特許第6354807号(P6354807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354807
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/66 20060101AFI20180702BHJP
   C21B 7/14 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C04B35/66
   C21B7/14 307
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-152699(P2016-152699)
(22)【出願日】2016年8月3日
(65)【公開番号】特開2018-20928(P2018-20928A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2017年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】飯國 恒之
(72)【発明者】
【氏名】飯田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】北村 匡譜
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−362980(JP,A)
【文献】 特開2000−203953(JP,A)
【文献】 特開平6−293565(JP,A)
【文献】 特開2003−292384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
C21B 7/14
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素−アルミナ−炭素系の高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物において、炭化珪素原料が50〜90質量%、アルミナ原料が1〜41質量%、及びカーボンブラック、ピッチ及びメソフェーズピッチからなる炭素質原料が0.9〜21質量%の範囲内にあり、且つカーボンブラックが0.3〜9質量%、ピッチが0.3〜5質量%及びメソフェーズピッチが0.3〜7質量%の範囲内にあることを特徴とする高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉主樋スラグライン用耐火物などスラグと接触する箇所に使用することができる流し込み耐火物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉主樋は、高炉出銑口から導出される溶銑と溶融スラグとを次工程に運ぶための経路である。また、高炉樋は、溶銑と溶融スラグとを比重の差によって分離する機能も有している。高炉主樋の損耗は、壁部における空気と溶融スラグとの界面(スラグライン)及び溶融スラグと溶銑との界面(メタルライン)で局部的に起こることが知られている。スラグラインとメタルラインとでは損耗機構が異なるため、損耗機構に対応した材質の耐火物がスラグラインとメタルラインとに別個に採用されている。
【0003】
一般に、スラグラインには、アルミナ−炭化珪素−炭素質流し込み耐火物が採用されている。例えば、特許文献1には、SiC含有量が70wt%以上でかつ気孔率10%以下、充填嵩比重が粗粒で1.25以上、中粒で1.60以上の炭化珪素骨材を使用し、炭化珪素70〜95wt%、カーボン質原料1〜7wt%、アルミナ微粉3〜20wt%及びシリカ超微粉0.5〜5wt%並びに適宜炭化ほう素0.8〜5wt%を含有する組成物に分散剤、結合剤を添加することを特徴とする高炉出銑樋用流し込み耐火材が開示されている。また、メタルラインには、スピネル−アルミナ−炭化珪素−炭素質流し込み耐火物が採用されている。例えば、特許文献2には、重量割合で、炭化珪素5〜25%、炭素1〜5%、平均粒径5μm以下のアルミナ超微粉5〜15%、アルミナセメント0.5〜7%、残部がMgO−Al系スピネルを主材とした配合物よりなる高炉樋用流し込み材が開示されている。
【0004】
従来、高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物材料には、高炉スラグに対する耐食性の向上が求められてきた。高炉スラグの組成は、溶鉱炉内に酸化物系の固体が残らないように、酸化物を溶解する組成に設計されており、樋内におけるスラグ組成に対して酸化物系の耐火骨材は容易に溶解してしまう。そのため、スラグライン用流し込み耐火物は、酸化物をできるだけ排除し、炭化珪素や炭素類のような非酸化物を主体とした材料が用いられてきた。しかしながら、非酸化物は高温下で酸化する欠点があり、この欠点が耐食性の低下をもたらす。
【0005】
この酸化という問題を解決するために、高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物の改良が様々行われてきた。例えば、特許文献3には、炭化珪素2〜92重量%とカーボン原料を2〜7重量%、若しくは、カーボン原料を2〜7重量%を含む配合物に、コバルト酸化物、コバルト塩、金属コバルト粉末の少なくとも1種を金属コバルトに換算して0.01〜0.5重量%添加したことを特徴とする耐食性、耐酸化性不定形耐火物が開示されている。また、特許文献3の[0011]段落には、「カーボン質原料としては、石油ピッチ、石炭ピッチ、メソフェーズカーボン、コークス、カーボンブラック、土状黒鉛粉、鱗状黒鉛、人造黒鉛の一種または二種以上使用できる。」旨の記載があり、また、実施例には、高炉主樋メタルゾーン用耐火物としてピッチ、メソフェーズカーボン及びカーボンブラックを併用した例が記載されている。特許文献3によれば、コバルト酸化物、コバルト塩、金属コバルト粉末をごく少量添加することによって、ガラス層を形成し酸化を防ぎ、耐食性を向上させることができるとしている。
【0006】
一方、高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物には、爆裂現象といった問題もある。所定量の水を添加して施工された流し込み耐火物は、ガスバーナ等により加熱して乾燥してから使用される。この加熱乾燥時には、施工水が水蒸気となるため、水蒸気の圧力で施工体が崩壊する場合がある。この現象を爆裂現象という。特に、高炉主樋耐火物は大きな施工体であることや、乾燥期間が短いこと等の理由によって爆裂現象が起こりやすく、耐爆裂性は高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物の重要な特性の一つである。
【0007】
例えば、特許文献4には、炭化珪素を70〜90wt%含有する母材に、金属シリコン粉末1〜3wt%、炭化硼素粉末0.5〜3.0wt%及び高融点ピッチ1〜3wt%を添加してなることを特徴とする出銑樋用流し込み樋材が開示されている。特許文献4によれば、炭化硼素粉末が炭化珪素より先に酸化によって炭化珪素の酸化を防止するとともに、β-SiCのウィスカーが形成し、出銑樋用流し込み樋材の耐食性が向上するとしている。
更に、特許文献5には、灰分が0.5重量%以下であるカーボンブラック原料と、固定炭素量が75〜95重量%であるピッチ原料を含有する耐火組成物であって、かつそのカーボンブラック原料とピッチ原料の含有量の重量比率が1:0.1〜1:0.9であることを特徴とする水系不定形耐火物が開示されている。また、特許文献5の実施例には、炭化珪素やアルミナを母材として、特定のカーボンブラックとピッチを特定の量比で配合する材料が開示されており、特定のカーボンブラックとピッチを特定の量比で使用することによって、緻密性や熱応力吸収性を付与し、耐スポーリング性や耐食性が向上するとしている。
また、特許文献6には、平均粒子径が1μm以下の超微粉の炭化珪素を1〜10重量%含有してその残部が耐火性原料であることを特徴とする高炉樋用不定形耐火物;平均粒子径が1μm以下の超微粉の炭化珪素を1〜10重量%、10μm以下の炭化珪素の合量が3〜12重量%で残部が耐火性原料とした前記高炉樋用不定形耐火物;残部の耐火性原料として、易焼結アルミナ6〜14重量%、スピネル20〜50重量%、炭化珪素40〜85重量%、カーボン原料1〜4重量%、シリカヒューム4重量%未満、金属シリコン0.5〜3.0重量%、アルミナセメント0.5〜3.0重量%、その他に分散剤、硬化調整材とした高炉樋用不定形耐火物が開示されている。特許文献6によれば、平均粒径1μm以下の超微粉を添加することによって、微粉部分の炭化珪素含有割合が増加して、耐食性が向上するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−164479号
【特許文献2】特開平5−339065号
【特許文献3】特開平9−278540号
【特許文献4】特開平5−70250号
【特許文献5】特開2002−137970号
【特許文献6】特開2003−137664号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されているような高炉出銑樋用流し込み耐火物に用いられている炭化珪素や炭素類のような非酸化物は高温下で酸化する欠点があり、スラグラインでは、この欠点が耐食性の低下をもたらす。また、特許文献3の耐食性、耐酸化性不定形耐火物では、メタルゾーン用耐火物としてカーボンブラック、ピッチ、メソフェーズピッチを併用した実施例が示されているが、炭化珪素含有量が少なく、耐スラグ耐食性に大きく欠けるため、高炉主樋スラグライン用耐火物に用いることはできず、また、高炉出銑樋の耐火物が実際に使用されるほど長期間にわたって酸化を防ぐことはできず、更に、耐食性の観点からガラス層の形成は好ましいものではない。更に、特許文献4、5及び6では、ピッチとカーボンブラックを併用する実施例が開示されているが、これらの材質は耐爆裂性に劣るものであった。
【0010】
従って、本発明の目的は、従来に比べて、より長期間にわたり酸化防止効果を発揮することができ、更に、炭化珪素、カーボン等の非酸化物の耐食性機能を十分に発揮することができ、耐爆裂性を損なわない高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述の特許文献によって高炉主樋スラグライン耐火物の耐用性は必ずしも向上できない理由を鋭意検討した。高炉主樋スラグライン耐火物は、流し込み耐火物の継ぎ足し施工によって運用されるのが一般的であり、施工された材料は、長いものでは1年程度使用されている。高炉主樋スラグライン耐火物は、上述のように炭化珪素、アルミナ及び炭素を主成分としている。このような耐火物は、使用中に大気中の酸素ガスと反応して、炭素は式(1)に従ってCOガスとなって飛散・消失し、次いで、炭化珪素は式(2)に従ってSiOとなる。
C+1/2O→CO (1)
SiC+O→SiO+C (2)
従って、高炉主樋スラグライン耐火物は脱炭により気孔率が増加するとともに、形成されたSiOの耐食性は劣ることから酸化後の耐食性は劣るようになる。このため、例えば特許文献3や特許文献4では、空気による酸化を抑制することを目的している。
しかしながら、使用後の高炉主樋スラグライン耐火物のサンプルを詳細に観察すると、稼働面内部のような式(1)に示される稼動面付近でのCの酸化が起こらない条件でも、SiCの酸化が進行していることが解った。その原因は、以下のように考えられる。すなわち、稼働面付近でのCの酸化によって、高炉主樋スラグライン耐火物の気孔中の雰囲気はCOを含有する雰囲気となる。この条件では、稼働面内部のCは酸化消失しない。しかし、炭化珪素は、式(3)のように酸化する。
SiC+2CO→SiO+3C (3)
つまり、SiCは式(2)の反応のように大気中のOのみでなく、COガス雰囲気下でも酸化することが解った。すなわち、高炉主樋スラグライン耐火物内部、すなわち、稼働面内部までSiCの酸化が起こってSiOが生成して耐用性の低下が生じる。ここで、金属シリコン、金属アルミニウム、コバルト類、炭化ほう素のような従来使用されている酸化防止剤では、短期間の酸化防止効果は望めるが、実際の高炉主樋スラグライン耐火物の使用期間を考えると不十分なものであった。
【0012】
以上の考察に基づき本発明者らは、鋭意検討した結果、高炉主樋スラグライン耐火物の耐酸化性を長期間にわたり維持するためには、高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物にピッチを使用すること必須であることが解った。高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物にピッチを配合することによってCOガスによる炭化珪素の酸化を抑制できる機構は、以下のように推定できる。すなわち、式(3)によって炭化珪素の酸化が起こる場合、炭化珪素は櫛状に損傷して炭素が残り、Si成分は炭化珪素粒の付近には顕著には残留しない。これは、気散し易いSiO(g:ガス)を生成してSi成分が気散したためと考えられる。従って、炭化珪素粒子の周囲をガス透過性の低いピッチの膜で覆うことによって、COと炭化珪素粒の接触を防ぐとともに、生成したSiO(g)の揮散を抑制することができるものと考えられる。
しかしながら、ピッチの添加は高炉主樋スラグライン耐火物の通気性を著しく阻害するために、流し込み耐火物を施工する際の施工体の乾燥工程におる耐爆裂性が劣るという問題点が発生した。
そこで、長期間にわたり耐酸化性を維持しつつ、耐爆裂性の劣化を改善する方法を併せて検討した結果、メソフェーズピッチと、ピッチとを併用すれば、耐爆裂性を損なわず十分な耐酸化性を付与できるとの知見が得られた。
本発明は、上記知見に基づくものである。
【0013】
即ち、本発明は、炭化珪素−アルミナ−炭素系の高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物において、炭化珪素原料が50〜90質量%、アルミナ原料が1〜41質量%、及びカーボンブラック、ピッチ及びメソフェーズピッチからなる炭素質原料が0.9〜21質量%の範囲内にあり、且つカーボンブラックが0.3〜9質量%、ピッチが0.3〜5質量%及びメソフェーズピッチが0.3〜7質量%の範囲内にあることを特徴とする高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高炉主樋使用中のCOガスによる炭化珪素の酸化を長期間にわたり防止することができ、炭化珪素、カーボン等の非酸化物の耐食性機能を十分に発揮させることができると共に、流し込み耐火物を施工後、乾燥工程における耐爆裂性を損なわない高炉主樋スラグライン材用流し込み耐火物の提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物は、炭化珪素−アルミナ−炭素系流し込み耐火物であり、基材は、炭化珪素原料、アルミナ原料及び炭素質原料から構成される。炭化珪素原料の配合割合は50〜90質量%、好ましくは60〜80質量%の範囲内である。炭化珪素原料の配合割合が、50質量%未満であると、耐食性に劣るために好ましくない。また、炭化珪素原料の配合割合が90質量%を超えると、流動性が劣り、流し込み耐火物を施工する際に多量の水分が必要となり、耐食性に劣るために好ましくない。なお、炭化珪素原料のSiC純度は、耐食性の観点から85質量%以上であることが好ましく、より好ましくは、90質量%以上である。
【0016】
次に、アルミナ原料の配合割合は1〜41質量%、好ましくは14〜37質量%の範囲内である。アルミナ原料の含有量が、1質量%未満であると、流動性が劣り、流し込み耐火物を施工する際に多量の水分が必要となり、耐食性に劣るために好ましくない。また、アルミナ原料の配合割合が41質量%を超えると、耐食性に劣るために好ましくない。ここで、アルミナ原料としては、仮焼アルミナ、電融アルミナ、焼結アルミナ、ボーキサイト、ばん土頁岩などを使用することができ、これらのアルミナ原料を2種以上併用することも可能である。なお、アルミナ原料の純度は、耐食性の観点から80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは、90質量%以上である。
【0017】
また、炭素質原料の配合割合は0.9〜21質量%、好ましくは1.5〜16質量%の範囲内である。なお、炭素質原料の配合割合は、後述の各成分の合計量である。ここで、炭素質原料の配合割合が0.9質量%未満であると、耐食性が劣るために好ましくない。また、炭素質原料の配合割合が21質量%を超えると、流動性が劣り、流し込み耐火物を施工する際に多量の水分が必要となり、耐食性が劣るため好ましくない。
なお、炭素質原料としては、カーボンブラック、ピッチ及びメソフェーズピッチを併用する。ここで、カーボンブラックの配合割合は0.3〜9質量%、好ましくは0.5〜7質量%の範囲内である。カーボンブラックの配合割合が0.3質量%未満であると、耐食性に劣るために好ましくない。また、カーボンブラックの配合割合が9質量%を超えると、流動性が劣り、流し込み耐火物を施工する際に多量の水分が必要となり、耐食性に劣るために好ましくない。
【0018】
使用可能なカーボンブラックは特に限定されるものではなく、熱分解法、不完全燃焼法のどちらで製造されたものでも使用することができる。また、カーボンブラックの粒度やDBP(ジブチルフタレート)吸収量も特に制限されるものではないが、好ましくは、平均粒径が15nm以上でかつDBP吸収量が150cm/100g以下のものである。
【0019】
次に、ピッチの配合割合は0.3〜5質量%、好ましくは0.5〜4質量%の範囲内である。ピッチの配合割合が0.3質量%未満であると、耐酸化性に劣るために好ましくない。また、ピッチの配合割合が5質量%を超えると、耐爆裂性に劣るために好ましくない。
【0020】
ピッチとしては、軟化点が350℃以下のものを用いることができ、例えば、コールタールピッチ、石油ピッチ等が例示することができる。ピッチの粒度は特に限定されるものではない。好ましくは、軟化点が200℃以下のコールタールピッチを使用することができる。
【0021】
更に、メソフェーズピッチの配合割合は0.3〜7質量%、好ましくは0.5〜7質量%の範囲内である。メソフェーズピッチの配合割合が0.3質量%未満であると、耐爆裂性に劣るために好ましくない。また、メソフェーズピッチの配合割合が7質量%を超えると、流動性が劣り、流し込み耐火物を施工する際に多量の水分が必要となり、耐食性に劣るために好ましくない。
【0022】
メソフェーズピッチは、軟化点が350℃より高温であり、メソフェーズ割合が60質量%以上のものを用いる。メソフェーズピッチの固定炭素割合は、耐食性の観点から80質量%以上のものが好ましく、85質量%以上のものがより好ましい。
【0023】
ここで、本発明の高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物では、炭素質原料としてカーボンブラック、ピッチ及びメソフェーズピッチを併用することにより、高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物から得られる施工体の耐酸化性を長期間にわたり維持しつつ、施工体乾燥工程における耐爆裂性を改善することができる。
【0024】
本発明の高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物には、添加剤として、硬化材、分散剤、硬化時間調整剤、爆裂防止剤、酸化防止剤等を使用することができる。添加剤の配合割合は、炭化珪素原料、アルミナ原料及び炭素質原料から構成される基材100質量%に対して外掛けで1〜6質量%、好ましくは2〜5質量%の範囲内である。
硬化材には、例えば、アルミナセメント、粘土質原料等の常温硬化材や、珪酸塩や燐酸塩等の周知の熱硬化性結合材等を使用することができる。
分散剤には、例えば、アルカリ金属燐酸塩、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属フミン酸塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリカルボン酸ナトリウム等の不定形耐火物に一般的に使用される物質や、これらと同様の効果が得られる物質を使用することができる。また、複数種の分散剤を併用することもできる。
硬化時間調整剤には、硬化促進剤と硬化遅延剤とが含まれる。硬化促進剤には、例えば、消石灰、塩化カルシウム、アルミン酸ソーダ、炭酸リチウム等を使用することができ、複数種の硬化促進剤を併用することもできる。硬化遅延剤には、例えば、ホウ酸、シュウ酸、クエン酸、グルコン酸、炭酸ソーダ、砂糖等を使用することができ、複数種の硬化遅延剤を併用することもできる。
爆裂防止剤には、例えば、金属アルミニウム、乳酸アルミ、有機繊維等を使用することができ、複数種の爆裂防止剤を併用することもできる。また、酸化防止剤には、例えば、炭化ホウ素を使用することができる。
【0025】
以上のような原料の混合方法は特に限定されず、公知の任意の混合方法を採用することができる。例えば、混合用の装置として、例えば、オムニミキサー等を使用することができる。また、混合の際に、硬化材、分散剤、硬化時間調整剤、爆裂防止剤、酸化防止剤等の添加剤を基材に混ぜ込まず、別袋とすることも可能である。
原料の混練方法についても特に限定されず、公知の任意の混練方法を採用することができる。例えば、混練用の装置として、ボルテックスミキサーやモルタルミキサー等を使用することができる。混練水についても特に限定されない。家庭用の浄水や工業用浄水等を使用することができる。また、シリカゾル等のバインダーを含んだ液体であってもよい。
【実施例】
【0026】
以下の表1〜4に記載する配合割合にて、本発明の高炉主樋スラグライン用流し込み耐火物及び比較品を説明するが、本発明は以下の例示に限定されるものではないことを理解されたい。
表1〜4では、表中に示す配合割合で原料を配合、混練することにより調製した流し込み耐火物の特性を評価した。なお、混練は、JIS R 2521に準じた試験方法によるタップフロー値が135〜145になるように調整した混練水量で、ミキサーにより実施した。
なお、炭化珪素の純度は97質量%であった。アルミナの純度は99質量%であった。カーボンブラックは、熱分解法で製造されたもので、平均粒径80nm、DBP吸収量が29cm/100gのものである。ピッチAは、軟化点が110℃、固定炭素割合が60質量%のコールタールピッチである。ピッチBは、軟化点が300℃、固定炭素割合が83質量%のコールタールピッチである。メソフェーズピッチは、軟化点が350℃、固定炭素割合が85質量%のものを用いた。金属コバルトは純度95質量%のものを用いた。
また、各種添加剤として、硬化材であるアルミナセメント、分散剤である燐酸ナトリウム及びナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、酸化防止剤である炭化ほう素を添加した。ここでは、各種添加剤におけるアルミナセメントの割合は2質量%、燐酸ナトリウムの割合は0.05質量%、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩の割合は0.05質量%、炭化ほう素の割合は0.9質量%とした。
【0027】
得られた本発明品及び比較品の流し込み耐火物について、流動性、耐食性、耐爆裂性、耐酸化性を評価し、表1〜4に併記する。評価方法は下記の通りである。
(1)流動性の評価
JIS R 2521に準じた試験方法によるタップフロー値が135〜145になるように調整する際の、必要水分割合で判断した。すなわち、必要水分割合が少ないほど流し込み耐火物の流動性が優れていることを示している。流動性が悪い材料では、施工体を得ようとすると多量の水分が必要となり、乾燥後に気孔が多くなり耐食性が劣る。必要水分割合が外掛けで5.9質量%未満の流し込み耐火物を◎、5.9〜6.5質量%の流し込み耐火物を○、6.5質量%より多い流し込み耐火物を×と評価した。
【0028】
(2)耐食性の評価
本発明品及び比較品の各流し込み耐火物を流し込み成形し、30℃で24時間養生して40mm×40mm×160mmの供試体を得、回転ドラム法によるスラグ侵食試験を実施した。侵食剤としてC/S(CaO/SiO質量比)≒1.2の高炉スラグを1時間あたり1kg使用し、1600℃で5時間にわたり試験を行った。高炉スラグは1時間ごとに排出し、新しい高炉スラグと交換した。加熱方法はアーク加熱で行った。試験終了後、供試体の溶損深さを測定し、表3に示す比較品11の溶損深さを100として指数表示した。すなわち、耐食性指数は、数値が小さいほど溶損量が少なく、耐食性に優れていることを示している。溶損指数が、100未満の流し込み耐火物を◎、100〜115の流し込み耐火物を○、115より大きい流し込み耐火物を×と評価した。
【0029】
(3)耐爆裂性の評価
本発明品及び比較品の各流し込み耐火物を、直径80mm及び高さが80mmの円柱状の型枠に流し込み、30℃で24時間養生して供試体を作成した。得られた供試体を所定温度に保持した電気炉の中に入れ、20分間保持し、爆裂の有無を目視で確認する。そして爆裂が発生しなかった最高温度を爆裂限界温度とした。すなわち、爆裂限界温度が高いものほど、耐爆裂性に優れていることを示している。試験は上限を800℃として100℃毎に実施した。爆裂限界温度が、700℃より高い流し込み耐火物を◎、600℃より高く、700℃以下の流し込み耐火物を○、600℃以下の流し込み耐火物を×と評価した。
【0030】
(4)耐酸化性
本発明品及び比較品の各流し込み耐火物を、40mm×40mm×160mmの型枠に流し込み、30℃で24時間養生後脱枠し、110℃で24時間乾燥して供試体を得た。得られた供試体を、コークスブリーズ中で1500℃−3時間の加熱・自然冷却を1回行った後に質量を測定した。その後、追加で4回加熱・自然冷却を繰り返し行った後の供試体の質量を測定した。1回加熱後から5回加熱後の質量増加率で耐酸化性を評価した。すなわち、コークスブリーズ中で加熱しているためにCは酸化しないが、式(3)に従ってSiCはCOガスとの反応によって酸化されて、質量増加が起こる。従って、質量増加率の小さいものほど、SiCが酸化しておらず、耐酸化性に優れていることを示している。質量増加率が、0.6未満の流し込み耐火物を◎、0.6〜0.7の流し込み耐火物を○、0.7より大きい流し込み耐火物を×と評価した。
【0031】
総合評価
総合評価は、各評価項目のうち一番悪い評価のものとした。◎は、最適、○は、許容範囲、×は、不適とした。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
表1〜4から理解できるように、本発明品11〜21では、比較品1〜11に比べて流動性、耐食性、耐爆裂性、耐酸化性が優れている。
以下、表1〜4に示す流し込み耐火物について簡単に説明する。
比較品1は、炭化珪素の配合割合を40質量%とした配合である。本発明品1〜5は炭化珪素の配合割合を50〜90質量%の範囲内とした配合である。比較品2は、炭化珪素の配合割合を95質量%、アルミナの配合割合を0.5質量%とした配合である。比較品1では炭化珪素の配合割合が50質量%未満であるために、耐食性に劣る。また、比較品2では炭化珪素の配合割合が90質量%より多く、アルミナの配合割合が1質量%未満であるために、流動性に劣る。
比較品3は、アルミナの配合割合を48質量%とした配合である。比較例3ではアルミナの配合割合が41質量%より多いために、耐食性に劣る。
比較品4は、カーボンブラックの配合割合を0.1質量%とした配合である。比較品5は、カーボンブラックの配合割合を10質量%とした配合である。比較品4ではカーボンブラックの配合割合が0.3質量%未満であるために、耐食性に劣る。また、比較品5ではカーボンブラックの配合割合が9質量%より多いために、流動性に劣る。
比較品6は、ピッチの配合割合を0.1質量%とした配合である。比較品7は、ピッチの配合割合を6質量%とした配合である。比較品6ではピッチの配合割合が0.3質量%未満であるために、耐酸化性に劣る。また、比較品7ではピッチの配合割合が5質量%より多いために、耐爆裂性に劣る。
比較品8は、メソフェーズピッチの配合割合を0.1質量%とした配合である。比較品9は、メソフェーズピッチの配合割合を8質量%とした配合である。比較品8ではメソフェーズピッチの配合割合が0.3質量%未満であるために、耐爆裂性に劣る。また、比較品9ではメソフェーズピッチの配合割合が7質量%より多い為に、流動性に劣る。
比較品10は、炭化珪素の配合割合を15質量%とした配合である。比較品10では炭化珪素の配合割合が50質量%未満であるために、耐食性に劣る。
比較品11は、炭素質原料としてカーボンブラックとピッチのみを使用した配合である。比較品11ではメソフェーズピッチ原料が無添加であるために耐爆裂性に劣る。
本発明品22は、本発明品1の配合において、ピッチAをピッチBに置換したものである。本発明品22ではピッチBの軟化点が300℃と高いために、耐酸化性が若干劣る。
比較品12は、特許文献3に開示されている金属コバルトを酸化防止剤として使用した配合である。比較品12では金属コバルトを配合しているために耐食性に劣る。ここで、特許文献3では、金属コバルトの添加は、短時間且つ低温(1000℃−3時間)での酸化防止に有効であるとされているが、本発明者らの実験では、実際の高炉主樋の使用状況に近似させたCOガス雰囲気下、高温、長時間で耐酸化性を評価しており、金属コバルトの添加により耐酸化性が悪化していた。これは、以下のような理由によるものと考えられる。即ち、金属コバルトが酸化して酸化コバルトが生成するが、この酸化コバルトとSiOガスが反応して珪酸コバルトを生成させ、そのために供試体中のSiO分圧が低下し、SiCからさらにSiOガスが発生し、その結果、SiCの酸化がより促進させるものと推測される。
比較品13は、炭素質原料としてカーボンブラックのみを使用した配合である。比較品13ではピッチ及びメソフェーズピッチを併用していないために耐酸化性及び耐爆裂性に劣る。
比較品14は、炭素質原料としてピッチのみを使用した配合である。比較品14ではカーボンブラック及びメソフェーズピッチを併用していないために耐食性及び耐爆裂性に劣る。
比較品15は、炭素質原料としてメソフェズピッチのみを使用した配合である。比較品15ではカーボンブラック及びピッチを併用していないために耐食性及び耐酸化性に劣る。
比較品16は、炭素質原料としてカーボンブラック及びピッチを使用した配合である。比較品16ではメソフェーズピッチを併用していないために耐爆裂性に劣る。
比較品17は、炭素質原料としてカーボンブラック及びメソフェーズピッチを使用した配合である。比較品17ではピッチを併用していないために耐酸化性に劣る。
比較品18は、炭素質原料としてピッチ及びメソフェーズピッチを使用した配合である。比較品18ではカーボンブラックを併用していないために耐食性に劣る。
以上のように、本発明品の優位性は明らかである。