(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作業者による操作端末(7)のタッチパネル部(71)への入力操作に基づいて、ロボットを動作させるための動作用信号を前記操作端末(7)から出力してロボットコントローラに与える場合に、前記ロボットコントローラに安全のための信号を入力させる安全入力装置であって、
作業者が手で把持することが可能なグリップ部(8a)と、このグリップ部(8a)の一端部に連結され先端部(8b21)が先細り状をなし前記先端部(8b21)を前記タッチパネル部(71)に接触させて入力操作を行う操作部(8b)とを有した操作入力部材(8)と、
前記操作入力部材(8)に設けられ前記グリップ部(8a)を把持した手により操作可能なイネーブルスイッチ(9)とを備えた安全入力装置。
前記操作部(8b)には前記グリップ部(8a)を把持した手の指により引き操作可能なトリガ部材(12)が設けられ、このトリガ部材(12)により前記イネーブルスイッチ(9)が操作される請求項1又は2記載の安全入力装置。
前記操作部(8b)には前記グリップ部(8a)を把持した手の指により引き操作可能なトリガ部材(12)が設けられ、このトリガ部材(12)により前記非常停止スイッチ(10)が操作される請求項2記載の安全入力装置。
前記非常停止スイッチ(10)は、前記操作入力部材(8)の前記グリップ部(8a)において前記操作部(8b)と連結する部分とは反対側の端部(8a2)に設けられている請求項2記載の安全入力装置。
前記イネーブルスイッチ(9)及び非常停止スイッチ(10)の各スイッチ信号は、前記操作端末(7)を介することなく直接前記ロボットコントローラに入力する構成とした請求項2記載の安全入力装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近、タッチ入力を行い得るスマートフォンなどの安価で携帯可能な操作端末(以下スマートディバイス)が普及しており、ロボットの教示作業時の表示・入力用のディバイスとして用いることが注目されている。この場合、スマートディバイスにロボットを操作するための入出力インターフェースとしてアプリケーションソフトを格納させる。
【0006】
そして、スマートディバイスのタッチパネル部上で指により直線や曲線の描画線を描く(操作入力)ことに基づいて、ロボットを動作させるための動作用信号を出力し、ロボットコントローラに与える。そしてロボットコントローラは、前記動作用信号に応じてロボットの関節や手先を動作させることを行う。
しかし、ロボット操作装置としては、タッチパネル部で構成される表示・操作入力部の他に上述の機械式の安全入力部が必須であるため、表示・操作入力部(タッチパネル)で構成されるスマートディバイスのみでは、ロボット操作装置としては成立しない。
【0007】
そこで、
図13に示すように、安全入力部として、市販されている非常停止スイッチ付きグリップ型イネーブルスイッチ装置110を用いることが考えられる。このイネーブルスイッチ装置110は、グリップ110aにイネーブルスイッチ110bを設け、グリップ110a上部に非常停止スイッチ110cを設けた構成である。このイネーブルスイッチ装置110において、イネーブルスイッチ110bと共にグリップ110aを軽く握るとイネーブルスイッチ110bがオンとなり、強く握るか離すとオフとなる。
【0008】
この場合、
図14に示すように、一方の手でスマートディバイス111を持ち、他方の手で前記イネーブルスイッチ装置110を握り、当該イネーブルスイッチ装置110を握った手で、スマートディバイス111のタッチパネル部111aへのタッチ入力操作を行う形態が考えられる。この場合、入力操作の操作方向や操作軌跡に応じてロボットをX方向やY方向あるはZ方向へ教示動作させる。
【0009】
ところで、ロボット設置環境を考えると、作業者は、安全上、手には手袋(軍手)を付けていることがある。又、スマートディバイスに使用されるタッチパネル部としては、インセル型、オンセル型の抵抗膜方式、静電容量方式などいろいろあり、どれが使用されるかはスマートディバイス製造者が目的に合わせて決めることになるが、何らかの目的のため静電容量方式が採用されているスマートディバイスの場合などは手袋(軍手)を介してタッチパネル部111aでタッチ入力操作をしても入力ができない。又、手袋をとって指先で直接タッチ入力操作をしたとしても、ロボット設置環境では、指先には油や汗が付着していることが多いため、入力操作の操作方向や操作軌跡が不鮮明となって、ロボットが、作業者の意図したとおりに動作しないおそれがある。
又、上述のグリップ型イネーブルスイッチ装置110のようにグリップ型の安全入力部(安全入力装置)の場合、しっかりと把持できることから、作業者の疲労度を軽減できる利点があり、この利点は維持したいという要望がある。
【0010】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作端末のタッチパネル部にどのような方式が採用されていようとも、安全性を確保でき、且つ、精確な入力操作を行うことができ、さらには、作業者の疲労度も少ない安全入力装置及びロボット操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の安全入力装置においては、作業者が手で把持することが可能なグリップ部とこのグリップ部の一端部に連結され先端部が先細り状をなし当該先端部を操作端末のタッチパネル部に接触させて入力操作を行う操作部とを有した操作入力部材を備え、操作入力部材に、グリップ部を把持した手により操作可能なイネーブルスイッチを設ける構成とした。
【0012】
上記構成によれば、操作入力部材がグリップ部を備えているので、当該グリップ部を把持することで操作入力部材をしっかりと保持でき、作業者の疲労度が少ない。
そして、この操作入力部材における先細り状をなす先端部は、指よりも細く、油の付着確率も極めて低く且つ手袋のような保護物も必要がないため、油を付いた指や手袋をはめた指で操作端末に対して入力操作を行う場合に比して、精確に入力操作を行うことができる。これにより、操作端末のタッチパネル部における画面上のボタン表示などを小さくすることも可能で、タッチパネル部における情報量を多くできる。特に、産業用ロボットの場合、複数の動作軸により構成されることから、その操作入力は多種に及ぶ。この場合、タッチパネル部における情報量を多くできることで、画面を切り替えずに操作入力の種類も増加でき、操作性の向上に繋がる。
【0013】
しかも、この操作入力部材に、イネーブルスイッチを設けているので、ロボット操作装置における安全性を確保することができる。この結果、操作入力部として操作端末を用いながらも安全性を確保できる安全入力装置を提供できる。そして、このようにロボット操作装置の表示・操作入力部として汎用の操作端末を使用できるので、ロボット走査装置に本安全入力装置をもいることで、ロボット操作装置のコストの低廉化にも寄与できる。
【0014】
しかも、前記イネーブルスイッチはグリップ部を把持した手で操作可能であるので、入力操作時には、入力操作の体勢を崩すことなくイネーブルスイッチを常にオン操作させることができる。従って、イネーブルスイッチを、突発的な事態において作業者がとっさに強く握ったり離したりするといった反射的反応に応動するためのイネーブルスイッチとして良好に機能させることができる。
【0015】
請求項2の安全入力装置においては、操作入力部材に非常停止スイッチを設けているので、さらに安全性が向上する。
請求項3の安全入力装置においては、操作部が、グリップ部の一端部に連結された本体部と、この本体部に着脱可能に装着され先端部が先細り状をなすペン状部とから構成されている。この請求項3によれば、ペン状部が操作端末のタッチパネル部に触れることにより入力がなされる。この場合、タッチパネル部、あるいはタッチパネル部に貼られた保護フィルムとペン状部との相性により、滑りやすさが変わるため、入力操作性が悪くなることがある。このような場合、請求項3によれば、ペン状部を本体部から着脱できるので、滑りのいい(タッチパネル部又は保護フィルムと相性のいい)ペン状部と交換することが可能となる。又、ペン状部の先端部は摩耗して先端部形状が変化するため、当初予定した操作の精確さが低減するおそれがある。この場合にも、ペン状部を交換できるので、この問題にも対処できる。
【0016】
請求項4の安全入力装置においては、イネーブルスイッチが、操作入力部材のグリップ部に設けられている。これによれば、作業者がグリップ部を把持したときに作業者の手によりそのままイネーブルスイッチを容易に操作することができる。
【0017】
請求項5の安全入力装置においては、操作部にはグリップ部を把持した手の指により引き操作可能なトリガ部材が設けられ、このトリガ部材によりイネーブルスイッチが操作される。これによれば、作業者がグリップ部を人差し指以外の指で把持すれば、人差し指でトリガ部材に指をかけてイネーブルスイッチを操作することができる。
【0018】
請求項6の安全入力装置においては、操作部が先端部とは反対側の端部近傍部分でグリップ部と連結されており、非常停止スイッチが、操作入力部材の操作部において先端部とは反対側の端部に設けられている。
【0019】
作業者が操作入力部材で入力操作をする場合、作業者が操作端末を体の正面に持ち、当該操作端末のタッチパネル部の手前で操作入力部材の操作部の先端部により入力操作をするから、操作部の先端部と反対側の端部に設けた非常停止スイッチは作業者の方に向いており且つ近くに位置する。従って、上記請求項6によれば、入力操作時において、作業者は非常停止スイッチの位置を常に確認でき、しかも、非常停止スイッチはグリップ部に近いので、例えばグリップ部を把持した指のうちの適宜の指例えば親指が非常停止スイッチに近く、この親指で非常停止スイッチを容易に且つ素早く操作することができる。
【0020】
請求項7の安全入力装置においては、操作部が先端部とは反対側の端部近傍部分でグリップ部と連結されており、非常停止スイッチが、操作入力部材の操作部において当該操作部とグリップ部とが連結する部分とは反対側の部分に設けられている。この請求項7においては、非常停止スイッチが、操作部における先端部とは反対側の端部近傍部分であってグリップ部とが連結する部分とは反対側の部分に設けられているので、入力操作時においては作業者の近くに非常停止スイッチが位置することになる。このため、操作端末を持った側の手(例えば手の甲など)で素早く非常停止スイッチを操作することができる。
【0021】
請求項8の安全入力装置においては、操作部にはグリップ部を把持した手の指により引き操作可能なトリガ部材が設けられ、このトリガ部材により非常停止スイッチが操作される。これによれば、作業者がグリップ部を把持した状態で、必要時に、人差し指でトリガ部材に指をかけて非常停止スイッチを操作することができる。
【0022】
請求項9の安全入力装置においては、非常停止スイッチが、操作入力部材のグリップ部において操作部と連結する部分とは反対側の端部に設けられている。これによれば、操作入力部材のグリップ部を把持する場合、操作部がグリップ部の上側となる形態で当該グリップ部を把持するため、非常停止スイッチはグリップ部の下端部に位置する。従って、必要時に非常停止スイッチを操作する場合には、グリップ部の下端部の非常停止スイッチを適宜壁や作業台に当てたり、作業者自身の体に当てたりして、素早く操作することができる。
【0023】
請求項10の安全入力装置においては、非常停止スイッチが、操作入力部材の操作部における先端部に設けられている。これによれば、操作入力部材を入力操作の体勢からそのまま押し込めば、非常停止スイッチを容易且つ素早く操作できる。
【0024】
請求項11の安全入力装置においては、イネーブルスイッチ及び非常停止スイッチの各スイッチ信号を、操作端末を介することなく直接ロボットコントローラに入力する構成とした。これによれば、操作端末が、制御不良状態となったとしても、イネーブルスイッチ及び非常停止スイッチは機能しており、確実にイネーブルスイッチのオンオフ信号、非常停止スイッチのオン信号をロボットコントローラに入力できる。この結果、入力操作性の改善を達成できると共に、操作端末操作時における安全性も従前通り達成できる。
【0025】
請求項12の安全入力装置においては、グリップ部は一端部からこれとは反対側の端部にかけて長尺な形状であり、操作部は先端部からこれとは反対側の端部にかけて長尺な形状である。そして、操作部はこれの長尺方向がグリップ部の長尺な方向に対して交差する形態に設けられている。これによれば、操作入力部材がいわゆるガンタイプの形状をなすので、入力し易い。
【0026】
請求項13のロボット操作装置においては、表示・入力のためのタッチパネル部を有し当該タッチパネル部での入力操作により前記動作用信号を出力する携帯可能な操作端末と、請求項1から12のいずれか一項記載の安全入力装置とを備えた。これによれば、ロボット操作装置において、上述と同様の効果を奏する。
【0027】
又、請求項14のロボット操作装置においては、操作端末が備えた挙動検出手段により操作端末自身がほぼ動かない状態であることが検出され且つタッチパネル部に操作入力部材が触れているときにイネーブルオン信号を出力し、前記挙動検出手段により操作端末自身が動いたことが検出されるか、タッチパネル部から操作入力部材が離れたときにイネーブルオフ信号を出力するようにした。
これによれば、操作端末自体でもイネーブルスイッチの機能を実現することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の第1実施形態について
図1から
図3を参照して説明する。
図1に示す産業用ロボットシステム1は、ロボット2、ロボットコントローラ3、ロボット操作装置4により構成されている。ロボットコントローラ3はロボット2を制御するものであり、複数の接続線を有する接続ケーブル5を介してロボット2に接続されている。ロボット操作装置4は、複数の接続線を有する接続ケーブル6を介してロボットコントローラ3に接続されている。
【0030】
ロボット操作装置4は、携帯可能な操作端末(以下、スマートディバイスという)7と、操作入力部材8と、イネーブルスイッチ9と、非常停止スイッチ10とを備える。スマートディバイス7は、スマートフォンや、タブレット型パソコンなどの、モバイル操作端末から構成されており、矩形状をなしている。このスマートディバイス7は、表示及び入力のためのタッチパネル部71を備える。このタッチパネル部71は、本実施形態では静電容量方式としているが、抵抗膜方式でも良い。
【0031】
前記操作入力部材8と、イネーブルスイッチ9と、非常停止スイッチ10とで安全入力装置41を構成している。この安全入力装置41は、作業者によるスマートディバイス7のタッチパネル部71への入力操作に基づいて、ロボット2を動作させるための動作用信号を前記スマートディバイス7から出力してロボットコントローラ3に与える場合に、ロボットコントローラ3に安全のための信号(イネーブルスイッチ9及び非常停止スイッチ10のスイッチ信号)を入力させるものである。
【0032】
操作入力部材8は、
図2にも示すように、作業者が手で把持することが可能なグリップ部8aと、このグリップ部8aの一端部である上端部8a1に連結された操作部8bとを有する。操作部8bは、グリップ部8aの上端部8a1に連結された本体部8b1と、この本体部8b1に着脱可能に装着され先端部8b21が先細り状をなすペン状部8b2とから構成されている。操作部8bは先端部8b21とは反対側の端部8b11(本体部8b1における図示右端部)近傍部分でグリップ部8aと連結されている。
【0033】
この場合、グリップ部8aは一端部8a1からこれとは反対側の端部8a2にかけて長尺な形状であり、操作部8bは先端部8b21からこれとは反対側の端部8b11にかけて長尺な形状である。そして、操作部8bはこれの長尺方向がグリップ部8aの長尺な方向に対して交差する形態に設けられている。このグリップ部8aと操作部8bとのなす角度α、βのうち狭い方の角度αは例えば90°〜150°程度が良い。これによれば、操作入力部材8がいわゆるガンタイプの形状をなすので、入力し易い。
【0034】
操作入力部材8は、タッチパネル部71が静電容量方式であることに関連して、操作入力部材8内部に静電気を発生させる回路を設けている。この場合電源(電池)が必要となるがロボットコントローラ3から電源を得るようにすれば電池は不要となる。この静電気発生回路方式の場合、作業者が手袋をしていても有効である。なお、先端部とグリップ部8a(作業者の手が触れる部分)との間を導通可能な構成としても良い。例えば、操作入力部材8の外面を導電材もしくは導電材を含む材料で構成する。
【0035】
イネーブルスイッチ9は操作入力部材8のグリップ部8aにおいて、人差し指、中指、薬指や小指が触れることが可能な部分(
図2では左部分)に設けられている。
非常停止スイッチ10は操作入力部材8の操作部8bにおいて先端部8b21とは反対側の端部8b11に設けられている。
【0036】
上記イネーブルスイッチ9は、
図1及び
図2では、操作ボタンのみを示している。このイネーブルスイッチ9は、3ポジション型であり、軽く握るとオンし、強く握るとオフし、握ることを解除するとオフする。つまり、作業者が、教示作業中は、操作入力部材8のグリップ部8aを把持した手でイネーブルスイッチ9を軽くオン操作し、突発的に危険や異常を感じると、作業者が驚いて強く把持したり、あるいは手を離したりすることでイネーブルスイッチ9がオフする。このイネーブルスイッチ9のオン信号及びオフ信号は
図3に示すように接続ケーブル6を介してロボットコントローラ3に送信され、ロボットコントローラ3はオン信号の受信中はスマートディバイス7の入力を許容し、オフ信号を受信すると、スマートディバイス7の入力を受け付けないと共にロボット2の挙動を停止する。
【0037】
又、非常停止スイッチ10は、
図1及び
図2では、操作ボタンのみを示している。この非常停止スイッチ10は、押しボタン型である。この非常停止スイッチ10は、接続ケーブル6を介してロボットコントローラ3に接続されており、オン操作されると、ロボット2の挙動を停止する。なお、接続ケーブル6はグリップ部8aにおいて操作部8bと連結する部分8a1とは反対側の端部8a2に連結されている。
【0038】
前記スマートディバイス7は、信号伝達手段としての無線通信手段11を中継して前記接続ケーブル6を介しロボットコントローラ3と通信可能となっている。この無線通信手段11は、スマートディバイス7に設けた無線通信部72と、操作入力部材8の例えば本体部8b1に設けた無線通信部81とから構成されている。この場合の通信方式は、BLUETOOTHやWi-Fi(いずれも登録商標)を採用することができる。
【0039】
なお、スマートディバイス7と操作入力部材8との通信可能距離を所定距離例えば1m以内程度の狭域とすると良い。つまり、表示・入力部であるスマートディバイス7自体は指による操作入力が可能である。このため、スマートディバイス7と操作入力部材8とを離して、スマートディバイス7だけを持って教示作業するおそれもある。この場合、通信可能距離が長いと、イネーブルスイッチ9及び非常停止スイッチ10を備えた操作入力部材8が遠く離れた状態でもロボットコントローラ3の操作が可能となる。
【0040】
上述した使用形態(スマートディバイス7と安全入力部である操作入力部材8とが離れてスマートディバイス7が指で操作される使用形態)は、本実施形態では推奨しない使用形態であるが、しかしどのような使用状況下でも安全を図る必要がある。上述の使用状況の下で、危険な事態が発生した場合に、スマートディバイス7から遠く離れたイネーブルスイッチ9や非常停止スイッチ10を迅速に操作(安全入力操作)することができないおそれがある。
【0041】
そこで、上述のように、スマートディバイス7と操作入力部材8との通信可能距離を所定距離例えば1m以内程度の狭域とすることで、スマートディバイス7のロボット操作装置としての実質的な操作入力可能距離が、操作入力部材8の1m以内の狭域に限定されるため、スマートディバイス7と操作入力部材8との距離が1m以上離れて使用されることがなく、常に迅速に安全入力操作することができる。
【0042】
なお、スマートディバイス7と操作入力部材8との通信可能距離を所定距離例えば1m以内程度の狭域とする構成としては、無線通信手段11の通信電波強度を1m以上では減衰して通信不可能となるように設定しても良いし、又無線通信手段11が自身の通信電波強度が1m以上相当の電波強度となったときに、これを検出して、通信を遮断する構成としても良い。又、信号伝達手段としては、無線通信でなく例えば1mの接続ケーブル(有線)で構成しても良い。なお、上記所定距離は1mに限定されるものではない。
【0043】
ここで、前記スマートディバイス7は、ロボットコントローラ3の表示機器及び入力機器として機能する。つまり、スマートディバイス7には、ロボットコントローラ3に対する入出力インターフェースとしてのアプリケーションソフトが予め格納されている。このアプリケーションソフトが起動されると、タッチパネル部71には、教示作業に必要な各種表示画像を表示させる。この表示画像としては、アイコン(ロボット2において動作させようとする部位(関節や手先)の選択のためのアイコン)や、教示作業を行いやすくするためのロボットの2D画像あるいは3D画像などが含まれる。
【0044】
そして、作業者がタッチパネル部71上で、ロボット2の関節や手先を選択操作した上で、操作入力部材8により直線や曲線の描画線を描くと(入力操作すると)、その描画線の座標データなどといった動作用信号をロボットコントローラ3に送信する。このとき、先細り状(ペン先形状)の先端部8b21の操作入力部材8により入力操作をするので、指で入力する場合と違って、精確な描画線を入力することが可能となる。
【0045】
ロボットコントローラ3では、送信された動作用信号に基づいて、ロボット2の関節や手先を動作させる。さらにロボットコントローラ3では、当該ロボット2に対する教示動作に関係する表示用データをスマートディバイス7に送信する。このような制御は一例である。
【0046】
又、スマートディバイス7では、スマートディバイス7の向きや傾きさらには動きを検知するためにジャイロセンサや加速度センサなどの、スマートディバイス7の姿勢や動きを検出する挙動検出手段を標準装備している。さらに、スマートディバイス7のタッチパネル部71は、タッチされることにより入力を検出するものであるから、このタッチパネル部71は操作入力部材8が触れたことを検出できるものである。つまり接触検出手段を備えている。
【0047】
本実施形態では、この挙動検出手段とタッチパネル部71とを利用し、スマートディバイス7がほぼ動かない状態であることが挙動検出手段で検出され且つタッチパネル部71に操作入力部材8が触れていることが検出されたときにイネーブルオン信号を出力し、スマートディバイス7が動いたかあるいはタッチパネル部71から操作入力部材8が離れたときにイネーブルオフ信号を出力するようになっている。
【0048】
ロボットコントローラ3は、上記イネーブルオン信号を受け取ると、スマートディバイス7からの教示のための入力を受け付け、イネーブルオフ信号を受け取ると入力を受け付けないと共にロボット2の挙動を停止する。つまり、本実施形態では、挙動検出手段とタッチパネル部71とを利用してイネーブルスイッチ9と同様のイネーブル機能を備えている。
【0049】
上述した本実施形態においては、携帯可能なスマートディバイス7を備えると共に、作業者が手で把持することが可能なグリップ部8aとこのグリップ部8aの一端部に連結され先端部8b21が先細り状をなし当該先端部8b21をタッチパネル部71に接触させて入力操作を行う操作部8bとを有した操作入力部材8とを備え、操作入力部材8に、グリップ部8aを把持した手により操作可能なイネーブルスイッチ9を設け、さらに、この操作入力部材8に非常停止スイッチ10を設ける構成とした。
この実施形態によれば、操作入力部材8がグリップ部8aを備えているので、当該グリップ部8aを把持することで操作入力部材8自体をしっかりと保持でき、作業者の疲労度が少ない。
【0050】
そして、この操作入力部材8における先細り状をなす先端部8b21は、指よりも細く、油の付着確率も極めて低く且つ手袋のような保護物も必要がないため、油を付いた指や手袋をはめた指でスマートディバイス7に対して入力操作を行う場合に比して、精確に入力操作を行うことができる。これにより、スマートディバイス7のタッチパネル部71における画面上のボタン表示などを小さくすることも可能で、タッチパネル部71における情報量を多くできる。特に、産業用ロボットの場合、複数の動作軸により構成されることから、その操作入力は多種に及ぶ。この場合、タッチパネル部71における情報量を多くできることで、画面を切り替えずに操作入力の種類も増加でき、操作性の向上に繋がる。
【0051】
しかも、この操作入力部材8に、イネーブルスイッチ9と非常停止スイッチ10とを設けているので、これらイネーブルスイッチ9と非常停止スイッチ10とによりロボット操作装置4における安全性を確保することができる。この結果、スマートディバイス7のタッチパネル部71にどのような方式が採用されていようとも、安全性を確保できる安全入力装置41及びロボット操作装置4を提供できる。そして、このようにロボット操作装置4の表示・操作入力部として汎用のスマートディバイス7を使用できるので、ロボット操作装置4のコストの低廉化に寄与できる。
【0052】
しかも、イネーブルスイッチ9はグリップ部8aを把持した手で操作可能であるので、入力操作時には、入力操作の体勢を崩すことなくイネーブルスイッチ9を常にオン操作させることができる。従って、イネーブルスイッチ9を、突発的な事態において作業者がとっさに強く握ったり離したりするといった反射的反応に応動するためのイネーブルスイッチとして良好に機能させることができる。
【0053】
又、本実施形態においては、操作部8bが、グリップ部8aの上端部8a1に連結された本体部8b1と、この本体部8b1に着脱可能に装着され先端部8b21が先細り状をなすペン状部8b2とから構成されている。これによれば、ペン状部8b2がスマートディバイス7のタッチパネル部71に触れることにより入力がなされる。この場合、タッチパネル部71、あるいはタッチパネル部71に貼られた保護フィルムとペン状部8b2との相性により、滑りやすさが変わるため、入力操作性が悪くなることがある。このような場合、本実施形態によれば、ペン状部8b2を本体部8b1から着脱できるので、滑りのいい(タッチパネル部71又は保護フィルムと相性のいい)ペン状部と交換することが可能となる。又、ペン状部8b2の先端部8b21は摩耗するため、形状が変化して太くなったりあるいは導通性が低下したりし、当初予定した操作の精確さが低減するおそれがある。この場合にも、ペン状部8b2を交換できるので、この問題にも対処できる。
【0054】
又、本実施形態においては、イネーブルスイッチ9が、操作入力部材8のグリップ部8aに設けられているので、作業者がグリップ部8aを把持したときに作業者の手によりそのままイネーブルスイッチ9を容易に操作することができる。
又、本実施形態においては、操作部8bが先端部8b21とは反対側の端部8b11近傍部分でグリップ部8aと連結されており、非常停止スイッチ10が、操作入力部材8の操作部8bの前記端部8b11に設けられている。
【0055】
これによれば、作業者が操作入力部材8で入力操作をする場合、作業者がスマートディバイス7を体の正面に持ち、当該スマートディバイス7のタッチパネル部71の手前で操作入力部材8の操作部8bの先端部8b21により入力操作をするから、この先端部8b21と反対側の端部8b11に設けた非常停止スイッチ10は、作業者の方に向いており且つ近くに位置する。
【0056】
従って、この実施形態によれば、入力操作時において、作業者は非常停止スイッチ10の位置を常に確認でき、しかも、非常停止スイッチ10はグリップ部8aに近いので、例えばグリップ部8aを把持した指のうちの適宜の指例えば親指が非常停止スイッチ10に近く、この親指で非常停止スイッチ10を容易に且つ素早く操作することができる。
【0057】
一般的に、ティーチングペンダントにおいて非常停止スイッチを操作する場合、まず、非常停止スイッチの位置を確認し(第1ステップ)、次に手を非常停止スイッチまで移動させ(第2ステップ)、そして非常停止スイッチを手で押す(第3ステップ)といった挙動をする。これに対して本実施形態では、入力操作時には非常停止スイッチ10の位置は常に確認できていて且つ作業者の親指の動作範囲の近傍となるので、親指を操作入力部材8の端部8b11方向へ動かせば、自ずと非常停止スイッチ10に触れ、2つのステップで非常停止スイッチ10を迅速に操作することができる。
【0058】
ここで、スマートディバイスの使われ方として、近年、BYOD(Bring your own device:従業員が個人所有のスマートディバイスを職場に持ち込んで業務に使用すること)やInverse-BYOD(企業が従業員に個人利用可能なスマートディバイスを提供すること)という形態がとられることがある。この場合、本実施形態のロボット操作装置4によれば、BYODのような業務形態では業務に使用するスマートディバイス7を教示作業でも共通に使用できるようになるため、ユーザはロボット操作装置4の表示・操作入力部のためのスマートディバイス7を新たに購入する必要がなくなり、より安価にロボット操作装置4を提供できる。
【0059】
又、教示作業は、安全のために教育を受けた作業者が行う必要がある。そこで従来のティーチングペンダントでは、例えばパスワードなどを用いてユーザ認証を行い、ユーザ認証者以外の作業者が動作制御プログラムの編集や、教示点の編集といった作業を制限していることが多い。しかし、パスワードの初期値は共通であることが多く、又、初期値変更も面倒であることもあり、初期値のパスワードをそのまま使用していることが多い。そのため、本来は作業するべきではない作業者も容易に作業できてしまう可能性がある。
【0060】
その点、前述したようにBYODのような作業形態をとることが可能な本実施形態によれば、スマートディバイス利用者と教示作業者とは一致していると考えることができる。これにより適切な作業者以外の作業者が教示作業を行うリスクを低減できる。なお、個人利用のスマートディバイス7を適切な作業者以外の作業者が借りて教示作業をしまうことが考えられるが、通常は紛失した場合などのセキュリティを考慮して個人的にパスワードをかけておくので、パスワードを教えてまで貸すことには抵抗があるため、このリスクは解消される。
【0061】
又、本実施形態においては、スマートディバイス7が備えた挙動検出手段によりスマートディバイス7自身がほぼ動かない状態であることが検出され且つタッチパネル部71に操作入力部材8が触れているときにイネーブルオン信号を出力し、前記挙動検出手段によりスマートディバイス7自身が動いたことが検出されるか、前記タッチパネル部71から前記操作入力部材8が離れたときにイネーブルオフ信号を出力するようにした。
【0062】
これによれば、スマートディバイス7自体でもイネーブルスイッチの機能を実現することが可能である。
又、本実施形態によれば、イネーブルスイッチ9及び非常停止スイッチ10は、各スイッチ信号を、スマートディバイス7を介さずに、直接ロボットコントローラ3に送信する構成であるから、安全入力部として、イネーブルスイッチ9及び非常停止スイッチ10を備えた操作入力部材8を機能的にスマートディバイス7とは切り離した形態にできる。従って、スマートディバイス7が、例えば動作不良や故障を起こしたり着脱による接続不良となったりして、制御不良状態となったとしても、イネーブルスイッチ9及び非常停止スイッチ10は機能しており、確実にイネーブルスイッチ9のオンオフ信号、非常停止スイッチ10のオン信号をロボットコントローラ3に入力できる。この結果、入力操作性の改善を達成できると共に、スマートディバイス7操作時における安全性も従前通り達成できる。
【0063】
そして、このように操作入力部材8側で安全性を確保できるので、スマートディバイス7はロボットコントローラ3に対する操作入力機能を担えば良く、汎用のスマートディバイス7の採用が容易となる。
図4は第2実施形態を示し、この第2実施形態では、操作入力部材8における操作部8bが一体物から構成されている。この場合、操作部8bの先端部が先細り状をなす。この第2実施形態においては、第1実施形態におけるペン状部8b2の交換の利便性はないが初期の目的は達成できる。
【0064】
図5は第3実施形態を示し、この第3実施形態においては非常停止スイッチ10の配置位置が第1実施形態と異なる。この第3実施形態では、非常停止スイッチ10が、操作入力部材8の操作部8bにおいて当該操作部8bとグリップ部8aとが連結する部分8b12とは反対側の部分8b13に設けられている。この第3実施形態においては、非常停止スイッチ10が、操作部8bにおける先端部8b21とは反対側の端部8b11近傍部分であってグリップ部8aとが連結する部分とは反対側の部分8b13に設けられているので、入力操作時においては作業者の近くに非常停止スイッチ10が位置することになる。このため、スマートディバイス7を持った側の手(例えば手の甲など)で素早く非常停止スイッチ10を操作することができる。
【0065】
図6は第4実施形態を示し、次の点が第1実施形態と異なる。操作部8bの本体部8b1において、前記狭い方の角度α側の部分に、いわゆる引き金形状のトリガ部材12が設けられている。このトリガ部材12はグリップ部8aを把持した手の指(例えば人差し指、1本の指)により矢印A方向に引き操作可能に設けられている。このトリガ部材12により、本体部8b1内に設けたイネーブルスイッチ9が操作される。これによれば、作業者がグリップ部8aを人差し指以外の指で把持すれば、人差し指でトリガ部材12に指をかけてイネーブルスイッチ9を操作することができる。
【0066】
図7は第5実施形態を示し、次の点が第1実施形態と異なる。この第5実施形態においては、操作部8bの本体部8b1にはグリップ部8aを把持した手の指により矢印A方向へ引き操作可能なトリガ部材12が設けられ、このトリガ部材12により、本体部8b1内に設けた非常停止スイッチ10が操作される。これによれば、作業者がグリップ部8aを把持した状態で、必要時に、人差し指でトリガ部材12に指をかけて非常停止スイッチ10を操作することができる。
【0067】
図8及び
図9は第6実施形態を示し、次の点が第1実施形態と異なる。この第6実施形態においては、非常停止スイッチ10が、操作入力部材8のグリップ部8aにおいて操作部8bと連結する部分8a1とは反対側の端部8a2に設けられている。この場合、非常停止スイッチ10が端部8a2に設けられているため、有線通信手段である前記接続ケーブル6に代えて無線通信手段13(
図9参照)を設けている。
【0068】
この無線通信手段13は、操作入力部材8に設けられた無線通信部14と、ロボットコントローラ3が備えた無線通信部3aとを有して構成されている。無線通信部14はイネーブルスイッチ9及び非常停止スイッチ10のスイッチ信号をロボットコントローラ3の無線通信部3aに送信する。又、この無線通信部14はスマートディバイス7の無線通信部72とも通信可能となっており、スマートディバイス7とロボットコントローラ3とはこの無線通信部14を中継して通信可能である。この無線通信手段13の通信方式は、BLUETOOTHやWi-Fi(いずれも登録商標)を採用することができる。
【0069】
この第6実施形態によれば、操作入力部材7のグリップ部8aを把持する場合、操作部8bがグリップ部8aの上側となる形態で当該グリップ部8aを把持するため、非常停止スイッチ10はグリップ部8aの下端部8a2に位置する。従って、必要時に非常停止スイッチ10を操作する場合には、グリップ部8aの下端部8a2の非常停止スイッチ10を適宜壁や作業台に当てたり、作業者自身の体に当てたりして、素早く操作することができる。
【0070】
又、この第6実施形態では無線通信手段13を採用したので、操作入力部材8自体の把持操作性及び入力操作性がさらに良くなる。この第6実施形態に示した無線通信形態は他の実施形態にも適用できる。
なお、スマートディバイス7、操作入力部材8(イネーブルスイッチ9及び非常停止スイッチ10)、ロボットコントローラ3の各相互間を無線で通信可能としても良く、このようにするといずれかの通信が切断された場合でも、別経路で通信ができるため、故障に対する安全性が向上する。
【0071】
図10は第7実施形態を示し、次の点が第1実施形態と異なる。この第7実施形態においては、非常停止スイッチ10が、操作入力部材8の操作部8bにおける先端部に設けられている。この非常停止スイッチ10は、通常の入力操作でのタッチパネル部71に対する操作接触圧程度ではオン操作されない。そして、作業者が意識的に押し込むことでオン操作される。これによれば、操作入力部材8を入力操作の体勢からそのまま押し込めば、1ステップの操作で非常停止スイッチ10を容易且つ素早く操作できる。
【0072】
前述の
図3では、スマートディバイス7の無線通信部72と、操作入力部材8の例えば本体部8b1に設けた無線通信部81とを無線通信させる構成としたが、第8実施形態として示す
図11のようにしても良い。この
図11においては、ロボットコントローラ3に無線通信部3aを設け、この無線通信部3aとスマートディバイス7の無線通信部72とによりスマートディバイス7とロボットコントローラ3と無線通信する構成としている。
【0073】
又、
図9に示した通信構成に代えて、第9実施形態として示す
図12のような通信構成としても良い。この
図12において、ロボットコントローラ3の無線通信部3aとスマートディバイス7の無線通信部72とを直接無線通信する構成とすることでスマートディバイス7とロボットコントローラ3と無線通信する構成としている。
【0074】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。