特許第6354553号(P6354553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6354553バイアス制御回路およびそれを含む光送信器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354553
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】バイアス制御回路およびそれを含む光送信器
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/516 20130101AFI20180702BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   H04B10/516
   G02F1/01 B
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-244220(P2014-244220)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-111398(P2016-111398A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】山中 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】坂野 英一
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/015043(WO,A1)
【文献】 特開2007−043638(JP,A)
【文献】 特開2013−026758(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第2385143(GB,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0308047(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/516
G02F 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1の光導波路を含む第1のマッハツェンダ型変調器と、前記第1のマッハツェンダ型変調器から出力される光の一部を受光する受光素子とを有する位相変調器に対して、バイアス電圧をそれぞれの前記第1の光導波路上に形成された電極に印加するバイアス制御回路であって、
バイアス電圧制御信号が入力されて、前記バイアス電圧制御信号に応じて電圧値が設定されるとともに所定のディザー信号が重畳された前記バイアス電圧を前記電極に印加するバイアス電圧生成回路と、
一対の第1の入力端子を有し、前記一対の第1の入力端子の一方に前記受光素子の出力電流に基づいて生成されたモニタ用電気信号の時間平均に相当する第1の基準電圧信号が入力され、前記一対の第1の入力端子の他方に前記モニタ用電気信号が入力され、前記第1の基準電圧信号と前記モニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の第1の電圧信号を出力する差動増幅回路と、
前記差動増幅回路から出力された前記第1の電圧信号から前記ディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じて前記バイアス電圧制御信号を生成し、該バイアス電圧制御信号を前記バイアス電圧生成回路に入力する制御回路と、
を備えるバイアス制御回路。
【請求項2】
A/D変換器と、D/A変換器と、をさらに備え、
前記A/D変換器は、前記モニタ用電気信号を第1のデジタル信号に変換して前記制御回路に入力し、
前記制御回路は、前記第1のデジタル信号の時間平均値を演算処理により算出して、前記時間平均値をデジタル信号として前記D/A変換器に入力し、
前記D/A変換器は、前記時間平均値を第1のアナログ信号に変換して、前記第1のアナログ信号を前記第1の基準電圧信号として前記差動増幅回路に入力する、
請求項1に記載のバイアス制御回路。
【請求項3】
前記位相変調器は、一対の第2の光導波路を含む第2のマッハツェンダ型変調器と、前記第1のマッハツェンダ型変調器からの出力光が一対の第3の光導波路の一方に入力されるとともに前記第2のマッハツェンダ型変調器からの出力光が前記一対の第3の光導波路の他方に入力される親変調器をさらに有し、前記受光素子は、前記親変調器から出力される光の一部をさらに受光可能に構成され、
一対の第2の入力端子を有し、前記一対の第2の入力端子の一方に交流結合を介して所定の低周波成分が除去された前記モニタ用電気信号の時間平均に相当する第2の基準電圧信号が入力され、前記一対の第2の入力端子の他方に前記交流結合を介して所定の低周波成分が除去された前記モニタ用電気信号が入力され、前記第2の基準電圧信号と所定の低周波成分が除去された前記モニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の第2の電圧信号を出力する親変調器用差動増幅回路をさらに備え、
前記制御回路は、前記第2の電圧信号をデジタル信号に変換し、前記第2の電圧信号から前記ディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じて前記バイアス電圧制御信号を生成し、該バイアス電圧制御信号を前記バイアス電圧生成回路に入力する、
請求項1又は2記載のバイアス制御回路。
【請求項4】
一対の第1のマッハツェンダ型変調器と、前記一対の第1マッハツェンダ型変調器の出力光が入力される第1の親変調器と、前記第1の親変調器の出力光の一部を受光する第1の受光素子と、を有する第1の位相変調器と、
一対の第2のマッハツェンダ型変調器と、前記一対の第2マッハツェンダ型変調器の出力光が入力される第2の親変調器と、前記第2の親変調器の出力光の一部を受光する第2の受光素子と、を有する第2の位相変調器と、
を有する偏波多重位相変調器に対して、バイアス電圧を供給するバイアス制御回路であって、
バイアス電圧制御信号が入力されて、該バイアス電圧制御信号に応じて電圧値が設定されるとともに所定のディザー信号が重畳された前記バイアス電圧を前記偏波多重位相変調器に供給するバイアス電圧生成回路と、
前記第1の受光素子の出力電流に基づいて生成された第1のモニタ用電気信号と、前記第2の受光素子の出力電流に基づいて生成された第2のモニタ用電気信号とからいずれかを選択して、選択されたモニタ用電気信号を出力する第1のスイッチと、
一対の第1の入力端子を有し、前記一対の第1の入力端子の一方に前記選択されたモニタ用電気信号の時間平均に相当する第1の基準電圧信号が入力され、前記一対の第1の入力端子の他方に前記選択されたモニタ用電気信号が入力され、前記第1の基準電圧信号と前記選択されたモニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の第1の電圧信号を出力する差動増幅回路と、
前記差動増幅回路から出力された前記第1の電圧信号から前記ディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じて前記バイアス電圧制御信号を生成し、該バイアス電圧制御信号を前記バイアス電圧生成回路に入力する制御回路と、を有し、
前記制御回路は、前記第1のスイッチに対して選択信号を送出することにより、前記一対の第1のマッハツェンダ型変調器のそれぞれに対する前記バイアス電圧の調整と前記一対の第2のマッハツェンダ型変調器のそれぞれに対する前記バイアス電圧の調整と、を時分割方式で実行する、
バイアス制御回路。
【請求項5】
第1の交流結合を介して受けた前記第1のモニタ用電気信号と、第2の交流結合を介して受けた前記第2のモニタ用電気信号とからいずれかを選択して、親変調器用モニタ用電気信号を出力する第2のスイッチと、
一対の第2の入力端子を有し、前記一対の第2の入力端子の一方に前記親変調器用モニタ用電気信号の時間平均に相当する第2の基準電圧信号が入力され、前記一対の第2の入力端子の他方に前記親変調器用モニタ用電気信号が入力され、前記第2の基準電圧信号と前記親変調器用モニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の第2の電圧信号を出力する差動増幅回路と、をさらに有し、
前記制御回路は、前記差動増幅回路から出力された前記第2の電圧信号から前記ディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じて前記バイアス電圧制御信号を生成し、
前記第2のスイッチに対して選択信号を送出することにより、前記第1の親変調器に対する前記バイアス電圧の調整と前記第2の親変調器に対する前記バイアス電圧の調整と、を時分割方式で実行する、
請求項4記載のバイアス制御回路。
【請求項6】
一対の第1のマッハツェンダ型変調器と、前記一対の第1マッハツェンダ型変調器の出力光が入力される第1の親変調器と、前記第1の親変調器の出力光の一部を受光する第1の受光素子と、を有する第1の位相変調器と、
一対の第2のマッハツェンダ型変調器と、前記一対の第2マッハツェンダ型変調器の出力光が入力される第2の親変調器と、前記第2の親変調器の出力光の一部を受光する第2の受光素子と、を有する第2の位相変調器と、
を有する偏波多重位相変調器に対して、バイアス電圧を供給するバイアス制御回路であって、
バイアス電圧制御信号が入力されて、該バイアス電圧制御信号に応じて電圧値が設定されるとともに所定のディザー信号が重畳された前記バイアス電圧を前記偏波多重位相変調器に供給するバイアス電圧生成回路と、
前記第1の受光素子の出力電流に基づいて生成された第1のモニタ用電気信号と、前記第2の受光素子の出力電流に基づいて生成された第2のモニタ用電気信号と、第1の交流結合を介して受けた前記第1のモニタ用電気信号と、第2の交流結合を介して受けた前記第2のモニタ用電気信号と、からいずれかを選択して、選択されたモニタ用電気信号を出力するスイッチと、
一対の入力端子を有し、前記一対の入力端子の一方に前記選択されたモニタ用電気信号の時間平均に相当する基準電圧信号が入力され、前記一対の入力端子の他方に前記選択されたモニタ用電気信号が入力され、前記基準電圧信号と前記選択されたモニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の電圧信号を出力する差動増幅回路と、
前記差動増幅回路から出力された前記電圧信号から前記ディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じて前記バイアス電圧制御信号を生成し、該バイアス電圧制御信号を前記バイアス電圧生成回路に入力する制御回路と、を有し、
前記制御回路は、前記スイッチに対して選択信号を送出することにより、前記一対の第1のマッハツェンダ型変調器のそれぞれに対する前記バイアス電圧の調整と前記一対の第2のマッハツェンダ型変調器のそれぞれに対する前記バイアス電圧の調整と、前記第1の親変調器に対する前記バイアス電圧の調整と、前記第2の親変調器に対する前記バイアス電圧の調整と、を時分割方式で実行する、
バイアス制御回路。
【請求項7】
一対のマッハツェンダ型変調器と、前記一対のマッハツェンダ型変調器の出力光が入力される親変調器と、前記親変調器の出力光の一部を受光する受光素子と、を有する位相変調器と、
バイアス電圧制御信号が入力されて、前記バイアス電圧制御信号に応じて電圧値が設定されるとともに所定のディザー信号が重畳された前記バイアス電圧を前記位相変調器に供給するバイアス電圧生成回路と、
一対の入力端子を有し、前記一対の入力端子の一方に前記受光素子の出力電流に基づいて生成されたモニタ用電気信号の時間平均に相当する基準電圧信号が入力され、前記一対の入力端子の他方に前記モニタ用電気信号が入力され、前記基準電圧信号と前記モニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の電圧信号を出力する差動増幅回路と、
前記差動増幅回路から出力された前記電圧信号から前記ディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じて前記バイアス電圧制御信号を生成し、該バイアス電圧制御信号を前記バイアス電圧生成回路に入力する制御回路と、
を備える光送信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアス制御回路およびそれを含む光送信器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信ネットワークのトラフィックの急増に伴い、より大容量での長距離伝送に適した通信技術として、デジタルコヒーレント光伝送技術が開発されている。この技術で使用される復変調方式としては、4値位相偏移変調(Quadrature Phase Shift Keying:QPSK)と光の2つの偏波に対してそれぞれ変調を行う偏波多重方式とを組み合わせたDP−QPSK(Dual Polarization Quadrature Phase Shift Keying)方式や、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式が挙げられる。
【0003】
デジタルコヒーレント光伝送に使用される光送信器は、搬送波となるCW(Continuous Wave)光を出力する光源(LD)と、CW光を変調するための多値位相変調器、多値位相変調器を駆動電圧信号によって駆動するための駆動回路、駆動電圧信号の基準電位となるバイアス電圧を供給し、バイアス電圧を最適な値に維持するバイアス制御回路等から構成されている(例えば、下記特許文献1参照。)。多値位相変調器から出力された被変調信号は、光ファイバー等の光導波路を介して光送信器から外部へ光出力信号として送信される。
【0004】
多値位相変調器で光信号を変調する際には、最適な駆動条件によって多値位相変調器を駆動することが重要となる。多値位相変調器は、駆動電圧と被変調信号の光パワーとの関係を示す特性が駆動を開始してから時間と共に徐々に変化する(ドリフトする)ことが知られている。そのため、その特性の時間的変化を検知して自動的にバイアス電圧を最適値に保つ自動バイアス制御(ABC: Automatic Bias Control)が行われる(例えば、下記特許文献1〜5参照。)。例えば、強度変調方式におけるABCを実現する回路(例えば、下記特許文献1,4参照。)や、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)方式におけるABCを実現する回路(例えば、下記特許文献2,3,5参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−248366号公報
【特許文献2】特開2008−187223号公報
【特許文献3】特開2008−92172号公報
【特許文献4】特開2012−257164号公報
【特許文献5】特開2013−26758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光伝送装置の小型化、及び通信チャネルの高密度化に対応した通信ネットワークの大容量化を実現するために、光送受信器の小型化・低消費電力化が継続的に要求されている。例えば、100Gbpsの光トランシーバについて、CFP(100G Form-factor Pluggable)MSA(Multi Source Agreement)の規格をベースにして、さらに小型の次世代規格であるCFP2及びCFP4とそれらの関連技術の検討が進められている。デジタルコヒーレント光伝送技術を用いた光送受信器についても、それらの次世代規格に適合することが要求されている。
【0007】
上記特許文献2に記載のABC回路では、発振回路で低周波のディザー信号を発生させ、それを駆動回路においてバイアス電圧に付加する。その結果、変調された出力光には、ディザー信号に応じた光パワーの変動成分(ディザー成分)が含まれている。そして、出力光は光カプラ等で一部が分岐されて受光素子によって電気信号に変換される。上記ABC回路は、その電気信号を元のディザー信号を用いて同期検波することによってディザー成分を検出し、そのディザー成分が所定の大きさとなるようにバイアス電圧を自動制御する。このようなABC回路により、ドリフトに対して常にバイアス電圧の最適値が維持される。
【0008】
しかしながら、上記の同期検波を行うABC回路は、発振回路、乗算器(ミキサ)、フィルタ回路、同期検波回路等の回路部品を数多く必要とし、また、いずれの回路部品も比較的大きく、消費電力も大きいために、光送受信器の小型化及び低消費電力化が難しい傾向にあった。
【0009】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、回路規模の小型化、及び低消費電力化を容易に実現するバイアス制御回路およびそれを含む光送信器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一側面に係るバイアス制御回路は、一対の第1の光導波路を含む第1のマッハツェンダ型変調器と、第1のマッハツェンダ型変調器から出力される光の一部を受光する受光素子とを有する位相変調器に対して、バイアス電圧をそれぞれの第1の光導波路上に形成された電極に印加するバイアス制御回路であって、バイアス電圧制御信号が入力されて、バイアス電圧制御信号に応じて電圧値が設定されるとともに所定のディザー信号が重畳されたバイアス電圧を電極に印加するバイアス電圧生成回路と、一対の第1の入力端子を有し、一対の第1の入力端子の一方に受光素子の出力電流に基づいて生成されたモニタ用電気信号の時間平均に相当する第1の基準電圧信号が入力され、一対の第1の入力端子の他方にモニタ用電気信号が入力され、第1の基準電圧信号とモニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の第1の電圧信号を出力する差動増幅回路と、差動増幅回路から出力された第1の電圧信号からディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じてバイアス電圧制御信号を生成し、該バイアス電圧制御信号をバイアス電圧生成回路に入力する制御回路と、を備える。
【0011】
或いは、本発明の他の側面に係る光送信器は、一対のマッハツェンダ型変調器と、一対のマッハツェンダ型変調器の出力光が入力される親変調器と、親変調器の出力光の一部を受光する受光素子と、を有する位相変調器と、バイアス電圧制御信号が入力されて、バイアス電圧制御信号に応じて電圧値が設定されるとともに所定のディザー信号が重畳されたバイアス電圧を位相変調器に供給するバイアス電圧生成回路と、一対の入力端子を有し、一対の入力端子の一方に受光素子の出力電流に基づいて生成されたモニタ用電気信号の時間平均に相当する基準電圧信号が入力され、一対の入力端子の他方にモニタ用電気信号が入力され、基準電圧信号とモニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の電圧信号を出力する差動増幅回路と、差動増幅回路から出力された電圧信号からディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じてバイアス電圧制御信号を生成し、該バイアス電圧制御信号をバイアス電圧生成回路に入力する制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回路規模の小型化、及び低消費電力化を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の好適な一実施形態に係る光送信器の構成概略図である。
図2】(a)は、変調器駆動用の差動電圧信号の振幅が1.2Vπより小さい条件下において、子変調器におけるバイアス電圧のドリフトによる最適値からの位相ずれとモニタ信号強度との関係を示すグラフであり、(b)は、同条件下において親変調器におけるバイアス電圧のドリフトによる最適値からの位相ずれとモニタ信号強度との関係を示すグラフである。
図3】(a)は、変調器駆動用の差動電圧信号の振幅が1.2Vπより大きい条件下において、子変調器におけるバイアス電圧のドリフトによる最適値からの位相ずれとモニタ信号強度との関係を示すグラフであり、(b)は、同条件下において親変調器におけるバイアス電圧のドリフトによる最適値からの位相ずれとモニタ信号強度との関係を示すグラフである。
図4】(a)は、変調器駆動用の差動電圧信号の振幅が1.2Vπより小さい条件下において図1の子変調器に印加されるバイアス電圧に重畳されるディザー信号の時間変化を示す図、(b)は、図1の子変調器においてマイナス方向の位相ずれが発生した場合のモニタ信号強度の時間変化を示す図、(c)は、図1の子変調器における位相ずれ=0の場合のモニタ信号強度の時間変化を示す図、(d)は、図1の子変調器においてプラス方向の位相ずれが発生した場合のモニタ信号強度の時間変化を示す図である。
図5図1のバイアス制御回路200によるバイアス電圧の制御手順を示すフローチャートである。
図6】本発明の変形例に係る光送信器1Aの概略構成図である。
図7】本発明の他の変形例に係る光送信器1Bの概略構成図である。
図8】本発明の別の変形例に係る光送信器1Cの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一側面に係るバイアス制御回路は、一対の第1の光導波路を含む第1のマッハツェンダ型変調器と、第1のマッハツェンダ型変調器から出力される光の一部を受光する受光素子とを有する位相変調器に対して、バイアス電圧をそれぞれの第1の光導波路上に形成された電極に印加するバイアス制御回路であって、バイアス電圧制御信号が入力されて、バイアス電圧制御信号に応じて電圧値が設定されるとともに所定のディザー信号が重畳されたバイアス電圧を電極に印加するバイアス電圧生成回路と、一対の第1の入力端子を有し、一対の第1の入力端子の一方に受光素子の出力電流に基づいて生成されたモニタ用電気信号の時間平均に相当する第1の基準電圧信号が入力され、一対の第1の入力端子の他方にモニタ用電気信号が入力され、第1の基準電圧信号とモニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の第1の電圧信号を出力する差動増幅回路と、差動増幅回路から出力された第1の電圧信号からディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じてバイアス電圧制御信号を生成し、該バイアス電圧制御信号をバイアス電圧生成回路に入力する制御回路と、を備える。
【0015】
或いは、本発明の他の側面に係る光送信器は、一対のマッハツェンダ型変調器と、一対のマッハツェンダ型変調器の出力光が入力される親変調器と、親変調器の出力光の一部を受光する受光素子と、を有する位相変調器と、バイアス電圧制御信号が入力されて、バイアス電圧制御信号に応じて電圧値が設定されるとともに所定のディザー信号が重畳されたバイアス電圧を位相変調器に供給するバイアス電圧生成回路と、一対の入力端子を有し、一対の入力端子の一方に受光素子の出力電流に基づいて生成されたモニタ用電気信号の時間平均に相当する基準電圧信号が入力され、一対の入力端子の他方にモニタ用電気信号が入力され、基準電圧信号とモニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の電圧信号を出力する差動増幅回路と、差動増幅回路から出力された電圧信号からディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じてバイアス電圧制御信号を生成し、該バイアス電圧制御信号をバイアス電圧生成回路に入力する制御回路と、を備える。
【0016】
かかる構成のバイアス制御回路或いは光送信器によれば、差動増幅回路において、マッハツェンダ型変調器の出力光のモニタ用電気信号とその電気信号の時間平均との電位差に応じた電圧信号が生成され、制御回路において、その電圧信号からディザー成分が検出され、ディザー成分に応じてバイアス電圧制御信号が生成され、バイアス電圧生成回路において、そのバイアス電圧制御信号に応じてバイアス電圧が生成されて、そのバイアス電圧がマッハツェンダ型変調器に与えられる。これにより、マッハツェンダ型変調器に印加されるバイアス電圧を適正値に設定して出力光を安定化することができる。さらに、発振回路、同期検波回路、フィルタ回路等が不要となるので部品点数を少なくし実装面積も小さくすることができ、回路規模の小型化、及び低消費電力化が容易に実現される。
【0017】
上記バイアス制御回路においては、A/D変換器と、D/A変換器と、をさらに備え、
【0018】
A/D変換器は、モニタ用電気信号を第1のデジタル信号に変換して制御回路に入力し、制御回路は、第1のデジタル信号の時間平均値を演算処理により算出して、時間平均値をデジタル信号としてD/A変換器に入力し、D/A変換器は、時間平均値を第1のアナログ信号に変換して、第1のアナログ信号を第1の基準電圧信号として差動増幅回路に入力する、ことでもよい。
【0019】
かかる構成を採れば、モニタ用電気信号の時間平均を演算処理により算出することによりフィルタ回路等が不要となるので、回路規模の小型化、及び低消費電力化がさらに容易となる。
【0020】
また、位相変調器は、一対の第2の光導波路を含む第2のマッハツェンダ型変調器と、第1のマッハツェンダ型変調器からの出力光が一対の第3の光導波路の一方に入力されるとともに第2のマッハツェンダ型変調器からの出力光が一対の第3の光導波路の他方に入力される親変調器をさらに有し、受光素子は、親変調器から出力される光の一部をさらに受光可能に構成され、一対の第2の入力端子を有し、一対の第2の入力端子の一方に交流結合を介して所定の低周波成分が除去されたモニタ用電気信号の時間平均に相当する第2の基準電圧信号が入力され、一対の第2の入力端子の他方に交流結合を介して所定の低周波成分が除去されたモニタ用電気信号が入力され、第2の基準電圧信号と所定の低周波成分が除去されたモニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の第2の電圧信号を出力する親変調器用差動増幅回路をさらに備え、制御回路は、第2の電圧信号をデジタル信号に変換し、第2の電圧信号からディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じてバイアス電圧制御信号を生成し、該バイアス電圧制御信号をバイアス電圧生成回路に入力する、ことでもよい。
【0021】
こうすれば、親変調器用差動増幅回路において、交流結合により取り出された親変調器出力のモニタ用電気信号とその電気信号の時間平均との電位差に応じた第2の電圧信号が生成され、制御回路において、その第2の電圧信号を基にしてバイアス電圧制御信号を生成し、バイアス電圧生成回路において、そのバイアス電圧制御信号に応じてバイアス電圧が生成されて、そのバイアス電圧が親変調器に与えられる。これにより、子変調器に加えて親変調器に印加されるバイアス電圧を適正値に設定して出力光を安定化することができる。さらに、回路規模の小型化、及び低消費電力化が容易に実現される。
【0022】
また、本発明の他の側面に係るバイアス制御回路は、一対の第1のマッハツェンダ型変調器と、一対の第1マッハツェンダ型変調器の出力光が入力される第1の親変調器と、第1の親変調器の出力光の一部を受光する第1の受光素子と、を有する第1の位相変調器と、一対の第2のマッハツェンダ型変調器と、一対の第2マッハツェンダ型変調器の出力光が入力される第2の親変調器と、第2の親変調器の出力光の一部を受光する第2の受光素子と、を有する第2の位相変調器と、有する偏波多重位相変調器に対して、バイアス電圧を供給するバイアス制御回路であって、バイアス電圧制御信号が入力されて、該バイアス電圧制御信号に応じて電圧値が設定されるとともに所定のディザー信号が重畳されたバイアス電圧を偏波多重位相変調器に供給するバイアス電圧生成回路と、第1の受光素子の出力電流に基づいて生成された第1のモニタ用電気信号と、第2の受光素子の出力電流に基づいて生成された第2のモニタ用電気信号とからいずれかを選択して、選択されたモニタ用電気信号を出力する第1のスイッチと、一対の第1の入力端子を有し、一対の第1の入力端子の一方に選択されたモニタ用電気信号の時間平均に相当する第1の基準電圧信号が入力され、一対の第1の入力端子の他方に選択されたモニタ用電気信号が入力され、第1の基準電圧信号と選択されたモニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の第1の電圧信号を出力する差動増幅回路と、差動増幅回路から出力された第1の電圧信号からディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じてバイアス電圧制御信号を生成し、該バイアス電圧制御信号をバイアス電圧生成回路に入力する制御回路と、を有し、制御回路は、第1のスイッチに対して選択信号を送出することにより、一対の第1のマッハツェンダ型変調器のそれぞれに対するバイアス電圧の調整と一対の第2のマッハツェンダ型変調器のそれぞれに対するバイアス電圧の調整と、を時分割方式で実行する。
【0023】
この形態によれば、一対の第2のマッハツェンダ型変調器及び第2の親変調器が追加された位相変調器を対象にしても、一対の第1のマッハツェンダ型変調器のバイアス電圧と、一対の第2のマッハツェンダ型変調器のバイアス電圧とを時分割で調整することにより、全てのマッハツェンダ型変調器のバイアス電圧を適正値に設定することができる。また、追加の位相変調器の制御においても差動増幅回路を共用することにより回路規模を小型化することもできる。
【0024】
またさらに、第1の交流結合を介して受けた第1のモニタ用電気信号と、第2の交流結合を介して受けた第2のモニタ用電気信号とからいずれかを選択して、親変調器用モニタ用電気信号を出力する第2のスイッチと、一対の第2の入力端子を有し、一対の第2の入力端子の一方に親変調器用モニタ用電気信号の時間平均に相当する第2の基準電圧信号が入力され、一対の第2の入力端子の他方に親変調器用モニタ用電気信号が入力され、第2の基準電圧信号と親変調器用モニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の第2の電圧信号を出力する差動増幅回路と、をさらに有し、制御回路は、差動増幅回路から出力された第2の電圧信号からディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じてバイアス電圧制御信号を生成し、第2のスイッチに対して選択信号を送出することにより、第1の親変調器に対するバイアス電圧の調整と第2の親変調器に対するバイアス電圧の調整と、を時分割方式で実行する、ことでもよい。
【0025】
この場合、一対の第2のマッハツェンダ型変調器及び第2の親変調器が追加された位相変調器を対象にしても、第1の親変調器のバイアス電圧と、第2の親変調器のバイアス電圧とを時分割で調整することにより、全ての親変調器のバイアス電圧を適正値に設定することができる。また、追加の位相変調器の制御においても差動増幅回路を共用することにより回路規模を小型化することもできる。
【0026】
さらに、本発明の他の側面に係るバイアス制御回路は、一対の第1のマッハツェンダ型変調器と、前記一対の第1マッハツェンダ型変調器の出力光が入力される第1の親変調器と、前記第1の親変調器の出力光の一部を受光する第1の受光素子と、を有する第1の位相変調器と、一対の第2のマッハツェンダ型変調器と、前記一対の第2マッハツェンダ型変調器の出力光が入力される第2の親変調器と、前記第2の親変調器の出力光の一部を受光する第2の受光素子と、を有する第2の位相変調器と、有する偏波多重位相変調器に対して、バイアス電圧を供給するバイアス制御回路であって、バイアス電圧制御信号が入力されて、該バイアス電圧制御信号に応じて電圧値が設定されるとともに所定のディザー信号が重畳された前記バイアス電圧を前記偏波多重位相変調器に供給するバイアス電圧生成回路と、前記第1の受光素子の出力電流に基づいて生成された第1のモニタ用電気信号と、前記第2の受光素子の出力電流に基づいて生成された第2のモニタ用電気信号と、第1の交流結合を介して受けた前記第1のモニタ用電気信号と、第2の交流結合を介して受けた前記第2のモニタ用電気信号と、からいずれかを選択して、選択されたモニタ用電気信号を出力するスイッチと、一対の入力端子を有し、前記一対の入力端子の一方に前記選択されたモニタ用電気信号の時間平均に相当する基準電圧信号が入力され、前記一対の入力端子の他方に前記選択されたモニタ用電気信号が入力され、前記基準電圧信号と前記選択されたモニタ用電気信号との電位差に応じた振幅の電圧信号を出力する差動増幅回路と、前記差動増幅回路から出力された前記電圧信号から前記ディザー信号によって生じた周波数成分を検出し、該周波数成分の強度に応じて前記バイアス電圧制御信号を生成し、該バイアス電圧制御信号を前記バイアス電圧生成回路に入力する制御回路と、を有し、前記制御回路は、前記スイッチに対して選択信号を送出することにより、前記一対の第1のマッハツェンダ型変調器のそれぞれに対する前記バイアス電圧の調整と前記一対の第2のマッハツェンダ型変調器のそれぞれに対する前記バイアス電圧の調整と、前記第1の親変調器に対する前記バイアス電圧の調整と、前記第2の親変調器に対する前記バイアス電圧の調整と、を時分割方式で実行する。
【0027】
かかる形態によれば、第1の位相変調器とともに一対の第2のマッハツェンダ型変調器及び第2の親変調器が追加された第2の位相変調器を対象にしても、一対の第1のマッハツェンダ型変調器のバイアス電圧と、一対の第2のマッハツェンダ型変調器のバイアス電圧と、第1の親変調器のバイアス電圧と、第2の親変調器のバイアス電圧とを時分割で調整することにより、全てのマッハツェンダ型変調器及び全ての親変調器のバイアス電圧を適正値に設定することができる。また、追加の位相変調器の制御においても差動増幅回路を共用することにより回路規模を小型化することもできる。
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る光送信器の構成概略図である。図1に示されるように、光送信器1は、X偏波の変調信号(以下、「X側変調信号」という。)およびY偏波の変調信号(以下、「Y側変調信号」という。)を生成するDP−QPSK変調器(偏波多重多値位相変調器)100と、DP−QPSK変調器100にバイアス電圧を供給して、バイアス電圧を最適値に制御するためのバイアス制御回路200とによって構成される。なお、光送信器1は、他にもCW光を出力する光源(LD)やDP−QPSK変調器100を駆動するための駆動電圧信号を生成する駆動回路等を備えているが、図1では図示していない。
【0030】
DP−QPSK変調器100は、光分岐素子3と、第1QPSK変調部4と、第2QPSK変調部5と、偏波合成素子7と、第1光パワーモニタ(受光素子)11と、を含んで構成されている。このDP−QPSK変調器100は、X側変調信号とY側変調信号とを偏波多重した偏波多重光信号を光導波路wg6を介して外部へ送信する。
【0031】
DP−QPSK変調器100では、図示しないレーザダイオード等の光源から、所定の周波数の光が、光導波路wg1を介して光分岐素子3に向けて出射される。この光は、例えば単一偏波を有する光である。光分岐素子3は、光導波路wg1と第1QPSK変調部4及び第2QPSK変調部5との間に設けられ、光源から出射された光からパワーの等しい2つの光(X光およびY光)を生成する。そして、光分岐素子3は、光導波路wg2を介して第1QPSK変調部4にX光を出力し、光導波路wg3を介して第2QPSK変調部5にY光を出力する。X光とY光は、光分岐素子3によって分岐される前の光と同じ偏波面を保持している。すなわち、X光とY光とは同じ偏波面を有している。
【0032】
第1QPSK変調部4は、入力されたX光に対してQPSK変調を行ってX側変調信号を生成する。そして、第1QPSK変調部4は、X側変調信号を光導波路wg4を介して偏波合成素子7に出力する。第2QPSK変調部5は、入力されたY光に対してQPSK変調を行ってY側変調信号を生成する。そして、第2QPSK変調部5は、Y側変調信号を光導波路wg5を介して偏波合成素子7に出力する。
【0033】
偏波合成素子7は、光導波路wg4上に設けられた図示しない偏波回転素子6によって90°偏波回転されたX側変調信号と、第2QPSK変調部5において生成されたY側変調信号とを合波して、偏波多重光信号として光導波路wg6を介して外部に出力する。なお、90°偏波回転の操作は、光導波路wg4の代わりに光導波路wg5にて、X側変調信号の代わりにY側変調信号に対して行っても良い。
【0034】
詳細には、第1QPSK変調部4は、それぞれが一対の光導波路を含む子変調器41,42と、それらの子変調器41,42を一対の光導波路に含む親変調器44とが入れ子となって構成されている。一対の光導波路41a,41bは、1つのマッハツェンダ型変調器(子変調器)41を構成し、一対の光導波路42a,42bは、子変調器41とは別のもう1つのマッハツェンダ型変調器(子変調器)42を構成する。また、第1QPSK変調部4では、光入力側において光導波路wg2が光導波路wg21と光導波路wg22とに分岐されている。光導波路wg21は、子変調器41を含み、光導波路wg22は、子変調器42を含む。また、子変調器41はその光出力側において光導波路44aに接続され、子変調器42はその光出力側において光導波路44b接続されている。そして、光導波路44a,44bは、第1QPSK変調部4の出力端において光導波路wg4に合流している。
【0035】
このような構成の第1QPSK変調部4では、光分岐素子3によって分離されたX光のさらに2つに分岐したうちの一方が、光導波路41a,41bを通過する際に、データ信号DXIに基づいて位相変調が行われ、XI変調信号が生成されて出力される。光導波路41a,41bには、それらの光導波路上に図示しない電極が設けられ、それらの電極にバイアス電圧及びデータ信号DXIに基づいて生成された変調器駆動用の差動電圧信号が印加される。例えば、ある差動電圧信号をVXIとすると、それは一対の正相電圧信号VXIPと逆相電圧信号VXINとを有し、VXIとの関係はVXI=VXIP−VXINと表される。正相電圧信号VXIPが光導波路41a上の電極に印加され、逆相電圧信号VXINが光導波路41b上の電極に印加される。正相電圧信号VXIPと逆相電圧信号VXINのそれぞれにバイアス電圧が与えられる。このバイアス電圧によって、XI変調信号の持つ2つの位相状態の値が決まる。そのため、バイアス電圧は常に最適値に維持されるように制御される。また、光分岐素子3によって分離されたX光のさらに2つに分岐したうちの他方が、光導波路42a,42bを通過する際に、データ信号DXQに基づいて位相変調が行われ、XQ変調信号が生成されて出力される。光導波路42a,42bには、それらの光導波路上に図示しない電極が設けられ、それらの電極にバイアス電圧及びデータ信号DXQに基づいて生成された変調器駆動用の差動電圧信号が印加される。このバイアス電圧によって、XQ変調信号の持つ2つの位相状態の値が決まる。そのため、バイアス電圧は常に最適値に維持されるように制御される。子変調器41から出力されたXI変調信号は、光導波路44aを通過するが、その際にXI変調信号の位相は、光導波路44a上の図示しない電極に印加されたバイアス電圧により調整される。また、子変調器42から出力されたXQ変調信号は、光導波路44bを通過するが、その際にXQ変調信号の位相は、光導波路44b上の図示しない電極に印加されたバイアス電圧により調整される。これら2つの位相の調整は、XI変調信号の位相とXQ変調信号の位相とが互いに90度ずれた状態になるように行われる。そして、光導波路44aを通過したXI変調信号と、光導波路44bを通過したXQ変調信号とが合波されてX側変調信号が生成され、光導波路wg4を介して偏波合成素子7に出力される。
【0036】
第2QPSK変調部5は、それぞれが一対の光導波路を含む子変調器51,52と、それら子変調器51、52を一対の光導波路に含む親変調器54とが入れ子となって構成されている。一対の光導波路51a,51bは、1つのマッハツェンダ型変調器(子変調器)51を構成し、一対の光導波路52a,52bは、子変調器51とは別のもう1つのマッハツェンダ型変調器(子変調器)52を構成する。また、第2QPSK変調部5では、光入力側において光導波路wg3が光導波路wg31と光導波路wg32とに分岐されている。光導波路wg31は、さらに2つの光導波路51a,51bに分岐しており、光導波路wg32は、さらに2つの光導波路52a,52bに分岐している。また、光導波路51a,51bはその光出力側において光導波路54aに合流し、光導波路52a,52bはその光出力側において光導波路54bに合流している。そして、親変調器54は、第2QPSK変調部5の出力端において光導波路wg5に合流している。さらに、第2QPSK変調部5においては、光導波路wg5に入力される光出力の一部が分岐して取り出されており、光導波路wg5の入力端の近傍には、その光出力の一部を受光するための第1光パワーモニタ11が設けられている。この第1光パワーモニタ11により、子変調器51,52及び親変調器54によって位相変調された出力光(Y側変調信号)の光パワーがモニタ可能とされる。
【0037】
このような構成の第2QPSK変調部5では、光分岐素子3によって分離されたY光のさらに2つに分岐したうちの一方が、光導波路51a,51bを通過する際に、データ信号DYIに基づいて位相変調が行われ、YI変調信号が生成されて出力される。光導波路51a,51b上には、図示しない電極が設けられ、それらの電極にバイアス電圧及びデータ信号DYIに基づいて生成された変調器駆動用の差動電圧信号が印加される。例えば、ある差動電圧信号をVYIとすると、それは一対の正相電圧信号VYIPと逆相電圧信号VYINとを有し、VYIと関係はVYI=VYIP−VYINと表される。正相電圧信号VYIPが光導波路51a上の電極に印加され、逆相電圧信号VYINが光導波路51b上の電極に印加される。正相電圧信号VYIPと逆相電圧信号VYINのそれぞれにバイアス電圧が与えられる。このバイアス電圧によって、YI変調信号の持つ2つの位相状態の値が決まる。そのため、このバイアス電圧は常に最適値に維持されるように制御される。また、光分岐素子3によって分離されたY光のさらに2つに分岐したうちの他方が、光導波路52a,52bを通過する際に、データ信号DYQに基づいて位相変調が行われ、YQ変調信号が生成されて出力される。光導波路52a,52b上には図示しない電極が設けられ、それらの電極にバイアス電圧及びデータ信号DYQに基づいて生成された変調器駆動用の差動電圧信号が印加される。このバイアス電圧によって、YQ変調信号の持つ2つの位相状態の値が決まる。そのため、このバイアス電圧は常に最適値に維持されるように制御される。子変調器51から出力されたYI変調信号は、光導波路54a上を通過するが、その際にYI変調信号の位相は、光導波路54a上の図示しない電極に印加されたバイアス電圧により調整される。また、子変調器52から出力されたYQ変調信号は、光導波路54b上を通過するが、その際にYQ変調信号の位相は、光導波路54b上の図示しない電極に印加されたバイアス電圧により調整される。これら2つの位相の調整は、YI変調信号の位相とYQ変調信号との位相とが互いに90度ずれた状態になるように行われる。そして、光導波路54aを通過したYI変調信号と、光導波路54bを通過したYQ変調信号とが合波されてY側変調信号が生成され、光導波路wg5を介して偏波合成素子7に出力される。
【0038】
次に、光送信器1に含まれるバイアス制御回路200の構成について説明する。
【0039】
バイアス制御回路200は、DP−QPSK変調器100の第2QPSK変調部5に係る片側偏波用のバイアス電圧を調整するための構成を有し、A/D変換器61a,61b,61c、D/A変換器62a,62b,62c、差動増幅器63a,63b、増幅器64、コントローラ(制御回路)65、抵抗素子66、及びフィルタ67を含んで構成されている。勿論、バイアス制御回路200は、上記と同様な構成を第1QPSK変調部4について追加することにより、両側偏波用のバイアス電圧を調整する構成を採ってもよい。
【0040】
抵抗素子66は、第1光パワーモニタ11に直列に接続されており、第1光パワーモニタ11の出力電流に基づいて出力光の光パワーに相当する電圧信号(モニタ用電気信号)VMON1を生成する。A/D変換器61aは、第1光パワーモニタ11と抵抗素子66との間にアナログ入力端子が接続されており、電圧信号VMON1をデジタル信号DMON1aに変換してそのデジタル信号DMON1aをコントローラ65に出力する。D/A変換器62aは、コントローラ65からデジタル信号DMON1aの時間平均値に相当するデジタル信号DAVG1aを受け、このデジタル信号DAVG1aをD/A変換することによって、電圧信号VMON1の時間平均に相当する基準電圧信号VAVG1aを生成する。差動増幅器63aは、非反転入力端子と反転入力端子とを有し、非反転入力端子は第1光パワーモニタ11と抵抗素子66との間に接続されており、反転入力端子はD/A変換器62aの出力に接続されている。この差動増幅器63aは、基準電圧信号VAVG1a及び電圧信号VMON1を受けて、基準電圧信号VAVG1aと電圧信号VMON1との差に応じて振幅が変化する差分増幅電圧信号VDI1aを生成する。
【0041】
A/D変換器61bは、そのアナログ入力端子が第1光パワーモニタ11と抵抗素子66との間にキャパシタ67aとログアンプ67bとを含む直列回路であるフィルタ67を介して交流結合により接続されており、低周波成分(DC成分)がカットされた電圧信号VMON1を広いダイナミックレンジおよび高い信号検出感度を得るためにログアンプ67bで増幅した上でデジタル信号DMON1bに変換してそのデジタル信号DMON1bをコントローラ65に出力する。D/A変換器62bは、コントローラ65からデジタル信号DMON1bの時間平均値を示すデジタル信号DAVG1bを受け、このデジタル信号DAVG1bをD/A変換することによって、電圧信号VMON1の時間平均に相当する基準電圧信号VAVG1bを生成する。差動増幅器63bは、非反転入力端子と反転入力端子とを有し、非反転入力端子は第1光パワーモニタ11と抵抗素子66との間にフィルタ67を介して交流結合により接続されており、反転入力端子はD/A変換器62bの出力に接続されている。この差動増幅器63bは、基準電圧信号VAVG1b及び低周波成分(DC成分)がカットされた電圧信号VMON1を受けて、基準電圧信号VAVG1bと電圧信号VMON1との差に応じて振幅が変化する差分増幅電圧信号VDI1bを生成する。
【0042】
A/D変換器61cは、その2つのアナログ入力端子が差動増幅器63a,63bの出力端子にそれぞれ接続されており、差動増幅器63a,63bから出力された差分増幅電圧信号VDI1a,VDI1bをそれぞれA/D変換してデジタル信号DDI1a,DDI1bを生成し、それらのデジタル信号DDI1a,DDI1bをコントローラ65に出力する。
【0043】
コントローラ65は、CPU等の演算回路及びメモリを内蔵するデジタル演算回路であり、A/D変換器61a,61b,61cから受けたデジタル信号を基にデジタル処理を実行する。具体的には、コントローラ65は、A/D変換器61aから取得したデジタル信号DMON1aを基にデジタル信号DMON1aの時間平均値DAVG1aを演算処理により算出し、その時間平均値DAVG1aをD/A変換器62aに送出する。同様に、コントローラ65は、A/D変換器61bから取得したデジタル信号DMON1bを基にデジタル信号DMON1bの時間平均値DAVG1bを演算処理により算出し、その時間平均値DAVG1bをD/A変換器62bに送出する。
【0044】
また、コントローラ65は、A/D変換器61cから取得したデジタル信号DDI1aから、制御対象の子増幅器のバイアス電圧に重畳させたディザー信号に対応する周波数成分DEXT1aをデジタル処理により検出する。そして、コントローラ65は、その周波数成分DEXT1aの大きさ(強度)に応じて制御対象の子変調器に与えるバイアス電圧を調整するとともにそのバイアス電圧に所定の周波数(例えば、1KHz)のディザー信号を重畳させるように、デジタル処理によりバイアス電圧制御用のデジタル信号DBIA1aを生成する。さらに、コントローラ65は、バイアス電圧制御用のデジタル信号DBIA1aをD/A変換器62cに送る。
【0045】
同様に、コントローラ65は、A/D変換器61cから取得したデジタル信号DDI1bから、制御対象の親増幅器のバイアス電圧に重畳させたディザー信号に対応する周波数成分DEXT1bをデジタル処理により抽出する。そして、コントローラ65は、その周波数成分DEXT1bの大きさ(強度)に応じて制御対象の親変調器に与えるバイアス電圧を調整するとともにそのバイアス電圧に所定の周波数(例えば、1KHz)のディザー信号を重畳させるように、デジタル処理によりバイアス電圧制御用のデジタル信号DBIA1bを生成する。さらに、コントローラ65は、バイアス電圧制御用のデジタル信号DBIA1bをD/A変換器62cに送る。
【0046】
D/A変換器62c(バイアス電圧生成回路)は、6チャンネルのD/A変換器であり、各チャンネルは、子変調器51,52及び親変調器54のそれぞれの電極に増幅器64を介して1対1で接続されている。このD/A変換器62cは、コントローラ65からバイアス電圧制御用のデジタル信号DBIA1aを受け取ると、そのデジタル信号DBIA1aをD/A変換することにより、制御対象の子変調器の電極に印加するバイアス電圧VBIA1aを生成する。具体的には、デジタル信号DBIA1aに応じて、バイアス電圧の電圧値を設定するとともに、そのバイアス電圧にディザー信号を重畳させる。そして、D/A変換器62cは、増幅器64を介してバイアス電圧VBIA1aを子変調器51,52のうちの制御対象の子変調器に印加する。なお、増幅器64は、D/A変換器62cの1つのチャンネルと1つの子変調器内の2つの電極のうちの1つとの間に1個設けられるため、2つの子変調器51,52について合計4個が用意される。
【0047】
また、D/A変換器62cは、コントローラ65からバイアス電圧制御用のデジタル信号DBIA1bを受け取ると、そのデジタル信号DBIA1bをD/A変換することにより、制御対象の親変調器に印加するバイアス電圧VBIA1bを生成する。具体的には、デジタル信号DBIA1bに応じて、バイアス電圧の電圧値を設定するとともに、そのバイアス電圧にディザー信号を重畳させる。そして、D/A変換器62cは、増幅器64を介してバイアス電圧VBIA1bを親変調器54の2つの電極のうちの制御対象の1つに印加する。なお、増幅器64は、D/A変換器62cの1つのチャンネルと親変調器54内の2つの電極のうちの1つとの間に1個設けられるため、親変調器54について合計2個が用意される。すなわち、増幅回路64は、2つの子変調器51,52と1つの親変調器54に、バイアス電圧と、制御対象のバイアス電圧に重畳されたディザー信号とを与えるために、第2QPSK変調部5について合計6個が用意される。
【0048】
次に、図2及び図3を参照して、バイアス制御回路200によるバイアス電圧制御の動作原理について説明する。図2は、多値位相変調器駆動用の差動電圧信号の振幅が1.2Vπ(Vπ:位相差πを生じさせる変調電圧)より小さい場合において、(a)は子変調器におけるバイアス電圧のドリフトによる最適値からの位相ずれとモニタ信号強度との関係を示すグラフであり、(b)は親変調器におけるバイアス電圧のドリフトによる最適値からの位相ずれとモニタ信号強度との関係を示すグラフである。図3は、多値位相変調器駆動用の差動電圧信号の振幅が1.2Vπより大きい場合において、(a)は子変調器におけるバイアス電圧のドリフトによる最適値からの位相ずれとモニタ信号強度との関係を示すグラフであり、(b)は親変調器におけるバイアス電圧のドリフトによる最適値からの位相ずれとモニタ信号強度との関係を示すグラフである。なお、ここでいう最適値からの位相ずれとは、変調器内の一対の光導波路を通過する光について、それぞれの光導波路に最適なバイアス電圧が印加された状態でそれぞれの光導波路を通過する光の位相差を基準(最適値)とした場合に、バイアス電圧のドリフトによって生じたその位相差の基準からの変位を意味する。すなわち、モニタ信号強度を観測して、モニタ信号強度と位相ずれとの関係から、位相ずれをゼロに近づけることによってバイアス電圧のドリフトによる影響を補償し、それぞれの光導波路を通過する光の位相差を最適値に維持することができる。また、上記の差動電圧信号の振幅とは、例えば、差動電圧信号VXIが一対の正相電圧信号VXIPと逆相電圧信号VXINとによってVXI=VXIP−VXINと表されるときに、このVXIの電圧振幅のことを意味する。
【0049】
図2(a)に示すように、変調器駆動用の差動電圧信号の振幅が1.2Vπより小さい条件下における子変調器に関しては、バイアス電圧のドリフトによる位相ずれ=0の時にモニタ信号強度が極小となり、位相ずれの絶対値が大きくなるとモニタ信号強度が大きくなるような位相ずれ=0を中心として対称な特性を示す。図2(b)に示すように、変調器駆動用の差動電圧信号の振幅が1.2Vπより小さい条件下における親変調器に関しても同様な特性を示す。従って、これらの場合は、子変調器及び親変調器に印加するバイアス電圧の最適値は、モニタ信号強度が最小になるときのレベルであると考えることができる。
【0050】
また、図3(a)に示すように、変調器駆動用の差動電圧信号の振幅が1.2Vπより大きい条件下における子変調器に関しては、バイアス電圧のドリフトによる位相ずれ=0の時にモニタ信号強度が極大となり、位相ずれの絶対値が大きくなるとモニタ信号強度が小さくなるような位相ずれ=0を中心として対称な特性を示す。図3(b)に示すように、変調器駆動用の差動電圧信号の振幅が1.2Vπより大きい条件下における親変調器に関しては、バイアス電圧のドリフトによる位相ずれ=0の時にモニタ信号強度が極小となり、ドリフトの絶対値が大きくなるとモニタ信号強度が大きくなるような位相ずれ=0を中心として対称な特性を示す。従って、これらの場合は、子変調器に印加するバイアス電圧の最適値はモニタ信号強度が最大になるときのレベルであり、親変調器に印加するバイアス電圧の最適値はモニタ信号強度が最小になるときのレベルであると考えることができる。
【0051】
このような特性を利用して、バイアス制御回路200は、DP−QPSK変調器100に印加するバイアス電圧を最適値に制御する。図4は、変調器駆動用の差動電圧信号の振幅が1.2Vπより小さい条件下における子変調器に対応した各種信号波形を示しており、(a)は、子変調器に印加されるバイアス電圧に重畳されるディザー信号の時間変化(信号波形)、(b)は、子変調器においてマイナス方向の位相ずれが発生した場合のモニタ信号強度の時間変化(信号波形)、(c)は、子変調器における位相ずれ=0の場合のモニタ信号強度の時間変化(信号波形)、(d)は、子変調器においてプラス方向の位相ずれが発生した場合のモニタ信号強度の時間変化(信号波形)、をそれぞれ示す。これらの波形から、モニタ信号の電圧振幅を最小値に収束させるように子変調器に印加するバイアス電圧を調整することにより、子変調器における位相ずれを低減することができる。例えば、(b)の信号波形と(a)の信号波形と比較すると、互いに波形の山と谷との位置が逆さの関係になっているが、これはディザー信号とモニタ信号の極性の反転が図2(a)の曲線の微係数が負になっていることに起因して生じるため、位相ずれがマイナス方向になっていることを検出できる。また、図4(d)の信号波形と(a)の信号波形とを比較すると、互いに山と谷の位置が同じ関係になっているが、これはディザー信号とモニタ信号の極性が一致していて、それは図2(a)の曲線の微係数が正になっていることに起因して生じるため、位相ずれはプラス方向になっていることを検出できる。より具体的には、このような信号波形の比較は、コントローラ65がモニタ信号を適当な時間間隔でサンプリングすることで行うことができる。従って、バイアス制御回路200のコントローラ65は、変調器駆動用の差動電圧信号の振幅が1.2Vπより小さい条件下では、モニタ信号の大きさを示す周波数成分DEXT1aの大きさが最小値になるように制御対象の子変調器に与えるバイアス電圧を調整している。さらに、同条件下では、コントローラ65は、モニタ信号の大きさを示す周波数成分DEXT1bの大きさが最小値になるように制御対象の親変調器に与えるバイアス電圧を調整している。
【0052】
一方、変調器駆動用の差動電圧信号の振幅が1.2Vπより大きい条件下においては、コントローラ65は、モニタ信号の大きさを示す周波数成分DEXT1aの大きさが最大値になるように制御対象の子変調器に与えるバイアス電圧を調整している。さらに、同条件下で、コントローラ65は、モニタ信号の大きさを示す周波数成分DEXT1bの大きさが最小値になるように制御対象の親変調器に与えるバイアス電圧を調整している。なお、ここではモニタ信号と位置ずれとの関係について、図2および図3を例として説明したが、本発明の実施においては、モニタ信号の強度と位置ずれとの関係が一意的に決まっていれば良く、差動電圧信号の振幅が1.2Vπよりも大きいか小さいかという条件に限定されることはない。
【0053】
以下、図5を参照しながら、バイアス制御回路200によるバイアス電圧の制御手順について説明する。図5は、バイアス制御回路200によるバイアス電圧の制御手順を示すフローチャートである。
【0054】
光送信器1の動作が開始されると、バイアス制御回路200のコントローラ65により、D/A変換器62cにおける子変調器51,52のそれぞれの2つの電極に印加するバイアス電圧VBIA1aの初期値が設定される(ステップS01)。次に、A/D変換器61aにより、子変調器51,52のうちの先にバイアス制御を行う対象に選んだ子変調器に関して、出力光のモニタ値であるデジタル信号DMON1aが取得される(ステップS02)。その後、コントローラ65によってモニタ値の時間平均値であるデジタル信号DAVG1aが計算され、この計算値に応じてD/A変換器62aのアナログ出力における基準電圧信号VAVG1aが更新される(ステップS03)。
【0055】
さらに、コントローラ65により、制御対象の子変調器に印加するバイアス電圧VBIA1aに所定のディザー信号が重畳されるようにD/A変換器62cへデジタル信号が入力される(ステップS04)。その後、A/D変換器61cにより、差動増幅器63aから出力される、基準電圧信号VAVG1aと電圧信号VMON1との差分増幅電圧信号VDI1aがサンプリングされ、この信号をA/D変換したデジタル信号DDI1aが出力される(ステップS05)。次に、コントローラ65により、デジタル信号DDI1aのサンプリング値の差分が計算され、その差分の計算値がゼロとなる方向に制御対象の子変調器に対するバイアス電圧制御用のデジタル信号DBIA1aが生成され、その値に基づいてD/A変換器62cの値が更新される(ステップS06)。ここでいうサンプリング値の差分とは、例えば、図4(a)〜(d)の信号波形において、(a)のディザー信号の信号波形が谷になっている時間内のある一つのサンプリングの時間をt1とし、その谷の直後に山になっている時間内のある一つのサンプリングの時間をt2として、モニタ信号の強度を時間tの関数としてS(t)として表した時に、ΔS=S(t2)―S(t1)を求めることを意味する。ΔSが正であるか負であるかで、位相ずれが正であるか負であるかを検出することができ、このΔSの大きさ(絶対値)はモニタ信号の強度に相当するので、その値が極小値または極大値になることを目標に制御を行うことができる。これにより、制御対象の子変調器に印加するバイアス電圧が調整され、ステップS02〜S06の処理は、次にバイアス制御を行う対象となる子変調器についても行われ、結果として全ての子変調器51,52のそれぞれの2つの電極について繰り返される(ステップS07)。ところで、差分増幅電圧信号VDI1aは、電圧信号VMON1と基準電圧信号VAVG1aとの差、すなわち、VMON1―VAVG1aが差動増幅器63aのゲインによって増幅された電圧となっている。電圧信号VMON1には、例えば、第2QPSK変調部5から出力される光出力(Y側変調信号)の強度をモニタするための光出力強度モニタ成分と、ディザー信号によって生じたディザー成分とが含まれている。ディザー信号の大きさは変調信号の大きさに対して通常は数%程度の値が使用されるため、光出力強度モニタ成分の大きさはディザー成分の大きさよりも数倍から数十倍大きい。電圧信号VMON1を増幅する場合に、光出力強度モニタ成分が含まれているために、増幅器の出力電圧の制約から十分なゲインを設定することができず、その結果、ディザー成分を十分に増幅できない場合があり得る。基準電圧信号VAVG1aは、光出力強度モニタ成分に相当しており、それを電圧信号VMON1から差し引いて増幅することでディザー成分を所定のゲインで増幅することができる。例えば、光出力強度モニタ成分(基準電圧信号VAVG1a)の大きさが1Vで、ディザー成分の大きさが0.05Vであったとすると、仮に、増幅器の出力電圧の大きさが約2Vで制限されるような場合には、入力電圧(電圧信号VMON1)に対する増幅器のゲインはせいぜい2倍程度(≒(出力電圧の大きさ2V)/(入力電圧の大きさ1V+0.05V))にしか設定できず、ディザー成分は0,05V×2=0.1V程度にしか増幅できない。これに対して、本願発明の実施例のように、差動増幅器63aによって電圧信号VMON1から光出力強度モニタ成分(基準電圧信号VAVG1a)を差し引いて増幅することでディザー信号のみをもっと大きく増幅することができる。すなわち、差動増幅器63aは、出力電圧の大きさが2Vに制限されていたとしても、ゲインを40倍に設定することによって、電圧信号VMON1―基準電圧信号VAVG1a=ディザー成分=0.05Vを2Vにまで増幅することができる。このように、ディザー信号に応じてモニタ用電気信号に生じたディザー成分(振幅変調成分)のみを効率的に増幅することができる。
【0056】
次に、D/A変換器62cにおける親変調器54に印加するバイアス電圧VBIA1bの初期値が設定される(ステップS08)。その後、A/D変換器61bにより、親変調器54に関して、出力光のモニタ値であるデジタル信号DMON1bが取得される(ステップS09)。その後、コントローラ65によってモニタ値の時間平均値であるデジタル信号DAVG1bが計算され、この計算値に応じてD/A変換器62bのアナログ出力における基準電圧信号VAVG1bが更新される(ステップS10)。
【0057】
さらに、コントローラ65により、制御対象の親変調器に印加するバイアス電圧VBIA1bに所定のディザー信号が重畳されるようにD/A変換器62cへデジタル信号が入力される(ステップS11)。その後、A/D変換器61cにより、差動増幅器63bから出力される、基準電圧信号VAVG1bと電圧信号VMON1との差分増幅電圧信号VDI1bがサンプリングされ、この信号をA/D変換したデジタル信号DDI1bが出力される(ステップS12)。次に、コントローラ65により、デジタル信号DDI1bのサンプリング値の差分(上記の子変調器についてのサンプリング値の差分と信号の処理としては同じ)が計算され、その差分の計算値がゼロとなる方向に制御対象の親変調器に対するバイアス電圧制御用のデジタル信号DBIA1bが生成され、その値に基づいてD/A変換器62cの値が更新される(ステップS13)。これにより、制御対象の親変調器に印加するバイアス電圧が調整され、ステップS09〜S13の処理は、親変調器54について繰り返される(ステップS14)。以上のバイアス電圧の制御処理は、所定の周期で繰り返し実行される。この周期はディザー信号の周波数(例えば、1kHz)より長い周期に設定される。
【0058】
以上説明した光送信器1及びそれに内蔵されるバイアス制御回路200によれば、差動増幅器63aにおいて、制御対象の子変調器の出力のモニタ用のモニタ用電気信号VMON1とその電気信号の時間平均VAVG1aとの電位差に応じた差分増幅電圧信号VDI1aが生成される。これにより、モニタ用電気信号の信号強度に依存せずに、ディザー信号に応じてモニタ用電気信号に生じた振幅変調成分のみを効率的に増幅を行うことができ、検出感度が向上する。さらに、コントローラ65において、その差分増幅電圧信号VDI1aをA/D変換することにより得られたデジタル信号DDI1aからディザー成分DEXT1aが抽出され、ディザー成分DEXT1aに応じてバイアス電圧を調整するとともにそのバイアス電圧にディザー信号を重畳させるように、デジタル信号DBIA1aが生成される。そして、D/A変換器62cにおいて、そのデジタル信号DBIA1aをアナログ信号に変換することによりバイアス電圧VBIA1aが生成されて、そのバイアス電圧VBIA1aが制御対象の子変調器に与えられる。これにより、子変調器に印加されるバイアス電圧を適正値に設定して出力光を安定化することができる。さらに、従来のような発振回路、同期検波回路、及びローパスフィルタ等が不要となるので部品点数を少なくし実装面積も小さくすることができ、回路規模の小型化、及び低消費電力化が容易に実現される。具体的には、従来と比較して部品占有面積が35%程度削減される。
【0059】
また、バイアス制御回路200においては、コントローラ65がモニタ用電気信号VMON1をA/D変換器61aを経由して受け、A/D変換されたモニタ用電気信号DMON1の時間平均値DAVG1aをデジタル処理により算出し、時間平均値DAVG1aをD/A変換器62aを経由することによって基準電圧信号VAVG1aとして差動増幅器63aに入力する。このような構成により、モニタ用電気信号の時間平均をデジタル処理により算出することによりローパスフィルタ等のフィルタ回路が不要となるので、回路規模の小型化、及び低消費電力化がさらに容易となる。併せて、モニタ用電気信号の検出時間を短縮化することで、バイアス制御の応答を速めることができる。
【0060】
また、バイアス制御回路200は、差動増幅器63b、A/D変換器61b、及びD/A変換器62bをさらに備える。このような構成においては、交流結合により低周波成分がカットされた親変調器の出力モニタ用のモニタ用電気信号VMON1と、その電気信号の時間平均VAVG1bとの電位差に応じた差分増幅電圧信号VDI1bが生成される。さらに、コントローラ65において、その差分増幅電圧信号VDI1bを基にしてデジタル信号DBIA1bが生成され、D/A変換器62cにおいて、そのデジタル信号DBIA1bをアナログ信号に変換することによりバイアス電圧VBIA1bが生成されて、そのバイアス電圧が制御対象の親変調器に与えられる。これにより、子変調器に加えて親変調器に印加されるバイアス電圧を適正値に設定して出力光を安定化することができる。さらに、回路規模の小型化、及び低消費電力化が容易に実現される。ここで、親変調器のモニタ用のモニタ用電気信号VMON1を交流結合により取り出すことで、子変調器用のモニタ用電気信号VMON1が親変調器のモニタ回路側に透過することを防止でき、子変調器の光出力が正確に検知できないという不都合を防止できる。
【0061】
なお、本発明に係る半導体変調器は上記実施形態に記載したものに限定されない。例えば、図6は、本発明の変形例に係る光送信器1Aの概略構成を示している。同図に示すように、光送信器1Aにおいては、DP−QPSK変調器100Aの第1QPSK変調部4の出力端においてもその出力端の光出力の一部が分岐して取り出され、その出力端の近傍に第1QPSK変調部4の光出力の一部を受光する第2光パワーモニタ13が設けられている。そして、バイアス制御回路200Aには、第2QPSK変調部5のバイアス電圧を制御する構成に加えて、第1QPSK変調部4のバイアス電圧を制御する構成も追加されている。具体的には、第1QPSK変調部4の子変調器41,42のうちの制御対象の子変調器に関してモニタ用電気信号VMON2とその電気信号の時間平均VAVG2aとの電位差に応じた電圧信号VDI2aを生成するための構成として、A/D変換器161a,D/A変換器162a、及び差動増幅器163aを備えている。さらに、第1QPSK変調部4の親変調器44に関してモニタ用電気信号VMON2とその電気信号の時間平均VAVG2bとの電位差に応じた電圧信号VDI2bを生成するための構成として、A/D変換器161b,D/A変換器162b、及び差動増幅器163bを備えている。さらに、バイアス制御回路200Aには、第2光パワーモニタ13に直列に接続されて第2光パワーモニタ13によってモニタされた電流信号を電圧信号に変換する抵抗素子166と、第2光パワーモニタ13の出力とA/D変換器161b及び差動増幅器163bとを交流結合するためのフィルタ167も備えられている。抵抗素子166は、第2光パワーモニタ13の出力電流に基づいて出力光の光パワーに相当する電圧信号(モニタ用電気信号)を生成する。また、差動増幅器63a,63b,163a,163bの出力には、それぞれの出力した電圧信号をA/D変換するための4つのA/D変換器161c,161d,161e,161fが設けられており、コントローラ65の出力には、コントローラ65から取得したデジタル信号をD/A変換して第1QPSK変調部4及び第2QPSK変調部5に含まれる子変調器及び親変調器に印加するバイアス電圧を生成するための12チャンネルのD/A変換器162cが接続されている。
【0062】
このような構成の光送信器1Aによれば、第1QPSK変調部4及び第2QPSK変調部5に含まれる全ての子変調器及び親変調器のそれぞれに印加されるバイアス電圧を適正値に設定して出力光を安定化することができるとともに、回路規模の小型化、及び低消費電力化が容易に実現される。
【0063】
図7は、本発明の別の変形例に係る光送信器1Bの概略構成を示している。同図に示すように、光送信器1Bのバイアス制御回路200Bにおいては、第1QPSK変調部4の制御用のA/D変換器、D/A変換器、及び差動増幅器と、第2QPSK変調部5の制御用のA/D変換器、D/A変換器、及び差動増幅器とで共用する構成とし、バイアス電圧の制御処理を第1QPSK変調部4及び第2QPSK変調部5に含まれる各変調器を対象にして時分割で処理するようにしてもよい。
【0064】
具体的には、同図に示すバイアス制御回路200Bは、スイッチSW1、スイッチSW2、及びスイッチSW3を備え、図6のバイアス制御回路200AにおけるA/D変換器61b,161a,161b、D/A変換器162a,162b、差動増幅器163a,163b、及びA/D変換器161e,161fを省略した構成となっている。このスイッチSW1は、第1光パワーモニタ11から取得したモニタ用電気信号VMON1と、第2光パワーモニタ13から取得したモニタ用電気信号VMON2とのうちからいずれかを選択して、差動増幅器63aの非反転入力端子及びスイッチSW3に出力する。スイッチSW2は、第1光パワーモニタ11から交流結合を介して取得したモニタ用電気信号VMON1と、第2光パワーモニタ13から交流結合を介して取得したモニタ用電気信号VMON2とのうちからいずれかを選択して、差動増幅器63bの非反転入力端子及びスイッチSW3に出力する。スイッチSW3は、スイッチSW1から出力されたモニタ用電気信号VMON1又はモニタ用電気信号VMON2と、スイッチSW2から出力されたモニタ用電気信号VMON1又はモニタ用電気信号VMON2とのうちからいずれかを選択して、A/D変換器61aに出力する。そして、コントローラ65は、スイッチSW1,SW2,SW3に選択信号を送出することにより、第1QPSK変調部4と第2QPSK変調部5との間で制御対象を切り替えながら時分割での子変調器および親変調器のバイアス電圧の制御処理を実行する。例えば、第1QPSK変調部4を制御対象とする場合には、スイッチSW1及びスイッチSW2を第2光パワーモニタ13側に切り替え、スイッチSW3をスイッチSW1側とスイッチSW2側とで交互に切り替えることにより、第1QPSK変調部4における子変調器及び親変調器に対する制御を切り替えて実行する。同様に、第2QPSK変調部5を制御対象とする場合には、スイッチSW1及びスイッチSW2を第1光パワーモニタ11側に切り替え、スイッチSW3をスイッチSW1側とスイッチSW2側とで交互に切り替えることにより、第2QPSK変調部5における子変調器及び子変調器に対する制御を切り替えて実行する。スイッチSW1〜SW3は、それぞれ別々の個体であっても良く、あるいは、複数のスイッチが1つのパッケージに集積化されたものを使用しても良い。スイッチの切替えは、図5のフローチャートのステップS07およびS14にて制御対象となる子変調器あるいは親変調器を替える際に行う。例えば、第2QPSK変調部5の子変調器51、52について制御を行う場合には、スイッチSW1を第1パワーモニタ11側に切替えるとともにスイッチSW3をSW1側に切替え、次に第1QPSK変調部4の子変調器41、42について制御を行う場合には、スイッチSW1を第2パワーモニタ13側に切替える。また、第2QPSK変調部の親変調器54について制御を行う場合には、スイッチSW2を第1光パワーモニタ11側に切替えるとともにスイッチSW3をスイッチSW2側に切替え、続いて第1QPSK変調部の親変調器44について制御を行う場合には、スイッチSW2を第2光パワーモニタ13側に切替える。バイアス電圧の制御は、1つの子変調器あるいは親変調器毎に行うため。図7の変形例において、時分割制御のためのタイムスロットは合計6個となる(子変調器41、42、51、52、親変調器44、54について各1個)。一つのタイムスロットは1秒以内に行うことが可能であり、ドリフト現象は十秒〜数十秒と比較的ゆっくりとした変化であるために、それに追従して制御を行うことができる。なお、制御の方法として、1つのタイムスロットにて1つの変調器について最適値にバイアス電圧を合わせるようにするのではなく、タイムスロットを短い時間にして途中まで制御を行い、コントローラ65が途中までの値を記憶しておいて、次のタイムスロットにて記憶した値を基に制御を再開するというように、複数のタイムスロットを経てバイアス電圧を最適値に合わせる方法をとっても良い。
【0065】
このような光送信器1Bによれば、第1QPSK変調部4の制御用回路と第2QPSK変調部5の制御用回路とを共用した構成とされているので、回路規模の小型化、及び低消費電力化がさらに容易となる。
【0066】
図8は、本発明の別の変形例に係る光送信器1Cの概略構成を示している。同図に示すように、光送信器1Cのバイアス制御回路200Cにおいては、A/D変換器、D/A変換器、差動増幅器を、第1QPSK変調部4及び第2QPSK変調部5に含まれる子変調器及び親変調器で共用する構成とし、バイアス電圧の制御処理を第1QPSK変調部4及び第2QPSK変調部5に含まれる各変調器を対象にして時分割で処理するようにしてもよい。
【0067】
具体的には、同図に示すバイアス制御回路200Cは、スイッチSW4を備え、図7のバイアス制御回路200BにおけるD/A変換器62b、差動増幅器63b、及びA/D変換器161dを省略した構成となっている。このスイッチSW4は、第1光パワーモニタ11から取得したモニタ用電気信号VMON1と、第1光パワーモニタ11から交流結合を介して取得したモニタ用電気信号VMON1と、第2光パワーモニタ13から取得したモニタ用電気信号VMON2と、第2光パワーモニタ13から交流結合を介して取得したモニタ用電気信号VMON2とのうちからいずれかを選択して、差動増幅器63aの非反転入力端子及びA/D変換器61aに出力する。そして、コントローラ65は、スイッチSW4に選択信号を送出することにより、第1QPSK変調部4の子変調器、第1QPSK変調部4の親変調器と、第2QPSK変調部5の子変調器と、第2QPSK変調部5の親変調器との間で制御対象を切り替えながら時分割でのバイアス電圧の制御処理を実行する。例えば、第1QPSK変調部4の子変調器を制御対象とする場合には、スイッチSW4を第2光パワーモニタ13側に切り替えることにより、抵抗素子166に生じたモニタ用電気信号を選択して、第1QPSK変調部4の子変調器に対する制御を実行する。また、第1QPSK変調部4の親変調器を制御対象とする場合には、スイッチSW4をフィルタ167側に切り替えることにより、第1QPSK変調部4の親変調器に対する制御を実行する。同様にして、コントローラ65は、第2QPSK変調部5の子変調器及び親変調器に対する制御を時分割で実行する。タイムスロットの時間および個数については、図7について説明したのと同様に、それぞれ1秒以内、最低6個であれば良い。
【0068】
このような光送信器1Cによれば、子変調器と親変調器とで制御用回路とを共用した構成とされているので、回路規模の小型化、及び低消費電力化が一層容易となる。
【符号の説明】
【0069】
1,1A,1B,1C…光送信器、11…第1光パワーモニタ(受光素子)、13…第2光パワーモニタ(受光素子)、41a,41b,42a,42b,51a,51b,52a,52c…子変調器(マッハツェンダ型変調器)、44a,44b,54a,54b…親変調器、61a,61b,61c,161a,161b,161c,161d,161e,161f…A/D変換器、62a,62b,62c,162a,162b,162c…D/A変換器、63a,63b,163a,163b…差動増幅器、65…コントローラ(制御回路)、100,100A…偏波多重多値位相変調器(DP−QPSK変調器)、200,200A,200B,200C…バイアス制御回路、SW1,SW2,SW3,SW4…スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8