【実施例】
【0062】
以下に本発明の実施例を比較例とともに説明する。
【0063】
<窒化物蛍光体粉末およびAl
2(NH)
3粉末の酸素含有量、窒素含有量の測定方法>
窒化物蛍光体粉末およびAl
2(NH)
3粉末の酸素含有量、窒素含有量は、粉末試料をスズカプセルに投入し、これをニッケルバスケットに入れたものを、LECO製酸素・窒素・水素分析装置(TCH600型)により測定した。酸素含有量は不活性ガス雰囲気高温溶融−赤外線吸収測定法、窒素含有量は不活性ガス雰囲気高温溶融−熱伝導度測定法で、それぞれ検出した。
【0064】
<窒化物蛍光体粉末およびAl
2(NH)
3粉末の炭素含有量の測定方法>
窒化物蛍光体粉末およびAl
2(NH)
3粉末の炭素含有量は、LECO製炭素分析装置(IR−412型)を用い、高周波燃焼−赤外線吸収法により測定した。
【0065】
<窒化物蛍光体粉末およびAl
2(NH)
3粉末の比表面積の測定方法>
窒化物蛍光体粉末およびAl
2(NH)
3粉末の比表面積は、島津製流動式比表面積自動測定装置(フローソーブIII2310型)を用い、BET1点法により測定した。
【0066】
<窒化物蛍光体粉末の不純物金属含有量の測定方法>
窒化物蛍光体粉末の不純物金属含有量は、リガク製走査型蛍光X線分析装置(ZSX Primus型)を用い、FP法により測定した。
【0067】
<窒化物蛍光体粉末の真密度の測定方法>
窒化物蛍光体粉末の真密度は、Quantachrome製ウルトラピクノメーター(UPY−2型)を用い、ヘリウムガスによるガス置換法で測定した。
【0068】
<窒化物蛍光体粉末の発光特性の測定方法>
日本分光製分光蛍光光度計(FP−6500型)を用い、150Wキセノンランプによる波長450nmの青色光を窒化物蛍光体粉末に照射し、窒化物蛍光体粉末の内部量子効率を測定した。
【0069】
<参考例1>
ガラス製三口フラスコに、ガス導入用三方コック、温度計用さや管、留分を受ける二つ口ナスフラスコと組み合わせた分留管を設置した。これらの器具は130℃のオーブンで事前に充分乾燥し、更に組み立てた後に真空下でホットブラスターにより加熱して、内壁表面に付着した水分を除去した。こうして乾燥し、内部をN
2ガス雰囲気に保持して密閉した装置を同じくN
2雰囲気のグローブボックスに入れた。グローブボックス出口ガスの酸素濃度と露点を測定し、酸素と水分が少ない雰囲気であることを確認した後、トリエチルアルミニウムへキサン溶液(和光純薬製、1mol/L)およびデカン(水分10ppm以下)を前記の三口フラスコに導入した。充分に混合した後、ガラス装置全体を密閉状態に保持してグローブボックスから取り出した。
【0070】
ガラス製三口フラスコをオイルバスによって加熱し、内部液をマグネチックスターラーで攪拌しながら内部のトリエチルアルミニウム溶液中にアンモニアガスをバブリングした。まず、オイルバス温度を120℃に保ち、反応混合物中のヘキサンを留去して、分留管に接続した二つ口ナスフラスコに受けた。ヘキサンの留去が終了した後、オイルバス温度を180℃に上げると、白色沈殿が析出し始め、反応の進行が確認された。こうしてアンモニアガスを継続して供給しながらオイルバス温度180℃(フラスコ内のスラリー液温度170℃)で4時間反応を行った。
【0071】
次にオイルバス温度を200℃に上げ、生成した白色沈殿を含有するスラリーからデカンを留去した。デカンの留去操作においても、アンモニアガスは継続して供給した。次いでアンモニアガスの供給を止め、装置全体を密閉状態としてグローブボックスに入れ、主として(C
2H
5)Al(NH)からなる白色固体を回収した。
【0072】
グローブボックス内にて、上記白色固体を両末端に三方コックを設置したガラス管に充填した。この三方コック及びガラス管は、前記の有機アルミニウム化合物溶液とアンモニアの反応に用いたガラス器具と同様の方法で乾燥したものである。このガラス管にヒーターを取り付け、下部側コックよりアンモニアガスを供給しながら白色固体充填層を加熱した。加熱においては、ヒーター温度を230℃に保ち2時間加熱した後、ヒーター温度を270℃に上げてさらに2時間加熱した。加熱終了後、グローブボックス内にて組成式Al
2(NH)
3で表される白色粉末(以下、この白色粉末を「Al
2(NH)
3粉末」と称することがある。)を回収した。得られたAl
2(NH)
3粉末について、酸素含有量は1.7質量%、窒素含有量は38.7質量%(理論値:42.4質量%)、炭素含有量は0.37質量%であり、またCyDTA-亜鉛逆滴定法(JIS R1675:2007準拠)により測定したAl含有量は55.8質量%(理論値:54.5質量%)であったことから、得られた粉末の組成がAl
2(NH)
3に相当すると確認した。BET1点法で測定した比表面積は849m
2/gであった。
【0073】
以下の実施例、比較例に示す窒化物蛍光体粉末の合成に用いた原料は下記の通りである。
【0074】
Al
2(NH)
3粉末:参考例1により合成したAl
2(NH)
3粉末
窒化アルミニウム粉末:トクヤマ製、Eグレード
窒化珪素粉末:宇部興産製、SN−E10
シリコンジイミド粉末:特開平9−156912号公報の実施例1に記載の方法により合成したシリコンジイミド粉末
窒化カルシウム粉末:Alfa Aesar製、純度99%
水素化カルシウム粉末:Aldrich製、純度99.99%
窒化ユウロピウム粉末:国際公開2006/080535号の実施例1に記載の方法により合成した窒化ユウロピウム粉末
酸化ユウロピウム粉末:Aldrich製、純度99.5%
窒化ストロンチウム粉末:金属Sr(高純度化学研究所製、塊状)を鑢で削って得られた平均粒子径350μm以下の粉末を、カーボン製ルツボに仕込み、常圧の窒素雰囲気中、800℃で6時間焼成して窒化した後、平均粒子径150μm以下になるまで粉砕して得られた窒化ストロンチウム粉末
【0075】
<実施例1>
Ca源として窒化カルシウム粉末、Al源としてAl
2(NH)
3粉末、Si源として窒化珪素粉末、Eu源として窒化ユウロピウム粉末を用い、これらの粉末を窒素雰囲気中でCa:Al:Si:Eu=0.98:1:1:0.02のモル比で秤量し、PTFE製ボール(ボール径12.7mm)とともにステンレス製容器に入れ、レッチェ製ミキサーミル(MM400型)により、15Hzの振動数で30分間混合し、混合粉末を得た。
【0076】
得られた混合粉末を窒素雰囲気中で窒化ホウ素製ルツボに仕込み、焼成を行った。焼成は、窒素流通量1L/分(常温、常圧基準)の、常圧の窒素雰囲気中、5℃/分の昇温速度で加熱し、1250℃で6時間保持して行った。焼成後、生成した窒化物蛍光体粉末を回収した。
【0077】
得られた窒化物蛍光体粉末について、リガク製X線回折装置(Ultima IV Protectus)を用いたX線回折分析によりCaAlSiN
3の結晶相が生成していることを確認した。
【0078】
得られた窒化物蛍光体粉末について、<窒化物蛍光体粉末およびAl
2(NH)
3粉末の酸素含有量、窒素含有量の測定方法>にて説明した方法による酸素含有量および窒素含有量の測定、<窒化物蛍光体粉末およびAl
2(NH)
3粉末の炭素含有量の測定方法>にて説明した方法による炭素含有量の測定、<窒化物蛍光体粉末の不純物金属含有量の測定方法>にて説明した方法による不純物金属含有量の測定を行った。また、得られた窒化物蛍光体粉末について、<窒化物蛍光体粉末およびAl
2(NH)
3粉末の比表面積の測定方法>と<窒化物蛍光体粉末の真密度の測定方法>にて説明した方法で比表面積と真密度を測定し、これらの値を用いて球相当径D
BETを求めた。また、<窒化物蛍光体粉末の発光特性の測定方法>にて説明した方法で、得られた窒化物蛍光体粉末の内部量子効率を測定した。また、その際に得られた発光スペクトルから蛍光ピーク波長を求めた。
【0079】
得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は1.5質量%、窒素含有量は29.0質量%(理論値:30.6質量%)であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末の比表面積は5.49m
2/g、真密度は3.10g/cm
3であり、これらの測定値から換算された球相当径D
BETは0.35μmであった。またこの粉末の、JEOL製走査電子顕微鏡(JSM−6510型)により撮影されたSEM写真を
図1に示す。走査電子顕微鏡により観察された粒子のサイズはD
BETの値に整合していることが確認された。
【0080】
得られた窒化物蛍光体粉末の、450nmの青色光で励起した場合の発光スペクトルのピーク波長は670.0nmで、内部量子効率は60%であった。実施例1の窒化物蛍光体粉末は、D
BETで0.4μm以下の、特に小さな粒径を持ちながらも、高い内部量子効率を示した。
【0081】
また、得られた窒化物蛍光体粉末の炭素含有量は0.11質量%、蛍光X線分析により検出されたCa、Al、Si、Eu以外の不純物金属はSr(0.05質量%)のみであった。
【0082】
<実施例2>
Si源としてシリコンジイミド粉末を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例2の窒化物蛍光体粉末を製造した。得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりCaAlSiN
3の結晶相が生成していることを確認した。
【0083】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は1.8質量%、窒素含有量は28.8質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.32μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は668.5nmで、内部量子効率は66%であった。実施例2の窒化物蛍光体粉末は、D
BETで0.4μm以下の、特に小さな粒径を持ちながらも、高い内部量子効率を示した。
【0084】
<比較例1>
Al源を窒化アルミニウム粉末に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、比較例1の窒化物蛍光体粉末を製造した。得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりCaAlSiN
3の結晶相が生成していることを確認した。
【0085】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は1.2質量%、窒素含有量は29.5質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.58μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は664.5nmで、内部量子効率は51%であった。Al源として窒化アルミニウム粉末を用いた比較例1の窒化物蛍光体粉末は、Al源としてAl
2(NH)
3粉末を用いた実施例1の窒化物蛍光体粉末、さらにAl源としてAl
2(NH)
3粉末を用い、Si源としてシリコンジイミド粉末を用いた実施例2の窒化物蛍光体粉末と比較して、粒径が大きいにも関わらず、低い内部量子効率を示した。
【0086】
<比較例2>
比較例1で用いたものと同じ窒化アルミニウム粉末(D
BET:0.59μm)を、窒化珪素製ボール(ボール径5mm)とともにPTFE製容器に入れ、実施例1で用いたミキサーミルにより30Hzの振動数で60分振動させて粉砕し、D
BETが0.26μmの窒化アルミニウム粉末を得た。Al源として、粉砕して得られた、この窒化アルミニウム粉末を用いたこと以外は比較例1と同様の方法により、比較例2の窒化物蛍光体粉末を製造した。
【0087】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は1.0質量%、窒素含有量は29.0質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.58μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は661.0nmで、内部量子効率は50%であった。Al源にD
BETが小さい原料を用いても、得られる窒化物蛍光体粉末のD
BETは、比較例1の窒化物蛍光体粉末と比べても小さくならなかった。また、Al源としてAl
2(NH)
3粉末を用いた実施例1の窒化物蛍光体粉末、さらにAl源としてAl
2(NH)
3粉末を用い、Si源としてシリコンジイミド粉末を用いた実施例2の窒化物蛍光体粉末と比較して、粒径が大きいにも関わらず、低い内部量子効率を示した。
【0088】
<実施例3>
Ca源を水素化カルシウム粉末に変更したことと、混合粉末を1150℃で12時間保持して焼成したこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例3の窒化物蛍光体粉末を製造した。得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりCaAlSiN
3の結晶相が生成していることを確認した。
【0089】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は1.8質量%、窒素含有量は29.2質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.21μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は661.5nmで、内部量子効率は33%であった。実施例3では、1150℃という、CaAlSiN
3蛍光体としては非常に低い温度で焼成したにも関わらず、CaAlSiN
3結晶相が生成し、Euの賦活に由来する発光が認められ、CaAlSiN
3:Euで表される蛍光体の生成が確認された。また、実施例3の窒化物蛍光体粉末は、D
BETで0.4μm以下の、特に小さな粒径を持ちながらも、蛍光体として実用に値する内部量子効率を示した。
【0090】
<比較例3>
Al源を窒化アルミニウム粉末に変更したこと以外は実施例3と同様の方法により、比較例3の窒化物蛍光体粉末を製造した。
【0091】
得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりD
BETを求め、実施例1と同じ方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末のD
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.39μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は644.5nmで、内部量子効率は2%と非常に低く、実質的に蛍光を発しなかった。Al源としてAl
2(NH)
3粉末を用いた実施例3とは異なり、実質的な蛍光体は得られなかった。
【0092】
<実施例4>
Si源をシリコンジイミド粉末に変更したことと、混合粉末を1350℃で6時間保持して焼成したこと以外は実施例3と同様の方法により、実施例4の窒化物蛍光体粉末を製造した。得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりCaAlSiN
3の結晶相が生成していることを確認した。
【0093】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は0.8質量%、窒素含有量は29.7質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.67μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は663.5nmで、内部量子効率は71%であった。実施例4の窒化物蛍光体粉末は、D
BETで0.4μmよりは大きいものの、サブミクロンサイズの粒径を持ち、特に高い内部量子効率を示した。
【0094】
<比較例4>
Al源を窒化アルミニウム粉末、Si源を窒化珪素粉末に変更したこと以外は実施例4と同様の方法により、比較例4の窒化物蛍光体粉末を製造した。得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりCaAlSiN
3の結晶相が生成していることを確認した。
【0095】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は0.7質量%、窒素含有量は29.5質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.87μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は664.0nmで、内部量子効率は61%であった。比較例4の窒化物蛍光体粉末は、Al源としてAl
2(NH)
3粉末を用い、Si源としてシリコンジイミド粉末を用いた実施例4の窒化物蛍光体粉末と比較して、粒径が大きいにも関わらず、低い内部量子効率を示した。
【0096】
<実施例5>
Eu源を酸化ユウロピウムに変更したことと、混合粉末を1250℃で3時間保持して焼成したこと以外は実施例2と同様の方法により、実施例5の窒化物蛍光体粉末を製造した。得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりCaAlSiN
3の結晶相が生成していることを確認した。
【0097】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は1.8質量%、窒素含有量は28.7質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.31μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は662.5nmで、内部量子効率は62%であった。実施例5の窒化物蛍光体粉末は、D
BETで0.4μm以下の、特に小さな粒径を持ちながらも、高い内部量子効率を示した。
【0098】
<比較例5>
Al源を窒化アルミニウム粉末、Si源を窒化珪素粉末に変更したこと以外は実施例5と同様の方法により、窒化物蛍光体粉末を製造した。得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりCaAlSiN
3の結晶相が生成していることを確認した。
【0099】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は1.2質量%、窒素含有量は29.7質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.56μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は661.0nmで、内部量子効率は49%であった。比較例5の窒化物蛍光体粉末は、Al源としてAl
2(NH)
3粉末を用い、Si源としてシリコンジイミド粉末を用いた実施例5の窒化物蛍光体粉末と比較して、粒径が大きいにも関わらず、低い内部量子効率を示した。
【0100】
<実施例6>
混合粉末を1200℃で6時間保持して焼成したこと以外は実施例2と同様の方法により、実施例6の窒化物蛍光体粉末を製造した。得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりCaAlSiN
3の結晶相が生成していることを確認した。
【0101】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は1.8質量%、窒素含有量は28.0質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.27μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は662.5nmで、内部量子効率は61%であった。実施例6の窒化物蛍光体粉末は、D
BETで0.4μm以下の、特に小さな粒径を持ちながらも、高い内部量子効率を示した。
【0102】
<比較例6>
Al源を窒化アルミニウム粉末に変更したこと以外は実施例6と同様の方法により、比較例6の窒化物蛍光体粉末を製造した。得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりCaAlSiN
3の結晶相が生成していることを確認した。
【0103】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は1.5質量%、窒素含有量は29.1質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.55μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は657.0nmで、内部量子効率は25%であった。比較例6の窒化物蛍光体粉末は、Al源としてAl
2(NH)
3粉末を用い、Si源としてシリコンジイミド粉末を用いた実施例6の窒化物蛍光体粉末と比較して、粒径が大きいにも関わらず、低い内部量子効率を示した。
【0104】
<実施例7>
Eu源を酸化ユウロピウム粉末に変更したことと、混合粉末を1300℃で3時間保持して焼成したこと以外は実施例4と同様の方法により、実施例7の窒化物蛍光体粉末を製造した。得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりCaAlSiN
3の結晶相が生成していることを確認した。
【0105】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は1.8質量%、窒素含有量は28.9質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.33μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は668.5nmで、内部量子効率は66%であった。実施例7の窒化物蛍光体粉末は、D
BETで0.4μm以下の、特に小さな粒径を持ちながらも、高い内部量子効率を示した。
【0106】
<比較例7>
Al源を窒化アルミニウム粉末、Si源を窒化珪素粉末に変更したこと以外は実施例7と同様の方法により、比較例7の窒化物蛍光体粉末を製造した。得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりCaAlSiN
3の結晶相が生成していることを確認した。なお、比較例7の窒化物蛍光体粉末は、非特許文献1に具体的に開示されている製造方法と同様の方法により得られた窒化物蛍光体粉末である。
【0107】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により走査電子顕微鏡観察を行い、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の、走査電子顕微鏡により撮影されたSEM写真を
図2に示す。得られた窒化物蛍光体粉末は、
図2によれば広い粒度分布を持つ粉末のようであり、粒子径が400nm以下の粒子が確認される一方で、1μm程度の比較的大きな粒子が多く確認された。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は1.6質量%、窒素含有量は29.0質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.59μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は664.5nmで、内部量子効率は57%であった。比較例7の窒化物蛍光体粉末は、Al源としてAl
2(NH)
3粉末を用い、Si源としてシリコンジイミド粉末を用いた実施例7の窒化物蛍光体粉末と比較して、粒径が大きいにも関わらず、低い内部量子効率を示した。低い焼成温度では、Al源に従来のAl源を用いても、Al源にAl
2(NH)
3粉末を用いた場合のようには母体結晶の結晶化が進まなかったためと考えられる。
【0108】
<比較例8>
比較例7で得られた窒化物蛍光体粉末を、窒化珪素製ボール(ボール径5mm)とともにPTFE製容器に入れ、実施例1で用いたミキサーミルにより30Hzの振動数で30分振動させて粉砕し、比較例8の窒化物蛍光体粉末を製造した。
【0109】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は3.0質量%、窒素含有量は27.9質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.28μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は664.0nmで、内部量子効率は39%であった。比較例8の窒化物蛍光体粉末は、比較例7の窒化物蛍光体粉末を粉砕することで、D
BETを0.4μm以下にすることはできたが、内部量子効率は著しく低下した。粉砕に伴って、酸素含有量が増加していることが確認された。
【0110】
<比較例9>
原料のモル比をCa:Al:Si:Eu=0.992:1:1:0.008として、窒化カルシウム粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化珪素粉末、および窒化ユウロピウム粉末を秤量し混合したことと、得られた混合粉末を1700℃で6時間保持して焼成したことと、焼成時の雰囲気を0.8MPaの窒素雰囲気としたこと以外は比較例1と同様の方法により窒化物蛍光体粉末を製造した。得られた窒化物蛍光体粉末を、窒化珪素製ボール(ボール径5mm)とともにPTFE製容器に入れ、実施例1で用いたミキサーミルにより30Hzの振動数で75分振動させて粉砕し、比較例9の窒化物蛍光体粉末を製造した。
【0111】
また、得られた粉砕前後の窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表1に示す。
【0112】
D
BETは、粉砕前の窒化物蛍光体粉末が4.5μmであり、粉砕後の窒化物蛍光体粉末が0.48μmであった。450nmの青色光で励起した場合の、内部量子効率は、粉砕前の窒化物蛍光体粉末が84%であり、粉砕後の窒化物蛍光体粉末が21%であった。高温で焼成して得られた、D
BETが大きく高い内部量子効率を示す窒化物蛍光体粉末を粉砕すると、D
BETは小さくなるものの、著しく内部量子効率が低下することが確認された。また、実施例1と同様の方法により測定した、粉砕後の窒化物蛍光体粉末の炭素含有量は0.35質量%と大きく、粉砕の影響と推察された。
【0113】
以上の通り、Al源に特定のAl−N−H系化合物粉末を用いる、本発明の窒化物蛍光体粉末の製造方法によって、低温の焼成で、粉砕を要さずに、実用的な発光特性を示す、小さなD
BETのCaAlSiN
3:Euで表される窒化物蛍光体粉末を製造できることが確認できた。Al源に特定のAl−N−H系化合物粉末を用いることによって、低温で蛍光体を合成できたため、粒子成長が抑制されながら、小さなD
BETを持つ窒化物蛍光体粉末を合成できたものと推察される。また、本発明の窒化物蛍光体粉末の製造方法によって、D
BETが0.15μm〜0.4μmと特に小さいながらも、450nmの波長の光により励起されることで、ピーク波長が635nm〜690nmの波長域にある蛍光を発し、その際の内部量子効率が45%〜70%を示す、従来にない、CaAlSiN
3:Euで表される窒化物蛍光体粉末が得られることが確認された。
【0114】
<実施例8>
原料のモル比をCa:Sr:Al:Si:Eu=0.78:0.20:1:1:0.02として、水素化カルシウム粉末、窒化ストロンチウム粉末、Al
2(NH)
3粉末、窒化珪素粉末、および酸化ユウロピウム粉末を秤量し混合したこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例8の窒化物蛍光体粉末を製造した。
【0115】
得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりX線回折分析を行ったところ、CaAlSiN
3((Ca,Sr)AlSiN
3)に相当する回折ピークが確認され、CaAlSiN
3((Ca,Sr)AlSiN
3)以外に、Srを含む化合物の生成を示す回折線は確認されなかった。また得られた窒化物蛍光体粉末について、<窒化物蛍光体粉末の不純物金属含有量の測定方法>にて示した装置を用いて蛍光X線分析を行ったところ、19質量%のSrが検出された。これらの結果から、得られた窒化物蛍光体粉末は、CaAlSiN
3:Euの結晶格子中のCaが一部Srに置換されたCa
0.8Sr
0.2AlSiN
3:Euであることを確認した。また、焼成前の粉末質量に対する焼成後の粉末質量の割合は96.3%であり、理論値96.1%に良く一致した。
【0116】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表2に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は1.9質量%、窒素含有量は27.7質量%(理論値:28.2質量%)であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.26μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は666.0nmで、内部量子効率は48%であった。実施例8の窒化物蛍光体粉末は、D
BETで0.4μm以下の、特に小さな粒径を持ちながらも、高い内部量子効率を示した。
【0117】
<比較例10>
Al源を窒化アルミニウム粉末に変更したこと以外は実施例8と同様の方法により、比較例10の窒化物蛍光体粉末を製造した。得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例1と同様の方法によりX線回折分析を行ったところ、CaAlSiN
3((Ca,Sr)AlSiN
3)に相当する回折ピークが確認され、CaAlSiN
3((Ca,Sr)AlSiN
3)以外に、Srを含む化合物の生成を示す回折線は確認されなかった。また得られた窒化物蛍光体粉末について、実施例8と同様の方法により蛍光X線分析を行ったところ、16質量%のSrが検出された。これらの結果から、得られた窒化物蛍光体粉末は、CaAlSiN
3:Euの結晶格子中のCaが一部Srに置換されたCa
0.8Sr
0.2AlSiN
3:Euであることを確認した。
【0118】
また、実施例1と同様の方法により、酸素含有量、窒素含有量およびD
BETを求め、実施例1と同様の方法により発光特性を測定した。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量、窒素含有量、D
BET、および、波長450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長と内部量子効率を表2に示す。得られた窒化物蛍光体粉末の酸素含有量は1.4質量%、窒素含有量は27.8質量%であった。また、得られた窒化物蛍光体粉末のD
BETは0.69μmであり、450nmの青色光で励起した場合の蛍光ピーク波長は669.0nmで、内部量子効率は39%であった。比較例10の窒化物蛍光体粉末は、Al源としてAl
2(NH)
3粉末を用いた実施例8の窒化物蛍光体粉末と比較して、粒径が大きいにも関わらず、低い内部量子効率を示した。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】