【実施例】
【0015】
以下に、搬送台車にかかる実施例について、図面を参照して説明する。
本例の搬送台車1は、
図1、
図2に示すように、搬送物8を搬送するために用いられる。搬送台車1は、荷台2、自在車輪31、揺動フレーム4、固定車輪32及びダンパ5を備えている。
荷台2は、搬送物8が積載される部分であり、搬送物8が積載される積載面20を有している。自在車輪31は、上下方向Hの回動軸線310の回りに回動可能に荷台2の下面に3つ設けられている。揺動フレーム4は、荷台2の前端部201から荷台2の前後方向L及び左右方向Wの中間領域としての中央部まで配置されている。揺動フレーム4は、荷台2の前端部201に係合する揺動基端部41を支点に揺動して、荷台2の中央部に位置する揺動部(揺動先端部)42を上下方向Hに揺動させるよう構成されている。
【0016】
図3に示すように、固定車輪32は、回転軸線320が左右方向Wに向けられた状態で、揺動フレーム4の揺動部42の下面に設けられている。
図1に示すように、ダンパ5の基端取付部51は、荷台2の前端部201における、揺動フレーム4の揺動基端部41の上方に取り付けられており、ダンパ5の先端取付部52は、基端取付部51から斜め下方に向けて配置される状態で、揺動フレーム4の揺動部42に取り付けられている。ダンパ5は、流体の粘性抵抗を利用して揺動フレーム4の揺動部42を下方へ付勢するよう構成されている。
【0017】
以下に、本例の搬送台車1について、
図1〜
図6を参照して詳説する。
本例の搬送台車1は、複数台が連なった状態で、牽引車によって牽引されるよう構成されている。そして、複数の搬送台車1は、牽引車によって牽引されるときには、固定車輪32によって前後方向Lへ移動が案内される。牽引車による搬送台車1は、例えば、工場内の搬送物8(製品、部品等)の保管位置から他の保管位置又は出荷位置まで移動することができる。また、各搬送台車1は、作業者によって手押しされるときには、固定車輪32を支点にして、上下方向の軸線の回りに回転させて、向きを容易に変更することができる。
【0018】
図1に示すように、荷台2は、四角の枠形状に形成されたフレーム部21と、フレーム部21の上に設けられた天板部22とを有している。フレーム部21の前端部201には、作業者によって手押し操作が可能なハンドル部211が設けられている。荷台2の前端部201には、牽引車に連結される牽引アーム部26が設けられており、荷台2の中間部分(後述する補助フレーム部23)には、他の搬送台車1の牽引アーム部28を連結させて牽引するための牽引係合部27が設けられている。なお、
図2においては、天板部22を省略している。
【0019】
図2に示すように、本例の自在車輪31は、荷台2の下面における前方部分の左右2箇所と、荷台2の下面における後方部分の左右の中央部の1箇所とに設けられている。自在車輪31は、荷台2の下面における前方部分及び後方部分の左右の合計4箇所に設けてもよい。
揺動フレーム4は、荷台2の前端部201から荷台2の前後方向L及び左右方向Wの中央部まで配置されている。荷台2の中央部は、荷台2を平面視したときの中央部分だけでなく、この中央部分の周囲も含む部分とする。
【0020】
揺動フレーム4は、荷台2の前端部201における左右方向Wの中心位置から後方に向けて略水平に配置されている。荷台2の前端部201に係合する、揺動フレーム4の揺動基端部41の揺動中心軸線410は、荷台2の左右方向Wに向けられている。
荷台2における前後方向Lの中心位置には、左右方向Wに向けて補助フレーム部23が設けられている。補助フレーム部23の下面には、揺動フレーム4の揺動部42を左右からガイドするダンパガイド部24が設けられている。
【0021】
図1、
図6に示すように、本例のダンパ5は、流体としてのオイルの粘性抵抗を利用するオイルダンパである。なお、ダンパ5は、流体としてのエアーの粘性抵抗を利用するエアーダンパとすることも可能である。ダンパ5は、シリンダ53と、シリンダ53に対してストロークするピストンロッド54とを有しており、シリンダ53からピストンロッド54が突出する方向へ付勢力を常時生じさせている。ダンパ5の基端取付部51としてのシリンダ53の端部は、荷台2の前端部201における、揺動フレーム4の揺動基端部41の上方において回動可能に取り付けられている。ダンパ5の先端取付部52としてのピストンロッド54の端部は、揺動フレーム4の揺動部42に回動可能に取り付けられている。
【0022】
ダンパ5は、水平方向に対して、3〜20°の傾斜角度を有して、基端取付部51から先端取付部52まで配置されている。ダンパ5の基端取付部51は、荷台2の天板部22よりも下方に配置されている。また、本例のダンパ5の先端取付部52は、揺動フレーム4に対して左右方向Wにオフセットする位置に設けられている。この理由は、ダンパ先端側異常時X2において、フレーム4の揺動部42から外れたダンパ5の先端取付部52が、揺動フレーム4に干渉しないようにするためである。また、
図2においては、図示の容易化のために、ダンパ5の全体が揺動フレーム4に対して左右方向Wにオフセットしている状態を示した。ダンパ5の基端取付部51を揺動フレーム4の上方に位置させて、ダンパ5の全体を左右方向Wに傾斜させてもよい。
【0023】
本例の搬送台車1は、搬送台車1において故障が懸念される部位を監視するための工夫をしている。具体的には、揺動フレーム4に、異常検知部材6を移動可能に設けることによって、ダンパ5の取付状態又は固定車輪32の支持状態に異常(故障)が生じたときであっても、作業者等が、この異常を容易に検知できるようにしている。搬送台車1における異常は、
図4に示すように、荷台2の前端部201に対するダンパ5の基端取付部51の取付が外れたときであるダンパ基端側異常時X1、
図5に示すように、揺動フレーム4の揺動部42に対するダンパ5の先端取付部52の取付が外れたときであるダンパ先端側異常時X2、
図6に示すように、固定車輪32の車輪支持部321に対する固定車輪32の車輪部322の支持状態に異常が発生したときである車輪異常時X3として想定される。
【0024】
ここで、ダンパ基端側異常時X1において、荷台2の前端部201に対するダンパ5の基端取付部51の取付が外れる要因としては、ダンパ5の基端取付部51における、ボルト、取付ピン、軸部、溶接部等の破損が考えられる。また、ダンパ先端側異常時X2において、揺動フレーム4の揺動部42に対するダンパ5の先端取付部52の取付が外れる要因としては、ボルト、取付ピン、軸部、溶接部等の破損が考えられる。また、車輪異常時X3において、固定車輪32の車輪支持部321による固定車輪32の車輪部322の支持状態の異常としては、固定車輪32の軸部323の破損、固定車輪32の軸部323と転がり接触するベアリングの破損等が考えられる。
【0025】
図1、
図4に示すように、異常検知部材6は、揺動フレーム4における、揺動基端部41と揺動部42との間に位置する揺動中間部43において前後方向Lに回動可能に設けられた第1異常検知部材6Aと、第1異常検知部材6Aの回動を受けて前後方向Lにスライドする第2異常検知部材6Bとによって構成されている。荷台2の前端部201には、第2異常検知部材6Bのスライドを受けて、初期位置711から表示位置712へ回動する表示板71が設けられている。
【0026】
第1異常検知部材6Aは、
図4、
図5に示すように、ダンパ基端側異常時X1及びダンパ先端側異常時X2には、ダンパ5が伸長する力を受けて回動するよう構成されている。また、第1異常検知部材6Aは、
図6に示すように、車輪異常時X3には、固定車輪32の車輪部322が固定車輪32の車輪支持部321に対して相対的に上昇する力を受けて回動するよう構成されている。
図1に示すように、揺動フレーム4の揺動中間部43には、第1異常検知部材6Aを回動可能に支持する支持部44が設けられており、第1異常検知部材6Aには、支持部44に支持される取付支点部61が設けられている。
【0027】
第2異常検知部材6Bの一端には、第1異常検知部材6Aに回動可能に支持される回動支点部68が設けられており、第2異常検知部材6Bの他端には、表示板71に接触する回動操作部62が設けられている。回動操作部62には、ローラ(カムフォロア)が設けられている。
表示板71は、
図1に示すように、初期位置711にあるときには、自重によって垂下した状態にある。表示板71は、
図4、
図5、
図6に示すように、いずれかの異常時X1,X2,X3においては、第2異常検知部材6Bによって、荷台2の前端部201から前方へ押されて、初期位置711から表示位置712へ回動する。表示位置712にある表示板71は、略水平な状態になる。表示板71の表面には、異常等の文字を書いておくことができる。そして、作業者は、表示板71が表示位置712にあることを確認したときには、ダンパ5又は固定車輪32に異常が発生したことを検知して、搬送台車1のメンテナンスを行うことができる。
【0028】
図1、
図4に示すように、本例の第1異常検知部材6Aは、ダンパ基端側異常時X1、ダンパ先端側異常時X2及び車輪異常時X3の3つの異常時の検知を共通して行うための形状を有している。第1異常検知部材6Aは、取付支点部61の前後へ伸びて、ダンパ5と平行に近い状態で配置される平行部分601と、平行部分601における、取付支点部61の位置から下方へ伸びる下方部分602とを有している。
第2異常検知部材6Bの回動支点部68は、第1異常検知部材6Aの下方部分602の下端部に回動可能に連結されている。第2異常検知部材6Bは、荷台2の前端部201に設けられたローラ25と、揺動フレーム4に設けられたガイド45とによってスライドが案内されている。第2異常検知部材6Bのスライドの案内は種々の構造によって行うことができる。
【0029】
図4、
図5に示すように、揺動フレーム4には、ダンパ基端側異常時X1において、ダンパ5が伸長するときに、ダンパ5の基端側部分を斜め上方へ案内する基端側案内部63と、ダンパ先端側異常時X2において、ダンパ5が伸長するときに、ダンパ5の先端側部分を斜め下方へ案内する先端側案内部64とが設けられている。基端側案内部63は、ダンパ5の基端側部分としてのシリンダ53の部分を左右から挟み込む状態で、揺動フレーム4の基端側部分に設けられている。先端側案内部64は、ダンパ5の先端側部分としてのピストンロッド54の端部を斜め上方から押え込むことが可能な状態で、揺動フレーム4の先端側部分に設けられている。
【0030】
第1異常検知部材6Aには、ダンパ基端側異常時X1において、ダンパ5の基端側部分によって持ち上げられて、異常検知部材6を回動させるための基端側係合部65と、ダンパ先端側異常時X2において、ダンパ5の先端側部分によって押し下げられて、異常検知部材6を回動させるための先端側係合部66とが設けられている。基端側係合部65は、第1異常検知部材6Aの平行部分601からダンパ5の基端側部分の上方まで形成されている。先端側係合部66は、第1異常検知部材6Aの平行部分601からダンパ5の先端側部分の下方まで形成されている。
【0031】
図1、
図3、
図6に示すように、揺動フレーム4には、車輪異常時X3に回動する異常伝達部材72が設けられている。異常伝達部材72は、固定車輪32の車輪部322の外周に接触する第1接触部721と、第1異常検知部材6Aの下方部分602に設けられた車輪用係合部67に接触する第2接触部722とを有している。第1接触部721及び第2接触部722には、ローラ(カムフォロア)が設けられており、第1接触部721は、固定車輪32の車輪部322の外周に転がり接触し、第2接触部722は、車輪用係合部67に転がり接触する。
【0032】
第1接触部721は、固定車輪32の車輪部322の外周における斜め上側の位置に常時接触し、第2接触部722は、車輪用係合部67の上側に常時接触している。そして、第1異常検知部材6Aが異常伝達部材72と接触し、異常伝達部材72が固定車輪32に接触していることによって、第1異常検知部材6Aの回動姿勢が保たれている。また、
図6に示すように、車輪異常時X3においては、第1接触部721が固定車輪32の車輪部322の外周によって上方へ押されるとともに、第2接触部722が車輪用係合部67を下方へ押すことによって、第1異常検知部材6Aが回動し、第1異常検知部材6Aが第2異常検知部材6Bをスライドさせる。
【0033】
次に、本例の搬送台車1の作用効果について説明する。
牽引車による牽引によって搬送台車1を移動させるときには、自在車輪31が地面に接地されるとともに、固定車輪32が地面に接地される。そして、荷台2の中央部に、前後方向Lにのみ回転可能な固定車輪32が位置していることにより、搬送台車1が左右に曲がって移動する際には、固定車輪32が搬送台車1の姿勢を左右に変える際の起点となることができる。これにより、内輪差をほとんど生じさせることなく搬送台車1が左右に曲がって移動することができるとともに、搬送台車1の左右へのふらつきを極力抑えることができる。
【0034】
また、牽引車によって牽引される搬送台車1が段差又は凹凸のある地面を移動する際には、いずれかの自在車輪31が地面から浮き上がることがある。この場合であっても、荷台2の中央部に位置する固定車輪32が、地面の段差又は凹凸に対して柔軟に追従し、常に地面に接地される状態を形成することができる。これにより、固定車輪32によって、荷台2の中央部が常に支えられることになり、搬送台車1が移動する際に、固定車輪32が接地されずに搬送台車1が横滑りしてしまうことを防止することができる。
【0035】
さらに、揺動フレーム4は、荷台2の前端部201から荷台2の中央部まで配置されており、ダンパ5は、揺動フレーム4が配置される向きに、できるだけ近い向きで斜め下方に向けて配置することができる。これにより、荷台2の上面よりも下方にダンパ5を収納して、荷台2の高さを低く維持することができ、かつ、使用するダンパ5の長さ寸法を大きく取ることができる。そのため、固定車輪32の上下方向Hへの揺動可能範囲を容易に確保することができる。
【0036】
それ故、本例の搬送台車1によれば、内輪差を極力なくすとともに、移動時の左右へのふらつきを抑えることができ、地面における段差又は凹凸に対しても柔軟に追従して、姿勢を安定して保つことができる。
【0037】
また、本例の搬送台車1においては、ダンパ5によって揺動可能な揺動フレーム4に固定車輪32を設けており、固定車輪32のみによって搬送台車1の前後方向Lへの移動の案内を行う。そのため、固定車輪32の役割は重要であり、固定車輪32が故障によって機能しなくなったときには、早期にこの故障を発見する必要がある。
【0038】
そこで、搬送台車1に、異常検知部材6(第1異常検知部材6A及び第2異常検知部材6B)、異常伝達部材72及び表示板71を用いることにより、ダンパ5の取付状態又は固定車輪32の支持状態に異常が生じたときであっても、作業者等が、この異常を容易に検知できるようにしている。これにより、ダンパ5の取付状態又は固定車輪32の支持状態に異常が生じたときには、作業者等は早期にこの異常を発見することができ、ダンパ5及び固定車輪32を利用した搬送台車1の信頼性を向上させることができる。