(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2バイパス路形成素子は、ダイオードを複数段接続した構成を有し、前記電圧制御型半導体素子のゲート容量に対する充放電時間のバランスを前記ダイオードの接続段数を変更することにより、調整することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記第1抵抗は、前記電流制御回路で前記能動素子をオン状態とする際に前記電圧制御型半導体素子のゲート電圧を前記入力信号と切り離して低下可能な抵抗値に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
前記第2抵抗は、前記第1抵抗より小さい抵抗値に設定され、前記能動素子をオン状態としたときに前記電圧制御型半導体素子のゲート電圧の変化を制限する値に設定されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の半導体装置。
前記電流制御回路は、前記電圧制御型半導体素子を流れる電流を定電流値に制限するように前記能動素子を制御する電流制限回路を備えていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の半導体装置。
前記電流制御回路は、前記電圧制御型半導体素子の異常を検出したときに、前記能動素子をオン状態に制御する異常制御回路を備えていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の半導体装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来例では、電圧制御型半導体素子のターンオン時にはゲート抵抗を介して入力信号を供給し、ターンオフ時にはゲート抵抗をスピードアップ用のダイオード及び抵抗の直列回路でバイパスしてゲート容量の放電を行うようにしている。このため、電圧制御型半導体素子のターンオン時及びターンオフ時で異なる経路が形成されることになる。
【0006】
このような半導体装置は、ラジオノイズ等の高周波(例えば数MHz)ノイズの影響を受け易く、電圧制御型半導体素子の入力信号を供給する信号線に高周波ノイズが重畳されると、電圧制御型半導体素子のゲート電位が高周波ノイズにより0〜10V程度の範囲で振動することになる。この電圧制御型半導体素子のゲート電位の振動によって、ゲート電位の充放電が振動することになる。このゲート電位の振動について
図3を用いて説明する。ここで、高周波ノイズが
図3(a)に示すように高周波の正弦波であるものとし、電圧制御型半導体素子のゲートに向かって流れる電流を正(+)方向として電圧制御型半導体素子のゲートから入力信号供給側に流れる電流を負(−)方向とする。
【0007】
入力される入力信号に高調波が重畳された場合には、
図3(c)に示すように、初期時点t20から時点t21までの区間は比較的大きなゲート抵抗を介して電圧制御型半導体素子のゲート容量を充電し、ゲート電流Igが増加する。
次いで、時点t21から時点t22までの間では、ゲート電位が負方向に増加し、電圧制御型半導体素子のゲート容量が入力信号供給側に放電されるが、スピードアップ用のダイオードの順方向電圧Vf(例えば0.6V)を超えず、スピードアップ用のダイオードはオフ状態を継続し、電流はゲート抵抗を通じて入力信号供給側に流れる。
【0008】
その後、時点t22に達すると、スピードアップ用のダイオードがオン状態となり、電圧制御型半導体素子のゲート容量が入力信号供給側にスピードアップ用のダイオード及び比較的低抵抗値に設定された抵抗を介して入力信号供給側に放電される。このため、ゲート電流が急激に負方向に増加しその後反転して時点t23で、スピードアップ用のダイオードがオフ状態に復帰すると、再び電圧制御型半導体素子のゲートからゲート抵抗を介して流れることになり、ゲート電流Igの減少が緩やかとなる。
【0009】
その後時点t24に達すると、入力信号供給側から電圧制御型半導体素子のゲート容量を充電するゲート電流が時点t20と同様に正方向へ増加を開始する。
そして、ゲート配線を流れる電流は、時点t20〜時点t21の区間に流れるゲート電流+Igの振幅より時点t21〜t24の区間で流れるゲート電流−Igの振幅の方が大きくなる。つまり、入力信号に高周波ノイズが重畳すると、ゲート電流Igの平均値は、
図3(c)で破線図示の特性線L1に示すように、0より大幅に下がることになる。
【0010】
このように入力信号に高周波ノイズが重畳すると、ゲート電流Igの平均値が0より大幅に下がるので、ゲート電圧の平均値は入力信号(5V)より下がる現象が起きる。そのため、高周波ノイズによりゲート電圧の充放電(ON/OFF)が繰り返される場合、電圧制御型半導体素子のゲート容量の充放電の速度が異なることになり、ゲート電位が見かけ上、下がることで電圧制御型半導体素子に流れる電流が小さくなり、点火コイルの2次側コイルの出力が下がるという課題がある。
そこで、本発明は、上述した従来例の課題に着目してなされたものであり、高周波ノイズの重畳時に電圧制御型半導体素子のゲート電位の低下を抑制できる半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る半導体装置の一態様は、内燃機関の点火装置に放電電圧を供給する点火コイルの一次側に接続された電圧制御型半導体素子と、電圧制御型半導体素子のゲートを制御する入力信号の供給経路に直列に介挿された第1抵抗及び第2抵抗と、電圧制御型半導体素子に流れる電流を制御する電流制御回路と、第2抵抗と並列に接続されて電圧制御型半導体素子のターンオン時にこの第2抵抗をバイパスする第1バイパス路形成素子と、第1抵抗及び第2抵抗と並列に接続され電圧制御型半導体素子のターンオフ時に第1抵抗及び第2抵抗をバイパスする第2バイパス路形成素子とを備えている。電流制御回路は、第1抵抗及び第2抵抗間に接続されてゲート電圧をプルダウンする能動素子を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、電圧制御型半導体素子のゲート容量の充放電速度の差を抑制して高周波ノイズによる電圧制御型半導体素子のゲート電位の低下を抑制し、点火コイルの二次側の出力低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に従った一実施形態に係る半導体装置を備えた内燃機関の点火制御装置について
図1を伴って説明する。
内燃機関の点火制御装置10は、
図1に示すように、一次側にバッテリ11から電源電圧が印加され、二次側に点火プラグで構成される点火装置12が接続された点火コイル13を備えている。この点火コイル13の一次側には例えばワンチップイグナイタを構成する半導体装置20が接続されている。この半導体装置20には電子制御ユニット(ECU)30から点火信号となる入力信号が供給される。
【0015】
半導体装置20は、点火コイル13の1次コイル13aのバッテリ11とは反対側に接続されるコレクタ端子tcと、グランドに接続されるエミッタ端子teと、電子制御ユニット30に接続されるゲート端子tgとを備えている。
そして、コレクタ端子tc及びエミッタ端子te間には、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)やパワーMOS電界効果トランジスタで構成される電圧制御型半導体素子21が接続されている。この電圧制御型半導体素子21は、高電位側端子となるコレクタがコレクタ端子tcに接続され、低電位側端子となるエミッタがエミッタ端子teに接続されている。また、電圧制御型半導体素子21は、制御端子となるゲートが入力信号の供給経路となるゲート配線22を介してゲート端子tgに接続されている。
【0016】
ゲート配線22には、少なくともゲート端子tg側の第1抵抗R1及び電圧制御型半導体素子21のゲート側の第2抵抗R2が直列に介挿されている。第1抵抗R1の抵抗値は第2抵抗R2の抵抗値より大きく設定されている。一例として、第1抵抗R1の抵抗値は比較的大きい例えば5kΩ程度に設定され、第2抵抗R2の抵抗値は比較的小さい例えば2kΩ程度に設定されている。
第2抵抗R2には、電圧制御型半導体素子21のターンオンを早めるスピードアップ用の第1バイパス路形成素子としての第1ダイオードD1が並列に接続されている。この第1ダイオードD1のアノードは、第1抵抗R1及び第2抵抗R2間のゲート配線22に接続され、カソードは第2抵抗R2及び電圧制御型半導体素子21のゲート間のゲート配線22に接続されている。
【0017】
第1抵抗R1及び第2抵抗R2には、電圧制御型半導体素子21のターンオフを早めるスピードアップ用の第2バイパス路形成素子としての第2ダイオードD2が並列に接続されている。この第2ダイオードD2のアノードは第2抵抗R2及び電圧制御型半導体素子21のゲート間のゲート配線22に接続され、カソードは第1抵抗R1及びゲート端子tg間のゲート配線22に接続されている。第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2の一例はPN接合型のダイオードであるが、順方向電圧がPN接合型ダイオードより低いショットキバリアダイオードを適用することも可能である。
また、第1抵抗R1及び第2抵抗R2間とエミッタ端子teとの間に電流制限用の例えばNチャネルMOSFETで構成される能動素子23が接続されている。この能動素子23のゲートには電流制御回路としての電流制限回路24からの入力信号が供給されている。
【0018】
電流制限回路24は、ゲート端子tg及び第1抵抗R1間とエミッタ端子teとの間に接続されて電子制御ユニット30から入力される入力信号(例えば5V)を電源として動作する。この電流制限回路24には、電圧制御型半導体素子21の電流センス端子とエミッタ端子teとの間に接続された電流検出用抵抗R3の電流センス端子側の端子電圧が電流検出値として入力されている。したがって、電流制限回路24では、電圧制御型半導体素子21のコレクタ電流Icが電流制限値Ilimに達すると、この電流制限値Ilimを維持するように能動素子23を制御して、ゲート電圧Vgを低下制御する。
電子制御ユニット30は、点火装置12を点火させる所定点火時期が到来する毎に、所定点火期間ハイレベルとなる電圧信号でなる入力信号をゲート端子tgに出力する。
【0019】
次に、上記実施形態の点火動作について
図2を伴って説明する。
先ず、電子制御ユニット30から点火装置の所定点火時期に、
図2(a)に示す所定期間ハイレベルとなる電圧信号でなる入力信号が半導体装置20のゲート端子tgに入力される。
このため、入力信号がローレベルからハイレベルに立ち上がる時点t1から
図2(b)に示すように、ゲート電圧Vgがハイレベル(例えば5V)となることにより、電圧制御型半導体素子21がターンオン状態となる。このため、バッテリ11から点火コイル13の1次コイル13aを介し、半導体装置20のコレクタ端子tcを経て電圧制御型半導体素子21のコレクタにコレクタ電流Icが
図2(c)に示すように流れ始める。このコレクタ電流Icは、インダクタンスと点火コイル13の1次コイル13aに印加される電圧でdI/dtが決定される。
【0020】
これと同時に、電圧制御型半導体素子21のコレクタ電圧Vcは、
図2(d)に示すように、グランドレベルに低下する。
この状態では、コレクタ電流Icが電流制限値Ilimに達していないので、電流制御回路24では入力信号がローレベルとなっており、能動素子23はオフ状態を維持する。
その後、電圧制御型半導体素子21のコレクタ電流Icが電流制限値Ilimに達する時点t2で、電流制限回路24からハイレベルとなる入力信号が能動素子23のゲートに出力されることにより、能動素子23がオン状態に制御される。このため、電圧制御型半導体素子21のゲート電圧Vgが第2抵抗R2を介して能動素子23によってプルダウンされ、
図2(b)に示すように、電圧制御型半導体素子21のコレクタ電流Icを電流制限値Ilimに維持する電圧にVlim(例えば3V)に低下される。この場合、電圧制御型半導体素子21のゲート容量は第2抵抗R2及び能動素子23を介して放電されるので、能動素子23がオン状態となったときに、ゲート容量が急速放電されることを防止して、安定したプルダウン動作を行うことができる。
【0021】
また、コレクタ電圧Vcは、
図2(d)に示すように、点火コイル13のインダクタンスの変化率L(di/dt)によってコレクタ電圧Vcが緩やかに立ち上がり、その後時点t3から例えば3〜5Vの低電圧で一定電圧を維持する。
そして、電圧制御型半導体素子21がオン状態に制御されている間、点火コイル13の1次コイル13aに電磁エネルギが蓄積される。その後、入力信号が所定の点火期間Tsを超えて、
図2(a)に示すように、時点t4でローレベルに復帰すると、これに応じて電圧制御型半導体素子21のゲート電圧がスピードアップ用の第2ダイオードD2を介して電子制御ユニット30側に迅速に引き抜かれ、電圧制御型半導体素子21がターンオフする。これによって、電圧制御型半導体素子21のコレクタ電流Icは急激に減少し、このコレクタ電流Icの急激な変化により、点火コイル13の1次コイルの両端電圧は急激に大きくなる。同時に、2次コイル13bの両端電圧も数10kV(例えば30kV)まで増加し、その電圧が点火装置12に印加される。点火装置12では印加電圧が約10kV以上で火花放電を発生させて内燃機関を駆動する。
【0022】
以上が通常の点火動作であるが、ゲート配線22にラジオノイズ等の高周波ノイズが重畳した場合には、電子制御ユニット30から入力される入力信号が5Vであるものとすると、
図3(a)に示すように、電圧制御型半導体素子21のゲート−エミッタ間電圧V
GEが10Vから0Vの範囲で正弦波状に振動することになる。
このとき、電圧制御型半導体素子21のゲート電流Igは、
図3(b)に示すようにゲート−エミッタ間電圧V
GEの変化に応じて変動する。ここで、ゲート電流Igは、電圧制御型半導体素子21のゲートに向かって流れる電流を正(+)方向とし、電圧制御型半導体素子21のゲートから入力信号供給側に流れる電流を負(−)方向とする。
【0023】
今、時点t10で高周波ノイズが正方向に増加を開始するものとする。このとき、電圧制御型半導体素子21のゲート電圧Vgが第1ダイオードD1の順方向電圧Vf1(例えば0.6V)未満であるときには、第1ダイオードD1がオフ状態を維持するので、高周波ノイズによる電流が第1抵抗R1及び第2抵抗R2を介して電圧制御型半導体素子21のゲート容量を充電し、ゲート電流Igは、
図3(b)に示すように、dI/dtが比較的緩やかとなる。
【0024】
その後、時点t11で、ゲート電圧Vgが第1ダイオードD1の順方向電圧Vf1以上となると、第1ダイオードD1がオン状態となることから、第2抵抗R2が第1ダイオードD1でバイパスされて、電圧制御型半導体素子21のゲート容量の充電が第1抵抗R1及び第1ダイオードD1のみを介して行われるので、ゲート電流IgのdI/dtが急峻になるとともに、振幅が大きくなる。
【0025】
その後、時点t12で、ゲート電圧Vgが第1ダイオードD1の順方向電圧Vf1未満となると、第1ダイオードD1がオフ状態となることから、再度第1抵抗R1及び第2抵抗R2を介して電圧制御型半導体素子21のゲート容量を充電し、ゲート電流IgはdIdtが低く抑制される。
その後、時点t13でゲート電流Igが零となり、その後符号が反転して電圧制御型半導体素子21のゲート容量が電子制御ユニット30に向かって放電され始め、負方向のゲート電流Igが流れ始める。この場合、ゲート電圧Vgが第2ダイオードD2の順方向電圧Vf2(例えば0.6V)を超えるまでの間は、ゲート電流Igが第1抵抗R1及び第2抵抗R2を介して流れることになり、dI/dtが低く抑制される。
【0026】
その後、時点t14で、ゲート電圧Vgが第2ダイオードD2の順方向電圧Vf2以上となると、第2ダイオードD2がオン状態となり、電圧制御型半導体素子21のゲート容量が第1抵抗R1及び第2抵抗R2をバイパスして電子制御ユニット30に放電され、ゲート電流Igが急激に負方向に増加し、振幅も大きくなる。
その後、時点t15で、ゲート電圧Vgが第2ダイオードD2のVf2未満となると、第2ダイオードD2がオフ状態となり、電圧制御型半導体素子21のゲート容量が電圧制御型半導体素子21のゲートから電子制御ユニット30側へ第1抵抗R1及び第2抵抗R2を介して放電されることになり、ゲート電流IgのdI/dtが低く抑制される。
その後、時点16でゲート電流Igが零に戻り、以後ゲート電流Igの波形が時点t10〜t16までのゲート電流波形と同様の波形を繰り返す。
【0027】
このように、高周波ノイズが重畳された場合には、ゲート電流Igがゲート端子tgから電圧制御型半導体素子21のゲートに向かって流れる場合には、ゲート電圧Vgが第1ダイオードD1の順方向電圧Vf1を超えたときに、第1ダイオードD1がオン状態となって第2抵抗R2がバイパスされ、ゲート電流Igが第1抵抗R1のみを介して電圧制御型半導体素子21のゲートに向かうターンオン経路が形成される。
逆に、ゲート電流Igが電圧制御型半導体素子21のゲートからゲート端子tgに向かって流れる場合には、第2ダイオードD2の順方向電圧Vf2を超えたときに、第2ダイオードD2がオン状態となって第1抵抗R1及び第2抵抗R2がバイパスされてゲート電流Igが第1ダイオードD1を介してゲート端子tgに向かうターンオフ経路が形成される。
【0028】
そして、ターンオン経路及びターンオフ経路で、電圧制御型半導体素子21のゲート容量の充放電速度をバランスさせることができる。このため、ゲート電流Igの正方向の振幅と負方向の振幅との差が小さくなることにより、ゲート電流Igの平均電流値ig1mは
図3(b)で点線図示のように0に近い値となる。
このため、点火動作を行わせた場合に、
図4(A)に示すように、入力信号に高周波ノイズが重畳した場合でも、電圧制御型半導体素子21のゲート電位は、点火に必要な高電位を維持することができる。したがって、電圧制御型半導体素子21のコレクタ電流Icが、高周波ノイズが重畳していない場合と同様に増加した後電流制限値Ilimに制限される。
【0029】
その後、入力信号がローレベルとなった時点で、電圧制御型半導体素子21のコレクタ電流Icが零に復帰するととともに、電圧制御型半導体素子21のコレクタ−エミッタ間電圧が急上昇し、点火装置12で火花放電を正確に発生させることができる。
ちなみに、
図5に示すように、前述した
図1の構成において、第1ダイオードD1を省略した場合には、入力信号に高周波ノイズが重畳していない場合には問題がないが、入力信号に高周波ノイズが重畳した場合には点火動作を行うことができない誤動作状態となる。
【0030】
すなわち、第1ダイオードD1が省略されている場合には、入力信号に高周波ノイズが重畳した状態では、
図3(c)に示すように、ゲート電流Igがゲート端子tgから電圧制御型半導体素子21のゲートに向かう場合には、ゲート電流Igが常に第1抵抗R1及び第2抵抗R2を介することになる。
このため、電圧制御型半導体素子21のゲート容量の充電速度が遅くなり、ゲート電流Igは、
図3(c)に示すように、時点t20〜t21間で振幅が抑制された状態となる。これに対して時点t22〜t23間のゲート電流Igが電圧制御型半導体素子21のゲートからゲート端子tg側に流れる場合には、前述した実施形態と同様に第2ダイオードD2によって第1抵抗R1及び第2抵抗R2をバイパスすることになる。このため、電圧制御型半導体素子21のゲート容量の放電速度が速くなり、ゲート電流Igの負側の振幅が大きくなる。
【0031】
したがって、ターンオン経路及びターンオフ経路でゲート配線22の抵抗値が大きく異なることから、電圧制御型半導体素子21のゲート容量の充放電速度がアンバランスとなり、振幅も大きく異なることになる。
このため、高周波ノイズ重畳時のゲート電流Igの平均電流値ig2mは、
図3(c)で点線図示のように0より大きく低下し、第1ダイオードD1を設けた場合の平均電流値ig1mの3倍程度となる。
【0032】
この結果、第1ダイオードD1を省略した状態で、高周波ノイズが入力信号に重畳している時に点火動作を行った場合には、
図4(B)に示すように、電圧制御型半導体素子21のゲート電位が低下することになる。これに応じて、電圧制御型半導体素子21がターンオンするが、電圧制御型半導体素子21のコレクタ電流Icは
図4(B)の時点t31から僅かながら増加し、電圧制御型半導体素子21のコレクタ−エミッタ間電圧V
CEは時点t31で一時的に零に近づく。
【0033】
しかしながら、コレクタ電流Icは時点t32で減少してしまい時点t33以降はコレクタ電流Icが低電流状態に維持されることにより、コレクタ−エミッタ間電圧V
CEは高い電位状態を維持することになり、電圧制御型半導体素子21はオフ状態に近い状態を継続する。このため、入力信号がローレベルに反転した場合でも電圧制御型半導体素子21のコレクタ−エミッタ電圧V
CEは通常電位を維持し、高電圧に点火コイル13の1次コイル13aに高電圧を発生することはできず、点火コイル13の2次コイル13aに点火装置12の火花放電に必要な電圧を誘起することはできない。
なお、コレクタ−エミッタ電圧V
CEはコレクタ電流Icが増加から減少に転じた時点t32〜t33間で比較的高い電圧となるが、この状態ではコレクタ電流Icがほとんど流れていないことから点火コイル13の1次コイル13aにエネルギが蓄積されておらず、点火コイル13の2次コイル13bに高電圧を誘起することはできない。
【0034】
これに対して、本実施形態では、第1ダイオードD1を第2抵抗R2と並列に接続し、第2ダイオードD2を第1抵抗R1及び第2抵抗R2と並列に接続しているので、電圧制御型半導体素子21のターンオン時及びターンオフ時の電圧制御型半導体素子21のゲートに蓄積されるゲート容量の充放電速度をバランスさせることができ、入力信号に高周波ノイズが重畳した場合でも点火動作を行えない誤動作を生じることがなく、正確に点火動作を行うことができる。
【0035】
また、第1ダイオードD1を第2抵抗R2のみに並列に接続しているので、電圧制御型半導体素子21のターンオン時に、入力信号が比較的大きな抵抗値の第1抵抗R1及び第1ダイオードD1を介して電圧制御型半導体素子21のゲートに供給されるので、ゲート端子tg及び第1抵抗R1間の電圧を高電位に維持することができる。このため、電流制限回路24への入力信号による電力供給に影響を与えることがなく、電流制限動作を正確に行うことができる。
なお、上記実施形態においては、第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2としてPN接合型ダイオードやショットキバリアダイオードを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、バイポーラトランジスタをダイオード動作させるようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施形態においては、第1ダイオードD1を設けて高周波ノイズ重畳時のゲート電流Igの正方向及び負方向の振幅を近づけるようにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第2ダイオードD2を複数段のダイオードを直列に接続した構成とし、ダイオードの接続段数を調整して、高周波ノイズ重畳時のゲート電流Igの負方向の振幅を正方向の振幅により近づけるように調整するようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、電流制限回路24を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電流制限回路24を省略するようにしてもよい。この場合には、点火動作時に、
図7(a)に示すように、入力信号がハイレベルとなる時点t41及びt42間で、ゲート電圧Vgを所定電圧例えば5Vに維持して、電圧制御型半導体素子21をターンオンさせる。この電圧制御型半導体素子21のターンオンによってコレクタ電流Icが
図7(b)に示すように増加し、コレクタ電圧Vcが
図7(c)に示すように略零まで低下し、入力信号がローレベルとなる時点t42で、ゲート電圧Vgがスピードアップ用の第1ダイオードD1を介して電子制御ユニット30側に引き抜かれるので、電圧制御型半導体素子21がターンオフし、コレクタ電流Icが急激に零まで低下する。このコレクタ電流Icの急激な変化により、コレクタ電圧Vcが急増し、点火コイル13の1次コイル13aの両端電圧は急激に大きくなる。同時に、点火コイル13の2次コイル13bの両端電圧も数10kV(例えば30kV)まで増加し、その電圧が点火装置12に印加される。これにより、点火装置12は印加電圧が約10kV以上で火花放電する。
【0038】
また、上記実施形態では、電流制御回路として電流制限回路24を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、
図6(a)に示すように、電流制御回路としては、抵抗R3の電流センス端子側の電圧に基づいて電圧制御型半導体素子21の過電流を検出したときに前述した能動素子23と並列に設けた能動素子41をオン状態に制御して、ゲート電圧をプルダウンさせる異常制御回路としての過電流制御回路42を設けることもできる。また、
図6(b)に示すように、電圧制御型半導体素子21と同一チップ内に電圧制御型半導体素子21の温度を検出するダイオードDtを配置し、このダイオードDtの端子電圧に基づいて電圧制御型半導体素子21の過熱を検出したときに、前述した能動素子23と並列に配置した能動素子43をオン状態に制御して、ゲート電圧をプルダウンさせる異常制御回路としての過熱制御回路44を設けることもできる。
【0039】
さらには、電流制限回路24を省略して過電流制御回路42及び過熱制御回路44の少なくとも一方を設けることもできる。この場合には、コレクタ電流Icの電流制限を行わないので、
図7(a)に示すように、時点t41〜t42間でハイレベルとなる矩形波状の入力信号が半導体装置20のゲート端子tgに入力される。
これに応じて、電圧制御型半導体素子21がターンオン状態となり、コレクタ電流Icが、
図7(b)に示すように、時点t41から点火コイル13の1次コイル13aのインダクタンスと印加電圧で決定されるdI/dtで増加し、入力信号がローレベルに判定する時点t42で0に復帰する。
【0040】
これと同時に、電圧制御型半導体素子21のコレクタ電圧Vcが、
図7(c)に示すように、時点t41でバッテリ電圧Vbからグランド電位に低下した後徐々に増加して時点t42で所定電圧(数百V)まで急増した後バッテリ電位に復帰する。
このため、時点t42で点火コイル13の2次コイル13bに高電圧を誘起して、点火装置12で火花放電を発生することができる。
また、上記実施形態においては、半導体装置20をワンチップイグナイタの構成とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電圧制御型半導体素子21と電流制限回路24とを別々のチップに構成するようにしてもよい。