【実施例】
【0023】
(実施例1)
上記多芯ケーブルの実施例について、図を用いて説明する。
図1に示すように、多芯ケーブル1は、その軸Cの周りに配置された複数の芯線2(2a、2b)と、複数の芯線2を被覆するシース3とを有している。各芯線2は、扇形状または三角形状の断面形状を有する導体部21と、該導体部21を被覆する絶縁皮膜22とを有している。また、各芯線2は、その外表面に、導体部21の断面形状に対応して形成された平坦面23を有している。そして、各芯線2の平坦面23は、隣接する芯線2の平坦面23と対面している。
【0024】
本例の多芯ケーブル1の外径は12mmであり、シース3内に4本の芯線2を有している。シース3は、耐摩耗性及び柔軟性に優れたウレタン樹脂より構成されている。
【0025】
各芯線2は、
図1に示すように中心角θが90度である扇形状の断面形状を有している。また、各芯線2は、多芯ケーブル1の断面において、中心角θが多芯ケーブル1の軸C側を向くようにして配置され、隣り合う芯線2の平坦面23同士が対面している。これにより、4本の芯線2の集合体20は円形の断面形状を有している。
【0026】
4本の芯線2(2a、2b)のうち互いに隣接する2本の芯線2aは、互いに撚り合わされた複数の素線束211から構成された導体部21を有しており、各素線束211は、互いに撚り合わされた多数の導体素線から構成されている。本例においては、2本の芯線2aの導体部21aは、8本の素線束211から構成されており(
図1参照)、2.5mm
2の導体断面積を有している。図には示さないが、各素線束211は、直径0.08mmの銅線を72本束ね、互いに撚り合わせることにより形成されている。
【0027】
4本の芯線2のうち残り2本の芯線2bは、
図1に示すように、複数の素線束211から構成された導体部21bを有していると共に、絶縁皮膜22の内側に配置された細径芯線4を有している。導体部21bは、7本の素線束211から構成されており、2.5mm
2の導体断面積を有している。
【0028】
細径芯線4は、導体部21bを構成する7本の素線束211bと互いに撚り合わされている。本例の細径芯線4は、0.25mm
2の導体断面積を有する撚線導体41と、撚線導体41を被覆する絶縁皮膜42とを有している。図には示さないが、撚線導体41は、直径0.08mmの銅線を48本撚り合わせることにより構成されている。また、細径芯線4の絶縁皮膜42はポリエチレン樹脂より構成されている。
【0029】
各芯線2の絶縁皮膜22は、ポリエチレン樹脂より構成されている。
【0030】
本例の多芯ケーブル1は、
図1に示すように、芯線2の集合体20が円形の断面形状を有している。これに対し、従来の多芯ケーブル5は、互いに撚り合わされた複数の芯線51と、芯線51を被覆するシース52とを有している。例えば
図2に示す多芯ケーブル5は、導体断面積が2.5mm
2である4本の芯線51aと、導体断面積が0.25mm
2である2本の細径芯線51bとを有している。
【0031】
図2に示す従来の多芯ケーブル5は、本例の多芯ケーブル1と導体の数及び導体断面積が同一である。しかし、従来の多芯ケーブル5は、芯線51の集合体50に窪み501や隙間502が存在しているため、本例の多芯ケーブル1に比べて外径が太くなる。また、従来の多芯ケーブル5は、
図2に示すように、芯線51の集合体50に窪み501や隙間502が不可避的に形成されるため、外径を細くすることには限界がある。
【0032】
一方、本例の多芯ケーブル1は、芯線2の集合体20が円形の断面形状を有しているため、従来の多芯ケーブル5に比べて窪みや隙間を容易に小さくすることができる。それ故、本例の多芯ケーブル1は、外径を容易に細くすることができる。
【0033】
また、
図1と
図2との比較から知られるように、本例の多芯ケーブル1は、従来の多芯ケーブル5に比べてシース3に用いる樹脂の量を容易に低減することができる。
【0034】
本例の多芯ケーブル1は、車体に設けられた電子制御ユニットと、車輪に設けられた電子部品とを接続するために用いることができる。具体的には、例えば、内部に細径芯線4を有しない芯線2aを、電子制御ユニットと電動フットブレーキ装置とを接続するために用いることができる。また、内部に細径芯線4を有する芯線2bを、電子制御ユニットと電動パーキングブレーキ装置とを接続するために用いることができる。そして、細径芯線4を、電子制御ユニットとABSセンサとを接続するために用いることができる。
【0035】
なお、細径芯線4は、ABSセンサ以外にも、電子制御式サスペンションとの接続、あるいはブレーキパッド厚の監視のために用いることができる。また、本例においては、2本の細径芯線4を有する多芯ケーブル1の例を示したが、細径芯線4の本数を更に増やすことも可能である。
【0036】
細径芯線4の配置は、本例に示した位置に限定されることはない。例えば、多芯ケーブル1が4本の細径芯線4を有する場合には、2本の芯線2の内部に細径芯線4を2本ずつ配置してもよいし、4本の芯線2のそれぞれに細径芯線4を1本ずつ配置してもよい。
【0037】
(
参考例1)
本例は、シース3内に2本の芯線2(2c、2d)を有する多芯ケーブル102の例である。
図3に示すように、本例の芯線2c、2dは、半円状、即ち中心角θが180度である扇形状の断面形状を有している。また、各芯線2c、2dは、多芯ケーブル102の断面において、中心角θが多芯ケーブル102の軸C側を向くようにして配置されており、一方の芯線2cの平坦面23と他方の芯線2dの平坦面23とが対面している。
【0038】
その他は実施例1と同様である。なお、
図3において示した符号のうち、
図1及び
図2において用いられた符号と同一のものは、特に説明の無い限り実施例1と同様の構成要素等を示す。
【0039】
本例の多芯ケーブル102は、実施例1と同様に、芯線2の集合体20が円形の断面形状を有しているため、外径を容易に細くすることができると共に、シース3に用いる樹脂の量を容易に低減することができる。
【0040】
(
参考例2)
本例は、三角形状の断面形状を有する芯線6を備えた多芯ケーブル103の例である。
図4に示すように、本例の多芯ケーブル103は、その軸Cの周りに配置された4本の芯線6と、4本の芯線6を被覆するシース3とを有している。各芯線6は、直角二等辺三角形の断面形状を有する導体部61と、導体部61を被覆する絶縁皮膜62とを有している。また、各芯線6は、その外表面に、導体部61の断面形状に対応して形成された平坦面63を有している。
【0041】
本例の芯線6は、多芯ケーブル103の断面において、直角が多芯ケーブル103の軸C側を向くように配置されており、隣り合う芯線6の平坦面63同士が対面している。これにより、4本の芯線6の集合体60は正方形の断面形状を有している。
【0042】
その他は実施例1と同様である。なお、
図4において示した符号のうち、
図1及び
図2において用いられた符号と同一のものは、特に説明の無い限り実施例1と同様の構成要素等を示す。
【0043】
本例の多芯ケーブル103は、芯線6の集合体60が正方形の断面形状を有しているため、従来の多芯ケーブル5(
図2参照)に比べて窪み501や隙間502を容易に小さくすることができる。それ故、本例の多芯ケーブル103は、実施例1と同様に、外径を容易に細くすることができると共に、シース3に用いる樹脂の量を容易に低減することができる。
【0044】
なお、
参考例1及び
参考例2には、芯線2cや芯線6の内部に細径芯線4を有しない多芯ケーブル102、103の例を示したが、芯線2c等の内部に細径芯線4を配置することも可能である。