特許第6354249号(P6354249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6354249電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354249
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/147 20060101AFI20180702BHJP
   G03G 5/07 20060101ALI20180702BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20180702BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20180702BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   G03G5/147 502
   G03G5/147 504
   G03G5/07 103
   G03G5/05 101
   G03G21/00 318
   G03G15/00 555
【請求項の数】16
【全頁数】146
(21)【出願番号】特願2014-64257(P2014-64257)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-184670(P2015-184670A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶原 賢志
(72)【発明者】
【氏名】額田 克己
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 英一
(72)【発明者】
【氏名】岩舘 侑子
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−105046(JP,A)
【文献】 特開2010−151967(JP,A)
【文献】 特開2013−195571(JP,A)
【文献】 特開2006−084711(JP,A)
【文献】 特開2007−133344(JP,A)
【文献】 特開2005−275367(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0072906(US,A1)
【文献】 特開2013−044820(JP,A)
【文献】 特開2004−198662(JP,A)
【文献】 特開2008−122870(JP,A)
【文献】 特開平08−272126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/05
G03G 5/06
G03G 5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が反応性電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成され、前記最表面層の表面のステアリン酸亜鉛の被覆率が5.0%以上80.0%以下であり、且つ前記ステアリン酸亜鉛の被覆前の最表面層の酸素透過係数が2.0×1012fm/Pa・s以上15.0×1012fm/Pa・s以下である、画像形成装置又はプロセスカートリッジに搭載前の電子写真感光体。
【請求項2】
前記最表面層に接する下層が、非反応性電荷輸送材料と、Feders法で算出した溶解度パラメータ11.40以上11.75以下のポリカーボネート共重合体と、を含む請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記ポリカーボネート共重合体が、Feders法で算出した溶解度パラメータ12.20以上12.40以下の繰り返し構造単位を有する請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記ポリカーボネート共重合体が、下記一般式(PC−1)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート共重合体である請求項2又は請求項3に記載の電子写真感光体。
【化1】


〔一般式(PC−1)中、Rpc1及びRpc2は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示す。pca及びpcbは、それぞれ独立に0以上4以下の整数を示す。〕
【請求項5】
前記一般式(PC−1)で示される繰り返し構造単位の比率が、前記ポリカーボネート共重合体に対して、20モル%以上40モル%以下である請求項4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記ポリカーボネート共重合体が、下記一般式(PC−2)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート共重合体である請求項2又は請求項3に記載の電子写真感光体
【化2】


〔一般式(PC−2)中、Rpc3及びRpc4は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示す。pcc及びpcdは、それぞれ独立に0以上4以下の整数を示す。Xpcは、−CRpc5pc6−(但し、Rpc5及びRpc6は、それぞれ独立に水素原子、トリフルオロメチル基、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示す。)、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基、炭素数2以上10以下のα,ω−アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、又は−SO−を示す。〕
【請求項7】
前記一般式(PC−2)で示される繰り返し構造単位の比率が、前記ポリカーボネート共重合体に対して、35モル%以上55モル%以下である請求項6に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記反応性電荷輸送材料が、下記一般式(I)及び(II)で示される反応性化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化3】


〔一般式(I)中、Fは、電荷輸送性骨格を示す。Lは、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む2価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。mは1以上8以下の整数を示す。〕
【化4】


〔一般式(II)中、Fは、電荷輸送性骨格を示す。L’は、アルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基、並びに、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む(n+1)価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。 m’は、1以上6以下の整数を示す。nは、2以上3以下の整数を示す。〕
【請求項9】
前記一般式(I)で示される反応性化合物が、下記一般式(I−a)、下記一般式(I−b)、下記一般式(I−c)、及び下記一般式(I−d)で示される反応性化合物からなる群より選択される少なくとも1種の反応性化合物である請求項8に記載の電子写真感光体。
【化5】


〔一般式(I−a)中、Ara1〜Ara4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ara5及びAra6は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Xaは、アルキレン基、−O−、−S−、及びエステル基から選ばれる基を組み合わせてなる2価の連結基を示す。Daは、下記一般式(IA−a)で示される基を示す。ac1〜ac4は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。但し、Daの総数は1又は2である。〕
【化6】


〔一般式(IA−a)中、Lは、*−(CHan−O−CH−で示され、*にてAra1〜Ara4で示される基に連結する2価の連結基を示す。anは、1又は2の整数を示す。〕
【化7】


〔一般式(I−b)中、Arb1〜Arb4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Arb5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dbは、下記一般式(IA−b)で示される基を示す。bc1〜bc5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。bkは、0又は1を示す。但し、Dbの総数は、1又は2である。〕
【化8】


〔一般式(IA−b)中、Lは、*−(CHbn−O−で示される基を含み、*にてArb1〜Arb5で示される基に連結する2価の連結基を示す。bnは、3以上6以下の整数を示す。〕
【化9】


〔一般式(I−c)中、Arc1〜Arc4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Arc5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dcは、下記一般式(IA−c)で示される基を示す。cc1〜cc5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。ckは、0又は1を示す。但し、Dcの総数は、1以上8以下である。〕
【化10】


〔一般式(IA−c)中、Lは、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び、−C(=O)−と−O−、−N(R)−、又は−S−とを組み合わせた基からなる群より選択される1つ以上の基を含む2価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。〕
【化11】


〔一般式(I−d)中、Ard1〜Ard4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ard5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Ddは、下記一般式(IA−d)で示される基を示す。dc1〜dc5は,それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。dkは、0又は1を示す。但し、Ddの総数は、3以上8以下である。〕
【化12】


〔一般式(IA−d)中、Lは、*−(CHdn−O−で示される基を含み、*にてArd1〜Ard5で示される基に連結する2価の連結基を示す。dnは、1以上6以下の整数を示す。〕
【請求項10】
前記一般式(IA−c)で示される基が、下記一般式(IA−c1)で示される基である請求項9に記載の電子写真感光体。
【化13】


〔一般式(IA−c1)中、cp1は0以上4以下の整数を示す。〕
【請求項11】
前記一般式(II)で示される化合物が、下記一般式(II−a)で示される化合物である請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化14】


〔一般式(II−a)中、Ark1〜Ark4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ark5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dkは、下記一般式(IIA−a)で示される基を示す。kc1〜kc5は,それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。kkは、0又は1を示す。但し、Dkの総数は、1以上8以下である。〕
【化15】


〔一般式(IIA−a)中、Lは、アルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基、並びに、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む(kn+1)価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。knは、2以上3以下の整数を示す。〕
【請求項12】
前記一般式(II)で示される化合物のFで示される電荷輸送性骨格に連結する基が、下記一般式(IIA−a1)又は(IIA−a2)で示される基である請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化16】


〔一般式(IIA−a1)又は(IIA−a2)中、Xk1は2価の連結基を示す。kq1は0又は1の整数を示す。Xk2は2価の連結基を示す。kq2は0又は1の整数を示す。〕
【請求項13】
前記一般式(II)で示される化合物のFで示される電荷輸送性骨格に連結する基が、下記一般式(IIA−a3)又は(IIA−a4)で示される基である請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化17】


〔一般式(IIA−a3)又は(IIA−a4)中、Xk3は2価の連結基を示す。kq3は0又は1の整数を示す。Xk4は2価の連結基を示す。kq4は0又は1の整数を示す。〕
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
【請求項15】
請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項16】
前記電子写真感光体の表面に、ステアリン酸亜鉛を供給する供給手段を備える請求項15に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置で使用される電子写真感光体の表面に。保護層を設けて強度を向上させることが提案されている。
保護層を形成する材料系としては、例えば、導電粉をフェノール樹脂に分散したもの(例えば特許文献1参照)、有機―無機ハイブリッド材料によるもの(例えば特許文献2参照)、アルコール可溶性電荷輸送材料とフェノール樹脂によるもの(例えば特許文献3参照)等が開示されている。また、アルキルエーテル化ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂と、電子受容性カルボン酸あるいは、電子受容性ポリカルボン酸無水物の硬化膜(例えば特許文献4参照)、ベンゾグアナミン樹脂にヨウ素、有機スルホン酸化合物、あるいは、塩化第二鉄などをドーピングした硬化膜(例えば特許文献5参照)、特定の添加剤とフェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シロキサン樹脂、あるいは、ウレタン樹脂との硬化膜(例えば特許文献6参照)が開示されている。
【0003】
また、近年ではアクリル系材料による保護層が注目されている。
例えば、光硬化型アクリル系モノマーを含有する液を塗布し硬化した膜(例えば特許文献7参照)、炭素−炭素二重結合を有するモノマー、炭素−炭素二重結合を有する電荷移動材および結着樹脂の混合物を熱、あるいは光のエネルギーによって前記モノマーの炭素−炭素二重結合と前記電荷移動材の炭素−炭素二重結合とを反応させることにより形成された膜(例えば特許文献8参照)、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合した化合物からなる膜(例えば特許文献9参照)が開示されている。
【0004】
これらアクリル系材料を用いて、真空中、あるいは不活性ガス中で放射線照射後に加熱されることによって形成された膜(例えば特許文献10参照)、不活性ガス中で加熱硬化された膜(例えば特許文献11参照)が開示されている。
【0005】
また、電荷輸送材料自身をアクリル変性し、架橋し得るものとするとともに、電荷輸送性を有さない反応性モノマーを添加させることも開示されている(例えば特許文献8、12参照)
【0006】
また、感光層の酸素透過率を制御することにより感光層中の酸化劣化物の発生が低減し、画質安定性と耐摩耗性を改善する方法が提案されている(例えば特許文献13参照)。
また、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸を感光体に供給し、その潤滑剤の皮膜を形成することでクリーニング性が向上し、画質安定性と耐摩耗性を改善する方法が提案されている(例えば特許文献14参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3287678号公報
【特許文献2】特開平12−019749号公報
【特許文献3】特開2002−82469号公報
【特許文献4】特開昭62−251757号公報
【特許文献5】特開平7−146564号公報
【特許文献6】特開平2006−84711号公報
【特許文献7】特開平5−40360号公報
【特許文献8】特開平5−216249号公報
【特許文献9】特開2000−206715号公報
【特許文献10】特開2004−12986号公報
【特許文献11】特開平7−72640号公報
【特許文献12】特開2004−302450号公報
【特許文献13】特開2005−275367号公報
【特許文献14】特公昭51−22380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、電気特性の安定性及び耐傷性に優れた最表面層を持つ電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
【0010】
請求項1に係る発明は、
導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が反応性電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成され、前記最表面層の表面のステアリン酸亜鉛の被覆率が5.0%以上80.0%以下であり、且つ前記ステアリン酸亜鉛の被覆前の最表面層の酸素透過係数が2.0×1012fm/Pa・s以上15.0×1012fm/Pa・s以下である、画像形成装置又はプロセスカートリッジに搭載前の電子写真感光体。
【0011】
請求項2に係る発明は、
前記最表面層に接する下層が、非反応性電荷輸送材料と、Feders法で算出した溶解度パラメータ11.40以上11.75以下のポリカーボネート共重合体と、を含む請求項1に記載の電子写真感光体。
【0012】
請求項3に係る発明は、
前記ポリカーボネート共重合体が、Feders法で算出した溶解度パラメータ12.20以上12.40以下の繰り返し構造単位を有する請求項2に記載の電子写真感光体。
【0013】
請求項4に係る発明は、
前記ポリカーボネート共重合体が、下記一般式(PC−1)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート共重合体である請求項2又は請求項3に記載の電子写真感光体。
【化1】

〔一般式(PC−1)中、Rpc1及びRpc2は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示す。pca及びpcbは、それぞれ独立に0以上4以下の整数を示す。〕
【0014】
請求項5に係る発明は、
前記一般式(PC−1)で示される繰り返し構造単位の比率が、前記ポリカーボネート共重合体に対して、20モル%以上40モル%以下である請求項4に記載の電子写真感光体。
【0015】
請求項6に係る発明は、
前記ポリカーボネート共重合体が、下記一般式(PC−2)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート共重合体である請求項2又は請求項3に記載の電子写真感光体
【化2】

〔一般式(PC−2)中、Rpc3及びRpc4は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示す。pcc及びpcdは、それぞれ独立に0以上4以下の整数を示す。Xpcは、−CRpc5pc6−(但し、Rpc5及びRpc6は、それぞれ独立に水素原子、トリフルオロメチル基、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示す。)、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基、炭素数2以上10以下のα,ω−アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、又は−SO−を示す。〕
【0016】
請求項7に係る発明は、
前記一般式(PC−2)で示される繰り返し構造単位の比率が、前記ポリカーボネート共重合体に対して、35モル%以上55モル%以下である請求項6に記載の電子写真感光体。
【0017】
請求項8に係る発明は、
前記反応性電荷輸送材料が、下記一般式(I)及び(II)で示される反応性化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化3】

〔一般式(I)中、Fは、電荷輸送性骨格を示す。Lは、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む2価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。mは1以上8以下の整数を示す。〕
【化4】

〔一般式(II)中、Fは、電荷輸送性骨格を示す。L’は、アルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基、並びに、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む(n+1)価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。 m’は、1以上6以下の整数を示す。nは、2以上3以下の整数を示す。〕
【0018】
請求項9に係る発明は、
前記一般式(I)で示される反応性化合物が、下記一般式(I−a)、下記一般式(I−b)、下記一般式(I−c)、及び下記一般式(I−d)で示される反応性化合物からなる群より選択される少なくとも1種の反応性化合物である請求項8に記載の電子写真感光体。
【化5】

〔一般式(I−a)中、Ara1〜Ara4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ara5及びAra6は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Xaは、アルキレン基、−O−、−S−、及びエステル基から選ばれる基を組み合わせてなる2価の連結基を示す。Daは、下記一般式(IA−a)で示される基を示す。ac1〜ac4は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。但し、Daの総数は1又は2である。〕
【化6】

〔一般式(IA−a)中、Lは、*−(CHan−O−CH−で示され、*にてAra1〜Ara4で示される基に連結する2価の連結基を示す。anは、1又は2の整数を示す。〕
【化7】

〔一般式(I−b)中、Arb1〜Arb4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Arb5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dbは、下記一般式(IA−b)で示される基を示す。bc1〜bc5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。bkは、0又は1を示す。但し、Dbの総数は、1又は2である。〕
【化8】

〔一般式(IA−b)中、Lは、*−(CHbn−O−で示される基を含み、*にてArb1〜Arb5で示される基に連結する2価の連結基を示す。bnは、3以上6以下の整数を示す。〕
【化9】

〔一般式(I−c)中、Arc1〜Arc4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Arc5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dcは、下記一般式(IA−c)で示される基を示す。cc1〜cc5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。ckは、0又は1を示す。但し、Dcの総数は、1以上8以下である。〕
【化10】

〔一般式(IA−c)中、Lは、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び、−C(=O)−と−O−、−N(R)−、又は−S−とを組み合わせた基からなる群より選択される1つ以上の基を含む2価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。〕
【化11】

〔一般式(I−d)中、Ard1〜Ard4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ard5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Ddは、下記一般式(IA−d)で示される基を示す。dc1〜dc5は,それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。dkは、0又は1を示す。但し、Ddの総数は、3以上8以下である。〕
【化12】

〔一般式(IA−d)中、Lは、*−(CHdn−O−で示される基を含み、*にてArd1〜Ard5で示される基に連結する2価の連結基を示す。dnは、1以上6以下の整数を示す。〕
【0019】
請求項10に係る発明は、
前記一般式(IA−c)で示される基が、下記一般式(IA−c1)で示される基である請求項9に記載の電子写真感光体。
【化13】

〔一般式(IA−c1)中、cp1は0以上4以下の整数を示す。〕
【0020】
請求項11に係る発明は、
前記一般式(II)で示される化合物が、下記一般式(II−a)で示される化合物である請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化14】

〔一般式(II−a)中、Ark1〜Ark4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ark5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dkは、下記一般式(IIA−a)で示される基を示す。kc1〜kc5は,それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。kkは、0又は1を示す。但し、Dkの総数は、1以上8以下である。〕
【化15】

〔一般式(IIA−a)中、Lは、アルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基、並びに、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む(kn+1)価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。knは、2以上3以下の整数を示す。〕
【0021】
請求項12に係る発明は、
前記一般式(II)で示される化合物のFで示される電荷輸送性骨格に連結する基が、下記一般式(IIA−a1)又は(IIA−a2)で示される基である請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化16】

〔一般式(IIA−a1)又は(IIA−a2)中、Xk1は2価の連結基を示す。kq1は0又は1の整数を示す。Xk2は2価の連結基を示す。kq2は0又は1の整数を示す。〕
【0022】
請求項13に係る発明は、
前記一般式(II)で示される化合物のFで示される電荷輸送性骨格に連結する基が、下記一般式(IIA−a3)又は(IIA−a4)で示される基である請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化17】

〔一般式(IIA−a3)又は(IIA−a4)中、Xk3は2価の連結基を示す。kq3は0又は1の整数を示す。Xk4は2価の連結基を示す。kq4は0又は1の整数を示す。〕
【0024】
請求項14に係る発明は、
請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
【0025】
請求項15に係る発明は、
請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【0026】
請求項16に係る発明は、
前記電子写真感光体の表面に、ステアリン酸亜鉛を供給する供給手段を備える請求項15に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明によれば、最表面層の表面のステアリン酸亜鉛の被覆率が5.0%未満であり、且つステアリン酸亜鉛の被覆前の最表面層の酸素透過係数が2.0×1012fm/Pa・s未満である場合に比べ、電気特性の安定性及び耐傷性に優れた最表面層を持つ電子写真感光体が提供される。
請求項2、3、4、5、6又は7に係る発明によれば、最表面層の下層が、溶解度パラメータが上記範囲のポリカーボネート共重合体を含まない場合に比べ、電気特性の安定性及び耐傷性に優れた最表面層を持つ電子写真感光体が提供される。
請求項8、9、10、11、12又は13に係る発明によれば、反応性電荷輸送材料が、下記一般式(I)及び(II)で示される反応性化合物以外の反応性電荷輸送材料を適用した場合に比べ、電気特性の安定性及び耐傷性に優れた最表面層を持つ電子写真感光体が提供される。
請求項に係る発明によれば、最表面層の表面のステアリン酸亜鉛の被覆率が5.0%以上80.0%以下の範囲外、又はステアリン酸亜鉛の被覆前の最表面層の酸素透過係数が2.0×1012fm/Pa・s以上15.0×1012fm/Pa・s以下の範囲外である場合に比べ、電気特性の安定性及び耐傷性に優れた最表面層を持つ電子写真感光体が提供される。
【0028】
請求項14、15、又は16に係る発明によれば、最表面層の表面のステアリン酸亜鉛の被覆率が5.0%未満であり、且つステアリン酸亜鉛の被覆前の最表面層の酸素透過係数が2.0×1012fm/Pa・s未満である電子写真感光体を備える場合に比べ、長寿命のプロセスカートリッジ、又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略部分断面図である。
図2】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略部分断面図である。
図3】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略部分断面図である。
図4】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図5】本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一例である本実施形態について説明する。
【0031】
[電子写真感光体]
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、導電性基体上に設けられた感光層と、を有する。
最表面層は、反応性電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成されている。そして、最表面層の表面のステアリン酸亜鉛の被覆率(以下、単に「ステアリン酸亜鉛の被覆率」とも称する)は5.0%以上であり、且つステアリン酸亜鉛の被覆前の最表面層の酸素透過係数(以下、単に「最表面層の酸素透過係数」とも称する)は2.0×1012fm/Pa・s以上である。
【0032】
ここで、最表面層は、電子写真感光体において導電性基体上に設けられる層のうち、導電性基体から最も遠い位置に設けられる層である。具体的には、最表面層は、例えば、保護層として機能する層、電荷輸送層として機能する層、又はこれらの機能を併有する層として設けられる。
【0033】
本実施形態に係る電子写真感光体は、上記構成により、電気特性の安定性及び耐傷性に優れた最表面層を持つ電子写真感光体となる。その理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと推測される。
【0034】
まず、最表面層の酸素透過係数が2.0×1012fm/Pa・s以上であるとは、最表面層に細孔が多く存在し、最表面層が酸素を透過し易い性質を持つことを示している。一方で、ステアリン酸亜鉛の被覆率が5.0%以上であるとは、ステアリン酸亜鉛が多く最表面層に被覆されていることを示している。つまり、ステアリン酸亜鉛の被覆率及び最表面層の酸素透過係数が共に上記範囲を満たすことは、最表面層の表面の細孔にステアリン酸亜鉛が埋まり込みむように被覆された状態を示している。具体的には、高い酸素透過係数の最表面層が、ステアリン酸亜鉛で被覆されることにより酸素透過係数を低減した状態を示している。
【0035】
酸素透過係数が低減されることにより、最表面層は、電荷輸送材料の酸化による電気特性の低下が抑制される。また、最表面層の表面の細孔に、ステアリン酸亜鉛が埋まり込むように被覆されていることにより、最表面層の表面の潤滑性が高まり、耐傷性も高まる。
【0036】
以上から、本実施形態に係る電子写真感光体は、電気特性の安定性及び耐傷性に優れた最表面層を持つ電子写真感光体となると推察される。
また、最表面層の表面の潤滑性が高まるため、最表面層とクリーニングブレードとの感光体軸方向における負荷(トルク)のバラツキが抑えられ、クリーニングブレードのめくれも抑制され易くなると推察される。
そして、本実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置(又はプロセスカートリッジ)は、長寿命化が実現される。
【0037】
本実施形態に係る電子写真感光体において、ステアリン酸亜鉛の被覆率は、5.0%以上であり、電気特性の安定性及び耐傷性の点から、好ましくは5.0%以上80.0%以下、より好ましくは10.0%以上70.0%以下である。
最表面層の酸素透過係数は、2.0×1012fm/Pa・s以上であり、電気特性の安定性及び耐傷性の点から、好ましくは2.0×1012fm/Pa・s以上15.0×1012fm/Pa・s以下、より好ましくは3.0×1012fm/Pa・s以上12.0×1012fm/Pa・s以下である。
なお、ステアリン酸亜鉛の被覆率、及び最表面層の酸素透過係数は、後述する[実施例]で説明する方法により測定される値である。
【0038】
なお、ステアリン酸亜鉛の被覆は、1)画像形成装置の搭載前の電子写真感光体に予めステアリン酸亜鉛を被覆する方法、2)ステアリン酸亜鉛粒子を含む現像剤を収容した現像手段を備える画像形成装置に電子写真感光体に搭載し、現像剤によりステアリン酸亜鉛を供給して被覆する方法、3)現像手段とは個別に、電子写真感光体の表面にステアリン酸亜鉛を供給する供給手段を備える画像形成装置に電子写真感光体を搭載し、供給手段によりステアリン酸亜鉛を供給して被覆する方法が挙げられる。
【0039】
本実施形態に係る電子写真感光体において、反応性電荷輸送材料として、一般式(I)及び(II)で示される反応性化合物(以下、「特定の反応性電荷輸送材料」とも称する)からなる群より選択される少なくとも1種を含む組成物の硬化膜を最表面層に利用することがよい。この組成物の硬化膜を最表面層として利用すると、ステアリン酸亜鉛の被覆率、及び最表面層の酸素透過係数が上記範囲となり易く、最表面層の電気特性の安定性及び耐傷性が高まり易い。その理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと推測される。
【0040】
まず、特定の反応性電荷輸送材料は、電荷輸送性能に優れる上、−OH、−NH−などの電荷輸送を妨げる極性基が少なく、また、電荷輸送に有効なπ電子を有するスチリル基で、重合により当該材料が連結されることから、残留歪が抑制され、電荷を捕獲する構造的なトラップの形成が抑制される。また、特定の反応性電荷輸送材料は、アクリル系材料よりも疎水的で水分がつきにくい性質があることから、長期にわたって電気特性が維持されると考えられる。
更に、特定の反応性電荷輸送材料は、反応速度が速く、形成する膜(最表面層)に細孔が生じ易い性質がある。これに加え、特定の反応性電荷輸送材料は、アクリル系材料よりも疎水性が高く、ステアリン酸亜鉛との親和性が高い。このため、最表面層の表面の細孔に、ステアリン酸亜鉛が埋まり込み易く、上記ステアリン酸亜鉛の被覆率の範囲に調整し易い。
【0041】
このため、反応性電荷輸送材料として、特定の反応性電荷輸送材料からなる群より選択される少なくとも1種を含む組成物の硬化膜を最表面層に利用すると、電気特性の安定性及び耐傷性に優れた最表面層を持つ電子写真感光体となり易くなると推察される。
【0042】
本実施形態に係る電子写真感光体において、最表面層に接する下層が、非反応性電荷輸送材料、及びFeders法で算出した溶解度パラメータ11.40以上11.75以下のポリカーボネート共重合体を含むことがよい。
【0043】
ここで、最表面層は、各材料を含む塗布液を下層となる感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布により形成する。しかしながら、塗布液作製のために使用する溶媒の種類によっては、最表面層を塗布形成する時に、塗布液の溶媒によって下層となる感光層(例えば電荷輸送層)の結着樹脂が膨潤し、最表面層と下層との成分が混合し、電気特性及び機械的強度が低下することがある。
特に、最表面層に樹脂粒子を含む場合、下層となる感光層(例えば電荷輸送層)の結着樹脂が膨潤すると、樹脂粒子が最表面層の表層側に偏在(つまり高濃度に偏析)することがある。樹脂粒子が最表面層の表層側に偏在(高濃度に偏析)すると、例えば、最表面層の表層部の樹脂成分の割合が低下し、使用初期の耐摩耗性が低下する。
【0044】
これに対して、最表面層と接する下層(感光層(例えば電荷輸送層))に、結着樹脂として、Feders法で算出した溶解度パラメータが11.40以上11.75以下のポリカーボネート共重合体を適用する。これにより、最表面層と下層との成分の混合が抑制され、電気特性及び機械的強度が高まり易くなる。これにより、最表面層の電気特性の安定性、及び耐傷性が高まり易くなる。
特に、最表面層に樹脂粒子を含む場合、最表面層の表層側への樹脂粒子の偏在が抑制される。つまり、最表面層中に、樹脂粒子が均一に分散された状態となり易くなる。
この理由は定かではないが、結着樹脂として、上記範囲の溶解度パラメータのポリカーボネート共重合体を最表面層と接する下層に含ませると、当該ポリカーボネート共重合体が最表面層を形成する際の塗布液の溶媒への溶解性が低く、当該溶媒による結着樹脂の膨潤が抑制されると考えられるためである。
【0045】
なお、本実施形態に係る電子写真感光体において、最表面層は、電子写真感光体自体の最上面を形成していればよく、保護層として機能する層、又は、電荷輸送層として機能する層として設けられる。最表面層が保護層として機能する層である場合、この保護層の下層には、電荷輸送層及び電荷発生層からなる感光層、又は単層型感光層を有することとなる。
具体的には、最表面層が保護層として機能する層の場合、導電性基体上に、感光層(電荷発生層及び電荷輸送層、又は単層型感光層)、及び最表面層として保護層が順次形成された態様が挙げられる。一方、最表面層が電荷輸送層として機能する層の場合、導電性基体上に、電荷発生層、及び最表面層として電荷輸送層が順次形成された態様が挙げられる。
【0046】
以下、最表面層が保護層として機能する層の場合の、本実施形態に係る電子写真感光体について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
【0047】
図1は、本実施形態に係る電子写真感光体の一例を示す概略断面図である。図2乃至図3はそれぞれ本実施形態に係る電子写真感光体の他の一例を示す概略断面図である。
【0048】
図1に示す電子写真感光体7Aは、いわゆる機能分離型感光体(又は積層型感光体)であり、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、電荷輸送層3、及び保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Aにおいては、電荷発生層2及び電荷輸送層3により感光層が構成される。
【0049】
図2に示す電子写真感光体7Bは、図1に示す電子写真感光体7Aのごとく、電荷発生層2と電荷輸送層3とに機能が分離された機能分離型感光体である。
図2に示す電子写真感光体7Bにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に、電荷輸送層3、電荷発生層2、及び保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Bにおいては、電荷輸送層3及び電荷発生層2により感光層が構成される。
【0050】
図3に示す電子写真感光体7Cは、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層6)に含有するものである。図3に示す電子写真感光体7Cにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に単層型感光層6、保護層5が順次形成された構造を有するものである。
【0051】
そして、図1図2及び図3に示す電子写真感光体7A、7B及び7Cにおいて、保護層5が、導電性基体4から最も遠い側に配置される最表面層となっており、当該最表面層が、上記の構成となっている。
なお、図1図2及び図3に示す電子写真感光体において、下引層1は設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0052】
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体7Aに基づいて、各要素について説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0053】
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0054】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0055】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0056】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0057】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0058】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0059】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0060】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0061】
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
【0062】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0063】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0064】
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0065】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0066】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0067】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0070】
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0071】
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0072】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0073】
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
【0074】
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0075】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0076】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0077】
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
【0078】
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0079】
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0080】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0081】
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0082】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0083】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0084】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0085】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0086】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0087】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0088】
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0089】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0090】
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
【0091】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0092】
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
【0093】
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0094】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0095】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0096】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0097】
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro−Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
【0098】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
【0099】
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン;特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン;特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン;特開平4−189873号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。
【0100】
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;特開2004−78147号公報、特開2005−181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等が好ましい。
【0101】
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基材からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp−型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
【0102】
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn−型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。n−型の電荷発生材料としては、例えば、特開2012−155282号公報の段落[0288]〜[0291]に記載された化合物(CG−1)〜(CG−27)が挙げられるがこれに限られるものではない。
なお、n−型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn−型とする。
【0103】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0104】
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
【0105】
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0106】
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
【0107】
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
【0108】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0109】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0110】
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
【0111】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
【0112】
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
【0114】
【化18】
【0115】
構造式(a−1)中、ArT1、ArT2、及びArT3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、−C−C(RT4)=C(RT5)(RT6)、又は−C−CH=CH−CH=C(RT7)(RT8)を示す。RT4、RT5、RT6、RT7、及びRT8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0116】
【化19】
【0117】
構造式(a−2)中、RT91及びRT92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。RT101、RT102、RT111及びRT112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、−C(RT12)=C(RT13)(RT14)、又は−CH=CH−CH=C(RT15)(RT16)を示し、RT12、RT13、RT14、RT15及びRT16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0118】
ここで、構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C−CH=CH−CH=C(RT7)(RT8)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「−CH=CH−CH=C(RT15)(RT16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
【0119】
高分子電荷輸送材料としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系の高分子電荷輸送材は特に好ましい。なお、高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよいが、結着樹脂と併用してもよい。
【0120】
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
【0121】
電荷輸送層に用いる結着樹脂としては、ポリカーボネートが適用されることが好ましい。ポリカーボネートとしては、種々のポリカーボネートが挙げられるが、保護層(最表面層)の電気特性及び耐傷性の向上の観点から、Feders法で算出した溶解度パラメータ(以下、「SP値」と称することがある)が11.40以上11.75以下(好ましくは11.40以上11.70以下)のポリカーボネート共重合体(以下、「特定ポリカーボネート共重合体」と称する)がよい。
【0122】
特定ポリカーボネート共重合体のSP値を上記範囲にすると、保護層(最表面層)へのポリカーボネート(結着樹脂)の移行が抑制され、電気特性の安定性及び耐摩耗性が向上し易くなる。
なお、保護層(最表面層)が樹脂粒子を含む場合、ポリカーボネート共重合体のSP値を11.40以上とすると、保護層(最表面層)の表層側への樹脂粒子の偏在が抑制される。一方、特定ポリカーボネート共重合体のSP値を11.75以下とすると、保護層(最表面層)の下層の材料(具体的には、例えば、電荷輸送層の電荷輸送材料)との相溶性の悪化を抑え、電子写真感光体の電気特性の低下(特に繰り返し使用による残留電位の上昇)が抑制され易くなる。
【0123】
特定ポリカーボネート共重合体は、SP値が12.20以上12.40以下の繰り返し構造単位を有することがよい。ポリカーボネート共重合体の繰り返し構造単位の少なくとも一つとして、上記範囲といった高めのSP値を持つ繰り返し構造単位を有すると、特定ポリカーボネート共重合体全体が保護層(最表面層)の樹脂成分との相溶性が低下し易くなり電荷輸送層の電荷輸送材料の保護層への拡散が抑制され易くなると考えられる。このため、電子写真感光体の電気特性の低下(特に繰り返し使用による残留電位の上昇)が抑制され易くなる。
【0124】
ここで、Feders法とは、溶解度パラメーター(SP値)を構造式から簡便に算出する方法である。具体的には、Feders法では、凝集エネルギー密度をΔE、モル体積をVとすると、SP値δ=(ΔE/V)1/2=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2から算出する。なお、ei、viはそれぞれ各構造式ユニットの凝集エネルギー、モル体積であり、その一覧は例えば「コーティングの基礎と工学」(加工技術研究会)55ページ」に記載されている。
なお、溶解度パラメーター(SP値)の単位として(cal/cm1/2を採用するが、慣行に従い単位を省略し、無次元で表記する。
【0125】
そして、Feders法による溶解度パラメーター(SP値)の算出方法は以下のように定義される。すなわち、共重合体を構成する繰り返し構造単位の溶解度パラメーターをδn、該繰り返し構造単位の共重合体内での存在比率(モル比)χnとしたとき、共重合体の溶解度パラメーター(SP値)δ=Σ(δn・χn)とする。繰り返し構造単位の溶解度パラメーター(SP値)を計算するとき、カーボネート基の凝集エネルギー、モル体積は、「コーティングの基礎と工学」(加工技術研究会)55ページ」の一覧で示されたΔei=4200cal/mol、Δvi=22.0cm/molの値を使用する。例えば、ビスフェノールZモノマーとビスフェノールFモノマーから重合されたポリカーボネート共重合体であり、それぞれの繰り返し単位のモル比がZユニット70%、Fユニット30%である場合、Zユニットの繰り返し単位構造は下記Zユニット(I)で、δ=((1180×5+350×1+7630×2+4200×1+250×1)/(16.1×5+(−19.2)×1+52.4×2+22.0×1+16×1))1/2=11.28、Fユニットの繰り返し単位構造は下記Fユニット(I)で、δ=((1180×1+7630×2+4200×1)/(16.1×1+52.4×2+22.0×1))1/2=12.02であり、ポリカーボネート共重合体の溶解度パラメーターδZ70F30はδZ70F30=11.28×0.7+12.02×0.3=11.50となる。
【0126】
【化20】
【0127】
特定ポリカーボネート共重合体としては、具体的には、例えば、ビフェニルモノマー、及びビスフェノールモノマーから選択される少なくとも2種以上の2価のモノマー(以下、「2価フェノール」と称する)の共重合体が挙げられる。
特に、特定ポリカーボネート共重合体としては、保護層(最表面層)へのポリカーボネート(結着樹脂)の移行を抑制する観点から、例えば、下記一般式(PC−1)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート共重合体、下記一般式(PC−2)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート共重合体が好適に挙げられる。
具体的には、特定ポリカーボネート共重合体としては、
1)構造が異なる2種以上の下記一般式(PC−1)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート共重合体、
2)構造が異なる2種以上の下記一般式(PC−2)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート共重合体
3)1種又は構造が異なる2種以上の下記一般式(PC−1)で示される繰り返し構造単位と、1種又は構造が異なる2種以上の下記一般式(PC−2)で示される繰り返し構造単位と、を有するポリカーボネート共重合体
が挙げられる。
なお、特定ポリカーボネート共重合体は、SP値が上記範囲となるように、各繰り返し構造単位(モノマー)が選択される。
【0128】
【化21】
【0129】
一般式(PC−1)中、Rpc1及びRpc2は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示す。
pca及びpcbは、それぞれ独立に0以上4以下の整数を示す。
【0130】
一般式(PC−1)中、Rpc1及びRpc2は、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下のアルキル基を示すことが好ましく、さらに、メチル基を示すことがより好ましい。
一般式(A)中、pca及びpcbは、それぞれ独立に0以上2の整数を示すことが好ましく、特に0であることが最も好ましい。
【0131】
【化22】
【0132】
一般式(PC−2)中、Rpc3及びRpc4は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示す。pcc及びpcdは、それぞれ独立に0以上4以下の整数を示す。Xpcは、−CRpc5pc6−(但し、Rpc5及びRpc6は、それぞれ独立に水素原子、トリフルオロメチル基、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示す。)、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基、炭素数2以上10以下のα,ω−アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、又は−SO−を示す。
【0133】
一般式(PC−2)中、Rpc3及びRpc4は、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、さらに、メチル基を表すことがより好ましい。
pcc及びpcdは、それぞれ独立に0以上2の整数を表すことが好ましい。
pcは、−CRpc5pc6−(但し、Rpc5及びRpc6は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基を示す。)、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基を示すことが好ましい。
【0134】
特定ポリカーボネート共重合体において、保護層(最表面層)へのポリカーボネート(結着樹脂)の移行を抑制する観点から、一般式(PC−1)で示される繰り返し構造単位の比率(モル比)は、特定ポリカーボネート共重合体(全繰り返し構造単位)に対して、20モル%以上40モル%以下であることがよく、好ましくは23モル%以上37モル%以下である。
また、保護層(最表面層)へのポリカーボネート(結着樹脂)の移行を抑制する観点から、一般式(PC−2)で示される繰り返し構造単位の比率(モル比)は、ポリカーボネート共重合体(全繰り返し構造単位)に対して、35モル%以上90モル%以下であることがよく、好ましくは35モル%以上55モル%以下、より好ましくは38モル%以上52モル%以下である。
【0135】
特定ポリカーボネート共重合体を構成する繰り返し単位(ユニット)の具体例を以下に示す。なお、繰り返し構造単位の具体例(ユニット)は、その繰り返し単位を形成する2価フェノールHO―(X)―OHのXの部分の構造を例示して示す。具体的には、例えば、ユニットNo,欄「(BP)−0」で示す繰り返し構造単位は、[−O−(構造欄に示す構造)−O−C(=O)−]で示される構造単位を示す。
【0136】
【化23】
【0137】
【化24】
【0138】
【化25】
【0139】
【化26】
【0140】
【化27】
【0141】
【化28】
【0142】
【化29】
【0143】
【化30】
【0144】
【化31】
【0145】
特定ポリカーボネート共重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0146】
特定ポリカーボネート共重合体の粘度平均分子量は、30000以上が好ましく、45000以上のものがより好ましい。特定ポリカーボネート共重合体の粘度平均分子量の上限値としては100000以下が好ましい。
ここで、粘度平均分子量は、毛細管粘度計によって測定した値である。
【0147】
特定ポリカーボネート共重合は、公知の方法、例えば、2価フェノールにホスゲンや炭酸ジエステル等のカーボネート前駆物質を反応させる方法を用いることにより合成される。以下、この合成方法について基本的な方法を簡単に説明する。
【0148】
例えば、カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤及び溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えばピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミン、第四級アンモニウム塩等の触媒を用いてもよい。反応温度は通常0℃以上40℃以下、反応時間は数分以上5時間以下、反応中のPHは通常10以上とすることがよい。
重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用してもよい。この単官能フェノール類としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0149】
ここで、特定ポリカーボネート共重合体を代表とするポリカーボネートは、これ以外の結着樹脂を併用してもよい。但し、ポリカーボネート以外の結着樹脂の含有量は、例えば、全結着樹脂に対して10質量%以下である。
ポリカーボネート以外の結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、及びポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
【0150】
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
【0151】
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0152】
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0153】
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
【0154】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0155】
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
【0156】
(保護層)
保護層(最表面層)は、電子写真感光体における最表面層であり、反応性電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成されている。つまり、保護層は、反応性電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む、
保護層には、非反応性電荷輸送材料、不飽和結合(不飽和二重結合)を有する化合物等のその他の添加剤を更に含む組成物で構成されていてもよい。つまり、保護層は、反応性電荷輸送材料と不飽和結合を有する化合物との重合体又は架橋体、樹脂粒子、非反応性電荷輸送材料等のその他の添加剤を更に含んでいてもよい。
【0157】
なお、硬化膜の硬化方法としては、熱、光、又は放射線などによるラジカル重合が行なわれる。反応が早く進行しすぎないよう調整すると、保護層(最表面層)の機械的強度及び電気特性が向上し、また膜のムラやシワの発生も抑制されるため、ラジカル発生が比較的ゆっくりと起こる条件下で重合させることが好ましい。この点からは、重合速度を調整しやすい熱重合が好適である。つまり、保護層(最表面層)を構成する硬化膜を形成するための組成物には、熱ラジカル発生剤又はその誘導体を含むことがよい。
【0158】
−反応性電荷輸送材料−
反応性電荷輸送材料としては、同一分子内に電荷輸送性骨格及び反応性基を有する化合物であれば、周知の材料から選択される。ここで、反応性基としては、連鎖重合性基が挙げられ、例えば、ラジカル重合し得る官能基であることよく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基が挙げられる。具体的には、連鎖重合性基としては、例えば、ラジカル重合し得る官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性官能基としては、ビニル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくも一つを含有する基であることが好ましい。
また、電荷輸送性骨格としては電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
【0159】
反応性電荷輸送材料として、具体的には、電気特性と機械的強度の観点から、一般式(I)及び(II)で示される反応性化合物(特定の反応性電荷輸送材料)からなる群より選択される少なくとも1種であることがよい。
【0160】
【化32】
【0161】
一般式(I)中、Fは、電荷輸送性骨格を示す。
Lは、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む2価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。
mは1以上8以下の整数を示す。
【0162】
【化33】
【0163】
一般式(II)中、Fは、電荷輸送性骨格を示す。
L’は、アルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基、並びに、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−の基からなる群より選択される2種以上を含む(n+1)価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。なお、アルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基とは、アルカン又はアルケンから水素原子を3つ又は4つ取り除いた基を意味する。以下、同様である。
m’は、1以上6以下の整数を示す。nは、2以上3以下の整数を示す。
【0164】
一般式(I)及び(II)中、Fは、電荷輸送性骨格、つまり電荷輸送性を有する構造を示し、具体的には、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、アゾベンゼン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物、キノン系化合物、フルオレノン系化合物、などの電荷輸送性を有する構造が挙げられる。
【0165】
一般式(I)中、Lで示される連結基としては、例えば、
アルキレン基中に−C(=O)−O−が介在した2価の連結基、
アルキレン基中に−C(=O)−N(R)−が介在した2価の連結基、
アルキレン基中に−C(=O)−S−が介在した2価の連結基、
アルキレン基中に−O−が介在した2価の連結基、
アルキレン基中に−N(R)−が介在した2価の連結基、
アルキレン基中に−S−が介在した2価の連結基、
が挙げられる。
なお、Lで示される連結基は、アルキレン基中に、−C(=O)−O−、−C(=O)−N(R)−、−C(=O)−S−、−O−、又は−S−の基が2つ介在してもよい。
【0166】
一般式(I)中、Lで示される連結基として具体的には、例えば、
*−(CH−C(=O)−O−(CH−、
*−(CH−O−C(=O)−(CH−C(=O)−O−(CH−、
*−(CH−C(=O)−N(R)−(CH−、
*−(CH−C(=O)−S−(CH−、
*−(CH−O−(CH−、
*−(CH−N(R)−(CH−、
*−(CH−S−(CH−、
*−(CH−O−(CH−O−(CH
等が挙げられる。
ここで、Lで示される連結基中、pは、0、又は1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。qは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。rは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。
なお、Lで示される連結基中、「*」は、Fと連結する部位を示している。
【0167】
一方、一般式(II)中、L’で示される連結基としては、例えば、
分枝状に連結したアルキレン基中に−C(=O)−O−が介在した(n+1)価の連結基、
分枝状に連結したアルキレン基中に−C(=O)−N(R)−が介在した(n+1)価の連結基、
分枝状に連結したアルキレン基中に−C(=O)−S−が介在した(n+1)価の連結基、
分枝状に連結したアルキレン基中に−O−が介在した(n+1)価の連結基、
分枝状に連結したアルキレン基中に−N(R)−が介在した(n+1)価の連結基、
分枝状に連結したアルキレン基中に−S−が介在した(n+1)価の連結基、
が挙げられる。
なお、L’で示される連結は、分枝状に連結したアルキレン基中に、−C(=O)−O−、−C(=O)−N(R)−、−C(=O)−S−、−O−、又は−S−の基が2つ介在してもよい。
【0168】
一般式(II)中、L’で示される連結基として具体的には、例えば、
*−(CH−CH[C(=O)−O−(CH−]
*−(CH−CH=C[C(=O)−O−(CH−]
*−(CH−CH[C(=O)−N(R)−(CH−]
*−(CH−CH[C(=O)−S−(CH−]
*−(CH−CH[(CH−O−(CH−]
*−(CH−CH=C[(CH−O−(CH−]
*−(CH−CH[(CH−N(R)−(CH−]
*−(CH−CH[(CH−S−(CH−]
【化34】


*−(CH−O−C[(CH−O−(CH−]
*−(CH−C(=O)−O−C[(CH−O−(CH−]
等が挙げられる。
ここで、L’で示される連結基中、pは、0、又は1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。qは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。rは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。sは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。
なお、L’で示される連結基中、「*」は、Fと連結する部位を示している。
【0169】
これらの中でも、一般式(II)中、L’で示される連結基としては、
*−(CH−CH[C(=O)−O−(CH−]
*−(CH−CH=C[C(=O)−O−(CH−]
*−(CH−CH[(CH−O−(CH−]
*−(CH−CH=C[(CH−O−(CH−]
がよい。
具体的には、一般式(II)で示される反応性化合物のFで示される電荷輸送性骨格に連結する基(一般式(IIA−a)で示される基が該当)は、下記一般式(IIA−a1)、下記一般式(IIA−a2)、下記一般式(IIA−a3)、又は下記一般式(IIA−a4)で示される基であることがよい。
【0170】
【化35】
【0171】
一般式(IIA−a1)又は(IIA−a2)中、Xk1は2価の連結基を示す。kq1は0又は1の整数を示す。Xk2は2価の連結基を示す。kq2は0又は1の整数を示す。
ここで、Xk1及びXk2で示される2価の連結基は、例えば、−(CH−(但しpは1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す))が挙げられる。当該2価の連結基としては、アルキルオキシキ基も挙げられる。
【0172】
【化36】
【0173】
一般式(IIA−a3)又は(IIA−a4)中、Xk3は2価の連結基を示す。kq3は0又は1の整数を示す。Xk4は3価の連結基を示す。kq4は0又は1の整数を示す。
ここで、Xk3及びXk4で示される2価の連結基は、例えば、−(CH−(但しpは1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す))が挙げられる。当該2価の連結基としては、アルキルオキシキ基も挙げられる。
【0174】
一般式(I)及び(II)中、L、L’で示される連結基において、「−N(R)−」のRで示されるアルキル基としては、炭素数1以上5以下(好ましくは1以上4以下)の直鎖状、分枝状のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
「−N(R)−」のRで示されるアリール基としては、炭素数6以上15以下(好ましくは6以上12以下)のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリジル基、ナフチル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、炭素数7以上15以下(好ましくは7以上14以下)のアラルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ビフェニルメチレン基等が挙げられる。
【0175】
一般式(I)及び(II)中、mは、1以上6以下の整数を示すことが好ましい。
m’は、1以上6以下の整数を示すことが好ましい。
nは、2以上3以下の整数を示すことが好ましい。
【0176】
次に、一般式(I)及び(II)で示される反応性化合物の好適な化合物について説明する。
一般式(I)及び(II)で示される反応性化合物としては、Fとしてトリアリールアミン系化合物に由来する電荷輸送性骨格(電荷輸送性を有する構造)を有する反応性化合物がよい。
具体的には、一般式(I)で示される反応性化合物としては、一般式(I−a)、一般式(I−b)、一般式(I−c)、及び一般式(I−d)で示される反応性化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好適である。
一方、一般式(II)で示される反応性化合物としては、一般式(II−a)で示される反応性化合物が好適である。
【0177】
・一般式(I−a)で示される反応性化合物
一般式(I−a)で示される反応性化合物について説明する。
特定の反応性電荷輸送材料として一般式(I−a)で示される反応性化合物を適用すると、環境変化に起因する電気特性の劣化が抑制され易くなる。その理由は定かではないが、以下の通りと考えられる。
まず、従来用いられていた、(メタ)アクリル基を有する反応性化合物は、重合の際に電荷輸送性能を発現する骨格の部位に対して、(メタ)アクリル基の親水性が強いことから、ある種の層分離状態を形成してしまい、ホッピング伝導の妨げとなっていることが考えられる。このため、(メタ)アクリル基を有する反応性化合物の重合体又は架橋体を含む電荷輸送性膜は、電荷輸送の効率が落ち、更に、部分的な水分の吸着などにより環境安定性が低下するものと考えられる。
これ対して、一般式(I−a)で示される反応性化合物は、親水性の強くないビニル系の連鎖重合性基を有しており、更に、電荷輸送性能を発現する骨格を一分子内に複数有し、その骨格同士を芳香環や共役二重結合などの共役結合を有しない、柔軟性のある連結基で連結している。このような構造を有することから、効率的な電荷輸送性能と高強度化が図れると共に、重合の際の層分離状態の形成が抑制されるものと考えられる。その結果として、一般式(I−a)で示される反応性化合物の重合体又は架橋体を含む保護層(最表面層)は、電荷輸送性能と機械的強度との両方に優れ、更に、電荷輸送性能の環境依存(温湿度依存)を低減しうるものと考えられる。
以上から、一般式(I−a)で示される反応性化合物を適用すると、環境変化に起因する電気特性の劣化が抑制され易くなると考えられる。
【0178】
【化37】
【0179】
一般式(I−a)中、Ara1〜Ara4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ara5及びAra6は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Xaは、アルキレン基、−O−、−S−、及びエステルから選ばれる基を組み合わせてなる2価の連結基を示す。Daは、下記一般式(IA−a)で示される基を示す。ac1〜ac4は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。但し、Daの総数は1又は2である。
【0180】
【化38】
【0181】
一般式(IA−a)中、Laは、*−(CHan−O−CH−で示され、*にてAra1〜Ara4で示される基に連結する2価の連結基を示す。anは、1又は2の整数を示す。
【0182】
以下、一般式(I−a)の詳細を説明する。
一般式(I−a)中、Ara1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基は、それぞれ、同一でもあってもよいし、異なっていてもよい。
ここで、置換アリール基における置換基としては、「Da」以外のものとして、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0183】
一般式(I−a)中、Ara1〜Ara4としては、下記構造式(1)〜(7)のうちのいずれかであることが好ましい。
なお、下記構造式(1)〜(7)は、Ara1〜Ara4の各々に連結され得る「−(Da)ac1」〜「−(Da)ac1」を総括的に示した「−(D)」と共に示す。
【0184】
【化39】

【0185】
構造式(1)〜(7)中、R11は、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、及び炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を示す。R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を示す。R14は、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を示す。Arは、置換又は未置換のアリーレン基を示す。sは、0又は1を示す。tは、0以上3以下の整数を示す。Z’は、2価の有機連結基を示す。
【0186】
ここで、式(7)中、Arとしては、下記構造式(8)又は(9)で示されるものが好ましい。
【0187】
【化40】

【0188】
構造式(8)及び(9)中、R15及びR16は、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、t1及びt2はそれぞれ0以上3以下の整数を示す。
【0189】
また、式(7)中、Z’は、下記構造式(10)〜(17)のうちのいずれかで示されるものが好ましい。
【0190】
【化41】

【0191】
構造式(10)〜(17)中、R17及びR18は、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を示す。Wは、2価の基を示す。q1及びr1は、それぞれ独立に1以上10以下の整数を示す。t3及びt4は、それぞれ0以上3以下の整数を示す。
【0192】
構造式(16)〜(17)中、Wとしては、下記構造式(18)〜(26)で示される2価の基のうちのいずれかであることが好ましい。但し、式(25)中、uは、0以上3以下の整数を示す。
【0193】
【化42】

【0194】
一般式(I−a)中、Ara5及びAra6で示される置換若しくは未置換のアリーレン基において、このアリーレン基としては、Ara1〜Ara4の説明で例示されたアリール基から目的とする位置の水素原子を1つ除いたアリーレン基が挙げられる。
また、置換アリーレン基における置換基としては、Ara1〜Ara4の説明で、置換アリール基における「Da」以外の置換基として挙げられているものと同様である。
【0195】
一般式(I−a)中、Xaで示される2価の連結基は、アルキレン基、又はアルキレン基、−O−、−S−、及びエステルから選ばれる基を組み合わせてなる2価の基であって、芳香環や共役二重結合などの共役結合を含まない連結基である。
具体的には、Xaで示す2価の連結基として、炭素数1以上10以下のアルキレン基が挙げられ、その他、炭素数1以上10以下のアルキレン基と−O−、−S−、−O−C(=O)−、及び−C(=O)−O−から選ばれる基とを組み合わせてなる2価の基も挙げられる。
なお、Xaで示される2価の連結基がアルキレン基である場合、このアルキレン基はアルキル、アルコキシ、ハロゲン等の置換基を有していてもよく、この置換基の2つが互いに結合して、構造式(16)〜(17)中のWの具体例として記載した構造式(26)で示される2価の連結基のような構造となってもよい。
【0196】
・一般式(I−b)で示される反応性化合物
一般式(I−b)で示される反応性化合物について説明する。
特定の反応性電荷輸送材料として一般式(I−b)で示される反応性化合物を適用すると、保護層(最表面層)の摩耗が抑制される共に、画像の濃度ムラの発生が抑制され易くなる。その理由は定かではないが、以下の通りと考えられる。
まず、かさ高い電荷輸送性骨格と重合部位(スチリル基)が構造的に近く、剛直(リジッド)であると重合部位同士が動きずらくなり、硬化反応による残留歪が残りやすく、電荷輸送性骨格が歪むことによりキャリア輸送をになうHOMO(最高被占軌道)のレベルの変化が起こり、結果としてエネルギー分布が広がった状態(エネルギー的ディスオーダー:σが大きい)となりやすいと考えられる。
これに対し、メチレン基、エーテル基を介すると、分子構造に柔軟性が得られ、σが小さいものが得られやすく、さらに、メチレン基、エーテル基は、エステル基、アミド基などに比較し、双極子モーメント(ダイポールモーメント)が小さく、この効果もσを小さくすることに寄与し、電気特性が向上すると考えられる。また、分子構造に柔軟性が加わることで、反応部位(反応サイト)の動きの自由度が増し、反応率も向上することで強度の高い膜となると考えられる
これらのことから、電荷輸送性骨格と重合部位との間に柔軟性に富む連結鎖を介在させる構造がよい。
このため、一般式(I−b)で示される反応性化合物は、硬化反応により分子自身の分子量が増大し、重心は移動し難くなると共に、スチリル基の自由度が高いと考えられる。の結果、一般式(I−b)で示される反応性化合物の重合体又は架橋体を含む保護層(最表面層)は、電気特性に優れ、且つ、高い強度を有すると考えられる。
以上から、一般式(I−b)で示される反応性化合物を適用すると、保護層(最表面層)の摩耗が抑制される共に、画像の濃度ムラの発生が抑制され易くなると考えられる。
【0197】
【化43】
【0198】
一般式(I−b)中、Arb1〜Arb4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Arb5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dbは、下記一般式(IA−b)で示される基を示す。bc1〜bc5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。bkは、0又は1を示す。但し、Dbの総数は、1又は2である。
【0199】
【化44】
【0200】
一般式(IA−b)中、Lは、*−(CHbn−O−で示される基を含み、*にてArb1〜Arb5で示される基に連結する2価の連結基を示す。bnは、3以上6以下の整数を示す。
【0201】
以下、一般式(I−b)の詳細を説明する。
一般式(I−b)中、Arb1〜Arb4で示される置換若しくは未置換のアリール基は、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Arb5は、bkが0のとき、置換若しくは未置換のアリール基を示し、この置換若しくは未置換のアリール基としては、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Arb5は、bkが1のとき、置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、この置換若しくは未置換のアリーレン基としては、一般式(I−a)中のAra5及びAra6で示される置換若しくは未置換のアリーレン基と同様である。
【0202】
次に、一般式(IA−b)の詳細を説明する。
一般式(IA−b)中、Lで示される2価の連結基としては、例えば、
*−(CHbp−O−、
*−(CHbp−O−(CHbq−O−
等が挙げられる。
ここで、Lで示される連結基中、bpは、3以上6以下(好ましくは3以上5以下)の整数を示す。bqは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。
なお、Lで示される連結基中、「*」は、Arb1〜Arb5で示される基と連結する部位を示している。
【0203】
・一般式(I−c)で示される反応性化合物
一般式(I−c)で示される反応性化合物について説明する。
特定の反応性電荷輸送材料として一般式(I−c)で示される反応性化合物を適用すると、繰り返し使用しても表面にキズが発生しにくく、かつ画質劣化が抑制され易くなる。その理由は定かではないが、以下の通りと考えられる。
まず、特定の反応性電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む最表面層を形成する際には、その重合反応又は架橋反応に伴う膜収縮や、電荷輸送構造と連鎖重合性基周辺の構造の凝集が起きると考えられる。よって、繰り返し使用で電子写真感光体表面が機械的負荷を受けると、膜自体が摩耗したり、分子中の化学構造が切断されたりして、膜収縮や凝集状態が変化し、電子写真感光体としての電気特性が変化し、画質劣化を引き起こしてしまうと考えられる。
一方、一般式(I−c)で示される反応性化合物は、連鎖重合性基としてスチレン骨格を有していることから、電荷輸送材料の主骨格であるアリール基と相溶性が良く、膜収縮や重合反応又は架橋反応による電荷輸送構造、連鎖重合性基周辺構造の凝集が抑制されると考えられる。その結果、一般式(I−c)で示される反応性化合物の重合体又は架橋体を含む保護層(最表面層)を持つ電子写真感光体は、繰り返し使用による画質劣化が抑制されると考えられる。
加えて、一般式(I−c)で示される反応性化合物は、電荷輸送性骨格とスチレン骨格を、−C(=O)−、−N(R)−、−S−など特定の基を含む連結基を介して連結することにより、特定の基と電荷輸送性骨格中の窒素原子との間や、特定の基同士の相互作用等が生じると考えられる、その結果、一般式(I−c)で示される反応性化合物の重合体又は架橋体を含む保護層(最表面層)は、強度がさらに向上すると考えられる。
以上から、一般式(I−c)で示される反応性化合物を適用すると、繰り返し使用しても表面にキズが発生しにくく、かつ画質劣化が抑制され易くなると考えられる。
なお、−C(=O)−、−N(R)−、−S−など特定の基は、その極性や親水性に起因し、電荷輸送性や高湿条件下における画質劣化を引き起こす要因となるが、一般式(I−c)で示される反応性化合物は、連鎖重合性基として(メタ)アクリルなどよりも疎水性の高いスチレン骨格を有してるため、電荷輸送性悪化や前サイクルの履歴による残像現象(ゴースト)等の画質劣化が生じ難いと考えられる。
【0204】
【化45】
【0205】
一般式(I−c)中、Arc1〜Arc4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Arc5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dcは、下記一般式(IA−c)で示される基を示す。cc1〜cc5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。ckは、0又は1を示す。但し、Dcの総数は、1以上8以下である。
【0206】
【化46】
【0207】
一般式(IA−c)中、Lは、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び、−C(=O)−と−O−、−N(R)−又は−S−とを組み合わせた基からなる群より選択される1つ以上の基を含む2価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。
【0208】
以下、一般式(I−c)の詳細を説明する。
一般式(I−c)中、Arc1〜Arc4で示される置換若しくは未置換のアリール基は、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Arc5は、ckが0のとき、置換若しくは未置換のアリール基を示し、この置換若しくは未置換のアリール基としては、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Arc5は、ckが1のとき、置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、この置換若しくは未置換のアリーレン基としては、一般式(I−a)中のAra5及びAra6で示される置換若しくは未置換のアリーレン基と同様である。
Dcの総数は、より強度の高い保護層(最表面層)を得る観点から、好ましくは2以上であり、更に好ましくは4以上である。一般に、一分子中の連鎖重合性基の数が多すぎると、重合(架橋)反応が進むにつれ、分子が動きにくくなり連鎖重合反応性が低下し、未反応の連鎖重合性基の割合が増えてしまうことから、Dcの総数は、好ましくは7以下、さらに好ましくは6以下である。
【0209】
次に、一般式(IA−c)の詳細を説明する。
一般式(IA−c)中、Lで示される2価の連結基としては、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び、−C(=O)−と−O−、−N(R)−又は−S−とを組み合わせた基(以下、「特定連結基」と称する)を含む2価の連結基である。
ここで、特定連結基としては、保護層(最表面層)の強度と極性(親疎水性)のバランスの観点から、例えば、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、−C(=O)−O−、−C(=O)−N(R)−、−C(=O)−S−、−O−C(=O)−O−、−O−C(=O)−N(R)−がよく、好ましくは−N(R)−、−S−、−C(=O)−O−、−C(=O)−N(H)−、−C(=O)−O−、より好ましくは−C(=O)−O−である。
そして、Lで示される2価の連結基としては、例えば、特定連結基と、飽和炭化水素(直鎖状、分岐状、環状いずれも含む)または芳香族炭化水素の残基と、酸素原子と、を組み合わせて形成される2価の連結基が挙げられ、これらの中でも、特定連結基と、直鎖状の飽和炭化水素の残基と、酸素原子と、を組み合わせて形成される2価の連結基がよい。
で示される2価の連結基に含まれる炭素原子の総数としては、分子中のスチレン骨格の密度と連鎖重合反応性の観点から、例えば、1以上20以下がよく、好ましくは2以上10以下である。
【0210】
一般式(IA−c)中、Lで示される2価の連結基として具体的には、例えば、
*−(CHcp−C(=O)−O−(CHcq−、
*−(CHcp−O−C(=O)−(CHcr−C(=O)−O−(CHcq−、
*−(CHcp−C(=O)−N(R)−(CHcq−、
*−(CHcp−C(=O)−S−(CHcq−、
*−(CHcp−N(R)−(CHcq−、
*−(CHcp−S−(CHcq−、
等が挙げられる。
ここで、Lで示される連結基中、cpは、0、又は1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。cqは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。crは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。
なお、Lで示される連結基中、「*」は、Arc1〜Arc5で示される基と連結する部位を示している。
【0211】
これらの中でも、一般式(IA−c)中、Lで示される2価の連結基としては、*−(CHcp−C(=O)−O−CH−が好ましい。つまり、一般式(IA−c)で示される基は、下記一般式(IA−c1)で示される基であることが好ましい。但し、一般式(IA−c1)中、cp1は0以上4以下の整数を示す。
【0212】
【化47】
【0213】
・一般式(I−d)で示される反応性化合物
一般式(I−d)で示される反応性化合物について説明する。
特定の反応性電荷輸送材料として一般式(I−d)で示される反応性化合物を適用すると、保護層(最表面層)の摩耗が抑制される共に、画像の濃度ムラの発生が抑制され易くなる。その理由は定かではないが、一般式(I−b)で示される反応性化合物と同様の理由によるものと考えられる。
特に、一般式(I−d)で示される反応性化合物は、一般式(I−b)に比べ、Ddの総数が3以上8以下と多いため、形成される架橋体がより高い架橋構造(架橋ネットワーク)が形成され易く、より保護層(最表面層)の摩耗が抑制され易くなると考えられる。
【0214】
【化48】
【0215】
一般式(I−d)中、Ard1〜Ard4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ard5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Ddは、下記一般式(IA−d)で示される基を示す。dc1〜dc5は,それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。dkは、0又は1を示す。但し、Ddの総数は、3以上8以下である。
【0216】
【化49】
【0217】
一般式(IA−d)中、Lは、*−(CHdn−O−で示される基を含み、*にてArd1〜Ard5で示されるに連結する2価の連結基を示す。dnは、1以上6以下の整数を示す。
【0218】
以下、一般式(I−d)の詳細を説明する。
一般式(I−d)中、Ard1〜Ard4で示される置換若しくは未置換のアリール基は、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Ard5は、dkが0のとき、置換若しくは未置換のアリール基を示し、この置換若しくは未置換のアリール基としては、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Ard5は、dkが1のとき、置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、この置換若しくは未置換のアリーレン基としては、一般式(I−a)中のAra5及びAra6で示される置換若しくは未置換のアリーレン基と同様である。
Ddの総数は、より強度の高い保護層(最表面層)を得る観点から、好ましくは4以上である。
【0219】
次に、一般式(IA−d)の詳細を説明する。
一般式(IA−d)中、Lで示される2価の連結基としては、例えば、
*−(CHdp−O−、
*−(CHdp−O−(CHdq−O−
等が挙げられる。
ここで、Lで示される連結基中、dpは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。dqは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。
なお、Lで示される連結基中、「*」は、Ard1〜Ard5で示される基と連結する部位を示している。
【0220】
・一般式(II−a)で示される反応性化合物
一般式(II−a)で示される反応性化合物について説明する。
特定の反応性電荷輸送材料として、一般式(II)(特に一般式(II−a))で示される反応性化合物を適用すると、長期に亘り繰り返し使用しても電気特性の劣化が抑制され易くなる。その理由は定かではないが、以下の通りと考えられる。
まず、一般式(II)(特に一般式(II−a))で示される反応性化合物は、電荷輸送性骨格から、1つの連結基を介して2つ又は3つの連鎖重合性の反応性基(スチレン基)を有する化合物である。
このため、一般式(II)(特に一般式(II−a))で示される反応性化合物は、高い硬化度、架橋部位数を保ちつつも、この連結基の存在により、重合又は架橋させた際に電荷輸送性骨格に歪みを発生させ難く、高い硬化度と優れた電荷輸送性能との両立が実現され易くなると考えられる。
また、従来用いられていた、(メタ)アクリル基を有する電荷輸送性化合物は、上記のようにひずみを生じやすい上に、反応性部位は親水性が高く、電荷輸送性部位は疎水性が高いため、微視的な相分離(ミクロ相分離)しやすいのに対し、一般式(II)(特に一般式(II−a))で示される反応性化合物は、スチレン基を反応性基として有しており、更に、硬化(架橋)させた際に電荷輸送性骨格に歪みを生じさせ難い連結基を有している構造であること、反応性部位、電荷輸送性部位ともに疎水性のため相分離が起きに難くなるため、効率的な電荷輸送性能と高強度化が図れると考えられる。その結果として、一般式(II)(特に一般式(II−a))で示される反応性化合物の重合体又は架橋体を含む保護層(最表面層)は、機械的強度に優れると共に、電荷輸送性能(電気特性)がより優れるものと考えられる。
以上から、一般式(II)(特に一般式(II−a))で示される反応性化合物を適用すると、長期に亘り繰り返し使用しても電気特性の劣化が抑制され易くなると考えられる。
【0221】
【化50】
【0222】
一般式(II−a)中、Ark1〜Ark4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ark5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dkは、下記一般式(IIA−a)で示される基を示す。kc1〜kc5は,それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。kkは、0又は1を示す。但し、Dkの総数は、1以上8以下である。
【0223】
【化51】
【0224】
一般式(IIA−a)中、Lは、アルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基、並びに、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む(kn+1)価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。knは、2以上3以下の整数を示す。
【0225】
以下、一般式(II−a)の詳細を説明する。
一般式(II−a)中、Ark1〜Ark4で示される置換若しくは未置換のアリール基は、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Ark5は、kkが0のとき、置換若しくは未置換のアリール基を示し、この置換若しくは未置換のアリール基としては、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Ark5は、kkが1のとき、置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、この置換若しくは未置換のアリーレン基としては、一般式(I−a)中のAra5及びAra6で示される置換若しくは未置換のアリーレン基と同様である。
Dkの総数は、より強度の高い保護層(最表面層)を得る観点から、好ましくは2以上であり、更に好ましくは4以上である。一般に、一分子中の連鎖重合性基の数が多すぎると、重合(架橋)反応が進むにつれ、分子が動きにくくなり連鎖重合反応性が低下し、未反応の連鎖重合性基の割合が増えてしまうことから、Dcの総数は、好ましくは7以下、さらに好ましくは6以下である。
【0226】
次に、一般式(IIA−a)の詳細を説明する。
一般式(IIA−a)中、Lで示される(kn+1)価の連結基としては、例えば、一般式(II)中、L’で示される(n+1)価の連結基と同様である。
【0227】
以下に、特定の反応性電荷輸送材料の具体的を示す。
具体的には、一般式(I)及び(II)の電荷輸送性骨格F(例えば一般式(I−a)中のDaや一般式(II−a)のDkを除く骨格に相当する部位)の具体例、電荷輸送性骨格Fに連結する官能基(例えば一般式(I−a)中のDaや一般式(II−a)のDkに相当する部位)の具体例と共に、一般式(I)及び(II)で示される反応性化合物の具体例を示すが、これらに限定されるわけではない。
なお、一般式(I)及び(II)の電荷輸送性骨格Fの具体例の「*」部分は、電荷輸送性骨格Fに連結する官能基の「*」部分が連結していることを意味する。
つまり、例えば、例示化合物(I−b)−1は、電荷輸送性骨格Fの具体例:(M1)−1、官能基の具体例:(R2)−1と示されているが、その具体的な構造は以下の構造を示す。
【0228】
【化52】
【0229】
まず、電荷輸送性骨格Fの具体例を以下示す。
【0230】
【化53】
【0231】
【化54】
【0232】
【化55】
【0233】
【化56】
【0234】
【化57】
【0235】
【化58】
【0236】
【化59】
【0237】
【化60】
【0238】
【化61】
【0239】
【化62】
【0240】
【化63】
【0241】
【化64】
【0242】
【化65】
【0243】
【化66】
【0244】
【化67】
【0245】
【化68】
【0246】
【化69】
【0247】
【化70】
【0248】
【化71】



【0249】
次に、電荷輸送性骨格Fに連結する官能基の具体例を示す。
【0250】
【化72】
【0251】
【化73】
【0252】
【化74】
【0253】
【化75】
【0254】
【化76】
【0255】
【化77】
【0256】
【化78】
【0257】
【化79】
【0258】
【化80】
【0259】
【化81】
【0260】
【化82】

【0261】
【化83】
【0262】
【化84】
【0263】
【化85】
【0264】
【化86】
【0265】
【化87】
【0266】
【化88】
【0267】
【化89】
【0268】
【化90】
【0269】
【化91】
【0270】
【化92】
【0271】
次に、一般式(I)、具体的には一般式(I−a)で示される化合物の具体例を示す。
【0272】
【化93】
【0273】
次に、一般式(I)、具体的には一般式(I−b)で示される化合物の具体例を示す。
【0274】
【化94】
【0275】
次に、一般式(I)、具体的には一般式(I−c)で示される化合物の具体例を示す。
【0276】
【化95】
【0277】
【化96】
【0278】
【化97】
【0279】
【化98】
【0280】
次に、一般式(I)、具体的には一般式(I−d)で示される化合物の具体例を示す。
【0281】
【化99】
【0282】
【化100】
【0283】
次に、一般式(II)、具体的には一般式(II−a)で示される化合物の具体例を示す。
【0284】
【化101】
【0285】
【化102】
【0286】
【化103】
【0287】
【化104】
【0288】
【化105】
【0289】
【化106】
【0290】
特定の反応性電荷輸送材料(特に、一般式(I)で示される反応性化合物)は、例えば、以下のようにして合成される。
即ち、特定の反応性電荷輸送材料は、前駆体であるカルボン酸、又は、アルコールと、対応するクロロメチルスチレンなどでのエーテル化などにより合成される。
【0291】
特定の反応性電荷輸送材料の例示化合物(I−d)−22の合成経路を一例として以下に示す。
【0292】
【化107】
【0293】
アリールアミン化合物カルボン酸は、アリールアミン化合物のエステル基を、例えば、実験化学講座、第4版、20巻、P.51などに記載されたように、塩基性触媒(NaOH、KCO等)、酸性触媒(例えばリン酸、硫酸等)を用いる加水分解により得られる。
この際、溶媒としては、種々のものが挙げられるが、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどのアルコール系を用いるか、これに水を混合して用いることがよい。
さらに、アリールアミン化合物の溶解性が低い場合には、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、ジメチルスルホキシド、エーテル、テトラヒドロフランなどを加えてもよい。
溶媒の量は、特に制限はないが、例えば、エステル基を含有するアリールアミン化合物1質量部に対して1質量部以上100質量部以下、好ましくは2質量部以上50質量部以下で用いることがよい。
反応温度は、例えば、室温(例えば25℃)以上溶媒の沸点以下の範囲で設定され、反応速度の関係上、50度以上が好ましい。
触媒の量については、特に制限はないが、例えば、エステル基を含有するアリールアミン化合物1質量部に対して0.001質量部以上1質量部以下、好ましくは0.01質量部以上0.5質量部以下で用いることがよい。
加水分解反応後、塩基性触媒で加水分解を行った場合には、生成した塩を酸(例えば塩酸等)で中和し、遊離させる。さらに、十分に水洗した後、乾燥して使用するか、必要によっては、メタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトンなど、適当な溶媒により、再結晶精製を行った後、乾燥して使用してもよい。
【0294】
アリールアミン化合物のアルコール体は、アリールアミン化合物のエステル基を、例えば、実験化学講座、第4版、20巻、P.10などに記載されたように、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウムなどを用いて対応するアルコールに還元して合成する。
【0295】
例えば、エステル結合にて反応性基を導入する場合、アリールアミン化合物カルボン酸と、ヒドロキシメチルスチレンを酸触媒にて脱水縮合させる通常のエステル化や、アリールアミン化合物カルボン酸と、ハロゲン化メチルスチレンを、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、DBU、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を用いて縮合させる方法が使用し得るが、ハロゲン化メチルスチレンを用いる方法が副生成物が抑制されることから好適である。
【0296】
アリールアミン化合物カルボン酸の酸に対し、ハロゲン化メチルスチレンを1当量以上、好ましくは、1.2当量以上、より好ましくは1.5当量以上加えることがよく、塩基はハロゲン化メチルスチレンに対し0.8当量以上2.0当量以下、好ましくは1.0当量以上1.5当量以下で用いることがよい。
溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、クロロベンゼン、1ークロロナフタレンなどの芳香族系溶媒などが有効であり、アリールアミン化合物カルボン酸の1質量部に対して、1質量部以上100質量部以下、好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いられることがよい。
反応温度は特に制限はない。反応終了後、反応液を水にあけ、トルエン、ヘキサン、酢酸エチルなどの溶媒で抽出、水洗し、さらに、必要により活性炭、シリカゲル、多孔質アルミナ、活性白土などの吸着剤を用いて精製を行ってもよい。
【0297】
また、エーテル結合にて導入する場合、アリールアミン化合物アルコールと、ハロゲン化メチルスチレンを、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、DBU、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を用いて縮合させる方法が使用することがよい。
アリールアミン化合物アルコールのアルコールに対し、ハロゲン化メチルスチレンを1当量以上、好ましくは、1.2当量以上、より好ましくは1.5当量以上加えることがよく、塩基はハロゲン化メチルスチレンに対し0.8当量以上2.0当量以下、好ましくは、1.0当量以上1.5当量以下で用いることがよい。
溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、クロロベンゼン、1ークロロナフタレンなどの芳香族系溶媒などが有効であり、アリールアミン化合物アルコールの1質量部に対して、1質量部以上100質量部以下、好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いることがよい。
反応温度は特に制限はない。反応終了後、反応液を水にあけ、トルエン、ヘキサン、酢酸エチルなどの溶媒で抽出、水洗し、さらに、必要により活性炭、シリカゲル、多孔質アルミナ、活性白土などの吸着剤を用いて精製を行ってもよい。
【0298】
特定の反応性電荷輸送材料(特に一般式(II)で示される反応性化合物)は、例えば、以下に示す一般の電荷輸送材料の合成方法(ホルミル化、エステル化、エーテル化、水素添加)を利用して、合成される。
・ホルミル化:電子供与性基を持つ芳香族化合物、複素環化合物、又はアルケンにホルミル基を導入するのに適した反応。DMFとオキシ三塩化リンを用いるのが一般的であり、反応温度は室温(例えば25℃)から100℃程度で行われることが多い。
・エステル化:有機酸とアルコールまたはフェノールのようなヒドロキシル基を含む化合物との縮合反応。脱水剤を共存させたり、水を系外へ除去することで平衡をエステル側へ偏らせる手法を用いることが好ましい。
・エーテル化:アルコキシドと有機ハロゲン化合物を縮合させるウィリアムソン合成法が一般的である。
・水素添加:種々の触媒を用いて不飽和結合に水素を反応させる方法。
【0299】
反応性電荷輸送材料の含有量(組成物中の含有量)は、例えば、保護層5(最表面層)の質量に対して、60質量%以上95質量%以下がよく、好ましくは65質量%以上93質量%以下である。
【0300】
−樹脂粒子−
保護層(最表面層)を構成する膜は、樹脂粒子を含有してもよい。
樹脂粒子としては、例えば、ビスフェノールAタイプ又はビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂の粒子、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂の粒子、及びポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマーの粒子等が挙げられる。
これらの樹脂粒子は、中空粒子であってもよい。
また、樹脂粒子は、これらの樹脂を単独又は2種以上混合して用いてもよい。
【0301】
保護層(最表面層)を構成する膜は、樹脂粒子として、フッ素含有樹脂粒子を含有してもよい。
フッ素含有樹脂粒子としては、フルオロオレフィンのホモポリマーや、2種以上の共重合体であって、フルオロオレフィンの1種又は2種以上と非フッ素系のモノマーとの共重合体の粒子が挙げられる。
【0302】
フルオロオレフィンとしては、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのパーハロオレフィン、フッ化ビニリデン(VdF)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなどの非パーフルオロオレフィン等が挙げられ、VdF、TFE、CTFE、HFPなどが好ましい。
【0303】
一方、非フッ素系のモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブテンなどのハイドロカーボン系オレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル、メチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル(POEAE)、エチルアリルエーテルなどのアルケニルビニルエーテル、ビニルトリメトキシシラン(VSi)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シランなどの反応性α,β−不飽和基を有する有機ケイ素化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、「ベオバ」(商品名、シェル社製のビニルエステル)などのビニルエステルなどが挙げられ、アルキルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ビニルエステル、反応性α,β−不飽和基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。
【0304】
これらのうち、フッ素化率の高いものが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが好ましい。これらのうちでも、PTFE、FEP、PFAが特に好ましい。
【0305】
フッ素含有樹脂粒子は、例えばフッ素系単量体を乳化重合などの方法で製造した粒子(フッ素樹脂水性分散液)をそのまま使用してもよく、十分に水洗した後に乾燥したものを使用してもよい。
フッ素含有樹脂粒子の平均粒子径としては0.01μm以上100μm以下が好ましく、特に0.03μm以上5μm以下であることが好ましい。
尚、上記フッ素含有樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置LA−700(堀場製作所製)を用いて測定した値をいう。
【0306】
フッ素含有樹脂粒子は、市販で入手したものを用いてもよく、例えばPTFE粒子としては、フルオンL173JE(旭ガラス社製)、ダニイオンTHV−221AZ、ダニイオン9205(住友3M社製)、ルブロンL2、ルブロンL5(ダイキン社製)などが挙げられる。
【0307】
フッ素含有樹脂粒子は、紫外領域の発振波長を有するレーザー光を照射されたものであってもよい。フッ素含有樹脂粒子に照射されるレーザー光については特に限定されるものではなく、例えば、エキシマレーザー等が挙げられる。エキシマレーザー光としては、波長が400nm以下、特に193nm以上308nm以下の紫外レーザー光が好適である。特に、KrFエキシマレーザー光(波長:248nm)およびArFエキシマレーザー光(波長:193nm)等が好ましい。エキシマレーザー光照射は、通常、室温(25℃)大気中で行うが、酸素雰囲気中で行ってもよい。
【0308】
また、エキシマレーザー光の照射条件は、フッ素樹脂の種類および求められる表面改質の程度によって左右されるが、一般的な照射条件は次の通りである。
フルエンス:50mJ/cm/パルス以上
入射エネルギー:0.1J/cm以上
ショット数:100以下
【0309】
特に好適なKrFエキシマレーザー光およびArFエキシマレーザー光の常用される照射条件は次の通りである。
KrF
フルエンス:100mJ/cm/パルス以上500mJ/cm/パルス以下
入射エネルギー:0.2J/cm以上2.0J/cm以下
ショット数:1以上20以下
【0310】
ArF
フルエンス:50mJ/cm/パルス以上150mJ/cm/パルス以下
入射エネルギー:0.1J/cm以上1.0J/cm以下
ショット数:1以上20以下
【0311】
フッ素含有樹脂粒子の含有量は、保護層(最表面層)の固形分全量に対して1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上12質量%以下がさらに好ましい。
【0312】
−フッ素含有分散剤−
保護層(最表面層)を構成する膜は、フッ素含有樹脂粒子と共に、フッ素含有分散剤を含有してもよい。
フッ素含有分散剤は、フッ素含有樹脂粒子を保護層(最表面層)中に分散させるために用いられるものであるため、界面活性作用を有していることが好ましく、つまり分子内に親水基と疎水基とを持つ物質であることがよい。
【0313】
フッ素含有分散剤としては、以下の反応性の単量体を重合した樹脂(以下「特定樹脂」と称する。)が挙げられる。具体的には、パーフルオロアルキル基を有するアクリレートと、フッ素を有さないモノマーと、のランダム又はブロック共重合体、メタクリレートホモポリマーおよび前記パーフルオロアルキル基を有するアクリレートと、前記フッ素を有さないモノマーと、のランダム又はブロック共重合体、メタクリレートと、前記フッ素を有さないモノマーと、のランダム又はブロック共重合体が挙げられる。尚、パーフルオロアルキル基を有するアクリレートとしては、例えば2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレートが挙げられる。
また、フッ素を有さないモノマーとしては、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノールアクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレートが挙げられる。また、米国特許5637142号明細書、特許第4251662号公報、特許第4251662号公報などに開示されたブロック又はブランチポリマーなどが挙げられる。またその他に、フッ素系界面活性剤が挙げられる。フッ素系界面活性剤の具体例としては、サーフロンS−611、サーフロンS−385(AGCセイミケミカル社製)、フタージェント730FL、フタージェント750FL(ネオス社製)、PF−636、PF−6520(北村化学社製)、メガファックEXP,TF−1507、メガファックEXP、TF−1535(DIC社製)、FC−4430、FC−4432(3M社製)などが挙げられる。
なお、特定樹脂の重量平均分子量は100以上50000以下が好ましい。
【0314】
フッ素含有分散剤の含有量は、保護層(最表面層)の固形分全量に対して0.1質量%以上1質量%以下が好ましく、0.2質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましい。
【0315】
フッ素含有分散剤をフッ素含有樹脂粒子の表面に付着させる方法としては、フッ素含有分散剤を直接フッ素含有樹脂粒子の表面に付着させてもよいし、まず上記の単量体をフッ素含有樹脂粒子の表面に吸着させた後に重合を行なって、フッ素含有樹脂粒子の表面に前記特定樹脂を形成させてもよい。
【0316】
フッ素含有分散剤は、他の界面活性剤と併用してもよい。但し、その量としては極力少ないことがよく、他の界面活性剤の含有量は、フッ素含有樹脂粒子1質量部に対し、0質量部以上0.1質量部以下がよく、好ましくは0質量部以上0.05質量部以下、より好ましくは0質量部以上0.03質量部以下である。
【0317】
他の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤がよく、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、グリセリンエステル類、フッ素系界面活性剤およびその誘導体などが挙げられる。
ポリオキシエチレン類の具体例としては、例えばエマルゲン707(花王社製)、ナロアクティーCL−70、ナロアクティーCL−85(三洋化成工業社製)、レオコールTD−120(ライオン社製)などが挙げられる。
【0318】
−不飽和結合を有する化合物−
保護層(最表面層)を構成する膜は、不飽和結合を有する化合物を併用してもよい。
不飽和結合を有する化合物としては、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。、また、不飽和結合を有する化合物としては、電荷輸送性骨格を有さないものが挙げられる。
【0319】
不飽和結合を有する化合物として、電荷輸送性骨格を有さないものとしては以下のようなものが挙げられる。
1官能のモノマーは、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノールアクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート、スチレン、などが挙げられる。
【0320】
2官能のモノマーは、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等が挙げられる。
3官能のモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート、トリビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
4官能のモノマーは、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
5官能以上のモノマーは、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の他、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、フォスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0321】
また、反応性のポリマーとしては、例えば、特開平5−216249号公報、特開平5−323630号公報、特開平11―52603号公報、特開2000−264961号公報、特開2005−2291号公報などに開示されたものが挙げられる。
【0322】
電荷輸送成分を有さない不飽和結合を有する化合物を用いる場合には、単独又は2種以上の混合物として使用される。
電荷輸送成分を有さない不飽和結合を有する化合物の含有量は、保護層(最表面層)を形成する際に用いられる組成物の全固形分に対して、例えば、好ましくは60質量%以下がよく、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0323】
−非反応性の電荷輸送材料−
保護層(最表面層)を構成する膜は、非反応性の電荷輸送材料を併用してもよい。非反応性の電荷輸送材料は電荷輸送を担っていない反応性基を有さないため、非反応性の電荷輸送材料を保護層(最表面層)に用いた場合には電荷輸送成分の濃度が高まり、電気特性を更に改善するのに有効である。また、非反応性の電荷輸送材料を添加して架橋密度を減じ、強度を調整してもよい。
【0324】
非反応性の電荷輸送材料としては、公知の電荷輸送材料を用いてもよく、具体的には、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等が用いられる。
中でも、電荷移動度、相溶性など点から、トリフェニルアミン骨格を有するものが好ましい。
【0325】
非反応性の電荷輸送材料は、層形成のための塗布液中の全固形分に対して0質量%以上30質量%以下で用いられることが好ましく、より好ましくは1質量%以上25質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以上25質量%以下である。
【0326】
−その他の添加剤−
保護層(最表面層)を構成する膜は、更に成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、他のカップリング剤、特にフッ素含有のカップリング剤と混合して用いてもよい。このような化合物として、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。また、ラジカル重合性基を有するシリコン化合物、フッ素含有化合物を用いてもよい。
【0327】
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、等が挙げられる。
市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越化学工業社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0328】
また、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、等の含フッ素化合物を加えてもよい。
【0329】
シランカップリング剤は任意の量で使用されるが、含フッ素化合物の量は、架橋膜の成膜性の観点から、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが好ましい。更に、特開2001−166510号公報などに開示されている反応性のフッ素化合物などを混合してもよい。
ラジカル重合性基を有するシリコン化合物、フッ素含有化合物としては、特開2007−11005号公報に記載の化合物などが挙げられる。
【0330】
保護層(最表面層)を構成する膜には、劣化防止剤を添加することが好ましい。劣化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、又はヒンダードアミン系が好ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。
劣化防止剤の添加量としては20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0331】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、イルガノックス1076、イルガノックス1010、イルガノックス1098、イルガノックス245、イルガノックス1330、イルガノックス3114、イルガノックス1076(以上、チバ・ジャパン社製)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル等が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、サノールLS2626、サノールLS765、サノールLS770、サノールLS744(以上、三共ライフテック社製)、チヌビン144、チヌビン622LD(以上、チバ・ジャパン社製)、マークLA57、マークLA67、マークLA62、マークLA68、マークLA63(以上、アデカ社製)が挙げられ、チオエーテル系として、スミライザーTPS、スミライザーTP−D(以上、住友化学社製)が挙げられ、ホスファイト系として、マーク2112、マークPEP−8、マークPEP−24G、マークPEP−36、マーク329K、マークHP−10(以上、アデカ社製)等が挙げられる。
【0332】
保護層(最表面層)を構成する膜には、導電性粒子や、有機、無機粒子を添加してもよい。
この粒子の一例として、ケイ素含有粒子が挙げられる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、好ましくは平均粒径1nm以上100nm以下、より好ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、又はアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれる。該粒子としては一般に市販されているものを使用してもよい。
【0333】
保護層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、保護層の全固形分全量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
【0334】
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用してもよい。
これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下である。
表面層中のシリコーン粒子の含有量は、保護層の全固形分全量を基準として、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0335】
また、その他の粒子としては、ZnO−Al、SnO−Sb、In−SnO、ZnO−TiO、ZnO−TiO、MgO−Al、FeO−TiO、TiO、SnO、In、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。さらに、粒子を分散させるために公知の種々の分散材を用いてもよい。
【0336】
保護層(最表面層)を構成する膜には、シリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。
シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
【0337】
保護層(最表面層)を構成する膜には、塗膜の濡れ性改善のため、シリコーン含有オリゴマー、フッ素含有アクリルポリマー、シリコーン含有ポリマー等を添加してもよい。
【0338】
保護層(最表面層)を構成する膜には、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等を添加してもよい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属を樹脂の粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。
これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着での混合でもよい。導電性粒子の平均粒径は0.3μm以下、特に0.1μm以下が好ましい。
【0339】
−組成物−
保護層を形成するために用いる組成物は、各成分を溶媒中に溶解又は分散してなる保護層形成用塗布液として調製されることが好ましい。
ここで、保護層形成用塗布液の溶媒は、電荷輸送材料の溶解性、フッ素含有樹脂粒子の分散性、最表面層の表層側へのフッ素含有樹脂粒子の偏在を抑制する観点から、電荷輸送層の結着樹脂(特定ポリカーボネート共重合体)とのSP値(Feders法で算出した溶解度パラメータ)の差(絶対値)が2.0以上4.0以下(好ましくは2.5以上3.5以下)のケトン系溶媒またはエステル系溶媒を用いることがよい。
具体的には、保護層形成用塗布液の溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、エチルnブチルケトン、ジnプロピルケトン、メチルnアミルケトン、メチルnブチルケトン、ジエチルケトン、メチルnプロピルケトン等のケトン類; 酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸nプロピル、酢酸nブチル、イソ吉草酸エチル、酢酸イソアミル、酪酸イソプロピル、プロピオン酸イソアミル、酪酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸アリル等のエステル類等の単独溶媒又は混合溶媒が挙げられる。また、0質量%以上50質量%以下のエーテル系溶剤(例えばジエチルエーテル、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、アルキレングリコール系溶剤(例えば1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)を混合して用いてもよい。
【0340】
保護層形成用塗布液中にフッ素含有樹脂粒子を分散させるための分散方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機を利用した分散方法が挙げられる。さらに、当該分散方法としては、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液 液衝突や液 壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などの分散方法も挙げられる。
【0341】
なお、保護層形成用塗布液の調製方法については特に限定されるものではなく、電荷輸送材料とフッ素含有樹脂粒子とフッ素含有分散剤と必要に応じて溶媒等のその他の成分とを混合し、上述の分散機を用いて調製してもよいし、フッ素含有樹脂粒子とフッ素含有分散剤と溶媒とを含む混合液A及び少なくとも電荷輸送材料と溶媒とを含む混合液Bの2液を別々に準備した後に、これら混合液A及び混合液Bを混合することにより調製してもよい。フッ素含有樹脂粒子とフッ素含有分散剤とを溶媒中で混合することにより、フッ素含有樹脂粒子の表面にフッ素含有分散剤を付着され易くなる。
【0342】
また、前述の成分を反応させて保護層形成用塗布液を得るときには、各成分を単純に混合、溶解させるだけでもよいが、好ましくは室温(20℃)以上100℃以下、より好ましくは30℃以上80℃以下で、好ましくは10分以上100時間以下、より好ましくは1時間以上50時間以下の条件で加温する。また、この際に超音波を照射することも好ましい。
【0343】
−保護層の形成−
保護層形成用塗布液は、被塗布面(電荷輸送層)の上に、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、インクジェット塗布法等の通常の方法により塗布される。
その後、得られた塗膜に対して、光、電子線又は熱を付与してラジカル重合を生起させて、該塗膜を硬化させる。
【0344】
硬化の方法は、熱、光、放射線などが用いられる。熱、光で硬化を行う場合、重合開始剤は必ずしも必要ではないが、光硬化触媒又は熱重合開始剤を用いてもよい。この光硬化触媒及び熱重合開始剤としては、公知の光硬化触媒や熱重合開始剤が用いられる。放射線としては電子線が好ましい。
【0345】
・電子線硬化
電子線を用いる場合、加速電圧は300KV以下が好ましく、最適には150KV以下である。また、線量は好ましくは1Mrad以上100Mrad以下の範囲、より好ましくは3Mrad以上50Mrad以下の範囲である。加速電圧が300KV以下であることにより感光体特性に対する電子線照射のダメージが抑制される。また、線量が1Mrad以上であることにより架橋が十分に行なわれ、100Mrad以下であることにより感光体の劣化が抑制される。
【0346】
照射は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が1000ppm、好ましくは500ppm以下で行い、さらに照射中、又は照射後に50℃以上150℃以下に加熱してもよい。
【0347】
・光硬化
光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプなどが用いられ、バンドパスフィルター等のフィルターを用いて好適な波長を選択してもよい。照射時間、光強度は自由に選択されるが、例えば照度(365nm)は300mW/cm以上、1000mW/cm以下が好ましく、例えば600mW/cmのUV光を照射する場合、5秒以上360秒以下照射すればよい。
【0348】
照射は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下で行い、さらに照射中、又は照射後に50℃以上150℃以下に加熱してもよい。
【0349】
光硬化触媒として、分子内開裂型としては、ベンジルケタール系、アルキルフェノン系、アミノアルキルフェノン系、ホスフィンオキサイド系、チタノセン系、オキシム系などが挙げられる。
より具体的には、ベンジルケタール系として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが挙げられる。
【0350】
また、アルキルフェノン系としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、アセトフェノン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルフォニルオキシ)アセトフェノンが挙げられる。
アミノアルキルフェノン系としては、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モリホニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。
ホスフィノキサイド系としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンキサイドなどが挙げられる。
チタノセン系としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
オキシム系としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などが挙げられる。
【0351】
水素引抜型としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンジル系、ミヒラーケトン系などが挙げられる。
より具体的には、ベンゾフェノン系として、2−ベンゾイル安息香酸、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
チオキサントン系としては、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
ベンジル系としては、ベンジル、(±)−カンファーキノン、p−アニシルなどが挙げられる。
【0352】
これらの光重合開始剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用られる。
【0353】
・熱硬化
熱重合開始剤としては、熱ラジカル発生剤又はその誘導体が挙げられ、具体的には、例えば、V−30、V−40、V−59、V601、V65、V−70、VF−096、VE−073、Vam−110、Vam−111(和光純薬工業製)、OTazo−15、OTazo−30、AIBN、AMBN、ADVN、ACVA(大塚化学)等のアゾ系開始剤;パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH、パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイルIB、パーロイル355、パーロイルL、パーロイルSA、ナイパーBW、ナイパーBMT−K40/M、パーロイルIPP、パーロイルNPP、パーロイルTCP、パーロイルOPP、パーロイルSBP、パークミルND、パーオクタND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーブチルNHP、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルL、パーブチル355、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーブチルA、パーヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ(日油化学社製)、カヤケタールAM−C55、トリゴノックス36−C75、ラウロックス、パーカドックスL−W75、パーカドックスCH−50L、トリゴノックスTMBH、カヤクメンH、カヤブチルH−70、ペルカドックスBC−FF、カヤヘキサAD、パーカドックス14、カヤブチルC、カヤブチルD、カヤヘキサYD−E85、パーカドックス12−XL25、パーカドックス12−EB20、トリゴノックス22−N70、トリゴノックス22−70E、トリゴノックスD−T50、トリゴノックス423−C70、カヤエステルCND−C70、カヤエステルCND−W50、トリゴノックス23−C70、トリゴノックス23−W50N、トリゴノックス257−C70、カヤエステルP−70、カヤエステルTMPO−70、トリゴノックス121、カヤエステルO、カヤエステルHTP−65W、カヤエステルAN、トリゴノックス42、トリゴノックスF−C50、カヤブチルB、カヤカルボンEH−C70、カヤカルボンEH−W60、カヤカルボンI−20、カヤカルボンBIC−75、トリゴノックス117、カヤレン6−70(化薬アクゾ社製)、ルペロックス610、ルペロックス188、ルペロックス844、ルペロックス259、ルペロックス10、ルペロックス701、ルペロックス11、ルペロックス26、ルペロックス80、ルペロックス7、ルペロックス270、ルペロックスP、ルペロックス546、ルペロックス554、ルペロックス575、ルペロックスTANPO、ルペロックス555、ルペロックス570、ルペロックスTAP、ルペロックスTBIC、ルペロックスTBEC、ルペロックスJW、ルペロックスTAIC、ルペロックスTAEC、ルペロックスDC、ルペロックス101、ルペロックスF、ルペロックスDI、ルペロックス130、ルペロックス220、ルペロックス230、ルペロックス233、ルペロックス531(アルケマ吉富社製)などが挙げられる。
【0354】
これらのうち、分子量250以上のアゾ系重合開始剤を用いると、低い温度でムラなく反応が進行することから、ムラの抑制された高強度の膜の形成が図られる。より好適には、アゾ系重合開始剤の分子量は、250以上であり、300以上が更に好適である。
【0355】
加熱は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下で行い、好ましくは50℃以上170℃以下、より好ましくは70℃以上150℃以下で、好ましくは10分以上120分以下、より好ましくは15分以上100分以下加熱する。
【0356】
光硬化触媒又は熱重合開始剤の総含有量は、層形成のための溶解液中の全固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、更には0.1質量%以上8質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下の範囲が特に好ましい。
【0357】
なお、本実施態様では、反応が早く進行しすぎると架橋により塗膜の構造緩和ができ難くなり、膜のムラやシワを発生しやすくなるといった理由から、ラジカルの発生が比較的ゆっくりと起こる熱による硬化方法が採用される。
特に、特定の連鎖重合性基含有電荷輸送材料と熱による硬化とを組み合わせることで、塗膜の構造緩和の促進が図られ、表面性状に優れた高い保護層(最表面層)が得られ易くなる。
【0358】
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは3μm以上40μm以下、より好ましくは5μm以上35μm以下の範囲内に設定される。
【0359】
以上、図1に示される電子写真感光体を参照し、機能分離型の感光層における各層の構成を説明したが、図2に示される機能分離型の電子写真感光体における各層においてもこの構成が採用しうる。また、図3に示される電子写真感光体の単層型感光層の場合、以下の態様であることが好ましい。
【0360】
即ち、単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、電荷発生材料と電荷輸送材料と、必要に応じて、結着樹脂、及びその他周知の添加剤と、を含んで構成されることがよい。なお、これら材料は、電荷発生材料及び電荷輸送層で説明した材料と同様である。
そして、単層型感光層中、電荷発生材料の含有量は、全固形分に対して10質量%以上85質量%以下がよく、好ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、単層型感光層中、電荷輸送材料の含有量は、全固形分に対して5質量%以上50質量%以下がよい。
単層型感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
単層型感光層の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下がよく、好ましくは10μm以上40μm以下である。
【0361】
なお、本実施形態に係る電子写真感光体では、最表面層が保護層である形態を説明したが、保護層がない層構成であってもよい。
保護層がない層構成の場合、図1に示される電子写真感光体では、その層構成において最表面に位置する電荷輸送層が最表面層となる。そして、当該最表面層となる電荷輸送層が、上記特定の組成物の硬化膜で構成される。
また、保護層がない層構成の場合、図3に示される電子写真感光体では、その層構成において最表面に位置する単層型感光層が最表面層となる。そして、当該最表面層となる単層型感光層が、上記特定の組成物の硬化膜で構成される。但し、上記組成物には、電荷発生材料が配合される。
【0362】
[画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)]
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
【0363】
本実施形態に係る画像形成装置において、電子写真感光体の表面に、ステアリン酸亜鉛を供給する供給手段を備えることがよい。これにより、画像形成装置において、電子写真感光体の最表面層の表面にステアリン酸亜鉛を被覆し、上記ステアリン酸亜鉛の被覆率の範囲に調整し得る。
供給手段としては、トナー粒子とステアリン酸亜鉛を含む外添剤とを有する現像剤を収容した現像手段、現像手段とは個別に、転写手段とクリーニング手段との間に設けられ、ステアリン酸亜鉛を電子写真感光体の表面に塗布する塗布手段が挙げられる。これら手段は、いずれか一方を備えてもよいし、双方を備えてもよい。なお、トナー粒子とステアリン酸亜鉛を含む外添剤とを有する現像剤を収容した現像手段を採用した場合、現像手段は供給手段を兼ねる。
【0364】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0365】
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0366】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0367】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0368】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0369】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図4に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
【0370】
図4におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
【0371】
なお、図4には、画像形成装置として、ステアリン酸亜鉛を電子写真感光体7の表面に供給する供給手段として、ステアリン酸亜鉛である潤滑材14を電子写真感光体7の表面に塗布する繊維状部材132(ロール状)を備えた例を示してあるが、これは必要に応じて配置される。また、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これは必要に応じて配置される。
【0372】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0373】
−帯電装置−
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0374】
−露光装置−
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0375】
−現像装置−
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0376】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
【0377】
ここで、現像装置に収容される現像剤は、トナー粒子と、ステアリン酸亜鉛粒子を含む外添剤とを含む現像剤であることがよい。
【0378】
次に、トナー粒子の構成について説明する。
トナー粒子は、例えば、結着樹脂を含む。トナー粒子は、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤とを含んでもよい。
【0379】
・結着樹脂
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0380】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0381】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0382】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0383】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0384】
・離型剤
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0385】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0386】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0387】
・その他の添加剤
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0388】
・トナー粒子の特性等
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0389】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0390】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマンーコールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0391】
トナー粒子の形状係数SF1としては、110以上150以下が好ましく、120以上140以下がより好ましい。
【0392】
なお、形状係数SF1は、下記式により求められる。
式:SF1=(ML/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
具体的には、形状係数SF1は、主に顕微鏡画像又は走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラによりルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0393】
・外添剤
外添剤は、ステアリン酸亜鉛を含む。外添剤は、ステアリン酸亜鉛粒子以外にも、他の外添剤を含んでもよい。
【0394】
ステアリン酸亜鉛粒子は、ステアリン酸亜鉛のみを含む粒子であってもよいし、ステアリン酸亜鉛と他の成分とを含む粒子であってもよい。他の成分としては、例えば、高級脂肪酸アルコール(例えば炭素数10以上20以下の脂肪酸アルコール)等が挙げられる。ただし、ステアリン酸亜鉛粒子には、ステアリン酸亜鉛を10質量%以上含む。
【0395】
ステアリン酸亜鉛粒子の個数平均粒径は、潤滑剤としての機能を発揮する点から、例えば、0.1μm以上10μm以下であることがよく、好ましくは0.3μm以上6μm以下、より好ましくは4μm以上6μm以下である。
ステアリン酸亜鉛粒子の個数平均粒径は、次に示す方法により測定された値である。まず、トナー粒子にステアリン酸亜鉛粒子を外添(分散)させた後のステアリン酸亜鉛粒子の一次粒子100個をSEM(Scanning Electron Microscope)装置により観察する。観察したSEM画像における一次粒子の画像解析によって粒子ごとの最長径、最短径を測定し、この中間値から球相当径を測定する。得られた球相当径の個数基準の累積頻度における50%径(D50p)をステアリン酸亜鉛粒子の個数平均粒径の平均粒径(つまり個数平均粒径)とする。
【0396】
ステアリン酸亜鉛粒子の外添量は、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上0.50質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.20質量%以下がより好ましく、0.015質量%以上0.18質量%以下が更に好ましい。
【0397】
他の外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO)n、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。
【0398】
他の外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部である。
【0399】
他の外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、PMMA、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛粒子以外のフッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0400】
外添剤の総外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0401】
・トナーの製造方法
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0402】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
【0403】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動師分機、風力師分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0404】
・キャリア
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0405】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0406】
−クリーニング装置−
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
【0407】
−転写装置−
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0408】
−中間転写体−
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0409】
図5は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図5に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0410】
なお、以上説明した本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)は、上記構成に限られず、周知の構成を適用してもよい。
【実施例】
【0411】
以下実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0412】
[電子写真感光体の作製]
(電子写真感光体1の作製)
−下引層の作製−
酸化亜鉛:(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m/g)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学工業社製)1.3質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面処理した酸化亜鉛を得た。
表面処理を施した酸化亜鉛110質量部を500質量部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6質量部を50質量部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥を行いアリザリン付与酸化亜鉛を得た。
【0413】
このアリザリン付与酸化亜鉛60質量部と硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):13.5質量部とブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学工業社製)15質量部とをメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部とメチルエチルケトン:25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製):40質量部を添加し、下引層形成用塗布液を得た。
【0414】
導電性基体として直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmの円筒状アルミニウム基体を準備し、得られた下引層形成用塗布液を浸漬塗布法にて、円筒状アルミニウム基体上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ18.7μmの下引層を得た。
【0415】
−電荷発生層の作製−
電荷発生物質としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、及びn−酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn−酢酸ブチル175質量部、及びメチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用塗布液を得た。
得られた電荷発生層形成用塗布液を先に円筒状アルミニウム基体に形成した下引層上に浸漬塗布し、常温(25℃)で乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0416】
−電荷輸送層の作製−
非反応性電荷輸送材料として、化合物(d−1)45質量部、及び結着樹脂として化合物(C−1)55質量部をテトラヒドロフラン560質量部、及びトルエン240質量部に加えて溶解し、電荷輸送層用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、135℃、45分の乾燥を行って膜厚が25μmの電荷輸送層を形成した。
【0417】
−保護層の作製−
次に、ルブロンL2(ダイキン工業(株)社製)5質量部及びフッ素系グラフトポリマー(アロンGF300:東亜合成製)0.2質量部を、THF/酢酸イソブチル混合溶剤(質量比7:3)300質量部とともに、20℃の恒温槽内にて超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)で10分間の分散処理を3回繰り返し、懸濁液を得た。その懸濁液に、反応性電荷輸送材料として化合物(a−1)100質量部と、重合開始剤としてVE−073(和光純薬工業(株)製)2質量部とを加え、室温(25℃)で12時間撹拌撹拌混合して、保護層形成用塗布液を得た。
得られた塗布液を、先に円筒状アルミニウム基体上に形成した電荷輸送層上にリング塗布法によって、突き上げ速度150mm/minで塗布した。その後、酸素濃度計を有する窒素乾燥機にて、酸素濃度200ppm以下の状態で、温度160±5℃、時間60分の硬化反応を実施し、保護層を形成した。保護層の膜厚は7μmであった。
【0418】
以上の工程を経て、電子写真感光体を得た。
【0419】
(電子写真感光体1〜51の作製)
電子写真感光体1に記載の方法により円筒状アルミニウム基体に下引層、電荷発生層を順次塗布により形成した。その後、表1〜表3に従って電荷輸送層形成用塗布液(結着樹脂、及び非反応性電荷輸送材料の種類並びに量)、及び保護層形成用塗布液(反応性電荷輸送材料、及び非反応性電荷輸送材料の種類並びに量)の組成を変更した以外は、電子写真感光体1に記載の方法により保護層を形成して電子写真感光体を作製した。
【0420】
[現像剤の調製]
(樹脂粒子分散液の調製)
スチレン370質量部、n−ブチルアクリレート30質量部、アクリル酸8質量部、ドデカンチオール24質量部、四臭化炭素4質量部を混合して溶解したものを、非イオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製)6g及びアニオン性界面活性剤(ネオゲンSC:第一工業製薬(株)製)10質量部をイオン交換水550質量部に溶解したフラスコ中で乳化重合させ、10分間ゆっくり混合しながら、これに過硫酸アンモニウム4質量部を溶解したイオン交換水50質量部を投入した。窒素置換を行った後、前記フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。その結果、体積平均粒径D50v=150nm、ガラス転移温度Tg=58℃、重量平均分子量Mw=11500の樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液が得られた。この分散液の固形分濃度は40質量%であった。
【0421】
(着色剤粒子分散液(1)の調製)
・カーボンブラック(モーガルL:キャボット製): 60質量部
・ノニオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製): 6質量部
・イオン交換水: 240質量部
以上の成分を混合して、溶解、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間攪拌し、その後、アルティマイザーにて分散処理して体積平均粒径が250nmである着色剤(カーボンブラック)粒子が分散された着色剤粒子分散液(1)を調製した。
【0422】
(着色剤粒子分散液(2)の調製)
・Cyan顔料B15:3: 60質量部
・ノニオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製): 5質量部
・イオン交換水: 240質量部
以上の成分を混合して、溶解、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間攪拌し、その後、アルティマイザーにて分散処理して体積平均粒径が250nmである着色剤(Cyan顔料)粒子が分散された着色剤粒子分散液(2)を調製した。
【0423】
(着色剤粒子分散液(3)の調製)
・Magenta顔料R122: 60質量部
・ノニオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製): 5質量部
・イオン交換水: 240質量部
以上の成分を混合して、溶解、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間攪拌し、その後、アルティマイザーにて分散処理して体積平均粒径が250nmである着色剤(Magenta顔料)粒子が分散された着色剤粒子分散液(3)を調製した。
【0424】
(着色剤粒子分散液(4)の調製)
・Yellow顔料Y180: 90質量部
・ノニオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製): 5質量部
・イオン交換水: 240質量部
以上の成分を混合して、溶解、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間攪拌し、その後、アルティマイザーにて分散処理して平均粒子径が250nmである着色剤(Yellow顔料)粒子が分散された着色剤粒子分散液(4)を調製した。
【0425】
(離型剤粒子分散液)
・パラフィンワックス: 100質量部
(HNP0190:日本精蝋(株)製、融解温度85℃)
・カチオン性界面活性剤: 5質量部
(サニゾールB50:花王(株)製)
・イオン交換水: 240質量部
以上の成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径が550nmである離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を調製した。
【0426】
(トナーK1の調製)
・樹脂粒子分散液: 234質量部
・着色剤粒子分散液(1): 30質量部
・離型剤粒子分散液: 40質量部
・ポリ水酸化アルミニウム(浅田化学社製、Paho2S): 0.5質量部
・イオン交換水: 600質量部
以上の成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて混合し、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら40℃まで加熱した。40℃で30分保持した後、D50が4.5μmの凝集粒子が生成していることを確認した。更に加熱用オイルバスの温度を上げて56℃で1時間保持し、D50vは5.3μmとなった。その後、この凝集体粒子を含む分散液に26部の樹脂粒子分散液を追加した後、加熱用オイルバスの温度を50℃まで上げて30分間保持した。この凝集体粒子を含む分散液、1N水酸化ナトリウムを追加して、系のpHを7.0に調整した後ステンレス製フラスコを密閉し、磁気シールを用いて攪拌を継続しながら80℃まで加熱し、4時間保持した。冷却後、このトナー粒子を濾別し、イオン交換水で4回洗浄した後、凍結乾燥してトナー粒子K1を得た。トナー粒子K1のD50vは5.9μm、形状係数SF1は132であった。
【0427】
次に、トナー粒子K1: 100質量部に、ルチル型酸化チタン(体積平均粒径20nm、n−デシルトリメトキシシラン表面処理): 1質量部、シリカ粒子(体積平均粒径40nm,シリコーンオイル表面処理,気相酸化法で作製): 2.0質量部、酸化セリウム粒子(体積平均粒径0.7μm): 1質量部、及び、ステアリン酸亜鉛粒子(分子量700のトリデシルアルコールとステアリン酸亜鉛とを質量で5:1の割合で混合した混合物をジェットミルで粉砕し、個数平均粒径8.0μmとした粒子): 0.3質量部を5Lヘンシェルミキサーで周速30m/s×15分間混合した後、45μmの目開きのシーブを用いて粗大粒子を除去し、トナー1を得た。
【0428】
(トナーC1の調製)
着色剤粒子分散液(1)のかわりに、着色剤粒子分散液(2)を用いた以外は、トナー粒子K1と同様にしてトナー粒子C1を得た。このトナー粒子C1のD50vは5.8μm,形状係数SF1は131であった。
そして、トナー粒子K1のかわりに、トナー粒子C1を用いた以外は、トナーK1と同様にしてトナーC1を得た。
【0429】
(トナーM1の調製)
着色剤粒子分散液(1)のかわりに、着色剤粒子分散液(3)を用いる以外はK1と同様にしてトナー粒子M1を得た。このトナー粒子M1のD50は5.5μm,形状係数SF1は135であった。
そして、トナー粒子K1のかわりに、トナー粒子M1を用いた以外は、トナーK1と同様にしてトナーC1を得た。
(トナーY1の調製)
着色剤粒子分散液(1)のかわりに、着色剤粒子分散液(4)を用いる以外はK1と同様にしてトナー粒子Y1を得た。このトナー粒子Y1のD50は5.9μm,形状係数SF1は130であった。
そして、トナー粒子K1のかわりに、トナー粒子Y1を用いた以外は、トナーK1と同様にしてトナーY1を得た。
【0430】
(キャリアの作製)
・フェライト粒子(体積平均粒径:50μm): 100質量部
・トルエン: 14質量部
・スチレン/メタクリレート共重合体(成分比:90/10): 2質量部
・カーボンブラック(R330:キャボット社製): 0.2質量部
まず、フェライト粒子を除く上記成分を10分間スターラーで撹拌させて、分散した被覆液を調製し、次に、この被覆液とフェライト粒子を真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリアを得た。このキャリアは、1000V/cmの印加電界時の体積固有抵抗値が1011Ωcmであった。
【0431】
(現像剤K1、C1、M1、Y1の作製)
キャリア100質量部に対して、各々、トナーK1、C1、M1、Y1を5部混合し、V ブレンダーで、40rpm×20分間攪拌し、212μmの目開きを有するシーブで篩分することにより、各現像剤K1、C1、M1、Y1を作製した。
【0432】
[実施例1〜40、比較例1〜11]
上記作製した電子写真感光体と現像剤とを、DocuCentre Color 400CP(富士ゼロックス社製)に装着し、通常環境(20℃、50%RH)下で、用紙全面に画像濃度100%の黒色のベタ塗り画像を5000枚出力した。そして、この画像形成により、ステアリン酸亜鉛が被覆された電子写真感光体を各実施例、及び各比較例の電子写真感光体とした。
【0433】
[測定及び評価]
各例の電子写真感光体について、次の測定及び評価を行った。結果を表1〜表3に示す。
【0434】
(各種測定)
−酸素透過係数の測定−
各例の電子写真感光体の保護層(ステアリン酸亜鉛被覆前の保護層)の酸素透過係数を次のようにして測定した。
各例の電子写真感光体の保護層の形成条件と同じ条件で、別途、酸素透過係数測定用の厚み15μmの試料膜を形成した。そして、ガス透過率測定装置(東洋精機社製、MC 3)により、25℃における試料膜の酸素透過係数を測定した。
【0435】
−ステアリン酸亜鉛の被覆率の測定−
各例の電子写真感光体の表面(保護層の表面)のステアリン酸亜鉛の被覆率を、次にようにして測定した。
X線光電子分光分析装置JPS−9010(日本電子(株)製)により、測定した亜鉛の全元素に対する比の値に基づいて決定した。X線光電子分光(XPS)分析は電子写真感光体の極表面の分析であるため、ステアリン酸亜鉛の塗布量の増加に対して亜鉛の全元素に対する比の値が飽和する。飽和した亜鉛の全元素に対する比の値を被覆率100%として電子写真感光体表面のステアリン酸亜鉛の被覆率を決定した。
【0436】
(各種評価)
−画像形成1の実施−
各例の電子写真感光体と現像剤を、DocuCentre Color 400CP(富士ゼロックス社製)に装着し、通常環境(20℃、50%RH)下で画像濃度100%のベタ塗り画像部分、画像濃度10%のハーフトーン画像部分および細線画像部分を有する画像評価パターンを出力した。その後、連続して30000枚の黒ベタ画像を出力した後、再び画像評価パターンを出力した。なお、光量は、電荷発生材料の感度によって、フィルターを用いて調整した。
【0437】
―電気特性安定性評価―
画像形成1を実施する前後で、各例の電子写真感光体を通常環境(20℃、50%RH)環境下、グリッド印加電圧−700Vのスコロトロン帯電器で感光体をマイナス帯電させ、次いで帯電させた感光体に780nmの半導体レーザーを用いて、10mJ/mの光量にてフラッシュ露光をした。露光後、10秒後の感光体表面の電位(V)を測定し、この値を残留電位の値とした。いずれの感光体においても、残留電位は負の値を示した。それぞれの感光体において、(画像形成1実施前の残留電位)−(画像形成1実施後の残留電位)の値を算出し、電気特性安定性を評価した。A++が最も良好な特性であることを示す。
A++:10V未満
A+:10V以上 20V未満
A :20V以上 30V未満
B :30V以上 50V未満
C :50V以上
【0438】
―耐傷付性評価―
画像形成1を実施した後の感光体表面の傷発生度合いを以下のように評価した。
A++が最も良好な特性であることを示す。
A++:顕微鏡観察でもキズが確認されない。
A+:目視でキズが確認されないが、顕微鏡観察で小さなキズが確認される。
A :目視でキズが若干確認される(実用上は問題ない)。
B :部分的にキズが発生。
C :全面にキズ発生。
【0439】
−ブレードめくれ−
画像形成1を実施した後の電子写真感光体にクリーニングブレードを以下に示す条件で接触させ、感光体を30回転させた後の前記クリーニングブレードの接触状態(ブレードが捲くれているか否か)を目視で観察し、以下の評価基準で、ブレードめくれの評価を行った。
・ブレードの材質:ウレタンゴム
・ブレードの弾性力:53%
・押し付け圧力 :3.2g/mm
【0440】
【表1】
【0441】
【表2】
【0442】
【表3】
【0443】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、電気特性安定性、及び耐傷性の評価について良好な結果が得られたことがわかる。
また、本実施例では、比較例に比べ、ブレードめくれの評価についても良好な結果が得られたことがわかる。
【0444】
以下、表1及び表2の略称等の詳細について示す。
【0445】
[保護層中の電荷輸送材料]
・(a−1):例示化合物(I−b)−21
・(a−2):例示化合物(I−b)−23
・(a−3):例示化合物(I−b)−25
・(a−4):例示化合物(I−d)−7
・(a−5):例示化合物(I−d)−8
・(a−6):例示化合物(I−d)−10
・(a−7):例示化合物(II)−171
・(a−8):例示化合物(II)−176
・(a−9):例示化合物(II)−180
・(a−10):下記構造式で表される化合物
・(a−11):下記構造式で表される化合物
・(a−12):下記構造式で表される化合物
・(a−13):下記構造式で表される化合物
・(a−14):下記構造式で表される化合物
・(a−15):下記構造式で表される化合物
・(a−16):例示化合物(I−a)−21
・(a−17):例示化合物(I−a)−25
・(a−18):例示化合物(I−c)−11
・(a−19):例示化合物(I−c)−17
・(a−20):例示化合物(I−c)−121
・(a−21):例示化合物(II)−35
・(a−22):例示化合物(II)−187
・(a−23):例示化合物(II)−38
・(a−24):例示化合物(II)−184
【0446】
【化108】

【0447】
【化109】
【0448】
[電荷輸送層中の結着樹脂]
・結着樹脂(C−1)〜(C−9)(ポリカーボネート共重合体)を、下記製法により合成した。
【0449】
−結着樹脂C−1の合成−
ホスゲン吹込管、温度計及び攪拌機を備えたフラスコに窒素雰囲気下にて1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以下Zと称する)106.9g(0.398モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(以下BPと称する)24.7g(0.133モル)、ハイドロサルファイト0.41g、9.1%水酸化ナトリウム水溶液825ml(水酸化ナトリウム2.018モル)、塩化メチレン500mlを仕込んで溶解し、攪拌下18℃〜21℃に保持し、ホスゲン76.2g(0.770モル)を75分要して吹込みホスゲン化反応させた。ホスゲン化反応終了後、p−tert−ブチルフェノール1.11g(0.0075モル)および25%水酸化ナトリウム水溶液54ml(水酸化ナトリウム0.266モル)を加え撹拌し、途中トリエチルアミン0.18mL(0.0013モル)を添加し、30℃以上35℃以下の温度で2.5時間反応させた。
分離した塩化メチレン相を無機塩類及びアミン類がなくなるまで酸洗浄及び水洗した後、塩化メチレンを除去して結着樹脂(C−1)[ポリカーボネート共重合体]を得た。この結着樹脂(C−1)[ポリカーボネート共重合体]は、Z((Z)−0)とBP((BP−0)との構造単位の比がモル比で75:25であった。
【0450】
−結着樹脂(C−2)〜(C−9)の合成−
その他、結着樹脂(C−2)〜(C−9)は、表4に従った繰り返し構造単位(表中「ユニット」と表記)を有するように、使用単量体を変えた以外は、結着樹脂(C−1)と同様にして合成した。
【0451】
【表4】
【0452】
[電荷輸送層中の電荷輸送材料]
・(d−1):下記構造式で表わされる化合物
・(d−2):下記構造式で表わされる化合物
・(d−3):下記構造式で表わされる化合物
・(d−4):下記構造式で表わされる化合物
【0453】
【化110】

【0454】
【化111】

【符号の説明】
【0455】
1…下引層、2…電荷発生層、3…電荷輸送層、4…導電性基体、5…保護層、6…単層型感光層、7A,7B,7C,7…電子写真感光体、8…帯電装置、9…露光装置、11…現像装置、13…クリーニング装置、14…潤滑材、30…感光体、40…転写装置、50…中間転写体、100…画像形成装置、120…画像形成装置、300…プロセスカートリッジ
図1
図2
図3
図4
図5