(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354129
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】センサ信号出力回路およびセンサ信号出力回路の調整方法
(51)【国際特許分類】
H03F 3/34 20060101AFI20180702BHJP
H03G 3/10 20060101ALI20180702BHJP
H03G 3/12 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
H03F3/34 Z
H03G3/10 B
H03G3/12 B
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-203847(P2013-203847)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-70481(P2015-70481A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112003
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100145344
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和徳
(72)【発明者】
【氏名】菅原 聡
【審査官】
緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−005217(JP,A)
【文献】
特開平02−023704(JP,A)
【文献】
実開平02−090537(JP,U)
【文献】
特開平03−041483(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0246852(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00− 3/45、3/50− 3/52、
3/62− 3/64、3/68− 3/72
H03G 3/10
H03G 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサの出力信号を増幅して出力するバッファアンプと、
抵抗を介して上記バッファアンプの出力電圧を反転入力端子に入力すると共に、オフセット調整用抵抗を介して基準電圧を分圧して非反転入力端子に入力し、前記反転入力端子と出力端子との間にゲイン調整用抵抗を設け、該ゲイン調整用抵抗と前記抵抗との抵抗値比によりゲインが設定される演算増幅器と、
所定振幅の三角波信号を発生する発振器と、
前記三角波信号と前記演算増幅器の出力電圧とを比較して該出力電圧に応じたパルス幅のPWM信号を生成するコンパレータと、
前記オフセット調整用抵抗を調整して第1の温度における前記バッファアンプの出力電圧と前記演算増幅器の反転入力端子電圧とを等しくして前記ゲイン調整用抵抗および前記抵抗に流れる電流をゼロにするオフセット調整手段と、
前記オフセット調整用抵抗を設定した条件下において前記PWM信号のパルス幅が前記第1の温度において規定された第1のパルス幅となるように前記三角波信号の振幅を調整する振幅調整手段と、
前記三角波信号の振幅を設定した条件下で前記PWM信号のパルス幅が前記第1の温度とは異なる第2の温度において規定された第2のパルス幅となるように前記ゲイン調整用抵抗を調整するゲイン調整手段と
を具備したことを特徴とするセンサ信号出力回路。
【請求項2】
前記温度センサは、温度変化に対して線形な出力特性を有する温度検出用ダイオードである請求項1に記載のセンサ信号出力回路。
【請求項3】
前記オフセット調整手段は、前記演算増幅器の非反転入力端子に加えるオフセット電圧が前記第1の温度における前記バッファアンプの出力電圧と等しくなるように前記オフセット調整用抵抗を調整するものである請求項1に記載のセンサ信号出力回路。
【請求項4】
温度センサの出力信号を増幅して出力するバッファアンプと、
抵抗を介して上記バッファアンプの出力電圧を反転入力端子に入力すると共に、オフセット調整用抵抗を介して基準電圧を分圧して非反転入力端子に入力し、前記反転入力端子と出力端子との間にゲイン調整用抵抗を設け、該ゲイン調整用抵抗と前記抵抗との抵抗値比によりゲインが設定される演算増幅器と、
所定振幅の三角波信号を発生する発振器と、
前記三角波信号と前記演算増幅器の出力電圧とを比較して該出力電圧に応じたパルス幅のPWM信号を生成するコンパレータとを具備したセンサ信号出力回路において、
第1の温度における前記バッファアンプの出力電圧と前記演算増幅器の反転入力端子電圧とを等しくして前記ゲイン調整用抵抗および前記抵抗に流れる電流がゼロになるように前記オフセット調整用抵抗を設定した後、
前記PWM信号のパルス幅が前記第1の温度において予め規定された第1のパルス幅となるように前記三角波信号の振幅を設定し、
その後、前記第1の温度とは異なる第2の温度における前記PWM信号のパルス幅が前記第2の温度において予め規定された第2のパルス幅となるようにゲイン調整用抵抗を設定することを特徴とするセンサ信号出力回路の調整方法。
【請求項5】
前記温度センサは、温度変化に対して線形な出力特性を有する温度検出用ダイオードである請求項4に記載のセンサ信号出力回路の調整方法。
【請求項6】
前記オフセット調整用抵抗は、前記演算増幅器の非反転入力端子に加えるオフセット電圧が前記第1の温度における前記バッファアンプの出力電圧と等しくなるように調整される請求項4に記載のセンサ信号出力回路の調整方法。
【請求項7】
温度センサの出力信号を増幅して出力するバッファアンプと、
抵抗を介して上記バッファアンプの出力電圧を反転入力端子に入力すると共に、オフセット調整用抵抗を介して基準電圧を分圧して非反転入力端子に入力し、前記反転入力端子と出力端子との間にゲイン調整用抵抗を設け、該ゲイン調整用抵抗と前記抵抗との抵抗値比によりゲインが設定される演算増幅器と、
予め目標振幅に近い値として設定された所定振幅の三角波信号を発生する発振器と、
前記三角波信号と前記演算増幅器の出力電圧とを比較して該出力電圧に応じたパルス幅のPWM信号を生成するコンパレータと、
前記オフセット調整用抵抗を調整して第1の温度における前記バッファアンプの出力電圧と前記演算増幅器の反転入力端子電圧とを等しくして前記ゲイン調整用抵抗および前記抵抗に流れる電流をゼロにするオフセット調整手段と、
前記PWM信号のパルス幅が前記第1の温度とは異なる第2の温度において規定された第2のパルス幅となるように前記ゲイン調整用抵抗を調整するゲイン調整手段と
を具備したことを特徴とするセンサ信号出力回路。
【請求項8】
前記予め目標振幅は、前記第1の温度における前記PWM信号のパルス幅が、予め設定されたパルス幅となるように定められるものである請求項7に記載のセンサ信号出力回路。
【請求項9】
温度センサの出力信号を増幅して出力するバッファアンプと、
抵抗を介して上記バッファアンプの出力電圧を反転入力端子に入力すると共に、オフセット調整用抵抗を介して基準電圧を分圧して非反転入力端子に入力し、前記反転入力端子と出力端子との間にゲイン調整用抵抗を設け、該ゲイン調整用抵抗と前記抵抗との抵抗値比によりゲインが設定される演算増幅器と、
所定振幅の三角波信号を発生する発振器と、
前記三角波信号と前記演算増幅器の出力電圧とを比較して該出力電圧に応じたパルス幅のPWM信号を生成するコンパレータとを具備したセンサ信号出力回路において、
前記発振器における前記三角波信号の振幅を予め求められた目標振幅に近い値に設定すると共に、第1の温度における前記バッファアンプの出力電圧と前記演算増幅器の反転入力端子電圧とを等しくして前記ゲイン調整用抵抗および前記抵抗に流れる電流がゼロになるように前記オフセット調整用抵抗を設定した後、
前記第1の温度とは異なる第2の温度における前記PWM信号のパルス幅が前記第2の温度において予め規定された第2のパルス幅となるようにゲイン調整用抵抗を設定することを特徴とするセンサ信号出力回路の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば温度センサの出力信号を、温度に対してリニアリティ良く外部出力するに好適なセンサ信号出力回路およびセンサ信号出力回路の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBTやパワーMOS-FET等の発熱デバイスを用いた電子回路装置においては、温度センサを用いて上記発熱デバイスやその周囲環境の温度を監視することが行われる。この際、温度検出用ダイオード等の温度変化に対して線形な出力特性を有するセンサの出力電圧を、該出力電圧に応じたパルス幅のPWM信号に変換して外部出力して監視回路等に通知することも行われている。
【0003】
図3はこの種のセンサ信号出力回路1の従来一般的な構成例を示している。このセンサ信号出力回路1は、定電流源2により駆動される温度検出用ダイオード3に発生する電圧Vfを、演算増幅器4を介して増幅する。前記センサ信号出力回路1は、発振器5が出力する所定振幅の三角波信号と前記演算増幅器4の出力電圧とをコンパレータ6にて比較して該出力電圧に応じたパルス幅のPWM信号を生成する。そして前記センサ信号出力回路1は、上記PWM信号をバッファアンプ7を介して外部出力するように構成される。
【0004】
ちなみに前記演算増幅器4は、
図4に示すように入力抵抗R1を介してアナログ入力信号V1を反転入力端子に入力すると共に、参照電圧V2を入力抵抗R2と接地抵抗R4とにより分圧して非反転入力端子に入力する。また前記演算増幅器4の反転入力端子と出力端子との間には帰還抵抗R3が設けられる。このようにして差動増幅回路を構築した前記演算増幅器4は、基本的には[R1=R2],[R3=R4]なる条件にて
Vout=(V2−V1)R3/R1
なる出力電圧Voutを得る。
【0005】
ところで前記温度検出用ダイオード3の出力電圧Vfが温度Tの変化に対して線形であっても、その出力特性には素子固有のバラツキがある。この為、前記PWM信号のパルス幅が、例えば
図5(a)に示すように温度Tに対して予め定められたパルス幅からずれることがある。尚、
図5において実線Aは補正前の出力特性を、また破線Bは目標とする出力特性を示している。このような前記PWM信号の温度に対するパルス幅のずれ、即ち、出力特性のずれについては、例えば特許文献1に開示されるように前記演算増幅器4のオフセット電圧とゲインとを調整し、該演算増幅器4の出力電圧を補正することによって行われる。
【0006】
ちなみに前記演算増幅器4のオフセット電圧の調整は、前記参照電圧V2を変えることにより、或いは前記入力抵抗R2と前記接地抵抗R4との比を変えることによって行われる。また前記演算増幅器4のゲインの調整は、前記入力抵抗R1と前記帰還抵抗R3との比を変えることによって行われる。具体的には、先ず
図5(b)に示すように第1の温度T1での前記PWM信号のパルス幅D1に着目して前記演算増幅器4のオフセット電圧を調整し、前記出力特性を実線Cに示すように補正する。その後、
図5(c)に示すように前記第1の温度T1とは異なる第2の温度T2での前記PWM信号のパルス幅D2に着目して前記演算増幅器4のゲインを調整し、前記出力特性を実線Dに示すように補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−5217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上述したように前記演算増幅器4のオフセット電圧を調整した後、前記演算増幅器4のゲインを調整すると、例えば
図5(c)に示すように前記第1の温度T1での前記PWM信号のパルス幅D1に新たなずれが生じると言う問題がある。即ち、前記演算増幅器4に対する前記オフセット電圧の調整と前記ゲインの調整とが、互いに独立したパラメータの下で個別に行われるので、前記第1および第2の温度T1,T2での前記出力特性の補正が互いに影響し合うことが否めない。この為、前記センサ信号出力回路1の出力特性を、予め定められた目標とする出力特性Bに補正するには、前記オフセット電圧の調整と前記ゲインの調整とを交互に繰り返し実行することが必要である。
【0009】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、例えば温度検出用ダイオードからなるセンサの出力信号を、簡易な調整の下でリニアリティ良く外部出力することのできるセンサ信号出力回路およびセンサ信号出力回路の調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するべく本発明に係るセンサ信号出力回路は、
温度センサの出力信号を増幅して出力するバッファアンプと、
抵抗を介して上記バッファアンプの出力電圧を反転入力端子に入力すると共に、オフセット調整用抵抗を介して基準電圧を分圧して非反転入力端子に入力し、前記反転入力端子と出力端子との間にゲイン調整用抵抗を設け
、該ゲイン調整用抵抗と前記抵抗との抵抗値比によりゲインが設定される演算増幅器と、
所定振幅の三角波信号を発生する発振器と、
前記三角波信号と前記演算増幅器の出力電圧とを比較して該出力電圧に応じたパルス幅のPWM信号を生成するコンパレータと、
前記オフセット調整用抵抗を調整して第1の温度における前記バッファアンプの出力電圧と前記演算増幅器の反転入力端子電圧とを等しく
して前記ゲイン調整用抵抗および前記抵抗に流れる電流がゼロにするオフセット調整手段と、
前記オフセット調整用抵抗を設定した条件下において前記PWM信号のパルス幅が前記第1の温度において規定された第1のパルス幅となるように前記三角波信号の振幅を調整する振幅調整手段と、
前記三角波信号の振幅を設定した条件下で前記PWM信号のパルス幅が前記第1の温度とは異なる第2の温度において規定された第2のパルス幅となるように前記ゲイン調整用抵抗を調整するゲイン調整手段と
を具備したことを特徴としている。
【0011】
ちなみに前記温度センサは、温度変化に対して線形な出力特性を有する温度検出用ダイオードからなる。そして前記オフセット調整手段は、前記演算増幅器の非反転入力端子に加えるオフセット電圧が前記第1の温度における前記バッファアンプの出力電圧と等しくなるように前記オフセット調整用抵抗を調整する。
【0012】
また本発明に係るセンサ信号出力回路の調整方法は、上述した構成のセンサ信号出力回路において、
第1の温度における前記バッファアンプの出力電圧と前記演算増幅器の反転入力端子電圧とが等しくなるように前記オフセット調整用抵抗を設定した後、
前記PWM信号のパルス幅が前記第1の温度において予め規定された第1のパルス幅となるように前記三角波信号の振幅を設定し、
その後、前記第1の温度とは異なる第2の温度における前記PWM信号のパルス幅が前記第2の温度において予め規定された第2のパルス幅となるようにゲイン調整用抵抗を設定することを特徴としている。
【0013】
好ましくは前記発振器が発生する三角波信号の振幅を、予め目標振幅に近い値として設定しておき、前記第1の温度においてオフセット調整用抵抗を設定した後、前記第2の温度においてゲイン調整用抵抗を設定するようにしても良い。
【発明の効果】
【0014】
上記構成のセンサ信号出力回路およびセンサ信号出力回路の調整方法によれば、先ず第1の温度T1における前記バッファアンプの出力電圧と前記演算増幅器の入力端子電圧とが等しくなるように前記オフセット調整用抵抗を調整する。次いでこの設定条件下で前記PWM信号のパルス幅が前記第1の温度において予め規定された第1のパルス幅となるように前記三角波信号の振幅を調整する。その上で、第2の温度における前記PWM信号のパルス幅が前記第2の温度において予め規定された第2のパルス幅となるように前記ゲイン調整用抵抗を調整する。従って前記演算増幅器のゲインを示す出力特性の傾きは前記第1の温度T1における前記第1のパルス幅を基準として変化する。
【0015】
故に本発明によれば前記オフセット調整用抵抗、前記三角波信号の振幅、および前記ゲイン調整用抵抗を順に調整するだけで、前記センサ信号出力回路の出力特性を予め規定されたパルス幅のPWM信号を出力するように、簡易に設定することができる。従って従来のセンサ信号出力回路のように演算増幅器に対するオフセット調整とゲイン調整を繰り返し行う必要がない。故に温度センサの出力電圧を示すパルス幅のPWM信号を、簡易にリニアリティ良く得ることができ、その実用的利点が多大である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るセンサ信号出力回路の要部概略構成図。
【
図2】
図1に示すセンサ信号出力回路における出力特性の調整手順を示す図。
【
図3】従来のセンサ信号出力回路の一例を示す要部概略構成図。
【
図4】演算増幅器を用いた差動増幅回路の構成を示す図。
【
図5】
図3に示すセンサ信号出力回路における一般的な出力特性の調整手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係るセンサ信号出力回路とその調整方法について説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係るセンサ信号出力回路10の要部概略構成図である。このセンサ信号出力回路10は、IGBT等の発熱デバイスに組み込まれた温度検出用ダイオード11の出力電圧VFを入力し、該出力電圧VFに相当するパルス幅のPWM信号を生成して外部出力する。前記温度検出用ダイオード11は温度Tの変化に対して線形な出力特性を有するもので、定電流源12により駆動されて温度Tに応じた出力電圧VFを生起する。
【0019】
前記センサ信号出力回路10は、前記温度検出用ダイオード11の出力電圧VFを入力して増幅するバッファアンプ13と、このバッファアンプ13の出力電圧VF2を増幅する演算増幅器14を備える。更に前記センサ信号出力回路10は、発振器15が生成する三角波信号と前記演算増幅器14の出力電圧Voutとを比較して該出力電圧Voutに応じたパルス幅のPWM信号を生成するコンパレータ16を備える。このコンパレータ16が生成したPWM信号は、MOS-FET17からなる出力回路を介して外部出力される。
【0020】
前記バッファアンプ13は、抵抗13aを介して前記温度検出用ダイオード11の出力電圧VFを非反転端子に入力すると共に、抵抗13bを介して反転入力端子を接地し、出力端子と前記反転入力端子との間に帰還抵抗13cを接続した反転型の増幅回路からなる。尚、前記バッファアンプ13の非反転端子は、コンデンサ13dを介して接地されている。このコンデンサ13dにより前記温度検出用ダイオード11の出力電圧VFに含まれるノイズ成分が除去される。
【0021】
ちなみに前記バッファアンプ13の増幅率は、前記抵抗13bの値r1と前記抵抗13cの値r2とにより規定される。そして前記バッファアンプ13は、前記温度検出用ダイオード11の出力電圧VFに対して
VF2=VF・(r1+r2)/r1
なる出力電圧VF2を得る。
【0022】
一方、前記演算増幅器14は、抵抗14aを介して前記バッファアンプ13の出力電圧VF2を反転端子に入力すると共に、オフセット調整用抵抗14bを介して基準電圧Vrefを分圧したオフセット電圧を非反転入力端子に入力する。更に前記演算増幅器14は、前記反転入力端子と出力端子との間にゲイン調整用抵抗14cを設けることで反転型の増幅回路を構築している。
【0023】
前記オフセット調整用抵抗14bは、例えば一対の端子間に印加される前記基準電圧Vrefを分圧して出力する中間端子を備えた可変抵抗器からなる。このオフセット調整用抵抗14bは、オフセット調整手段21により前記中間端子による前記基準電圧Vrefの分圧電圧を可変することで、前記演算増幅器14の非反転端子に与えるオフセット電圧を調整する役割を担う。
【0024】
また前記ゲイン調整用抵抗14cは、所定の範囲で抵抗値を可変可能な可変抵抗器からなる。このゲイン調整用抵抗14cは、ゲイン調整手段22により抵抗値が可変設定されることで、該ゲイン調整用抵抗14cと前記抵抗14aとの抵抗値比により規定される前記演算増幅器14のゲインを調整する役割を担う。
【0025】
尚、前記演算増幅器14の出力電圧Voutは、抵抗16aを介して前記コンパレータ16の反転入力端子に与えられる。また前記コンパレータ16の反転入力端子は、コンデンサ16bを介して接地されている。このコンデンサ16bにより前記出力電圧Voutに含まれるノイズ成分が除去されて前記コンパレータ16に入力される。また前記コンパレータ16の非反転端子に前記三角波信号を入力する前記発振器15は、振幅調整手段23により前記三角波信号の振幅を可変設定し得るように構成されている。
【0026】
そして前記コンパレータ16は、前記三角波信号の電圧が前記出力電圧Voutに満たないときにLレベルの信号を出力し、前記三角波信号の電圧が前記出力電圧Voutを超えたときにHレベルの信号を出力することで、前記出力電圧Voutに応じたパルス幅のPWM信号を生成する。このコンパレータ16が生成したPWM信号は、前記MOS-FET17を介して論理反転されて外部出力される。
【0027】
このように構成されたセンサ信号出力回路10の出力特性の補正は次のようにして実行される。ここで前記センサ信号出力回路10に対して要求される仕様が、
図2(a)に出力特性Bとして示すように前記センサ信号出力回路10から第1の温度T1においてパルス幅D1の前記PWM信号を外部出力し、また前記第1の温度T1とは異なる第2の温度T2においてパルス幅D2の前記PWM信号を外部出力するものとする。
【0028】
このような出力特性Bに対して、前記温度検出用ダイオード11の出力電圧VFに対する前記センサ信号出力回路10の出力特性が、
図2(a)に出力特性Aとして示すように与えられるものとする。これらの出力特性A,B間のずれは、専ら、前記温度検出用ダイオード11の個体性に起因する素子特性のバラツキに原因する。
【0029】
そこで先ず、前記第1の温度T1において前記バッファアンプ13の出力電圧VF2と、前記演算増幅器14の反転入力端子の電圧とが等しくなるように該演算増幅器14に与えるオフセット電圧を調整する。このオフセット電圧の調整は、前記オフセット調整手段21の下で前記オフセット調整用抵抗14bによる前記基準電圧Vrefの分圧比を調整し、前記演算増幅器14の非反転入力端子の電圧を前記出力電圧VF2に設定することにより行われる。
【0030】
すると前記演算増幅器14の反転入力端子の電圧が前記バッファアンプ13の出力電圧VF2と等しくなり、前記抵抗14aに電流が流れなくなる。また同時に前記演算増幅器14の出力端子に生じる出力電圧Voutが該演算増幅器14の反転入力端子に加わる電圧と等しくなり、前記ゲイン調整用抵抗14cを介して帰還電流が流れることもなくなる。そして前記出力電圧Voutは、前記オフセット調整用抵抗14bを介して調整されたオフセット電圧分だけシフトされる。
【0031】
次いでこのオフセットの設定条件下において前記振幅調整手段23を用いて前記三角波信号の振幅を調整する。具体的には前記コンパレータ16から出力されるPWM信号のパルス幅Dが、前述した第1の温度T1において規定された第1のパルス幅D1となるように前記三角波信号の振幅を調整する。この三角波信号の振幅調整により前記オフセット調整と相俟って、前記センサ信号出力回路10の出力特性が
図2(b)に特性Cとして示すようにシフトされてオフセット補正される。
【0032】
ここで重要なことは上述した補正条件は前記第1の温度T1における前記PWM信号のパルス幅D1の温度特性の傾きが零(0)、つまり前記第1の温度T1においては必ずパルス幅D1のPWM信号が得られることである。従って前記演算増幅器14のゲインを変化させても、第1の温度T1における前記PWM信号のパルス幅D1は変化しない。そして前記演算増幅器14のゲインを変化させた場合、前記センサ信号出力回路10の出力特性は、前記第1の温度T1を起点としてその傾きが変化することになる。
【0033】
そこで上述した設定条件の下で、次に前記ゲイン調整手段22を用いて前記ゲイン調整用抵抗14cの抵抗値を調整して前記演算増幅器14のゲインを設定する。この演算増幅器14のゲイン設定は、前記第1の温度T1とは異なる第2の温度T2での前記PWM信号のパルス幅Dに着目し、該パルス幅Dが前記第2の温度T2で規定されるパルス幅D2となるように行われる。このゲイン調整用抵抗14cの調整により前記第1の温度T1を起点として前記センサ信号出力回路10の出力特性の傾きが設定され、
図2(c)に特性Eとして示すように前記PWM信号のパルス幅Dが前記第2の温度T2おいてパルス幅D2となるように設定される。
【0034】
この結果、前記センサ信号出力回路10の出力特性は、前記第1の温度T1においてパルス幅D1のPWM信号を得、また前記第1の温度T2においてパルス幅D2のPWM信号を得るように設定される。即ち、前記センサ信号出力回路10の出力特性が、該センサ信号出力回路10に対して要求される仕様を満たすように設定される。しかも前述したオフセット調整、振幅調整、およびゲイン調整を前記第1および第2の温度T1,T2の下で順に実行するだけで、簡易に前記センサ信号出力回路10の出力特性を補正することができる。
【0035】
特に本発明によれば、2つの温度条件での前記センサ信号出力回路10の出力特性に対する補正をそれぞれ独立に実行することができる。つまり前記演算増幅器4に対するオフセット調整とゲイン調整とを分離させ、互いに影響を及ぼすことなく実行することができる。従って従来の出力特性の補正方法のように、オフセット調整とゲイン調整とを繰り返し実行する必要がないので、その実用的利点が多大である。
【0036】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態においてはオフセット調整の後、三角波の振幅調整を行い、その後、ゲイン調整を実行するものとして説明した。しかし、例えば三角波の振幅を予め目標振幅に近い値に固定しておけば、オフセット調整の後、ゲイン調整を実行するだけで前記センサ信号出力回路の出力特性を簡易に調整することが可能となる。ちなみに前記目標振幅については、例えば所定の温度、具体的には第1温度におけるPWM信号が、予め定めた所定のパルス幅Dstdとなるように設定しておけば良い。
【0037】
またここでは第1の温度T1を第2の温度T2よりも高いものとして説明したが、逆の関係であっても勿論良い。更に前記第1および第2の温度T1,T2については、前記温度検出用ダイオード11による温度検出範囲に応じて、可能な限りその温度差を大きく定めることが好ましい。また実施形態ではIGBTに組み込まれた温度検出用ダイオードの出力電圧をPWM信号として外部出力する例を示した。しかし本発明は、温度に対して線形な出力特性を有する種々の温度センサの出力をPWM信号として出力する回路に同様に適用することが可能である。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 センサ信号出力回路
11 温度検出用ダイオード
13 バッファアンプ
14 演算増幅器
14b オフセット調整用抵抗
14c ゲイン調整用抵抗
15 発振器
16 コンパレータ
17 MOS-FET
21 オフセット調整手段
22 ゲイン調整手段
23 振幅調整手段