(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354469
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】電源装置の冷却機構
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20180702BHJP
H02M 1/00 20070101ALN20180702BHJP
【FI】
H05K7/20 G
!H02M1/00 R
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-179771(P2014-179771)
(22)【出願日】2014年9月4日
(65)【公開番号】特開2016-54236(P2016-54236A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 誉人
【審査官】
白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−045935(JP,A)
【文献】
特開2003−033002(JP,A)
【文献】
実開昭61−049462(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置の筐体内に配置されて当該装置の発熱体を放熱する複数のヒートシンクと、
一つの前記ヒートシンクからの熱流を他の前記ヒートシンクに移行させずに前記筐体の側面部に案内する案内部材と
を備え、
前記案内部材は、
前記一つのヒートシンクと対向して立設される板状の仕切り部と、
この仕切り部の上端部から前記ヒートシンクと前記他のヒートシンクの間にて前記筐体の側面部に向かって当該筐体の高さ方向斜めに配置される板状の熱絶縁部と
を備えたこと
を特徴とする電源装置の冷却機構。
【請求項2】
前記複数のヒートシンクは前記筐体の高さ方向及び当該筐体の奥行き方向に配列され、
前記案内部材は前記奥行き方向に配列されたヒートシンク間にて一対に備えられ、
この一対の案内部材の仕切り部はこのヒートシンク間にて対向して配置されたこと
を特徴とする請求項1に記載の電源装置の冷却機構。
【請求項3】
前記高さ方向に配列された複数のヒートシンクは互いに前記筐体の奥行き方向にずれることなく設けられたこと
を特徴とする請求項2に記載の電源装置の冷却機構。
【請求項4】
前記ヒートシンクは前記発熱体の熱を気中に放散する放熱部を有し、この放熱部は前記筐体の側面部に向かって突設されたこと
を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電源装置の冷却機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置の冷却機構、特に、気中自然冷却方式の冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置はその構成要素の高発熱部品を放熱するために冷却機構を有する(例えば特許文献1〜5)。ファン等を用いていない気中自然冷却方式の一般的な冷却機構は例えば
図3に示したように電源装置の筐体2内にその高さ方向上下段にヒートシンク3を配置させている。このような配置のヒートシンク3の熱バランスを考えると上段のヒートシンク3の温度は下段のヒートシンク3の放熱を受けて相対的に高くなる。この両者のヒートシンク3,3の温度差によって、筐体2内の各種部品の寿命のばらつきが生じるので、部品の仕様が制約される。
【0003】
この問題を解決するために前記上下段のヒートシンク3,3を互いに筐体2奥行き方向にずらして配置することにより放熱の影響を緩和する方法が採られているが、この方法は、装置寸法の増大や、内部の回路を形成する導体の複雑化など、不利な点が多々ある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−140894号公報
【特許文献2】特開平9−307038号公報
【特許文献3】特開平10−270880号公報
【特許文献4】特開平5−55589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、電源装置の冷却効果を高めつつ当該装置の小型化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の冷却機構は、電源装置の筐体内に配置されて当該装置の発熱体を放熱する複数のヒートシンクと、この一つの前記ヒートシンクからの熱流を他の前記ヒートシンクに移行させずに前記筐体の側面部に案内する案内部材とを備える。
【0007】
本発明によれば、電源装置の筐体内の一つのヒートシンクからの熱流が他方のヒートシンクに移行しなくなるので、これらのヒートシンク間の温度差が低減する。
【発明の効果】
【0008】
以上の本発明によれば電源装置の冷却効果を高めつつ当該装置の小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は本発明の第一の実施形態における冷却機構を備えた電源装置の内部を示した上面図、(b)は同内部を示した側面図、(c)は同装置のA−A断面図。
【
図2】(a)は本発明の第二の実施形態における冷却機構を備えた電源装置の内部を示した上面図、(b)は同内部を示した側面図、(c)は同装置のA−A断面図。
【
図3】(a)は従来の電源装置の内部を示した上面図,(b)は同内部を示した側面図,(c)は同装置のA−A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(実施形態1)
図1に示された本実施形態の冷却機構1は、電源装置の筐体2内に配置される複数のヒートシンク3と、筐体2内の下段側のヒートシンク3からの熱流を上段側のヒートシンク3に移行させずに筐体2の側面部23に案内する案内部材4とを備える。
【0012】
筐体2は、矩形の筐体から成り、電源装置の構成要素である高発熱デバイスに例示される発熱体を備えたプリント基板(図示省略)を複数格納、または、複数の発熱体を備えた単一のプリント基板(図示省略)を格納している。筐体2の底面部21,天井部22及び側面部23には通気口20が形成されている。
【0013】
筐体2内にはヒートシンク3が前記発熱体の数に応じて具備されている。ヒートシンク3は図示省略の伝熱部を介して前記発熱体に熱的に接触された状態となっている。ヒートシンク3は筐体2の高さ方向に上下2段に配列されている。この上下2段に配列されたヒートシンク3は互いに筐体2の奥行き方向にずれることなく設置されている。
【0014】
ヒートシンク3は周知のヒートシンクの構造を成す。すなわち、ヒートシンク3は、前記伝熱部を介して前記発熱体と熱的に接触する背面部31と、この背面部31から受けた熱を気中に解放するフィン形状の放熱部32と有する。このヒートシンク3は放熱部32が筐体2の所定の側面部23に向かって突出した状態で筐体2内に配置される。
【0015】
案内部材4は、筐体2内の下段側のヒートシンク3の背面部31と対向して立設される板状の仕切り部41と、この仕切り部41の上端部から上下段のヒートシンク3,3間にて筐体2の所定の側面部23に向かって筐体2の高さ方向斜めに配置される板状の熱絶縁部42とを備える。
【0016】
仕切り部41は周知の金属製の材料から構成されている。熱絶縁部42はポリカーボネートに例示される耐熱性の板状の材料から成り、仕切り部41の上端部から筐体2の側面部23側に筐体2の高さ方向斜め例えば水平に対して10度から20度程度に傾斜配置されている。
【0017】
図1を参照しながら本実施形態の冷却機構1の作用効果について説明する。
【0018】
電源装置の動作による発熱体の温度上昇により筐体2内に上昇気流が生じると筐体2内の空気の流れは
図1に示した白抜き矢印の通りとなる。すなわち、筐体2内の発熱体の熱がヒートシンク3に伝わると、このヒートシンク3周辺の空気が温められて空気密度が相対的に低くなり、筐体2内に上昇気流が生じる。この上昇気流を生じた空気、つまり、熱気は、案内部材4の熱絶縁部42に沿って移行して筐体2の側面部23側に案内され、この側面部23の通気口20から大気に解放される。また、上段側のヒートシンク3周辺の熱気も、その上昇気流により筐体2の天井部22側に移行し、天井部22の通気口20から大気に解放される。以上のように筐体2内の下方で生じた熱流は上段側のヒートシンク3に接触することなく筐体2の側面部23に移行して筐体2から熱気が排出される。
【0019】
図3に示した従来の冷却機構は、筐体2内の下方に配置された発熱体やヒートシンク3の周辺の熱気がそのまま筐体2内の上段側のヒートシンク3側に移行して結果的にこの上段側のヒートシンク3の温度を上昇させ、これらヒートシンク3間の温度差が増大する。
【0020】
これに対して、本実施形態の冷却機構1は、上下段のヒートシンク3,3間に案内部材4の熱絶縁部42が配置されているので、前記下方に配置された発熱体やヒートシンク3の周辺の熱気はそのまま垂直方向に上昇することなく熱絶縁部42の傾きに沿って移行する。この熱絶縁部42によって案内された熱気は、筐体2の側面部23の通気口20から排出、若しくは、上方のヒートシンク3と接触することなく筐体2の天井部22の通気口20から解放される。
【0021】
したがって、前記従来の冷却機構と比べて、上下段のヒートシンク3,3間の温度差が低減し、ヒートシンク3,3の温度差に起因する電源装置の部品の寿命のばらつきも低減する。そして、前記温度差が低減することにより、筐体2内温度の絶対値が下るので、電源装置の構成部品を選定する幅が広がる。また、上下段のヒートシンク3,3を筐体2内の奥行き方向にずらして配置する必要がなくなり、電源装置の小型化も図れる。
【0022】
特に、案内部材4は仕切り部41が下段側のヒートシンク3と対向して立設される一方で熱絶縁部42が仕切り部41の上端部から上下段のヒートシンク3,3の間にて筐体2の側面部に向かって筐体2の高さ方向斜めに配置されている。したがって、下段側のヒートシンク3から移行してきた熱流を垂直方向に案内させ、さらに上段側のヒートシンク3と接触させずに直ちに筐体2の側面部23側に案内できる。よって、下段側のヒートシンク3とこのヒートシンク3と熱的に接続されている発熱体の放熱効果が高まることに加えて上段側のヒートシンク3の温度上昇を抑制できる。
【0023】
また、ヒートシンク3,3は互いに筐体2の奥行き方向にずれることなく筐体2内に上下二段に配置されているので、電源装置の筐体2の大型化を回避できる。したがって、筐体2の小型化が実現し、電源装置に導体や取り付け用の補助枠等の構造も簡略化できる。
【0024】
さらに、筐体2内のヒートシンク3,3は放熱部32が筐体2の側面部23に向かって突出した状態で配置されているので、筐体2内の放熱効果がさらに高まる。特に、下段側のヒートシンク3の背面部31は案内部材4の仕切り部41と対向しているので、このヒートシンク3の周辺で生じた上昇熱流を垂直方向に案内する風洞効果が生じ、筐体2内の放熱効果が促進される。
【0025】
(実施形態2)
図2に示された本実施形態の冷却機構10は、例えば、実施形態1の電源装置よりも電気容量が比較的大きい電源装置に適用される冷却機構であって、複数のヒートシンク3が筐体2の高さ方向及び奥行き方向に配列されるように設置されている。ヒートシンク3も実施形態1と同様に放熱部32が筐体2の側面部23に向かって突出した状態で筐体2内に設けられている。
【0026】
また、本実施形態の案内部材4は前記奥行き方向に配置されたヒートシンク3,3間において一対に備えられている。さらに、この一対の案内部材4の仕切り部41はヒートシンク3,3間において対向して配置されている。
【0027】
以上の冷却機構10によれば、実施形態1の冷却機構1と同様に、下段側のヒートシンク3から移行してきた熱流を垂直方向に案内できると共に上段側のヒートシンク3と接触させずに直ちに筐体2の側面部23側に案内できる。また、上下段に配置されるヒートシンク3,3を筐体2内の奥行き方向にずらして設置する必要がなくなり、電源装置の小型化も図れる。
【0028】
さらに、本実施形態においては下段側のヒートシンク3,3間に一対に設けられた案内部材4の仕切り部41が対向した状態となっている。これにより、下段側のヒートシンク3,3間で生じた上昇熱流を筐体2の天井部22の通気口20に対して直接案内する風洞効果が生じ、筐体2内の放熱効果が促進される。特に、電気容量の比較的大きい電源装置の筐体2内で生じる熱を効率的に排出できる。
【符号の説明】
【0029】
1,10…冷却機構
2…筐体、20…通気口、21・・・底面部、22・・・天井部、23…側面部
3…ヒートシンク、31…背面部、32…放熱部
4…案内部材、41…仕切り部、42…熱絶縁部