(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクチュエータ、前記運動変換機構、および前記方向変更機構が、前記回転中心の周方向に沿って、車体と前記支持部材とを接続する接続部材の周りに配置された、請求項1〜3のうちいずれか一つに記載の車両用ブレーキ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0017】
また、以下に開示される複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれる。以下では、同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。また、各図中では、便宜上、車両前後方向の前方が矢印Xで示され、車幅方向(車軸方向)の外方が矢印Yで示され、車両上下方向の上方が矢印Zで示される。
【0018】
また、以下では、車両用ブレーキの一例であるブレーキ装置2,2Aが、左側の後輪(非駆動輪)に適用された場合が例示されるが、本発明は、他の車輪にも同様に適用可能である。
【0019】
<第1実施形態>
図1に示されるように、ブレーキ装置2は、円筒状のホイール1の筒状部1a(周壁)の内側に収容されている。また、ブレーキ装置2は、ドラムブレーキとして構成されている。すなわち、
図2に示されるように、ブレーキ装置2は、前後両側に円弧状のブレーキシュー3を備えている。ブレーキ装置2の周囲には、円筒状のドラム4(
図5,6参照)が設けられている。ドラム4は、車幅方向(Y方向)に沿う回転中心Ax回りに、ホイール1と一体に回転する。ブレーキ装置2は、二つのブレーキシュー3を、円筒状のドラム4の内周面4aに接触するよう移動させる。これにより、ブレーキシュー3とドラム4との摩擦によって、ドラム4ひいてはホイール1が制動される。ブレーキシュー3は、制動部材(可動部材)の一例である。
【0020】
ブレーキ装置2は、ブレーキシュー3を動かすアクチュエータとして、アクチュエータ51(
図2参照)と、アクチュエータ52(
図3参照)と、を備えている。アクチュエータ51は、例えば、油圧によって動作するホイルシリンダである。また、アクチュエータ52は、例えば、通電によって動作するモータである。二つのアクチュエータ51,52は、それぞれ、二つのブレーキシュー3を動かすことができる。アクチュエータ51は、例えば、走行中の制動に用いられ、アクチュエータ52は、例えば、駐車時の制動に用いられる。すなわち、ブレーキ装置2は、電動パーキングブレーキの一例である。なお、アクチュエータ52は、走行中の制動にも用いられうる。本実施形態によれば、アクチュエータ52に関連する新規な構成が得られる。
【0021】
ブレーキ装置2は、
図1〜4に示されるように、円盤状のバックプレート6を備えている。バックプレート6は、車幅方向と交差して(直交して)設けられる。すなわち、バックプレート6は、車幅方向と交差する方向(直交する方向、XZ平面)に略沿って広がっている。
図1に示されるように、ブレーキ装置2の構成部品は、バックプレート6の車幅方向の外側および内側の双方に設けられている。バックプレート6は、ブレーキ装置2の各構成部品を直接的または間接的に支持する。すなわち、バックプレート6は、支持部材の一例である。また、バックプレート6は、接続部材7と接続されている。接続部材7は、バックプレート6と車体(図示されず)とを接続する。接続部材7は、例えば、サスペンションの一部(例えば、アーム、リンク、取付部材等)である。接続部材7には、バックプレート6の車幅方向内側の面6a(
図3,4参照)が、取り付けられる。接続部材7の端部7a(
図3,4参照)は、バックプレート6に設けられた複数の開口部6b(
図2参照)のそれぞれを貫通した結合具(例えばボルト、図示されず)によって、バックプレート6と結合される。
図4に示されるように、接続部材7は、バックプレート6と固定された状態で、当該バックプレート6の車幅方向内側の面6aから、車幅方向内側に向けて延びている。なお、
図2に示されるように、バックプレート6の中央部には円形状の開口部6cが設けられている。本実施形態では、ブレーキ装置2が非駆動輪に用いられた場合が例示されている。本実施形態のブレーキ装置2は、駆動輪にも用いることができる。ブレーキ装置2が駆動輪に用いられる場合、開口部6cを車軸(図示されず)が貫通する。バックプレート6は、例えば、金属材料で構成される。
【0022】
図2に示されるアクチュエータ51や、ブレーキシュー3等は、バックプレート6の車幅方向外側に配置されている。ブレーキシュー3は、バックプレート6に移動可能に支持されている。本実施形態では、例えば、ブレーキシュー3の下端部3aが、回転中心Ax1回りに回転可能に、バックプレート6に支持されている。回転中心Ax1は、ホイール1の回転中心Axと略平行である。また、アクチュエータ51は、バックプレート6の上端部に支持されている。アクチュエータ51は、車両前後方向(
図2の左右方向)に突出可能な二つの可動部(ピストン、図示されず)を有する。アクチュエータ51は、油圧(加圧)に応じて、二つの可動部を突出させる。突出した二つの可動部は、それぞれ、ブレーキシュー3の上端部3bを押す。二つの可動部の突出により、二つのブレーキシュー3は、それぞれ、回転中心Ax1回りに回転し、上端部3b同士が車両前後方向に互いに離間するように移動する。これにより、二つのブレーキシュー3は、ホイール1の回転中心Axの径方向外側に移動する。各ブレーキシュー3の外周部には、円筒面に沿った帯状のライニング31が設けられている。よって、二つのブレーキシュー3の、回転中心Axの径方向外側への移動により、ライニング31とドラム4の内周面4a(
図6参照)とが接触する。ライニング31と内周面4aとの摩擦によって、ドラム4ひいてはホイール1が制動される。また、
図2に示されるように、ブレーキ装置2は、復帰部材32を備えている。復帰部材32は、アクチュエータ51によるブレーキシュー3を押す動作が解除された場合に、二つのブレーキシュー3を、ドラム4の内周面4aと接触する位置(制動位置Pb、
図6参照)からドラム4の内周面4aと接触しない位置(非制動位置Pn、初期位置、
図5参照)へ動かす。復帰部材32は、例えば、コイルスプリング等の弾性部材であり、各ブレーキシュー3に、もう一方のブレーキシュー3に近付く方向の力、すなわち、ドラム4の内周面4aから離れる方向の力を与える。
【0023】
また、ブレーキ装置2は、アクチュエータ51とは別に、二つのブレーキシュー3を非制動位置Pnから制動位置Pbに移動させる移動機構8(
図5,6参照)を備えている。移動機構8は、バックプレート6の車幅方向外側に設けられている。移動機構8は、
図2,5,6に示されるように、レバー81(ただし、
図2には示されず)と、ケーブル82と、ストラット83と、を有する。レバー81(主動部材)は、二つのうち一方(例えば
図2の左側)のブレーキシュー3Lとバックプレート6との間で、当該ブレーキシュー3Lおよびバックプレート6にホイール1の回転中心Axの軸方向に重なるように、設けられている。また、レバー81は、ブレーキシュー3Lに、回転中心Ax2回りに回転可能に支持されている。回転中心Ax2は、ブレーキシュー3Lの、回転中心Ax1から離れた側(
図2では上側)の端部(上端部)に位置され、回転中心Axおよび回転中心Ax1と略平行である。ケーブル82(作動部材)は、レバー81の回転中心Ax2から遠い側の端部(下端部81a)を、他方(例えば、
図2の右側)のブレーキシュー3Rに近付く方向に動かす。ケーブル82は、バックプレート6に略沿って移動する。また、ストラット83(突張部材)は、レバー81と当該レバー81が支持されるブレーキシュー3Lとは別のブレーキシュー3Rとの間に介在し、レバー81と当該別のブレーキシュー3Rとの間で突っ張る。また、レバー81とストラット83との接続位置P1は、回転中心Ax2と、ケーブル82とレバー81との接続位置P2と、の間に設定されている。
【0024】
このような移動機構8において、ケーブル82が
図5,6の右側へ動く(引かれる)ことにより、レバー81が、
図6に示されるように、ブレーキシュー3Rに近付く方向へ動くと(矢印a)、レバー81はストラット83を介してブレーキシュー3Rを押す(矢印b)。これにより、ブレーキシュー3Rは、非制動位置Pn(
図5)から回転中心Ax1回りに回転し(矢印c)、ドラム4の内周面4aと接触する位置(制動位置Pb、
図6)へ動く。この状態では、ケーブル82とレバー81との接続位置P2は力点、回転中心Ax2は支点、レバー81とストラット83との接続位置P1は作用点に相当する。さらに、ブレーキシュー3Rが、内周面4aに接触した状態で、レバー81が
図5,6の右側、すなわち、ストラット83がブレーキシュー3Rを押す方向へ動くと(矢印a)、ストラット83が突っ張ることにより、レバー81はストラット83との接続位置P1を支点として、レバー81の動く方向とは逆方向、すなわち、
図5,6での反時計回りに回転する(矢印d)。これにより、ブレーキシュー3Lは、非制動位置Pn(
図5)から回転中心Ax1回りに回転し、ドラム4の内周面4aと接触する位置(制動位置Pb、
図6)へ動く。このようにして、移動機構8の作動により、ブレーキシュー3L,3Rは、非制動位置Pnから制動位置Pbへ動く。なお、ブレーキシュー3Rがドラム4の内周面4aに接触した以降の状態では、レバー81とストラット83との接続位置P1が支点となる。なお、ブレーキシュー3L,3Rの移動量は微少(例えば、1mm以下)である。
【0025】
アクチュエータ52は、この移動機構8を介して、二つのブレーキシュー3を、非制動位置Pnから制動位置Pbへ動かす。ブレーキ装置2は、アクチュエータ52と移動機構8との間に介在する構成として、
図3,4に示される減速機構9、運動変換機構10、方向変更機構11、およびケーブル82を備えている。減速機構9は、アクチュエータ52のシャフト5aの回転速度を、スパーギヤ9dの回転速度に減速する。運動変換機構10は、スパーギヤ9dと一体のナット10aの回転を、ねじ10bの線状の移動(直動)に変換する。方向変更機構11は、ねじ10bに結合されたケーブル82の移動方向を車両上方(
図3の上方)から車両後方(
図3の左方)へ変更する。そして、ケーブル82が、レバー81(
図5,6参照)を引っ張る。なお、アクチュエータ52のシャフト5aからレバー81までの各部は、アクチュエータ52のシャフト5aの正転および逆転の双方に連動する。
【0026】
図3,4に示されるアクチュエータ52、減速機構9、運動変換機構10、および方向変更機構11は、バックプレート6の車幅方向内側で、バックプレート6に沿って(XZ平面に略沿って)配置されている。また、減速機構9、運動変換機構10、および方向変更機構11は、ケース12内に収容され、当該ケース12に支持されている。また、アクチュエータ52は、ケース12に取り付けられ、その少なくとも一部(ハウジング)はケース12から露出している。ケース12は、壁部12a,12bを有する。壁部12a(底壁)は、バックプレート6と略平行に設けられている。壁部12b(周壁、側壁)は、壁部12aと交差し(直交し)、壁部12aの周縁部から車幅方向内方に延びている。壁部12bによって構成される開口部12cは、壁部12aと略平行な壁部(天壁、蓋、図示されず)によって覆われ、ケース12内は略密閉される。ケース12は、例えば、結合具(例えばボルト、図示されず)によって、バックプレート6に固定される。ケース12は、例えば、金属材料や合成樹脂材料等によって構成される。なお、アクチュエータ52は、ケース12内に収容されてもよい。
【0027】
図3,4に示されるように、ケース12は、アクチュエータ52の周方向の一方側(
図3では左側)に隣接して設けられている。すなわち、ケース12とアクチュエータ52とは、ホイール1の回転中心Axの周方向に略沿って並んでいる。また、アクチュエータ52の周方向の他方側(
図3では右側)に近接して、配管13が設けられている。配管13は、例えば、アクチュエータ51(
図2参照)の作動流体(オイル)用のチューブあるいはホースである。このように、本実施形態では、アクチュエータ52の周方向に隣接した位置、あるいは周方向に近接した位置に、部品(ケース12、配管13)が配置されている。
【0028】
図3,4に示されるように、減速機構9は、ウォーム9aや、ウォームホイール9b、スパーギヤ9c,9d等を有する。ウォーム9aは、アクチュエータ52のシャフト5a(出力軸)と一体に回転する。ウォーム9aとウォームホイール9bとが噛み合い、ウォームホイール9bとスパーギヤ9cとが一体に回転し、スパーギヤ9cとスパーギヤ9dとが噛み合う。この減速機構9では、ウォーム9aとウォームホイール9bとの噛み合いにより、回転中心の軸方向が変更される。具体的に、アクチュエータ52のシャフト5aの回転中心Ax3は、車両前後方向(
図3の左右方向)に延びているのに対し、ウォームホイール9bや、スパーギヤ9c,9dの回転中心は、車両上下方向(
図3の上下方向、例えば回転中心Ax4)に延びている。また、
図3に示されるように、アクチュエータ52のシャフト5aおよびウォーム9aの回転中心Ax3の軸方向と、スパーギヤ9dの回転中心Ax4の軸方向とは、ホイール1の回転中心Axの軸方向の視線(車幅方向の視線、
図3の視線)で、回転中心Axから離れた位置で互いに交差(例えば直交)している。また、回転中心Ax3および回転中心Ax4は、バックプレート6の車幅方向内側で、バックプレート6に沿って(XZ平面に略沿って)いる。ウォーム9aおよびウォームホイール9bは、回転方向変更機構の一例である。ウォーム9aおよびウォームホイール9bにより、ホイール1の回転中心Axの回りを回るように、回転中心Ax3,Ax4の軸方向が変更される。
【0029】
運動変換機構10は、ナット10aや、ねじ10b、フランジ10c等を有する。ナット10aは、スパーギヤ9dと一体に回転する。ナット10aとねじ10bとは、噛み合っており、ナット10aの回転に応じて、ねじ10bが長手方向に移動する。ねじ10bとフランジ10cとは一体に構成されている。フランジ10cの回転は、ケース12に設けられたリブ12dと接触することによって、抑制されている。よって、ナット10aの回転中心Ax4回りの回転に応じて、ねじ10bが、当該ねじ10bの回転中心Ax4の軸方向に移動する。なお、リブ12dは、回転中心Ax4の軸方向と略平行に延びている。すなわち、リブ12dは、フランジ10cの回転は抑制するものの、フランジ10cひいてはねじ10bの、回転中心Ax4の軸方向に沿った移動は、許容する。リブ12dは、回り止め部の一例である。ねじ10bの先端部10dには(下端部)ケーブル82が接続されている。ナット10aの回転に応じたねじ10bの移動によって、ケーブル82が車両上方へ引かれる。ナット10aは、第一の部材の一例であり、ねじ10bあるいはケーブル82は、第二の部材の一例である。
【0030】
方向変更機構11は、プーリ11aを有する。プーリ11aは、回転中心Ax5回りに回転可能に、ケース12に支持されている。回転中心Ax5は、ホイール1の回転中心Axと略平行である。すなわち、回転中心Ax5は、バックプレート6と交差(略直交)し、XZ平面と交差(略直交)している。プーリ11aの、少なくとも車両後方側かつ下方側(
図3の左下側)の部分に、ケーブル82が掛けられており、ケーブル82の一端側はプーリ11aから車両上方へ延びるとともに、ケーブル82の他端側はプーリ11aから車両前方へ延びている。よって、運動変換機構10のねじ10bの直動(移動)によって車両上方(回転中心Ax4の軸方向上方)へ引かれたケーブル82は、プーリ11aを介して車両後方(方向Dbの左方)へ向けて引かれる。すなわち、方向変更機構11は、ケーブル82の車両上方(回転中心Ax4の軸方向)への移動を、ケーブル82の車両後方(方向Db)への移動に変更している。ここで、
図3から明らかとなるように、プーリ11aの一端側(車両上方)でのケーブル82の移動方向(回転中心Ax4の軸方向、第一の方向)と、他端側(車両前方)でのケーブル82の移動方向(方向Db、第二の方向)とは、ホイール1の回転中心Axの軸方向の視線(車幅方向の視線、
図3の視線)で、回転中心Axから離れた位置で互いに交差(例えば直交)している。すなわち、方向変更機構11により、ホイール1の回転中心Axの回りを回るように、ケーブル82の移動方向が変更されている。方向変更機構11およびその前後において、ケーブル82は、バックプレート6の車幅方向内側で、バックプレート6に沿って(XZ平面に略沿って)移動する。すなわち、回転中心Ax4および方向Dbは、バックプレート6の車幅方向内側で、バックプレート6に沿って(XZ平面に略沿って)いる。なお、プーリ11aの周りをケーブル82が滑る構成であってもよい。
【0031】
また、
図7に示されるように、プーリ11aの運動変換機構10とは反対側のケーブル82は、バックプレート6に設けられた開口部6dを貫通している。
図3に示されるように、ケーブル82の一端は、ねじ10bの先端部10dと結合され、
図5,6に示されるように、ケーブル82の他端は、移動機構8のレバー81の下端部81aと結合されている。よって、アクチュエータ52のシャフト5aの回転によって、減速機構9、運動変換機構10、方向変更機構11、およびケーブル82を介してレバー81が動き、これにより、ブレーキシュー3が動いて、制動状態を得ることができる。また、ブレーキ装置2では、例えばECU(electronic control unit)等の制御によってアクチュエータ52に流す電流を制御することにより、アクチュエータ52のシャフト5aの回転の開始や、停止、回転方向の切り替え等を、制御することができる。アクチュエータ52のシャフト5aの正転および逆転に応じて、ブレーキシュー3は、非制動位置Pnと制動位置Pbとの間で移動することができる。また、ブレーキ装置2は、例えば、アクチュエータ52の負荷トルクに対応したアクチュエータ52の電流値が閾値と同じかあるいは超えた場合に、アクチュエータ52が動作を停止するよう、構成されうる。これにより、アクチュエータ52の動作を自動的に停止することができるとともに、アクチュエータ52やブレーキ装置2の構成部品への負荷の増大が抑制されやすい。
【0032】
また、
図3に示されるように、運動変換機構10のナット10aは、ケース12の壁部12fに設けられた開口部12eを貫通している。開口部12eは、例えば切り欠きである。ナット10aの頭部10f(スパーギヤ9d)と壁部12fとの間には、ワッシャ10eが介在している。アクチュエータ52の動作による制動状態で、アクチュエータ52の動作が停止された場合、ナット10aには、ケーブル82から、レバー81およびブレーキシュー3を介して、復帰部材32の弾性力(復帰力)に基づく引張力が作用する。よって、ナット10aの頭部10fは、ワッシャ10eを介して壁部12f側に押し付けられる。すなわち、ナット10aと壁部12fとの間には押力が生じる。ここで、本実施形態では、ナット10aおよびねじ10bの進み角が比較的小さく設定されることにより、上記押力に応じた摩擦力によって、ナット10aの回転が抑制されるよう、構成されている。すなわち、運動変換機構10は、摩擦によるセルフロック機能を備えている。ワッシャ10eは、座部の一例である。なお、壁部12f、もしくはワッシャ10eおよび壁部12fの双方を、座部として用いることも可能である。また、ワッシャ10eは、省略することができる。
【0033】
以上のように、本実施形態では、方向変更機構11は、
図3に示されるように、ケーブル82(第二の部材)の第一の方向(ナット10aの回転中心Ax4の軸方向)への移動を、ケーブル82の第二の方向(方向Db)への移動に変更する。そして、第一の方向(回転中心Ax4の軸方向)と第二の方向(方向Db)とが、ホイール1の回転中心Axの軸方向からの視線(
図3の視線)で、当該回転中心Axから離れた位置で互いに交差している。ここで、仮に、方向変更機構を備えていない場合、運動変換機構やアクチュエータ等が、直線状に並び、例えばホイール1の回転中心Axの径方向外側等に、大きく張り出す虞がある。この点、本実施形態では、ブレーキ装置2が方向変更機構11を備えているため、例えば、
図3,4に示されるように、ブレーキ装置2のアクチュエータ52や、運動変換機構10、方向変更機構11、ケーブル82等が、ホイール1の回転中心Axの回りに、全体的に屈曲あるいは湾曲しつつ並ぶ形態に、配置されうる。よって、本実施形態によれば、例えば、ブレーキ装置2が少なくとも径方向に大型化し難い。
【0034】
また、本実施形態では、
図3,4に示されるように、アクチュエータ52、運動変換機構10、および方向変更機構11が、ホイール1の回転中心Axの周方向に沿って、接続部材7の周りに配置されている。よって、本実施形態によれば、例えば、接続部材7の周りのスペースを利用して、アクチュエータ52や、運動変換機構10、方向変更機構11、ケーブル82等が、配置されうる。
【0035】
また、本実施形態では、
図1に示されるように、アクチュエータ52、運動変換機構10、および方向変更機構11が、ホイール1の筒状部1aの径方向の内側に位置されている。よって、本実施形態によれば、例えば、筒状部1a内のスペースを利用して、アクチュエータ52、運動変換機構10、および方向変更機構11を配置することができる。
【0036】
また、本実施形態では、
図1に示されるように、アクチュエータ52や、運動変換機構10、方向変更機構11、ケース12等が、ホイール1の筒状部1aから車幅方向内側(軸方向)に突出しない状態に、構成されている。よって、本実施形態によれば、例えば、アクチュエータ52、運動変換機構10、および方向変更機構11が、ホイール1によって保護されうる。また、アクチュエータ52、運動変換機構10、および方向変更機構11が、ホイール1の筒状部1aから車幅方向内側に出た場合に比べて、接続部材7やその他の部品の形状やレイアウト等の自由度が、高まりやすい。
【0037】
また、本実施形態では、方向変更機構11は、例えば、プーリ11aを有する。よって、本実施形態によれば、例えば、方向変更機構11が比較的簡素に構成されうる。
【0038】
また、本実施形態では、
図3,4に示されるように、少なくとも運動変換機構10および方向変更機構11が、ケース12内に収容されている。よって、本実施形態によれば、例えば、少なくとも運動変換機構10および方向変更機構11が、ケース12によって保護されうる。また、例えば、ケース12に運動変換機構10や方向変更機構11等が収容されるため、運動変換機構10や方向変更機構11等が個別にあるいは直接的にバックプレート6に取り付けられる構成に比べて、製造時やメンテナンス時等における部品の着脱がより容易に行われうる。
【0039】
また、本実施形態では、
図3,4に示されるように、ケース12が、アクチュエータ52のホイール1の回転中心Axの周方向の一方側に、位置されている。よって、本実施形態によれば、例えば、ケース12によって、アクチュエータ52が、ホイール1の筒状部1a内で周方向に移動する物(例えば、雪や土等)から、保護されうる。また、例えば、アクチュエータ52の周方向一方側に隣接した位置に、物(例えば、雪や土等)が進入するのが抑制されうる。
【0040】
また、本実施形態では、
図3,4に示されるように、配管13(別の部材)が、アクチュエータ52の周方向の他方側に位置されている。よって、本実施形態によれば、例えば、配管13によって、アクチュエータ52が、ホイール1の筒状部1a内で周方向に移動する物(例えば、雪や土等)から、保護されうる。また、本実施形態では、アクチュエータ52の周方向の両側に、ケース12と配管13とが配置されている。よって、本実施形態によれば、例えば、アクチュエータ52への周方向の一方側からの物による影響と、周方向の他方側からの物による影響との双方が、緩和されうる。
【0041】
また、本実施形態では、運動変換機構10は、セルフロック機能を有する。よって、本実施形態によれば、例えば、運動変換機構10のセルフロック機能によって、ホイール1の制動状態が維持されうる。よって、例えば、セルフロック機能を別個に設けた場合に比べて、ブレーキ装置2の構成が簡素化されうる。
【0042】
また、本実施形態では、運動変換機構10は、ナット10a、ねじ10b、ワッシャ10e、および壁部12f(座部)を有し、ナット10aとワッシャ10eおよび壁部12fとの摩擦によりナット10aの回転を抑制する。よって、本実施形態によれば、例えば、比較的簡素な構成の運動変換機構10によって、セルフロック機能が得られる。
【0043】
また、本実施形態では、
図3,4に示されるように、アクチュエータ52は、運動変換機構10よりも上方に位置されている。また、アクチュエータ52は、ホイール1の回転中心Axおよび接続部材7よりも上方に位置されている。よって、本実施形態によれば、例えば、アクチュエータ52が浸水し難い。また、例えば、アクチュエータ52への異物の影響が減りやすい。
【0044】
<第2実施形態>
本実施形態のブレーキ装置2Aは、上記第1実施形態のブレーキ装置2と同様の構成を備えている。よって、本実施形態によっても、同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。
【0045】
ただし、本実施形態では、減速機構9Aの構成が、第1実施形態とは相違している。すなわち、
図8に示されるように、減速機構9Aは、ベベルギヤ9eやスパーギヤ9d等を有する。ベベルギヤ9eは、アクチュエータ52のシャフト5aと一体に回転する。そして、ベベルギヤ9eとスパーギヤ9dとが噛み合う。このようなギヤの組み合わせとすることで、
図8に示されるように、アクチュエータ52のシャフト5aの回転中心Ax3を上下方向に対して傾けて、周方向に沿わせることができる。よって、本実施形態によれば、例えば、アクチュエータ52がホイール1の回転中心Axの径方向の、より内側に位置される場合がある。なお、
図8に示されるように、アクチュエータ52は、ケース12Aとは別のカバー5bで覆われている。
【0046】
運動変換機構10Aは、実質的には第1の実施形態と同一である。ただし、本実施形態では、フランジ10cひいてはナット10aの回転が、ケース12Aの壁部12bによって抑制されている。
【0047】
方向変更機構11Aの構成は、第1実施形態とは相違している。すなわち、
図8,9に示されるように、方向変更機構11Aは、ケース12Aに、回転中心Ax5回りに回転可能に支持されたスイングアーム11bを有する。スイングアーム11bの一方の端部11cは、ねじ10bの先端部10dと接続され、スイングアーム11bの他方の端部11dは、レバー81と接続されている。具体的には、スイングアーム11bの端部11cは、ねじ10bの先端部10dに設けられたフック10gと接続されている(引っ掛かっている)。端部11cとフック10gとの接続により、ねじ10bの車両上下方向(
図8の上下方向)の直動(移動)が、スイングアーム11bの回転中心Ax5回りの回転に変換される。また、スイングアーム11bの、端部11cと回転中心Ax5回りの周方向に略90°離れた端部11dは、レバー81と接続されたアーム11eおよびロッド11fと接続されている。よって、スイングアーム11bの回転中心Ax5回りの回転が、端部11dの車両前後方向(
図8の左右方向)の直動(移動)に変換される。端部11dの車両前後方向の動きに応じて、アーム11eおよびロッド11fが車両前後方向に動く。すなわち、方向変更機構11Aは、ねじ10b(第二の部材)の第一の方向への移動を、アーム11eおよびロッド11f(第三の部材)の第二の方向の移動に変更している。ロッド11fの動きに応じて、ロッド11fが接続されるレバー81の下端部81aも、車両前後方向に動く。なお、本実施形態でも、アクチュエータ52からレバー81までの各部は、正方向および逆方向に連動する。また、ケース12Aの壁部12a(底壁)には、ロッド11fが貫通する開口部(例えば穴、図示されず)が設けられている。また、スイングアーム11b、アーム11e、ロッド11f、およびレバー81のそれぞれの接続箇所のうち少なくとも一箇所は、ホイール1の回転中心Axと平行な回転中心回りに回転可能に接続されうる。また、アーム11eおよびロッド11fは一部品として構成することが可能である。また、第2実施形態では、レバー81は、
図5,6の移動機構8とは左右逆(車両前後方向に逆)の位置に設けられており、第2実施形態の移動機構8およびブレーキシュー3の各部は、
図5,6とは左右逆に動く(図示されず)。スイングアーム11bは、回転部材の一例である。また、スイングアーム11bは、ベルクランクとも称されうる。
【0048】
本実施形態のブレーキ装置2Aも、第1実施形態とは構造が異なるものの、方向変更機構11Aを備えている。よって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様に、例えば、ブレーキ装置2Aが少なくとも径方向に大型化し難い。また、本実施形態のブレーキ装置2Aは、ケーブル82に替えて、アーム11eやロッド11f(第三の部材、作動部材)を備えている。よって、本実施形態によれば、例えば、ブレーキ装置2Aがより小さく構成される場合がある。また、本実施形態によれば、ケーブル82を組み付ける構成に比べて、例えば、第三の部材の取り付けや取り外しがより容易に行われる場合がある。
【0049】
また、本実施形態では、方向変更機構11Aは、例えば、スイングアーム11b(回転部材)を有する。よって、本実施形態によれば、例えば、方向変更機構11Aが比較的簡素に構成されうる。
【0050】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。また、複数の実施形態間で、構成を部分的に入れ替えて実施することができる。
【0051】
例えば、上記実施形態では、ブレーキ装置2,2Aは、リーディングトレーリング式のドラムブレーキとして構成されたが、本発明は他の形式のブレーキ装置としても構成することができる。また、一のアクチュエータによるディスクブレーキと他のアクチュエータによるドラムブレーキとを有するブレーキ装置の、当該他のアクチュエータに対応した構成として、本発明を実施することが可能である。また、アクチュエータは、モータ以外であってもよい。また、別の部材は、配管以外であってもよい。また、アクチュエータや、減速機構、運動変換機構、方向変更機構、ケース等は、接続部材の車両前方や、車両上方等にも配置されうるし、上記実施形態の位置から周方向に所定角度回転した位置等にも配置されうる。