【実施例】
【0046】
物性値の測定方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0047】
(1)樹脂の融点
JIS K7121−1987に準じ、示差走査熱量計としてセイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて測定した。試料3mgをアルミニウム製受皿上で室温から340℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(℃)とした。
【0048】
(2)積層体の厚み
先端が平坦なダイヤルゲージ厚み計(ミツトヨ社製)を用いて面内をまんべんなく20点測定し、平均値を求めた。
【0049】
(3)積層体の積層構成およびB層の割合
ミクロトームで切削した積層体の断面を走査型電子顕微鏡で倍率500倍で観察して断面の拡大画像を撮影し、イメージアナライザーを用いて各層の厚みを測定した。試験片を10個作製して同様の厚み測定を行い、その平均値から積層体の積層構成(μm)を求めた。PPSフィルム層(B層)の割合は、PPSフィルムの両面に繊維シートが積層されている場合には、最外層をなす両表面の繊維シート層(A層)の厚みをそれぞれaμm、a’μmとし、中間層をなす二軸配向PPSフィルム層(B層)の厚みをbμmとし、式(b/(a+a’+b)×100)によって算出した。PPSフィルムの片面のみに繊維シートが積層されている場合には、繊維シート層(A層)の厚みをaμm、二軸配向PPSフィルム層(B層)の厚みをbμmとし、式(b/(a+b)×100)によって算出した。
【0050】
(4)引裂強度
JIS K7128(およびJIS P8116)に準じ、軽荷重引裂試験機(東洋精機社製、Type−D)を用いて測定した。試料の直交する任意の2方向について、それぞれ20回ずつ測定して平均値を求め、その各方向の値を平均して求めた。試験片は長さ63.5mm、幅50mmの長方形として切り出し、短辺側の中央の端部に長辺と平行な長さ12.7mmの切り込みを入れて引裂の起点とした。
【0051】
(5)絶縁破壊電圧
JIS C2151に準じ、交流絶縁破壊試験器(春日電機株式会社製、AC30kV)を用いて測定した。試験片のサイズは25cm×25cmの正方形とし、23℃、65%RHの環境下で調湿したものを用い、周波数60Hz、昇圧速度1000V/secで測定した。用いた電極の形状は、台座となる下電極がφ75mm、高さ15mmの円柱形であり、上電極がφ25mm、高さ25mmの円柱形である。いずれの電極も、試験片を挟む側の面はR3mmで面取りされたものを用いた。
【0052】
(6)繊維形状保持
ミクロトームで切削した積層体の断面を走査型電子顕微鏡で500倍にて観察し、繊維シートの最外層(フィルムとの接着界面の反対側)を形成する繊維の断面が独立した界面を有する円形もしくは楕円形の形状として観察されるかどうかを目視で確認した。同様の操作を10個の試験片の断面について行い、下記の基準で判定した。
【0053】
繊維形状保持
A:繊維の断面が5個以上円形もしくは楕円形の形状として確認できた。
【0054】
B:繊維の断面が1個以上、5個未満、円形もしくは楕円形の形状として確認できた。
【0055】
C:繊維の断面が円形もしくは楕円形の形状として全く確認できなかった。
【0056】
(7)平面性
5m×1mサイズのサンプルを準備し、サンプルより大きな平らな板に四隅を固定して設置(四方に張力をかけ、全体が折れたり弛んだりしないよう設置)して暗室に運び、板の横方向から一定の照度及び照射角にて蛍光灯の光を照射した。サンプル面内に膨れや凹みがあると周囲に陰影ができるため、照射する方向を変えながら目視にて膨れや凹みの概形を見積もり、その形を縁取るようにペンでマーキングした。マーキングにより囲われた面積の総和から、膨れや凹みが面内を占める割合を算出し、下記の基準で平面性を判定した。
【0057】
平面性
A:陰影が確認できなかった。
【0058】
B:一部(全面積の1割以上、9割未満)に膨れや凹みが確認できた。
【0059】
C:全面(全面積の9割以上)に膨れや凹みが確認できた。
【0060】
(8)耐キズ性
JIS K5600−5−4の鉛筆硬度試験を参考にし、鉛筆の代わりに先端を半球状に加工したφ0.9mmのステンレス製針金を用いて試験片の表面引掻試験を行った。装置は表面性状測定機(新東科学株式会社製、HEIDON−14D)を用い、針金はピンバイスに挟んで固定した上で、鉛筆用の専用ホルダーにセットした。試験片は平滑なガラス板の上に固定して定位置にセットし、針金の球状先端が斜め45°の角度で積層体の表面に接地するように調整した。引掻処理は移動長10mm、移動速度300mm/minの条件で針金を5往復させて行い、発生した傷が繊維シートを貫通してフィルム層にまで到達しているかどうかを判別するため、傷と直交する方向の断面出しを行ったうえで、断面を走査型電子顕微鏡で観察した。同様の引掻処理を、針金の先端にかかる荷重を0g〜500gの範囲で変えながら行い、傷がフィルム層にまで到達する最低荷重を求め、その荷重をもとに下記基準にて耐キズ性を判定した。なお、測定は積層体の繊維シートが積層されている各面に対して10回ずつ行い、最低荷重がより小さかった方の面の値を判定に用いた。
【0061】
耐キズ性
AA:最低荷重が220g以上
A:最低荷重が200g以上、220g未満
B:最低荷重が150g以上、200g未満
C:最低荷重が150g未満。
【0062】
(9)取扱い性
スリット間隙の調節が可能なコの字型のスリット台(コの字の一辺が4mm、スリット深さは50mm、
図1)を作製し、全てのスリット間隙が一律で積層体厚みの1.2倍の間隙となるように調整した後、コの字型に折り曲げ成型した積層体を約20mm挿入する際の状態から下記の通り取扱い性を判定した。スリット台の素材は珪素鋼であり、表面粗度(SRa)は2μmであった。コの字型の折り曲げ加工は、モーター加工機(小田原エンジニアリング社製)を用いて行い、具体的には、12mm×80mmの長方形に打ち抜いた後に、短辺側を4mm間隔で三つ折りした。打ち抜きから折り曲げまでの加工を連続で行って100個の試験片を作製し、以下の取り扱い性を評価した。
【0063】
取扱い性
AA:挿入性は全く問題なく、比較的容易に挿入できる。
A:挿入はできるが、挿入時に少し引っ掛かる、または腰が弱くて少し座屈する。
B:加工の段階で積層体に割れや亀裂が発生する場合がある。
C:挿入時に積層体が引っ掛かる、または腰が弱くて座屈しやすく、挿入が困難である。
【0064】
(10)長期耐熱性
幅10mm、長さ250mmの試験片を210℃の温度に設定した熱風オーブン中に入れて2000時間の加熱処理を行い、加熱処理前後での破断強度を測定し、下記の式から強度保持率を算出した。その結果について下記の判定基準で判定を行った。破断強度は、JIS−C2151に規定された方法に従って、テンシロン引張試験機を用いて、幅10mmのサンプル片をチャック間長さ100mmとなるようセットし、引張速度300mm/minで引張試験を行う。この条件で10回測定し、その平均値を求めた。
強度保持率(%)=Y/Y0×100
Y0:加熱処理前の破断強度(MPa)
Y:加熱処理後の破断強度(MPa)
長期耐熱性
A:強度保持率が85%以上
B:強度保持率が80%以上、85%未満
C:強度保持率が80%未満。
【0065】
(11)界面密着性(もみ試験)
スコット耐揉摩耗試験機(東洋精機製)を用いて、JIS−K−6328に従ったもみ試験を実施した。サンプルサイズは幅10mm、長さ200mm、荷重2.5kgで測定し、目視でフィルムと繊維シートの界面での劈開や破断が確認できるまでの回数を求める。以下の基準で界面密着性を判定した。
界面密着性(揉み試験)
AA:100 回以上
A:60 回以上100 回未満
B:30 回以上60 回未満
C:30回未満。
【0066】
(12)界面密着性(引張試験)
JIS−C2151に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用い下記条件にて測定した。
測定装置:オリエンテック( 株)製フイルム強伸度自動測定装置“ テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張速度:300mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
測定によって得られた応力-ひずみ曲線(S−Sカーブ)を解析し、最終的な破断点に到達する以前(伸度が破断伸度よりも小さい時点)にて階段状の応力低下(伸度が2%増加する間に応力が5MPa以上低下するような変化)の区間がみられるかどうかを調べ、下記基準にて界面密着性を判定した。
界面密着性(引張試験)
A:階段状の応力低下がみられない
C:階段状の応力低下がみられる。
【0067】
(参考例1)PPS樹脂(PPS−1)の作製
オートクレーブに、47%水硫化ナトリウム9.44kg(80モル)、96%水酸化ナトリウム3.43kg(82.4モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)13.0kg(131モル)、酢酸ナトリウム2.86kg(34.9モル)、及びイオン交換水12kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら235℃まで3時間かけて徐々に加熱し、水17.0kgおよびNMP0.3kg(3.23モル)を留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。次に、主要モノマーとしてp−ジクロロベンゼン(p−DCB)11.5kg(78.4モル)、副成分モノマーとして1,2,4−トリクロロベンゼン 0.007kg(0.04モル)、を加え、NMP22.2kg(223モル)を追添加して反応容器を窒素ガス下に密封し、400rpmで撹拌しながら、200℃から270℃まで0.6℃/分の速度で昇温した。270℃で30分経過後、水1.11kg(61.6モル)を10分かけて系内に注入し、270℃で更に反応を100分間継続した。その後、水1.60kg(88.8モル)を系内に再度注入し、240℃まで冷却した後、210℃まで0.4℃/分の速度で冷却し、その後室温近傍まで急冷した。内容物を取り出し、32リットルのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別した。得られた粒子を再度38リットルのNMPにより85℃で洗浄した。その後67リットルの温水で5回洗浄、濾別し、0.05質量%酢酸カルシウム水溶液70,000gで5回洗浄、濾別した。得られた粒子を60℃で熱風乾燥し、120℃で20時間減圧乾燥することによって白色のポリフェニレンスルフィド樹脂の粉粒体を得た。該粉粒体を320℃に設定した単軸押出機にて溶融混練してストランド形状に押し出し、カッターで切断してペレット化した。得られたPPS樹脂のペレットは、融点が280℃であった。
【0068】
(参考例2)メタ共重合PPS(PPS−2)の作製
主要モノマーとして70.6モルのp−ジクロベンゼン、副成分モノマーとして7.8モルのm−ジクロロベンゼン、および0.04モルの1,2,4−トリクロルベンゼンを用いたこと以外は、上記参考例1と同様にしてメタ共重合PPS樹脂の粉粒体を作製した。該粉粒体を300℃に設定した単軸押出機にて溶融混練してストランド形状に押し出し、カッターで切断してペレット化した。得られたメタ共重合PPS樹脂のペレットは、融点が255℃であった。
【0069】
(参考例3)メタ共重合PPS(PPS−2)の作製
主要モノマーとして66.6モルのp−ジクロベンゼン、副成分モノマーとして11.8モルのm−ジクロロベンゼン、および0.04モルの1,2,4−トリクロルベンゼンを用いたこと以外は、上記参考例1と同様にしてメタ共重合PPS樹脂の粉粒体を作製した。該粉粒体を300℃に設定した単軸押出機にて溶融混練してストランド形状に押し出し、カッターで切断してペレット化した。得られたメタ共重合PPS樹脂のペレットは、融点が235℃であった。
【0070】
(実施例1)
(a)二軸配向PPSフィルムの製膜
参考例1および参考例2で作製したPPS−1およびPPS−2のペレットを、それぞれ180℃の温度で3時間、真空乾燥した後、2台のエクストルーダに別々に供給し、溶融状態で口金上部にある積層装置で3層(積層順はPPS−2/PPS−1/PPS−2、積層比は1:4:1)になるように導き、続いてTダイ型口金から吐出させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着急冷固化させ、未延伸3層積層シートを得た。次いで、得られた積層シートを、表面温度95℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向に3.6倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と直交方向に100℃の温度で3.7倍に延伸し、続いて温度200℃で1段目熱処理行い、続いて265℃で2段目熱処理を行い、引き続き、260℃の弛緩処理ゾーンで横方向に5%弛緩処理を行った後、室温まで冷却し、ついでフィルムエッジを除去することで、厚み50μmのメタ共重合PPS/PPS/メタ共重合PPSの二軸配向3層積層フィルムを得た。
【0071】
(b)PPS繊維シートの作製
参考例1で作製したPPS−1のペレットを、165℃の温度で5時間、真空乾燥した後、単軸型の溶融紡糸設備を用いて押出温度320℃、引取速度1000m/分で製糸し、長さ6mmに切断して、繊度3.0dtexの未延伸PPS短繊維を製造した。同様に、単軸型の溶融紡糸設備を用いて押出温度320℃、引取速度1000m/分で製糸し、さらに温度95℃、延伸倍率3.2倍で延伸し、長さ6mmに切断した繊度1.0dtexの延伸されたPPS短繊維を製造した。得られた未延伸PPS短繊維と、延伸されたPPS短繊維を、未延伸PPS短繊維比率が40%になるように混合し、水を分散液として底に150メッシュの抄紙網を設置した手すき抄紙機(熊谷理機工業社製)を用いて抄紙し、目付17g/m
2、厚み25μmのPPS繊維シートを得た。
【0072】
(c)PPSフィルムとPPS繊維シートの接合
金属ロールとシリコーンゴムロールとからなる熱ラミネート加工機を用い、PPSフィルムの両面にPPS繊維シートが密着するように重ねて熱ラミネートすることでPPSフィルムとPPS繊維シートとを貼り合わせ、厚み90μmの積層体を得た。ラミネート条件は、温度245℃、圧力70kgf/cm、速度2m/minとした。
【0073】
(実施例2)
ラミネート温度を260℃にした以外は、実施例1と同様にして厚み90μmの積層体を得た。
【0074】
(実施例3)
ラミネート圧力を30kgf/cmにした以外は、実施例1と同様にして厚み90μmの積層体を得た。
【0075】
(実施例4)
(a)二軸配向PPSフィルムの製膜
エクストルーダの吐出量を調整し、フィルムの最終厚みが40μmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、厚み40μmのメタ共重合PPS/PPS/メタ共重合PPSの二軸配向3層積層フィルムを得た。
【0076】
(b)PPS繊維シートの作製
参考例1で作製したPPS−1のペレットを、165℃の温度で5時間、真空乾燥した後、溶融紡糸設備を用いて押出温度320℃、引取速度1000m/分で製糸し、その後、115℃のエチレングリコール中で延伸倍率4倍でドロー延伸し、長さ6mmに切断して、繊度1.5dtexの未延伸PPS短繊維を製造した。同様に、溶融紡糸設備を用いて押出温度320℃、引取速度1000m/分で製糸し、115℃のエチレングリコール中で延伸倍率4倍でドロー延伸し、さらに温度95℃、延伸倍率3.2倍で延伸した後、長さ6mmに切断することで、繊度0.6dtexの延伸されたPPS短繊維を製造した。得られた未延伸PPS短繊維と、延伸されたPPS短繊維を、未延伸PPS短繊維比率が40%になるように混合し、水を分散液として抄紙機を用いて抄紙し、目付10g/m
2、厚み13μmのPPS繊維シートを得た。
【0077】
(c)PPSフィルムとPPS繊維シートの接合
本実施例における(a)、(b)で作製したPPSフィルムとPPS繊維シートを用い、実施例1と同様にして、厚み60μmの積層体を得た。
【0078】
(実施例5)
(a)二軸配向PPSフィルムの製膜
3層積層の構成樹脂が、中間層はPPS−1単独、両表層はPPS−1が30質量%、PPS−2が70質量%の混合体となるように、2台のエクストルーダに原料を供給した以外は、実施例1と同様にして、厚み50μmの3層積層フィルムを得た。フィルムの融点は、中間層が280℃、両表層が266℃であった。
【0079】
(b)PPS繊維シートの作製
実施例1と同様にして厚み25μmのPPS繊維シートを作製した。
【0080】
(c)PPSフィルムとPPS繊維シートの接合
本実施例における(a)、(b)で作製したPPSフィルムとPPS繊維シートを用い、実施例1と同様にして、厚み90μmの積層体を得た。
【0081】
(実施例6)
二軸配向PPSフィルムの製膜の際、フィルムの最終厚みが100μmとなるように吐出量を調整した以外は、実施例1と同様にして、厚み140μmの積層体を得た。
【0082】
(実施例7)
(a)二軸配向PPSフィルムの製膜
PPS−2の代わりに、参考例3で作製したPPS−3を原料として用い、さらにフィルムの最終厚みが45μmとなるように吐出量を調整した以外は、実施例1と同様にして、厚み45μmの3層積層フィルムを得た。フィルムの融点は、中間層が280℃、両表層が235℃であった。
(b)PPS繊維シートの作製
実施例1と同様にして厚み25μmのPPS繊維シートを作製した。
(c)PPSフィルムとPPS繊維シートの接合
本実施例における(a)、(b)で作製したPPSフィルムとPPS繊維シートを用い、ラミネート温度を235℃とした以外は、実施例1と同様にして、厚み85μmの積層体を得た。
【0083】
(実施例8)
二軸配向PPSフィルムを製膜する際に、PPS−1とPPS−2の積層比が1:25:1になるように調整した以外は、実施例1と同様にして、厚み90μmの積層体を得た。
【0084】
(実施例9)
二軸配向PPSフィルムを製膜する際に、PPS−1とPPS−2の積層比が1:1:1になるように調整した以外は、実施例1と同様にして、厚み90μmの積層体を得た。
【0085】
(実施例10)
ラミネート条件を、温度270℃、圧力30kgf/cmにした以外は、実施例1と同様にして厚み90μmの積層体を得た。
【0086】
(実施例11)
二軸配向PPSフィルムを作製する際、延伸倍率を長手方向に3.9倍、長手方向と直交する方向に4.0倍とした以外は、実施例1と同様にして、厚み90μmの積層体を得た。
【0087】
(実施例12)
(a)二軸配向PPSフィルムの製膜
エクストルーダの吐出量を調整し、フィルムの最終厚みが135μmとなるようにし、さらにPPS−1とPPS−2の積層比が1:25:1になるように調整した以外は、実施例1と同様にして、厚み135μmのメタ共重合PPS/PPS/メタ共重合PPSの二軸配向3層積層フィルムを得た。
【0088】
(b)PPS繊維シートの作製
参考例1で作製したPPS−1のペレットを、165℃の温度で5時間、真空乾燥した後、溶融紡糸設備を用いて押出温度320℃、引取速度1000m/分で製糸し、その後、115℃のエチレングリコール中で延伸倍率6倍でドロー延伸し、長さ6mmに切断して、繊度0.7dtexの未延伸PPS短繊維を製造した。同様に、溶融紡糸設備を用いて押出温度320℃、引取速度1000m/分で製糸し、115℃のエチレングリコール中で延伸倍率6倍でドロー延伸し、さらに温度95℃、延伸倍率3.3倍で延伸した後、長さ6mmに切断することで、繊度0.4dtexの延伸されたPPS短繊維を製造した。得られた未延伸PPS短繊維と、延伸されたPPS短繊維を、未延伸PPS短繊維比率が40%になるように混合し、水を分散液として抄紙機を用いて抄紙し、目付6g/m
2、厚み7μmのPPS繊維シートを得た。
【0089】
(c)PPSフィルムとPPS繊維シートの接合
本実施例における(a)、(b)で作製したPPSフィルムとPPS繊維シートを用い、実施例1と同様にして、厚み147μmの積層体を得た。
【0090】
(実施例13)
芳香族ポリアミド繊維シートの代表例として、デュポン帝人アドバンスドペーパー社の「ノーメックス」(商標登録)のタイプ410の50μm厚みのものを準備し、それを繊維シートとして用いた以外は、実施例1と同様にして厚み150μmの積層体を得た。
【0091】
(実施例14)
実施例1で、PPS繊維シートの作製時に抄紙の目付量を変えて40g/m
2とし、厚み50μmのPPS繊維シートを得た。それを繊維シートとして用いた以外は、実施例1と同様にして厚み150μmの積層体を得た。
【0092】
(比較例1)
二軸配向PPSフィルムの作製の際、原料としてPPS−1のみを用いて単層の二軸配向PPSフィルムを作製した以外は、実施例1と同様にして厚み90μmの積層体を得た。
【0093】
(比較例2)
ラミネート条件を温度270℃、圧力70kgf/cmとした以外は、比較例1と同様にして、厚み40μmの積層体を得た。
【0094】
(比較例3)
熱ラミネートを行う前に、PPSフィルムとPPS繊維シートの接合される面にプラズマ処理(処理強度650w・min/m
2)を施した以外は、比較例1と同様して厚み90μmの積層体を得た。
【0095】
(比較例4)
二軸配向PPSフィルムを作製する際、原料としてPPS−1のみを用い、フィルムの最終厚みが10μmとなるように吐出量を調整し、さらに、PPSフィルムとPPS繊維シートを接合する際のラミネート条件を温度245℃、圧力を70kgf/cmとした以外は、実施例4と同様にして、厚み30μmの積層体を得た。
【0096】
(比較例5)
二軸配向3層積層PPSフィルムの構成樹脂が、中間層はPPS−1単独、両表層はPPS−1が80質量%、PPS−2が20質量%の混合体となるように、2台のエクストルーダに原料を供給し、さらにフィルムの最終厚みが120μmとなるように吐出量を調整した以外は、実施例6と同様にして、厚み160μmの積層体を得た。積層フィルムの融点は、中間層が280℃、両表層が275℃であった。
【0097】
(比較例6)
(a)未延伸および二軸延伸PPSフィルムの製膜
参考例1で作製したPPS−1のペレットを、180℃の温度で3時間、真空乾燥した後、エクストルーダに供給し、続いてTダイ型口金から吐出させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着急冷固化させ、厚み25μmの未延伸単層PPSフィルムを得た。
また、上記と同様の方法で450μmの未延伸単層PPSフィルムを得た後、該フィルムをロール群からなる縦延伸装置によって、長手方向に延伸温度98℃で3.6倍に延伸し、続いてフィルムをテンターに供給し延伸温度98℃で幅方向に3.5倍に延伸し、265℃10秒間の条件で熱処理して厚さ50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。該二軸配向PPSフィルムは、両面に6000J/m
2のコロナ放電処理を施した。
【0098】
(b)PPS繊維シートの作製
参考例1で作製したPPS−1のペレットを、165℃の温度で5時間、真空乾燥した後、単軸型の溶融紡糸設備を用いて押出温度320℃、引取速度1000m/分で製糸し、長さ6mmに切断して短繊維を製造した。続いて該短繊維を積層し、針深度5mm、針密度150/cm
2になる条件でニードルパンチ加工した後、温度240℃でカレンダー処理し、厚み50μmのPPS繊維シートを得た。
【0099】
(c)PPSフィルムとPPS繊維シートの接合
上記で得られた未延伸単層PPSフィルム、二軸配向PPSフィルム、PPS繊維シートを、PPS繊維シート/未延伸単層PPSフィルム/二軸配向PPSフィルム/未延伸単層PPSフィルム/PPS繊維シートの順で5層に重ね合せ、熱ラミネート加工機を用いて熱ラミネートすることでPPSフィルムとPPS繊維シートとを貼り合わせ、厚み190μmの積層体を得た。ラミネート条件は、温度240℃、圧力10kgf/cm、速度1m/minとした。なお、積層体の積層構成は未延伸単層PPSフィルム層および二軸配向PPSフィルム層を足し合わせたものをB層として割合を計算した。
【0100】
(比較例7)
芳香族ポリアミド繊維シートの代表例として、デュポン帝人アドバンスドペーパー社の「ノーメックス」(商標登録)のタイプ410の50μm厚みのものを準備し、それを繊維シートとして用いた以外は、比較例3と同様にして厚み150μmの積層体を得た。
【0101】
【表1】