【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。
【0064】
[防曇物品(Z)のサンプルの作製]
各実施例及び各比較例ごとに異なる含有成分の防曇剤組成物(Y)を用意した。そして、各防曇剤組成物(Y)を用い、全実施例及び全比較例について共通の条件で防曇物品(Z)のサンプルを作製した。各実施例及び各比較例における防曇膜(X)を設ける物品を想定した基材としてポリカーボネート基材(ユーピロンシートNF―2000(MGCフィルシート株式会社製))を用いた。
【0065】
まず、100質量部の各防曇剤組成物(Y)と、30質量部の溶剤とを混合して、防曇剤塗布液を作製した。溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルを用いた。
【0066】
次に、各防曇剤塗布液をポリカーボネート基材の被覆面(一方の主面)にバーコーターを用いて塗布した。そしてポリカーボネート基材を、60℃で10分間保持することにより、ポリカーボネート基材の被覆面上の各防曇剤塗布液を乾燥させた。
【0067】
以上により、ポリカーボネート基材の被覆面上に厚さ20μmの各防曇剤組成物(Y)の層が得られた。
【0068】
ポリカーボネート基材上に形成された各防曇剤組成物(Y)の層に、120Wの高圧水銀灯(日本電池株式会社製)により1J/cm
2の紫外線を照射した。これにより、各防曇剤組成物(Y)が光重合により硬化して防曇膜(X)となり、各実施例及び各比較例ごとに異なる防曇膜(X)を有する防曇物品(Z)のサンプルが得られた。
【0069】
[防曇膜(X)の評価]
各実施例及び各比較例に係るサンプルの防曇膜(X)の評価として、以下の7種類の試験を行った。
【0070】
(a)呼気防曇性試験
温度20℃、相対湿度50%RHの恒温室内で、各サンプルの防曇膜(X)に息を吹きかけ、各防曇膜(X)の曇りの状態を目視によって判定した。呼気防曇性の判定基準は以下のとおりである。
◎:全く曇らない
○:一瞬曇りが観察される
△:やや曇りが観察される
×:全面が曇る
【0071】
(b)蒸気防曇性試験(35℃)
温度35℃の恒温水槽上の水面から1cmの位置に各サンプルを固定し、各防曇膜(X)の曇りの状態を目視によって判定した。蒸気防曇性試験(35℃)の判定基準は以下のとおりである。
◎:サンプル固定後10分以上曇りが生じない
○:サンプル固定後5分以上10分未満の間に曇りが生じない
△:サンプル固定後5分未満の間に曇りが生じない
×:サンプル固定後すぐに曇りが生じる
【0072】
(c)蒸気防曇性試験(60℃)
温度60℃の恒温水槽上の水面から1cmの位置に各サンプルを固定し、各防曇膜(X)の曇りの状態を目視によって判定した。蒸気防曇性試験(60℃)の判定基準は以下のとおりである。
◎:サンプル固定後10分以上曇りが生じない
○:サンプル固定後5分以上10分未満の間に曇りが生じない
△:サンプル固定後5分未満の間に曇りが生じない
×:サンプル固定後すぐに曇りが生じる
【0073】
(d)耐摩耗性試験(100回)
各サンプルを、テーバー摩耗試験機(摩耗輪CS−10F)により、荷重500gの条件で100回転させる摩耗試験を行い、摩耗前後のヘイズの変化率(%)を測定した。耐摩耗性試験(100回)の判定基準は以下のとおりである。
◎:5%未満
○:5%以上10%未満
△:10%以上20%未満
×:20%以上
【0074】
(e)耐摩耗性試験(500回)
各サンプルを、テーバー摩耗試験機(摩耗輪CS−10F)により、荷重500gの条件で500回転させる摩耗試験を行い、摩耗前後のヘイズの変化率(%)を測定した。耐摩耗性試験(500回)の判定基準は以下のとおりである。
◎:10%未満
○:10%以上20%未満
△:20%以上30%未満
×:30%以上
【0075】
(f)密着性試験
各サンプルをカッターナイフで基材に達する程度の深さで縦横方向に切断し、100個のクロスカット(切断片)を作り、各クロスカットにセロハン粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名:セロテープ(登録商標))を貼り付けた。各クロスカットからセロテープ(登録商標)を貼り付け面と垂直方向に剥がし、各クロスカットの防曇膜(X)の状態を目視により確認した。密着性試験の判定基準は以下のとおりである。
○:剥離なし
×:剥離あり
【0076】
(g)耐熱性試験
各サンプルを、80℃の環境で500時間静置した後、温度20℃、相対湿度50%RHの恒温室内で24時間放置した。その後、温度20℃、相対湿度50%RHの恒温室内で、各サンプルの防曇膜(X)に息を吹きかけ、各防曇膜(X)の曇りの状態を目視によって判定した。耐熱性試験の判定基準は以下のとおりである。
○:異常なし
×:異常あり
【0077】
[実施例1〜11]
実施例1〜11では、防曇剤組成物(Y)における単量体(A)、単量体(B)、及び単量体(C)の組成について検討した。
【0078】
上記実施例では、いずれの防曇剤組成物(Y)でも、単量体(A)の含有量を40質量部とし、単量体(B)の含有量を50質量部とし、単量体(C)の含有量を10質量部とした。また、いずれの防曇剤組成物(Y)でも、光重合開始剤(D)としてIR2959を用い、光重合開始剤(D)の含有量を1質量部とした。更に、いずれの防曇剤組成物(Y)も、シリカ(E)及び界面活性剤(F)を含有していない。
【0079】
(実施例1)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=6)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
光重合開始剤(D):IR2959
【0080】
実施例1に係る単量体(B)は下記式で表される。
【化23】
【0081】
実施例1に係る単量体(C)は下記式で表される。
【化24】
【0082】
(実施例2)
単量体(A):ヒドロキシヘキシルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=6)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=6)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0083】
実施例2に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(A)の組成(上記式(1)のn
1の値)のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異
なる。
【0084】
(実施例3)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):1,4−ブタンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=4)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0085】
実施例3に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(B)の組成(上記式(B−1)のn
2の値)のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
実施例3に係る単量体(B)は下記式で表される。
【化25】
【0086】
(実施例4)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):1,7−ノナンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=7)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0087】
実施例4に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(B)の組成(上記式(B−1)のn
2の値)のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
実施例4に係る単量体(B)は下記式で表される。
【化26】
【0088】
(実施例5)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):PO変性ジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物
(R3=水素原子,R4=式(B−2),n
3=0)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0089】
実施例5に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(B)の組成(上記式(2)のR4の構造)のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
実施例5に係る単量体(B)は下記式で表される。
【化27】
【0090】
(実施例6)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):PO変性ジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物
(R3=水素原子,R4=式(B−2),n
3=3)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0091】
実施例6に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(B)の組成(上記式(B−2)のn
3の値)のみにおいて実施例5に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
実施例6に係る単量体(B)は下記式で表される。
【化28】
【0092】
(実施例7)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):[フタル酸・エピクロルヒドリンの縮合物]・アクリル酸付加物
(R3=水素原子,R4=式(B−3))
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0093】
実施例7に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(B)の組成(上記式(2)のR4の構造)のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
実施例7に係る単量体(B)は下記式で表される。
【化29】
【0094】
(実施例8)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):[1,2−シクロヘキサンジカルボン酸・エピクロルヒドリンの縮合物]・アクリル酸付加物
(R3=水素原子,R4=式(B−4))
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0095】
実施例8に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(B)の組成(上記式(2)のR4の構造)のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
実施例8に係る単量体(B)は下記式で表される。
【化30】
【0096】
(実施例9)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):[1,2−ジヒドロキシベンゼン・エピクロルヒドリンの縮合物]・アクリル酸付加物
(R3=水素原子,R4=式(B−5))
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0097】
実施例8に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(B)の組成(上記式(2)のR4の構造)のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
実施例8に係る単量体(B)は下記式で表される。
【化31】
【0098】
(実施例10)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=6)
単量体(C):ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−2))
【0099】
実施例10に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(C)の組成(上記式(3)のR6の構造)のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
実施例10に係る単量体(C)は下記式で表される。
【化32】
【0100】
(実施例11)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=6)
単量体(C):プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−3),n
5=3,R7=メチル基)
【0101】
実施例11に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(C)の組成(上記式(3)のR6の構造)のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
実施例11に係る単量体(C)は下記式で表される。
【化33】
【0102】
(防曇膜(X)の評価結果)
表1は、実施例1〜11について、防曇剤組成物(Y)の組成(質量部)、及び防曇膜(X)の評価結果を示している。
【0103】
【表1】
【0104】
表1を参照すると、実施例1〜11に係る防曇膜(X)のいずれも、優れた防曇性、耐摩耗性、密着性、及び耐熱性を有することがわかる。
【0105】
また、実施例1,3,4,5,6,10,11に係る防曇膜(X)では、耐摩耗性試験(100回)において優れた結果が得られている。つまり、単量体(A)のn
1が2であり、かつ、単量体(B)のR4が式(B−1)又は式(B−2)である防曇剤組成物(Y)において、特に耐摩耗性に優れる防曇膜(X)が得られることがわかる。
【0106】
[実施例12〜20]
実施例12では、防曇剤組成物(Y)における光重合開始剤(D)の種類について検討した。また、実施例13では、防曇剤組成物(Y)へのシリカ(E)の添加について検討した。更に、実施例14では、防曇剤組成物(Y)への界面活性剤(F)の添加について検討した。そして、実施例15〜20では、防曇剤組成物(Y)における単量体(A)、単量体(B)、及び単量体(C)の含有比率について検討した。
【0107】
(実施例12)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=6)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
光重合開始剤(D):IR819
【0108】
実施例12に係る防曇剤組成物(Y)は、光重合開始剤(D)の種類のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
【0109】
(実施例13)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=6)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
シリカ(E):アクリル変性シリカ
(50質量部)
【0110】
実施例13に係る防曇剤組成物(Y)は、シリカ(E)を含む点のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
【0111】
(実施例14)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=6)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
界面活性剤(F):ポリオキシエチレンオレイルエーテル
(10質量部)
【0112】
実施例14に係る防曇剤組成物(Y)は、界面活性剤(F)を含む点のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
【0113】
次に、実施例15〜20に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(A)、単量体(B)、及び単量体(C)の含有比率のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
【0114】
(実施例15)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(15質量部)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(75質量部)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(10質量部)
【0115】
(実施例16)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(65質量部)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(25質量部)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(10質量部)
【0116】
(実施例17)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(65質量部)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(5質量部)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(30質量部)
【0117】
(実施例18)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(15質量部)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(80質量部)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(5質量部)
【0118】
(実施例19)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(15質量部)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(55質量部)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(30質量部)
【0119】
(実施例20)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(65質量部)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(30質量部)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(5質量部)
【0120】
(防曇膜(X)の評価結果)
表2は、実施例15〜20について、防曇剤組成物(Y)の組成(質量部)、及び防曇膜(X)の評価結果を示している。
【0121】
【表2】
【0122】
表2を参照すると、実施例15〜20に係る防曇膜(X)のいずれも、優れた防曇性、耐摩耗性、密着性、及び耐熱性を有することがわかる。
【0123】
特に、実施例13において優れた耐摩耗性が得られており、シリカ(E)を含有する防曇剤組成物(Y)により優れた耐摩耗性の防曇膜(X)が得られることがわかる。また、実施例14において優れた防曇性が得られており、界面活性剤(F)を含有する防曇剤組成物(Y)により優れた防曇性の防曇膜(X)が得られることがわかる。
【0124】
また、実施例15〜20において、防曇剤組成物(Y)における単量体(A)の含有量が多いと優れた防曇性の防曇膜(X)が得られ、防曇剤組成物(Y)における単量体(B)の含有量が多いと優れた耐摩耗性の防曇膜(X)が得られる傾向が見られた。
【0125】
[比較例1〜10]
比較例1〜10では、本実施形態に係る防曇剤組成物(Y)と異なる含有成分の防曇剤組成物(Y)について検討した。
【0126】
まず、比較例1,2に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(A)に代えて単量体(a)を含有する点のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
【0127】
(比較例1)
単量体(a):ヒドロキシメチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=1)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=6)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0128】
比較例1に係る防曇剤組成物(Y)の単量体(a)では、式(1)のn
1の値が本実施形態の範囲よりも小さい。
【0129】
(比較例2)
単量体(a):ヒドロキシノニルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=7)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=6)
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0130】
比較例2に係る防曇剤組成物(Y)の単量体(a)では、式(1)のn
1の値が本実施形態の範囲よりも大きい。
【0131】
次に、比較例3〜7に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(B)に代えて単量体(b)を含有する点のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
(比較例3)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(b):エチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート
(下記式(b−3))
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0132】
【化34】
【0133】
(比較例4)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(b):EO変性ジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物
(下記式(b−4))
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0134】
【化35】
【0135】
(比較例5)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(b):[PO変性ビスフェノールAグリシジルエーテル縮合物]・アクリル酸付加物
(下記式(b−5))
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0136】
【化36】
【0137】
(比較例6)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(b):グリセリンジグリシジルエーテルジアクリレート
(下記式(b−6))
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0138】
【化37】
【0139】
(比較例7)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(b):[ネオペンチルグリコール・グリシジルエーテル縮合物]・アクリル酸付加物
(下記式(b−7))
単量体(C):カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバレートのアクリル酸付加物
(R5=水素原子,R6=式(C−1),n
4=2)
【0140】
【化38】
【0141】
次に、比較例3〜7に係る防曇剤組成物(Y)は、単量体(C)に代えて単量体(c)を含有する点のみにおいて実施例1に係る防曇剤組成物(Y)と異なる。
【0142】
(比較例8)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=6)
単量体(c):ネオペンチルグリコールのアクリル酸付加物
(下記式(c−8))
【0143】
【化39】
【0144】
(比較例9)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=6)
単量体(c):[ネオペンチルグリコール・グリシジルエーテル縮合物]・アクリル酸付加物
(下記式(c−9))
【0145】
【化40】
【0146】
(比較例10)
単量体(A):ヒドロキシエチルアクリルアミド
(R1=水素原子,n
1=2)
単量体(B):1,6−ヘキサンジオールビス[オキシ(2−ヒドロキシプロパン1,3−ジイル)]ジアクリレート
(R3=水素原子,R4=式(B−1),n
2=6)
単量体(c):プロピレングリコールジアクリレート
(下記式(c−10))
【0147】
【化41】
【0148】
(防曇膜(X)の評価結果)
表3は、比較例1〜10について、防曇剤組成物(Y)の組成(質量部)、及び防曇膜(X)の評価結果を示している。
【0149】
【表3】
【0150】
比較例1に係る防曇剤組成物(Y)では耐熱性が低くなり、比較例2に係る防曇剤組成物(Y)では耐摩耗性及び防曇性が低くなった。これにより、単量体(A)の式(1)におけるn
1が2〜6であることが望ましいことがわかる。
【0151】
また、比較例3,4に係る防曇剤組成物(Y)では耐摩耗性及び耐熱性が低くなり、比較例5〜7に係る防曇剤組成物(Y)では耐摩耗性が低くなった。このように、単量体(b)は単量体(B)と類似構造を有するものの、単量体(b)を含有する防曇剤組成物(Y)では優れた耐久性を有する防曇膜(X)が得られなかった。
【0152】
更に、比較例8,9に係る防曇剤組成物(Y)では密着性が低くなり、比較例10に係る防曇剤組成物(Y)では耐摩耗性が低くなった。このように、単量体(c)は単量体(C)と類似構造を有するものの、単量体(c)を含有する防曇剤組成物(Y)では優れた耐久性を有する防曇膜(X)が得られなかった。
【0153】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。