(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、画像形成装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。同図に示したように、画像形成装置10は、制御部11と、記憶部12と、操作部13と、表示部14と、画像読取部15と、画像形成部16と、通信部17と、画像処理部18とを備える。また、画像形成装置10の各部は、バス19に接続されており、このバス19を介して各種データの授受を行う。
【0012】
制御部11は、画像形成装置10の各部の動作を制御する手段である。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶媒体(主記憶装置)とを備える。CPU(後述するCPU110)は、ROMおよび記憶部12に記憶されているプログラムを読み出し、RAMを作業エリアにしてプログラムを実行する。制御部11は、このようにプログラムを実行することにより、用紙に画像を形成すること、原稿から画像を読み取って画像データを生成すること、通信回線を介して他の装置と通信を行うことなどを実現する。
【0013】
記憶部12は、データを記憶する手段である。記憶部12は、ハードディスク、フラッシュメモリなどの記憶媒体(補助記憶装置)を備え、通信部17で受信したデータや画像形成装置10で生成されたデータなどを記憶する。また、記憶部12は、いわゆるメモリーカードやUSBメモリなどの着脱可能な記憶媒体(リムーバブルメディア)と、その記憶媒体にデータを読み書きする手段とを含んでもよい。記憶部12は、後述の制御プログラムを記憶する。
【0014】
操作部13は、ユーザの操作を受け付ける手段である。操作部13は、操作子(ボタン、キーなど)を備え、押下された操作子に応じた制御信号を制御部11に供給する。また、操作部13は、表示部14と、表示部14の表示面に重ねて設けられたセンサとを備え、押圧した位置に応じた制御信号を制御部11に供給するタッチパネルによって構成されてもよい。
【0015】
表示部14は、情報を表示する手段である。表示部14は、表示装置として例えば液晶ディスプレイを有する。表示部14は、制御部11の制御の下、画像形成装置10を操作するためのメニュー画面を表示する。
【0016】
画像読取部15は、原稿を読み取って画像データに変換する手段である。画像読取部15は、原稿を光学的に読み取り、読み取った原稿の画像を表す画像データを生成する画像読取装置を備えている。画像読取部15は、生成した画像データを画像処理部18に供給する。
【0017】
画像形成部16は、用紙に画像を形成する手段である。画像形成部16は、電子写真方式によって用紙にYMCKの各色成分のトナー像を形成する画像形成機構を具備している。なお、画像形成機構は、電子写真方式に限らず、インクジェット方式などの他の記録方式が用いられてもよい。
【0018】
通信部17は、データを送受信する手段である。通信部17は、通信回線に接続されており、外部装置と有線または無線の通信を行う通信インタフェース(以下、「通信IF」という)として機能する。本発明において、通信部17は、複数の通信IFとして機能する。通信部17の具体的な構成と動作については後述する。
【0019】
画像処理部18は、画像データに対して画像処理を実行する手段である。ここでいう画像処理とは、例えば、色補正や階調補正である。画像形成装置10においてプリント機能が実行される場合、画像処理部18は、画像処理が施された画像データを画像形成部16に供給する。
【0020】
図2は、比較例に係る通信部17のハードウェア構成を示す図である。この例で、通信部17は、2つのPHY(Physical Layer)71(71Aおよび71B)と、2つのLSI72(72Aおよび72B)と、2つのMAC(Media Access Controller)73(73Aおよび73B)とを有する。PHY71は、OSI参照モデルの物理層において、ネットワークとの接続およびデータの伝送に関する物理的な方式を規定する。
図2において、PHY71Aは、第1の通信IF(以下、「通信IF1」という)として機能し、PHY71Bは、第2の通信IF(以下、「通信IF2」という)として機能する。通信IF1と通信IF2とは、互いに異なる通信回線に接続される。具体的な例として、通信IF1と通信IF2のうちの一方はインターネットに接続され、他方はイントラネットなどのLAN(Local Area Network)に接続される。別の例で、通信IF1と通信IF2とは互いに異なるグループ(部署、部門など)の通信回線に接続される。なお、通信IF1と通信IF2とは、有線と無線のどちらの方式であってもよい。MAC73は、OSI参照モデルのデータリンク層において、フレーム(データの送受信単位)の送受信方法、フレームの形式、および誤り検出方法などを規定しており、通信IFにおいて受信されたパケット(データユニットの一例)に対して予め定められた処理を行う。
【0021】
MAC73の動作は、制御部11のCPU110により制御される。この例で、MAC73の動作状態には、通常状態(第1状態の一例)と節電状態(第2状態の一例)とがある。節電状態とは通常状態に対して消費電力が相対的に低い状態である。通常状態において、MAC73は通常の処理動作に必要な電力が供給されているため通信IFにおいて受信されたパケットを処理することが可能である。節電状態においては、MAC73はこれに供給される電力が一部または全部が供給されず、節電状態は、パケットを処理することが不可能な状態である。通信IF1と通信IF2において予め定められた時間を超えて予め定められたパケットが受信されない場合や画像形成装置に予め定められた時間を超えて何ら操作指示がなかった場合など予め決められた条件(以下、「節電条件」という)が満たされると、CPU110は、MAC73の動作状態を通常状態から節電状態に遷移させる。具体的には、MAC73に供給する電力を通常動作に必要な状態からその一部または全部を供給しない状態に遷移させる。以下では、MAC73AおよびMAC73Bが節電状態であることを「通信部17が節電状態である」と表現する。CPU110は、また、MAC73の動作状態を通常状態から節電状態に遷移させると、自らの動作状態も通常状態から節電状態に遷移させる。具体的には、CPU110に供給する電力を通常動作に必要な状態からその一部または全部を供給しない状態に遷移させる。CPU110は、通常状態であるときに、MAC73の動作を制御する。
【0022】
LSI72は、節電状態にあるCPU110とMAC73に代わって、通信IFにおいて受信されたパケットを処理する、いわゆる待機応答LSIである。LSI72は、CPU110およびMAC73における電力消費を抑制するために、例えば、PHY71とMAC73との間に設けられる。LSI72は、通信IFにおいて受信されたパケットのうち予め定められた条件を満たすパケットに対してCPU110およびMAC73に代わって応答する。
図2の例では、LSI72Aは、節電状態において、通信IF1を介して受信したパケットのうち予め定められた条件を満たすパケットに対して応答する。LSI72Bは、節電状態において、通信IF2を介して受信したパケットのうち予め定められた条件を満たすパケットに対して応答する。
【0023】
図2に示す例では、通信IF1と通信IF2のそれぞれに対してLSI72が別個に設けられている。上述の通り、LSI72は、CPU110およびMAC73における電力消費を抑制するために設けられるが、LSI72自体も電力を消費するため、各通信IFに対してLSI72が別個に設けられると、通信部17全体として見たときの節電状態における電力消費は通信IFの数に比例して増加する。本発明に係る画像形成装置10は、複数の通信IFに対して共通のLSI72を設けることにより、節電状態における電力消費を抑制する。
【0024】
図3は、本発明に係る通信部17のハードウェア構成を示す図である。
図3において、通信部17は、2つのPHY71(71Aおよび71B)と、1つのLSI72Aと、2つのMAC73(73Aおよび73B)と、セレクタ74とを有する。
図3において、PHY71とMAC73とは、
図2と同様に機能する。
【0025】
セレクタ74は、通信IF2を通じて受信されたパケット、または通信IF2を通じて受信されたパケットの伝送先を選択する回路である。セレクタ74には、PHY71Aが受信したパケットおよびPHY71Bが受信したパケットがそれぞれ別個に入力される。PHY71Bの後段のMAC73Bが節電状態であるときは、セレクタ74は、PHY71Aが受信したパケットおよびPHY71Bが受信したパケットを、LSI72Aに出力する。MAC73Bが通常状態であるときは、セレクタ74は、PHY71Aが受信したパケットのみをLSI72Aに出力する。セレクタ74の動作は、CPU110がMAC73Bの動作状態を制御するのに連動して、CPU110により制御される。具体的には、CPU110とセレクタ74とは図示せぬ信号線を介して接続されており、CPU110がMAC73Bの動作状態を通常状態から節電状態に遷移させると、CPU110は、MAC73Bが節電状態に遷移したことをセレクタ74に通知する。セレクタ74は、CPU110からこの通知を取得すると、PHY71Aが受信したパケットおよびPHY71Bが受信したパケットを取得する。また、CPU110がMAC73Bの動作状態を節電状態から通常状態に遷移させると、CPU110は、MAC73Bが通常状態に遷移したことをセレクタ74に通知する。セレクタ74は、CPU110からこの通知を取得すると、PHY71Aが受信したパケットのみを取得する。
【0026】
図4は、通信IF1と通信IF2において受信されたパケットの流れを説明する図である。
図4Aは、CPU110、MAC73A、およびMAC73Bの動作状態が通常状態であるときのパケットの流れを示す。
図4Bは、CPU110、MAC73A、およびMAC73Bの動作状態が節電状態であるときのパケットの流れを示す。なお、
図4B(並びに後述する
図6〜
図8、
図13、
図16、および
図17)における斜線で示された領域は、動作状態が節電状態である領域を表す。
図4に示す通り、通信IF1において受信されたパケットは、CPU110とMAC73の動作状態に関係なく、セレクタ74を介してLSI72Aに入力される。通信IF2において受信されたパケットは、MAC73Bが通常状態であるときにはMAC73Bに入力され(
図4A)、MAC73Bが節電状態であるときにはセレクタ74を介してLSI72Aに入力される(
図4B)。
図4に示す通り、セレクタ74は、通信IF2において受信されたパケットの伝送先を選択する役割を果たす。具体的には、セレクタ74は、MAC73Bが通常状態であるときには、通信IF2が受信したパケットの伝送先としてMAC73Bを選択し、MAC73Bが節電状態であるときには、通信IF2が受信したパケットの伝送先としてLSI72Aを選択する。通信IF1が受信したパケットの伝送先は常にLSI72Aである。
【0027】
再び
図3を参照する。LSI72Aは、パススルーモードおよび待機応答モードのいずれかで動作する。パススルーモードとは、前段の回路(セレクタ74)から入力されたパケットを後段の回路(MAC73A)に出力するモードである。待機応答モードとは、入力されたパケットを後段の回路には出力せず、そのパケットに対して予め定められた処理を行うモードである。待機応答モードにおける処理の詳細については後述する。パススルーモードと待機応答モードとの切り替えは、CPU110により行われる。CPU110は、自らの動作状態が通常状態から節電状態に遷移するときに、LSI72Aの動作モードをパススルーモードから待機応答モードに切り替え、自らの動作状態が節電状態から通常状態に遷移すると、LSI72Aの動作モードを待機応答モードからパススルーモードに切り替える。
【0028】
待機応答モードにおいて、LSI72Aは、セレクタ74からパケットが入力されると、以下の(ア)から(ウ)のいずれかの動作を行う。
(ア)入力されたパケットに対して自ら応答する。
LSI72Aは、入力されたパケットのうち、CPU110の動作状態を節電状態から通常状態に遷移させる(節電状態を解除する)必要のないパケット(すなわち、CPU110およびMAC73Aでの処理の必要のないパケット)に対して応答する。応答は、パケットの送信元である外部装置に対して、応答のためのパケットを送信することにより行われる。以下では、(ア)の動作を「自動応答」と表現する。
(イ)入力されたパケットを破棄する。
LSI72Aは、入力されたパケットのうち、CPU110の節電状態を解除する必要のないパケットであって、且つ、自動応答する必要のないパケットを破棄する。
(ウ)CPU110の節電状態を解除する。
LSI72Aは、CPU110の節電状態を解除する必要があるパケット(すなわち、CPU110およびMAC73Aでの処理が必要なパケット)が入力されると、CPU110の節電状態を解除する。以下では、(ウ)の処理を「節電復帰動作」と表現する。節電復帰動作の詳細については後述する。
【0029】
上記の(ア)から(ウ)の処理のうちいずれの処理が行われるかは、パケットの属性、例えばプロトコルおよび宛先に応じて決定される。LSI72Aの記憶領域には、パケットのプロトコルおよびパケットの宛先と、LSI72Aによる動作との対応関係を示す情報(以下、「対応情報」という)が予め記憶されている。LSI72Aは、待機応答モード中にパケットが入力されると、パケットのプロトコルおよびパケットの宛先を解析し、対応情報に従って、上記の(ア)から(ウ)のいずれかの処理を行う。
【0030】
図5は、対応情報を例示する図である。LSI72Aは、パケットのプロトコル、およびパケットの宛先(IP(Internet Protocol)アドレスおよびポート番号)の組み合わせに応じて異なる動作を行う。なお、
図5では、便宜上、IPアドレスについては簡略化して示している。この例で、IPアドレス「A.A.A.A」および「A.A.A.255」は、パケットの宛先がMAC73Aであることを示し、「B.B.B.B」および「B.B.B.255」は、パケットの宛先がMAC73Bであることを示す。したがって、対応情報には、宛先がMAC73Aであるパケットと宛先がMAC73Bであるパケットの各々に対するLSI72Aの動作が示されている。
図5では、例えば、入力されたパケットのプロトコルがARP(Address Resolution Protocol)であり、IPアドレスが「A.A.A.A」である場合、LSI72Aは当該パケットに対して自動応答する。別の例で、入力されたパケットのプロトコルがTCP(Transmission Control Protocol)、IPアドレスが「B.B.B.B」、ポート番号が「515」である場合、LSI72Aは節電復帰動作を行う。別の例で、入力されたパケットのプロトコルがTCP、IPアドレスが「B.B.B.B」、ポート番号が「515」および「161」以外の番号(Other)である場合、LSI72Aは、当該パケットを破棄する。
図5において、識別番号は、対応情報に含まれる各レコードを識別するための番号である。LSI72Aは、待機応答モードにおいてパケットを処理するために参照したレコードの識別番号を記憶領域に記憶する。記憶領域には、最後に参照されたレコードの識別番号が記憶される。
【0031】
図6は、通信部17が節電状態であり、LSI72Aが待機応答モード中にパケットに対して自動応答する様子を示す図である。
図6では、通信IF1においてパケットが受信されており、LSI72Aは、当該パケットに対して通信IF1を介して応答している(
図6(a)、(b))。
【0032】
図7は、通信部17が節電状態であり、LSI72Aが待機応答モード中にパケットを破棄する様子を示す図である。
図7では、通信IF1においてパケットが受信されており、LSI72Aは、当該パケットを破棄している(
図7(a)、(b))。なお、パケットの破棄は、通信IF2において受信されたパケットに対しても行われる。
【0033】
図8は、通信部17が節電状態であり、LSI72Aが待機応答モード中に節電復帰動作を行ったときの画像形成装置10の各部の動作を説明する図である。
図8では、通信IF1においてMAC73A宛てのパケットが受信された場合に、CPU110とMAC73Aとの節電状態が解除される様子を示している。
図8に示す通り、LSI72Aは、CPU110の節電状態を解除する必要があるパケットが入力されると(
図8(a))、当該パケットを記憶領域に記憶し、CPU110とMAC73Aの節電状態を解除するための信号(以下、「CPUオン信号」という)をCPU110に出力する(
図8(b))。CPU110は、LSI72AからCPUオン信号が入力されると、自らの動作状態を節電状態から通常状態に遷移させる。CPU110は、通常状態に遷移すると、MAC73Aの動作状態を節電状態から通常状態に遷移させる。このとき、CPU110は、MAC73Bの動作状態を節電状態のまま維持する。CPU110は、MAC73Aの動作状態が節電状態から通常状態に遷移すると、LSI72Aの動作モードを待機応答モードからパススルーモードに切り替える。LSI72Aは、パススルーモードに切り替わると、パケットをMAC73Aに出力する(
図8(c))。MAC73Aは、LSI72Aからパケットが受信されると、当該パケットに対する処理を行う。
【0034】
図9は、通信部17が節電状態であり、LSI72Aが待機応答モード中に節電復帰動作を行ったときの画像形成装置10の各部の動作を説明する別の図である。
図9では、通信IF2においてMAC73B宛てのパケットが受信された場合の各部の動作を示しており、CPU110とMAC73Aに加えて、MAC73Bの節電状態が解除される点が
図8に示した動作とは異なる。
図9では、まず、
図8と同様の処理が行われ、パススルーモードに切り替わったLSI72Aは、パケットをMAC73Aに出力する(
図9(a)〜(c))。MAC73Aは、受信されたパケットが自らに宛てて送信されたパケットでないと判断すると、当該パケットを破棄する(
図9(d))。MAC73Aは、パケットが破棄されたことを示す信号(以下、「パケット破棄信号」という)をCPU110に出力する。CPU110は、パケット破棄信号が入力されると、待機応答LSIの記憶領域に記憶された識別番号と対応情報を読み出す。CPU110は、読み出した識別番号と対応情報から、MAC73Aにおいて破棄されたパケットの宛先を特定する。この例では、CPU110は、MAC73Aにおいて破棄されたパケットの宛先がMAC73Bであることを特定する。CPU110は、宛先として特定されたMAC73Bの動作状態を節電状態から通常状態に遷移させる(
図9(e))。MAC73Bは、通常状態に遷移すると、破棄されたパケットと同じパケットが再び外部装置から自らに宛てて送信されてくるのを待つ。MAC73Bは、自らに宛てて再送されたパケットを受信すると(
図9(f))、当該パケットに対する処理を行う。
【0035】
図10(
図10Aおよび
図10B)は、通信部17が節電状態であり、待機応答モード中のLSI72Aによる処理を示すフローチャートである。
図10は、
図5に示した対応情報がLSI72Aの記憶領域に記憶されている場合の処理を示す。ステップS1において、LSI72Aは、入力されたパケットのプロトコルがARPであると判断すると(S1:YES)、処理をステップS11に移行し、ARPでないと判断すると(S1:NO)、処理をステップS2に移行する。
【0036】
ステップS11において、LSI72Aは、IPアドレスが「A.A.A.A」であると判断すると(S11:YES)、入力されたパケットに対して自動応答し(S111)、IPアドレスが「A.A.A.A」でないと判断すると(S11:NO)、処理をステップS12に移行する。ステップS12において、LSI72Aは、IPアドレスが「B.B.B.B」であると判断すると(S12:YES)、節電復帰動作を行う(S121)。この場合、
図9に示した動作が行われる。IPアドレスが「B.B.B.B」でないと判断すると(S12:NO)、LSI72Aは、入力されたパケットを破棄する(S13)。
【0037】
ステップS2において、LSI72Aは、入力されたパケットのプロトコルがICMP(Internet Control Message Protocol)であると判断すると(S2:YES)、処理をステップS21に移行し、ICMPでないと判断すると(S2:NO)、処理をステップS3に移行する。
【0038】
ステップS21において、LSI72Aは、IPアドレスが「A.A.A.A」であると判断すると(S21:YES)、節電復帰動作を行う(S211)。この場合、
図8に示した動作が行われる。IPアドレスが「A.A.A.A」でないと判断すると(S21:NO)、LSI72Aは、処理をステップS22に移行する。ステップS22において、LSI72Aは、IPアドレスが「B.B.B.B」であると判断すると(S22:YES)、節電復帰動作を行う(S221)。この場合、
図9に示した動作が行われる。IPアドレスが「B.B.B.B」であないと判断すると(S22:NO)、LSI72Aは、入力されたパケットを破棄する(S23)。
【0039】
ステップS3において、LSI72Aは、入力されたパケットのプロトコルがUDP(User Datagram Protocol)であると判断すると(S3:YES)、処理をステップS31に移行し、UDPでないと判断すると(S3:NO)、処理をステップS4に移行する。
【0040】
ステップS31において、LSI72Aは、IPアドレスが「A.A.A.A」または「A.A.A.255」のいずれかであると判断すると(S31:YES)、処理をステップS311に移行する。IPアドレスが「A.A.A.A」および「A.A.A.255」のどちらでもないと判断すると(S31:NO)、処理をステップS32に移行する。
【0041】
ステップS311において、LSI72Aは、ポート番号が「161」であると判断すると(S311:YES)、節電復帰動作を行う(S312)。この場合、
図8に示した動作が行われる。ポート番号が「161」でないと判断すると(S311:NO)、LSI72Aは、入力されたパケットを破棄する(S313)。
【0042】
ステップS32において、LSI72Aは、IPアドレスが「B.B.B.B」または「B.B.B.255」のいずれかであると判断すると(S32:YES)、処理をステップS321に移行する。IPアドレスが「B.B.B.B」および「B.B.B.255」のどちらでもないと判断すると(S32:NO)、LSI72Aは、入力されたパケットを破棄する(S33)。
【0043】
ステップS321において、LSI72Aは、ポート番号が「161」であると判断すると(S321:YES)、節電復帰動作を行う(S322)。この場合、
図9に示した動作が行われる。ポート番号が「161」でないと判断すると(S321:NO)、LSI72Aは、入力されたパケットを破棄する(S323)。
【0044】
ステップS4において、LSI72Aは、入力されたパケットのプロトコルがTCPであると判断すると(S4:YES)、処理をステップS41に移行し、TCPでないと判断すると(S4:NO)、入力されたパケットを破棄する(S5)。
【0045】
ステップS41において、LSI72Aは、IPアドレスが「A.A.A.A」であると判断すると(S41:YES)、処理をステップS411に移行する。IPアドレスが「A.A.A.A」でないと判断すると(S41:NO)、処理をステップS42に移行する。
【0046】
ステップS411において、LSI72Aは、ポート番号が「515」であると判断すると(S411:YES)、節電復帰動作を行う(S412)。この場合、
図8に示した動作が行われる。ポート番号が「515」でないと判断すると(S411:NO)、LSI72Aは、入力されたパケットを破棄する(S413)。
【0047】
ステップS42において、LSI72Aは、IPアドレスが「B.B.B.B」であると判断すると(S42:YES)、処理をステップS421に移行する。IPアドレスが「B.B.B.B」でないと判断すると(S42:NO)、LSI72Aは、入力されたパケットを破棄する(S43)。
【0048】
ステップS421において、LSI72Aは、ポート番号が「515」であると判断すると(S421:YES)、節電復帰動作を行う(S422)。この場合、
図9に示した動作が行われる。ポート番号が「515」でないと判断すると(S421:NO)、LSI72Aは、入力されたパケットを破棄する(S423)。
【0049】
以上で説明した通り、本発明に係る画像形成装置10では、通信IF1および通信IF2に対して別個にLSI72を設けることなく、MAC73AおよびMAC73Bの動作状態が制御される。したがって、複数の通信IFに対して別個にLSI72が設けられた場合に比べて、通信部17が節電状態であるときのLSI72による電力消費が抑制される。なお、
図3に示した構成において、通信IF1は、通信IF1と通信IF2とが接続される2つの通信回線のうち通信頻度の高い一方の通信回線に接続されることが好ましい。これにより、通信頻度の高い一方の通信回線が通信IF2に接続された場合に比べて、LSI72Aがパケットに対して自動応答する頻度が増え、通信部17が節電状態であるときの画像形成装置10全体としての節電効果が高くなる。
【0050】
図11は、画像形成装置10の機能構成を示すブロック図である。画像形成装置10は、第1処理手段101と、第2処理手段102と、応答処理手段103と、選択手段104とを有する。第1処理手段101は、通信IF1が受信したパケットに対して、通常状態において予め定められた処理を行い、節電状態において当該処理を行わない。第2処理手段102は、通信IF2が受信したパケットに対して、通常状態において予め定められた処理を行い、節電状態において当該処理を行わない。応答処理手段103は、第1処理手段101および第2処理手段102が第2状態である場合において、通信IF1または通信IF2が受信したデータに対し、第1処理手段101または第2処理手段102に代わって応答処理を行う。応答処理手段103は、記憶手段113(第2記憶手段の一例)を有する。記憶手段113は、受信したパケットに対する処理を示す情報を当該パケットの宛先毎に記憶する。選択手段104は、第2処理手段102が通常状態である場合、通信IF2が受信したパケットの伝送先として第2処理手段102を選択し、第2処理手段102が節電状態である場合、当該パケットの伝送先として第1処理手段101を選択する。
【0051】
図3に示した構成において、MAC73Aは、第1処理手段101の一例である。MAC73Bは、第2処理手段102の一例である。LSI72Aは、応答処理手段103の一例である。セレクタ74は、選択手段104の一例である。
【0052】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下で説明する変形例のうち、2つ以上のものが組み合わされて用いられてもよい。
【0053】
(1)変形例1
通信部17は、
図3に示した構成に限らない。通信部17は、例えば、通信IFにおいて受信されたパケットを記憶するメモリを有してもよい。
【0054】
図12は、変形例1に係る通信部17の構成を示す図である。
図12において、通信部17は、
図3に示した構成に加え、メモリ75を有する。メモリ75は、通信IF2において受信されたパケットを記憶する先入れ先出し型(First In, First Out型)のメモリであって、PHY71BとMAC73Bとの間に設けられる。
【0055】
図13は、変形例1において、LSI72Aが節電復帰動作を行ったときの画像形成装置10の各部の動作を説明する図である。
図13Aから
図13Cは、通信IF2においてMAC73B宛てのパケットが受信された場合の一連の動作を示しており、CPU110とMAC73Aに加えて、MAC73Bの節電状態が解除される点は、
図9に示した動作と共通する。
図13では、また、
図9に示した動作に加えて、通信IF2において受信されたパケットがメモリ75に記憶される(
図13A(a))。変形例1において、MAC73Bは、動作状態が節電状態から通常状態に遷移すると、メモリ75に記憶されたパケットを読み出す(
図13C(f))。
図13により、MAC73Bは、破棄されたパケットと同じパケットが再び外部装置から自らに宛てて送信されてくるのを待つ替わりに、メモリ75からパケットを読み出す。したがって、変形例1によれば、パケットの再送が保証されていない場合(例えば、SNMP(Simple Network Management Protocol)などにおいて、宛先のIPアドレスがブロードキャストアドレスである場合など)であっても、MAC73Bによりパケットが取得される。
【0056】
図14は、変形例1に係る画像形成装置10の機能的構成を示すブロック図である。
図14において、画像形成装置10は、
図11に示した構成に加えて、記憶手段105(第1記憶手段の一例)を有する。記憶手段105は、通信IF2において受信されたパケットを記憶する。第2処理手段102は、節電状態から通常状態に遷移すると、記憶手段105からパケットを読み出す。
図12に示した構成において、メモリ75は、記憶手段105の一例である。
【0057】
(2)変形例2
本発明は、単一の情報処理装置において適用される場合に限らない。本発明は、情報処理システムにおいて適用されてもよい。
【0058】
図15は、変形例2に係る情報処理システム200の構成を示す図である。
図15において、情報処理システム200は、画像形成装置10と中継装置20とを有する。
図15において、画像形成装置10は、2つのCPU110(CPU110AおよびCPU110B)を有する点、および、セレクタ74を有しない点が、
図3に示した構成とは異なる。この例で、CPU110AはMAC73Aの動作を制御し、CPU110BはMAC73Bの動作を制御する。中継装置20は、図示せぬ通信回線を介して入力されたパケットを画像形成装置10へと中継するスイッチングハブである。情報処理システム200において、中継装置20はセレクタ74の替わりに用いられる。中継装置20は、PHY71AおよびPHY71Bと別個の通信線を介して接続されており、入力されたパケットの伝送先を選択する役割を果たす。具体的には、中継装置20は、MAC73Bが通常状態であるときには、宛先がMAC73Bであるパケットの伝送先としてMAC73Bを選択し、MAC73Bが節電状態であるときには、当該パケットの伝送先としてMAC73Aを選択する。宛先がMAC73Aであるパケットの伝送先は常にLSI72Aである。
【0059】
図16は、CPU110AおよびCPU110Bの動作状態が通常状態から節電状態に遷移するときに情報処理システム200において行われる一連の動作を説明する図である。CPU110AおよびCPU110Bは、実施形態と同様に、節電条件を満たすと、MAC73の動作状態を通常状態から節電状態に遷移させ、且つ、自らの動作状態も通常状態から節電状態に遷移させる。なお、中継装置20には、パケットの宛先(IPアドレス)とパケットの伝送先とか予め対応付けられたテーブル(以下、「アドレステーブル」という)が記憶されている。
図16の例では、初期の状態のアドレステーブルには、IPアドレス「A.A.A.A」とMAC73Aとが対応付けられており、IPアドレスが「B.B.B.B」とMAC73Bとが対応付けられている。
図16において、中継装置20のブロック内に示されたIPアドレスは、アドレステーブルの情報を表す。ブロック内の上段に示されたIPアドレスはMAC73Bと対応付けられていることを示し、ブロック内の下段に示されたIPアドレスはMAC73Aと対応付けられていることを示す。
【0060】
図16において、CPU110Bは、節電条件が満たされると、CPU110の動作状態を通常状態から節電状態に遷移させるための信号(以下、「CPUオフ信号」という)をCPU110Aに出力する(
図16A(a))。CPU110Bは、CPUオフ信号を出力すると、PHY71BおよびMAC73B、並びに自らの動作状態を通常状態から節電状態に遷移させる(
図16B(b))。
【0061】
CPU110Aは、CPUオフ信号が入力されると、中継装置20に記憶されたアドレステーブルを書き換える。具体的には、CPU110は、GARP(Gratuitous Address Resolution Protocol)パケットを中継装置20に送信することにより、アドレステーブルにおけるIPアドレスが「B.B.B.B」とMAC73Aとを対応付ける(
図16B(c))。この状態で、IPアドレスが「B.B.B.B」または「B.B.B.255」であるパケット(MAC73B宛てのパケット)が中継装置20に入力されると、当該パケットの伝送先としてMAC73Aが選択される。CPU110Aは、GARPパケットを送信すると、LSI72Aの動作モードをパススルーモードから待機応答モードに切り替え、MAC73Aと自らの動作状態を通常状態から節電状態に遷移させる(
図16C(d))。
【0062】
図17は、待機応答モード中にLSI72Aが節電復帰動作を行ったときに情報処理システム200において行われる一連の動作を説明する図である。
図17では、MAC73B宛てのパケットが中継装置20に入力された場合の各部の動作を示す。
図17では、まず、
図8と同様の処理が行われてCPU110AとMAC73Aの節電状態が解除され、パススルーモードに切り替わったLSI72Aは、記憶領域に記憶されたパケットをMAC73Aに出力する(
図17A(a)〜(c))。次に、
図9と同様に、MAC73Aにおいてパケットが破棄され(
図17B(d))、パケット破棄信号がMAC73AからCPU110Aに出力される。CPU110Aは、パケット破棄信号が入力されると、CPU110Bの節電状態を解除する(
図17B(e))。
【0063】
CPU110Aは、また、パケット破棄信号が入力されると、中継装置20に記憶されたアドレステーブルを再び書き換える。具体的には、CPU110は、GARPパケットを中継装置20に送信することにより、アドレステーブルにおけるIPアドレスが「B.B.B.B」とMAC73Bとを対応付ける(
図17C(f))。この状態で、MAC73B宛てのパケットが中継装置20に入力されると、当該パケットの伝送先としてMAC73Bが選択される。
【0064】
CPU110Bは、通常状態に遷移すると、MAC73BおよびPHY71Bの節電状態を解除する(
図17C(g))。MAC73Bは、通常状態に遷移すると、破棄されたパケットと同じパケットが再び外部装置から中継装置20を介して自らに宛てて送信されてくるのを待つ。MAC73Bは、自らに宛てて再送されたパケットを受信すると(
図17C(h))、当該パケットに対する処理を行う。なお、変形例2において、通信部17は、実施形態と同様にメモリ75を有していてもよい。
【0065】
図18は、情報処理システム200の機能構成を示すブロック図である。画像形成装置10は、第1処理手段101と、第2処理手段102と、応答処理手段103とを有する。中継装置20は、選択手段104を有する。情報処理システム200において、選択手段104は、第2処理手段102が通常状態である場合、宛先が第2処理手段102であるパケットの伝送先として第2処理手段102を選択し、第2処理手段102が節電状態である場合、当該パケットの伝送先として第1処理手段101を選択する。また、応答処理手段103は、通信IF1に接続される。情報処理システム200の各構成について、上記以外の動作は、実施形態と同様である。
【0066】
(3)変形例3
LSI72Aは、待機応答モード中にパケットを処理するために参照したレコードの識別番号を記憶領域に記憶しなくてもよい。この場合、CPU110は、パケット破棄信号がMAC73Aから入力されると、MAC73A以外のMAC(実施形態ではMAC73B)の動作状態を節電状態から通常状態に遷移させる。
【0067】
(4)変形例4
本発明は、画像形成装置10以外の情報処理装置において適用されてもよい。例えば、画像データに対して画像処理を実行する画像処理装置などにおいて、本発明が適用されてもよい。
【0068】
(5)その他の変形例
画像形成装置10の構成は、
図1に示した構成に限らない。また、通信部17の構成は、
図3に示した構成に限らない。例えば、通信部17は、3つ以上の通信IFとして機能してもよい。