作スイッチの出力側と前記保持回路との間に設けられ、電池パックが装着され且つ前記操作スイッチがオンされると、前記保持回路に起動の契機となる信号を一時的に供給する起動回路と、を備え
【0009】
前記操作スイッチは前記電池パックと前記モータとの放電経路に設けられ、前記操作スイッチがオフの場合に、前記電池パックから前記モータ駆動部及び前記制御部への電力供給を遮断するように構成してもよい。
前記操作スイッチは、前記制御部及び前記駆動部よりも前記電池パック側に設けられていてもよい。
【0011】
前記遅延回路が積分回路であってもよい。
【0012】
前記起動回路は、前記操作スイッチの出力側と前記保持回路との間に設けられたコンデンサを含んでもよい。
【0013】
本発明のもう1つの態様は、電池パックを着脱可能に装着する電動工具であって、
モータと、
前記モータを制御する制御部と、
装着した電池パックから前記モータへの電力供給のオンオフを切り替える操作スイッチと、
前記操作スイッチの入力側と前記制御部との間に設けられ、前記電池パックから前記制御部への電力供給のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の制御端子に、前記スイッチング素子がオンするために必要な電圧を印加、保持する保持回路と、
前記操作スイッチの入力側と前記保持回路との間に設けられ、電池パックの装着から所定時間経過後に前記保持回路の電源電圧の立ち上げを完了する遅延回路と、
前記操作スイッチの出力側と前記保持回路との間に設けられ、電池パックが装着され且つ前記操作スイッチがオンされると、前記保持回路に起動の契機となる信号を一時的に供給する起動回路と、を備える。
【0014】
前記遅延回路が積分回路であってもよい。
【0015】
前記起動回路は、前記操作スイッチの出力側と前記保持回路との間に設けられたコンデンサを含んでもよい。
【0016】
前記操作スイッチがオフされた後、前記保持回路を停止すると共に前記コンデンサを放電するシャットダウン回路を備えてもよい。
【0017】
前記制御部は、前記操作スイッチがオフになったことを検出した後、前記保持回路を停止させるシャットダウン信号を送出してもよい。
【0018】
前記スイッチング素子を経由して前記制御部に電力が供給されているときに前記保持回路の電源電圧を低下させる放電回路を備えてもよい。
【0019】
前記操作スイッチのオン状態を維持するオンロック機能を備えてもよい。
【0020】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電池パックの消費電力を抑えた電動工具を提供することができる。また、操作スイッチがオンの状態で電池パックが装着された場合にモータの回転を防止する機能を備える低消費電力の電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る電動工具1の回路図。
図2図1に示す電動工具1における、電池パック2の装着後に操作スイッチ3をオンした場合の各部(点A〜I)の電圧(点Dのみ電流)のタイムチャート。
図3図1に示す電動工具1における、操作スイッチ3をオンした状態で電池パック2を装着した場合の各部(点A〜I)の電圧(点Dのみ電流)のタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る電動工具1の回路図である。電動工具1は、電池パック2を着脱可能に装着し、電池パック2からの電力で動作するコードレスタイプの電動工具である。電池パック2は、リチウムイオン二次電池等の電池セルを少なくとも1つ(図示の例では5つ)内蔵する。
【0025】
電動工具1は、操作スイッチ3と、モータ4と、制御部としてのマイコン5と、モータ駆動部としてのインバータ回路7と、スイッチング素子Q10と、遅延回路としての積分回路10と、保持回路20と、起動回路を構成するコンデンサC2と、シャットダウン回路を構成するスイッチング素子Q13と、放電回路30と、レギュレータ(電源回路)40と、スイッチ状態検出回路50と、を備える。
【0026】
操作スイッチ3は例えばトリガスイッチであり、使用者が操作スイッチ3を操作することで、インバータ回路7及びモータ4への電力供給のオンオフが切り替えられる。好ましくは、電動工具1はオンロック機能を備え、操作スイッチ3は、使用者が手を離してもオン状態を維持可能である。モータ4は、ここでは三相ブラシレスモータであり、インバータ回路7によって駆動される。インバータ回路7は、三相ブリッジ接続されたスイッチング素子Q1〜Q6と、ドライバIC6とを含み、制御部としてのマイコン5によって例えばPWM制御される。なお、モータ4としては、ロータとステータを有し、ステータ側に設けた複数のコイルの励磁をインバータ回路7(スイッチング素子Q1〜Q6)で切り替えることでロータを回転する構成である誘導モータであってもよい。また、整流子付きの整流子モータであってもよい。操作スイッチ3は電池パック2とモータ駆動部となるインバータ回路7とを繋ぐ電流経路(放電経路)内に配置されており、操作スイッチ3がオフのときには電池パック2とインバータ回路7との電流経路は遮断される。また、後述するように操作スイッチ3がオフのときにはマイコン5への電力供給も遮断される。また、操作スイッチ3は機械式の接点を有し、操作スイッチ3がオンのときには機械式接点が閉じ、オフのときには開く構成となっている。
【0027】
スイッチング素子Q10は、ここではPNPバイポーラトランジスタであり、操作スイッチ3の入力側(電動工具1のプラス端子)とマイコン5との間に設けられ、電池パック2からマイコン5への電力供給のオンオフを切り替える。保持回路20は、スイッチング素子Q10の制御端子としてのベースに、スイッチング素子Q10がオンするために必要な電圧を印加、保持する。積分回路10は、操作スイッチ3の入力側と保持回路20との間に設けられ、電池パック2の装着から所定時間経過後に保持回路20の電源電圧の立ち上げを完了する。
【0028】
コンデンサC2は、操作スイッチ3の出力側と保持回路20との間に設けられ、操作スイッチ3がオンされると保持回路20に起動の契機となる信号を所定時間だけ供給する。スイッチング素子Q13は、操作スイッチ3がオフされた後、マイコン5からのシャットダウン信号によりターンオンされ、保持回路20を停止すると共にコンデンサC2を放電する。放電回路30は、スイッチング素子Q10を経由してマイコン5に電力が供給されているときに電池パック2が取り外されると、保持回路20の電源電圧を低下させる(積分回路10のコンデンサC1を放電させる)。なお、放電回路30は、スイッチング素子Q10を経由してマイコン5に電力が供給されているときは電池パック2が取り外される前においても保持回路20の電源電圧を低下させるように動作するが、それと同時に積分回路10のコンデンサC1が電池パック2により充電されるため、結果としてコンデンサC1は充電された状態に維持される。
【0029】
レギュレータ40は、例えばスイッチングレギュレータ(スイッチング電源回路)であり、電池パック2の電圧をマイコン5の動作用の電圧に変換してマイコン5に供給する。スイッチ状態検出回路50は、操作スイッチ3のオンオフ状態を検出し、マイコン5にフィードバックする。マイコン5は、ドライバIC6を介してスイッチング素子Q1〜Q6の制御端子としてのゲートに駆動信号(例えばPWM信号)を印加する。
【0030】
以下、電動工具1の具体的な回路構成を説明する。積分回路10は、抵抗R1及びコンデンサC1からなる。保持回路20は、抵抗R3〜R6及びスイッチング素子Q7,Q8からなる。スイッチング素子Q7は、ここではPNPバイポーラトランジスタである。スイッチング素子Q8は、ここではNチャンネル型FETである。放電回路30は、抵抗R9〜R11、スイッチング素子Q9、ダイオードD1、及びコンデンサC3からなる。スイッチング素子Q9は、ここではNチャンネル型FETである。スイッチ状態検出回路50は、抵抗R12〜R15及びスイッチング素子Q11,Q12からなる。スイッチング素子Q11は、ここではNチャンネル型FETである。スイッチング素子Q12は、ここではPNPバイポーラトランジスタである。
【0031】
抵抗R1の一端は、操作スイッチ3の入力側に接続される。抵抗R1の他端は、コンデンサC1の一端に接続される。コンデンサC1の他端はグランドに接続される。スイッチング素子Q7のエミッタは、抵抗R1及びコンデンサC1の相互接続点に接続される。スイッチング素子Q7のコレクタは、抵抗R5の一端に接続される。抵抗R5の他端は、スイッチング素子Q8のゲート(制御端子)及び抵抗R6の一端に接続される。抵抗R6の他端はグランドに接続される。抵抗R3の一端は、抵抗R1及びコンデンサC1の相互接続点に接続される。抵抗R3の他端は、スイッチング素子Q7のベース(制御端子)及び抵抗R4の一端に接続される。抵抗R4の他端は、スイッチング素子Q8のドレインに接続される。スイッチング素子Q8のソースはグランドに接続される。
【0032】
スイッチング素子Q10のエミッタは、操作スイッチ3の入力側に接続される。スイッチング素子Q10のベース、エミッタ間には抵抗R7が設けられる。スイッチング素子Q10のベースは、抵抗R8の一端に接続される。抵抗R8の他端は、抵抗R4とスイッチング素子Q8の相互接続点に接続される。スイッチング素子Q10のコレクタは、レギュレータ40の入力端子に接続される。レギュレータ40の出力端子は、マイコン5の電源入力端子、スイッチング素子Q11のゲート(制御端子)、及びダイオードD1のアノードに接続される。ダイオードD1のカソードは、抵抗R10の一端に接続される。抵抗R10の他端は、スイッチング素子Q9のゲート(制御端子)、抵抗R11の一端、及びコンデンサC3の一端に接続される。抵抗R11の他端はグランドに接続される。コンデンサC3の他端はグランドに接続される。抵抗R9の一端は、抵抗R1及びコンデンサC1の相互接続点に接続される。抵抗R9の他端は、スイッチング素子Q9のドレインに接続される。スイッチング素子Q9のソースはグランドに接続される。
【0033】
コンデンサC2及び抵抗R2の一端は、操作スイッチ3の出力側に接続される。抵抗R2の他端はグランドに接続される。コンデンサC2の他端は、スイッチング素子Q13のドレイン及びスイッチング素子Q8のゲートに接続される。スイッチング素子Q13のソースはグランドに接続される。スイッチング素子Q13のゲート(制御端子)は、マイコン5のシャットダウン信号出力端子に接続される。
【0034】
抵抗R12の一端は、操作スイッチ3の出力側に接続される。抵抗R12の他端は、抵抗R13の一端及びスイッチング素子Q12のベース(制御端子)に接続される。抵抗R13の他端は、スイッチング素子Q11のドレインに接続される。スイッチング素子Q11のソースはグランドに接続される。スイッチング素子Q12のエミッタは、操作スイッチ3の出力側に接続される。スイッチング素子Q12のコレクタは、抵抗R14の一端に接続される。抵抗R14の他端は、抵抗R15の一端及びマイコン5のスイッチ状態検出信号入力端子に接続される。抵抗R15の他端はグランドに接続される。
【0035】
図2は、図1に示す電動工具1における、電池パック2の装着後に操作スイッチ3をオンした場合の各部(点A〜I)の電圧(点Dのみ電流)のタイムチャートである。図2の例では、時刻t1において電動工具1に電池パック2が装着(接続)され、時刻t2において操作スイッチ3がオンされ、時刻t3において操作スイッチ3がオフされ、時刻t5において電動工具1から電池パック2が取り外される。
【0036】
時刻t1において電動工具1に電池パック2が装着されると、操作スイッチ3の入力側の電圧(点Aの電圧)は直ちに電池パック2の出力電圧まで上昇し、積分回路10に電流が流れてコンデンサC1に電荷が貯まり、保持回路20の電源電圧(点Cの電圧)が緩やかに立ち上がる。立ち上がりのスピードは、抵抗R1の抵抗値とコンデンサC1の容量値で決まる時定数に依存する。すなわち、抵抗R1の抵抗値とコンデンサC1の容量値の選択により、積分回路10の出力電圧(点Cの電圧)の立ち上がりスピードを任意に設定できる。時刻t1における電池パック2の装着後、所定時間が経過すると、保持回路20の電源電圧の立ち上げが完了する。
【0037】
保持回路20の電源電圧が立ち上がった後の時刻t2において操作スイッチ3がオンされると、操作スイッチ3の出力側の電圧(点Bの電圧)は直ちに電池パック2の出力電圧まで上昇し、操作スイッチ3の出力側、コンデンサC2、及び抵抗R6を通る経路に一時的に電流が流れ(図2の点Dの電流波形を参照)、コンデンサC2の出力側の電圧(点Dの電圧)が立ち上がる。すなわち、コンデンサC2は、抵抗R6と微分回路を構成しており、操作スイッチ3がオンされると、自身を通る経路(点Dを通る経路)に一時的に電流を流すことで、点Dの電圧を立ち上げる。点Dの電圧は、保持回路20のスイッチング素子Q8のゲート電圧であり、点Dに一時的に流れる電流は、保持回路20の起動の契機となる信号である。換言すれば、コンデンサC2は、操作スイッチ3がオンされると、保持回路20に起動の契機となる信号を一時的に供給する。
【0038】
時刻t2において点Dの電圧が立ち上がると、保持回路20の電源電圧は既に立ち上がっているので、スイッチング素子Q8がターンオンする。すると、抵抗R3,R4及びスイッチング素子Q8を通る経路に電流が流れ、スイッチング素子Q7のベース、エミッタ間が順バイアスになり、スイッチング素子Q7がターンオンする。すると、スイッチング素子Q7及び抵抗R5,R6を通る経路に電流が流れ、点Dの電圧は、コンデンサC2に電流が流れなくなっても立ち上がったままとなり、スイッチング素子Q8はオンに維持される。なお、時刻t2において保持回路20が起動すると、保持回路20に流れる電流により保持回路20の電源電圧は若干低下するが、保持回路20の動作に必要な電源電圧レベルは確保される。図2においては、保持回路20の起動による保持回路20の電源電圧の低下は図示を省略している。
【0039】
一方、時刻t2においてスイッチング素子Q8がターンオンすると、操作スイッチ3の入力側(点A)、抵抗R7,R8、スイッチング素子Q8を通る経路に電流が流れスイッチング素子Q10のベース、エミッタ間が順バイアスになり、スイッチング素子Q10がターンオンする。すると、レギュレータ40の入力側の電圧(点Eの電圧)が立ち上がり、レギュレータ40が起動し、レギュレータ40の出力側の電圧(点Fの電圧)も立ち上がる。すると、マイコン5に電源電圧が供給され、マイコン5が起動する。また、スイッチ状態検出回路50のスイッチング素子Q11がターンオンし、操作スイッチ3の出力側(点B)、抵抗R12,R13、及びスイッチング素子Q11を通る経路に電流が流れ、スイッチング素子Q12のベース、エミッタ間が順バイアスになり、スイッチング素子Q12がターンオンする。すると、操作スイッチ3の出力側(点B)、スイッチング素子Q12、及び抵抗R14,R15を通る経路に電流が流れ、抵抗R14,R15の相互接続点(点G)の電圧が立ち上がる。点Gの電圧は、スイッチ状態検出信号としてマイコン5に入力される。マイコン5は、スイッチ状態検出信号がハイレベルであることを検出すると、インバータ回路7を制御してモータ4を駆動する。他方、レギュレータ40の出力側の電圧(点Fの電圧)が立ち上がると、ダイオードD1、抵抗R10、並びに並列接続されたコンデンサC3及び抵抗R11を通る経路に電流が流れ、スイッチング素子Q9のゲート電圧(点Iの電圧)が緩やかに立ち上がる。
【0040】
時刻t3において操作スイッチ3がオフされると、操作スイッチ3の出力側の電圧(点Bの電圧)は直ちにグランド電位まで低下し、操作スイッチ3の出力側、抵抗R12,R13、及びスイッチング素子Q11を通る経路の電流が止まり、スイッチング素子Q12がターンオフする。すると、点Gの電圧がグランド電位まで低下し、マイコン5は、操作スイッチ3がオフされたことを検出し、モータ4の駆動を停止する。
【0041】
マイコン5は、時刻t3において操作スイッチ3がオフされた後の時刻t4において、スイッチング素子Q13のゲートにシャットダウン信号を送出する(図2の点Hの電圧波形を参照)。操作スイッチ3がオフされたことを検出してからシャットダウン信号を送出するまでの待ち時間は、設けなくてもよいし、10秒程度あるいは10分程度であってもよく、任意に設定することができる。スイッチング素子Q13は、シャットダウン信号によりターンオンし、これによりコンデンサC2が放電されると共にスイッチング素子Q8のゲート電圧がグランド電位まで低下してスイッチング素子Q8がターンオフする(保持回路20が停止する)。すると、スイッチング素子Q10のベース、エミッタ間電流の経路が遮断され、スイッチング素子Q10がターンオフし、レギュレータ40が停止する(点E,Fの電圧は低下する)。点Fの電圧が低下すると、マイコン5が停止すると共に、ダイオードD1を通る電流が止まり、スイッチング素子Q9のゲート電圧(点Iの電圧)は、コンデンサC3の電荷が抵抗R11を経由して放電されるのに伴って緩やかに低下する。このため、スイッチング素子Q9は、点Fの電圧が低下してからも一定時間はオン状態を維持してからターンオフする。なお、図示は省略したが、シャットダウン信号により保持回路20が停止した後、操作スイッチ3が再度オンされた場合の動作は、時刻t2以降と同様である。また、シャットダウン信号により保持回路20が停止する前に操作スイッチ3が再度オンされた場合は、マイコン5は、スイッチ状態検出信号の立ち上がりを検出してモータ4を駆動する。操作スイッチ3がオフされた後の時刻t5において電池パック2が電動工具1から取り外されると、コンデンサC1の放電経路がなくなるため保持回路20の電源電圧はその状態を維持する。なお、操作スイッチ3のオフ後、シャットダウン信号の送出前に電池パック2が取り外された場合、スイッチング素子Q9は電池パック2を取り外してから一定時間はオン状態を維持するため、積分回路10のコンデンサC1の電荷は放電回路30によって素早く放電され、保持回路20の電源電圧は素早く低下する。また、時刻t5において電池パック2が電動工具1から取り外された後、操作スイッチ3がオンされると、抵抗R1、操作スイッチ3、及び抵抗R2を通る放電経路が形成され、放電回路30とは独立してコンデンサC1の電荷が放電される。一方、時刻t5において電池パック2が電動工具1から取り外された後、操作スイッチ3がオンされることなく電池パック2が電動工具1に装着された場合(通常接続時)にはコンデンサC1の電荷は残っているが、操作スイッチ3がオフなので誤動作の恐れはなく、操作スイッチ3をオンにする前に保持回路20の電源電圧が立ち上がっている状態になるため、図2のt2以降と同様に動作し問題はない。
【0042】
図3は、図1に示す電動工具1における、操作スイッチ3をオンした状態で電池パック2を装着した場合の各部(点A〜I)の電圧(点Dのみ電流)のタイムチャートである。図3の例では、時刻t11において、操作スイッチ3がオンの状態で電動工具1に電池パック2が装着(接続)され、時刻t12において電動工具1から電池パック2が取り外される。
【0043】
時刻t11において操作スイッチ3がオンの状態で電動工具1に電池パック2が装着されると、操作スイッチ3の入力側(点A)及び出力側(点B)の電圧は、直ちに電池パック2の出力電圧まで上昇する。点Aの電圧上昇により、図2の場合と同様に、保持回路20の電源電圧(点Cの電圧)が緩やかに立ち上がる。一方、点Bの電圧上昇により、図2の場合と同様に、コンデンサC2に一時的に電流が流れる(保持回路20に起動の契機となる信号が一時的に供給される)。すると、保持回路20のスイッチング素子Q8のゲート電圧は一時的に立ち上がるものの、この時点では保持回路20の電源電圧(点Cの電圧)が立ち上がっていないため、保持回路20は起動しない。したがって、マイコン5は起動せず、モータ4が駆動されることもない。その後、時刻t12において操作スイッチ3がオンの状態で電動工具1から電池パック2が取り外されると、積分回路10のコンデンサC1の電荷は、操作スイッチ3及び抵抗R2を通って放電され、保持回路20の電源電圧が緩やかに低下する。なお、時刻t11から時刻t12までの間に操作スイッチ3を一旦オフにすると、コンデンサC2の電荷は抵抗R2を経由して放電され、その後に操作スイッチ3を再度オンにすれば、図2の時刻t2以降と同様に電動工具1を動作させることができる。
【0044】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0045】
(1) 操作スイッチ3を電池パック2とブラシレスモータ4の放電経路に設け、操作スイッチ3がオフの場合に、電池パック2からインバータ回路7及びマイコン5への電力供給を遮断するように構成したため、操作スイッチ3がオンにならない限りインバータ回路7及びマイコン5での電力消費を抑えることができる。したがって、操作スイッチ3がオフの状態での低消費電力で実現できる。
【0046】
(2) 積分回路10により電池パック2の装着タイミングに対して保持回路20の電源電圧の立ち上がり完了を遅延させる一方、電池パック2が装着され且つ操作スイッチ3がオンされたときはコンデンサC2により保持回路20に起動の契機となる信号を一時的に供給するため、操作スイッチ3がオンの状態で電動工具1に電池パック2が装着されても、装着時に保持回路20の電源電圧が立ち上がっていないため保持回路20は起動せず、このためマイコン5も起動することはなく、モータ4も駆動されない。また、このとき、オン状態のまま維持されるスイッチング素子は存在しない。操作スイッチ3がオフの状態で電動工具1に電池パック2が装着された場合も、オン状態のまま維持されるスイッチング素子は存在しない。したがって、操作スイッチ3がオンの状態で電動工具1に電池パック2が装着された場合のモータ4の回転防止を低消費電力で実現できる。また、操作スイッチ3がオフの状態で電動工具1に電池パック2が装着された場合も低消費電力を実現できる。
【0047】
(3) マイコン5は、操作スイッチ3がオフになったことを検出した後、シャットダウン信号を送出して保持回路20を停止させることで自身も動作を停止し、またオン状態のまま維持されるスイッチング素子もなくなるため、非動作時の消費電力を低減することができる。
【0048】
(4) シャットダウン信号の送出前に電池パック2が取り外されると、放電回路30が積分回路10のコンデンサC1の電荷を直ちに放電するため、次に操作スイッチ3がオンの状態で電動工具1に電池パック2が装着された場合の誤動作対策を確実に実行できる。なお、シャットダウン信号の送出後、放電回路30のスイッチング素子Q9がオフになってから電池パック2が取り外された場合、次に電池パック2が装着される前に操作スイッチ3がオンされると、積分回路10のコンデンサC1の電荷は、操作スイッチ3及び抵抗R2を通って放電されるが、抵抗R2の抵抗値が大きいため放電回路30による放電と比較して時間を要する。
【0049】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0050】
遅延回路は、電池パック2の装着タイミングに対して保持回路20の電源電圧の立ち上がり完了を遅延させる機能を有する限り、積分回路10以外の遅延回路であってもよい。起動回路は、保持回路20に起動の契機となる信号を一時的に供給するものであれば、コンデンサC2に替えて、コイルを用いて構成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 電動工具、2 電池パック、3 操作スイッチ、4 モータ、5 制御部、6 ドライバIC、7 インバータ回路(モータ駆動部)、10 積分回路(遅延回路)、20 保持回路、30 放電回路、40 レギュレータ(電源回路)、50 スイッチ状態検出回路
図1
図2
図3