特許第6354417号(P6354417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6354417紙力増強剤、それにより得られる紙及び紙の製造方法
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  • 特許6354417-紙力増強剤、それにより得られる紙及び紙の製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354417
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】紙力増強剤、それにより得られる紙及び紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/18 20060101AFI20180702BHJP
   D21H 17/42 20060101ALI20180702BHJP
   D21H 17/45 20060101ALI20180702BHJP
   D21H 17/37 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   D21H21/18
   D21H17/42
   D21H17/45
   D21H17/37
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-149733(P2014-149733)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2015-52194(P2015-52194A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年8月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-164789(P2013-164789)
(32)【優先日】2013年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺下 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】美邉 翔
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/164916(WO,A1)
【文献】 特開2012−251252(JP,A)
【文献】 特開2009−270237(JP,A)
【文献】 特開2008−179910(JP,A)
【文献】 特開2008−255556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを固形分7〜30重量%含有する紙力増強剤であって、
該両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの重量平均分子量が1,600,000〜10,000,000、脱イオン水を硫酸ナトリウムで調製した電気伝導度4mS/cm・25℃の水で希釈した該両性(メタ)アクリルミド系水溶性ポリマーの1重量%水溶液のpH3〜9における濁度の分布が一つの極大値を有し、その極大値が15〜2,000NTUであることを特徴とし、上記両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーが、(メタ)アクリルアミド(a)59.0〜96.98mol%、カチオン性ビニルモノマー(b)2.0〜15.0mol%、アニオン性ビニルモノマー(c)1.0〜12.0mol%、架橋性モノマー(d)0.01〜2.0mol%、及び連鎖移動性モノマー(e)0.01〜2mol%を含む重合性成分(重合性成分にはグリオキシル酸類を含まない)の共重合体であり、カチオン性ビニルモノマー(b)が、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級化物及びジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級化物をそれぞれ0.05〜14.9mol%含有する紙力増強剤。
【請求項2】
上記両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの重量平均分子量が2,500,000〜7,000,000、上記濁度の極大値が20〜1,000NTUであることを特徴とする請求項1記載の紙力増強剤。
【請求項3】
上記両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーのH−NMRスペクトルにおける0.9〜1.35ppmに検出される高磁場側シグナルAと低磁場側シグナルBのシグナル面積比[As/(As+Bs)](AsはシグナルA、BsはシグナルBの面積を表わす)が、20%以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の紙力増強剤。
【請求項4】
上記両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーが(メタ)アクリルアミド(a)を必須成分とした2種類以上のモノマー混合液を重合して得られるものであり、該モノマー混合液が下記(1)式及び(2)式(式中の各含有量の単位はmol%である。)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紙力増強剤。

カチオン性ビニルモノマー(b)含有量が最も多いモノマー混合液中のカチオン性ビニルモノマー含有量(i)/カチオン性ビニルモノマー(b)含有量が最も少ないモノマー混合液中のカチオン性ビニルモノマー含有量(ii)≧1.5 (1)
アニオン性ビニルモノマー(c)含有量が最も多いモノマー混合液中のアニオン性ビニルモノマー含有量(iii)/アニオン性ビニルモノマー(c)含有量が最も少ないモノマー混合液中のアニオン性ビニルモノマー含有量(iv)≧1.5 (2)
【請求項5】
上記モノマー混合液の重合が滴下重合を含むことを特徴とする請求項4記載の紙力増強剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の紙力増強剤を用いて得られる紙。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の紙力増強剤を電気伝導度が3mS/cm以上のパルプスラリーに添加することを特徴とする紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両性(メタ)アクリルアミド系ポリマーを含有する紙力増強剤、紙力増強剤を用いて得られる紙、および紙の製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
紙は、リサイクル可能な資源として、様々な用途で活用されている。製紙業界では環境対策の一環として古紙のリサイクルや用水使用量の削減(クローズド化)に取り組み、そのリサイクル率及びクローズド化率は年々向上傾向にある。古紙をリサイクルし続けると、パルプ表面のフィブリルは減少し、紙にした際の繊維間結合が減少する。さらに、パルプ繊維自体の強度も低下するため、得られる紙の強度は低下する。その結果、紙抄造時には強度の低下を補うために紙力増強剤は不可欠なものとなっている。
【0003】
また、古紙のリサイクルやクローズド化が進むことで、抄紙系内には微細繊維や溶存電解質物質が蓄積され、抄紙系の電気伝導度は上昇傾向にあり、一般的には電気伝導度が3mS/cmを超えると電気伝導度は高いとされるが、電気伝導度が4mS/cmを超えるパルプスラリーを用いて抄紙する場合も増えている。このような状況下で、両性紙力増強剤はイオン部が溶存電解質によって遮蔽されるため、本来の紙力増強効果を発揮し難くなっている。このような製紙用添加剤の一つにポリアクリルアミド系紙力増強剤がある。
【0004】
ポリアクリルアミド系紙力増強剤はイオン性によりアニオンタイプ、カチオンタイプ、及び両性タイプに分類できる。現在は両性タイプが主流である。両性タイプのポリアクリルアミド系紙力増強剤は、アクリルアミドにカチオン性モノマーやアニオン性モノマー等の各種重合成分を共重合して得られる両性アクリルアミド系水溶性ポリマーを含有している。両性アクリルアミド系水溶性ポリマーは等電点を持ち、等電点付近のpHでポリイオンコンプレックスを形成する。等電点とはpHを変化させた時にポリマー全体としての電荷が0になるpHのことであり、ポリイオンコンプレックスとはアニオン基やカチオン基を持つポリマー同士がイオン結合により結合して形成される水不溶性物質のことである。ポリイオンコンプレックスを形成すると、白濁する現象が見られ、更には、不均一な状態になる場合や不溶化物を生成する場合もある。ポリイオンコンプレックスを形成することで、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーは、高い濾水性、歩留性及び紙力増強効果を発揮することが知られている。しかしながら、電気伝導度の高いパルプスラリーを用いて抄紙する場合は、既存の両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーではポリイオンコンプレックスの形成を制御できておらず、紙力増強効果等の効果を十分に発揮する両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーは、未だ開発されていない。
【0005】
これに対しては、エステル構造を有するベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマーを構成成分とした製紙用添加剤(特許文献1)やアミド構造を有するベンジル系4級アンモニウム塩基含有カチオン性モノマーを構成成分とした製紙用添加剤(特許文献2、3)が知られている。しかし、上記方法においても電気伝導度の高い抄紙系においては、濾水性・歩留性や紙力効果の向上については満足できる結果には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−92800号公報
【特許文献2】特開平8−284093号公報
【特許文献3】特開2006−348421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、3mS/cm未満の電気伝導度のパルプスラリーを用いて抄紙する場合及び3mS/cm以上の電気伝導度の高いパルプスラリーを用いて抄紙する場合においても、高い濾水性・歩留性を発揮しつつ、かつ、過度な凝集は起こさず、良好な地合いを実現し、紙力効果を向上させる両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを含有する紙力増強剤およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、電気伝導度が高い水を用いて抄紙する場合、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーが、水溶液中のイオン電荷の遮蔽によりポリイオンコンプレックスを形成し難くなり、本来の効果が発揮できていないことを見出し、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを含む紙力増強剤であって、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの重量平均分子量を特定の範囲内とし、脱イオン水を硫酸ナトリウムで調整した電気伝導度4mS/cm・25℃の水で希釈した該両性(メタ)アクリルミド系水溶性ポリマーの1%水溶液のpH3〜9における濁度の分布が一つの極大値を有する分布となり、濁度の極大値を特定の範囲内に制御することにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本願発明は、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを固形分7〜30重量%含有する紙力増強剤であって、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの重量平均分子量が、1,600,000〜10,000,000、脱イオン水を硫酸ナトリウムで調製した電気伝導度4mS/cm・25℃の水で希釈した該両性(メタ)アクリルミド系水溶性ポリマーの1%水溶液のpH3〜9における濁度の分布が一つの極大値を有し、その極大値が15〜2,000NTUであることを特徴とする紙力増強剤である(本発明1)。
【0010】
また、本発明2は、上記両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの重量平均分子量(が2,500,000〜7,000,000、上記濁度の極大値が20〜1,000NTUであることを特徴とする請求項1記載の紙力増強剤である。
【0011】
また、本発明3は、本発明1の紙力増強剤において、上記両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーが、(メタ)アクリルアミド(a)59.0〜96.98mol%、カチオン性ビニルモノマー(b)2.0〜15.0mol%、アニオン性ビニルモノマー(c)1.0〜12.0mol%、架橋性モノマー(d)0.01〜2.0mol%、及び連鎖移動性モノマー(e)0.01〜2mol%を含む重合性成分を共重合して得られるものである。
【0012】
また、本発明4は、本発明1〜3のいずれかの紙力増強剤において、上記カチオン性ビニルモノマー(b)が、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級化物及びジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級化物をそれぞれ0.05〜14.9mol%含有するものである。
【0013】
また、本発明5は、本発明1〜4のいずれかの紙力増強剤において、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーのH−NMRスペクトルにおける0.9〜1.35ppmに検出される高磁場側シグナルAと低磁場側シグナルBのシグナル面積比[As/(As+Bs)](AsはシグナルA、BsはシグナルBの面積を表わす)が、20%以上である。
【0014】
また、本発明6は、上記両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーが(メタ)アクリルアミド(a)を必須成分とした2種類以上のモノマー混合液を重合して得られるものであり、該モノマー混合液が下記(1)式及び(2)式(式中の各含有量の単位はmol%である。)を満たす紙力増強剤である。

カチオン性ビニルモノマー(b)含有量が最も多いモノマー混合液中のカチオン性ビニルモノマー含有量(i)/カチオン性ビニルモノマー(b)含有量が最も少ないモノマー混合液中のカチオン性ビニルモノマー含有量(ii)≧1.5 (1)
アニオン性ビニルモノマー(c)含有量が最も多いモノマー混合液中のアニオン性ビニルモノマー含有量(iii)/アニオン性ビニルモノマー(c)含有量が最も少ないモノマー混合液中のアニオン性ビニルモノマー含有量(iv)≧1.5 (2)
【0015】
また、本発明7は、本発明6におけるモノマー混合液の重合が滴下重合を含む紙力増強剤である。
【0016】
また、本発明8は、本発明1〜7のいずれかに記載の紙力増強剤を用いて得られる紙である。
【0017】
また、本発明9は、本発明1〜6のいずれかに記載の紙力増強剤を電気伝導度が3mS/cm以上のパルプスラリーに添加する紙の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の紙力増強剤は電気伝導度が3mS/cm未満のパルプスラリーを用いて抄紙する場合及び3mS/cm以上のパルプスラリーを用いて抄紙する場合においても、パルプへの定着性に優れ、また、パルプに対する高い凝集力を示しながら、得られる紙の地合いが良好であり、高い紙力増強効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】脱イオン水を硫酸ナトリウムで調製した電気伝導度4mS/cm・25℃の水で希釈した両性(メタ)アクリルミド系水溶性ポリマーの1重量%水溶液のpH3〜9における濁度分布の例を示した図である。横軸(X軸)はpHを、縦軸(y軸)は濁度測定値を表している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の紙力増強剤は、少なくとも(メタ)アクリルアミド(a)(以下、(a)成分という)、カチオン性ビニルモノマー(b)(以下、(b)成分という)およびアニオン性ビニルモノマー(c)(以下、(c)成分という)を共重合し得られる両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを溶媒中に固形分7〜30重量%含有する。好ましくは固形分10〜25重量%含有する。固形分7重量%未満の場合は紙力増強剤の輸送効率が悪く、固形分30重量%を越える場合には紙力増強剤の安定性が悪くなる。
【0021】
本発明の紙力増強剤の溶媒としては、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを溶解または分散させることができれば、特に限定されないが、水を使うことが好ましい。また、紙力増強剤中には必要に応じて、炭酸カルシウムやタルクなどの公知の填料や硫酸ナトリウムや硫酸アンモニウム、塩化ナトリウムなどの塩類、防腐剤およびその他の添加剤(消泡剤、pH調整剤など)を含有することができる。
【0022】
上記(a)成分の構成比率としては、特に限定されないが、十分な紙力効果を確保する観点から両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの全構成成分に対し、59〜96.98mol%が好ましく、より好ましくは70〜96.98mol%である。この場合、紙力向上効果に有効な水素結合能を有する(メタ)アクリルアミドの含有量が少なくならず、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーが十分な紙力向上効果を発揮することができる。
【0023】
上記(b)成分としては、カチオン性を有するビニルモノマーであれば特に限定されない。(b)成分の具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの第三級アミノ基を有するビニルモノマーまたはそれらの無機酸もしくは有機酸の塩類、またはこれらの第3級アミノ基含有ビニルモノマーとメチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロロヒドリンなどの四級化剤との反応によって得られる第四級アンモニウム塩を有するビニルモノマーなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0024】
上記(b)成分の構成比率としては、十分な紙力増強効果を確保し、かつ凝集性が強くなり過ぎることにより生ずる紙の地合いの乱れを防止する観点から、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの全構成成分に対し2.0〜15.0mol%が好ましく、より好ましくは2.0〜10.0mol%である。
【0025】
さらに、(b)成分としては共重合性の異なる成分を2種類以上併用することができ、特にジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級化物とジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級化物を併用することでポリマー中のカチオン部位の配置や分子量の制御が容易となるうえ、さらに高電気伝導度においてもカチオン性を維持しやすく良好な性能を発揮できる。ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級化物とジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級化物の構成比率としては両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの全構成成分に対し、0.05〜14.9mol%使用することが好ましい。より好ましくは0.05〜10.0mol%である。この場合、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの凝集性は低くなり過ぎず、過凝集になるほど強くならないため、地合を乱さずに高い紙力増強効果が得られる。また、さらに他の(b)成分を併用することもできる。
【0026】
上記(c)成分としては、アニオン性基を有するビニルモノマーであれば特に限定されない。(c)成分の具体例としては、アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸等の不飽和ジカルボン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの有機スルホン酸、前記各種有機酸これらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩並びにこれらのアンモニウム塩等があげられる。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
なお、本発明においては、後述するメタリルスルホン酸等の連鎖移動性モノマーは、(c)成分に含まない。
【0027】
上記(c)成分の構成比率としては、特に限定されないが、十分な紙力増強効果を確保し、かつ凝集性が強くなり過ぎることにより生ずる紙の地合いの乱れを防止する観点から両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの全構成成分に対し1.0〜12.0mol%が好ましく、より好ましくは1〜6mol%である。
【0028】
本発明の両性(メタ)アクリルアミド水溶性ポリマーの重合には架橋性モノマー(d)(以下、(d)成分という)を併用することが好ましい。(d)成分としては、メチレンビスアクリルアミド等の多官能(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジメチルアクリルアミド等のN置換(メタ)アクリルアミド類、エチレングリコールジアクリレート、ジアリルアミン、N−メチロールアクリルアミド等の2官能モノマー、トリアリルイソシアネートなどの3官能モノマー、テトラアリルオキシエタン等の4官能性モノマーや、アリルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート等のビニルモノマー等が挙げられる。これらの中では特に分岐および架橋反応の確実性から、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドを使用することが好ましい。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0029】
上記(d)成分の構成比率としては、特に限定されないが、通常、両性(メタ)アクリルアミド水溶性ポリマーの全構成成分に対し0.01〜2.0mol%程度、好ましくは0.05〜1.0mol%である。この場合、両性(メタ)アクリルアミド水溶性ポリマーの分子量を高め、十分な紙力向上効果を発現でき、さらにゲル状物を発生させずに分子量を高めることもできるため、両性(メタ)アクリルアミド水溶性ポリマーに高い凝集性と紙力向上効果を付与できる。
【0030】
本発明の両性(メタ)アクリルアミド水溶性ポリマーの重合には連鎖移動性モノマー(e)(以下、(e)成分という)を併用することが好ましい。(e)成分としては、(メタ)アリルアルコール及びそのエステル誘導体、(メタ)アリルアミン、ジアリルアミン、ジメタリルアミン及びそのアミド誘導体、トリアリルアミン、トリメタリルアミン、(メタ)アリルスルホン酸及びその塩、アリルスルファイド類、アリルメルカプタン類等の分子内に1個または複数個の炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が挙げられる。これらの中では特にメタリルスルホン酸ナトリウムを使用することが好ましい。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0031】
上記(e)成分の構成比率としては、特に限定されないが、通常、両性(メタ)アクリルアミド水溶性ポリマーの全構成成分に対し0.01〜2.0mol%、好ましくは0.30〜1.0mol%である。この場合、両性(メタ)アクリルアミド水溶性ポリマーの分子量を高め、十分な紙力向上効果を発現でき、さらにゲル状物を発生させずに分子量を高めることもできるため、両性(メタ)アクリルアミド水溶性ポリマーに高い凝集性と紙力向上効果を付与できる。
【0032】
本発明の両性(メタ)アクリルアミド水溶性ポリマーの重合には必要により(a)〜(e)以外のモノマーを併用してもよい。(a)〜(e)成分以外のモノマーとしては、ノニオン性ビニルモノマーなどがあげられる。ノニオン性ビニルモノマーとしては、(c)成分のアルキルエステル(特に、アルキル基の炭素数1〜8が好ましい)、アクリロニトリル、スチレン類、酢酸ビニル、メチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0033】
上記(a)〜(e)成分以外のモノマーの構成比率としては、両性(メタ)アクリルアミド水溶性ポリマーの全構成成分に対して10mol%以下が好ましく、より好ましくは、5mol%以下である。この場合、両性(メタ)アクリルアミド水溶性ポリマーの紙力増強効果を損なわない。
【0034】
本発明の両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーは、上記構成成分を共重合して得られるが、さらに重量平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリエチレンオキサイド換算値)が、通常1,600,000〜10,000,000である。好ましくは、2,500,000〜7,000,000で、通常、水溶液として取得することが好ましい。重量平均分子量が1,600,000を下回ると高電気伝導度の抄紙系においてはポリイオンコンプレックスを十分に形成することができず定着性が不十分となる場合があり、10,000,000を超えると凝集性が高くなりすぎる場合がある。
【0035】
本発明の両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーは、脱イオン水を硫酸ナトリウムで調製した電気伝導度4mS/cm・25℃の水で希釈した該両性(メタ)アクリルミド系水溶性ポリマーの1重量%水溶液のpH3〜9における濁度分布が一つの極大値を有し、濁度の極大値が15〜2,000NTUである。好ましくは20〜1,000NTUである。
【0036】
上記濁度とは、濁りの度合いであって、ANALITE NEPHELOMETER 152(Mc Van Instruments社製)を用いて900nmの赤外光を利用した180度の散乱光を測定することにより得られた値であり、測定値は標準物質(ホルマジン標準液 400NTU、和光純薬工業(株)製)に対する相対的な評価値をいう。
【0037】
上記濁度測定の際に用いた水は、脱イオン水を硫酸ナトリウムで調整したものである。この脱イオン水はイオン交換樹脂を通し電気伝導度を0.2mS/cm以下とした水である。ここで濁度測定の際にこの脱イオン水を硫酸ナトリウムで調整した水を用いたのは、抄紙する際の白水中には硫酸イオンやナトリウムイオンが多く存在するため、硫酸ナトリウムを使用することで抄紙する際の環境と近い環境を作ることができ、容易に電気伝導度を高めることができるためである。
【0038】
両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーは、ポリマー中にアニオン性およびカチオン性の官能基を持つため、希釈液のpHが等電点付近に近づくことでポリイオンコンプレックスを形成する。濁度を測定することで両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの希釈液のポリイオンコンプレックスの形成度合いが測定できる。両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーがポリイオンコンプレックスを形成し始めると、希釈液に濁りが発生する。過大なポリイオンコンプレックスを形成すると、沈殿を生成することもあり、ある程度まで沈殿を生成すると濁度測定値は低下に転じることがある。これは溶解していたポリイオンコンプレックスが析出し、希釈水中の濁りがなくなるためである。この場合、図1に示すようにpHを3〜9に変化させた時の濁度分布は二つの極大値を有する(以降、二山と称す)。二山の濁度分布において、その山と山の間の谷の部分では、ポリイオンコンプレックスは過剰に大きくなり、凝集性は高いが地合を著しく乱し、紙力効果に悪影響を及ぼす。高い電気伝導度下においても、凝集性と地合いを高く維持し、優れた紙力効果を発揮するためには、高い電気伝導度下で測定した濁度分布は一つの極大値を有する(以下、一山とも称する)ことが必要である。
【0039】
本発明の両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーは、上記条件で測定した濁度の最大値が15NTU未満であると、凝集性が低く紙力増強効果も十分でなく、2000NTUを超えると過凝集が起こり、地合が悪くなる。
【0040】
本発明の両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーは、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーのH−NMRスペクトルにおける0.9〜1.35ppmに検出される高磁場側シグナルAと低磁場側シグナルBのシグナル面積比[As/(As+Bs)](AsはシグナルA、BsはシグナルBの面積を表わす)が、20%以上である場合に、高い電気伝導度下においても、パルプへの定着性を高めることでより優れた紙力効果を発揮する。
【0041】
上記シグナルAおよびシグナルBは、共に(b)成分に含まれるαメチル基由来のシグナルである。高磁場側のシグナルAについては、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマー内においてαメチル基がモノマー単位で連続した場合に観測されるシグナルである。シグナルAの面積Asの割合が高まるということは、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマー中に(b)成分が連続して存在する割合が高いことを示す。すなわち、前記2つのシグナルのうち、高磁場側シグナルAと低磁場側シグナルBのシグナル面積比[As/(As+Bs)]が高まるということは両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマー中のカチオンが局在化していることを示すものと考えられる。なお、本発明におけるシグナルAおよびBの検出範囲0.9〜1.35ppmは、内部標準物質として3−(トリメチルシリル)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(DSS)を使用した場合の値である。
【0042】
上記「αメチル基」とは、ビニル基及びカチオン性官能基を有するモノマーにおいて、該ビニル基のα炭素に結合したメチル基を意味する。(b)成分としては、αメチル基を含有するカチオン性ビニルモノマーが好ましく、各種公知のものを特に制限なく使用できる。
【0043】
上記(b)成分がαメチル基を有する場合の具体例としては、例えば、第3級アミノ基含有メタクリレート化合物と四級化剤との反応によって得られる第4級塩構造含有メタクリレート化合物が挙げられる。該第3級アミノ基含有メタクリレート化合物としては、例えば、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド及びジエチルアミノプロピルメタアクリルアミド等が挙げられる。また、該四級化剤としては、例えば、メチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸及びエピクロロヒドリン等が挙げられる。
【0044】
本発明の両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの製造方法としては、特に制限されず、従来公知の重合方法を採用することができる。例えば、モノマー混合液に公知のラジカル重合開始剤を加えることにより行われる。好ましくは、滴下重合法を含む重合方法、滴下重合とモノマー混合液を一括して仕込む同時重合法を組み合わせることによる多段階の工程を含む重合方法が好ましい。2種類以上のモノマー混合液を用いる多段階の工程を含む重合方法としては、例えば、各モノマー混合液を別々に重合する方法、一種類以上のモノマー混合液の重合が終わってから、残りのモノマー混合液を滴下する重合方法、一種類以上のモノマー混合液を重合している途中から残りのモノマー混合液を滴下する重合方法、一種類以上のモノマー混合液の重合が終わってから、残りのモノマー混合液を混合して重合する方法、一種類以上のモノマー混合液を重合している途中から残りのモノマー混合液を混合して重合する方法、一種類以上のモノマー混合液を滴下重合して、残りのモノマー混合液を混合して重合する方法、各モノマー混合液をそれぞれ別々に重合して後で各重合物を混合する方法等が挙げられる。また両性(メタ)アクリルミド系水溶性ポリマーの合成に用いる全構成成分を複数のモノマー混合液に配分し、1部の混合液中の(b)成分や(c)成分の量を多くしてこれらの混合液を順次反応させたり、(b)成分や(c)成分を重合反応中のある時点で追加したりするなど、重合反応中のいずれかの段階において、反応に関与するカチオン性モノマーやアニオン性モノマーの濃度が高まるような操作を行えば、より好ましい。
【0045】
本発明の両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーは、(メタ)アクリルアミド(a)を必須成分とした2種類以上のモノマー混合液を重合して得られるものであり、モノマー混合液が下記(1)式及び(2)式(式中の各含有量の単位はmol%である。)を満たすことが好ましい。
カチオン性ビニルモノマー(b)含有量が最も多いモノマー混合液中のカチオン性ビニルモノマー含有量(i)/カチオン性ビニルモノマー(b)含有量が最も少ないモノマー混合液中のカチオン性ビニルモノマー含有量(ii)≧1.5 (1)
アニオン性ビニルモノマー(c)含有量が最も多いモノマー混合液中のアニオン性ビニルモノマー含有量(iii)/アニオン性ビニルモノマー(c)含有量が最も少ないモノマー混合液中のアニオン性ビニルモノマー含有量(iv)≧1.5 (2)
ここで、カチオン性ビニルモノマー含有量は両性(メタ)アクリルアミド水溶性ポリマーの合成に用いる全構成成分に対するカチオン性ビニルモノマーのmol%を示す。アニオン性ビニルモノマー含有量は両性(メタ)アクリルアミド水溶性ポリマーの合成に用いる全構成成分に対するアニオン性ビニルモノマーのmol%を示す。
【0046】
本発明のモノマー混合液に用いる溶媒としては、各構成成分を溶解または分散させ、重合反応に悪影響を与えないものであれば特に限定されないが、通常、水を用いることが好ましい。
【0047】
重合反応は、モノマー混合液にラジカル重合開始剤を加え、撹拌しながら、反応温度50〜100℃程度で行えばよい。反応時間は1〜10時間程度である。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、またはこれらと亜硫酸水素ナトリウムのごとき還元剤とを組み合わせた形のレドックス系重合開始剤等の通常のラジカル重合開始剤を使用できる。また、前記ラジカル重合開始剤には、アゾ系開始剤を使用してもよい。ラジカル重合開始剤の使用量は、各モノマー混合液中の構成成分の総重量和に対し0.05〜2.0重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%である。この場合、重合反応を十分に進行することができ、両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを高分子量化できる。なお、各モノマー混合液を反応溶液に投入後、過酸化物系の重合開始剤のみを投入して後重合反応と架橋反応を実施してもよい。
【0048】
本発明の紙力増強剤は、かかる両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの水溶液をそのまま用いてもよいが、通常は、固形分濃度を0.01〜2.0重量%程度まで水等で希釈して調製し使用することが好ましい。また、製紙用サイズ剤その他の製紙用添加剤を配合して調製してもよい。
【0049】
本発明の紙力増強剤は、目的とする紙の種類や使用するパルプ繊維スラリーの種類に限定されず、紙の製造に使用することができる。紙の種類としては、ライナー原紙、中芯原紙、紙管原紙、白板紙、クラフト紙、上質紙、新聞紙などが挙げられ、パルプスラリーとしては、クラフトパルプ、サルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプ、サーモメカニカルパルプ等の晒あるいは未晒高収率のパルプ、新聞古紙、雑誌古紙、ダンボール古紙、脱墨古紙等の古紙パルプなどが挙げられる。
【0050】
本発明の紙力増強剤の添加量は、抄紙する際に用いる水の電荷がプラスにならない範囲で、上記紙やパルプスラリーの種類、抄紙条件によって適宜決定すればよいが、通常は、紙力増強剤をアクリルアミド系反応物の固形分重量換算で、パルプスラリーの固形分重量に対し、0.1重量%以上である。また、パルプスラリーには硫酸アルミニウムやサイズ剤、その他の製紙用添加剤を添加してもよい。
【0051】
上記紙力増強剤を用いて得られた紙もまた本発明の一つである。紙の種類は特に限定されず、上述した紙が挙げられる。本発明の紙力増強剤を用いた場合、既存紙力剤に比べ電気伝導度の高い水を用いて抄紙する際に特に効果が高いため、特に古紙の使用比率が高く、高い電気伝導度の水を使用している場合の多いライナー原紙、中芯原紙、紙管原紙などに用いることが好適である。
【0052】
本発明の紙の製造方法は、電気伝導度が3mS/cm以上のパルプスラリーに上記両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを含有する紙力増強剤を添加した後に抄紙する工程を含む。3mS/cm以上のパルプスラリーに上記両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを含有する紙力増強剤を添加する以外は、一般的な、紙の製造方法と同様の条件を採用できる。この製造方法により、高い電気伝導度のパルプスラリーを用いて抄紙する場合においても、高い濾水性・歩留まり性を発揮しつつ、過度な凝集を起こさず、良好な地合いを有し、紙力効果を向上させることができる。
尚、本発明の紙の製造方法は電気伝導度3mS/cm以上で明確な効果が現れるが、3mS/cm未満の電気伝導度でも高い効果を発揮する。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら各例に限定されるものではない。尚、各例中、部及び%は特記しない限りすべて重量基準である。各例の物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0054】
(1)粘度
B型粘度計を用いて、25℃にて測定した。
(2)重量平均分子量
以下の測定条件にて測定した。
GPC本体:東ソー(株)製
カラム:東ソー(株)製ガードカラムPWXL1本およびGMPWXL2本(カラムの温度40℃に設定した。)
溶離液:N/2酢酸緩衝液(N/2酢酸(和光純薬工業(株)製)+N/2酢酸ナトリウム(キシダ化学(株)製)水溶液、pH4.2)
流速:0.8ml/分
検出器:
RALLS法:ビスコテック社製TDA MODEL301(濃度検出器および90°光散乱検出器および粘度検出器(各検出器の温度を40℃に設定した。)。
測定サンプル:両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを脱イオン水で固形分0.5%に希釈し、苛性ソーダにてpH10〜12に調整する。その後、80℃以上の湯浴に1時間浸した後、硫酸でpH4〜5に調整し上記溶離液で0.025%に希釈して測定した。
(3)濁度の測定方法
濁度計:ANALITE NEPHELOMETER 152(Mc Van Instruments社製)
赤外波長:900nm
標準物質:ホルマジン標準液 400NTU、和光純薬工業(株)製)
サンプル濃度:1%(紙力増強剤濃度)
サンプル希釈用の水:脱イオン水を硫酸ナトリウムにて4mS/cm・25℃に調整した水
サンプル温度:25℃
測定方法:1%希釈液をスターラーにて500rpmで攪拌しつつ、pHを高める場合は1%苛性ソーダ液、pHを低くする場合は1%硫酸液をpHを0.1ずつ変化させるように滴下し、pHに対する濁度の値を測定する。濁度値が安定しない時は安定するまで待ち、安定したところの数値を濁度値とする。測定サンプルはpHを高める時はpHを高める時の濁度測定にのみ使用し、pHを低くする時はpHを低くする時の濁度測定にのみ使用する。
【0055】
実施例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および3つの滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水276.1部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、90℃まで加熱した。滴下ロート(1)にアクリルアミド70.5部(21.3mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート58.7部(8.0mol%)、イタコン酸2.4部(0.4mol%)、メタリルスルホン酸ナトリウム1.11部(0.15mol%)、62.5%硫酸28.7部、メチレンビスアクリルアミド0.36部(0.05mol%)、N,N−ジメチルアクリルアミド0.23部(0.05mol%)、およびイオン交換水218.9部を仕込み、硫酸によりpHを3.0付近に調整した(混合液(I))。また滴下ロート(2)にアクリルアミド203.9部(61.4mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート58.7部(8.0mol%)、イタコン酸2.4部(0.4mol%)、メタリルスルホン酸ナトリウム1.11部(0.15mol%)、62.5%硫酸28.7部、メチレンビスアクリルアミド0.36部(0.05mol%)、N,N−ジメチルアクリルアミド0.23部(0.05mol%)、およびイオン交換水466.6部を仕込み、硫酸によりpHを3.0付近に調整した(混合液(II))。滴下ロート(3)に過硫酸アンモニウム0.6部とイオン交換水180部を仕込んだ。次に、滴下ロート(3)より系内触媒を約3時間かけて滴下した。並行して滴下ロート(1)、(2)のモノマー混合液(I)、(II)をこの順番に一定流量で約3時間かけて滴下した。滴下終了後、過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を入れ1時間保温し、イオン交換水580部を投入し、固形分20.0%、粘度(25℃)が8,500mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例で得られた共重合体の全モノマー組成を表1に、その合成に用いたモノマー混合液(I)および(II)の組成を表2、および得られた水溶性ポリマーの性状値を表3に示す。
【0056】
実施例2、3
表1に示すようにモノマー組成を変更し、各モノマー混合液のモノマー配合を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行い両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを得た。得られた水溶性ポリマーの性状値を表3に示す。
【0057】
実施例4
上記と同様の反応容器にイオン交換水984.3部、アクリルアミド206.7部(66.7mol%)、60%のジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級化物水溶液117.6部(5.7mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート39.1部(5.7mol%)、イタコン酸2.3部(0.4mol%)、メタリルスルホン酸ナトリウム1.38部(0.2mol%)および62.5%硫酸19.1部を仕込み、硫酸によりpHを3.0付近に調整した(モノマー混合液(I))。反応容器内のモノマーを攪拌溶解し、窒素ガスを吹き込みながら60℃まで昇温し、反応系内の酸素を除去した。攪拌しながら過硫酸アンモニウム0.6gを加え、重合を開始した。さらに次段階として滴下ロート(1)にアクリルアミド51.6部(16.6mol%)、60%のジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級化物水溶液6.2部(0.3mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート2.1部(0.3mol%)、イタコン酸20.4部(3.6mol%)、62.5%硫酸1.0部、N,N−ジメチルアクリルアミド2.16部(0.5mol%)およびイオン交換水145.1部を仕込み、硫酸を用いてpH3.0付近に調整した(モノマー混合液(II))。フラスコ内が65℃になった時点から30分かけてモノマー混合液(II)を滴下した。滴下終了後過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を入れ1時間保温し、イオン交換水470部を投入し、固形分20.0%、粘度(25℃)が8,600mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例で得られた共重合体の全モノマー組成を表1に、その合成に用いたモノマー混合液(I)および(II)の組成を表2、および得られた水溶性ポリマーの性状値を表3に示す。
【0058】
実施例5〜8
表1に示すようにモノマー組成を変更し、各モノマー混合液のモノマー配合を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行い両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを得た。得られた水溶性ポリマーの性状値を表3に示す。
【0059】
実施例9
上記と同様の反応容器にイオン交換水500.5部、アクリルアミド83.1部(23.6mol%)、60%のジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級化物水溶液18.8部(0.8mol%)、75%のジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級化物水溶液14.3部(0.8mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート24.9部(3.2mol%)、イタコン酸1.6部(0.25mol%)、メタリルスルホン酸ナトリウム1.31部(0.17mol%)、62.5%硫酸12.2部、メチレンビスアクリルアミド0.25部(0.033mol%)およびN,N−ジメチルアクリルアミド0.16部(0.033mol%)を仕込み、硫酸によりpHを3.0付近に調整した(モノマー混合液(I))。反応容器内のモノマーを攪拌溶解し、窒素ガスを吹き込みながら60℃まで昇温し、反応系内の酸素を除去した。攪拌しながら過硫酸アンモニウム0.6gを加え、重合を開始した。さらに次段階として滴下ロート(1)にアクリルアミド124.1部(35.2mol%)、60%のジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級化物水溶液2.3部(0.1mol%)、75%のジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級化物水溶液1.8部(0.1mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート3.1部(0.4mol%)、イタコン酸1.6部(0.25mol%)、メタリルスルホン酸ナトリウム1.31部(0.17mol%)、62.5%硫酸1.5部、メチレンビスアクリルアミド0.25部(0.033mol%)、N,N−ジメチルアクリルアミド0.16部(0.033mol%)およびイオン交換水244.7部を仕込み、硫酸を用いてpH3.0付近に調整した(モノマー混合液(II))。また滴下ロート(2)にアクリルアミド112.85部(32.0mol%)、60%のジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級化物水溶液2.3部(0.1mol%)、75%のジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級化物水溶液1.8部(0.1mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート3.1部(0.4mol%)、イタコン酸12.9部(2mol%)、メタリルスルホン酸ナトリウム1.31部(0.17mol%)、メチレンビスアクリルアミド0.25部(0.033mol%)、N,N−ジメチルアクリルアミド0.16部(0.033mol%)およびイオン交換水244.7部を仕込み、硫酸を用いてpH3.0付近に調整した(モノマー混合液(III))。滴下ロート(3)に過硫酸アンモニウム0.6部とイオン交換水180部を仕込んだ。次に、フラスコ内が65℃になった時点から滴下ロート(3)より系内触媒を約3時間かけて滴下した。並行して滴下ロート(1)、(2)のモノマー混合液(I)、(II)をこの順番に一定流量で約3時間かけて滴下した。滴下終了後過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を入れ1時間保温し、イオン交換水450部を投入し、固形分20.0%、粘度(25℃)が8,500mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例で得られた共重合体の全モノマー組成を表1に、その合成に用いたモノマー混合液(I)、(II)および(III)の組成を表2、および得られた共重合体水溶液の性状値を表3に示す。
【0060】
実施例10〜19
表1に示すようにモノマー組成を変更し、各モノマー混合液のモノマー配合を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行い両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを得た。得られた水溶性ポリマーの性状値を表3に示す。
【0061】
比較例1
上記と同様の反応容器にイオン交換水1165.4部、アクリルアミド329.9部(90.8mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート48.2部(6mol%)、イタコン酸16.6部(2.5mol%)、メタリルスルホン酸ナトリウム4.04部(0.5mol%)、62.5%硫酸23.6部、メチレンビスアクリルアミド0.79部(0.1mol%)およびN,N−ジメチルアクリルアミド0.51部(0.1mol%)を仕込んだ(モノマー混合液(I))。反応容器内のモノマーを攪拌溶解し、窒素ガスを吹き込みながら60℃まで昇温し、反応系内の酸素を除去した。攪拌しながら過硫酸アンモニウム0.6gを加え、重合を開始した。その後、90℃で3時間保持することで重合を完結させた。イオン交換水480部を投入し、固形分20.0%、粘度(25℃)が8,500mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例で得られた共重合体の全モノマー組成を表1に、その合成に用いたモノマー混合液の組成を表2、および得られた共重合体水溶液の性状値を表3に示す。
【0062】
比較例2
上記と同様の反応容器にイオン交換水276.1部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、90℃まで加熱した。滴下ロート(1)にアクリルアミド329.9部(90.8mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート48.2部(6mol%)、イタコン酸16.6部(2.5mol%)、メタリルスルホン酸ナトリウム4.04部(0.5mol%)、62.5%硫酸23.6部、メチレンビスアクリルアミド0.79部(0.1mol%)、N,N−ジメチルアクリルアミド0.51部(0.1mol%)およびイオン交換水719.3部を仕込み、硫酸によりpHを3.0付近に調整した(モノマー混合液(I))。滴下ロート(2)に過硫酸アンモニウム0.6部とイオン交換水180部を仕込んだ。次に、滴下ロート(2)より系内触媒を約3時間かけて滴下した。並行して滴下ロート(1)のモノマー混合液を一定流量で約3時間かけて滴下した。滴下終了後過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を入れ1時間保温し、イオン交換水480部を投入し、固形分20.0%、粘度(25℃)が8,600mPa・sの共重合体水溶液を得た。本比較例で得られた共重合体の全モノマー組成を表1に、その合成に用いたモノマー混合液(I)の組成を表2、および得られた共重合体水溶液の性状値を表3に示す。
【0063】
比較例3〜10
表1に示すようにモノマー組成を変更し、各モノマー混合液のモノマー配合を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行い両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを得た。得られた水溶性ポリマーの性状値を表3に示す。











【0064】
【表1】
【0065】
また、実施例中の略語の名称を以下に示す。
AM:アクリルアミド
DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
DML:ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級化物
APDM:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
BQ:ジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級化物
IA:イタコン酸
AA:アクリル酸
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
MBAA:メチレンビスアクリルアミド
SMAS:メタリルスルホン酸ナトリウム
【0066】
【表2】
【0067】
本実施例におけるカチオン性モノマー(b)、アニオン性モノマー(c)、架橋性モノマー(d)を各モノマー混合液に振り分ける場合、表2に記載したmol%となるように各モノマーを同じ比率で振り分けた。

【0068】
【表3】

【0069】
[紙力増強剤の性能評価]
段ボ−ル古紙をナイアガラ式ビーターにて叩解し、カナディアン・スタンダ−ド・フリ−ネス(C.S.F)350mlに調整した紙料に硫酸ナトリウムを添加して電気伝導度を1.0mS/cm、3.0mS/cm及び4.0mS/cmの3種類に調整した。各電気伝導度の紙料を用いて、硫酸バンドをパルプスラリー固形分重量に対して固形分1.0%添加した後、各実施例および比較例で得られた両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマー水溶液を紙力増強剤として対パルプスラリー固形分重量に対し、それぞれ固形分1.0%添加した。各パルプスラリーのpHは6.5にそれぞれ調整して評価した。当該スラリーの濾水量及び歩留性を測定した後、当該スラリーをタッピ・シートマシンにて脱水し、5kg/cm で2分間プレスして、坪量150g/m となるよう抄紙した。次いで回転型乾燥機で105℃において4分間乾燥し、23℃、50%R.H.の条件下に24時間調湿したのち、圧縮強度、内部強度、定着率を測定した。それらの結果を表4に示す。なお、電気伝導度、濾水量、歩留性、破裂強度、圧縮強度、紙力剤定着率、地合変動係数は、以下の方法で測定した。
【0070】
(1)電気伝導度
pH/COND METER D−54((株)堀場製作所製)を用いて測定した。
(2)濾水量
カナディアン・スタンダ−ド・フリ−ネス(C.S.F)を用いてJIS P 8121に準拠して測定した。
(3)歩留性(OPR)
DDJ(Dynamic Drainage Jar)を用いて、測定した。DDJ前サンプルの濃度及びDDJ操作により抜き出した初期白水の濃度を求め、それらを用いて以下の式をよりOPRを算出した。
OPR(%)=(DDJ前濃度―初期白水濃度)÷(DDJ前濃度)×100
(4)破裂強度
JIS P 8131に準拠して測定した。
(5)圧縮強度
JIS P 8126に準拠して測定し、比圧縮強度(N・m/g)で示した。
(6)紙力剤定着率
窒素分析装置(三菱化学(株)製)を用いて、抄紙した紙の窒素分を測定した後、下記の計算式から算出した。
定着率(%)=(紙力増強剤添加紙の窒素分−紙力増強剤無添加紙の窒素分)÷(紙力増強剤の理論窒素分×紙力増強剤添加率)×100
なお、理論窒素分とは、紙力増強剤のモノマー比、及びモノマーの組成式から算出した紙力増強剤中の窒素の重量比
(7)地合変動係数
成紙を通過してくる光(輝度)をパーソナル画像処理システムHyper−700(OBS製)に取り込み、輝度分布を統計解析した。なお、地合変動係数は、測定値が小さい程、地合が良好である。


【0071】
【表4】

【0072】
表4より本発明の紙力増強剤は本願発明の範囲外となる紙力増強剤に対して、紙に高い強度を与えることが明らかと言える。


図1