特許第6354621号(P6354621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6354621窒化珪素質セラミックス焼結体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354621
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】窒化珪素質セラミックス焼結体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/596 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   C04B35/596
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-38209(P2015-38209)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-160117(P2016-160117A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】松林 重治
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−059346(JP,A)
【文献】 特開2013−193909(JP,A)
【文献】 特開平11−116342(JP,A)
【文献】 特開平01−230478(JP,A)
【文献】 特開2007−315669(JP,A)
【文献】 特開2001−311474(JP,A)
【文献】 特開2007−169118(JP,A)
【文献】 特開2001−019557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/584−35/596
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主相のβ−Si相と、
粒界相のYSi相と、
SiO相と、
個数密度1〜10個/μmかつ平均間隔0.3μm以上で分散されたSiC微粒子と、を有し、
前記SiO相のうちの50〜80%のSiO相が前記主相と前記粒界相との界面に存在し、
前記SiC微粒子の50%以上が平均粒径0.05μm以下かつアスペクト比1.2以下であり、
Al、Fe、Na、Cl、及びCの総含有量が100ppm以下であることを特徴とする窒化珪素質セラミックス焼結体。
【請求項2】
前記YSi相を4〜8質量%、前記SiO相を1〜3質量%、前記SiC微粒子を0.5〜3質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の窒化珪素質セラミックス焼結体。
【請求項3】
アルキメデス密度が3.10g/cm以上、気孔率が0.5%以下、且つ最大欠陥サイズが10μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化珪素質セラミックス焼結体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化珪素質セラミックス焼結体の製造方法であって、
α−SiCを主相とし、平均結晶径10μm以下の炭化珪素質セラミックスからなる混合用ポット及び混合用ボールを用意し、前記混合用ポットに、前記混合用ボールと、出発原料とを充填し、前記混合用ポットに回転、撹拌、又は振動の少なくともいずれかの運動を与えて、前記出発原料を分散、及び混合させると共に前記混合用ポットと混合用ボールを摩滅させて、前記出発原料中にSiC微粒子を混入させる原料混合工程と、
前記原料混合工程で得られた混合粉末を、理論密度比の50体積%以上の成形体に成形する成形工程と、
前記成形体を、窒素雰囲気中1810〜1840℃の焼結温度で焼結する焼結工程と、
前記焼結工程後、窒素雰囲気中、1450℃以上1550℃の温度範囲の保持温度で24時間以上保持する降温過程熱処理工程と、を有し、
前記出発原料は、平均粒径5μm以下のY粉末、平均粒径2μm以下のSiO粉末及び平均粒径0.5μm以下のα−Si粉末とを含み、これら粉末の合計量に対する割合として前記Y粉末が3〜10質量%、前記SiO粉末が1〜5質量%となるように、前記混合用ポットに充填することを特徴とする窒化珪素質セラミックス焼結体の製造方法。
【請求項5】
前記降温過程熱処理工程は、
前記焼結工程後、窒素雰囲気中、1350℃以上1450℃未満の温度範囲の第一保持温度まで降温し、該第一保持温度で2時間以上保持後、前記保持温度まで再加熱し、該保持温度で24時間以上保持することを特徴とする請求項4に記載の窒化珪素質セラミックス焼結体の製造方法。
【請求項6】
前記焼結温度から前記保持温度または前記第一保持温度までの降温速度を5℃/分〜10℃/分の範囲とすることを特徴とする請求項4または5に記載の窒化珪素質セラミックス焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度で、かつ、高温で高い熱衝撃性、耐熱応力負荷及び耐酸化性を有する窒化珪素質セラミックス焼結体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、窒化珪素質セラミックス焼結体は、破壊靭性では優れるものの、高温強度、耐熱衝撃性、耐熱疲労性や硬度が低かった。例えば、酸化イットリウムと酸化アルミニウムを添加した系では、耐熱衝撃性においては優れたものが得られているが、耐酸化性、高温での機械的強度に劣っている場合があった。そこで、高温下での特性改善を図る目的で、特開昭56−59674号公報に開示されている焼結体中にメリライト鉱物相(Y・Si化合物)を生成させた窒化珪素質セラミックス焼結体、及び、特開昭62−202864号公報に開示されている酸化ジルコニウム+酸化イットリウム+酸化珪素を添加し焼結体中に酸化ジルコニウムを析出させた窒化珪素質セラミックス焼結体が試みられており、高温強度の向上、等に一定の効果が認められることが知られている。
【0003】
また、特開昭62−246865号公報に開示されている希土類酸化物、酸化ジルコニウムを含む焼結体で粒界相にJ相(SiO・2Y)固溶体が存在する窒化珪素質セラミックス焼結体が試みられており、耐熱性、耐酸化性、静的疲労特性の向上に効果が認められることが知られている。
【0004】
さらに、特開平3−153574号公報では、より高温強度特性を向上させる目的で、サイアロン(Si6−z8−z、0<z<6)の焼結助剤としてHfOを添加し、粒界相としてYHfを生成させたα’−β’サイアロンを開示している。
【0005】
ところが、上記材料では、高温即時破断強度は優れるものの、高温強度を維持したまま靭性及び耐酸化性を飛躍的に改善するには至っていないため、より厳しい使用環境下、特に、温度変化の激しい熱衝撃負荷の大きい部材、部分ごとの温度勾配が大きな環境下で使用される部材、高温燃焼炎中において粒子等が高速で衝突する繰り返し高負荷の構造部材へ適用するに当たっては、耐熱衝撃性、耐熱応力負荷、及び、長期信頼性に欠ける等の問題点があり、実用化を阻害している。従って、高温強度の向上に加えて、耐熱衝撃性、耐熱応力負荷、及び、長期信頼性が全て向上した材料が要望されている。
【0006】
セラミックス焼結体は、硬質セラミックス粒子をその焼結体中に分散することにより、セラミックス母相の結晶粒の成長を抑制する、あるいは靭性が向上する、等により高強度化が図られることが知られている。母相結晶粒の粒成長抑制には分散する硬質粒子の粒子径が小さいほど、体積分率が大きいほど効果が大きいことが知られている。特にSiCを硬質分散粒子として窒化珪素質セラミックス焼結体に用いる場合、SiCの耐熱性、耐酸化性、化学的安定性、等から焼結過程においても安定して焼結体中に残留させることが容易であり、母相結晶粒成長抑制への効果が得られ易いと考えられている。
【0007】
ところが、セラミックス中へのSiC粒子の分散には、特開平3−205363号公報に見られるように、市販のSiC粒子をセラミックス粉末の混合粉砕時に同時に外部添加し、混合する方法が一般的であり、用いるSiC粒子もアチソン法、等により通常得られるものは0.3μm〜20μmと大きく、突起等やアスペクト比が2以上の球状ではないものである。気相合成法等により、0.2μm以下の微粒子を得ることも可能であるが、細かければ細かいほど秤量し難いこと、添加前に凝集又は凝結しており混合中の分散性が著しく欠けること、さらには単価が極めて高いこと等から実用には不適である。
【0008】
一方で、母相を形成するセラミックス粉末の混合時にSi、Cを含む前駆体ポリマー(有機金属高分子、又は、無機高分子)を用いて、焼結過程中に熱分解して微細なSiC粒を得る方法も知られているが、前駆体ポリマーが高価で、熱分解過程中に体積量として大きな揮発ガスを発生すること、等から、緻密な焼結体を得ることが困難であった。
【0009】
特開平7−291742号公報には、実質的にSiCからなるポット及び/または粉砕用ボールを用い、該ポット内にセラミックス粉末と該粉砕用ボールを充填し、回転もしくは振動を与えることにより該セラミックス粉末を粉砕混合させつつ該ポット内壁及び/または粉砕用ボール自身を摩滅させて該セラミックス粉末中に平均粒径0.1μm以下のSiC微粒子を0.3体積%以上混入し、得られる混合粉末を所望の形状に成形して不活性雰囲気中あるいは真空中にて焼成することからなるSiC微粒子分散セラミックス焼結体の製造方法、が開示されている。
【0010】
特開2004−59346号公報には、YSi相、ErSi相、YbSiの少なくとも1相を4.9〜12質量%、SiO相を0.1〜3質量%、平均粒径0.05μm以下の球状SiC微粒子を0.5〜15質量%、及び、β−Si及び不可避的不純物を残部とする組成である、高密度でかつ高温で高い熱衝撃性と耐酸化性を有す窒化珪素質セラミックス焼結体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭56−59674号公報
【特許文献2】特開昭62−202864号公報
【特許文献3】特開昭62−246865号公報
【特許文献4】特開平3−153574号公報
【特許文献5】特開平3−205363号公報
【特許文献6】特開平7−291742号公報
【特許文献7】特開2004−59346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献7に開示された窒化珪素質セラミックス焼結体は、高温まで高い強度を維持したまま、高い靭性を有し、抗折強さが大気中1400℃にて500MPa以上で、耐熱衝撃性ΔTが最大で1150℃を示す。しかしながら、窒化珪素質セラミックス焼結体の抗折強さ及び耐熱衝撃性は、更なる向上が望まれている。
【0013】
本発明の課題は、抗折強さ及び耐熱衝撃性により優れた窒化珪素質セラミックス焼結体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記問題点を解決するために、窒化珪素質セラミックス焼結体を構成する結晶相及び結晶粒の微細化に関する検討を鋭意行った結果、前記結晶相及び分散粒子から構成される場合に高温で優れた特性を有する窒化珪素質セラミックス焼結体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
即ち、本発明は、以下のように要約される。
(1) 主相のβ−Si相と、粒界相のYSi相と、SiO相と、個数密度1〜10個/μmかつ平均間隔0.3μm以上で分散されたSiC微粒子と、を有し、前記SiO相のうちの50〜80%のSiO相が前記主相と前記粒界相との界面に存在し、前記SiC微粒子の50%以上が平均粒径0.05μm以下かつアスペクト比1.2以下であり、Al、Fe、Na、Cl、及びCの総含有量が100ppm以下であることを特徴とする窒化珪素質セラミックス焼結体。
(2) 前記YSi相を4〜8質量%、前記SiO相を1〜3質量%、前記SiC微粒子を0.5〜3質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の窒化珪素質セラミックス焼結体。
(3) アルキメデス密度が3.10g/cm以上、気孔率が0.5%以下、且つ最大欠陥サイズが10μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化珪素質セラミックス焼結体。
(4) 請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化珪素質セラミックス焼結体の製造方法であって、α−SiCを主相とし、平均結晶径10μm以下の炭化珪素質セラミックスからなる混合用ポット及び混合用ボールを用意し、前記混合用ポットに、前記混合用ボールと、出発原料とを充填し、前記混合用ポットに回転、撹拌、又は振動の少なくともいずれかの運動を与えて、前記出発原料を分散、及び混合させると共に前記混合用ポットと混合用ボールを摩滅させて、前記出発原料中にSiC微粒子を混入させる原料混合工程と、前記原料混合工程で得られた混合粉末を、理論密度比の50体積%以上の成形体に成形する成形工程と、前記成形体を、窒素雰囲気中1810〜1840℃の焼結温度で焼結する焼結工程と、前記焼結工程後、窒素雰囲気中、1450℃以上1550℃の温度範囲の保持温度で24時間以上保持する降温過程熱処理工程と、を有し、前記出発原料は、平均粒径5μm以下のY粉末、平均粒径2μm以下のSiO粉末及び平均粒径0.5μm以下のα−Si粉末とを含み、これら粉末の合計量に対する割合として前記Y粉末が3〜10質量%、前記SiO粉末が1〜5質量%となるように、前記混合用ポットに充填することを特徴とする窒化珪素質セラミックス焼結体の製造方法。
(5) 前記降温過程熱処理工程は、前記焼結工程後、窒素雰囲気中、1350℃以上1450℃未満の温度範囲の第一保持温度まで降温し、該第一保持温度で2時間以上保持後、前記保持温度まで再加熱し、該保持温度で24時間以上保持することを特徴とする請求項4に記載の窒化珪素質セラミックス焼結体の製造方法。
(6) 前記焼結温度から前記保持温度または前記第一保持温度までの降温速度を5℃/分〜10℃/分の範囲とすることを特徴とする請求項4または5に記載の窒化珪素質セラミックス焼結体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の窒化珪素質セラミックス焼結体は、熱的安定性、機械的安定性に優れ、長期耐久性を有する。特に、本発明では、1500℃において500MPa以上の抗折強さを有し、ΔT=1200℃以上の耐熱衝撃性を有する窒化珪素質セラミックス焼結体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明者等は、高温での耐熱衝撃性、耐熱応力負荷、耐酸化性に優れるセラミックス材料を開発するため、窒化珪素質セラミックス焼結体を構成する結晶相及び結晶粒の微細化、分散粒子の材質、形状に関する検討を鋭意行った。本発明の窒化珪素質セラミックス焼結体は、アルミナやジルコニア等を主成分とする酸化物セラミックス焼結体と異なり、ΔT=1200℃以上の耐熱衝撃性に優れると共に、高温下における機械的強度も保持できる特徴を有する。
【0019】
より詳しくは、本発明者等は、各種結晶相より構成される窒化珪素質焼結体を作製し、その特性を評価した。特性評価の結果、以下の1)〜4)の各特徴を備えた、緻密な窒化珪素セラミックス焼結体が優れた特性を有することを見出した。
【0020】
1)主相としてβ−Si相、粒界相としてYSi相を有し、これら2つの相の界面に存在するSiO相が、全SiO相に対して50〜80%存在する。
2)SiC微粒子が、個数密度1〜10個/μmかつ平均間隔0.3μm以上で焼結体中に分散している。
3)焼結体に含まれる全SiC微粒子のうち、50%以上のSiC微粒子が平均粒径0.05μm以下でアスペクト比1.2以下である。
4)焼結体に含まれるAl、Fe、Na、Cl、Cの総含有量が100ppm以下である。
【0021】
本発明の窒化珪素セラミックス焼結体は、室温から高温(〜1500℃)までの強度低下が少なく、耐熱衝撃性、耐酸化性に優れ、また、部分ごとの温度勾配等に起因する静的熱応力疲労負荷が高く、更に、高温部分の急冷負荷に伴う熱応力破壊抵抗特性が高いという特徴を有する。
なお、従来の低融点ガラス相を有する窒化珪素焼結体は、高温下における耐酸化性及び耐熱衝撃性が劣っている。
【0022】
β−Si相とYSi相の2相の界面に面積率で50〜80%存在するSiO結晶相は、粉末X線回折法により同定されるSiO結晶と同じ型のX線回折パターンを持ち、SiとSiOとからなる化合物の中で高温酸化雰囲気中にて最も安定な化合物である。同様に、YSi結晶相は、粉末X線回折法により同定されるX線回折パターンを持ち、YとSiOからなる化合物の中で、高温酸化雰囲気中にて最も耐酸化性に優れる安定な化合物である。
【0023】
焼結体に含まれるSiO結晶相のうち、β−Si相とYSi相の2つの相の界面に存在するSiO結晶相が全体の50%未満である場合は、主相と粒界相の密着性が低下し、これにより破壊靭性値が低下するため好ましくない。また、β−Si相とYSi相の2つの相の界面に存在するSiO結晶相が全体の80%を超える場合は、主相と粒界相の高温すべりから高温強度が低下するため好ましくない。
【0024】
なお、焼結体に含まれるSiO結晶相のうち、上記の2つの相の界面に存在しない残部は、粒界相を構成するYSi相中に含まれる。
【0025】
ここで、TEM観察において、電子線回折パターンから各相を同定し、コントラストによりSiO結晶相全体の面積に対するβ−Si相とYSi相の2相の界面に存在するSiO結晶相の割合を求めることができる。
【0026】
また、主相としてのβ−Si結晶相は、JCPDSカード33−1160で示されるβ−Si結晶と同じ型のX線回折パターンを示すものである。
【0027】
次に、本発明の窒化珪素質セラミックス焼結体には、α−SiC微粒子が分散されている。SiC微粒子は、個数密度で1〜10個/μmの分布状態で存在し、かつ各微粒子間の平均間隔が0.3μm以上となっている。また、SiC微粒子のうちの50%以上が、平均粒径0.05μm以下であり、アスペクト比1.2以下となっている。このようなSiC微粒子が焼結体内に分散されていることによって、母相であるβ−Siの結晶粒成長が抑制される。その結果、母相であるβ−Siは、一線切断法で求めたβ−Siの平均結晶粒径が0.5〜2.0μmとなり、また、平均アスペクト比が3以下と細かくなり、かつ、β−Siの柱状結晶粒が幾重にも重なり合った組織を呈する。アスペクト比が1.2を超えるSiC微粒子が全SiC微粒子の50%以上の場合、全方向への粒子分散によるβ−Si粒成長抑制効果が均一にならず、好ましくない。
【0028】
1μmの範囲内でSiC微粒子の分布個数が10個を超える場合は、β−Siの結晶粒の成長が抑えられ過ぎるため好ましくなく、また1個未満では粒成長の抑制効果が見られない。また、SiC微粒子の平均距離が0.3μm以下でもβ−Siの結晶粒の成長が抑えられ過ぎるため好ましくない。
【0029】
ここで、SiC微粒子の観察は、本発明の焼結体を30μm以下に切断、研磨後、アルゴンイオンシニング処理によって薄片の端部の厚さ1μm以下となった傾斜部分を、TEMで5万倍まで拡大し、10ヶ所の視野数で観察すればよい。
【0030】
また、本発明の窒化珪素質セラミックス焼結体においては、YSi相が4〜8質量%、SiO相が1〜3質量%、SiC微粒子が0.5〜3質量%の割合で含むことが好ましい。
【0031】
焼結体全体に含まれるYSi相が質量比で4%以上であれば、Siのα→β転移時の液相が充分になり、相転移を円滑に進行し、焼結体中の気孔率が高くなりやすくなる。また、YSi相の質量比が8%以下であれば、β−Si結晶粒が十分に絡み合い、強度や靭性がより向上する。
【0032】
また、焼結体全体に含まれるSiO相の質量比が1%以上であれば、焼結体中の気孔率がより小さくなり、機械的強度に寄与する効果が高くなる。質量比が3%以下であればβ−Si結晶粒が十分に絡み合い、強度や靭性がより向上する。
【0033】
更に、焼結体全体に含まれるSiC微粒子が0.5質量%以上であれば、母相結晶粒の成長抑制効果が著しく強度特性改善に効果が大きくなるので好ましい。また、3質量%以下であれば、母相の柱状成長並びに結晶相の交差による高靭化が阻害されないので好ましい。
【0034】
また、本発明の窒化珪素質セラミックス焼結体においては、Al、Fe、Na、Cl、Cの総含有率が100ppm以下である。これらの元素は混入が不可避な元素であり、高温強度の低下が著しいのはAl、NaとClであり、耐酸化性の低下が著しいのはAl、Fe、Cである。これらの元素は、焼結助剤として添加しているイットリウムや珪素の酸化物と低融点の固溶体を形成し易い。特に、AlはYと低融点のガラス相を形成し易く、高温強度や耐熱衝撃性が低下する。従ってAl量は10ppm以下であることが望ましい。
【0035】
本発明では、これら元素の含有率を低く抑え、かつ、YとSiOの分散、配合、熱処理の各条件を絞り込むことによって、高融点かつ耐酸化性に優れるYSiとSiOの結晶相構造とすることができる。このため、高温まで高い強度を維持したまま、抗折強さが大気中1500℃にて500MPa以上の高強度で、かつ、ΔT=1,000℃の急冷負荷後の室温強度の低下がほとんどない高い耐熱衝撃性を有する。
【0036】
これらの観察評価法は、透過型電子顕微鏡(TEM)やEPMAのピーク高さの検量線を用い、不純物成分や結晶相を同定し、SiC微粒子のサイズやアスペクト比の測定、個数密度や平均間隔などの分布状態を観察することで評価すればよい。
【0037】
さらに、本発明の緻密な窒化珪素質セラミックス焼結体のアルキメデス密度は、3.10g/cm以上、気孔率が0.5%以下、最大欠陥サイズが10μm以下であることが望ましい。アルキメデス密度が3.10g/cm未満では、熱的安定性、機械的安定性が不充分になり易く、長期耐久性の向上効果が見られない。また、気孔率が0.5%未満であっても同様である。更に、最大欠陥サイズが10μmを超える場合、高温強度や耐熱衝撃性が低下するので好ましくない。
【0038】
以下、本発明の窒化珪素質セラミックス焼結体の製造方法について述べる。
(原料混合工程)
本発明において使用される窒化珪素原料粉末は、α型の結晶構造をもつSi粉末が焼結性の点から好適であるが、一部にβ型あるいは非晶質Si粉末が含まれていても構わない。焼結時に十分に高い密度とするためには、平均粒径0.5μm以下の微粒子であることが望ましい。窒化珪素原料粉末は、例えば、不純物としてAl、Fe、Na、Clが全て10ppm以下である高純度グレードの粉末を用いる。
【0039】
窒化珪素は共有結合性の強い物質であり、単独では焼結が困難であることが多いため、緻密化するために酸化物や窒化物の焼結助剤を添加する。
【0040】
本発明においては、焼結助剤として酸化珪素粉末と酸化イットリウム粉末を用いる。酸化珪素と酸化イットリウムは、Siの焼結時にα−Si相からβ−Si相への結晶相転移をその融液中で進行させる機能を持ち、さらにβ−Siの柱状相の成長を促すことにより、高温強度及び耐酸化性を向上させる。原料粉末におけるそれぞれの添加量は、酸化珪素1〜5質量%、酸化イットリウムは3〜10質量%が好ましい。本発明においては、酸化珪素と酸化イットリウムもAl、Fe、Na、Clの不純物含有量が極力少ない高純度品を用いることが好ましい。
【0041】
酸化珪素が1質量%未満の場合、焼結昇温時の液相生成温度が高くなり、十分緻密な焼結体が得られないが、原料として用いる窒化珪素粉末の表面層に数%の酸化物層又は酸窒化物層が存在する場合は、酸化珪素が1質量%未満でも目的の焼結体が得られる場合がある。しかし、通常の酸化層を有する窒化珪素粉末ならば、酸化珪素が1質量%未満の場合は、YSi相及びSiO相が形成されない。酸化珪素が5質量%を越えると、YSi相及びSiO相が形成されず、比較的低融点のSiO相が形成され、高温での機械的強度が低下するため好ましくない。
【0042】
酸化イットリウムの添加量が3質量%より少ないと、融液形成が不十分で、アルキメデス密度が3.10g/cm未満となり、緻密化が進行しない。酸化イットリウムの添加量が10質量%を超えると、YSi相が形成されず、比較的低融点のYSiO相が形成され、得られた焼結体の高温での機械的強度及び耐酸化性が低下する。
【0043】
酸化珪素は、均質かつ高密度の焼結体を得るためには、平均粒径が2μm以下の微粒子であることが好ましい。また、酸化イットリウムも同様な理由から、平均粒径5μm以下の微粒子がよい。焼結助剤として用いるこれら原料粉末は、比較的安価であり、水中での混合工程でも変質せず安定なセラミックス粉末である。
【0044】
また、酸化イットリウム及び酸化珪素に替えて、これらに酸化物換算によって添加量が求められる、酸窒化物(SiO)、及び、酸化珪素と酸化イットリウムの複合酸化物(YSiO、YSi等)でも構わない。
また、SiOや酸化珪素と酸化イットリウムの複合酸化物を添加する場合、各々の添加量は、酸化珪素及び酸化イットリウムとしての換算量が前記の範囲となるように決定される。具体的には、SiOで1〜5%、Yで3〜10%が基本の配合組成だが、酸窒化物(SiO)中のSiO量は、SiOの分子量が90でSiOだけでは72となるのでSiOでは1×72/90=0.8、5×72/90=4.0の範囲、0.8〜4.0%となる。同じように、複合酸化物(Y・SiO)では、Y・SiOの分子量が286、Yが226のため、Y・SiOでは、(3×226/286)〜(10×226/286)%、即ち、2.37〜7.90%添加すればよい。
【0045】
次に、平均粒径0.05μm以下、アスペクト比1.2以下の割合が全SiC微粒子の50%以上となるようなSiC微粒子の生成・分散方法としては、回転式ポットミル(=トロンメル)、遊星型ボールミル、振動ボールミル、アトリッションミル、自転・公転混在型ポットミル、等の方法を用いることができる。例えば、回転運動を与える場合は、回転式ポットミル、遊星型ボールミルを用いることが好ましい。撹拌運動を与える場合は、アトリッションミルを用いることが好ましい。振動運動を与える場合は、振動ボールミルを用いることが好ましい。また、回転運動及び撹拌運動を同時に与える場合は、自転・公転混合型ポットミルを用いることが好ましい。
【0046】
本発明においては、実質的に炭化珪素質セラミックスであり、その主相であるα−SiCの平均結晶径が10μm以下であり、Al、Fe、Na、Clがそれぞれ100ppm以下であるSiC−B、C系セラミックス焼結体の本体及び蓋からなるポットを用いる。
【0047】
大量製造用のポットミルでは、ライナーとして上記特性を有すSiC−B,C系セラミックス焼結体からなるタイルを貼り付けたものを用いる。混入する平均粒径0.05μm以下、アスペクト比2以下のSiC微粒子の結晶相は、α−SiC型(=3C)、β−SiC型(=2H、4H、6H、等)のいずれでも構わないが、1810〜1840℃の温度範囲で焼結するため、焼結後には基本的に6H相で同定されることが多い。
【0048】
また、平均粒径0.05μm以下、アスペクト比1.2以下のSiC微粒子の摩耗混入質量は、混合方法、ボール径、回転数、混合時間、他の原料粉末の粒径、分散媒との固液比、等によって若干の違いは認められるが、おおよそポット内壁摩耗:ボール摩滅=1:10〜20(質量比)で、ボール摩滅が圧倒的に多い。
【0049】
したがって、混入量を変化させたい場合はボール添加量の増減や混合時間の長短に加え、ボール表面積の増減、即ちボール径の大小を概ねφ0.5mm〜φ20mmの範囲で制御することが効果的である。混入量としては、0.5質量%未満では母相結晶粒の成長抑制効果が乏しく、3質量%を超すと母相であるβ−Siの柱状成長並びに結晶相の交錯による高靭化機能を阻害するため、好ましくない。
【0050】
(成形工程)
焼結前の成形体の成形密度としては1.6g/cm以上、即ち理論密度比の50体積%以上であることが好ましい。焼結前の成形体の成形密度が理論密度比50体積%未満では、焼成時の線方向収縮が大きく、割れが出易く、10μm以上の大きな欠陥を形成する確率が高まるため好ましくない。
【0051】
(焼結工程)
焼結方法としては、窒素ガスを含む雰囲気にて、例えば無加圧焼結法、ガス圧焼結法、熱間静水圧プレス焼結法、ホットプレス焼結法、等の各種焼結法を用いることができ、これらを組み合わせることも可能だが、最も好ましいのはガス圧焼結法である。窒素ガスを含む雰囲気で焼結するのは、焼結中に再析出するβ−Si結晶相の揮発分解を抑制することが可能になるためである。
【0052】
β−Siは、窒素ガス1気圧下では約1800℃以上で分解が生じるため、1810℃以上にて焼結を行う場合は、窒素ガス圧を焼結温度におけるβ−Siの臨界分解圧力以上に設定するようにする。
また、大型厚肉形状の成形体を製造する場合には、十分な緻密化を図るために、0.数〜数MPaまでのガス圧焼結後に、数十から数百MPaの高圧の窒素ガス雰囲気中での熱間静水圧プレス焼結を行うことが好ましい。ガス圧及び熱間静水圧プレス焼結条件としては、焼結温度が1810〜1840℃であることが望ましい。
【0053】
焼結温度が1810℃未満では、緻密な焼結体が得られず、YSi相やβ−Si相とYSi相の2相の界面に50〜80%存在するSiO相の粒子近傍に残留応力を十分に発生させることが困難となり、高靭性の焼結体とすることができない。一方、焼結温度が1840℃を越える高温では、β−Si結晶粒が粗大化したり、YSi相やβ−Si相とYSi相の2相の界面に50〜80%存在するSiO相の分解等により強度低下を起こし、耐熱衝撃性と耐酸化性が得られない。また、最高温度での保持時間が8時間未満では、成形体の肉厚に依存するが、緻密化が十分に進行しない。
【0054】
(熱処理工程)
粒界相として、YSi相及びβ−Si相とYSi相の2相の界面に50〜80%存在するSiO相を結晶化させるためには、焼結後に、窒素雰囲気中、1450℃以上1550℃以下の温度範囲の保持温度で24時間以上保持する降温過程熱処理工程を実施することが好ましい。
【0055】
また、降温過程熱処理工程では、焼結工程後、窒素雰囲気中、1350℃以上1450℃未満の温度範囲の第一保持温度まで降温し、該第一保持温度で2時間以上保持してから、1450℃以上1550℃以下の保持温度まで再加熱し、この保持温度で24時間以上保持してもよい。第一保持温度及び保持温度並びに保持時間が上記の範囲であれば、YSi相及びβ−Si相とYSi相の2相の界面に50〜80%存在するSiO相が十分に生成する。
【0056】
また、各々の保持時間が2時間以上、24時間以上であれば、実部材としての必要厚さを有する部材では、均一に、YSi相及びβ−Si相とYSi相の2相の界面に50〜80%存在するSiO相が生成する。
【0057】
更に、降温過程熱処理工程では、焼結温度から1450℃以上1550℃以下の保持温度または焼結温度から1350℃以上1450℃未満の第一保持温度までの降温速度を、5℃/分〜10℃/分の範囲とすることが好ましい。
【0058】
降温過程で、YSi相及びβ−Si相とYSi相の2相の界面に50〜80%存在するSiO相を析出させる場合、降温速度を10℃/分以下にすることが好ましくより望ましくは5℃/分〜7℃/分である。降温速度が5℃/分以上にすると、炉命や生産効率がより向上する。また、降温速度が10℃/分以下であれば、YSi相及びβ−Si相とYSi相の2相の界面に50〜80%存在するSiO相を十分に生成できる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の窒化珪素質セラミックス焼結体及びその製造方法によれば、熱的安定性、機械的安定性に優れ、長期耐久性を有する窒化珪素質セラミックス焼結体を得ることができる。特に、本実施形態の窒化珪素質セラミックス焼結体は、1500℃において500MPa以上の抗折強さを有し、ΔT=1200℃以上の耐熱衝撃性を有するものとなる。
【実施例】
【0060】
(実施例1〜5)
窒化珪素(Si)粉末(α化率97%以上、純度99.7%、不純物としてAl、Fe、Na、Clが全て10ppm以下、平均粒径0.3μm)に酸化イットリウム(Y)粉末(不純物としてAl、Fe、Na、Clが全て10ppm以下、平均粒径2.0μm)、酸化珪素(SiO)粉末(不純物としてAl、Fe、Na、Clが全て10ppm以下、平均粒径0.5μm)を、第1表に示す所定量(質量%)になるように混合して出発原料とした。
【0061】
出発原料を内壁がSiC製であるボールミルに投入し、分散媒を加え、更にSiC製の混合用ボールを入れて、24時間混練した。混合ボールは、出発原料100gに対し2.5倍の250gの割合で用いた。分散媒の添加量は、出発原料100gに対し1.5倍の150gとした。
【0062】
分散媒としては、精製水またはアセトンを用いた。精製水は、不純物としてAl、Fe、Na、Clが全て10ppm以下のものを用いた。アセトンは、不純物としてAl、Fe、Na、Clが全て10ppm以下のものを用いた。混合用ボールとしてφ5mmのSiC製ボールを用いた。混合ボールの構成材料であるSiCは、α−SiCの平均結晶径10μm以下、SiC−B、C系、不純物としてAl、Fe、Na、Clが全て10ppm以下のものを用いた。ボールミルの内壁の構成材料であるSiCは、α−SiCの平均結晶径10μm以下、SiC−B、C系、不純物としてAl、Fe、Na、Clが全て10ppm以下のものを用いた。
【0063】
次いで、得られた混合粉末を成形後、焼結した。成形条件としては冷間静水圧による加圧140MPaとし、50mm×50mm×厚さ12mmの平板に成形した。
【0064】
焼結条件としては、窒素ガスで0.5MPaに加圧した雰囲気中にて、第1表中に示す焼結温度で8時間保持のガス圧焼結を行った。実施例1、3及び4においては、第1表に記載の降温速度で第一保持温度まで降温し、第一保持温度において2〜4時間保持した後、1500℃まで再加熱し24〜48時間保持を行った。実施例2及び5においては、第1表に記載の降温速度で直接、1500℃まで降温し、1500℃で24〜48時間保持を行った。
【0065】
得られた焼結体からJIS R1601準拠の曲げ試験片を切り出し、機械的特性を評価した。抗折強さは、大気中の室温及び1500℃にて測定した。硬さは、押込荷重98Nにてビッカース硬さとして測定した。靭性については、JIS R1607準拠のSEPB法により、室温にて破壊靭性値KICを測定した。
【0066】
また、耐熱衝撃性としては、前記の曲げ試験片を大気中にて所定の温度まで加熱保持後、水中投下により急冷し、抗折強さの劣化が始まる温度差ΔTで評価した。焼結体密度は、アルキメデス法により測定した。
【0067】
各種結晶相の比率に関して、予めX線回折ピーク高さから求めた検量線に従って求め、第1表に示した。得られた各焼結体の諸特性を第2表に示す。
【0068】
(比較例6〜10)
比較例6及び7では、ポットの内壁、蓋やボールにSiC材ではなく、不純物としてAl、Fe、Na、Clが全て100ppm以上のSi材を用いて原料混合した。その結果、本発明の結晶相構造が得られなかった。また、比較例6では、異常粒成長によりアルキメデス密度が3.10g/cmを下回った。
【0069】
比較例8及び9は、精製水(不純物としてAl、Fe、Na、Clが全て10ppm以下)を用い、混合用ボールはφ5mmのSiC(SiC−B、C系、不純物としてAl、Fe、Na、Clが全て10ppm以下、α−SiCの平均結晶粒径が10μm)製ボールを用いた。しかしながら、出発原料として、Al、Fe、Na、Clが全て10ppm以上、合計で約200ppmである原料を使用した結果、β−Si相とYSi相の2相の界面にSiO相が40%、90%存在することになった。
【0070】
比較例10は、α−SiCの平均結晶径が15μmで、不純物としてAl、Fe、Na、Clが全て10ppm以下であるSiCボール、ポットの内壁、蓋の素材を用いて原料混合した。
【0071】
これらを併せて第1表に示す。また、これら比較例の材料も、実施例1〜5と同様の条件で特性を評価し、その結果を第2表に示した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
第2表に示すように、本発明の実施例によるものは、室温及び高温の強度も高く、ΔT=1000℃を超える耐熱衝撃性、耐酸化性が極めて優れ、破壊靭性も5MPa・m1/2以上あることが確認された。
【0075】
また、実施例1〜5では、下記1)〜3)を確認した。
1)β−Si相の粒界相にYSi2Oが存在し、前記2相の界面にSiO相が50〜80%存在すること。
2)SiC微粒子の平均粒径が0.05μm以下で、アスペクト比が1.2以下の割合が50%以上であること。
3)SiC微粒子の個数密度が1〜10個/μm、平均間隔0.3μm以上の分布状態で分散配合していること。