(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354263
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】電気推進システムの給電方法および給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20180702BHJP
B63H 21/17 20060101ALI20180702BHJP
B63H 23/24 20060101ALI20180702BHJP
B63J 99/00 20090101ALI20180702BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
B63H21/17
B63H23/24
B63J99/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-72726(P2014-72726)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-195684(P2015-195684A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】高林 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】馬場 謙二
(72)【発明者】
【氏名】引地 徹
(72)【発明者】
【氏名】樋口 陽介
【審査官】
坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−152021(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/155014(WO,A1)
【文献】
特開2011−195049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
B63B 1/00−69/00
B63H 1/00−25/52
B63J 1/00−99/00
H01M10/42−10/48
H02J 1/00− 1/16
7/00− 7/12
7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池電源と、個々の電池電源からそれぞれ主電路スイッチを介して電気推進システムの推進電動機に給電する複数の主電路と、個々の電池電源からそれぞれ補機電路スイッチを介して電気推進システムの補機に給電する複数の補機電路とを含む電気推進システムの給電方法において、
前記補機電路にそれぞれダイオードを前記電池電源から補機に電流を流す極性にして直列に挿入接続し、前記主電路を介する複数の電池電源の並列接続による推進電動機への給電を開始する前に、少なくとも電池電源間の電圧差が許容範囲内にない場合に、補機電路を介する複数の電池電源の並列接続による補機への給電を前もって開始することにより、電池電源間の電圧差を許容範囲内に低減する動作を生じさせることを特徴とする電気推進システムの給電方法。
【請求項2】
電池電源間の電圧差が許容範囲内にあることを、個々の補機電路に流れる補機電路電流間の電流差が設定値以下であることをもって判定することを特徴とする請求項1記載の電気推進システムの給電方法。
【請求項3】
補機電路電流間の電流差を示す信号もしくは前記設定値に対するその電流差のレベル範囲を示す信号を出力もしくは表示することを特徴とする請求項2記載の電気推進システムの給電方法。
【請求項4】
補機電路を介する複数の電池電源の並列接続による補機給電を行う際に、電圧の最も高い電池電源単独による主電路を介する推進電動機への給電を許可することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の電気推進システムの給電方法。
【請求項5】
最も大きい電流が流れている補機電路が属する電池電源を、電圧の最も高い電池電源として判定することを特徴とする請求項4記載の電気推進システムの給電方法。
【請求項6】
複数の電池電源と、個々の電池電源からそれぞれ主電路スイッチを介して電気推進システムの推進電動機に給電する複数の主電路と、個々の電池電源からそれぞれ補機電路スイッチを介して電気推進システムの補機に給電する複数の補機電路とを含む電気推進システムの給電方法において、補機電路を介して複数の電池電源を並列接続した際に生じ得る電池電源間の突入電流を防止するためのダイオードを個々の補機電路にそれぞれ直列に挿入接続し、外部電源による補機給電を行う際に、外部電源の電圧を複数の電池電源の電圧よりも僅かに高い電圧とし、外部電源による補機への給電から電池電源による補機への給電に切り替える際に、個々の補機電路スイッチをオンした後に外部電源の切り離しを行うことを特徴とする電気推進システムの給電方法。
【請求項7】
複数の電池電源と、個々の電池電源からそれぞれ主電路スイッチを介して電気推進システムの推進電動機に給電する複数の主電路と、個々の電池電源からそれぞれ補機電路スイッチを介して電気推進システムの補機に給電する複数の補機電路と、補機電路を介して複数の電池電源を並列接続した際に生じ得る電池電源間の突入電流を防止するために個々の補機電路にそれぞれ直列に挿入接続されたダイオードと、補機電路を介する複数の電池電源の並列接続による補機への給電を開始することにより電池電源間の電圧差を低減する動作を生じさせ、その電圧差が許容範囲内にあることを条件に、主電路を介する複数の電池電源の並列接続による推進電動機への給電を許可するように、主電路スイッチおよび補機電路スイッチを制御する制御装置とからなる電気推進システムの給電装置。
【請求項8】
前記制御装置が、個々の補機電路に流れる電流をそれぞれ検出する電流検出器と、検出した電流間の電流差を求める電流差演算部と、該電流差演算部によって求められた電流差が設定値以下であることを判定して複数の電池電源に属する主電路スイッチのオンを許可する信号を出力する比較部とを含むことを特徴とする請求項7記載の電気推進システムの給電装置。
【請求項9】
前記制御装置が、検出した電流間の電流差もしくは前記設定値に対するその電流差のレベル範囲を表示する表示部を含むことを特徴とする請求項8記載の電気推進システムの給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池電源と、個々の電池電源からそれぞれ主電路スイッチを介して電気推進システムの推進電動機に給電する複数の主電路と、個々の電池電源からそれぞれ補機電路スイッチを介して電気推進システムの補機に給電する複数の補機電路とを含む電気推進システムの給電方法および給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2台の電池電源と、個々の電池電源からそれぞれ主電路スイッチを介して電気推進システムの主機に給電する2系統の主電路と、個々の電池電源からそれぞれ補機電路スイッチを介して電気推進システムの補機に給電する2系統の補機電路とを含む電気推進システムは、例えば船舶用又は電気自動車の電気推進システムとして公知である(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
図6は、この種の従来技術に基づいて構成した、例えば船舶用の電気推進システムの給電装置を示す。この電気推進システムでは、推進用プロペラを駆動する2台の推進電動機M1,M2への給電のために2台の電池電源B1,B2が設けられている。各推進電動機M1,M2は、この例では、PWMインバータINV1,INV2を介して給電される交流電動機である。各電池電源B1,B2の端子A,Bは、それぞれ主電路スイッチSW1,SW2を介して共通電路上の端子C,Dに接続されており、共通電路上にはそれぞれ個別のPWMインバータINV1,INV2を介して推進電動機M1,M2が並列接続されている。この共通電路の中間点に共通電路スイッチSW10が設けられている。共通電路スイッチSW10を開閉することにより、各主電路は個別に給電することも、互いに並列に給電することもできる。
【0004】
かくして、2系統の主電路が構成されている。更に、端子C,Dにはそれぞれ他のスイッチSW5,SW6および整流器DG1,DG2を介して発電機G1,G2が接続されており、推進電動機M1,M2への給電もしくは電池電源B1,B2の充電が可能である。
【0005】
更に、端子A,Bにはそれぞれ補機電路スイッチSW3,SW4の一端が接続され、補機電路スイッチSW3,SW4の他端はそれぞれ1号補機動力および2号補機動力のための給電端子F,Gに接続されている。かくして、電気推進システムの運行に必要な2系統の補機電路が構成されている。更に、補機用の給電端子F,Gがそれぞれ別の補機電路スイッチSW7,SW8を介して点Hにおいて共通接続可能であり、このH点は端子TMに接続される。この端子TMには外部電源Gが接続可能であり、スイッチSW3,SW4をオフにしてスイッチSW7,SW8をオンにすることによって、外部電源Gから補機に給電することができる。更に、電池電源B1の端子AとスイッチSW3との間には一方の補機電路電流IAX1を検出する電流検出器SHAX1が挿入され、電池電源B2の端子BとスイッチSW4との間には他方の補機電路電流IAX2を検出する電流検出器SHAX2が挿入されている。両電流検出器によって検出された補機電路電流は、それぞれ図示されていない表示器で表示することができる。
【0006】
各電池電源B1,B2について、内部電圧がVB1,VB2で示されている。各電路部分に分布する電路抵抗が等価抵抗RB1〜RB11で示されており、特にRB1,RB2は各電池電源の内部抵抗に相当する。
【0007】
このような従来の電気推進システムの給電装置では、共通電路スイッチSW10がオンにされた状態で、電気推進システムの運転にともない主電路スイッチSW1およびSW2を任意にオン、オフしても障害を与えるような大きな突入電流は流れなかった。これは、従来では、電池電源B1,B2として鉛蓄電池を使用していたために、電池内部抵抗RB1,RB2が大きく、2つの電池電源間に多少の電圧差があっても、電池電源間に大きな突入電流が流れなかったという理由による。しかし、鉛蓄電池に代えてリチウムイオン電池を使用した場合には、電池内部抵抗RB1,RB2が極めて小さいことから、電池電源間の電圧差が僅かであっても並列接続時に過大な突入電流が流れて電池へダメージを与えたり、給電電路に設けた保護装置が突入電流によって作動して給電装置が給電不能となったりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−195049号公報
【特許文献1】特許第4883002号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、リチウムイオン電池等の内部抵抗値が極めて小さい電池を電源に使用した場合に電池電源間に電圧差があっても、突入電流を十分に抑制して電池電源の並列接続による給電を開始することを可能にする電気推進システムの給電方法および給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、方法発明に関しては、複数の電池電源と、個々の電池電源からそれぞれ主電路スイッチを介して電気推進システムの推進電動機に給電する複数の主電路と、個々の電池電源からそれぞれ補機電路スイッチを介して電気推進システムの補機に給電する複数の補機電路とを含む電気推進システムの給電方法において、前記補機電路にそれぞれダイオードを前記電池電源から補機に電流を流す極性にして直列に挿入接続し、前記主電路を介する複数の電池電源の並列接続による推進電動機への給電を開始する前に、少なくとも電池電源間の電圧差が許容範囲内にない場合には、補機電路を介する複数の電池電源の並列接続による補機への給電を前もって開始することにより、電池電源間の電圧差を許容範囲内に低減する動作を生じさせることによって解決される。
【0011】
本発明による電気推進システムの給電方法よれば、主電路を介して2台の電池電源を並列接続して推進電動機への給電を開始する前に先ず、それぞれダイオードを含む2系統の補機電路を介して2台の電池電源が並列接続されて補機への給電が行われる。両電池電源間に電圧差があるときに、もしダイオードがなければ、電圧(内部電圧)の高い方の電池電源から電圧(内部電圧)の低い方の電池電源に向けて突入電流が流れ込む。しかし、ダイオードのおかげで、電圧の高い方の電池電源に属する補機電路のダイオードのみが導通することができる。従って、電圧の低い方の電池電源は放電を阻止され、電圧の高い方の電池電源だけが放電して単独で補機への給電を開始するので、補機電路での突入電流は完全に回避される。電圧の高い方の電池電源では、放電の進行にともない内部電圧が低下してゆく。電圧の高い方の電池電源の端子電圧が電圧の低い方の電池電源の内部電圧以下に低下しようとするや否や、電圧の低い方の電池電源でも付属のダイオードの導通により放電が開始する。これにともなって両電池電源は並列給電により補機電流を分担する。電圧の高い方の電池電源が分担する補機電流は減少してゆき、電圧の低い方の電池電源が分担する補機電流は増加してゆく。やがて、各電池電源が分担する補機電流は互いに等しくなる。このとき、両電池電源の内部電圧は互いに一致し、即ち電池電源間の電圧差が零となっている。このように、本発明によれば、補機電路を利用して両電池電源の電圧差を低減させる動作、即ち電池電源間の電圧アンバランスを取り除く、いわば「均圧化」の動作を生じさせる。その電圧差が許容範囲内に低減した後に、主電路を介する複数の電池電源の並列接続による推進電動機への給電を許可すれば、突入電流を十分に抑制して安全かつ確実に推進電動機の給電を開始することができる。
【0012】
先に挙げた特許文献1および特許文献2によれば、2台の電池電源、2系統の主電路および2系統の補機電路からなる電気推進システムにおいて、主電路に短絡事故が発生したとき補機電路に接続された機器・装置からの吐き出し電流を阻止するために、2系統の補機電路にそれぞれダイオードが直列接続されている。しかし、これらの文献に開示された従来技術は、ダイオードのおかげで結果的に補機電路を介した電池電源間の突入電流を回避できたとしても、主電路を介した電池電源間の突入電流に対する格別な措置は講じていないので、このままでは鉛蓄電池等の内部抵抗値が大きい電池電源を使用した電気推進システムへの適用に限定され、リチウム電池等の内部抵抗値が極めて小さい電池電源を使用した電気推進システムには適用できない。従って、これらの文献は、補機電路を利用して予め電池電源間の電圧アンバランスを取り除いてから、主電路を介する電池電源の並列接続による推進電動機への給電を開始するという技術的構想に到っておらず、また、それを教唆するものでもない。
【0013】
本発明による方法は、原理的に3台以上の電池電源の並列給電動作に対しても実施可能である。3台以上の電池電源が、それぞれダイオードを含む補機電路を介して並列投入されると、電池電源間に電圧差があれば、電圧の高い電池電源の方から順番に、それぞれ付属のダイオードの導通で生じる放電電流により電圧が低下させられ、これにより逐次、電池電圧が揃えられていくので、電池電圧が揃った電源同士を逐次、該当の主電路により並列投入することができる。あるいは全ての電池電源の均圧化が完了したときに、全ての電池電源を一括して主電路スイッチにより並列投入することも考えられ得る。
【0014】
本発明による方法の好ましい実施形態に従って、電池電源間の電圧差が許容範囲内にあることを、個々の補機電路に流れる補機電路電流間の電流差が設定値以下であることをもって判定すると有利である。複数の電池電源と、それぞれの補機電路が理想的に対称的に構成されている場合には、個々の補機電路電流が等しくなった時点で電池電源の充電状態が均等となり、内部電圧が一致する。それゆえ、補機電路電流間の電流差に対して閾値を予め設定しておき、電流差がその設定値以下であることを条件に、主電路を介する複数の電池電源の並列接続による推進電動機への給電を許可するならば、主電路を介して電池電源を並列接続した際に生じ得る突入電流を、前記設定値に応じて許容範囲内に抑制することができる。
【0015】
本発明による方法の好ましい実施形態に従って、補機電路電流間の電流差を示す信号もしくは前記設定値に対するその電流差のレベル範囲を示す信号を出力もしくは表示するとよい。補機電路電流間の電流差を表示することによって電池電源間のバランス状態を常時監視することができ、前記設定値に対するその電流差のレベル範囲を表示することによって両電池のバランス状態が設定値以上であるか、以下であるかを常時監視することができる。
【0016】
本発明による好ましい実施形態に従って、補機電路を介して複数の電池電源を並列接続して補機に給電することにより、電池電源間の電圧差を低減する動作を生じさせる際に、電圧の最も高い電池電源単独による主電路を介する推進電動機への給電を許可するとよい。それによって、特に電池電源間の電圧アンバランスが大きい場合に、電圧の最も高い電池電源単独による主電路を介する推進電動機への給電も行うことによって、突入電流の抑制を確保しながら均圧化の過程をスピードアップすることができる。その際に、最も大きい電流が流れている補機電路が属する電池電源を、電圧の最も高い電池電源として判定することができる。
【0017】
補機電路を利用した複数の電池電源間の均圧化を行う前に、補機給電が外部電源によって行われているとき、外部電源による補機給電から電池電源による補機給電への切り替える場合に、これを次の方法に従って実施すると有利である。即ち、複数の電池電源と、個々の電池電源からそれぞれ主電路スイッチを介して電気推進システムの推進電動機に給電する複数の主電路と、個々の電池電源からそれぞれ補機電路スイッチを介して電気推進システムの補機に給電する複数の補機電路とを含む電気推進システムの給電方法において、補機電路を介して複数の電池電源を並列接続した際に生じ得る電池電源間の突入電流を防止するためのダイオードを個々の補機電路にそれぞれ直列に挿入接続し、外部電源による補機給電を行う際に、外部電源の電圧を複数の電池電源の電圧よりも僅かに高い電圧とし、外部電源による補機への給電から電池電源による補機への給電に切り替える際に、個々の補機電路スイッチをオンした後に外部電源の切り離しを行うという方法である。これによって、個々の補機電路のスイッチは無電流状態でオン操作が可能であるので接点損傷を防止できると共に、外部電源による補機給電から電池電源による補機給電への切替えを無瞬断で行うことができる。
【0018】
前記課題は、装置発明に関しては、複数の電池電源と、個々の電池電源からそれぞれ主電路スイッチを介して電気推進システムの推進電動機に給電する複数の主電路と、個々の電池電源からそれぞれ補機電路スイッチを介して電気推進システムの補機に給電する複数の補機電路と、補機電路を介して複数の電池電源を並列接続した際に生じ得る電池電源間の突入電流を防止するために個々の補機電路にそれぞれ直列に挿入接続されたダイオードと、補機電路を介する複数の電池電源の並列接続による補機への給電を開始することにより電池電源間の電圧差を低減する動作を生じさせ、その電圧差が許容範囲内にあることを条件に、主電路を介する複数の電池電源の並列接続による推進電動機への給電を許可するように、主電路スイッチおよび補機電路スイッチを制御する制御装置とからなる電気推進システムの給電装置によって解決される。
【0019】
本発明による給電装置の好ましい実施形態によれば、制御装置が、個々の補機電路に流れる電流をそれぞれ検出する電流検出器と、検出した電流間の電流差を求める電流差演算部と、該電流差演算部によって求められた電流差が設定値以下であることを判定して複数の電池電源に属する主電路スイッチのオンを許可する信号を出力する比較部とを含む。この制御装置が、更に、検出した電流間の電流差もしくは前記設定値に対するその電流差のレベル範囲を表示する表示部を含むとよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明による電気推進システムの給電方法および給電装置よれば、突入電流を防止しながら補機電路を介して複数の電池電源を並列接続して補機への給電を行うことができるだけでなく、主電路を介して複数の電池電源を並列接続する前に、補機電路を利用して複数の電池電源間の電圧アンバランスを低減するので、主電路を介して複数の電池電源の並列接続する際に生じ得る突入電流を十分に抑制することができる。それゆえ、リチウムイオン電池等の内部抵抗値の極めて小さい電池を使用した電池電源の場合にも電池にダメージを与えることなく、あるいは給電回路に設けられた過電流保護装置を作動させることなく、安全かつ確実に推進電動機への並列給電を開始することができる。本発明によれば、電池電源間の電圧アンバランスの低減を行うための回路手段を、大電流が流れる主給電路に挿入する必要がないので、本発明による給電装置は大容量の電気推進システムに適している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による電気推進システムの給電装置の実施例を示す回路図である。
【
図2】本発明による電気推進システムの給電装置に含まれる制御装置のうち主電路スイッチの操作回路部分の実施例を示す回路図である。
【
図3】本発明による電気推進システムの給電装置に含まれる制御装置のうち補機電路スイッチの操作回路部分の実施例を示す回路図である。
【
図4】電池差電圧と突入電流の関係を例示する特性曲線図である。
【
図5】個々の補機電流電路間の電流分担特性を例示する特性曲線図である。
【
図6】従来の電気推進システムの給電装置の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に本発明による電気推進システムの給電装置の実施例を示す。
図1の本発明の電気推進システムの給電装置は、
図6の従来例の電気推進システムの給電装置に対して、両図の比較からは、次の点で相違している。
(1)両補機電路のそれぞれにダイオードD1,D2が挿入接続されている。ダイオードD1,D2はそれぞれ、電池電源B1,B2から負荷となる各補機側へ電流が流れる極性で接続されている。
(2)両補機電路の端子A,B側にそれぞれ電圧検出器DVAX1,DVAX2が接続されている。
(3)両補機電路の共通接続点H側に電圧検出器DVXLが接続されている。
【0023】
しかし、上記以外に、
図1の本発明による電気推進システムの給電装置は、
図2,
図3,
図4および
図5に基づく説明から明らかにするように、主電路スイッチSW1,SW2および補機電路スイッチSW3,SW4、SW7,SW8の制御に関して、
図6の従来の電気推進システムの給電装置と根本的に相違する。
【0024】
図6の従来例では、共通電路スイッチSW10がオンした状態で主電路においてスイッチSW1およびSW2をオンしたとき、両電池電源B1,B2間に電圧差ΔVB(VB1−VB2)によって、
IMS=ΔVB÷(RB1+RB3+RB4+RB8+RB7+RB2)
・・・(1)
なる主電路突入電流IMSが流れる。
【0025】
また、補機電路スイッチSW3,SW7,SW8,SW4をオンしたとき、両電池電源B1,B2間に電圧差ΔVB(VB1−VB2)によって、
IAS=ΔVB÷(RB1+RB10+RB11+RB2)・・・(2)
なる補機電路突入電流IASが流れる。
【0026】
前記(1)式に示す主電路の合計抵抗値(RB1+RB3+RB4+RB8+RB7+RB2)を0.0025Ωと仮定すれば、電圧差15Vのとき6000Aの主電路突入電流IMSが流れる。
【0027】
また、前記(2)式に示す補機電路合計抵抗値(RB1+RB10+RB11+RB2)を主電路合計抵抗値の2倍と仮定すれば、電圧差15Vのとき3000Aの補機電路突入電流IASが流れる。
図4には、この例に従って突入電流IMSおよびIASに関し、電池差電圧(V)の変化に対する突入電流(A)の推移が示されている。このような突入電流は電池にダメージを与えると共に、各電路に設けた過電流保護機能を備えたスイッチが動作して回路接続ができなくなる。
【0028】
これに対して、
図1に示す本発明による電気推進システムの給電装置では、主電路スイッチSW1,SW2をオンして電池電源B1とB2とを並列接続するのに先立って、先ず補機電路スイッチSW3,SW7,SW8,SW4をオンすることにより電池電源B1と電池電源B2とを並列接続して補機への給電を行う。
【0029】
図5は、
図1に示す本発明による電気推進システムの給電装置において、補機電路を介して並列接続された電池電源B1と電池電源B2の電流分担特性を示す。横軸に補機電路電流(%)が取られ、縦軸に電圧(V)が取られている。補機電流は、各系統の補機の定格電流を100(%)として示す。
【0030】
全てのスイッチがオフの状態にあるとすると、電圧検出器DVAX1によって検出される電池電源B1側の端子Aの電圧VAX1は電池電源B1の内部電圧VB1に等しく、電圧検出器DVAX2によって検出される電池電源B2側の端子Bの電圧VAX2は電池電源B2の内部電圧VB2に等しく、電圧検出器DVAXLによって検出される両補機電路の共通接続点Hの電圧VAXLは0である。
【0031】
ここで、例えば電池電源B1の内部電圧VB1が電池電源B2の内部電圧VB2よりも大きいものとする。この状態で、今スイッチSW3,SW7,SW8,SW4をオンにすると、電圧の高い方の電池電源B1がダイオードD1の導通により補機に向けて放電する。その際に、電圧の高い方の電池電源B1側の端子電圧VAX1は、電流検出器SHAX1によって検出される第1の補機電路電流IAX1に応じて、
図5に示す特性線(1)B1のように推移する。
【0032】
このとき、電圧の低い方の電池電源B2は、これに属する第2の補機電路のダイオードD2が逆電圧となるため阻止状態にあって放電することができず、電流検出器SHAX2によって検出される第2の補機電路電流IAX2は0である。従って、電池電源B2側の端子Bの電圧VAX2は、補機電路電流(IAX1)に対して、
図5にVL1で示すレベル線(1)B2のように、電池電源B2の内部電圧VB2に等しい値で推移する。このレベル線(1)B2と特性線(1)B1とが交差する動作点a1では、補機電路電圧VAXLは、電池電源B2の内部電圧VB2に等しい値VL1のレベルにあり、電流はIAX1=100%、IAX2=0となる。
【0033】
電池電源B1の電圧VB1は放電が進行するのにともなって低下する。その結果、
図5に示すように、電池電源B1の特性線が(1)B1から、例えば(2)B1に移行し、補機電路電圧VAXLがVL1からVL2に低下したとする。この状態では、電池電源B2の内部電圧VB2(=VL1)が補機電路電圧VAXL(=VL2)より高くなるので、電池電源B2側の補機電路でもダイオードD2が導通し、電池電源B2が、例えば
図5に示す特性線(2)B2に従って放電動作を行う。即ち、電池電源B2は、特性線(2)B2とレベル線VL2との交点である動作点b1で動作し、補機電路電流IAX2=35%を供給する。これに対して、電池電源B1は、特性曲線(2)B1とVL2のレベル線との交点である動作点b2で動作し、補機電路電流IAX1=85%を供給する。従って、両補機電路の合計電流は、35%+85%=120%となって、これに該当する動作点が
図5にa2で示されている(ただし、補機は、電圧が低下すれば反比例的に電流が増える定電力特性を有するものとする)。
【0034】
更に、電池電源B1およびB2の放電が進行すると、両電池電源の電圧は共に低下していくが、電圧の高い方の電池電源B1では、電圧の低い方の電池電源B2よりも放電電流が大きいため、より高い勾配で電圧が低下する。従って、やがて両電池電源は内部電圧が等しくなる。この状態を先の特性線(2)B2を便宜的に再び利用して説明すると、両電池電源の内部電圧が一致した状態で補機電路電圧がVAXL=VL3であれば、両電池電源B1,B2は、いずれも特性線(2)B2とレベル線VL3との交点である動作点cで動作する。従って、電池電源B1が補機電路電流IAX1=70%を供給し、電池電源B2は補機電路電流IAX2=70%を供給し、合計で70%+70%=140%の放電電流が補機動力として供給される。このように、両補機電路電流が等しくなること(IAX1=IAX2)で、両電池電源B1,B2の電圧が一致したこと(VB1=VB2)が分かる。
【0035】
電池電源B1および電池電源B2から推進電動機M1およびM2へ並列に給電する場合は、主電路スイッチSW1,SW2および共通電路スイッチSW10をオンにすることによって行われる。このとき本発明による方法を用いない場合には、電池電源間の電圧差によって突入電流IMSが流れる。この突入電流IMSを抑制するために、本発明によれば、主電路スイッチSW1およびSW2を投入した状態で、スイッチSW10を投入する前に、補機電路スイッチSW3,SW4,SW7,SW8を投入することによって、補機への給電を行う。これによって、
図5で説明したように、両電池電源間の電圧差(VB1−VB2)の低減する動作、即ち均圧化動作が行われ、電圧差(VB1−VB2)がゼロに近づく。補機電流IAX1とIAX2との電流差に対して閾値を予め設定しておき、電流差がその設定値以下になったことを条件にして主電路スイッチSW1,SW2および共通電路スイッチSW10をオンして、電池電源B1.B2を有する2系統の主電路を並列に接続すれば、主電路の突入電流IMSを極小値に抑制することができる。
【0036】
それぞれ電池電源を有する2系統の主電路の並列接続は、主電路スイッチSW1、SW2および共通電路スイッチSW10がともにオンとなったときに行われるので、2系統の主電路の並列接続は、主電路スイッチSW1,SW2と共通電路スイッチSW10の投入順序に関係なく行うことができる。
【0037】
図2および
図3は、本発明による方法を実施するための装置、特にスイッチSW1およびSW2の操作回路(
図2)およびスイッチS3およびS4の操作回路(
図3)を示す。
【0038】
図2において、ISUBは、
図1の電流検出器SHAX1,SHAX2によって検出された補機電路電流IAX1,IAX2から電流差ΔIAX=IAX1−IAX2を演算し、その電流差に相当する信号S1を出力する電流差演算部である。VRIAXは、電流差ΔIAXに対する設定値(閾値)ΔIAXsを設定する電流差設定部である。CPは、電流差演算部ISUBからの電流差ΔIAXに相当する信号S1と、電流差設定部VRIAXからの設定値ΔIAXsに相当する信号S2とを比較し、電流差ΔIAXが設定値ΔIAXs以下であるとき、スイッチSW1およびスイッチSW2のオンを許可する信号S3を出力する比較部である。DP1は、電流差演算部ISUBからの信号S4に応じて電流差ΔIAXを表示する電流差表示部である。DP2は、2つの表示手段を有する電流差レベル表示部である。例えば、一方の表示手段は、比較部CPからの信号S5によって電流差ΔIAXが設定値ΔIAXs以上であることを示すための表示器であり、他方の表示手段は、比較部CPからの信号S6によって電流差ΔIAXが設定値ΔIAXs以下であることを示すための表示器である。
【0039】
RY1,RY2は、それぞれ主電路スイッチSW1,SW2をオン−オフするためのリレーである。各リレーRY1,RY2の制御回路にはそれぞれ手動操作スイッチCS1,CS2が設けられ、これらの手動操作スイッチCS1,CS2は、それぞれ、比較部CPの信号S3に応動するa接点Ca1,Ca2と直列に接続されてリレーRY1,RY2のコイル給電回路を成している。比較部CPの信号S3に応動するa接点Ca1,Ca2には、それぞれ、自分側のリレーに属する自己保持用のa接点Ra11,Ra21と、相手側のリレーに属するインターロック用のb接点Rb2,Rb1とが並列接続されている。従って、比較部CPの信号S3に応動するa接点Ca1,Ca2が開路されているときには、(インターロック用のb接点Rb2,Rb1の働きにより)手動操作スイッチCS1,CS2のうち先に『入』の操作をした手動操作スイッチに属する主電路スイッチのみしかオンすることができない。比較部CPの信号S3に応動するa接点Ca1,Ca2が閉成されているときには、『入』の操作の順番に関係なく両手動操作スイッチCS1,CS2に属する主電路スイッチSW1,SW2をオンすることができる。
【0040】
既に説明したように、補機電路スイッチSW3,SW4,SW7,SW8の投入によってもたらされる両電池電源間の均圧化動作の結果、両補機電路の電流IAX1,IAX2が互いに接近していく。電流差ΔIAX=IAX1−IAX2が設定値ΔIAXs以下になると、比較部CPが、電流差レベル表示部DP2に対して信号S5をオフして信号6をオンすると同時に、リレー制御回路に対して信号S3を出力する。電流差が設定値以下であることを示す電流差レベル表示部DP2の表示を確認して、手動操作スイッチCS1およびCS2を『入』操作するならば、比較部CPの出力信号S3に応動してオン状態となっているa接点Ca1,Ca2を介して、両リレーRY1およびRY2が付勢され、主電路スイッチSW1およびSW2へオン指令を与えるa接点Ra12、Ra22がオンされる。このときリレー制御回路では、相手方リレーの動作にともなってb接点Rb1,Rb2が開路され、その代わりに自分側のリレーの動作にともなって自己保持用のa接点Ra11,Ra21が閉成される。主電路スイッチSW1およびSW2へのオン指令は、手動操作スイッチCS1,CS2の『切』操作によって自己保持が解除されるまで継続される。
【0041】
このようにして主電路の突入電流IMSを抑制することができる。
図4は、主電路電流IMSの電池電圧差(V)に対する電流の変化が補機電路電流IASのそれに対して2倍となる例を示している。この例に従えば、電流差設定部VRIAXにより、例えばΔIAX=100Aなる設定値を設定して、電流差が100A以下になったことを条件にスイッチSW1,SW2をオンするようにすれば、主電路にはIMS=200Aの突入電流が流れることになる。当然、電流差設定値を小さく設定すれば、突入電流IMSは更に小さくすることができる。
【0042】
また、両電池電源の電流差値を電流差演算部ISUBの出力信号S4で表示部DP1に表示すれば両電池のバランス状態を常時監視することができ、比較部CPの出力信号S5,S6によって、電流差ΔIAXが設定値以上であるか以下であるかを示す電流差レベル範囲を表示部DP2に表示すれば、両電池電源の電圧バランス状態を常時監視することができる。
【0043】
図2によるスイッチ操作回路は、両電池電源の電圧アンバランスが所定値以上の状態であっても主電路を給電状態として推進電動機を運転したいとき、スイッチSW1か、スイッチSW2かの何れかの一方のスイッチのみをオンすることを許容する。この場合、電圧の高い方の電池電源に属する主電路スイッチをオンにして推進電動機に給電することにより運転を行う。既に説明したように、主電路スイッチSW1,SW2をオンする前に、補機電路スィッチSW3,SW4,SW7,SW8をオンして、補機電路を介して電池電源B1、B2を並列接続することにより補機給電を開始する。電圧が高い方の電池電源とは、両補機電路電流IAX1,IAX2のうち大きい方が属する電池電源のことである。それゆえ、例えば
図2のスイッチ操作回路の場合には、電流差演算部ISUBの出力信号S4の極性、従って電流差表示部DP1での極性表示によって電圧が高い方の電池電源を判別することができる。
【0044】
例えばIAX1>IAX2の場合に、電池電源B1が電圧の高い方の電池電源であるので、これに所属するスイッチSW1をオンにすべく、手動操作スイッチCS1を『入』操作する。この手動操作スイッチCS1の接点(CSa1)と(リレーRY2のb接点Rb2とを介してリレーRY1が付勢される結果、主電路スイッチSW1へのオン指令接点Ra12がオンし、主電路スイッチSW1が投入される。リレーRY1の作動により、リレーRY2側の制御回路ではリレーRY1のb接点Rb1が開路されるので、手動操作スイッチCS2による操作は無効となり、主電路スイッチSW2はもはやオンすることができない。一方、補機側の給電電路では既述の方法で、両電池電源の電圧を均圧化する動作が行われ、やがて両補機電路の電流差ΔIAXが設定値以下となって比較部CPから信号S3が出力される。これによって、その連動a接点Ca2がオンとなり、リレーRY2の制御回路での手動操作スイッチCS2の『入』操作が有効となるので、手動操作スイッチCS2を『入』操作することにより主電路スイッチ2を投入することができる。このとき、電池電源B1,B2間の電圧差は微小であるから、主電路スイッチSW2のオン時の突入電流IMSは十分に抑制される。
【0045】
このように、電圧の高い方の電池電源のみで推進電動機への給電を行いながら補機電路による電池電源の均圧化動作を行う方法は、電池電源間の均圧化を待たずに推進電動機の運転を開始することができるだけでなく、給電を開始した側の電池電源は、推進電動機に給電する大きな電流で放電するので、電圧低下の勾配が大きく均圧化過程のスピードアップを図ることができる。ただし、当然、電池電源1台による運転であるから推進電動機の運転範囲は1台の電池電源給電範囲の上限値を超えない制限運転が必要である。
【0046】
外部電源から補機動力へ給電を行う場合は、補機電路スイッチSW3,SW4をオフにして、補機電路スイッチSW7,SW8を介して端子TMに外部電源を接続する。この外部電源による給電状態から電池電源B1,B2による給電へ切り替えるときは、補機動力への給電が無瞬断で行われることが望ましい。この場合に、外部電源の電圧(H点電圧)を電池電源B1,B2の電圧よりもやや高い電圧にしてスイッチSW3,SW4をオンすると、ダイオードD1,D2の逆電圧ブロック作用により、スイッチSW3,SW4には電流が流れないから、スイッチSW3,SW4の接点が損傷することはない。その後、外部電源をオフにすれば、外部電源から電池電源へ無瞬断で切り替えることができる。
【0047】
図3は、このための補機電路スイッチSW3,SW4の操作回路の例を示す。RY3,RY4は、それぞれスイッチSW3,SW4をオン−オフするためのリレーであり、CS3,CS4は、それぞれスイッチSW3,SW4に付設された手動操作スイッチである。
図1に示すように電圧検出器DVXLによって検出されたH点の電圧検出信号VAXLが、3つの電圧判別部CP1〜CP3に入力される。更に、第1の電圧判別部CP1には、
図1に示す電圧検出器DVAX1によって検出されたA点の電圧検出信号VAX1が入力され、第2の電圧判別部CP2には、
図1に示す電圧検出器DVAX2によって検出されたB点の電圧検出信号VAX2が入力される。
【0048】
第1の電圧判別部CP1は、VAXL≧VAX1のとき、即ちH点電圧がA点電圧以上であるとき、リレーRY3の付勢回路の第1分岐中のa接点CP1aをオンする信号S7を出力する。第2の電圧判別部CP2は、VAXL≧VAX2のとき、即ちH点電圧がB点電圧以上であるとき、リレーRY4の付勢回路の第1分岐中のa接点CP2aをオンする信号S8を出力する。第3の電圧判別部CP3は、VAXL>0のとき、即ちH点電圧があるとき、リレーRY3およびRY4の制御回路の第1分岐中の他のa接点CP3a3、CP3a4をオンすると共に第2分岐中のb接点CP3b3,CP3b4をオフする信号S9を出力する。
【0049】
各リレーの制御回路では、それぞれ第1分岐と第2分岐とが並列接続されており、これらの並列分岐に対してそれぞれ手動操作スイッチCS3もしくはCS4の接点CSa3、CSa4が直列接続されている。
【0050】
更に、A点電圧VAX1とB点電圧VAX2との電圧差ΔVAX(=VAX1−VAX2)に相当する信号S11を出力する電圧差演算部VSUBと、この電圧差演算部が出力する信号S11に従って電流差ΔVAXを表示する差電圧表示部DP3が設けられている。
【0051】
このように構成された操作回路によれば、端子TMに外部電源が接続されている場合には、第3の電圧判別部CP3の出力信号S9が出力されるので、第1および第2の電圧判別部CP1およびCP2によってその外部電源の電圧がいずれの電池電源B1,B2の電圧よりも高いこと(VAXL≧VAX1およびVAXL≧VAX2)を確認する出力信号S7およびS8が出力されていることを条件に、手動操作スイッチCS3およびCS4の『入』位置への操作によるスイッチSW3,SW4のオンが許容される。この条件でスイッチSW3,SW4をオンするならば、このときスイッチSW3,SW4は無通電でオンするから、SW3,SW4の接点に損傷を与えことはない。なお、CS5は、これをオンすることにより電圧判別部CP3にもたらされる信号S10によって電圧判別部CP3の上述の機能を有効にする手動操作スイッチである。即ち、手動操作スイッチCS5をオフ、従って信号S10をオフにすれば、上述の条件なしに、手動操作スイッチCS3,CS4の操作によりスイッチSW3,SW4をオンすることができる。
【符号の説明】
【0052】
B1,B2 電池電源
CP 比較部
CP1〜CP3 電圧判別部
CS1〜CS5 手動操作スイッチ
D1,D2 ダイオード
DG1,DG2 整流器
DP1〜DP3 表示部
G 外部電源
G1,G2 発電機
IAS 補機電路を介する突入電流
IAX1,IAX2 補機電路の電流検出値
IMS 主電路を介する突入電流
INV インバータ
ISUB 電流差演算部
M1,M2 推進電動機
RB1〜RB9 等価分布抵抗
RY1〜RY4 リレー
SHAX1,SHAX2 電流検出器
SW1〜SW8 スイッチ
VAX1,VAX2 電圧検出値
VAXL 外部電源の電圧検出値
VRIAX 電流差設定部
VSUB 電圧差演算部