(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354465
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】赤外線センサおよび赤外線センサの感度調整方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20180702BHJP
G01J 5/02 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
G01J1/02 C
G01J5/02 J
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-176847(P2014-176847)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-50871(P2016-50871A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】西山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】中村 賢蔵
(72)【発明者】
【氏名】田里 和義
(72)【発明者】
【氏名】松本 文夫
【審査官】
蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−225717(JP,A)
【文献】
特開2001−311660(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0066832(US,A1)
【文献】
特開2011−141216(JP,A)
【文献】
特開2012−225693(JP,A)
【文献】
特開2002−156284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60、5/00−5/62、11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性フィルムと、
該絶縁性フィルムの一方の面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、
前記絶縁性フィルムの一方の面に形成され前記第1の感熱素子に接続された導電性の第1の配線膜及び前記第2の感熱素子に接続された導電性の第2の配線膜と、
少なくとも前記第2の感熱素子に対向して前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられた赤外線反射膜とを備え、
前記赤外線反射膜が、前記第1の感熱素子に対向した前記絶縁性フィルムの他方の面の領域にも分割してパターン形成された複数の単位反射膜部を有し、
前記複数の単位反射膜部が、前記第1の感熱素子と前記第2の感熱素子との間を避けた前記第1の感熱素子の直上の外側に配されていることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線センサにおいて、
前記複数の単位反射膜部が、四角パッド状に形成され、互いに間隔を空けて複数列に並んで配されていることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の赤外線センサにおいて、
前記複数の単位反射膜部が、少なくとも2つの異なる面積のもので構成されていることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項4】
絶縁性フィルムと、該絶縁性フィルムの一方の面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、前記絶縁性フィルムの一方の面に形成され前記第1の感熱素子に接続された導電性の第1の配線膜及び前記第2の感熱素子に接続された導電性の第2の配線膜と、少なくとも前記第2の感熱素子に対向して前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられた赤外線反射膜とを備え、前記赤外線反射膜が、前記第1の感熱素子に対向した前記絶縁性フィルムの他方の面の領域にも分割してパターン形成された複数の単位反射膜部を有した赤外線センサの感度調整方法であって、
前記複数の単位反射膜部のうち任意の1つ又は複数の上に、赤外線放射率が前記単位反射膜部よりも高い塗料を塗布することを特徴とする赤外線センサの感度調整方法。
【請求項5】
絶縁性フィルムと、
該絶縁性フィルムの一方の面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、
前記絶縁性フィルムの一方の面に形成され前記第1の感熱素子に接続された導電性の第1の配線膜及び前記第2の感熱素子に接続された導電性の第2の配線膜と、
少なくとも前記第2の感熱素子に対向して前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられた赤外線反射膜とを備え、
前記赤外線反射膜が、前記第1の感熱素子に対向した前記絶縁性フィルムの他方の面の領域にも分割してパターン形成された複数の単位反射膜部を有し、
前記複数の単位反射膜部のうち任意の1つ又は複数の上に、赤外線放射率が前記単位反射膜部よりも高い塗料が塗布されていることを特徴とする赤外線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物からの赤外線を検出して該測定対象物の温度を測定する赤外線センサおよび赤外線センサの感度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物から輻射により放射される赤外線を非接触で検出して測定対象物の温度を測定する温度センサとして、赤外線センサが使用されている。
例えば、特許文献1には、保持体に設置した樹脂フィルムと、該樹脂フィルムに設けられ保持体の導光部を介して赤外線を検出する赤外線検出用感熱素子と、樹脂フィルムに遮光状態に設けられ保持体の温度を検出する温度補償用感熱素子とを備えた赤外線温度センサが提案されている。
【0003】
この赤外線温度センサでは、導光部に入射する赤外線量を減らすための遮蔽部を導光部に設け、この遮蔽部としてネジのような可変突出部を適用して導光部内への突出距離を可変することで入射する赤外線量を調整し、赤外線温度センサ個々の検知温度のバラツキを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−156284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
上記特許文献1の技術では、ネジのような可変突出部をケースに組み込んで、製造ばらつきで生じるセンサ誤差を補正しているが、ケースの構造が可変突出部を組み込むために複雑になり、部品コストが増大してしまうという不都合があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、安価であると共に検出感度のばらつきを補正することができる赤外線センサおよび赤外線センサの感度調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る赤外線センサは、絶縁性フィルムと、該絶縁性フィルムの一方の面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、前記絶縁性フィルムの一方の面に形成され前記第1の感熱素子に接続された導電性の第1の配線膜及び前記第2の感熱素子に接続された導電性の第2の配線膜と、少なくとも前記第2の感熱素子に対向して前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられた赤外線反射膜とを備え、前記赤外線反射膜が、前記第1の感熱素子に対向した前記絶縁性フィルムの他方の面の領域にも分割してパターン形成された複数の単位反射膜部を有していることを特徴とする。
【0008】
この赤外線センサでは、赤外線反射膜が、第1の感熱素子に対向した絶縁性フィルムの他方の面の領域にも分割してパターン形成された複数の単位反射膜部を有しているので、複数の単位反射膜部の上を赤外線放射率の高い塗料等で塗り潰し、赤外線の吸収領域側の赤外線量を調整することで、検出感度を調整することができる。したがって、ケースや筐体の構造を複雑にする必要がなく、簡易な構成で安価に感度調整が可能になる。
【0009】
第2の発明に係る赤外線センサは、第1の発明において、前記複数の単位反射膜部が、前記第1の感熱素子と前記第2の感熱素子との間を避けた前記第1の感熱素子の直上の外側に配されていることを特徴とする。
すなわち、複数の単位反射膜部を第1の感熱素子と第2の感熱素子との間に配した場合、赤外線の反射領域側の赤外線反射膜が増加した形になって熱抵抗のバランスが崩れるおそれがあるが、本発明の赤外線センサでは、複数の単位反射膜部が、第1の感熱素子と第2の感熱素子との間を避けた第1の感熱素子の直上の外側に配されているので、熱抵抗のバランスがくずれ難い。すなわち、吸収領域と反射領域との間の熱伝達性を損ねることなく、応答特性を維持することができる。
【0010】
第3の発明に係る赤外線センサは、第1又は第2の発明において、前記複数の単位反射膜部が、四角パッド状に形成され、互いに間隔を空けて複数列に並んで配されていることを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサでは、複数の単位反射膜部が、四角パッド状に形成され、互いに間隔を空けて複数列に並んで配されているので、単位反射膜部を選んで塗り潰し易いと共に、塗り潰しによる感度調整の再現性が高くなる。
【0011】
第4の発明に係る赤外線センサは、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記複数の単位反射膜部が、少なくとも2つの異なる面積のもので構成されていることを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサでは、複数の単位反射膜部が、少なくとも2つの異なる面積のもので構成されているので、感度調整を異なる刻みで実施する際に、感度調整の大きさに応じた面積の単位反射膜部を塗り潰すことができ、より精度の高い調整が可能になる。
【0012】
第5の発明に係る赤外線センサの感度調整方法は、第1から第4の発明のいずれかの赤外線センサの感度調整方法であって、前記複数の単位反射膜部のうち任意の1つ又は複数の上に、赤外線放射率が前記単位反射膜部よりも高い塗料を塗布することを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサの感度調整方法では、複数の単位反射膜部のうち任意の1つ又は複数の上に、赤外線放射率が前記単位反射膜部よりも高い塗料を塗布することで、赤外線の吸収領域側における赤外線量を調整することができ、赤外線センサの検出感度を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る赤外線センサ及び赤外線センサの感度調整方法によれば、赤外線反射膜が、第1の感熱素子に対向した絶縁性フィルムの他方の面の領域にも分割してパターン形成された複数の単位反射膜部を有しているので、複数の単位反射膜部の上を赤外線放射率の高い塗料等で塗り潰し、赤外線の吸収領域側の赤外線量を調整することで、検出感度を調整することができる。したがって、検出感度のばらつきを補正することができ、赤外線センサの検知精度を向上させることができる。また、赤外線センサを筐体やケース等に組み込んだ後だけでなく、組み込み前の状態でも検出感度の調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る赤外線センサ及び赤外線センサの感度調整方法の第1実施形態を示す調整前(a)及び調整後(b)の平面図である。
【
図2】第1実施形態において、赤外線センサを示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態において、赤外線センサを示す断面図である。
【
図4】第1実施形態において、感熱素子が接着される前の絶縁性フィルムを示す底面図である。
【
図5】第1実施形態において、筐体を除いた赤外線センサを示す斜視図である。
【
図6】本発明に係る赤外線センサ及び赤外線センサの感度調整方法の第2実施形態を示す調整前の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る赤外線センサ及び赤外線センサの感度調整方法の第1実施形態を、
図1から
図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0016】
本実施形態の赤外線センサ1は、
図1から
図3に示すように、絶縁性フィルム2と、該絶縁性フィルム2の一方の面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子3A及び第2の感熱素子3Bと、絶縁性フィルム2の一方の面に形成され第1の感熱素子3Aに接続された導電性の第1の配線膜4A及び第2の感熱素子3Bに接続された導電性の第2の配線膜4Bと、少なくとも第2の感熱素子3Bに対向して絶縁性フィルム2の他方の面に設けられた赤外線反射膜6と、絶縁性フィルム2の一方の面に固定されて該絶縁性フィルム2を支持すると共に第1の感熱素子3A及び第2の感熱素子3Bを内部の収納部7aに収納する筐体7とを備えている。
【0017】
上記赤外線反射膜6は、第1の感熱素子3Aに対向した絶縁性フィルム2の他方の面の領域(吸収領域)にも分割してパターン形成された複数の単位反射膜部6aを有している。
これら複数の単位反射膜部6aは、第1の感熱素子3Aと第2の感熱素子3Bとの間を避けた第1の感熱素子3Aの直上の外側に配されている。
また、複数の単位反射膜部6aは、四角パッド状に形成され、互いに間隔を空けて複数列に並んで配されている。本実施形態では、0.2mm角程度の5つの単位反射膜部6aが1列に並んだものを2列配置している。
【0018】
上記第1の配線膜4Aは、
図4に示すように、第1の感熱素子3Aの周囲にまで配されて第2の配線膜4Bよりも大きな面積で形成されている。これらの第1の配線膜4Aは、一対の中央に第1の感熱素子3Aを配し、一対で外形状が赤外線反射膜6と略同じ四角形状に設定されている。すなわち、第1の配線膜4Aの面積及び形状は、絶縁性フィルム2の赤外線反射膜6が形成された部分と熱容量がほぼ等しくなるように設定している。
【0019】
また、第1の配線膜4Aと赤外線反射膜6とは、平面視において収納部7aの上部を塞ぐ形状とされている。すなわち、絶縁性フィルム2の上方側から視た際(平面視)に、一対で外形状が赤外線反射膜6と略同じ四角形状に設定されている第1の配線膜4Aと赤外線反射膜6とで、直方体形状の収納部7aの上部の略全体を塞いでいる。
また、一対の第1の配線膜4Aには、その一端部にそれぞれ絶縁性フィルム2上に形成された第1の接着電極5Aが接続されていると共に、他端部にそれぞれ絶縁性フィルム2上に形成された第1の端子電極8Aが接続されている。
【0020】
また、一対の第2の配線膜4Bは、線状に形成されており、その一端部にそれぞれ絶縁性フィルム2上に形成された第2の接着電極5Bが接続されていると共に、他端部にそれぞれ絶縁性フィルム2上に形成された第2の端子電極8Bが接続されている。
なお、上記第1の接着電極5A及び第2の接着電極5Bには、それぞれ第1の感熱素子3A及び第2の感熱素子3Bの端子電極3aが半田等の導電性接着剤で接着される。
【0021】
上記絶縁性フィルム2は、ポリイミド樹脂シートで形成され、赤外線反射膜6、単位反射膜部6a、第1の配線膜4A及び第2の配線膜4Bが銅箔で形成されている。すなわち、これらは、絶縁性フィルム2とされるポリイミド基板の両面に、赤外線反射膜6、単位反射膜部6a、第1の配線膜4A及び第2の配線膜4Bとされる銅箔のフロート電極がパターン形成された両面フレキシブル基板によって作製されたものである。
【0022】
さらに、上記赤外線反射膜6は、
図4に示すように、第2の感熱素子3Bの直上に略四角形状で配されていると共に、第1の感熱素子3Aの直上の吸収領域を囲むように枠状に形成されている。この枠状の赤外線反射膜6の中に、2列に配置された複数の単位反射膜部6aが配されている。すなわち、赤外線反射膜6のうち第2の感熱素子3Bの直上に形成された略四角形状の部分が、赤外線の反射領域となり、枠状の赤外線反射膜6で囲まれた領域が、赤外線の吸収領域となる。これら単位反射膜部6aを含む赤外線反射膜6は、銅箔と、該銅箔上に積層された金メッキ膜とで構成されている。
【0023】
赤外線反射膜6は、銅箔上に金メッキ膜が施されて形成されている。なお、金メッキ膜の他に、例えば鏡面のアルミニウム蒸着膜やアルミニウム箔等で形成しても構わない。第2の感熱素子3B直上に配された赤外線反射膜6は、第2の感熱素子3Bよりも大きなサイズでこれを覆うように形成されている。
【0024】
上記第1の感熱素子3A及び第2の感熱素子3Bは、
図5に示すように、両端部に端子電極3aが形成されたチップサーミスタである。このサーミスタとしては、NTC型、PTC型、CTR型等のサーミスタがあるが、本実施形態では、第1の感熱素子3A及び第2の感熱素子3Bとして、例えばNTC型サーミスタを採用している。このサーミスタは、Mn−Co−Cu系材料、Mn−Co−Fe系材料等のサーミスタ材料で形成されている。
【0025】
特に、本実施形態では、第1の感熱素子3Aおよび第2の感熱素子3Bとして、Mn,CoおよびFeの金属酸化物を含有するセラミックス焼結体、すなわちMn−Co−Fe系材料で形成されたサーミスタ素子を採用している。さらに、このセラミックス焼結体は、立方晶スピネル相を主相とする結晶構造を有していることが好ましい。特に、セラミックス焼結体としては、立方晶スピネル相からなる単相の結晶構造が最も望ましい。
なお、これら第1の感熱素子3A及び第2の感熱素子3Bは、各端子電極3aを対応する第1の接着電極5A上又は第2の接着電極5B上に接合させて絶縁性フィルム2に実装されている。
【0026】
上記筐体7は、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の樹脂で形成されており、第1の感熱素子3A及び第2の感熱素子3Bを収納すると共に絶縁性フィルム2よりも熱伝導率の低い空気で覆う空間である収納部7aが内部に設けられている。
この筐体7内の絶縁性フィルム2に対向する底面には、赤外線を反射する底面反射膜9が形成されている。この底面反射膜9は、上記赤外線反射膜6と同様の膜が採用可能である。
【0027】
筐体7は、
図2及び
図3に示すように、側面に設けられ第1の配線膜4Aまたは第2の配線膜4Bの第2の端子電極8Bに上端が接続されていると共に底部まで延在された複数の側面電極部10aと、側面下部において側面電極部10aの下端に接続されて設けられ外部の回路基板上に接続させる複数の実装用外部端子10bとを備えている。すなわち、本実施形態の赤外線センサ1は表面実装型とされている。なお、側面電極部10aと実装用外部端子10bとは、例えば錫めっきされた銅合金で形成されている。
【0028】
本実施形態の赤外線センサ1において検出感度の調整を行う場合、複数の単位反射膜部6aのうち任意の1つ又は複数の上に、赤外線放射率が単位反射膜部6aよりも高い塗料Inkを塗布する。例えば、
図1の(a)に示すように、2列に配列された単位反射膜部6aのうち、図上の左列の両端に配置された2つの単位反射膜部6aの上に、
図1の(b)に示すように、塗料Inkを塗布して塗り潰す。これによって吸収領域全体における赤外線の反射率が塗り潰した単位反射膜部6aの分だけ低下する。
【0029】
上記塗料Inkとしては、例えば合成樹脂、顔料、ジメチルエーテル等からなるインク等が採用可能である。このような塗料Inkの塗布方法としては、金属面に印刷可能なインクジェットプリンタ用インク等を利用してインクジェット方式によって塗布することが好ましい。この場合、微少な単位反射膜部6a上に正確かつ高速で塗料Inkの印刷が可能になり、量産性に優れている。
【0030】
このように本実施形態の赤外線センサ1では、赤外線反射膜6が、第1の感熱素子3Aに対向した絶縁性フィルム2の他方の面の領域にも分割してパターン形成された複数の単位反射膜部6aを有しているので、複数の単位反射膜部6aの上を赤外線放射率の高い塗料Inkで塗り潰し、赤外線の吸収領域側の赤外線量を調整することで、検出感度を調整することができる。したがって、ケースや筐体の構造を複雑にする必要がなく、簡易な構成で安価に感度調整が可能になる。
【0031】
また、複数の単位反射膜部6aが、第1の感熱素子3Aと第2の感熱素子3Bとの間を避けた第1の感熱素子3Aの直上の外側に配されているので、熱抵抗のバランスがくずれ難い。すなわち、吸収領域と反射領域との間の熱伝達性を損ねることなく、応答特性を維持することができる。
さらい、複数の単位反射膜部6aが、四角パッド状に形成され、互いに間隔を空けて複数列に並んで配されているので、単位反射膜部6aを選んで塗り潰し易いと共に、塗り潰しによる感度調整の再現性が高くなる。
【0032】
このように赤外線センサ1の感度調整方法では、複数の単位反射膜部6aのうち任意の1つ又は複数の上に、赤外線放射率が単位反射膜部6aよりも高い塗料Inkを塗布することで、赤外線の吸収領域側における赤外線量を調整することができ、赤外線センサ1の検出感度を容易に調整することができる。したがって、検出感度のばらつきを補正することができ、赤外線センサ1の検知精度を向上させることができる。また、筐体7に絶縁性フィルム2を固定した後だけでなく、筐体7に固定する前の状態でも検出感度の調整を行うことができる。
【0033】
次に、本発明に係る赤外線センサ及び赤外線センサの感度調整方法の第2実施形態について、
図6を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0034】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、複数の単位反射膜部6aが全て同一の面積のものであるのに対し、第2実施形態の赤外線センサでは、
図6に示すように、複数の単位反射膜部26a,26b,26cが、少なくとも2つの異なる面積のもので構成されている点である。
【0035】
すなわち、第2実施形態では、例えば最も大きい面積とされた単位反射膜部26aと、次に大きい面積とされた単位反射膜部26bと、最も小さい面積とされた単位反射膜部26cとの大中小3種類の面積で複数の単位反射膜部を構成している。
この第2実施形態において感度調整を行う場合、例えば大きく感度調整を行いたいときは大きな面積の単位反射膜部26aを塗り潰し、小さく感度調整を行いたいときは小さな面積の単位反射膜部26cを塗り潰す。
【0036】
このように第2実施形態では、複数の単位反射膜部26a,26b,26cが、少なくとも2つの異なる面積のもので構成されているので、感度調整を異なる刻みで実施する際に、感度調整の大きさに応じた面積の単位反射膜部を塗り潰すことができ、より精度の高い調整が可能になる。
【0037】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0038】
例えば、上記実施形態では、第1の感熱素子が赤外線を直接吸収した絶縁性フィルムから伝導される熱を検出しているが、第1の感熱素子の直上であって絶縁性フィルム上に赤外線吸収膜を形成しても構わない。この場合、さらに第1の感熱素子における赤外線吸収効果が向上して、第1の感熱素子と第2の感熱素子とのより良好な温度差分を得ることができる。すなわち、この赤外線吸収膜によって測定対象物からの輻射による赤外線を吸収するようにし、赤外線を吸収し発熱した赤外線吸収膜から絶縁性フィルムを介した熱伝導によって、直下の第1の感熱素子の温度が変化するようにしてもよい。なお、単位反射膜部は、赤外線吸収膜上に形成する。
【0039】
また、チップサーミスタの第1の感熱素子及び第2の感熱素子を採用しているが、薄膜サーミスタで形成された第1の感熱素子及び第2の感熱素子を採用しても構わない。
なお、感熱素子としては、上述したように薄膜サーミスタやチップサーミスタが用いられるが、サーミスタ以外に焦電素子等も採用可能である。
【0040】
また、上記実施形態の筐体では、第1の感熱素子及び第2の感熱素子を収納する一つの収納部を内部に設けているが、筐体内部に仕切り壁を設け、第1の感熱素子及び第2の感熱素子をそれぞれ個別に収納する一対の収納部を設けても構わない。また、収納部内は、絶縁性フィルムよりも熱伝導率の低い空気による空間としているが、絶縁性フィルムよりも熱伝導率の低い発泡樹脂を充填しても構わない。
【0041】
さらに、上記実施形態では、第1の配線膜の面積を大きくし、第2の配線膜は線状に形成しているが、第2の配線膜の面積をある程度大きく設定しても構わない。この場合、赤外線反射膜側の熱容量が変わるため、周辺温度の変化に対して考慮する必要があり、反射側と吸収側とで、できるだけ熱容量が同じになるように各配線膜や赤外線反射膜の形状および面積を設定する必要がある。
【符号の説明】
【0042】
1…赤外線センサ、2…絶縁性フィルム、3A…第1の感熱素子、3B…第2の感熱素子、4A…第1の配線膜、4B…第2の配線膜、6…赤外線反射膜、6a,26a,26b,26c…単位反射膜部、7…筐体、7a…収納部、Ink…塗料