(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354418
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】温度検出装置並びに給湯システム
(51)【国際特許分類】
G01K 7/24 20060101AFI20180702BHJP
F24H 1/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
G01K7/24 M
F24H1/00 602E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-150085(P2014-150085)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2016-24129(P2016-24129A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100107445
【弁理士】
【氏名又は名称】小根田 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】玉井 貴啓
(72)【発明者】
【氏名】杉江 剛史
(72)【発明者】
【氏名】安田 ▲祥▼辰
(72)【発明者】
【氏名】松田 考将
【審査官】
平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−39212(JP,A)
【文献】
特開平10−197359(JP,A)
【文献】
特開2000−18707(JP,A)
【文献】
特開平11−248513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と、サーミスタ及び分圧抵抗からなり温度検出用電源電圧を分圧して温度検出信号を前記制御部に出力する温度検出部と、前記温度検出信号を強制的に所定の回路チェック用電位とするか否かを前記制御部からの制御信号に基づいて切り替える回路チェック部と、前記温度検出用電源電圧よりも高電圧であって前記サーミスタが自己発熱する加熱用電源電圧を前記サーミスタに印加するか否かを前記制御部からの制御信号に基づいて切り替える加熱用電源電圧供給部と、前記制御部に入力する前記温度検出信号の電位を所定の制限電圧以下に制限する入力電圧制限部とを備え、
前記制御部は、前記加熱用電源電圧供給部により加熱用電源電圧を前記サーミスタに印加させ且つ前記回路チェック部により前記温度検出信号を前記回路チェック用電位としていないときの前記温度検出信号の値に基づいて前記サーミスタから前記制御部までの信号入力経路の断線の有無を判定する第1の回路異常有無判定と、前記加熱用電源電圧供給部により加熱用電源電圧を前記サーミスタに印加させず且つ前記回路チェック部により前記温度検出信号を強制的に前記回路チェック用電位としたとき前記温度検出信号の値に基づいて前記サーミスタから前記制御部までの信号入力経路の断線の有無を判定する第2の回路異常有無判定とを行うように構成されていることを特徴とする温度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度検出装置において、前記制御部は、前記サーミスタに前記加熱用電源電圧を印加することにより前記サーミスタを自己発熱させた後、前記加熱用電源電圧の印加を停止させた際の前記温度検出信号の変動状態に基づいて前記サーミスタ周辺に水が存在するか否かを判定する残水検出処理を実行可能に構成され、前記第1の回路異常有無判定は、前記残水検出処理による前記サーミスタの前記自己発熱工程において行われることを特徴とする温度検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度検出装置において、前記制御部は所定の温度監視制御を実行可能に構成され、該温度監視制御の実行中、前記加熱用電源電圧を前記サーミスタに印加させず且つ前記温度検出信号を前記回路チェック用電位としていないときの前記温度検出信号に基づいて前記サーミスタ周辺の温度を判定する温度判定と、前記第2の回路異常有無判定とを交互に行うことを特徴とする温度検出装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載の温度検出装置を備え且つ高温差し湯機能を有する給湯システムであって、高温差し湯を行う前に前記第1の回路異常有無判定を行うとともに、高温差し湯中に前記第2の回路異常有無判定を行うことを特徴とする給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内の湯温などの温度を検出するための温度検出装置に関し、特に、温度検出信号の入力経路の断線等の異常を検出可能な温度検出装置、並びに、給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種従来の温度検出装置として、例えば、下記の特許文献1,2又は3に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−230477号公報
【特許文献2】特許第5278102号公報
【特許文献3】特開平11−248513号公報
【0004】
特許文献1又は2は、給湯器の入水温度や出頭温度などの各種温度を検出するための温度検出装置であって、サーミスタとその電源との間に分圧用の抵抗を接続し、この抵抗とサーミスタとの接続点から出力される検出温度アナログ信号を、RCフィルタ及び電流制限抵抗を介してマイクロプロセッサのA/D入力ポートに入力させ、該A/D入力ポートの電位をマイクロプロセッサで読み取ることによりサーミスタの温度を検出するように構成している。
【0005】
さらに、特許文献1の温度検出装置では、上記A/D入力ポートをプルアップするための内部プルアップ抵抗と、該内部プルアップ抵抗の接続/非接続を切り替えるスイッチ回路とを設け、内部プルアップをしないときの温度検出値(デジタル変換データ)と、内部プルアップをしたときの温度検出値(デジタル変換データ)とに基づいて、上記接続点からマイ黒プロセッサのA/D入力ポートまでの線路の接続不良(いわゆるピン浮き等)を検出可能としている。
【0006】
また、特許文献2の温度検出装置では、上記A/D入力ポートを、マイクロプロセッサの設定によって出力ポートに設定変更可能に構成し、このA/D入力ポートを出力ポートに変更してLOW信号を出力した後にA/D入力ポートに変更し、このときのA/D入力ポートのアナログ入力信号の変化状態に基づいて、上記接続点からマイ黒プロセッサのA/D入力ポートまでの線路の接続不良(いわゆるピン浮き等)を検出可能としている。
【0007】
特許文献3は、給湯器の缶体温度を検出するための温度検出装置であって、缶体内の残水の有無を検出する機能を具備するものである。すなわち、缶体温度を検出するサーミスタ(14a)とその電源(5V電源)との間に分圧用の抵抗(R1)を接続し、この抵抗(R1)とサーミスタ(14a)との接続点から出力される検出温度アナログ信号を電流制限抵抗(R3)を介してマイクロプロセッサ(25)のA/D入力ポート(P1)に入力させ、該A/D入力ポートの電位をマイクロプロセッサで読み取ることによりサーミスタの温度を検出するように構成している。また、サーミスタには、残水検知用高電圧(15V電源)がスイッチング素子(Tr)を介して接続され、該スイッチング素子はマイクロプロセッサの制御信号出力ポートから出力される制御信号によってオン/オフ制御される。上記A/D入力ポートは、マイクロプロセッサの制御によって入力ポート若しくは出力ポートのいずれかとして機能する入出力ポートにより構成されている。
【0008】
そして、残水の有無を検知する際には、まずA/D入力ポートを出力ポートに変更してLOW出力状態とし、上記スイッチング素子をオンすることでサーミスタに残水検知用高電圧を印加してサーミスタを自己発熱させ、その後上記スイッチング素子をオフするとともにA/D入力ポートを入力ポートに変更して、缶体内に残水が有るときの無いときのサーミスタの出力電圧が異なるという特性を利用して残水の有無を検出可能に構成している。
【0009】
上記特許文献1〜3はいずれも給湯器内部の各種温度検出用の温度検出装置として本願出願人が開示したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願出願人は、浴槽内の湯水を燃焼缶体に循環させることによる追い焚き機能を有さず、浴槽内への設定湯温の湯水の落とし込み機能並びに高温の差し湯による追い焚き機能を具備する給湯システムの製造・販売を行っている。かかる給湯システムは、例えば
図4に示すように、給湯器1の風呂出湯口2に一端部が接続された風呂往き管3の他端部が浴槽4の側壁に取り付けられた出湯アダプタ5に接続されている。給湯器1にはリモコン6が互いに通信可能に接続されており、給湯器1は、リモコン6の操作によって、設定温度の湯水を風呂往き管3を介して浴槽4に出湯する湯張り動作や、高温(例えば80℃)の差し湯を風呂往き管3を介して浴槽4に出湯する追い焚き動作を行うように構成されている。
【0011】
ここで、高温差し湯による追い焚き動作を行う際に、浴槽4内の残水が無いと高温の差し湯のみが浴槽4内に溜められてしまうため、高温差し湯を行う前に浴槽4内の残水の有無を検出する必要がある。そのため、上記特許文献3記載の残水検知機能付き温度検出装置を浴槽内の湯温検出に転用し、浴槽サーミスタTHを出湯アダプタ5に内蔵させ、この浴槽サーミスタTHの検出信号をリモコン6に入力させて、該リモコン6により残水有無の検出と浴槽内湯温の検出とを行わせることが好ましい。
【0012】
さらに、温度検出装置による温度検出動作に異常が無いか否かを確認できるようにするために、上記特許文献1又は2に記載の回路異常検出方法を採用することが好ましい。
【0013】
しかし、上記特許文献1に記載の回路異常検出方法では、A/D入力ポートを内部プルアップすることにより回路異常判定を行うものであるが、残水有無検知処理中は残水検知用高電圧がサーミスタに印加されているために内部プルアップすること自体に意味がなく、また、残水有無検知処理前に回路異常判定を行うものとすると当該判定後に生じたピン浮きを検知できず、残水有無の検知が正常に行われたことを保証できない。
【0014】
また、上記特許文献2に記載の回路異常検出方法でも同様に残水有無検知処理中は異常検出処理を行うことが出来ず、残水有無検知処理前に回路異常判定を行うものとすると当該判定後に生じたピン浮きを検知できず、残水有無の検知が正常に行われたことを保証できない。
【0015】
そこで、本発明は、浴槽内に高温差し湯を行う際の残水有無検知処理中、並びに、高温差し湯中の浴槽内湯温検出中のいずれにおいても断線やピン浮き等の回路異常判定を行うことのできる温度検出装置、並びに、給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、次の技術的手段を講じた。
【0017】
すなわち、本発明の温度検出装置は、制御部と、サーミスタ及び分圧抵抗からなり温度検出用電源電圧を分圧して温度検出信号を前記制御部に出力する温度検出部と、前記温度検出信号を強制的に所定の回路チェック用電位とするか否かを前記制御部からの制御信号に基づいて切り替える回路チェック部と、前記温度検出用電源電圧よりも高電圧であって前記サーミスタが自己発熱する加熱用電源電圧を前記サーミスタに印加するか否かを前記制御部からの制御信号に基づいて切り替える加熱用電源電圧供給部と、前記制御部に入力する前記温度検出信号の電位を所定の制限電圧以下に制限する入力電圧制限部とを備え、前記制御部は、前記加熱用電源電圧供給部により加熱用電源電圧を前記サーミスタに印加させ且つ前記回路チェック部により前記温度検出信号を前記回路チェック用電位としていないときの前記温度検出信号の値に基づいて前記サーミスタから前記制御部までの信号入力経路の断線の有無を判定する第1の回路異常有無判定と、前記加熱用電源電圧供給部により加熱用電源電圧を前記サーミスタに印加させず且つ前記回路チェック部により前記温度検出信号を強制的に前記回路チェック用電位としたときの前記温度検出信号の値に基づいて前記サーミスタから前記制御部までの信号入力経路の断線の有無を判定する第2の回路異常有無判定とを行うように構成されていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0018】
かかる本発明の温度検出装置によれば、温度検出部が出力する温度検出信号の電位に基づいて制御部がサーミスタ周辺の雰囲気温度を検出できる。また、加熱用電源電圧供給部によって加熱用電源電圧をサーミスタに印加することによってサーミスタを自己発熱させ、加熱用電源電圧の印加を停止した後の温度検出信号の変化状態(すなわち、サーミスタの冷却速度)に基づいて、サーミスタ周辺に存在する媒体の熱伝導率を判定することができるので、サーミスタ周辺に水が存在するのか空気が存在するのかを判定でき、残水検知などに用いることができる。さらに、サーミスタを自己発熱させるために加熱用電源電圧をサーミスタに印加させているときには第1の回路異常有無判定を行うことができ、この場合、温度検出信号がサーミスタの出力電圧範囲の上限近傍の所定の閾値以上となっていれば正常であると判定する一方、上記閾値未満であればサーミスタから制御部までの信号入力経路の断線であると判定させることができ、かかる異常判定がなされた場合には所定の報知処理や、一連の処理の中断等を行うことができる。また、サーミスタによる温度検出中は、定期的に若しくは不定期に第2の回路異常有無判定を行うことによって、サーミスタを自己発熱させることなくサーミスタから制御部までの信号入力経路の断線の発生を検知することができる。
【0019】
上記本発明の温度検出装置において、前記制御部は、前記サーミスタに前記加熱用電源電圧を印加することにより前記サーミスタを自己発熱させた後、前記加熱用電源電圧の印加を停止させた際の前記温度検出信号の変動状態に基づいて前記サーミスタ周辺に水が存在するか否かを判定する残水検出処理を実行可能に構成され、前記第1の回路異常有無判定は、前記残水検出処理による前記サーミスタの前記自己発熱工程において行われるものであってよい(請求項2)。これによれば、残水検出処理のためのサーミスタの加熱中に、サーミスタから制御部までの信号入力経路の断線検知を行うことができ、回路構成の簡素化や処理時間の短縮等を図ることができる。
【0020】
また、前記制御部は温度監視制御を実行可能に構成され、該温度監視制御の実行中、前記加熱用電源電圧を前記サーミスタに印加させず且つ前記温度検出信号を前記回路チェック用電位としていないときの前記温度検出信号に基づいて前記サーミスタ周辺の温度を判定する温度判定と、前記第2の回路異常有無判定とを交互に行うものとすることができる(請求項3)。これによれば、温度監視制御の実行中、温度検出信号に基づくサーミスタ周辺温度の判定を行いつつ、温度検出信号を間欠的に回路チェック用電位としたときの制御部への温度検出信号の入力値に基づく信号入力経路の断線有無判定を行わせることができ、例えば高温差し湯中に温度監視を行いながら断線有無判定を行うことにより、温度監視の信頼性を保証できる。
【0021】
また、本発明は、上記温度検出装置を備え且つ高温差し湯機能を有する給湯システムであって、高温差し湯を行う前に前記第1の回路異常有無判定を行うとともに、高温差し湯中に前記第2の回路異常有無判定を行うように構成することができる(請求項4)。さらに好ましくは、第1の回路異常有無判定は、高温差し湯を行う前の上記残水検出処理において行うことができ、また、第2の回路異常有無判定は、高温差し湯を行っている際の上記温度監視制御中に行うことができる。これによれば、高温差し湯を行う前の浴槽内の残水確認をより確実に行うことができるとともに、高温差し湯を行っている時の浴槽内湯温の検出をより確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1に係る温度検出装置によれば、温度検出部が出力する温度検出信号の電位に基づいて制御部がサーミスタ周辺の雰囲気温度を検出できる。また、加熱用電源電圧供給部によって加熱用電源電圧をサーミスタに印加することによってサーミスタを自己発熱させ、加熱用電源電圧の印加を停止した後の温度検出信号の変化状態(すなわち、サーミスタの冷却速度)に基づいて、サーミスタ周辺に存在する媒体の熱伝導率を判定することができるので、サーミスタ周辺に水が存在するのか空気が存在するのかを判定でき、残水検知などに用いることができる。さらに、サーミスタを自己発熱させるために加熱用電源電圧をサーミスタに印加させているときには第1の回路異常有無判定を行うことができ、この場合、温度検出信号がサーミスタの出力電圧範囲の上限近傍の所定の閾値以上となっていれば正常であると判定する一方、上記閾値未満であればサーミスタから制御部までの信号入力経路の断線であると判定させることができ、かかる異常判定がなされた場合には所定の報知処理や、一連の処理の中断等を行うことができる。また、サーミスタによる温度検出中は、定期的に若しくは不定期に第2の回路異常有無判定を行うことによって、サーミスタを自己発熱させることなくサーミスタから制御部までの信号入力経路の断線の発生を検知することができる。
【0023】
本発明の請求項2に係る温度検出装置によれば、残水検出処理のためのサーミスタの加熱中に、サーミスタから制御部までの信号入力経路の断線検知を行うことができ、回路構成の簡素化や処理時間の短縮等を図ることができる。
【0024】
本発明の請求項3に係る温度検出装置によれば、温度監視制御の実行中、温度検出信号に基づくサーミスタ周辺温度の判定を行いつつ、温度検出信号を強制的に回路チェック用電位としたときの制御部への温度検出信号の入力値に基づく信号入力経路の断線有無判定を行わせることができ、例えば高温差し湯中に温度監視を行いながら断線有無判定を行うことにより、温度監視の信頼性を保証できる。
【0025】
本発明の請求項4に係る高温差し湯機能を有する給湯システムによれば、高温差し湯を行う前の浴槽内の残水確認をより確実に行うことができるとともに、高温差し湯を行っている時の浴槽内湯温の検出をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る温度検出装置の概略回路図である。
【
図2】高温差し湯による追い焚き動作制御における各動作の時系列図である。
【
図3】高温差し湯中の残水有無判定と第2の回路異常有無判定のタイミングを示す時系列図である。
【
図4】温度検出装置を具備する給湯システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る温度検出装置の回路構成を示しており、該温度検出装置は
図4に示す給湯システムのリモコン6によって主構成されている。給湯システムの概略構成は既に説明しているので省略する。
【0029】
本実施形態のリモコン6は、リモコン6の各種制御を担う制御用マイコン7(制御部)と、浴槽サーミスタTH及び分圧抵抗R1からなり温度検出用電源電圧(例えば5V)を分圧して温度検出信号をマイコン7のサーミスタA/D入力ポートにRCフィルタ8及び電流制限抵抗R2を介して出力する温度検出部9と、マイコン7に入力される温度検出信号を強制的に所定の回路チェック用電位(例えば、0V)とするか否かをマイコン7の回路チェック信号出力ポートからの制御信号に基づいて切り替える回路チェック部10と、サーミスタTHが自己発熱する加熱用電源電圧(例えば29V)をサーミスタTHに印加するか否かをマイコン7のサーミスタ加熱信号出力ポートからの制御信号に基づいて切り替える加熱用電源電圧供給部11と、マイコン7のサーミスタA/D入力ポートに入力する温度検出信号の電位を所定の制限電圧以下(例えば5V以下)に制限する入力電圧制限部12とを備えている。この制限電圧は、温度検出用電源電圧と同じとするのが好ましいが、マイコン7が故障しない範囲で温度検出用電源電圧よりも高電圧であってもよい。
【0030】
マイコン7は従来周知のものであってよく、上記サーミスタA/D入力ポートはアナログ信号入力ポートによって構成でき、サーミスタ加熱信号出力ポート及び回路チェック信号出力ポートはデジタル信号出力ポートによって構成できる。また、マイコン7は、サーミスタA/D入力ポートに入力された温度検出信号の電位が0Vのときに0x00、5Vのときに0xFFとなるようにA/D変換して、所定のバッファにデジタルデータとして温度検出信号の入力値を記憶するA/D変換部を備えている。
【0031】
温度検出部9は、直列に接続された上記サーミスタTH及び分圧抵抗R1によって主構成され、サーミスタTHの正側端子が分圧抵抗R1を介して温度検出用電源電圧に接続され、サーミスタTHの負側端子はグラウンドに接続されており、サーミスタTHと分圧抵抗R1との接続点から温度検出信号が出力されるようになっている。
【0032】
回路チェック部10は、サーミスタ加熱信号出力ポートからの制御信号によってオン/オフ切替動作するスイッチング素子、典型的にはトランジスタTr1によって主構成されている。本実施形態では、トランジスタTr1としてnpn型が用いられ、そのベースが抵抗R3を介して上記回路チェック信号出力ポートに接続され、コレクタがサーミスタTHの正側端子、すなわち温度検出部9の出力部に接続され、エミッタがグラウンドに接続されている。したがって、回路チェック信号出力ポートからHIGH信号を出力してトランジスタTr1をオンすると、温度検出部9の出力部がグラウンドに短絡されて、温度検出信号の電位がほぼ0V(回路チェック用電位)に強制的にプルダウンされるように構成されている。また、回路チェック信号出力ポートからLOW信号を出力してトランジスタTr1をオフすると、サーミスタTHが検出する温度に依存する電位の温度検出信号がサーミスタA/D入力ポートに出力される。
【0033】
加熱用電源電圧供給部11は、サーミスタ加熱信号出力ポートからの制御信号によってオン/オフ動作するスイッチング素子、典型的にはトランジスタTr2によって主構成されている。本実施形態では、トランジスタTr2としてpnp型のものが用いられ、そのベースが抵抗R4を介して上記サーミスタ加熱信号出力ポートに接続され、コレクタが加熱用電源電圧に抵抗R5を介して接続され、エミッタがサーミスタTHの正側端子に接続されている。したがって、サーミスタ加熱信号出力ポートからLOW信号を出力してトランジスタTr2をオンすると、サーミスタTHに加熱用電源電圧が印加されてサーミスタTHが自己発熱するように構成されている。なお、このときにサーミスタA/D入力ポートに過大な電圧が入力されてしまうことが、上記入力電圧制限部12によって防止されている。入力電圧制限部12は、従来公知の種々の回路構成とすることができる。また、上記温度検出用電源電圧への逆流を防止するダイオードなどの保護回路を設けることもできる。
【0034】
上述したように、マイコン7は、高温差し湯による追い焚き動作制御を行うように構成されており、かかる追い焚き動作制御のタイムチャートの一例を
図2に示している。マイコン7は、リモコン6に設けられた追い焚きスイッチ(図示せず)の操作などの所定の追い焚き運転開始トリガーが発生すると、追い焚き動作制御を開始する。この追い焚き動作制御が開始すると、まず、浴槽サーミスタTH周辺に残水が存在するか否かを判定する残水検出処理を行い、該残水検出処理により残水が存在すると判定された場合にのみ給湯器1に対して高温差し湯を浴槽4に供給させるための指令信号を送信して浴槽内湯温が所定の設定温度に昇温するまで高温差し湯を行わせる高温差し湯制御(温度監視制御)を実行し、残水検出処理により残水が存在しないと判定された場合には高温差し湯制御を実行せずに追い焚き運転制御を中止して、浴槽4内に残水が無い旨の警告をユーザーに対して行う。
【0035】
上記残水検出処理は、トランジスタTr2をオンして浴槽サーミスタTHに加熱用電源電圧を所定時間(例えば数秒間)印加することにより浴槽サーミスタTHを自己発熱させる自己発熱工程と、トランジスタTr2をオフして加熱用電源電圧の印加を停止させた際の温度検出信号の変動状態に基づいてサーミスタ周辺に残水が存在するか否かを判定する残水有無判定工程とからなる。なお、上記残水検出処理中は、トランジスタTr1を常時オフしておく。
【0036】
本実施形態では、マイコン7は、上記自己発熱工程において温度検出信号の入力値に基づいてサーミスタTHからマイコン7までの信号入力経路の断線の有無を判定する(第1の回路異常有無判定)。すなわち、加熱用電源電圧の印加中は、入力電圧制限部12によってマイコン7のサーミスタA/D入力ポートへの入力電圧が5Vとなるはずであるので、上記自己発熱工程中のA/D入力ポートの入力電圧を監視し、A/D変換後のデジタル値として0xFFとなっていない場合にはピン浮き等による断線が生じていると判定して、追い焚き運転制御を中止するとともに断線が生じた旨の警告をユーザーに対して行う。なお、外因ノイズ等による上記デジタル値の揺らぎによって誤って異常判定を行うことのないよう、適宜のアルゴリズムにより複数のサンプル値を用いて異常判定を行うことが好ましい。一方、上記第1の回路異常有無判定によって断線が無いと判定された場合にのみ、残水有無判定工程を実行する。かかる残水有無判定工程は、上記特許文献3記載の有水検知方法と同様であるので詳細説明を省略する。なお、上記第1の回路異常有無判定は、自己発熱工程中の全期間に亘って継続して行ってもよく、また、自己発熱工程中の所定時間内のみ行ってもよい。
【0037】
次に、高温差し湯制御(温度監視制御)について説明すると、高温差し湯制御中、マイコン7は、トランジスタTr2を常時オフするとともに、
図3に示すように、所定時間(例えば100ミリ秒)毎にサーミスタA/D入力ポートの入力電圧を参照することによって浴槽4内の湯水の温度(サーミスタTHの周辺温度)を判定する温度判定処理を行い、設定された目標温度になると高温差し湯を終了させる制御信号を給湯器1に送信する。なお、上記入力電圧の参照は数百マイクロ秒毎に複数回行ってその平均値などを求めて該平均値に基づいて上記温度判定を行うことが好ましい。
【0038】
また、高温差し湯制御中、マイコン7は、上記温度判定処理とは時間的にシフトさせたタイミング(例えば、50ミリ秒程度シフトさせたタイミング)で、上記所定時間毎に間欠的にトランジスタTr1をオンして第2の回路異常有無判定処理を行うように構成されており、該第2の回路異常有無判定処理と上記温度判定処理が交互に実行されるように制御構成されている。
【0039】
この第2の回路異常有無判定処理は、トランジスタTr1をオンして温度検出信号を強制的に0V近傍にプルダウンしたときの温度検出信号の入力電圧を参照して、そのデジタル変換後の値が所定の閾値(例えば0x14)以下であればサーミスタTHからマイコン7までの信号入力経路の断線が無いと判定し、上記値が上記閾値を超えていれば断線やピン浮きの発生によるオープン故障によりサーミスタA/D入力ポートの電位が不定値となっていると判定するように構成できる。そして、断線発生を検知したときは、高温差し湯を中止してユーザーに異常発生を報知するように構成することができる。なお、上記回路異常有無判定用の入力電圧の参照も複数回行ってその平均値などに基づいて回路異常有無判定を行わせることが好ましい。また、トランジスタTr1をオンした後温度検出信号電位が0V付近に降下するまで数十ミリ秒程度を要するため、トランジスタTr1をオンした後数十ミリ秒後に回路異常有無判定用の入力電圧の参照を行うようにしている。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更できる。例えば、上記実施形態では、回路チェック部10は温度検出部9の出力を強制的に0V付近にプルダウンさせる構成としたが、温度検出用電源電圧付近までプルアップさせる構成とすることもできる。また、回路チェック部10や入力電圧制限部12をマイコン7の外部回路として図示説明したが、これらをマイコン7の内蔵回路として構成することも可能である。また、上記実施形態では、リモコン6を温度検出装置として機能させたが、浴槽サーミスタTHを給湯器内蔵の制御回路に接続して、該給湯器の制御回路を本発明の温度検出装置として機能させることも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 給湯器
4 浴槽
6 リモコン(温度検出装置)
7 制御部(マイコン)
9 温度検出部
10 回路チェック部
11 加熱用電源電圧供給部
12 入力電圧制限部
TH 浴槽サーミスタ