特許第6354312号(P6354312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354312
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/00 20110101AFI20180702BHJP
   F04D 29/28 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   F24F1/00 306
   F04D29/28 C
   F04D29/28 N
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-101149(P2014-101149)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-218928(P2015-218928A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 登博
(72)【発明者】
【氏名】柏原 貴士
(72)【発明者】
【氏名】丸山 要
(72)【発明者】
【氏名】佐柳 恒久
(72)【発明者】
【氏名】横山 直史
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−331169(JP,A)
【文献】 特開2003−090298(JP,A)
【文献】 特表2001−518174(JP,A)
【文献】 特開2009−142625(JP,A)
【文献】 特開2002−243188(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0213637(US,A1)
【文献】 米国特許第06042335(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00
F04D 29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口(11)と吹出口(12)とが形成されているケーシング(2)と、
前記ケーシング(2)内を前記吸込口側の熱交換器室(S1)と前記吹出口側のファン室(S2)とに仕切っており、前記熱交換器室と前記ファン室とを連通するファン入口(13)が前記吹出口に対向するように形成されている仕切部材(3)と、
前記熱交換器室に設けられている熱交換器(4)と、
複数の後向き羽根(53)を有する羽根車(51)を有しており、回転軸(52)が前記ファン入口及び前記吹出口の開口方向を向いた状態で前記羽根車が前記ファン室に設けられて前記ファン入口を通じて前記熱交換器室の空気を前記ファン室に吸い込む遠心ファン(5)と、
を備えており、
前記羽根車は、前記複数の後向き羽根の前記吹出口側の端部を結ぶとともに前記回転軸を中心として回転するハブ(54)をさらに有しており、
前記ハブの外径は、前記後向き羽根の外径よりも短く、
前記後向き羽根の外径は、前記羽根車の外周側を囲む前記ケーシングの側部(23〜26)の水力直径の0.75倍以上であり、
前記ハブの外径は、前記後向き羽根の外径の0.91〜0.96倍である、
空気調和装置(1)。
【請求項2】
前記ハブ(54)の外径は、前記後向き羽根の前記ハブ側の端部における外径の0.91〜0.96倍である、
請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項3】
前記後向き羽根(53)の外径から前記ハブ(54)の外径を差し引いた長さは、前記後向き羽根の外径から前記後向き羽根の内径を差し引いた長さである翼弦長さの0.4倍以下である、
請求項1又は2に記載の空気調和装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置、特に、ファン入口が吹出口に対向するように形成されたファン室に回転軸がファン入口及び吹出口の開口方向を向いた状態で後向き羽根の遠心ファンが設けられた空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1(特開平6−281194号公報)に示すように、ファン入口が吹出口に対向するように形成された送風ユニット(ファン室)に回転軸がファン入口及び吹出口の開口方向を向いた状態で後向き羽根の遠心ファンが設けられた空気調和装置がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなファン室における遠心ファンの配置では、遠心ファンの羽根車から吹き出された直後の空気の径方向成分が強いため、この径方向成分がファン室における通風抵抗を増大させて、送風性能の向上を妨げる原因となっている。
【0004】
本発明の課題は、ファン入口が吹出口に対向するように形成されたファン室に回転軸がファン入口及び吹出口の開口方向を向いた状態で後向き羽根の遠心ファンが設けられた空気調和装置において、遠心ファンの送風性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点にかかる空気調和装置は、ケーシングと、仕切部材と、熱交換器と、遠心ファンとを有している。ケーシングには、吸込口と吹出口とが形成されている。仕切部材は、ケーシング内を吸込口側の熱交換器室と吹出口側のファン室とに仕切っており、熱交換器室とファン室とを連通するファン入口が吹出口に対向するように形成されている。熱交換器は、熱交換器室に設けられている。遠心ファンは、複数の後向き羽根を有する羽根車を有しており、回転軸がファン入口及び吹出口の開口方向を向いた状態で羽根車がファン室に設けられてファン入口を通じて熱交換器室の空気をファン室に吸い込む。そして、羽根車は、複数の後向き羽根の吹出口側の端部を結ぶとともに回転軸を中心として回転するハブをさらに有しており、ハブの外径は、後向き羽根の外径よりも短い。
【0006】
ここでは、上記のように、回転軸がファン入口及び吹出口の開口方向を向いた状態でファン室に設けられた遠心ファンの羽根車において、ハブの外径を後向き羽根の外径よりも短くしたものを採用している。このため、ここでは、遠心ファンの羽根車から吹き出された直後の空気の軸方向成分を強めるとともに径方向成分を弱めることができ、これにより、斜流流れの傾向を強めることができることができる。
【0007】
これにより、ここでは、ファン室における通風抵抗を低減することができ、遠心ファンの送風性能を向上させることができる。
【0008】
また、ここでは、後向き羽根の外径が、羽根車の外周側を囲むケーシングの側部の水力直径の0.75倍以上であり、ハブの外径が、後向き羽根の外径の0.91〜0.96倍である。
【0009】
第2の観点にかかる空気調和装置は、第1の観点にかかる空気調和装置において、ハブの外径が、後向き羽根のハブ側の端部における外径の0.91〜0.96倍である。
【0010】
遠心ファンの羽根車から吹き出された直後の空気によってファン室における通風抵抗が増大する程度は、後向き羽根とケーシングの側部との距離の影響を受ける。すなわち、後向き羽根とケーシングの側部との距離が小さくなるほど、通風抵抗が増大する傾向にある。また、斜流流れの程度は、ハブの外径の影響を受ける。すなわち、ハブの外径が小さくなるほど、斜流流れの傾向を強めることができる。但し、ハブの外径が小さくなり過ぎると、後向き羽根の送風機能そのものが損なわれてしまう。このような特質から、ハブの外径を後向き羽根の外径よりも短くした羽根車を採用する際には、後向き羽根とケーシングの側部との距離が小さい状況下で、後向き羽根の送風機能を損なわずに斜流流れの傾向が得られるようにすることが好ましい。
【0011】
そこで、ここでは、ハブの外径を後向き羽根の外径よりも短くした羽根車を採用するにあたり、上記のように、後向き羽根の外径が羽根車の外周側を囲むケーシングの側部の水力直径の0.75倍以上の状況下において、ハブの外径を後向き羽根の外径の0.91〜0.96倍にしている。
【0012】
これにより、ここでは、ハブの外径を後向き羽根の外径よりも短くした羽根車を採用するにあたり、その特質を考慮して、遠心ファンの送風性能を効果的に向上させることができる。
【0013】
第3の観点にかかる空気調和装置は、第1又は第2の観点にかかる空気調和装置において、後向き羽根の外径からハブの外径を差し引いた長さが、後向き羽根の外径から後向き羽根の内径を差し引いた長さである翼弦長さの0.4倍以下である。
【0014】
ここでは、ハブの外径を後向き羽根の外径よりも短くした羽根車を採用するにあたり、上記のように、後向き羽根の外径からハブの外径を差し引いた長さを翼弦長さの0.4倍以下にしている。
【0015】
これにより、ここでは、ハブの外径を後向き羽根の外径よりも短くした羽根車を採用するにあたり、後向き羽根をハブによって確実に支持し、構造強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0017】
第1及び第2の観点にかかる空気調和装置では、ファン室における通風抵抗を低減することができ、遠心ファンの送風性能を向上させることができる。また、ハブの外径を後向き羽根の外径よりも短くした羽根車を採用するにあたり、その特質を考慮して、遠心ファンの送風性能を効果的に向上させることができる。
【0018】
第3の観点にかかる空気調和装置では、ハブの外径を後向き羽根の外径よりも短くした羽根車を採用するにあたり、後向き羽根をハブによって確実に支持し、構造強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態にかかる空気調和装置の外観斜視図(縦置形態)である。
図2】空気調和装置の第1側部を取り外した状態を示す前側面図(縦置形態)である。
図3】空気調和装置の第2側部を取り外した状態を示す後側面図(縦置形態)である。
図4】空気調和装置の第3側部を取り外した右側面図(縦置形態)である。
図5】空気調和装置の第4側部を取り外した左側面図(縦置形態)である。
図6】遠心ファンの羽根車の外観斜視図である。
図7】遠心ファンの概略断面図である。
図8】空気調和装置の外観斜視図(横置形態)である。
図9】空気調和装置の第1側部を取り外した状態を示す右側面図(横置形態)である。
図10図2のI−I断面図である。
図11】羽根車をハブ側から見た外観斜視図である。
図12】後向き羽根の外径に対するハブの外径の比と送風効率との関係を示すグラフ(ケーシングの水力直径に対する後向き羽根の外径の比が0.798の場合)である。
図13】後向き羽根の外径に対するハブの外径の比と送風効率との関係を示すグラフ(ケーシングの水力直径に対する後向き羽根の外径の比が0.779の場合)である。
図14】後向き羽根の外径に対するハブの外径の比と送風効率との関係を示すグラフ(ケーシングの水力直径に対する後向き羽根の外径の比が0.755の場合)である。
図15】後向き羽根の外径に対するハブの外径の比と送風効率との関係を示すグラフ(ケーシングの水力直径に対する後向き羽根の外径の比が0.733の場合)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる空気調和装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる空気調和装置の具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0021】
(1)空気調和装置の基本構成
まず、空気調和装置1の基本構成について、図1図9を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の一実施形態にかかる空気調和装置1の外観斜視図(縦置形態)である。図2は、空気調和装置1の第1側部23を取り外した状態を示す前側面図(縦置形態)である。図3は、空気調和装置1の第2側部24を取り外した状態を示す後側面図(縦置形態)である。図4は、空気調和装置1の第3側部25を取り外した右側面図(縦置形態)である。図5は、空気調和装置1の第4側部26を取り外した左側面図(縦置形態)である。図6は、遠心ファン5の羽根車51の外観斜視図である。図7は、遠心ファン5の概略断面図である。図8は、空気調和装置1の外観斜視図(横置形態)である。図9は、空気調和装置1の第1側部23を取り外した状態を示す右側面図(横置形態)である。
【0022】
空気調和装置1は、建物内に設置されて室内の冷房や暖房を行う装置である。空気調和装置1は、ケーシング2と、仕切部材3と、熱交換器4と、遠心ファン5とを有している。ケーシング2には、吸込口11と吹出口12とが形成されている。仕切部材3は、ケーシング2内を吸込口11側の熱交換器室S1と吹出口12側のファン室S2とに仕切っており、熱交換器室S1とファン室S2とを連通するファン入口13が形成されている。熱交換器4は、熱交換器室S1に設けられている。遠心ファン5は、複数の後向き羽根53を有する羽根車51を有しており、回転軸52(その軸線を回転軸線Aとする)がファン入口13の開口方向Bを向いた状態で羽根車51がファン室S2に設けられてファン入口13を通じて熱交換器室S1の空気をファン室S2に吸い込む。
【0023】
また、ここでは、ファン入口13が吹出口12に対向しており、羽根車51の回転軸52(回転軸線A)がファン入口31の開口方向B及び吹出口12の開口方向Cを向いた状態になっている。また、ここでは、吸込口11がファン入口13に対向しており、羽根車51の回転軸52(回転軸線A)がファン入口31の開口方向B、吹出口12の開口方向C及び吸込口11の開口方向Dを向いた状態になっている。
【0024】
また、ここでは、空気調和装置1が、縦置形態及び横置形態という2つの形態を取り得るようになっている。縦置形態は、羽根車51の回転軸52(回転軸線A)が鉛直方向Zを向いた状態でケーシング2が配置される形態である(図1図5参照)。横置形態は、羽根車51の回転軸52(回転軸線A)が水平方向Xを向いた状態でケーシング2が配置される形態である(図8及び図9参照)。
【0025】
ケーシング2は、上記のように、吸込口11と吹出口12とが形成されている。ケーシング2は、主として、上流側部21と、下流側部22と、第1側部23と、第2側部24と、第3側部25と、第4側部26とを有している。これらの側部21〜26によって長尺の直方体形状のケーシング2が形成されている。上流側部21は、縦置形態の場合にケーシング2の底側面を形成し、横置形態の場合にケーシング2の後側面を形成する部材である。下流側部22は、縦置形態の場合にケーシング2の天側面を形成し、横置形態の場合にケーシング2の前側面を形成する部材である。上流側部21及び下流側部22は、ケーシング2の長手方向(回転軸線A及び開口方向B、C、Dに沿う方向)に互いに離間して配置されている。上流側部21には、吸込口11が形成されている。吸込口11は、上流側部21の中央に形成された四角孔形状の開口である。下流側部22には、吹出口12が形成されている。吹出口12は、下流側部22の中央からずらして形成された四角孔形状の開口である。ここでは、吹出口12は、下流側部22の第2側部24側に寄った位置に配置されている。第1側部23は、縦置形態の場合にケーシング2の前側面を形成し、横置形態の場合にケーシング2の右側面を形成する部材である。第2側部24は、縦置形態の場合にケーシング2の後側面を形成し、横置形態の場合にケーシング2の左側面を形成する部材である。第1側部23及び第2側部24は、ケーシング2の長手方向に直交する方向(縦置形態の場合は回転軸線A及び開口方向B、C、Dに直交する水平方向X、横置形態の場合は回転軸線A及び開口方向B、C、Dに直交する左右方向Y)に互いに離間して配置されている。第3側部25は、縦置形態の場合にケーシング2の右側面を形成し、横置形態の場合にケーシング2の天側面を形成する部材である。第4側部26は、縦置形態の場合にケーシング2の左側面を形成し、横置形態の場合にケーシング2の底側面を形成する部材である。第3側部25及び第4側部26は、ケーシング2の長手方向に直交する方向(縦置形態の場合は回転軸線A及び開口方向B、Cに直交する左右方向Y、横置形態の場合は回転軸線A及び開口方向B、C、Dに直交する鉛直方向Z)に互いに離間して配置されている。
【0026】
また、ここでは、上流側部21に吸込口11の外周縁を囲むように複数の突条21aが形成されており、下流側部22に吹出口12の外周縁を囲むように形成された複数の突条22aが形成されている。そして、突条21aを介して吸込ダクト18が接続され、突条22aを介して吹出ダクト19が接続されており、これにより、ここでは、空気調和装置1は、ダクト18、19を通じて空調室との間で空気のやりとりを行うダクト接続型の空気調和装置となっている。尚、ここでは、吸込口11及び吹出口12が四角孔形状であり、ダクト18、19も四角管形状であるが、これに限定されるものではなく、種々の形状を採用してもよい。また、空気調和装置1の型式も、ダクト接続型に限定されるものではなく、吸込口11や吹出口12から直接に空調室との間で空気のやりとりを行う型式等であってもよい。
【0027】
仕切部材3は、上記のように、ケーシング2内を吸込口11側の熱交換器室S1と吹出口12側のファン室S2とに仕切っており、熱交換器室S1とファン室S2とを連通するファン入口13が形成されている。仕切部材3は、主として、ケーシング2の長手方向に直交する方向(回転軸線A及び開口方向B、C、Dに直交する方向)に平行な四角板形状の仕切本体部31を有している。ファン入口13は、仕切本体部31に形成されており、ここでは、円孔形状である。仕切本体部31の周縁辺からは、ケーシング2の側部23〜26の内面に沿ってファン室S2側に向かって延びる四角枠形状の仕切周縁部32が形成されている。
【0028】
熱交換器4は、上記のように、熱交換器室S1に設けられている。熱交換器4は、冷房時に熱交換器室S1を流れる空気を冷媒によって冷却する熱交換器である。また、暖房時には、熱交換器室S1を流れる空気を冷媒によって加熱することもできる。ここでは、熱交換器4として、多数のフィン及び伝熱管からなるフィンチューブ型熱交換器が採用されている。そして、熱交換器4には、建物外に設置された室外ユニットなどから冷媒が供給されるようになっている。熱交換器4は、ケーシング2の第3側部25寄りの部分41と、ケーシング2の第4側部26寄りの部分42とを有している。そして、熱交換器4の第3側部25寄りの部分41は、ファン入口13に近い側から吸込口11に近い側に向かうにつれて、第3側部25に近づくように傾斜して配置されている。熱交換器4の第4側部26寄りの部分42は、ファン入口13に近い側から吸込口11に近い側に向かうにつれて、第4側部26に近づくように傾斜して配置されている。これにより、熱交換器4は、ファン入口13に近い側から吸込口11に近い側に向かうにつれて、ケーシング2の第3側部25側及び第4側部26に近づくV字形状をなしている。尚、熱交換器4の形状は、V字形状に限定されるものではなく、種々の形状を採用してもよい。
【0029】
また、熱交換器室S1には、熱交換器4において発生する結露水を受けるドレンパン43、44が設けられている。第1ドレンパン43は、羽根車51の回転軸52(回転軸線A)が水平方向Xを向いた状態でケーシング2が配置される場合(横置形態)に使用されるドレンパンである。第2ドレンパン44は、羽根車51の回転軸52(回転軸線A)が鉛直方向Zを向いた状態でケーシング2が配置される場合(縦置形態)に使用されるドレンパンである。第1ドレンパン43は、ファン入口13の開口方向Bに沿うケーシング2の側部23〜26の1つである第4側部26に寄った位置に配置されている。これにより、第1ドレンパン43は、横置形態の場合に、ケーシング2の底側面を形成する第4側部26の上側において、熱交換器4の下方を受けるように配置されていることになる。第2ドレンパン44は、ファン入口13の開口方向Bに直交する方向に沿うケーシング2の側部21、22の1つである上流側部21に寄った位置に配置されている。これにより、第2ドレンパン44は、縦置形態の場合に、ケーシング2の底側面を形成する上流側部21の上側において、熱交換器4の下方を受けるように配置されていることになる。そして、ここでは、縦置形態及び横置形態の両方に対応できるが、縦置形態においても、横置形態に使用される第1ドレンパン43が熱交換器室S1に存在し、横置形態においても、縦置形態に使用される第2ドレンパン44が熱交換器室S1に存在することになる。
【0030】
遠心ファン5は、上記のように、複数の後向き羽根53を有する羽根車51を有しており、回転軸52(回転軸線A)がファン入口13の開口方向Bを向いた状態で羽根車51がファン室S2に設けられてファン入口13を通じて熱交換器室S1の空気をファン室S2に吸い込む。また、ファン室S2には、羽根車51を回転駆動するファンモータ59が設けられている。ここで、ファン室S2には、羽根車51の回転軸52(回転軸線A)に沿って、ファン入口13に最も近い側に、羽根車51が配置されており、羽根車51の風下側にファンモータ59が配置されている。また、ファン入口13には、ベルマウス33が設けられている。ここで、ファン室S2の羽根車51の風下側の空間をファン風下空間S21とする。これにより、ファンモータ59は、ファン風下空間S21に配置されていることになる。
【0031】
羽根車51は、ハブ54と、シュラウド55と、ハブ54とシュラウド55との間に配置された複数の後向き羽根53と、を有している。ハブ54は、複数の後向き羽根53の吹出口22側の端部を結ぶとともに回転軸52(回転軸線A)を中心として回転する。ハブ54は、その中央にシュラウド55側に突出するハブ突出部54aを有する円板形状の部材である。ハブ突出部54aは、ファンモータ59に連結されている。ここでは、ハブ突出部54aの中央に形成された軸孔54bにファンモータ59の回転軸52が固定されている。シュラウド55は、ハブ54のファン入口13側に対向しており、複数の後向き羽根53のファン入口13側の端部を結ぶとともに回転軸52(回転軸線A)を中心として回転する。シュラウド55には、回転軸52(回転軸線A)を中心として円孔形状のファン開口55aが形成された円環形状の部材である。シュラウド55は、その外径がハブ54に近い側に向かうにつれて大きくなる湾曲形状をなしている。複数の後向き羽根53は、ハブ54とシュラウド55との間に回転軸52(回転軸線A)の周方向に沿って所定の間隔を空けて配置されている。各後向き羽根53は、ハブ54の径方向に対して羽根車51の回転方向R(ここでは、吹出口22側から見た際の時計回り方向)の反対向きに傾斜している羽根である。
【0032】
ベルマウス33は、羽根車51のファン開口55aに対向するように、仕切部材3のファン入口13に設けられており、熱交換器室S1からの空気を羽根車51のファン開口55aに案内する。ベルマウス33は、回転軸52(回転軸線A)を中心とする円環形状の部材である。ベルマウス33は、その外径がシュラウド55に近い側に向かうにつれて小さくなる湾曲形状をなしている。
【0033】
ファンモータ59は、ファン風下空間S21において、羽根車51の回転軸52(回転軸線A)と同軸上になるように配置されている。ファンモータ59は、回転軸52(回転軸線A)を中心とする円柱形状をなしている。ここでは、ファンモータ59は、モータ支持台34を介して仕切部材3に固定されている。具体的には、モータ支持台34は、仕切部材3の仕切周縁部32のケーシング2の第3側部25寄りの部分及び第4側部26寄りの部分からファンモータ59の外周面付近に向かって延びる門形状の支持フレーム35、36を有している。そして、ファンモータ59は、その外周面から第3側部25側及び第4側部26側に向かって延びる端板部59aが、ブラケット37を介して支持フレーム35、36に固定されている。これにより、羽根車51及びファンモータ59を含む遠心ファン5は、モータ支持台34を介して仕切部材3に固定されていることになる。このため、メンテナンス時などにおいては、ケーシング2から仕切部材3を取り外すことによって、遠心ファン5全体を取り外すことができるようになっている。
【0034】
また、ファン室S2のファン風下空間S21は、吹出口12に対向する部分である吹出口対向空間S22を有している。ここでは、吹出口12が下流側部22の第2側部24側に寄った位置に配置されているため、ケーシング2を吹出口12側から見た際に、吹出口12の開口の周縁辺に沿う部分、すなわち、第2側部24、第3側部25の第2側部24寄りの部分、及び、第4側部26の第2側部24寄りの部分によって囲まれる空間が吹出口対向空間S22になっている。そして、ファン風下空間S21のうち吹出口対向空間S22を除く部分は、羽根車51の風下側の位置においてファン入口13に対向している吹出口非対向面部27を設けることによって、この吹出口非対向面部27に対向しているが吹出口12に対向しない吹出口非対向空間S23が形成されている。また、ここでは、吹出口非対向面部27の吹出口12側の端部からファン入口13の開口方向B及び吹出口12の開口方向Cに沿って吹出口12側に延びる吹出口周縁面部28が設けられている。これにより、ここでは、吹出口非対向面部27、吹出口周縁面部28、下流側部22の吹出口12が形成されていない第1側部23寄りの部分、第1側部23、第3側部25、及び、第4側部26によって、空気調和装置1を構成する機器の制御に使用される電装品14が配置される電装品室S3が形成されている。また、吹出口対向空間S22の吹出口12寄りの部分、すなわち、吹出口周縁面部28、第2側部24、第3側部25の第2側部24寄りの部分、及び、第4側部26の第2側部24寄りの部分によって囲まれる空間が、吹出口12と同じ開口サイズを有する吹出通路部S24になっている。
【0035】
また、ここでは、ファン室S2のファン風下空間S21に、遠心ファン5の羽根車51によってファン風下空間S21に吹き出された空気を加熱する電気ヒータ6が設けられている。電気ヒータ6は、暖房時にファン室S2を流れる空気を加熱する加熱手段である。ここでは、電気ヒータ6(加熱手段)として、電熱線をコイル状に形成したヒータエレメントの集合体が採用されている。電気ヒータ6(加熱手段)は、ファン風下空間S21のうち吹出口12に対向する部分である吹出口対向空間S22に配置されている。より具体的には、電気ヒータ6(加熱手段)は、吹出口対向空間S22のうち吹出口12寄りの吹出通路部S24に配置されている。尚、電気ヒータ6(加熱手段)は、電熱線をコイル状に形成したヒータエレメントの集合体に限定されるものではなく、種々の型式のヒータを採用してもよい。
【0036】
(2)空気調和装置の基本動作
次に、空気調和装置1の基本動作について、図1図9を用いて説明する。
【0037】
上記の構成を有する空気調和装置1では、ファンモータ59の駆動によって遠心ファン5の羽根車51が回転する。これにより、吸込口11、熱交換器室S1、ファン入口13、ファン室S2、吹出口12の順にケーシング2内を通過する空気の流れが発生する。
【0038】
そして、冷房時においては、吸込口11を通じてケーシング2内に送られた空気は、熱交換器室S1に流入して、熱交換器4を流れる冷媒によって冷却される。そして、熱交換器4によって冷却された空気は、ファン入口13を通じてファン室S2に流入して、遠心ファン5の羽根車51に吸い込まれる。羽根車51に吸い込まれた空気は、羽根車51の風下側のファン風下空間S21に吹き出される。このファン風下空間S21に吹き出された空気は、吹出口12を通じてケーシング2外に送られる。
【0039】
また、暖房時においては、吸込口11を通じてケーシング2内に送られた空気は、熱交換器室S1に流入して、熱交換器4を流れる冷媒によって加熱される。この熱交換器4によって加熱された空気は、ファン入口13を通じてファン室S2に流入して、遠心ファン5の羽根車51に吸い込まれる。羽根車51に吸い込まれた空気は、羽根車51の風下側のファン風下空間S21に吹き出される。このファン風下空間S21に吹き出された空気は、電気ヒータ6(加熱手段)によってさらに加熱された後に、吹出口12を通じてケーシング2外に送られる。
【0040】
(3)遠心ファンの送風性能を向上させるための構成
上記の構成を有する空気調和装置1では、ファン入口13が吹出口12に対向するように形成されたファン室S2に回転軸52(回転軸線A)がファン入口13及び吹出口12の開口方向B、Cを向いた状態で後向き羽根53の遠心ファン5が設けられている。
【0041】
このようなファン室S2における遠心ファン5の配置では、遠心ファン5の羽根車51から吹き出された直後の空気の径方向成分が強いため、この径方向成分がファン室S2における通風抵抗を増大させて、送風性能の向上を妨げる原因となっている。
【0042】
したがって、空気調和装置1では、このような羽根車51から吹き出された直後の空気の径方向成分が強い傾向を考慮して、遠心ファン5の送風性能を向上させることが望まれる。
【0043】
そこで、ここでは、羽根車51の形状に工夫を施している。具体的には、図7図10及び図11に示すように、ハブ54の外径φxを後向き羽根53の外径φ2(複数の後向き羽根53の最外周端までの径)よりも短くした羽根車51を採用するようにしている。ここで、図10は、図2のI−I断面図であり、図11は、羽根車51をハブ54側から見た外観斜視図である。
【0044】
このように、ここでは、回転軸52(回転軸線A)がファン入口13及び吹出口12の開口方向B、Cを向いた状態でファン室S2に設けられた遠心ファン5の羽根車51において、ハブ54の外径φxを後向き羽根53の外径φ2よりも短くしたものを採用している。このため、ここでは、遠心ファン5の羽根車51から吹き出された直後の空気の軸方向成分を強めるとともに径方向成分を弱めることができ、これにより、斜流流れの傾向を強めることができることができる。
【0045】
これにより、ここでは、ファン室S2における通風抵抗を低減することができ、遠心ファン5の送風性能を向上させることができる。
【0046】
ここで、遠心ファン5の羽根車51から吹き出された直後の空気によってファン室S2における通風抵抗が増大する程度は、後向き羽根53とケーシング2の側部23〜26との距離の影響を受ける。すなわち、後向き羽根53とケーシング2の側部23〜26との距離が小さくなるほど、通風抵抗が増大する傾向にある。また、斜流流れの程度は、ハブ54の外径φxの影響を受ける。すなわち、ハブ54の外径φxが小さくなるほど、斜流流れの傾向を強めることができる。但し、ハブ54の外径φxが小さくなり過ぎると、後向き羽根54の送風機能そのものが損なわれてしまう。このような特質から、ハブ54の外径φxを後向き羽根53の外径φ2(複数の後向き羽根53の最外周端までの径)よりも短くした羽根車51を採用する際には、後向き羽根53とケーシング2の側部23〜26との距離が小さい状況下で、後向き羽根53の送風機能を損なわずに斜流流れの傾向が得られるようにすることが好ましい。
【0047】
そこで、ここでは、ハブ54の外径φxを後向き羽根53の外径φ2(複数の後向き羽根53の最外周端までの径)よりも短くした羽根車51を採用するにあたり、後向き羽根53の外径φ2が羽根車51の外周側を囲むケーシング2の側部23〜26の水力直径dhの0.75倍以上の状況下において、ハブ54の外径φxを後向き羽根53の外径φ2の0.91〜0.96倍にしている。ここで、ケーシング2の水力直径dhは、ケーシング2を回転軸52(回転軸線A)に沿う方向から見た際に、ケーシング2の側部23〜26が四角形形状の断面を有しているため、側部23、26の幅W及び側部24、25の幅Hを用いて、次式で表すことができる。尚、W×Hは、羽根車51の外周側を囲むケーシング2の側部23〜26の断面積であり、2×W+2×Hは、羽根車51の外周側を囲むケーシング2の側部23〜26の周長さである。
【0048】
dh = 4×(W×H)/(2×W+2×H)
次に、種々のケーシング2の水力直径dhに対する後向き羽根53の外径φ2の比(=φ2/dh)の状況下における後向き羽根53の外径φ2に対するハブ54の外径φxの比(=φx/φ2)と送風効率との関係を図12図15に示す。これらのグラフによれば、φ2/dhが0.75以上の後向き羽根53とケーシング2の側部23〜26との距離が小さい状況下では、φx/φ2が0.91〜0.96の範囲内で送風効率が最大になっている(図12図14参照)。これは、φx/φ2が0.91〜0.96の範囲内になるようにハブ54の外径φxを後向き羽根53の外径φ2よりも短くすることによって、斜流流れの傾向が得られ、この斜流流れの傾向によって通風抵抗が抑えられ、送風効率の向上につながっているものと考えられる。一方、φ2/dhが0.75よりも小さくなる後向き羽根53とケーシング2の側部23〜26との距離が大きい状況下では、φx/φ2が0.91〜0.96の範囲内で送風効率が最大にならず、むしろハブ54の外径φxを後向き羽根53の外径φ2よりも短くしない状態(φx/φ2=1.00)で送風効率が高くなっている。これは、φx/φ2が0.91〜0.96の範囲内になるようにハブ54の外径φxを後向き羽根53の外径φ2よりも短くすることによって、斜流流れの傾向が得られるが、φ2/dhが0.75よりも小さくなる後向き羽根53とケーシング2の側部23〜26との距離が大きい状況下では、この斜流流れの傾向を得たとしても、通風抵抗が抑えられる効果が非常に小さく、ハブ54の外径φxを後向き羽根53の外径φ2よりも短くすることによって後向き羽根54の送風機能が損なわれる悪影響のほうが相対的に大きくなっているものと考えられる。このように、φ2/dh、φx/φ2及び送風効率の間には、密接な関係があり、その特質を考慮して、ケーシング2の側部23〜26のサイズ(W、H)やむしろ後向き羽根53に対するハブ54のサイズ(φx、φ2)を適切に設定することが好ましい。
【0049】
これにより、ここでは、ハブ54の外径φxを後向き羽根53の外径φ2よりも短くした羽根車51を採用するにあたり、上記のような特質を考慮して、遠心ファン5の送風性能を効果的に向上させることができる。
【0050】
また、ここでは、後向き羽根53の外径φ2からハブ54の外径φxを差し引いた長さ(=φ2−φx)が、後向き羽根53の外径φ2から後向き羽根53の内径φ1(複数の後向き羽根53の最内周端までの径)を差し引いた長さである翼弦長さ(=φ2−φ1)の0.4倍以下である。
【0051】
このように、ここでは、ハブ54の外径φxを後向き羽根53の外径φ2よりも短くした羽根車51を採用するにあたり、後向き羽根53の外径φ2からハブ54の外径φxを差し引いた長さφ2−φxを翼弦長さφ2−φ1の0.4倍以下にしている。
【0052】
これにより、ここでは、ハブ54の外径φxを後向き羽根53の外径φ2よりも短くした羽根車51を採用するにあたり、後向き羽根53をハブ54によって確実に支持し、構造強度を向上させることができる。
【0053】
(4)変形例
上記の遠心ファン5の羽根車51では、ハブ54の周方向全体にわたってハブ54の外径φxが後向き羽根53の外径φ2よりも短くなっているが、これに限定されるものではない。ここでは図示しないが、例えば、羽根車51を回転軸52(回転軸線A)に沿う方向から見た際に、ハブ54のうち複数の後向き羽根53の周方向間の部分だけを後向き羽根53の外径φ2よりも短くするようにしてもよい。但し、この場合には、ハブ54の周方向全体にわたってハブ54の外径φxを後向き羽根53の外径φ2よりも短くする場合と比べて、斜流流れを強める効果が小さくなるため、送風性能の向上の程度がやや小さくなる傾向にある。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、ファン入口が吹出口に対向するように形成されたファン室に回転軸がファン入口及び吹出口の開口方向を向いた状態で後向き羽根の遠心ファンが設けられた空気調和装置に対して、広く適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 空気調和装置
2 ケーシング
3 仕切部材
4 熱交換器
5 遠心ファン
11 吸込口
12 吹出口
13 ファン入口
23〜26 ケーシングの側部
51 羽根車
52 回転軸
53 後向き羽根
54 ハブ
S1 熱交換器室
S2 ファン室
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【特許文献1】特開平6−281194号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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