特許第6354544号(P6354544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6354544鋳造用アルミニウム合金の脱リン方法及び脱リン用フラックス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354544
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】鋳造用アルミニウム合金の脱リン方法及び脱リン用フラックス
(51)【国際特許分類】
   C22B 21/06 20060101AFI20180702BHJP
   B22D 1/00 20060101ALI20180702BHJP
   B22D 21/04 20060101ALI20180702BHJP
   C22B 9/10 20060101ALI20180702BHJP
   C22C 1/06 20060101ALI20180702BHJP
   C22B 9/05 20060101ALN20180702BHJP
【FI】
   C22B21/06
   B22D1/00 A
   B22D21/04 A
   C22B9/10 101
   C22C1/06
   !C22B9/05
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-239369(P2014-239369)
(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-98433(P2016-98433A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】豊田 充潤
(72)【発明者】
【氏名】森中 真行
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−080920(JP,A)
【文献】 特開昭57−194220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00〜61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造用アルミニウム合金の溶湯にフッ化カルシウムを添加することにより、リン化カルシウムを生成する第1の工程と、
前記第1の工程においてリン化カルシウムが生成された前記溶湯に塩化カリウムを添加することにより、該塩化カリウムに前記溶湯内のリン化カルシウムを付着させる第2の工程と、
前記第2の工程においてリン化カルシウムが付着した塩化カリウムを滓として前記溶湯の液面上に浮上させる第3の工程と、
を備え
前記第1の工程におけるフッ化カルシウムの添加及び前記第2の工程における塩化カリウムの添加は、60重量%〜90重量%のフッ化カルシウムと10重量%〜40重量%の塩化カリウムとによって形成されるフラックスが前記溶湯に散布されることにより実現されることを特徴とする鋳造用アルミニウム合金の脱リン方法。
【請求項2】
鋳造用アルミニウム合金からリンを除去するために用いられる脱リン用フラックスであって、
60重量%〜90重量%のフッ化カルシウムと10重量%〜40重量%の塩化カリウムとからなることを特徴とする脱リン用フラックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造用アルミニウム合金の溶湯からリンを除去するうえで好適な鋳造用アルミニウム合金の脱リン方法及び脱リン用フラックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばJIS規格AC4CH合金に代表されるアルミニウム合金は、高い靱性を有することから、アルミニウムホイールなどの重要保安部品に多用されている。しかし、アルミニウム合金の鋳物中にリン(P)が多量に含まれていると、靱性が低下するという不都合が生ずる。そこで、アルミニウム合金の靱性を確保すべく、その溶湯段階においてリンを除去する脱リン処理を行うことが必要である。アルミニウム合金の脱リン処理としては、塩素ガスを用いたものがある(例えば、特許文献1参照)と共に、添加剤としてナトリウムを含むフラックスを用いたものがある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−080920号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】森中真行,豊田充潤 日本鋳造工学会,「鋳造工学」第85巻,第5号,262ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1記載の如くアルミニウム合金の脱リン処理として塩素ガスを用いる手法では、塩素ガスを処理する設備を用意する必要があるので、製造設備が大掛かりとなる。
【0006】
また、上記した非特許文献1記載の如くアルミニウム合金の脱リン処理としてフラックスを用いる手法では、そのフラックスがナトリウム(Na)を含む混合塩であるので、かかるフラックスがアルミニウム合金の溶湯に散布されると、その溶湯中にナトリウムが混入する。ナトリウムが上記の溶湯中に混入すると、溶湯の流動性が低下するので、その溶湯が鋳型に充填され難くなる。このため、かかる手法では、アルミニウム合金の鋳物を製造するうえで、鋳型への未充填不良が発生し易い。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、大規模な設備を用いることなくアルミニウム合金の溶湯からリンを除去することができると共に、その溶湯を鋳型へ適切に充填させることが可能な鋳造用アルミニウム合金の脱リン方法及び脱リン用フラックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、鋳造用アルミニウム合金の溶湯にフッ化カルシウムを添加することにより、リン化カルシウムを生成する第1の工程と、前記第1の工程においてリン化カルシウムが生成された前記溶湯に塩化カリウムを添加することにより、塩化カリウムに前記溶湯内のリン化カルシウムを付着させる第2の工程と、前記第2の工程においてリン化カルシウムが付着した塩化カリウムを滓として前記溶湯の液面上に浮上させる第3の工程と、を備え、前記第1の工程におけるフッ化カルシウムの添加及び前記第2の工程における塩化カリウムの添加は、60重量%〜90重量%のフッ化カルシウムと10重量%〜40重量%の塩化カリウムとによって形成されるフラックスが前記溶湯に散布されることにより実現される鋳造用アルミニウム合金の脱リン方法である。
【0009】
また、本発明の一態様は、鋳造用アルミニウム合金からリンを除去するために用いられる脱リン用フラックスであって、60重量%〜90重量%のフッ化カルシウムと10重量%〜40重量%の塩化カリウムとからなる脱リン用フラックスである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大規模な設備を用いることなくアルミニウム合金の溶湯からリンを除去することができると共に、その溶湯を鋳型へ適切に充填させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態である鋳造用アルミニウム合金の脱リン方法の工程図である。
図2】本実施形態の脱リン方法を用いて鋳造用アルミニウム合金からリンを分離・除去するうえで用いる脱リン装置の構成図である。
図3】本実施形態の脱リン方法を用いた試験の結果を表す成分表の一例である。
図4】本実施形態の脱リン方法を用いた試験の結果を表す溶湯のミクロ組織の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて、本発明に係る鋳造用アルミニウム合金の脱リン方法及び脱リン用フラックスの具体的な形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態である鋳造用アルミニウム合金の脱リン方法の工程図を示す。図2は、本実施形態の脱リン方法を用いて鋳造用アルミニウム合金からリンを分離・除去するうえで用いる脱リン装置10の構成図を示す。
【0014】
本実施形態において、脱リン対象の鋳造用アルミニウム合金は、車両のアルミニウムホイールなどの鋳物に適用されるものであって、Al−Si−Mg系のAC4CH合金である。
【0015】
本実施形態の脱リン方法においては、先ず、上記のアルミニウム合金を、脱リン装置10が備える加熱炉で溶融させてそのアルミニウム合金の溶湯12を生成する(ステップ100)。尚、生成されるアルミニウム合金の溶湯12の重量は、例えば500kgである。また、このアルミニウム合金の溶湯12を生成するうえで用いる加熱炉は、るつぼ14を備えた例えばガス炉を用いるものである。この加熱炉は、例えば約500kgのアルミニウム合金の溶融に適したものである。この加熱炉は、アルミニウム合金を例えば溶湯温度700℃〜800℃程度まで加熱する。
【0016】
また、上記のアルミニウム合金の溶湯12には溶融当初から酸化物が含まれていることがあるため、その酸化物(主にアルミナ)を除去する処理を行う(ステップ110)。具体的には、上記の溶湯12の表面に浮上した酸化物(主にアルミナ)を治具を用いて掬って系外へ排出する。
【0017】
次に、上記の如く酸化物を除去したアルミニウム合金の溶湯12の液面上に脱リン用のフラックス16を散布する(ステップ120)。このフラックス16は、フッ化カルシウム(CaF)と塩化カリウム(KCl)とによって形成されている。このフラックス16は、60重量%〜90重量%のフッ化カルシウムと10重量%〜40重量%の塩化カリウムとを物理的にミキシングした混合物である。尚、散布されるフラックス16の重量は、アルミニウム合金の溶湯12中に含まれていると想定される量のリンを分離・除去するのに十分な量であればよく、例えばその溶湯12の重量に対して1%以下(尚、0.02%〜0.05%であってもよい。)である。かかる散布が行われると、上記のフラックス16は、アルミニウム合金の溶湯12中に溶融される。
【0018】
鋳造用アルミニウム合金の溶湯12において、リン(P)は、固体のリン化アルミニウム(AlP)を形成して懸濁している。かかる溶湯12に上記フラックス16の散布によりフッ化カルシウムが添加されると、以下の式(1)及び(2)に示す反応が生じて、溶湯12中のリンがカルシウムと結合してリン化カルシウム(具体的には、二リン化三カルシウム)を形成する。
【0019】
3CaF+2Al→2AlF+3Ca ・・・(1)
2AlP+3Ca→Ca3P+2Al ・・・(2)
【0020】
上記したフラックス16中に含まれる塩化カリウムは、上記のリン化カルシウムを付着する機能を有している。このため、上記の溶湯12に上記フラックス16の散布により塩化カリウムが添加されると、その塩化カリウムに上記の如く形成されるリン化カルシウムが付着される。
【0021】
上記の如くフラックス16を散布した後、不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスを用いた回転翼脱ガス処理を行う(ステップ130)。この回転翼脱ガス処理は、図2に示す脱リン装置10を用いて行われる。脱リン装置10は、るつぼ14と、回転翼18と、バッフルプレート20と、を備えている。回転翼18は、中空筒状に形成されている。回転翼18は、上部に設けられたガスが注入される注入口と、下部に設けられたガスが流出する流出口と、を有している。回転翼18は、るつぼ14に収められるアルミニウム合金の溶湯12を攪拌するため、その溶湯12に浸漬されると共に回転される部材である。バッフルプレート20は、回転翼18の回転時にるつぼ14内での溶湯12の流れを妨げるために設けられた板である。尚、脱リン装置10は、バッフルプレート20を備えていなくても、後述の脱リン効果を得ることは可能である。
【0022】
上記の脱リン装置10を用いた回転翼脱ガス処理は、回転翼18をアルミニウム合金の溶湯12中に浸漬させた状態で回転させつつ、その回転翼18の下方にアルゴンガスを噴出させることによって行われる。この回転翼脱ガス処理は、回転翼18を例えば400rpmで回転させつつアルゴンガスを噴出させる状態を例えば8分間以上継続させるものであって、その後に作動停止される。
【0023】
上記の回転翼脱ガス処理が行われると、るつぼ14内の溶湯12及びフラックス16が攪拌されることで、アルミニウム合金の溶湯12中に混入している水素(H)ガスが除去されると共に、その溶湯12中の酸化物がその溶湯12の液面に浮上され、また、その溶湯12中のリン化カルシウムが付着された塩化カリウムが滓としてその溶湯12の液面に浮上される。
【0024】
そこで次に、溶湯12の液面に浮上した酸化物を炉外へ取り出してその溶湯12から除去すると共に、上記したリン化カルシウムが付着された塩化カリウムを滓として炉外へ取り出して溶湯12の中のリンをその溶湯12から除去する(ステップ140)。この除去は、例えば治具(例えば鉄製の柄杓)などで酸化物や塩化カリウムの滓を掬うことにより実現されることとすればよい。
【0025】
そして、上記の如く水素ガスや酸化物,リンが除去されたアルミニウム合金の溶湯12を鋳型に流し込むことにより、所望形状の鋳造物(例えばアルミニウムホイールなど)を鋳造する(ステップ150)。尚、かかる鋳造は、上記の溶湯12を柄杓でるつぼ14から掬って鋳型へ流し込む重力鋳造法で行われるものとしてもよいし、或いは、低圧鋳造法やダイキャスト法などの他の鋳造方法で行われるものとしてもよい。
【0026】
上記の鋳造が行われれば、水素や酸化物,リンが除去された溶湯12によって鋳造物を成形することができる。このため、成形される鋳造物中に水素や酸化物,リンが混入しない或いはその量が少なくなるので、良質な鋳造物を鋳造することができる。特に、リンが混入しない或いはそのリン量が少なくなるので、鋳造物の靱性を向上させることができる。
【0027】
また、本実施形態の脱リン装置10による脱リン方法においては、鋳造用アルミニウム合金の溶湯12からリンを除去するうえで塩素ガスを用いることは不要である。このため、本実施形態によれば、塩素ガスを処理する大掛かりな設備を用意する必要はないので、鋳造用アルミニウム合金の溶湯12からのリン除去を大規模な設備を用いることなく実現することができる。
【0028】
更に、ナトリウムは、カリウムに比べて流動性の低い物質であるので、溶湯12に混入していると、その溶湯12が鋳型に充填され難くなる。これに対して、本実施形態の脱リン装置10による脱リン方法においては、鋳造用アルミニウム合金の溶湯12からリンを除去するうえでその溶湯12に添加するフラックスにナトリウムを用いない。このため、本実施形態によれば、上記の溶湯12にナトリウムが混入しないので、その溶湯12の流動性が低下するのを抑制することができる。
【0029】
従って、本実施形態の脱リン装置10による脱リン方法によれば、大規模な設備を用いることなく鋳造用アルミニウム合金の溶湯12からリンを除去しつつ、ナトリウム混入に伴うその溶湯12の流動性低下を抑止して、その溶湯12を鋳型へ適切に充填させることができる。
【0030】
また、本実施形態の脱リン装置10による脱リン方法においては、鋳造用アルミニウム合金の溶湯12からリンを除去するうえでその溶湯12に添加するフラックス16に、60重量%〜90重量%のフッ化カルシウムと10重量%〜40重量%の塩化カリウムとの混合物が用いられる。フッ化カルシウムの配合量が60重量%を下回る場合は脱リン効果が低下する。また、塩化カリウムの配合量が10重量%を下回る場合はリン化カルシウムを付着させる効果が低下する。この点、脱リン効果とリン化カルシウムの付着効果とを両立させるうえでは、溶湯12に添加するフラックスを、60重量%〜90重量%のフッ化カルシウムと10重量%〜40重量%の塩化カリウムとの混合物とすることが有効である。従って、本実施形態によれば、フッ化カルシウムによる脱リン効果と塩化カリウムによるリン化カルシウムの付着効果との両立を図ることができる。
【0031】
上記した本実施形態の脱リン方法に従って試験を行った。すなわち、脱リン対象の鋳造用アルミニウム合金としてAC4CH合金(7%のシリコン(Si)含む)を用いることとし、500kgのAC4CH合金の溶湯12に、その溶湯重量に対する0.05%のフラックス16を散布した。この際、AC4CH合金中のリン含有量は、フラックス16の散布前は13ppmであり、溶湯12の温度は730℃であった。次に、脱リン装置10の回転翼18を溶湯12中に浸漬させ、アルゴンガスを注入しながらその回転翼18を400rpmで回転させた。そして、その回転翼18を8分間回転させた後にその回転を停止させ、その後に溶湯12の液面に浮遊する滓を除去した。
【0032】
かかる脱リン試験の結果、図3に示す如く、AC4CH合金中のリン含有量が13ppmから3ppmへ低下した。この際、AC4CH合金のミクロ組織は、図4に示す如く、リン含有量が比較的多いときの針状のものからリン含有量が比較的少ないときの微細粒状のものへ変化した。従って、鋳造用アルミニウム合金であるAC4CH合金からリンを除去できる効果が検証されたと共に、そのリン除去を実現するうえで大規模な設備が不要であることが検証された。
【0033】
尚、上記の実施形態においては、アルミニウム合金の溶湯12中でリン化カルシウムが付着される塩化物として、塩化カリウムを用いている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、アルミニウム合金の溶湯12中でリン化カルシウムが付着される塩化物として、塩化カリウムと塩化ナトリウムとからなる混合塩や更に他の塩を含む混合塩を用いることとしてもよい。
【0034】
尚、以上の実施例に関し、更に以下を開示する。
【0035】
[1]鋳造用アルミニウム合金の溶湯にフッ化カルシウムを添加することにより、リン化カルシウムを生成する第1の工程と、前記第1の工程においてリン化カルシウムが生成された前記溶湯に塩化カリウムを添加することにより、塩化カリウムに前記溶湯内のリン化カルシウムを付着させる第2の工程と、前記第2の工程においてリン化カルシウムが付着した塩化カリウムを滓として前記溶湯の液面上に浮上させる第3の工程と、を備える鋳造用アルミニウム合金の脱リン方法。
【0036】
上記[1]記載の構成によれば、鋳造用アルミニウム合金の溶湯にフッ化カルシウムを添加して、その溶湯内のリンをそのカルシウムと結合させてリン化カルシウムを形成することができる。また、そのリン化カルシウムが生成された溶湯に塩化カリウムを添加して、その塩化カリウムに溶湯内のリン化カルシウムを付着させることができる。そして、そのリン化カルシウムが付着された塩化カリウムを滓として溶湯の液面上に浮上させることができる。従って、溶湯の液面上に浮上した、リン化カルシウムが付着された塩化カリウムを滓として外部に取り出すことで、鋳造用アルミニウム合金の溶湯からリンを除去することができる。
【0037】
かかる手法によれば、鋳造用アルミニウム合金の溶湯からリンを除去するうえで塩素ガスを用いないと共にナトリウムを添加しない。従って、本発明によれば、大規模な設備を用いることなくアルミニウム合金の溶湯からリンを除去することができると共に、その溶湯を鋳型へ適切に充填させることができる。
【0038】
[2]上記[1]記載の鋳造用アルミニウム合金の脱リン方法において、前記第1の工程におけるフッ化カルシウムの添加及び前記第2の工程における塩化カリウムの添加は、60重量%〜90重量%のフッ化カルシウムと10重量%〜40重量%の塩化カリウムとによって形成されるフラックスが前記溶湯に散布されることにより実現される鋳造用アルミニウム合金の脱リン方法。
【0039】
上記[2]記載の構成によれば、フッ化カルシウムによる脱リン効果と塩化カリウムによるリン化カルシウムの付着効果とを両立させることができる。
【0040】
[3]鋳造用アルミニウム合金からリンを除去するために用いられる脱リン用フラックスであって、60重量%〜90重量%のフッ化カルシウムと10重量%〜40重量%の塩化カリウムとからなる脱リン用フラックス。
【0041】
上記[3]記載の構成によれば、大規模な設備を用いることなくアルミニウム合金の溶湯からリンを除去することができると共に、その溶湯を鋳型へ適切に充填させることができる。また、フッ化カルシウムによる脱リン効果と塩化カリウムによるリン化カルシウムの付着効果とを両立させることができる。
【符号の説明】
【0042】
10 脱リン装置
12 鋳造用アルミニウム合金の溶湯
14 るつぼ
16 フラックス
18 回転翼
図1
図2
図3
図4