(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明では、ストライカを変位可能に支持する機構に加えて、ロック機構を必要とするので、リクライニング調節装置の構造が複雑になる。
本発明は、上記点に鑑み、リクライニング調節装置の構造を簡素な構造とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願では、車両本体及びシートバック(3)のうちいずれか一方に設けられた係合部(3A)と係合する被係合部(11)を有し、当該被係合部(11)を変位させるリクライニング調節装置において、被係合部(11)を変位可能に支持する支持部材(12)と、被係合部(11)を変位させる駆動力を発生する電動モータ(13)と、電動モータ(13)で発生した駆動力を減速して被係合部(11)に伝達する減速機構(14)とを備える。
【0007】
これにより、本願発明では、減速機構(14)をロック機構として機能させることができる。
すなわち、減速機構(14)は、電動モータ(13)で発生した駆動力を減速して被係合部(11)に伝達する。このため、減速機構(14)の出力側を回転させる、つまり被係合部(11)を変位させるには、入力側である電動モータ(13)側に比べて大きな力を必要とする。
【0008】
したがって、被係合部(11)の変位を減速機構(14)により規制でき得るので、当該減速機構(14)をロック機構として機能させることができる。延いては、ロック機構を廃止、又は簡素化できるので、リクライニング調節装置の構造を簡素な構造とすることが可能となる。
【0009】
なお、本発明は、以下のように構成してもよい。
すなわち、請求項2に記載の発明では、減速機構(14)は、被係合部(11)と一体化されて当該被係合部(11)と一体的に変位するラック(14A)、及びラック(14A)と噛み合うピニオン(14B)であって、電動モータ(13)側から駆動力が供給されて回転するピニオン(14B)を有して構成されている。
【0010】
これにより、請求項2に記載の発明では、減速機構(14)の大型化を抑制しながら、大きな減速比を得ることができる。したがって、リクライニング調節装置の大型化を抑制しながら、確実に被係合部(11)の位置を固定することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、ラック(14A)は、シートバック(3)の揺動(リクライニング)方向に沿うように円弧状に湾曲していることを特徴とする。これにより、シートバックの揺動に追従して被係合部(11)を変位させることができるので、被係合部(11)を滑らかに変位させることが可能となる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、減速機構(14)による駆動力伝達経路のうちピニオン(14B)より電動モータ(13)側には、電動モータ(13)で発生した駆動力を減速する遊星歯車機構(14C)が設けられている。これにより、さらに大きな減速比を得ることができる。したがって、リクライニング調節装置の大型化を抑制しながら、より確実に被係合部(11)の位置を固定することが可能となる。
【0013】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に説明する「発明の実施形態」は実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態は、車両の後部座席用シートに本発明に係るリクライニング調整装置及び車両用シート装置を適用したものである。各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載したものである。本発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
【0017】
少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「複数」や「2つ以上」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
1.リクライニング調節装置の概要
図1Aに示すように、後部座席1はシートクッション(座部)2、及びシートバック(背もたれ)3等を有している。シートクッション2は着席者の臀部を支える。シートバック3は着席者の背部を支えるとともに、シートクッション2の後端側を揺動中心として揺動変位(リクライニング)可能である。
【0019】
図1Bに示すように、シートバック3にはラッチ又はフック等の係合部3Aが設けられている。係合部3Aは、リクライニング調節装置10に設けられたストライカ等の被係合部(以下、ストライカという。)11と係合可能な部材である。
【0020】
リクライニング調節装置10は、車両ボディ等の車両本体に固定される機構であって、ストライカ11を変位させる電動式の機構である。つまり、リクライニング調節装置10は、ストライカ11を車両前後方向に変位させることにより、ストライカ11と係合部3Aとの係合位置を変位させてシートバック3の傾斜角度を変更する。
【0021】
2.リクライニング調節装置の構造
リクライニング調節装置10は、
図2及び
図3に示すように、ストライカ11、支持部材12、電動モータ13及び減速機構14等を有して構成されている。支持部材12はストライカ11を直接的又は間接的に変位可能に支持する。
【0022】
2.1 支持部材
本実施形態に係る支持部材12は、間接的にストライカ11を変位可能に支持する。具体的には、
図2に示すように、支持部材12は、ベース12A、及び一対の案内部材12B、12C等を有している。ベース12Aは、レール11Aを跨ぐように当該レール11Aの長手方向と直交する方向に延びている。
【0023】
なお、ベース12Aの延び方向は、
図4に示すように、リクライニング調節装置10が車両本体に組み付けられた状態にておいては、車両の上下方向と一致する。レール11Aにはストライカ11が組み付け固定されている。そして、レール11Aはストライカ11と一体的に変位する。
【0024】
ベース12Aのうちレール11Aと面する部位には、
図2に示すように、レール11Aに設けられた溝部11Bに嵌り込む突部12Dが設けられている。溝部11Bは、レール11Aの延び方向(長手方向)に沿って延びる凹部である。
【0025】
溝部11Bの延び方向は、シートバック3の揺動(リクライニング)方向に沿うように円弧状に湾曲している。具体的には、シートバック3はシートクッション2の後端側を揺動中心として揺動変位可能である。そして、溝部11Bは、リクライニング調節装置10が車両本体に組み付けられた状態において、当該揺動中心を中心とする円弧を描くように湾曲している。
【0026】
突部12Dは、溝部11Bに嵌り込んだ状態で当該溝部11Bの延び方向に沿ってレール11Aに対して変位可能である。つまり、レール11Aが突部12D(ベース12A)に対して変位すると、突部12Dと溝部11Bの内側壁とが滑り接触(以下、摺接ともいう。)する。このため、突部12Dのうち溝部11Bの内側壁と摺接する部位は、当該摺接する内側壁の曲率半径以下の曲率半径を有した湾曲面に形成されている。
【0027】
一対の案内部材12B、12Cそれぞれは、ベース12Aの延び方向各端部に設けられている。つまり、案内部材12Bは、ベース12Aのうち突部12Dを挟んで延び方向一端側(
図2では上端側)に配設されている。案内部材12Cは、ベース12Aのうち突部12Dを挟んで延び方向他端側(
図2では下端側)に配設されている。
【0028】
一対の案内部材12B、12Cは、ベース12Aと協働して水平方向からレール11Aを挟み込むようにしてレール11Aの変位を案内する。上記水平方向とは、リクライニング調節装置10が車両本体に組み付けられた場合における水平方向をいう。当該水平方向は、ベース12Aの延び方向及びストライカ11の変位方向と直交する方向と一致する。
【0029】
したがって、一対の案内部材12B、12C及びベース12Aによりレール11A(ストライカ11)の水平方向変位が規制される。そして、突部12Dが溝部11Bに嵌り込むことによりレール11A(ストライカ11)の上下方向変位が規制される。
【0030】
つまり、支持部材12は、ストライカ11が溝部11Bの延び方向に沿った方向のみに変位することを許容した状態で当該ストライカ11を変位可能に支持する。なお、ベース12A、レール11A及び一対の案内部材12B、12Cはプレス加工等の金属加工にて成形されている。
【0031】
一対の案内部材12B、12Cはレーザ溶接等によりベース12Aに固定されている。具体的には、案内部材12Bはベース12Aに対して鉛直方向上方側からベース12Aに固定されている。案内部材12Cはベース12Aに対して鉛直方向下方側からベース12Aに固定されている。
【0032】
2.2 電動モータ及び減速機構等
電動モータ13は、レール11A、つまりストライカ11を変位させる駆動力を発生する。減速機構14は、電動モータ13で発生した駆動力を減速してレール11Aに伝達する。本実施形態に係る減速機構14は、
図3に示すように、ラック14A及びピニオン14B等を有して構成されている。
【0033】
ラック14Aは、ストライカ11と一体化されて当該ストライカ11と一体的に変位する部材であって、ピニオン14Bと噛み合う歯が設けられたレール状の部材である。なお、本実施形態に係るラック14Aは、レール11Aのうち案内部材12C側に設けられている。
【0034】
つまり、本実施形態に係るラック14Aはレール11Aを介してストライカ11と一体化されている。ラック14Aの歯先を連ねた仮想線L1(
図4参照)は、溝部11Bの延び方向、つまりシートバック3の揺動方向に沿うように円弧状に湾曲している。
【0035】
ピニオン14Bはラック14Aと噛み合う歯車である。当該ピニオン14Bは、
図2に示すように、電動モータ13側から駆動力が供給されて回転する。ピニオン14Bと電動モータ13の出力軸13Aとは、伝達軸13Bにより連結されている。
【0036】
伝達軸13Bは、ピニオン14Bと噛み合うセレーションやスプライン等の係合部13Cを有するとともに、ピニオン14Bと出力軸13Aとの芯ずれを吸収する機能を有する。
【0037】
なお、本実施形態では案内部材12Cに滑り軸受部13Dが設けられている。滑り軸受部13Dは、伝達軸13Bの軸線方向一端側を回転可能に支持する。伝達軸13Bの軸線方向他端側は、ヒンジピン13Fを介して出力軸13Aと連結されている。
【0038】
ヒンジピン13Fは、出力軸13Aに設けられた貫通穴13Gに挿入された棒状の部材であって、伝達軸13Bを出力軸13Aに対して揺動可能に連結する。このため、伝達軸13Bは、ピニオン14Bと出力軸13Aとの芯ずれを吸収しながら、出力軸13Aの回転をピニオン14Bに伝達する。
【0039】
図2に示すように、ピニオン14Bの側面側、つまりピニオン14Bの回転軸線方向端部側は、ベース12A及び案内部材12Cにより覆われている。このため、ベース12A及び案内部材12Cは、ピニオン14Bの側面側を覆う覆い部材としても機能する。
【0040】
なお、電動モータ13は、ベース12Aを挟んでピニオン14Bと反対側に配設されている。ベース12Aには、電動モータ13のフランジ部13Eをベース12Aに組み付けるためのステー部12E、12Fが設けられている。
【0041】
ステー部12Eはベース12Aに溶接固定されている。ステー部12Fは案内部材12Cに設けられている。そして、電動モータ13は、ビス等の機械的締結具によりステー部12E、12Fに固定されている。
【0042】
3.本実施形態に係るリクライニング調節装置の特徴
本実施形態では、電動モータ13で発生した駆動力を減速してストライカ11に伝達する減速機構14を備えることを特徴とする。
【0043】
これにより、本実施形態では、減速機構14をロック機構として機能させることができる。すなわち、減速機構14は、電動モータ13で発生した駆動力を減速してストライカ11に伝達するので、減速機構14の出力側を回転させる際に大きな回転抵抗が発生する。
【0044】
つまり、上記回転抵抗がストライカ11の変位を規制する規制力となる。したがって、減速機構14を「ストライカ11を固定するロック機構」として機能させることができる。このため、本実施形態では、ストライカ11の変位を規制するロック機構を廃止してリクライニング調節装置10の構造を簡素な構造としている。
【0045】
本実施形態では、減速機構14は、ストライカ11と一体化されて当該ストライカ11と一体的に変位するラック14A、及びラック14Aと噛み合うピニオン14Bであって、電動モータ13側から駆動力が供給されて回転するピニオン14Bを有して構成されていることを特徴とする。
【0046】
これにより、本実施形態では、減速機構14の大型化を抑制しながら、大きな減速比を得ることができる。したがって、リクライニング調節装置10の大型化を抑制しながら、確実にストライカ11の位置を固定することが可能となる。
【0047】
本実施形態では、ラック14Aは、シートバック3の揺動方向に沿うように円弧状に湾曲していることを特徴とする。これにより、シートバック3の揺動に追従してストライカ11を変位させることができるので、ストライカ11を滑らかに変位させることが可能となる。
【0048】
本実施形態では、ピニオン14Bの側面側、つまりピニオン14Bの回転軸線方向端部側は、ベース12A及び案内部材12C等の覆い部材により覆われていることを特徴とする。これにより、ピニオン14Bとラック14Aとの噛み合い箇所に異物が噛み込んでしまう等の不具合の発生を抑制できる。
【0049】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係る減速機構14は、ラック14A及びピニオン14Bを有して構成されていた。これに対して、本実施形態では、減速機構14による駆動力伝達経路のうちピニオン14Bより電動モータ13側に遊星歯車機構を設けたものである。
【0050】
これにより、本実施形態では、さらに大きな減速比を得ることができる。したがって、リクライニング調節装置10の大型化を抑制しながら、より確実にストライカ11の位置を固定することが可能となる。
【0051】
図5に示すように、遊星歯車機構14Cは、電動モータ13で発生した駆動力を減速する歯車機構であって、太陽歯車14D、複数(本実施形態では2つ)の遊星歯車14E、14F、円環状の内歯車14G、及び遊星キャリア(図示せず。)等を有する歯車機構である。
【0052】
本実施形態に係る遊星歯車機構14Cは、電動モータ13のハウジングに内蔵されている。このため、遊星歯車機構14Cにて減速された回転力が出力軸13Aから出力される。
【0053】
そして、本実施形態に係る遊星歯車機構14Cでは、太陽歯車14Dは電動モータ13から駆動力を受けて回転し、内歯車14Gが上記ハウジング等に固定され、かつ、遊星キャリアの回転、つまり複数の遊星歯車14E、14Fの公転運動が出力軸13A側に伝達される。
【0054】
(第3実施形態)
上述の実施形態では、リクライニング調節装置10が車両本体に組み付けられ、ラッチ又はフック等の係合部3Aがシートバック3に設けられていた。これに対して、本実施形態は、
図6に示すように、リクライニング調節装置10をシートに設け、かつ、係合部3Aを車両本体に設けたものである。なお、リクライニング調節装置10の構造は、上述の実施形態に係るリクライニング調節装置10と同じである。
【0055】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、本発明に係るリクライニング調節装置10及び車両用シート装置を自動車に適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、鉄道車両にも本発明を適用できる。
【0056】
上述の実施形態では、ロック機構を廃止していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、電動モータ13にブレーキ機構等のロック機構を設けてもよい。
なお、本発明では減速機構14を備えるので、ブレーキ機構を設けても当該ブレーキ機構の制動力を小さくできる。したがって、リクライニング調節装置10の構成を簡素な構造とすることが可能となる。
【0057】
第2実施形態では、遊星歯車機構14Cは電動モータ13のハウジングに内蔵され、かつ、太陽歯車14Dが入力歯車であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、内歯車14Gを入力歯車とし、遊星歯車機構14Cを電動モータ13と別体とした構成であってもよい。
【0058】
上述の実施形態に係る減速機構14は、ラック14A及びピニオン14Bを有して構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、遊星歯車機構14Cのみの構成とする、又は回転運動を平行運動に変換する機構として、ラック14A及びピニオン14Bに代えて、ウォームギア及びウォームホィールを有する減速機構14を採用してもよい。
【0059】
上述の実施形態では、コの字状又はCの字状のストライカ11により本発明に係る被係合部11が構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばピン状の被係合部11、及び係合部3A側に向けて開口したコの字状又はCの字状の被係合部11等であってもよい。
【0060】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。