特許第6354324号(P6354324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニプロ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6354324-カテーテル 図000002
  • 特許6354324-カテーテル 図000003
  • 特許6354324-カテーテル 図000004
  • 特許6354324-カテーテル 図000005
  • 特許6354324-カテーテル 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354324
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3207 20060101AFI20180702BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20180702BHJP
   A61B 1/313 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   A61B17/3207
   A61B1/00 526
   A61B1/313 510
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-104489(P2014-104489)
(22)【出願日】2014年5月20日
(65)【公開番号】特開2015-217216(P2015-217216A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】宮川 克也
(72)【発明者】
【氏名】松本 美沙
(72)【発明者】
【氏名】中村 友則
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−329534(JP,A)
【文献】 米国特許第5429136(US,A)
【文献】 国際公開第2013/012841(WO,A1)
【文献】 特表平8−508895(JP,A)
【文献】 特表2001−513659(JP,A)
【文献】 特開2007−83057(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0187571(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/080729(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 ― 1/32
A61B 17/00 ― 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側の側壁の一部に開口を有しており、血管の湾曲形状に応じて弾性的に湾曲する柔軟性を有するシャフトと、
上記シャフトの内部空間において上記開口付近に位置されており、回転しつつ上記シャフトの軸線方向に移動可能なカッターと、
上記シャフトの内部空間に挿通されており、上記カッターに回転トルクを伝達可能に上記カッターと接続されており、上記シャフトと共に血管の湾曲形状に応じて弾性的に湾曲する柔軟性を有するトルクシャフトと、
上記トルクシャフトに沿って設けられた導光材と、
上記導光材の先端面と空間を隔てて対向した反射面を有しており、当該反射面が上記導光材から出射される光を上記導光材が延出された第1方向と交差する第2方向へ反射する反射材と、
上記シャフトの軸線に対して上記開口と反対側に配置されており、上記シャフトの側壁から外側へ膨らむバルーンと、を具備しており、
上記トルクシャフトの内径と上記導光材の外径とは同等であり、
上記導光材及び上記反射材は、上記トルクシャフトの内部空間に同軸に配置されて、上記トルクシャフトと一体に回転しつつ上記第1方向に沿って移動可能であるカテーテル。
【請求項2】
上記反射材は、上記トルクシャフトの側壁に形成された開口を通じて、上記第2方向へ反射した光を上記トルクシャフトの外部へ出射する請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
先端側の側壁の一部に開口を有するシャフトと、
上記シャフトの内部空間において上記開口付近に位置されており、回転しつつ上記シャフトの軸線方向に移動可能なカッターと、
上記シャフトの内部空間に挿通されており、上記カッターに回転トルクを伝達可能に上記カッターと接続されたトルクシャフトと、
上記トルクシャフトに沿って設けられた導光材と、
上記導光材の先端面と空間を隔てて対向した反射面を有しており、当該反射面が上記導光材から出射される光を上記導光材が延出された第1方向と交差する第2方向へ反射する反射材と、
上記シャフトの軸線に対して上記開口と反対側に配置されており、上記シャフトの側壁から外側へ膨らむバルーンと、を具備しており、
上記導光材及び上記反射材は、上記トルクシャフトの外周面側に配置されて、上記トルクシャフトと一体に回転しつつ上記第1方向に沿って移動可能であり、
上記カッターに上記第1方向に沿った貫通孔が形成されており、少なくとも当該貫通孔及び上記トルクシャフトの内部空間がガイドワイヤルーメンを構成するカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の内壁に付着した塞栓を切除するために血管に挿入されるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、血管内に発生した塞栓を、血管にカテーテルを挿入して切除する治療が行われている。血管内に塞栓が存在しているかは、例えば光干渉断層法(optical coherence tomography、以下「OCT」とも称される。)により画像検査を行うことができる(特許文献1参照)。
【0003】
血管内において発見された塞栓を切除するには、側壁の開口を通じて塞栓をカッターにて切除する塞栓切除カテーテルが用いられる。この塞栓切除カテーテルが、開口が塞栓に対向する位置まで血管に挿入され、開口付近に設けられたバルーンが拡張されると、塞栓に開口が近づけられ、開口を通じて塞栓切除カテーテルのルーメン内に塞栓が進入する。塞栓切除カテーテルのルーメンには、カッターが軸方向に移動可能に設けられている。このカッターは、モータから駆動伝達されて、ルーメン内で回転される。カッターが回転されながらルーメン内を移動されることによって、ルーメンに進入している塞栓が切除される。切除された塞栓は塞栓切除カテーテルのルーメンに収容される(特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−523954号公報
【特許文献2】特開平6−30943号公報
【特許文献3】特開平5−56984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述された塞栓の切除において、塞栓と塞栓切除カテーテルの開口との位置を合わせるために、切除の前にOCTによる画像検査が行われる。その後、塞栓切除カテーテルによって塞栓が切除される。さらに、塞栓の切除後に、血管の状態を確認するために、再びOCTによる画像検査が行われる。仮に、十分に塞栓が切除されていないと判断されたときには、再び塞栓切除カテーテルによって残存している塞栓が切除され、その後、血管の状態が再び確認される。このような施術においては、OCTのためのカテーテルと、塞栓切除カテーテルとが交互に血管に挿入されることとなり、施術が煩雑になりやすい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、血管の塞栓を切除することができ、かつOCTによる血管の画像を取得できる簡易な構造のカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係るカテーテルは、先端側の側壁の一部に開口を有する管体と、上記管体の内部空間において上記開口付近に位置されており、上記管体の軸線方向に移動可能なカッターと、上記管体の内部空間に挿通されており、上記カッターに回転トルクを伝達可能に上記カッターと接続されたトルクシャフトと、上記トルクシャフトに沿って設けられた導光材と、上記導光材から出射される光を上記導光材が延出された第1方向と交差する第2方向へ反射する反射材と、上記管体の軸線に対して上記開口と反対側に配置されており、上記管体の側壁から外側へ膨らむバルーンと、を具備する。
【0008】
カテーテルは、先端側から血管へ挿入される。血管の塞栓に対して管体の開口が合わせられた状態でバルーンが膨らまされることにより、血管に対して管体が固定され、開口から管体の内部空間へ塞栓が進入する。管体の軸線方向へ移動されたカッターにより、管体の内部空間へ進入した塞栓が切除される。トルクシャフトに沿って設けられた導光材から出射された光は、反射材により反射されて血管へ照射される。血管からの反射光が反射材及び導光材を通じて、OCTシステムにより干渉信号として処理されることにより、塞栓付近の血管の画像が取得される。
【0009】
(2) 好ましくは、上記導光材及び上記反射材は、上記トルクシャフトの内部空間に配置されており、上記反射材は、上記トルクシャフトの側壁に形成された開口を通じて、上記第2方向へ反射した光を上記トルクシャフトの外部へ出射する。
【0010】
これにより、トルクシャフト内において光を導光して反射させることができる。
【0011】
(3) 好ましくは、上記導光材及び上記反射材は、上記トルクシャフトと一体に回転可能である。
【0012】
これにより、トルクシャフトと接続されたモータなどの回転装置の回転数を制御することによって、塞栓の切除とOCTとを実現することができる。
【0013】
(4) 好ましくは、上記導光材及び上記反射材は、上記トルクシャフトと一体に上記第1方向に沿って移動可能である。
【0014】
これにより、第1方向に沿って血管の画像を取得することができる。
【0015】
(5) 好ましくは、上記導光材及び上記反射材は、上記トルクシャフトの内部空間に配置されている。
【0016】
これにより、導光材及び反射材がトルクシャフトに覆われて保護されるので、導光材及び反射材が破損し難い。
【0017】
(6) 好ましくは、上記導光材及び上記反射材は、上記トルクシャフトの外周面側に配置されている。
【0018】
これにより、トルクシャフトの内部空間にガイドワイヤが挿通されても、ガイドワイヤによって反射材から反射される光が遮断されない。
【0019】
(7) 好ましくは、上記管体に沿ってガイドワイヤルーメンが設けられている。
【0020】
これにより、ガイドワイヤに沿ってカテーテルを血管へ挿入することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るカテーテルによれば、簡易な構造によって、血管の塞栓を切除することができ、かつOCTによる血管の画像を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、バルーン23が収縮された状態のカテーテル10の外観構成を示す図である。
図2図2は、カテーテル10の先端部13付近の内部構成を示す拡大断面図である。
図3図3は、血管50においてバルーン23が拡張された状態を示す模式図である。
図4図4は、血管50において塞栓51が切除された状態を示す模式図である。
図5図5は、カテーテル10の変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0024】
図1,2に示されるように、カテーテル10は、シャフト11(管体に相当する。)と、シャフト11内に設けられたトルクシャフト16及びカッター12と、シャフト11の先端を構成する先端部13と、シャフト11の基端に接続された基端部14と、カッター12に回転駆動を付与する駆動部15と、トルクシャフト16内に設けられたOCTイメージワイヤ17(導光材に相当する。)及び反射材18と、ガイドワイヤ用チューブ19と、を具備する。カテーテル10は、血管に挿入されて塞栓を切除したり、血管の断面画像を撮影する医療器具として用いられる。
【0025】
シャフト11は、内部にカッター12を内包できるチューブである。シャフト11は、例えば医療用ステンレス製の円管や合成樹脂製の円管から構成されており、血管の湾曲形状に応じて弾性的に湾曲する柔軟性を有している。シャフト11の先端及び基端はそれぞれ開口している。シャフト11の外径は、挿入すべき血管、例えば冠状動脈の内径に応じて設定されている。シャフト11の内径は、カッター12の外径に応じて設定されている。シャフト11の外径及び内径は、シャフト11の軸線方向101に渡ってほぼ均等である。シャフト11の軸線方向101の長さは、ヒトの四肢などのカテーテル挿入部から患部までの長さを考慮して設定されている。
【0026】
図2に示されるように、シャフト11において、先端部13の近傍には開口20が形成されている。開口20は、シャフト11の側壁の一部が切欠されることにより形成されている。開口20の形状や大きさは、患部に形成されているであろう塞栓の形状や大きさを考慮して設定されている。
【0027】
図2に示されるように、シャフト11の内部空間において開口20の近傍には、カッター12が設けられている。カッター12は、概ね円筒形状であり、その外径は、シャフト11の内径より若干小さい。したがって、カッター12は、シャフト11の内部空間を軸線方向101に沿って移動可能である。カッター12の先端側には、複数の刃が中心から放射状に延びるように形成されている。同図には現れていないが、カッター12の中心には、軸線方向101に沿って貫通孔が形成されている。
【0028】
トルクシャフト16は、シャフト11の内部空間に挿通されて、先端側がカッター12と接続されており、基端側がシャフト11の基端部14の外側まで延出されている。トルクシャフト16は、シャフト11と共に血管の湾曲形状に応じて弾性的に湾曲する柔軟性を有しており、かつ軸線方向101周りの回転を伝達する捻り剛性を有する。トルクシャフト16は、例えば、医療用ステンレスが螺旋形状に連続されることによって全体として管形状をなすように構成される。
【0029】
図1に示されるように、トルクシャフト16は、駆動部15に接続される。駆動部15から駆動伝達されてトルクシャフト16が回転することによってカッター12が回転する。また、トルクシャフト16が軸線方向101に移動されることによって、カッター12がシャフト11の内部空間を軸線方向101へ移動する。
【0030】
図2に示されるように、トルクシャフト16において、カッター12と接続された先端の近傍には開口21が形成されている。開口21は、トルクシャフト16の側壁の一部が切欠されることにより形成されている。開口21の形状や大きさは、反射材18に反射されて軸線方向101と直交する方向へ出射される近赤外線の形状や大きさを考慮して設定されている。
【0031】
図2に示されるように、OCTイメージワイヤ17は、基端部14からトルクシャフト16の内部空間に挿通されて、開口21まで延出されている。トルクシャフト16の内部空間の内径は、OCTイメージワイヤ17の外径と同等である。したがって、OCTイメージワイヤ17の軸線とトルクシャフト16の軸線とはほぼ合致している。各図には詳細に現れていないが、OCTイメージワイヤ17は、透明な外筒の内部に光ファイバが内蔵されたものであり、先端部に近赤外線を照射するレンズが設けられている。そのレンズから照射された近赤外線は、OCTイメージワイヤ17の軸線方向に沿って出射される。OCTイメージワイヤ17は、OCT本体ディスプレー部22に内蔵された光源から供給される近赤外線を先端側へ伝播するものである。
【0032】
反射材18は、トルクシャフト16の内部空間において、OCTイメージワイヤ17の先端と軸線方向101に対向して配置されている。反射材18においてOCTイメージワイヤ17の先端と対向する反射面25は、OCTイメージワイヤ17の軸線に対して45度の角度となるように傾斜された平面である。反射面25は、トルクシャフト16の開口21を通じてトルクシャフト16の外部へ露出されている。反射材18は、光ファイバや樹脂などからなる円柱体であり、その外径は、トルクシャフト16の内部空間の内径と同等である。したがって、反射材18の軸線とトルクシャフト16の軸線とはほぼ合致している。反射材18において反射面25を含む表面には、金属層が積層されている。金属層は、例えば、ニッケル、金、アルミニウム、クロムなどが単独又は混合されて反射材18の表面にメッキ又はスパッタリングなどにより形成されたものである。反射面25により、OCTイメージワイヤ17から軸線方向101に沿って出射された近赤外線が軸線方向101と直交する方向(第2方向)へ反射され、開口21を通じてトルクシャフト16の外部へ出射される。なお、反射面25のOCTイメージワイヤ17の軸線に対する角度は一例であり、必ずしも45度でなくてもよい。つまり、OCTイメージワイヤ17から軸線方向101に沿って出射される近赤外線は、軸線方向101と交差する方向へ反射されればよい。
【0033】
OCTイメージワイヤ17及び反射材18は、相互の位置関係、すなわち離間距離及び反射面25の角度を保持した状態で、トルクシャフト16と一体として軸線(軸線方向101)周りに回転可能であり、かつ軸線方向101へスライド可能である。OCTイメージワイヤ17及び反射材18の回転及びスライドは、基端部14から延出されたトルクシャフト16の基端側が直接又は間接に操作されることによって制御される。具体的には、トルクシャフト16の基端側に駆動部15からの駆動力が付与されることによって、トルクシャフト16が回転及びスライドされる。
【0034】
図1,2に示されるように、シャフト11の軸線に対して開口20と反対側となる位置には、バルーン23が設けられている。バルーン23は、シャフト11の側壁から外側へ膨らむことが可能なものであり、カテーテル10が血管に挿入されるまでは、折り畳まれてシャフト11の側壁に密着している。バルーン23の素材としては、生体適合性を有する材料が好ましく、具体的には、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0035】
図2に示されるように、バルーン23の基端側は、シャフト11の側壁に沿って設けられたバルーン用チューブ24に接続されている。バルーン用チューブ24の内部空間は、バルーン23の内部空間と連通されている。バルーン用チューブ24は基端部14まで延出されており、バルーン用チューブ24の内部空間は、基端部14のポート41と接続されている。基端部14のポート41から注入された生理食塩水などの液体がバルーン23内に流入することによって、血管内においてバルーン23が膨らまされる。バルーン用チューブ24は、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエーテルアミドなどの弾性変形可能な軟質プラスチックの成形体である。
【0036】
図1,2に示されるように、シャフト11の先端には、先端部13が接続されている。図2に示されるように、先端部13は、ブレードチューブ31と、縮径部32と、先端チップ33とを有する。
【0037】
図1,2に示されるように、ブレードチューブ31は、両側が開口した円管である。ブレードチューブ31は、シャフト11の先端に接続されて、その内部空間がシャフト11の内部空間と連通されている。ブレードチューブ31は、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエーテルアミドなどの弾性変形可能な軟質プラスチックが芯材34により補強されたものである。芯材34は、ブレードチューブ31の側壁内に埋め込まれている。芯材34は、医療用ステンレスなどの線材が網目に組まれて筒形状にされたものである。ブレードチューブ31の内径は、シャフト11の外径と同等程度であり、シャフト11の先端に外側からブレードチューブ31が嵌め込まれている。ブレードチューブ31の外径及び内径は、軸線方向101に渡ってほぼ均等である。なお、図1以外の各図においては、芯材34の図示が省略されている。
【0038】
図1,2に示されるように、縮径部32は、ブレードチューブ31側が開口して先端へ向かってテーパ形状に外径が縮径した円管である。縮径部32は、ブレードチューブ31の先端に接続されて、その内部空間がブレードチューブ31の内部空間と連通されている。縮径部32は、ポリアミドやポリエーテルアミドなどの弾性変形可能な軟質プラスチックからなる。縮径部32の基端側の内径は、ブレードチューブ31の先端の外径と同程度であり、ブレードチューブ31の先端に縮径部32が外側から嵌め込まれて熱溶着されている。縮径部32の先端側は、封止されている。縮径部32の先端側においては、肉厚が先端側に向かって薄くなっている。
【0039】
図1,2に示されるように、先端チップ33は、縮径部32の先端に接続されている。先端チップ33の先端35は、縮径部32の先端から軸線方向101の外側へ突出されている。先端チップ33は、ポリアミドやポリエーテルアミドなどの弾性変形可能な軟質プラスチックからなる。先端チップ33は、縮径部32の先端側において熱溶着されている。なお、先端チップ33の先端には、X線などにより確認できるマーカーが設けられていてもよい。
【0040】
図1に示されるように、先端チップ33、ブレードチューブ31及びシャフト11の先端側の一部に渡って、各々の外周面に沿ったガイドワイヤ用チューブ19が設けられている。ガイドワイヤ用チューブ19は、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエーテルアミドなどの弾性変形可能な軟質プラスチックの成形体である。ガイドワイヤ用チューブ19は、シャフト11の開口20及びバルーン23と重複しない位置、例えば、シャフト11とバルーン23との境界付近に配置されている。ガイドワイヤ用チューブ19の内部空間がガイドワイヤルーメンであり、図示されていないガイドワイヤが挿通される。
【0041】
シャフト11の基端には基端部14が設けられている。基端部14は、シャフト11の内部空間と連続する内部空間を有する筒状の部材である。基端部14は、ポリプロピレンやABSなどの樹脂の成形体である。基端部14は、シャフト11を血管へ挿抜するときなどの操作において持ち手となり得る。
【0042】
基端部14には、軸線方向101に対して交差する方向へ延出されたポート41が設けられている。ポート41にシリンジなどの他のデバイスが接続されて、他のデバイスから流出入される生理食塩水などの流体が、基端部14からバルーン用チューブ24へ流出入する。なお、基端部14には、シャフト11の内部空間と連続する他のポートが設けられていてもよい。このようなポートは、例えば、シャフト11の内部に進入した切除済みの塞栓を回収する目的などに用いられる。
【0043】
基端部14の基端側の開口からは、トルクシャフト16が延出されており、このトルクシャフト16に駆動部15が接続されている。駆動部15は、モータ及びバッテリーなどを内蔵する。トルクシャフト16には、駆動部15のモータの回転が伝達される。
【0044】
また、トルクシャフト16の内部空間に配置されているOCTイメージワイヤ17は、駆動部15を介してOCT本体ディスプレー部22に接続されている。OCT本体ディスプレー部22は、近赤外線を供給する光源、干渉計、移動式参照鏡、モニター、演算装置などを備えたものである。光源から供給された近赤外線は、干渉計により分割されてOCTイメージワイヤ17と移動式参照鏡にそれぞれ供給され、血管において反射された近赤外線と移動式参照鏡に反射した近赤外線とが干渉計内で合流する。これら近赤外線の干渉信号が演算装置により処理されて、モニターにて血管の断層画像として表示される。
【0045】
[カテーテル10の使用方法]
以下、図3,4が参照されつつカテーテル10の使用方法が説明される。
【0046】
カテーテル10は、血管50の内壁に形成された塞栓51を切除する際に用いられる。塞栓51の位置は、OCTによる血管断層画像により確認されている。カテーテル10は、バルーン23が収縮された状態(図1参照)で、先端部13から血管50へ挿入される。各図には示されていないが、カテーテル10を血管50に挿入するに際して、予めガイドワイヤが血管50に挿入される。ガイドワイヤの血管50への挿入は、公知の手法により行われる。血管50に挿入されたガイドワイヤを、ガイドワイヤ用チューブ19に挿入しながら、カテーテル10が先端部13から血管50へ挿入される。
【0047】
冠状動脈のように、血管50が湾曲した箇所において、先端部13は、ガイドワイヤに沿って弾性的に湾曲しながら血管50の塞栓51まで進められる。先端部13が塞栓51に到達し、シャフト11の開口20が塞栓51と対向すると、シャフト11の血管50への挿入が終了される。駆動部15によりトルクシャフト16を回転させると共に、OCT本体ディスプレー部22から近赤外線がOCTイメージワイヤ17に供給されることによって、OCT本体ディスプレー部22において血管50の断層画像が表示される。血管50の断層画像を確認することにより、開口20が塞栓51に対応する位置へ到達したことや、塞栓51の状況を確認できる。その後、ガイドワイヤがカテーテル10の基端部14側から引き抜かれる。また、カッター12のトルクシャフト16に駆動部15が接続される。なお、図3,4においては、ガイドワイヤは省略されている。
【0048】
図3に示されるように、塞栓51にシャフト11の開口20が対向した状態において、ポート41からバルーン用チューブ24へ流入された流体により、収縮状態のバルーン23が拡張される。拡張されたバルーン23が、塞栓51と反対側の血管50の内壁に当接することによって、開口20が塞栓51に密着され、塞栓51の一部が開口20からシャフト11の内部空間へ進入した状態で、カテーテル10が血管50に対して固定される。
【0049】
続いて、駆動部15の回転がトルクシャフト16を通じてカッター12に伝達されてカッター12が回転される。基端部14側において、トルクシャフト16がシャフト11に対して軸線方向101の先端側へ進行されることによって、回転するカッター12が塞栓51に当接し、カッター12によって塞栓51が切除される。切除された塞栓51の欠片52は、シャフト11の内部空間を通じてブレードチューブ31の内部空間へ進入する。
【0050】
カッター12により塞栓51を切除した後、前述と同様のOCTによって、塞栓51が切除された状態の血管50の断層画像を得ることができる。これにより、塞栓51が切除された状態を、直ちに、すなわち血管50に対してカテーテル10を引き抜くことなく確認できるので、例えば、塞栓51の切除が不十分であれば、カッター12を回転させて残存した塞栓51を切除することができる。なお、血管50の断層画像の収集は、トルクシャフト16と共に反射材18をシャフト11に対して軸線方向101へ移動させつつ行われてもよい。これにより、血管50の長さ方向(軸線方向101とほぼ一致している。)に連続した断層画像が得られる。そして、塞栓51の切除が終了すると、バルーン23が収縮されて、カテーテル10が血管50から引き抜かれて撤収される。
【0051】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態に係るカテーテル10によれば、簡易な構造によって、血管50の塞栓51を切除することができ、かつ血管50のOCT画像を取得できる。
【0052】
また、OCTイメージワイヤ17及び反射材18がトルクシャフト16の内部空間に配置されているので、トルクシャフト16内において近赤外線を血管50の塞栓51付近まで導光して反射させることができる。
【0053】
また、OCTイメージワイヤ17及び反射材18がトルクシャフト16と一体に回転可能なので、駆動部15においてモータの回転数を制御することによって、塞栓51の切除とOCTとを実現することができる。
【0054】
また、OCTイメージワイヤ17及び反射材18がトルクシャフト16と一体に軸線方向101に沿って移動可能なので、軸線方向101に沿った血管50の断層画像を取得することができる。
【0055】
また、OCTイメージワイヤ17及び反射材18は、トルクシャフト16の内部空間に配置されているので、OCTイメージワイヤ17及び反射材18がトルクシャフト16に覆われて保護される。
【0056】
また、シャフト11に沿ってガイドワイヤ用チューブ19が設けられているので、ガイドワイヤに沿ってカテーテル10を血管50へ挿入することができる。
【0057】
[変形例]
前述された実施形態では、ガイドワイヤ用チューブ19は、シャフト11の外側に配置された所謂ラピッドエクスチェンジタイプの構造であるが、図5に示されるように、トルクシャフト16の内部空間がガイドワイヤルーメンとして用いられて所謂オーバーザワイヤタイプの構造が採用されてもよい。
【0058】
オーバーザワイヤタイプの構造が採用される場合には、OCTイメージワイヤ17及び反射材18は、図5に示されるように、トルクシャフト16の外周面に沿って両者が軸線方向101に対向して配置される。OCTイメージワイヤ17から軸線方向101に沿って出射される近赤外線は、反射材18によってトルクシャフト16の外側へ向かって軸線方向101と交差する方向(直交する方向)へ反射される。これにより、トルクシャフト16の内部空間に挿通されているガイドワイヤに近赤外線が照射されることがない。また、オーバーザワイヤタイプの構造においては、トルクシャフト16に開口21が形成される必要はない。
【0059】
また、オーバーザワイヤタイプの構造が採用される場合には、図5に示されるように、先端チップ33としては、両側が開口しており、基端36側がテーパ形状に外径が拡がった円管が採用される。先端チップ33は、縮径部32の先端に接続されて、その内部空間が縮径部32の内部空間と連通されている。先端チップ33の先端35は、縮径部32の先端から軸線方向101の外側へ突出されている。先端チップ33の基端36側は、縮径部32の内部空間を軸線方向101に延出されており、基端36は、ブレードチューブ31の内部空間に至っている。つまり、ブレードチューブ31の先端側部分から縮径部32においては、ブレードチューブ31及び縮径部32を外側とし、先端チップ33を内側とした二重管構造となっている。
【0060】
先端チップ33は、基端36側において拡径されているが、その他の部分の外径及び内径はほぼ均等である。均等な部分の外径は、ブレードチューブ31の内径より小さく、縮径部32の先端の内径と同程度である。また、基端36側は拡径されているが、その最大径は、ブレードチューブ31の内径より小さい。
【0061】
また、カッタ12には、軸線方向101に沿った貫通孔が形成される。トルクシャフト16の内部空間、カッタ12の貫通孔、ブレードチューブ31の内部空間、及び先端チップ33の内部空間により、ガイドワイヤルーメンがシャフト11の軸線方向101に沿って形成される。
【0062】
なお、OCTイメージワイヤ17の先端面が、軸線方向101に対して45度の角度となるように傾斜された平面であって、その先端面に反射材18が備えられていてもよい。その場合、OCTイメージワイヤ17と離間された距離に配置された反射材18は存在しない。
【符号の説明】
【0063】
10 カテーテル
11 シャフト(管体)
12 カッター
16 トルクシャフト
17 OCTイメージワイヤ(導光材)
18 反射材
19 ガイドワイヤ用チューブ(ガイドワイヤルーメン)
20,21 開口
23 バルーン
図1
図2
図3
図4
図5