(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354676
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】自動車用ガラスランの防水構造
(51)【国際特許分類】
B60J 10/76 20160101AFI20180702BHJP
【FI】
B60J10/76
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-127633(P2015-127633)
(22)【出願日】2015年6月25日
(65)【公開番号】特開2017-7597(P2017-7597A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】菊地 弘一
【審査官】
青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−067118(JP,A)
【文献】
特開2009−001143(JP,A)
【文献】
特開2010−036688(JP,A)
【文献】
特開2009−073440(JP,A)
【文献】
特開2011−073497(JP,A)
【文献】
特開2009−083544(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第2926255(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ドアのドアフレームの内周に取付け、ドアガラスの昇降を案内する自動車用ガラスランの防水構造において、
上記ガラスランは、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略コ字形の本体を有し、上記車外側側壁と車内側側壁には、先端からそれぞれ上記ガラスランの断面略コ字状の本体の内側に向かって延出する車外側シールリップと車内側シールリップを設け、該車外側シールリップと車内側シールリップにより上記ドアガラスの車外側面及び車内側面をシールし、
上記車外側側壁と車内側側壁の先端からそれぞれ上記ガラスランの断面略コ字状の本体の外側に向かって延出する車外側意匠リップと車内側意匠リップを設け、
上記車外側意匠リップの車外側面を上記ドアフレームに取付けられる車外側意匠部材の先端で覆い、該車外側意匠部材の内面に当接リブを延設し、
上記車外側意匠リップが上記車外側側壁の先端との連結部分である根元部を中心に回動したときに、上記車外側意匠リップの先端部は、上記車外側意匠部材の上記当接リブと当接するように形成されたことを特徴とする自動車用ガラスランの防水構造。
【請求項2】
上記車外側意匠リップは、上記根元部から上記先端部に向かって徐々に肉厚が減少して形成された請求項1に記載の自動車用ガラスランの防水構造。
【請求項3】
上記車外側意匠リップは、上記根元部と上記先端部の間で、上記先端部が上記車外側側壁から離れる方向に屈曲した屈曲部が形成された請求項1又は請求項2に記載の自動車用ガラスランの防水構造。
【請求項4】
上記車外側意匠リップの上記先端部は、上記車外側意匠部材の先端の内面に当接するように取付けられた請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車用ガラスランの防水構造。
【請求項5】
上記ガラスランは、上記ドアフレームに取付けられたドアチャンネルに取付けられて、該ドアチャンネルの内面に上記車外側側壁、上記車内側側壁及び上記底壁が当接し、上記ドアチャンネルの先端を上記車外側意匠リップと上記車内側意匠リップで覆う請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車用ガラスランの防水構造。
【請求項6】
上記ガラスランは、上記自動車ドアの縦辺部に取付けられた請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の自動車用ガラスランの防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ドアのドアフレームの内周に取付け、ドアガラスの昇降を案内するガラスランの防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、自動車のドア1のドアフレーム2の内周にドアガラス5の昇降を案内するガラスラン110が取付けられている。
従来、ガラスラン110は、
図3に示すように、ドアフレーム2のチャンネル内に取付けられて、ドアガラス5の昇降を案内するとともにドアガラス5とドアフレーム2との間をシールしている。
【0003】
さらに、ガラスラン110は、
図2に示すように、押出成形により成形された直線部111と、この直線部111を接続し型成形により成形されたガラスランコーナー部112とからなり、直線部111はガラスラン上辺部113とガラスランフロント側縦辺部114とガラスランリヤ側縦辺部115を形成している。
【0004】
ガラスラン上辺部113はドアフレーム上辺部2fに取付けられ、ガラスランフロント側縦辺部114はドアフレームフロント側縦辺部2gに取付けられ、ガラスランリヤ側縦辺部115はドアフレームリヤ側縦辺部2hに取付けられている。ガラスラン上辺部113とガラスランフロント側縦辺部114及びガラスランリヤ側縦辺部115は型成形によってドアフレームコーナー部2eの形状に合わせて形成されたガラスランコーナー部112で接続している。
【0005】
なお、ドア1と車体との間のシールは、ドアパネルおよびドアフレーム2の外周に取付けられたドアウエザストリップ(図示せず)および/または車体の開口部のフランジに取付けられたオープニングトリムウエザストリップ(図示せず)によりなされている。
【0006】
ガラスラン110の本体の直線部111は、
図4に示すように、車外側側壁120と、車内側側壁130と、底壁140からなる断面略コ字状をなしている。車外側側壁120の先端付近から車外側シールリップ121が本体の断面略コ字状の内側に向けて延出するように設けられている。また、車内側側壁130にもその先端付近から車内側シールリップ131が断面略コ字状の内側に向けて延出するように設けられている。
【0007】
さらに、車外側側壁120の先端付近から車外側側壁120の外面に並行に車外側意匠リップ122が形成され、車内側側壁130の先端付近から車内側側壁130の外面に並行に車内側意匠リップ132が形成されている。車外側意匠リップ122は、ドアアウターパネル2aの先端をカバーして、車内側意匠リップ132は、ドアインナーパネル2bの先端をカバーしている。
【0008】
ガラスラン110の本体の車外側側壁120、車内側側壁130と底壁140はドアフレーム2のドアアウターパネル2a、ドアインナーパネル2bおよびドア補強パネル2cの間にはめ込まれる(例えば、特許文献1参照。)。
このとき、ドアアウターパネル2aのフランジ部分は、車外側側壁120と車外側意匠リップ122の間に挿入され、ドアインナーパネル2bのフランジ部分は、車内側側壁130と車内側意匠リップ132の間に挿入される。底壁140はドアチャンネル(図示せず)又は、ドア補強パネル2cの平面部分で保持される。
【0009】
ドアフレームコーナー部2eにおいては、ガラスラン上辺部113のフロント側とリヤ側にそれぞれ、ガラスランフロント側縦辺部114及びガラスランリヤ側縦辺部115がガラスランコーナー部112で接続している。ガラスランコーナー部112は、型成形で形成されて、型成形時の熱によりガラスランコーナー部112と直線部111と接続することができる。
【0010】
図5に示すように、ドアフレームリヤ側縦辺部2hにおいて、ガラスラン210の車外側側壁220は、ドアアウターパネル2aに保持されて、車外側意匠リップ222はガーニッシュ250の先端部251で覆われている。車外側意匠リップ222の先端部222aは、ガーニッシュ250の先端部251の内面に当接している(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
このとき、高圧洗車水が車外側側壁220の車外側シールリップ221や車外側意匠リップ222に当たると、車内側側壁230や底壁240がチャンネル(図示せず)やドアインナーパネル(図示せず)に保持されていても、車外側意匠リップ222や車外側側壁220が撓んで、車外側意匠リップ222とガーニッシュ250の先端部251との間から高圧洗車水が浸入して、ドアの内部まで浸入する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−203767号公報
【特許文献2】特開2015−67118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、高圧洗車水がドアの内部まで浸入することを防止できるガラスランを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、自動車ドアのドアフレームの内周に取付け、ドアガラスの昇降を案内する自動車用ガラスランの防水構造において、
ガラスランは、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略コ字形の本体を有し、車外側側壁と車内側側壁には、先端からそれぞれガラスランの断面略コ字状の本体の内側に向かって延出する車外側シールリップと車内側シールリップを設け、車外側シールリップと車内側シールリップによりドアガラスの車外側面及び車内側面をシールし、
車外側側壁と車内側側壁の先端からそれぞれガラスランの断面略コ字状の本体の外側に向かって延出する車外側意匠リップと車内側意匠リップを設け、
車外側意匠リップの車外側面を車外側意匠部材の先端で覆い、ドアフレームに取付けられる車外側意匠部材の内面に当接リブを延設し、
車外側意匠リップが車外側側壁の先端との連結部分である根元部を中心に回動したときに、車外側意匠リップの先端部は、車外側意匠部材の当接リブと当接するように形成されたことを特徴とする自動車用ガラスランの防水構造である。
【0015】
請求項1の本発明では、自動車ドアのドアフレームの内周に取付け、ドアガラスの昇降を案内する自動車用ガラスランにおいて、ガラスランは、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略コ字形野本体を有し、車外側側壁と車内側側壁には、先端からそれぞれガラスランの断面略コ字状の本体の内側に向かって延出する車外側シールリップと車内側シールリップを設け、車外側シールリップと車内側シールリップによりドアガラスの車外側面及び車内側面をシールしている。
【0016】
このため、ドアフレームの上辺部、縦辺部及びコーナー部において車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる本体の断面略コ字状のガラスランの内側に、ドアガラスの先端を収納することができ、ドアガラスを確実に保持することができる。また、車外側シールリップと車内側シールリップにより、ドアガラスの昇降に応じて、両方のシールリップがドアガラスに当接し、車外側シールリップと車内側シールリップによりドアフレームとドアガラスとの間のシールをすることができる。
【0017】
車外側側壁と車内側側壁の先端からそれぞれガラスランの断面略コ字状の本体の外側に向かって延出する車外側意匠リップと車内側意匠リップを設けた。このため、ドアフレームとガラスランの車外側側壁及び車内側側壁の先端との間を、車外側意匠リップと車内側意匠リップで覆うことができ、見栄えを向上させることができる。
【0018】
車外側意匠リップの車外側面をドアフレームに取付けられる車外側意匠部材の先端で覆っているため、ドアフレームの車外側面を車外側意匠部材で覆い、見栄えを向上させている。さらに、車外側意匠部材の内面に当接リブを延設しているため、車外側意匠部材の先端部分の剛性を向上させることができる。
【0019】
車外側意匠リップが車外側側壁の先端との連結部分である根元部を中心に回動したときに、車外側意匠リップの先端部は、車外側意匠部材の当接リブと当接するように形成された。このため、高圧洗車水等で車外側意匠リップの先端が回動した場合でも、車外側意匠リップの先端が車外側意匠部材の当接リブと当接して、回動が止まり、高圧洗車水の浸入が車外側意匠部材の当接リブの部分で止まり、当接リブに沿って車外側に排出されて、ドアの内部の奥まで浸入することが無い。
【0020】
請求項2の本発明は、車外側意匠リップは、根元部から先端部に向かって徐々に肉厚が減少して形成された自動車用ガラスランの防水構造である。
【0021】
請求項2の本発明では、車外側意匠リップは、根元部から先端部に向かって徐々に肉厚が減少して形成されたため、根元部から先端部にかけての肉厚を調整して、車外側意匠リップの回動時の剛性と回動抵抗を調整して、車外側意匠リップと車外側意匠部材の間のシール性を確保することができる。
【0022】
請求項3の本発明は、車外側意匠リップは、根元部と先端部の間で、先端部が車外側側壁から離れる方向に屈曲した屈曲部が形成された自動車用ガラスランの防水構造である。
【0023】
請求項3の本発明では、車外側意匠リップは、根元部と先端部の間で、先端部が車外側側壁から離れる方向に屈曲した屈曲部が形成された。このため、車外側意匠部材をドアフレームに組み付けるときの寸法のばらつきを吸収して、車外側意匠リップの先端が巻き込まれるのを防止して、車外側意匠リップと車外側意匠部材の間の見栄えの向上とシール性を確保することができる。
【0024】
請求項4の本発明は、車外側意匠リップの先端部は、車外側意匠部材の先端の内面に当接するように取付けられた自動車用ガラスランの防水構造である。
【0025】
請求項4の本発明では、車外側意匠リップの先端部は、車外側意匠部材の先端の内面に当接するように取付けられたため、車外側意匠リップと車外側意匠部材の間の隙間をなくして、車外側意匠リップと車外側意匠部材の間の見栄えの向上とシール性を確保することができる。
【0026】
請求項5の本発明は、ガラスランは、ドアフレームに取付けられたドアチャンネルに取付けられて、ドアチャンネルの内面に車外側側壁、車内側側壁及び底壁が当接し、ドアチャンネルの先端を車外側意匠リップと車内側意匠リップで覆う自動車用ガラスランの防水構造である。
【0027】
請求項5の本発明では、ガラスランは、ドアフレームに取付けられたドアチャンネルに取付けられて、ドアチャンネルの内面に車外側側壁、車内側側壁及び底壁が当接し、ドアチャンネルの先端を車外側意匠リップと車内側意匠リップで覆われている。このため、ガラスランがドアチャンネル内に安定して保持され、ドアガラスの昇降によっても、シール性を確保することができる。また、ドアチャンネルの両側の先端を車外側意匠リップと車内側意匠リップで覆い、見栄えを向上させている。
【0028】
請求項6の本発明は、ガラスランは、自動車ドアの縦辺部に取付けられた自動車用ガラスランの防水構造である。
【0029】
請求項6の本発明では、ガラスランは、自動車ドアの縦辺部に取付けられたため、自動車ドアの縦辺部に取付けられた車外側意匠部材の車外側意匠リップと車外側意匠部材の間のシール性を確保することができる。
【発明の効果】
【0030】
車外側意匠リップが車外側側壁の先端との連結部分である根元部を中心に回動したときに、車外側意匠リップの先端部は、車外側意匠部材の当接リブの先端と当接するように形成されたため、高圧洗車水等で車外側意匠リップの先端が回動した場合でも、車外側意匠リップの先端が車外側意匠部材の当接リブの先端と当接して、回動が止まり、高圧洗車水等が当接リブに沿って車外側に排出されて、ドアの内部の奥まで浸入することが無い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施の形態であるガラスランを縦辺部に装着した状態の断面図であり、
図2におけるA−Aに沿った断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態であるガラスランの正面図である。
【
図4】従来のガラスランを縦辺部に装着した状態の断面図である。
【
図5】従来の他のガラスランを縦辺部に装着した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態を、
図1〜
図3に基づき説明する。
図3は、自動車のリヤのドア1の正面図であり、
図2は、ドア1のドアフレーム2に取付けるリヤドアのガラスラン10の正面図である。
図3に示すように、ドア1の上部にはドアフレーム2が設けられ、ドアガラス5が昇降自在に取付けられる。すなわち、ドアフレーム2の内周には、ガラスラン10が取付けられ、ドアガラス5の昇降を案内するとともに、ドアガラス5とドアフレーム2との間をシールしている。
【0033】
ガラスラン10は、
図2に示すように、全体として押出成形で形成された直線部11と、ドアフレーム2のドアフレームコーナー部2eに取付けられ、上記の直線部11を接続し、型成形で形成されるガラスランコーナー部12からなる。
直線部11は、ドアフレーム2のドアフレーム上辺部2fに取付けられるガラスラン上辺部13と、ドアフレームフロント側縦辺部2gに取付けられるガラスランフロント側縦辺部14と、ドアフレーム2のドアフレームリヤ側縦辺部2hに取付けられるガラスランリヤ側縦辺部15とからなる。
【0034】
これらの押出成形部分をドアフレーム2に対応した形状となるように、フロント側とリヤ側のそれぞれのドアフレームコーナー部2eにおいて、型成形により成形してガラスラン上辺部13とガラスランフロント側縦辺部14とを接続してフロント側のガラスランコーナー部12が形成され、型成形により成形してガラスラン上辺部13とガラスランリヤ側縦辺部15とを接続してリヤ側のガラスランコーナー部12が形成されている。
【0035】
まず、本発明の実施の形態のガラスラン10の直線部11の形状について、ガラスランリヤ側縦辺部15を例にとり説明する。
ガラスラン10の本体は、ドアフレーム上辺部2fに取付けられるガラスラン上辺部13もドアフレームリヤ側縦辺部2hに取付けられるガラスランリヤ側縦辺部15も基本的には、ほぼ同様な断面略コ字形の断面形状を有している。さらに、ドアフレームフロント側縦辺部2gに取付けられるガラスランフロント側縦辺部14もほぼ同様な断面略コ字形の断面形状を有している。
【0036】
ガラスラン10のガラスランリヤ側縦辺部15は、
図1に示すように、本体が車外側側壁20と、車内側側壁30と、底壁40とから断面略コ字状に形成されている。後述のように、車内側側壁30が車外側側壁20よりも大きく、厚肉に形成され、断面略コ字形は、車内側が大きな非対称形に形成されている。
【0037】
ガラスラン10の車外側側壁20は、断面略板状に形成される。
車外側側壁20の先端付近から車外側シールリップ21が、上記本体の断面略コ字状の内側に向けて延設されている。車外側シールリップ21については後述する。
車外側側壁20の先端からガラスラン10の断面略コ字状の本体の外側に向かって延出する車外側意匠リップ22が形成されている。このため、ドアフレーム2を、車外側意匠リップ22で覆うことができ、見栄えを向上させることができる。
【0038】
車外側意匠リップ22は、車外側側壁20から車外方向に斜め方向に延設される根元部22cと、車外側意匠リップ22の先端側に形成される先端部22aと、根元部22cと先端部22aの間に先端部22aが根元部22cから屈曲するように形成された屈曲部22bから形成されている。
【0039】
即ち、車外側意匠リップ22の根元部22cは、車外側側壁20の先端から車外方向で底壁40に向かう方向に斜めに、車外側側壁20と鋭角をなすように延設されている。さらに、車外側意匠リップ22は、屈曲部22bで屈曲して、屈曲部22bから形成された先端部22aは、根元部22cが車外側側壁20となす角度よりもさらに車外側側壁20に対して大きな角度をなすように形成されている。
【0040】
車外側意匠リップ22の車外側面を車外側意匠部材であるガーニッシュ50の先端部51で覆っている。ガーニッシュ50は、ドアフレーム2のドアフレームリヤ側縦辺部2hに取付けられている。ガーニッシュ50の先端部51の裏面は、
図1に示すように車外側意匠リップ22の車外側面に当接している。このため、ドアフレーム2の車外側面をガーニッシュ50で覆い、見栄えを向上させている。
【0041】
車外側意匠リップ22の先端部22aは、ガーニッシュ50の先端部51の内面に当接するように取付けられている。このため、車外側意匠リップ22の先端部22aとガーニッシュ50の先端部51の間の隙間をなくして、車外側意匠リップ22の根元部22cの付近までガーニッシュ50の先端部51が覆い、車外側意匠リップ22とガーニッシュ50の間のシール性を確保することができる。
【0042】
ガーニッシュ50の裏面には、当接リブ52が形成されている。本発明の実施の形態では、当接リブ52よりもガーニッシュ50の先端部51とは反対側に補強リブ53を形成することができる。補強リブ53は、ガーニッシュ50の先端部51の剛性を向上させて、ドアフレーム2の車外側面を保護することができる。
【0043】
車外側意匠リップ22は、高圧洗車水等が当たったときに、車外側側壁20の先端との連結部分である根元部22cを中心に回動するが、回動したときに、車外側意匠リップ22の先端部22aは、ガーニッシュ50の裏面に形成された当接リブ52と当接するように形成されている。
【0044】
このため、高圧洗車水等で押されて、車外側意匠リップ22の先端部22aが回動した場合でも、車外側意匠リップ22の先端部22aがガーニッシュ50の当接リブ52と当接して、車外側意匠リップ22の回動を止めることができる。これによって、ガーニッシュ50の当接リブ52と車外側意匠リップ22で高圧洗車水等に対して障壁を形成することができる。
【0045】
したがって、車外側意匠リップ22の根元部22cとガーニッシュ50の先端部51との間から浸入した高圧洗車水がドアの内部に浸入することがない。浸入した高圧水は、ガーニッシュ50の当接リブ52と車外側意匠リップ22で形成された障壁の部分で止まり、当接リブ52に沿って下方に流下して、ドア1の下部から車外側に排出されて、ドアの内部の奥まで浸入することが無い。
【0046】
上記のように、車外側意匠リップ22は、中央付近の屈曲部22bで屈曲して、根元部22cが車外側側壁20となす角度よりも、先端部22aが車外側側壁20となす角度の方が大きくなるように屈曲して形成されている。このため、ガーニッシュ50をドアフレーム2に組み付けるときに、ドアフレーム2やガラスラン10及びガーニッシュ50の寸法のばらつきを吸収して、車外側意匠リップ22の先端部22aが巻き込まれるのを防止して、車外側意匠リップ22の先端部22aがガーニッシュ50の先端部51の裏面に当接して、車外側意匠リップ22とガーニッシュ50の間のシール性を確保することができる。
【0047】
車外側意匠リップ22は、根元部22cから先端部22aに向かって徐々に肉厚が減少して形成することが好ましい。この場合には、根元部22cから先端部22aにかけての肉厚を調整して、車外側意匠リップ22の剛性を調節して、車外側意匠リップ22の回動時の応力を調整して、車外側意匠リップ22とガーニッシュ50の先端部51の間のシール性を確保することができる。
【0048】
上述のように、車外側側壁20の内側には、車外側シールリップ21がガラスラン10の本体の内側に向けて斜めに延設されている。
ドアガラス5が上昇して、ドアガラス5の上端がガラスラン10の本体のガラスランリヤ側縦辺部15の内部を摺動したときに、ドアガラス5の側端の車内外側の両面に、この車外側シールリップ21と後述する車内側シールリップ31が弾力的に当接して、ドアガラス5の側端とドアフレーム2の間をシールする。
【0049】
車外側シールリップ21と後述する車内側シールリップ31の表面には低摺動部材を設けることができる。この場合は、ドアガラス5が昇降して、縦辺部のガラスラン10を摺動するときにドアガラス5と、ガラスラン10との接触面積や摩擦抵抗が少なくなり、摺動抵抗を減少させることができ、異音の発生を防止し、スムースな昇降を確保することができる。さらに、ドアガラス5が昇降時にドアガラス5の湾曲や、走行時の負圧により車外側に移動したり、撓んで、強く車外側シールリップ21に押付けられたりしても、ドアガラス5の摺動抵抗を増加させることなく、スムースな昇降を確保することができる。
【0050】
車外側側壁20の外面の底壁40と連結部分の近傍には車外側保持リップ23が形成されている。ドアアウターパネルとドアインナーパネルに取付けられたドアチャンネル2dは、円弧状の湾曲部が形成され、湾曲部に車外側保持リップ23が係止され、車外側意匠リップ22と車外側保持リップ23で、車外側側壁20をドアチャンネル2dに保持することができる。
このため、車外側側壁20を確実にドアチャンネル2dに係止することができるとともに、車外側側壁20とドアチャンネル2dとの間をシールすることができる。
【0051】
底壁40は、略板状に形成され、車内側側壁30および車外側側壁20との連続部分では屈曲が容易にできるように底壁溝部41が形成されている。底壁40の外面の両端には、底壁当接面44が形成されている。底壁当接面44は、ドアチャンネル2dに当接するように突出して形成されている。
【0052】
底壁40のガラスラン10の本体の断面略コ字形の内面には、複数本の底壁凹部42が長手方向に連続して平行に形成されている。底壁凹部42により、底壁40が撓みやすくなる。さらに、底壁40の内面に形成された摺動面43には、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31と同様に低摺動部材を押出成形したり、ウレタン樹脂等の低摺動部材が塗布されたりしている。このため、ドアガラス5との摺動抵抗を減少させることができる。
【0053】
車内側側壁30は、車外側側壁20よりも肉厚で大きく形成されている。このため、ガラスラン10をドアフレーム2の側面に保持することができる。
車内側側壁30の先端から、車内側意匠リップ32が車内側側壁30の外面側、即ち、車内方向に車内側側壁30と平行に延設されている。この車内側意匠リップ32と車内側側壁30で、ドアチャンネル2dの先端のフランジ部分を挟持している。
【0054】
車外側側壁20と同様に、車内側側壁30の先端からガラスラン10の本体の内部方向に斜めに車内側シールリップ31が延設されている。車内側シールリップ31は、車外側シールリップ21よりも長く、厚肉に形成されているため、ドアガラス5がガラスラン10内に浸入したときに、ドアガラス5を車外側に位置させることができ、ドアフレーム2とドアガラス5の段差を少なくすることができる。このため、空気抵抗や風切音が減少し、デザイン的にも好ましい。
【0055】
車内側側壁30の内面から車内側シールリップ31の裏面方向に車内側サブシールリップ35が延設されている。ドアガラス5が車内側シールリップ31を車内側側壁30側に押圧したときに、車内側シールリップ31の先端を保持して、車内側シールリップ31のシール性を向上させるとともに、車内側シールリップ31が車内側側壁30に密着することを防止している。
【0056】
車内側側壁30の外面には、底壁40との連続部分の付近に車内側保持リップ34が形成されている。ドアチャンネル2dは、屈曲部が形成され、屈曲部に車内側保持リップ34が係止される。このため、ガラスラン10を車内側意匠リップ32と車内側保持リップ34で、車内側側壁30をドアチャンネル2dに保持することができる。
【0057】
車内側側壁30の外面の中央付近には、車内側保持突条33が長手方向に連続して形成されている。車内側保持突条33は、ドアチャンネル2dの車内側の内面に当接して、車内側側壁30をドアチャンネル2dに保持して、シールしている。
【0058】
つぎに、ガラスラン10の製造方法について説明する。
直線部11の成形においては、成形材料は、合成ゴム、熱可塑性エラストマーが使用され、例えば合成ゴムでは、EPDMゴム、熱可塑性エラストマーでは、ポリオレフィン系エラストマー等が使用される。
合成ゴムの場合は、押出成形後に加硫槽に搬送されて、熱風や高周波等により加熱されて加硫が行われる。熱可塑性エラストマーの場合は、冷却され固化される。その後、所定の長さに切断されて、押出成形部分は製造される。
【0059】
次に、ガラスランコーナー部12の型成形部分の成形は、上記により製造された押出成形部材を所定寸法に長手方向とは略直角に切断して、その切断した押出部分の端部を、型成形部分を成形する金型に挟持して、その金型のキャビティーに型成形部分を形成するソリッド材を注入する。型成形部分の断面形状は押出成形部分の断面形状と略同じである。
【0060】
型成形の成形材料は、押出成形部分に使用した材料と同じ種類のものを使用することが好ましい。熱可塑性エラストマーの場合は、金型に注入されたときに注入材料は溶融されているため、その熱と圧力とで押出成形部分と型成形部分は一体的に融着される。これにより、ガラスラン10は、
図2に示すように、ガラスランフロント側縦辺部14、ガラスラン上辺部13とガラスランリヤ側縦辺部15が、ガラスランコーナー部12により一体的に接続される。
【符号の説明】
【0061】
2 ドアフレーム
2d ドアチャンネル
10 ガラスラン
11 直線部
12 ガラスランコーナー部
13 ガラスラン上辺部
15 ガラスランリヤ側縦辺部
20 車外側側壁
22 車外側意匠リップ
22a 先端部
22b 屈曲部
22c 根元部
30 車内側側壁
40 底壁