(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、膨張された熱膨張部は基材シートの一面から突出した状態となっていることから、例えば、搬送時等に外部の物体と接触し易くなり、特に、縁部分が外部の物体と接触することで損傷してしまうといった問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、膨張部の損傷を適正に抑制することができる膨張性シート及び膨張体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る膨張性シートは、
基材シートの表面の少なくとも一部分にエネルギーを与えると膨張する膨張部が設けられ、
前記膨張部は、その縁部分の厚さが当該縁部分以外の部分の厚さに対して薄くされてな
り、
前記膨張部は、複数の膨張層が積層されてなり、
前記膨張層の積層数は、前記縁部分が前記縁部分以外の部分よりも少なくされてなる、
ことを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る膨張体は、
基材シートの表面の少なくとも一部分に設けられた膨張部にエネルギーを与えることにより膨張された膨張体であって、
前記膨張体は、その表面に所定の図案に対応する立体形状が形成されているとともに、その縁部分の厚さが当該縁部分以外の部分の厚さに対して薄くなるように膨張されてな
り、
前記膨張部は、熱発泡性のマイクロカプセルを含有する熱膨張層からなり、前記マイクロカプセルが熱エネルギーに反応することにより膨張され、
前記熱膨張層の前記縁部分における前記マイクロカプセルを含有する密度を、前記縁部分以外の部分における前記マイクロカプセルを含有する密度よりも低くすることで、前記縁部分の厚さが当該縁部分以外の部分の厚さに対して薄くなるように膨張されてなることを特徴としている。
また、本発明に係る他の膨張体は、
基材シートの表面の少なくとも一部分に設けられた膨張部にエネルギーを与えることにより膨張された膨張体であって、
前記膨張体は、その表面に所定の図案に対応する立体形状が形成されているとともに、その縁部分の厚さが当該縁部分以外の部分の厚さに対して薄くなるように膨張されてなり、
前記膨張部は、熱発泡性のマイクロカプセルを含有する熱膨張層からなり、前記マイクロカプセルが熱エネルギーに反応することにより膨張され、
前記熱膨張層の前記縁部分における前記マイクロカプセルの熱吸収率を前記縁部分以外の部分における前記マイクロカプセルの熱吸収率よりも低くすることで、前記縁部分の厚さが当該縁部分以外の部分の厚さに対して薄くなるように膨張されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、膨張部の損傷を適正に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
図1(a)は、本発明を適用した一実施形態の熱膨張性シート100を示す正面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の熱膨張性シート100を示す側面図である。また、
図2は、
図1(b)の熱膨張性シート100の破線Aで囲まれた部分を拡大して示す図である。また、
図3は、熱膨張性シート100の熱膨張部2が膨張された熱膨張体100Aを示す図である。
【0011】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本実施形態の熱膨張性シート100は、例えば、所定の図案Iが形成された切手等に適用可能であり、具体的には、基材シート1と、この基材シート1の表面の全域に設けられた熱膨張部2とを備えている。
【0012】
基材シート1は、例えば、紙、キャンバス地などの布、プラスチックなどのパネル材などから構成されているが、一例であってこれらに限られるものではなく、材質は適宜任意に変更可能である。
【0013】
熱膨張部2は、例えば、熱源ヒータ(図示略)等により所定の時間加熱されることで膨張する。
具体的には、熱膨張部2は、例えば、コーティングされた熱発泡性のマイクロカプセルを含有する熱膨張層21が複数(例えば、2層)積層されて構成されている(
図1(b)参照)。熱膨張層21は、例えば、基材シート1の表面の略矩形枠状をなす縁部分以外の領域(例えば、略矩形状の領域)を被覆するように第一膨張層21aが設けられ、この第一膨張層21aの上面及び基材シート1の表面の縁部分を被覆するように第二膨張層21bが設けられている。つまり、熱膨張層21の積層数は、熱膨張部2の縁部分2aが当該縁部分2a以外の部分(当該縁部分2aよりも中央側の部分2b)に対して少なくされており、これによって、縁部分2aから中央側の部分2bに向かって盛り上がるように形成され、縁部分2aの厚さが中央側(内側)の部分2bの厚さに対して薄くされている。
また、熱膨張部2の表面には、立体化(膨張)させたい部分に、立体化(膨張)の程度に応じて熱エネルギー吸収性が高い色(例えば、黒色)のベタ画像(光吸収用画像)が印刷されている。
なお、ここでは
図1(a)に示された図案Iに対応する部分にベタ画像が印刷されているものとする。
【0014】
なお、熱発泡性のマイクロカプセルは、公知の技術を適用可能であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0015】
そして、熱膨張性シート100は、熱源ヒータにより所定の時間加熱されることで、熱膨張部2のマイクロカプセルが熱膨張反応を起こし当該熱膨張部2が隆起することで熱膨張体100Aをなす(
図3参照)。具体的には、熱膨張性シート100の熱膨張部2は、その縁部分2aの厚さが中央側の部分2bの厚さに対して薄くされているので、熱膨張体100Aにおける縁部分2aの厚さが中央側の部分2bの厚さに対して薄くなるように膨張する。
また、当該熱膨張部2のベタ画像が印刷された部分については、他の部分よりも熱吸収率が高いため、ベタ画像が印刷された部分が立体化(膨張)の程度に応じた色に対応して、他の部分よりも膨張して盛り上がり、立体形状(図示略)が形成される。
そして、熱膨張体100Aの表面に形成された立体形状に図案Iを印刷し、
図1(a)のような切手を生成する。
【0016】
以上のように、本実施形態の熱膨張性シート100によれば、基材シート1の表面に設けられた熱膨張部2は、その縁部分2aの厚さが当該縁部分2a以外の部分(中央側の部分2b)の厚さに対して薄くされているので、熱膨張部2が膨張されていない熱膨張性シート100や、熱膨張部2が膨張されて所定の図案Iに対応する立体画像が形成された熱膨張体100Aにおいて、例えば、熱膨張部2の縁部分2aと中央側の部分2bとで厚さが略等しい場合に比べて、基材シート1の表面に対する熱膨張部2の縁部分2aの突出量が相対的に少なくなり、縁部分2aが外部の物体と接触し難くなる。また、縁部分2aから中央側の部分2bに向かって盛り上がるように、すなわち、例えば、縁部分2aが中央側の部分2bに連続するように側面視にて略円弧状に湾曲した形状となっていることで、仮に外部の物体と接触しても当該縁部分2aが損傷し難くなる。
このように、熱膨張部2の損傷を適正に抑制することができる。
【0017】
また、熱膨張部2は、複数の熱膨張層21、…が積層されてなり、熱膨張層21の積層数は、縁部分2aが当該縁部分2a以外の部分(中央側の部分2b)よりも少なくされているので、熱膨張部2の縁部分2aの厚さが当該縁部分2a以外の部分の厚さに対して薄くなるように膨張させた熱膨張体100Aを形成することができる。
【0018】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、熱膨張部2は、基材シート1の表面の全域に設けられている必要はなく、
図4に示すように、基材シート201の表面の一部分に設けられていても良い。例えば、通信用紙(郵便葉書)200の郵便料金を示す証票の部分を熱膨張部202で構成しても良い。
【0019】
また、上記実施形態にあっては、縁部分2aの厚さが中央側の部分2bの厚さに対して薄くされた熱膨張部2を有する熱膨張性シート100を膨張させるようにしたが、熱膨張体100Aにおいて、熱膨張部2が縁部分2aの厚さが中央側の部分(当該縁部分2a以外の部分)2bの厚さに対して薄くなるように膨張される構成であれば熱膨張性シート100は如何なる形態であっても良い。
すなわち、熱膨張部2が膨張されていない熱膨張性シート100において、略全域に亘って略等しい厚さの熱膨張部2が形成されていても、例えば、縁部分2aと中央側の部分2bとで加熱量、熱発泡性のマイクロカプセルの密度や熱吸収率等を調整することで、縁部分2aの厚さが中央側の部分2bの厚さに対して薄くなるように膨張された熱膨張体100Aを形成するようにしても良い。具体的には、熱膨張層21の縁部分2aにおけるマイクロカプセルを含有する密度を、縁部分2a以外の部分におけるマイクロカプセルを含有する密度よりも低くすることで、縁部分2aの厚さが当該縁部分2a以外の部分の厚さに対して薄くなるように膨張される構成であっても良い。また、熱膨張層21の縁部分2aにおけるマイクロカプセルの熱吸収率を縁部分2a以外の部分におけるマイクロカプセルの熱吸収率よりも低くすることで、縁部分2aの厚さが当該縁部分2a以外の部分の厚さに対して薄くなるように膨張される構成であっても良い。
【0020】
さらに、上記実施形態にあっては、熱膨張部2の縁部分2aの厚さがその他の部分の厚さに対して薄くされたものを例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、少なくとも縁部分2aの厚さが当該縁部分2aよりも中央側の部分2bの厚さに対して薄くされていれば良い。すなわち、例えば、縁部分2aに対して当該縁部分2aよりもわずかに中央側(内側)の部分2bが厚くされ、さらに中央側(内側)の部分が薄くされているような、側面視にて凹凸を有するような形状であっても良い。
【0021】
また、熱膨張性シート100として、熱エネルギーに反応して膨張する熱膨張部2を具備するものを例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、熱エネルギー以外の各種のエネルギーに反応して膨張する構成であっても良い。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
基材シートの表面の少なくとも一部分にエネルギーを与えると膨張する膨張部が設けられ、
前記膨張部は、その縁部分の厚さが当該縁部分以外の部分の厚さに対して薄くされてなることを特徴とする膨張性シート。
<請求項2>
前記膨張部は、複数の膨張層が積層されてなり、
前記膨張層の積層数は、前記縁部分が前記縁部分以外の部分よりも少なくされてなることを特徴とする請求項1に記載の膨張性シート。
<請求項3>
前記膨張部は、
前記縁部分から中央側の部分に向かって盛り上がるように形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の膨張性シート。
<請求項4>
前記膨張部は、
所定の図案に対応した立体形状を形成するように膨張することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の膨張性シート。
<請求項5>
前記膨張部は、
加熱による熱エネルギーに反応して膨張することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の膨張性シート。
<請求項6>
基材シートの表面の少なくとも一部分に設けられた膨張部にエネルギーを与えることにより膨張された膨張体であって、
前記膨張体は、その表面に所定の図案に対応する立体形状が形成されているとともに、その縁部分の厚さが当該縁部分以外の部分の厚さに対して薄くなるように膨張されてなることを特徴とする膨張体。
<請求項7>
前記膨張部は、熱発泡性のマイクロカプセルを含有する熱膨張層からなり、前記マイクロカプセルが熱エネルギーに反応することにより膨張された膨張体であって、
前記熱膨張層の前記縁部分における前記マイクロカプセルを含有する密度を、前記縁部分以外の部分における前記マイクロカプセルを含有する密度よりも低くすることで、前記縁部分の厚さが当該縁部分以外の部分の厚さに対して薄くなるように膨張されてなることを特徴とする請求項6に記載の膨張体。
<請求項8>
前記膨張部は、熱発泡性のマイクロカプセルを含有する熱膨張層からなり、前記マイクロカプセルが熱エネルギーに反応することにより膨張された膨張体であって、
前記熱膨張層の前記縁部分における前記マイクロカプセルの熱吸収率を前記縁部分以外の部分における前記マイクロカプセルの熱吸収率よりも低くすることで、前記縁部分の厚さが当該縁部分以外の部分の厚さに対して薄くなるように膨張されてなることを特徴とする請求項6に記載の膨張体。