(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
曲げ部を有するプレス成形品は、例えば、自動車車体の骨格部材(例:クロスメンバ、サイドメンバ、サイドシル、ピラー等)、及び自動車の各種の部品(例:ドアーインパクトビーム、トーコントロールリンク、サスペンションアーム等)に用いられる。このプレス成形品は、素材である鋼板にプレスによる曲げ加工が施されることによって得られる。近年、地球環境保全のために燃費の向上が求められ、更に衝突時の安全性の向上も求められる。このため、プレス成形品には、高強度鋼板を採用した薄肉化が推進されている。しかし、素材の高強度化とその加工性(特に曲げ性)は相反する関係にある。
【0003】
図1A及び
図1Bは、従来の一般的な曲げ加工方法の概要を示す断面図である。これらの図のうち、
図1Aは曲げ加工の状況を示し、
図1Bは、
図1Aに示す曲げ加工を経て製造されたプレス成形品2を示す。従来の曲げ加工方法では、プレス成形品2の曲げ部5の成形は、1工程のプレス加工によって行われる。具体的には、
図1Aに示すように、パンチ3及びダイ4を用いて鋼板1に曲げ加工が施される。これにより、
図1Bに示すように、曲げ部5を有するプレス成形品2が成形される。
【0004】
一般に、鋼板1の曲げ性は限界R/tによって評価される。ここで、Rは、割れが発生することなく曲げ加工を行える最小曲げ半径であり、tは鋼板1の板厚である。近年、上記の骨格部材の素材として、伸びが小さい引張強さが980MPa以上の高強度鋼板が用いられ始めている。また、足回り部品(例:サスペンションアーム)の素材として、引張強さが590MPa以上の高強度鋼板が用いられている。要するに、鋼板1の強度が高くなることに伴って、限界R/tが大きくなる傾向にある。そのため、プレス成形品2の曲げ部5の曲げ半径を小さく設計した場合、鋼板1が割れる。一方、プレス成形品2の曲げ部5の曲げ半径を大きく設計した場合、骨格部材や足回り部品の剛性が低下し、その衝突エネルギ吸収性能が低下する。したがって、曲げ部5を有するプレス成形品2を高強度鋼板から製造する際、限界R/tを小さくできる加工方法が強く求められている。
【0005】
図2A〜
図2Cは、特開2010−172912号公報(特許文献1)に開示された曲げ加工方法の概要を示す断面図である。これらの図のうち、
図2Aは1工程目の加工の状況を示し、
図2Bは2工程目の加工の状況を示す。
図2Cは、
図2A及び
図2Bに示す曲げ加工を経て製造されたプレス成形品7を示す。
【0006】
特許文献1の曲げ加工方法では、プレス成形品7の曲げ部8の成形は、2工程に分けられたプレス加工によって行われる。具体的には、
図2Aに示すように、1工程目のプレス加工では、パンチ9及びダイ10を用いて鋼板6に曲げ加工が施される。パンチ9及びダイ10は、プレス成形品7の曲げ部8の曲げ半径R
2よりも大きな曲げ半径R
1の形状を鋼板6に与える。これにより、
図2Bに示すように、曲げ半径R
1の曲げ部11を有する中間成形品12が成形される。
【0007】
2工程目のプレス加工では、
図2Bに示すように、パンチ13及びダイ14を用いて中間成形品12に加工が施される。パンチ13及びダイ14は、プレス成形品7の曲げ部8の曲げ半径R
2の形状を中間成形品12に与える。これにより、
図2Cに示すプレス成形品7が成形される。
【0008】
特許文献1の曲げ加工方法によれば、1工程目のプレス加工において、曲げ半径R
1が大きいため、割れが発生しない。更に、2工程目のプレス加工において、曲げ部8の外表面に生じる引張ひずみが小さくなり、割れの発生を抑制できる。
【0009】
特許文献1の曲げ加工方法では、2工程目で用いるパンチ13の先端角度θ
2は、1工程目で用いるパンチ9の先端角度θ
1と同じである。つまり、プレス成形品7の曲げ部8の内角は、中間成形品12の曲げ部11の内角と同じである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記の知見(a)〜(c)を得た。
【0027】
(a)一対の平坦部と、この一対の平坦部をつなぐ曲げ部と、を備えたプレス成形品について検討する。このプレス成形品において、曲げ部の曲げ半径はR
2(mm)であり、一対の平坦部のなす内角はθ
2(°)である。引張強さが590MPa以上の高強度鋼板を素材とし、2工程に分けられたプレス加工によってプレス成形品を製造する。1工程目のプレス加工では、金型としてパンチ及びダイを用い、鋼板におけるプレス成形品の曲げ部に対応する部分に、曲げ半径がR
1で(mm)で内角がθ
1(°)の曲げ部を有する中間成形品を成形する。2工程目のプレス加工では、金型としてパンチ及びダイを用い、中間成形品の曲げ部を曲げ半径がR
2(mm)で内角がθ
2(°)の曲げ部に成形されたプレス成形品を成形する。
【0028】
ここで、曲げ部での割れの発生を抑制するためには、曲げ部の外表面に生じる引張ひずみ(以下、「表層ひずみ」ともいう)が小さければよい。曲げ部に生じる表層ひずみの大きさには、1工程目で成形される曲げ部の周長L
1(mm)と、2工程目で成形される曲げ部の周長L
2(mm)と、の周長比「L
1/L
2」が関与する。曲げ部の周長L
1及びL
2は、曲げ部の断面における周方向の長さであり、下記の式(i)及び(ii)によって表わされる。
L
1=π×R
1×(180−θ
1)/180 …(i)
L
2=π×R
2×(180−θ
2)/180 …(ii)
【0029】
また、1工程目で成形される曲げ部の内角θ
1の補角(すなわち外角)A
1(°)は、下記の式(A)で表わされる。2工程目で成形される曲げ部の内角θ
2の補角(すなわち外角)A
2(°)は、下記の式(B)で表わされる。
A
1=180−θ
1 …(A)
A
2=180−θ
2 …(B)
【0030】
上記の式(i)、(ii)、(A)及び(B)より、曲げ部の周長比「L
1/L
2」は下記の式(iii)で表わされる。
L
1/L
2=(A
1×R
1)/(A
2×R
2) …(iii)
【0031】
したがって、曲げ部に生じる表層ひずみの大きさには、1工程目で成形される中間成形品の曲げ部の曲げ半径R
1及び内角θ
1(外角A
1)、並びに2工程目で成形されるプレス成形品の曲げ部の曲げ半径R
2及び内角θ
2(外角A
2)が、相互に関与する。
【0032】
上記の曲げ半径R
1及び内角θ
1(外角A
1)、並びに上記の曲げ半径R
2及び内角θ
2(外角A
2)が、下記の式(1)〜(3)の条件を満足すれば、1工程目のプレス加工及び2工程目のプレス加工を経ることにより、曲げ部に生じる表層ひずみの発生領域が拡大する。その結果、プレス成形品の曲げ部の表層ひずみが小さくなる。これにより、引張強さが590MPa以上の鋼板を素材として用いる場合であっても、割れの発生を抑制でき、より小さな曲げ半径の曲げ部を有するプレス成形品を製造できる。より好ましくは、上記の曲げ半径R
1及び内角θ
1(外角A
1)、並びに上記の曲げ半径R
2及び内角θ
2(外角A
2)が、下記の式(1)、(4)及び(5)の条件を満足する。
1.05<A
1/A
2 …(1)
1.0<R
1/R
2 …(2)
A
1/A
2<6.0/(R
1/R
2) …(3)
1.5<R
1/R
2 …(4)
A
1/A
2<3.5/(R
1/R
2) …(5)
【0033】
上記の式(1)は、1工程目で成形される曲げ部の外角A
1が、2工程目で成形される曲げ部の外角A
2よりも大きいことを意味する。つまり、上記の式(1)は、上記の式(A)及び(B)より、1工程目で成形される曲げ部の内角θ
1が、2工程目で成形される曲げ部の内角θ
2よりも小さいことを意味する。各内角θ
1及びθ
2(外角A
1及びA
2)の大きさは、プレス成形品の設計寸法に応じて定められる。実用的には、各内角θ
1及びθ
2の大きさは、90°〜120°の範囲内で定められる。
【0034】
上記の式(2)及び(4)は、1工程目で成形される曲げ部の曲げ半径R
1が、2工程目で成形される曲げ部の曲げ半径R
2よりも大きいことを意味する。各曲げ半径R
1及びR
2の大きさは、プレス成形品の設計寸法に応じて定められる。具体的には、以下のとおりである。
【0035】
曲げ部に割れが生じるおそれのあるR/tは0.5〜3.0である。ここで、Rは曲げ加工時の曲げ半径であり、tは、曲げ加工が施される金属板の板厚である。通常、プレス成形品の平坦部の平均板厚、すなわち素材である金属板の板厚は、薄板の場合、0.5〜3.2mm程度である。厚板の場合、その板厚は3.2〜30mm程度であり、30mm以上を超える場合もある。本実施形態では、このような各種の板厚を有する金属板の曲げ加工について、曲げ部に割れが生じるおそれのある場合を対象とする。
【0036】
つまり、板厚が例えば0.5mmの場合、プレス成形品の曲げ部の曲げ半径R、すなわち2工程目で成形される曲げ部の曲げ半径R
2は0.25〜1.5mm程度である。この場合、1工程目で成形される曲げ部の曲げ半径R
1は0.26〜8.2mm程度であり、好ましくは0.38〜5.2mm程度である。板厚が例えば1.0mmの場合、上記の曲げ半径R
2は0.5〜3.0mm程度である。この場合、上記の曲げ半径R
1は0.55〜16.0mm程度であり、好ましくは0.8〜10.0mm程度である。板厚が例えば3.2mmの場合、上記の曲げ半径R
2は1.5〜9.0mm程度である。この場合、上記の曲げ半径R
1は1.6〜49.0mm程度であり、好ましくは2.3〜31.0mm程度である。板厚が例えば30mmの場合、上記の曲げ半径R
2は15〜90mm程度である。この場合、上記の曲げ半径R
1は16〜494mm程度であり、好ましくは23〜314mm程度である。
【0037】
特に、上記の式(1)〜(3)の条件が満たされた場合、前記
図1Aに示す従来の曲げ加工方法(1工程のみのプレス加工)の場合よりも表層ひずみが小さくなる。
【0038】
更に、上記の式(1)、(4)及び(5)の条件が満たされた場合、前記
図2A及び
図2Bに示す特許文献1の曲げ加工方法(2工程に分けられたプレス加工)の場合よりも表層ひずみが小さくなる。
【0039】
要するに、プレス成形品の曲げ部の曲げ半径R
2は、金属板の板厚tに従い、曲げ部に割れが生じるおそれのあるR/tの範囲内で定められる。曲げ部に割れが生じるおそれのあるR/tは、上記のとおり0.5〜3.0である。特に、金属板の延性が高い場合、R/tの上限は2.0である。金属板の延性が更に高い場合、R/tの上限は1.0である。更に、1工程目で成形される曲げ部の曲げ半径R
1の大きさは、上記の曲げ半径R
2に基づき、上記の式(1)〜(3)の条件より定められ、より好ましくは上記の式(1)、(4)及び(5)の条件より定められる。その際、後述する
図16より、R
1/R
2は、5.5未満であることが好ましく、より好ましくは3.5未満である。
【0040】
(b)上記(a)に示す曲げ加工方法によって製造されたプレス成形品は、曲げ部及びその近傍において特有の板厚分布を有する。具体的には、断面において、曲げ部の頂部付近から遠ざかるにつれて板厚が増加し、更に、曲げ部の端付近から遠ざかるにつれて板厚が減少した後に再び増加し、更に、曲げ部の端の位置から元の板厚の1.5倍離れた位置よりも以遠で板厚が元の板厚となる。ここで、「曲げ部の頂部付近」とは、頂部から±0.1mmの範囲内の1点を意味する。「曲げ部の端付近」とは、曲げ部の端、すなわち曲げ部と平坦部との境界から±0.1mmの範囲内の1点を意味する。「元の板厚」とは、素材である鋼板の平均板厚を意味する。この「元の板厚」は、平坦部の平均板厚に相当する。
【0041】
このようなプレス成形品は三点曲げ特性及び軸圧壊特性に優れる。前記
図1Aに示す従来の曲げ加工方法では、曲げ部の板厚、特に曲げ部の頂部の板厚が過大に減少するのに対し、上記(a)に示す曲げ加工方法では、曲げ部の頂部の板厚が大きく減少することなく、曲げ部周辺の平坦部で板厚が減少するからである。例えば、プレス成形品が車両に搭載される部材である場合、衝突等によってその部材が変形する際、その部材の稜線部(曲げ部)が衝撃荷重を負担する。したがって、稜線部(曲げ部)の板厚が確保された、上記(a)に示す曲げ加工方法によるプレス成形品は、三点曲げ特性及び軸圧壊特性に優れる。
【0042】
(c)上記(a)に示す曲げ加工方法では、上記のとおり、1工程目で成形される中間成形品の曲げ部の内角θ
1が、2工程目で成形されるプレス成形品の曲げ部の内角θ
2よりも小さい。これに起因し、2工程目のプレス加工の際、中間成形品が金型上で不安定になるかもしれない。この場合、2工程目のプレス加工において、金型として、ダイ及びパンチがいずれも中間成形品を押さえるためのパッドを備えればよい。ダイが備えるパッドはダイパッドと称され、パンチが備えるパッドはインナーパッドと称される。
【0043】
本発明は上記の知見に基づいて完成されたものである。以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下では、先ず、プレス成形品について説明し、続いて、そのプレス成形品の製造に適した製造方法及び製造設備列について説明する。
【0044】
[プレス成形品]
図3A及び
図3Bは、本実施形態によるプレス成形品の一例を示す断面図である。これらの図のうち、
図3Aはプレス成形品の全体を示し、
図3Bは曲げ部及びその近傍を示す。
【0045】
本実施形態のプレス成形品20は、引張強さが590MPa以上の金属板からなる。引張強さは、780MPa以上であってもよいし、980MPa以上であってもよく、1180MPa以上であってもよい。このような引張強さを有する金属板としては、高強度鋼板が適する。ただし、金属板として、アルミニウム板、チタン板、ステンレス鋼板、マグネシウム板等を用いることもできる。金属板としては、引張強さが1180MPa以上の高強度鋼板が好ましい。
【0046】
図3Aに示すように、本実施形態のプレス成形品20は、ハット形の断面形状を有し、天板部21と、二つの縦壁部23a、23bと、二つの上側稜線部22a、22bと、二つのフランジ部25a、25bと、二つの下側稜線部24a、24bと、を備える。上側稜線部22a、22bは、天板部21と縦壁部23a、23bをつなぐ。下側稜線部24a、24bは、縦壁部23a、23bとフランジ部25a、25bをつなぐ。
【0047】
このようなプレス成形品20は、2工程に分けられたプレス加工(曲げ加工)を含む本実施形態の製造方法によって製造される。天板部21及び縦壁部23aは一対の平坦部を構成し、これらの平坦部をつなぐ上側稜線部22aは曲げ部26を構成する。同様に、天板部21及び縦壁部23bは一対の平坦部を構成し、これらの平坦部をつなぐ上側稜線部22bは曲げ部27を構成する。また、縦壁部23a及びフランジ部25aは一対の平坦部を構成し、これらの平坦部をつなぐ下側稜線部24aは曲げ部28を構成する。同様に、縦壁部23b及びフランジ部25bは一対の平坦部を構成し、これらの平坦部をつなぐ下側稜線部24bは曲げ部29を構成する。
【0048】
図3Bには、本実施形態のプレス成形品20の曲げ部26及びその近傍を代表的に示し、その輪郭を実線で示す。その他の曲げ部27〜29及びその近傍の状況は、
図3Bに示す状況と同様である。更に、
図3Bには、前記
図1Aに示す従来の曲げ加工方法によって得られたプレス成形品2の曲げ部5の輪郭を破線で示し、前記
図2A及び
図2Bに示す特許文献1の曲げ加工方法によって得られたプレス成形品7の曲げ部8の輪郭を二点鎖線で示す。
【0049】
図3Bに示すように、本実施形態のプレス成形品20は、曲げ部26及びその近傍において特有の板厚分布を有する。具体的には、曲げ部26の頂部26a付近から遠ざかるにつれて、板厚が増加する。更に、曲げ部26の端(いわゆる曲げR止り)26b付近から遠ざかるにつれて、板厚が減少した後に再び増加する。更に、曲げ部26の端26bの位置から元の板厚t
0の1.5倍離れた位置26cよりも以遠で、板厚が元の板厚t
0となる。
【0050】
このような板厚分布は、本実施形態の製造方法によって得られる。本実施形態の製造方法では、曲げ部26周辺の平坦部(例:天板部21及び縦壁部23a)で板厚を減少させ、これにより曲げ部26(例:上側稜線部22a)の板厚の減少を抑制する。例えば、このような板厚分布を有するハット形断面のプレス成形品が車両に搭載される部材である場合、衝突等によってその部材が変形する際、その部材の上側稜線部22a、22bが衝撃荷重を負担する。この場合、曲げ部26である上側稜線部22a、22bの板厚が確保されているため、その部材は三点曲げ特性及び軸圧壊特性に優れる。
【0051】
図4は、プレス成形品の断面において、曲げ部の頂部からの距離と板厚との関係の一例を示す図である。
図5は、プレス成形品の断面において、曲げ部の頂部からの距離と曲げ部の表層ひずみとの関係の一例を示す図である。
図4及び
図5において、丸印は、本実施形態の製造方法によって得られたプレス成形品20(以下、「本発明例」ともいう)を示す。三角印は、前記
図1Aに示す従来の曲げ加工方法によって得られたプレス成形品2(以下、「比較例1」ともいう)を示す。四角印は、前記
図2A及び
図2Bに示す特許文献1の曲げ加工方法によって得られたプレス成形品7(以下、「比較例2」ともいう)を示す。
【0052】
図6は、プレス成形品の断面において、曲げ部の端の位置から元の板厚の1.5倍離れた位置までにおける平坦部の板厚の平均値t
2と、曲げ部の頂部の板厚t
1と、の比「t
2/t
1」の一例を示す図である。
図6には、本発明例のプレス成形品20と、比較例1のプレス成形品2と、比較例2のプレス成形品7とを並べて示す。
【0053】
本発明例、比較例1及び比較例2のプレス成形品20、2及び7のいずれも、曲げ部26、5及び8の曲げ半径R
2が1.5mmであり、曲げ部26、5及び8の外角A
2が90°である。比較例1のプレス成形品2の曲げ部5は、1工程のみのプレス加工によって成形されたものである。
【0054】
比較例2のプレス成形品7の曲げ部8は、2工程に分けられたプレス加工によって成形されたものである。具体的には、1工程目のプレス加工によって、プレス成形品7の曲げ部8の曲げ半径R
2よりも大きい3mmの曲げ半径R
1となる曲げ部が成形され、2工程目のプレス加工によって1.5mmの曲げ半径R
2となる曲げ部8が成形された。つまり、曲げ半径比「R
1/R
2」が2.0とされた。また、1工程目で成形される曲げ部の外角A
1と、2工程目で成形される曲げ部の外角A
2とは、同じ90°にされた。つまり、外角比「A
1/A
2」が1.0とされた。要するに、比較例2のプレス成形品7は、上記の式(1)〜(5)のうち、上記の式(2)及び(4)のみ満足する条件で成形されたものである。
【0055】
本発明例のプレス成形品20の曲げ部26は、2工程に分けられたプレス加工によって成形されたものである。具体的には、1工程目のプレス加工によって、プレス成形品20の曲げ部26の曲げ半径R
2よりも大きい3mmの曲げ半径R
1となる曲げ部が成形され、2工程目のプレス加工によって1.5mmの曲げ半径R
2となる曲げ部26が成形された。つまり、曲げ半径比「R
1/R
2」が2.0とされた。また、1工程目のプレス加工によって、プレス成形品20の曲げ部26の外角A
2よりも大きい120°の外角A
1となる曲げ部が成形され、2工程目のプレス加工によって90°の外角A
2となる曲げ部26が成形された。つまり、外角比「A
1/A
2」が1.33とされた。要するに、本発明例のプレス成形品20は、上記の式(1)〜(5)のいずれも満足する条件で成形されたものである。
【0056】
図4中の三角印で示すように、比較例1では、曲げ部5の頂部の板厚が大きく減少している。これに対し、
図4中の四角印で示すように、比較例2における曲げ部8の頂部の板厚減少は、比較例1の板厚減少よりも小さい。同様に、
図4中の丸印で示すように、本発明例における曲げ部26の頂部の板厚減少は、比較例1の板厚減少よりも小さい。
【0057】
更に、本発明例のプレス成形品20における曲げ部26の頂部26aの板厚は、比較例1のプレス成形品7における曲げ部8の頂部の板厚よりも大きい。しかも、本発明例のプレス成形品20における曲げ部26周辺の平坦部で板厚が減少した領域は、比較例2のプレス成形品7における曲げ部8周辺の平坦部で板厚が減少した領域よりも広い。
【0058】
この理由は、
図5からも理解される。すなわち、本発明例のプレス成形品20の曲げ部近傍に生じる表層ひずみ(
図5中の丸印参照)は、比較例2のプレス成形品7の曲げ部近傍に生じる表層ひずみ(
図5中の四角印参照)と比較し、広範囲にわたって発生するためである。
【0059】
更に、
図6に示すように、本発明例のプレス成形品20における板厚比「t
2/t
1」は1.01未満であって、比較例1のプレス成形品2及び比較例2のプレス成形品7における板厚比「t
2/t
1」よりも小さい。つまり、本実施形態の製造方法により、曲げ部周辺の平坦部の板厚が減少する代わりに、曲げ部26の頂部26aの板厚の減少が抑制される。
【0060】
このようなプレス成形品20における板厚比「t
2/t
1」は、1.01未満であるのが好ましく、より好ましくは1.00以上1.01未満である。
【0061】
本実施形態のプレス成形品は、曲げ部の曲げ半径が例えば0〜3mmと小さい。しかも、プレス成形品は、上記した板厚分布を有する。そのため、プレス成形品は、静荷重が負荷された場合の曲げ剛性及び捩じり剛性に優れる。また、衝撃荷重が負荷された場合、曲げ部の頂部を起点とした座屈が抑制され、高い初期荷重と高い衝撃エネルギ吸収量が得られる。これにより、プレス成形品は、三点曲げ特性及び軸圧壊特性に優れる。したがって、本実施形態のプレス成形品は、例えば、自動車車体の骨格部材(例:クロスメンバ、サイドメンバ、サイドシル、ピラー等)、及び自動車の各種部品(例:ドアーインパクトビーム、トーコントロールリンク、サスペンションアーム等)に適する。
【0062】
なお、本実施形態のようにハット形断面のプレス成形品20の場合、曲げ部である上側稜線部22a、22b及び下側稜線部24a、24bは、いずれも上記した曲げ半径と板厚分布を有することが好ましい。ただし、プレス成形品としての性能を満たす限り、上側稜線部22a、22b及び下側稜線部24a、24bのうちのいずれか一方が、上記した曲げ半径と板厚分布を有しても構わない。
【0063】
また、プレス成形品は、上記したハット形断面のものに限定されない。例えば、フランジ部を有しない溝形断面のプレス成形品であってもよい。溝形断面のプレス成形品は、天板部と、二つの縦壁部と、天板部と各縦壁部をつなぐ稜線部と、を備える。この場合、天板部及び縦壁部が一対の平坦部を構成し、これらの平坦部をつなぐ稜線部が曲げ部を構成する。
【0064】
[プレス成形品の製造方法及び製造設備列]
図7A〜
図7Cは、本実施形態によるプレス成形品の製造方法の基本的概念を示す断面図である。これらの図のうち、
図7Aは1工程目の加工の状況を示し、
図7Bは2工程目の加工の状況を示す。
図7Cは、
図7A及び
図7Bに示す加工を経て製造されたプレス成形品37を示す。
【0066】
本実施形態では、プレス成形品は、2工程に分けられたプレス加工によって製造される。つまり、
図7A〜
図13Bに示すように、プレス成形品37は、1工程目の第1成形工程、及び2工程目の第2成形工程を順に経て製造される。第1成形工程では、第1プレス装置30を用いたプレス加工によって、素材である金属板35から中間成形品36が成形される。第2成形工程では、第2プレス装置40を用いたプレス加工によって、中間成形品36からプレス成形品37が成形される。このように第1プレス装置30と第2プレス装置40は、一連の製造設備列を構成する。
【0067】
図7A、
図8A、
図8B、
図10A、
図10B、
図12A及び
図12Bに示すように、第1プレス装置30は、金型として、対になる第1パンチ31と第1ダイ32を備える。更に、
図8A、
図8B、
図10A及び
図10Bに示す第1及び第2実施形態では、ダイパッド38とインナーパッド(図示省略)を備える。ダイパッド38は第1ダイ32に設けられ、インナーパッドは第1パンチ31に設けられる。ダイパッド38とインナーパッドは、第1成形工程のプレス加工の際、金属板35を押さえて位置決めする。ただし、
図12A及び
図12Bに示す第3実施形態のように、ダイパッドとインナーパッドは備えなくてもよい。
【0068】
図7B、
図9A〜
図9C、
図11A〜
図11C、
図13A及び
図13Bに示すように、第2プレス装置40は、金型として、対になる第2パンチ33及び第2ダイ34を備える。更に、
図9A〜
図9C、及び
図11A〜
図11Cに示す第1及び第2実施形態では、ダイパッド39とインナーパッド(図示省略)を備える。ダイパッド39は第2ダイ34に設けられ、インナーパッドは第2パンチ33に設けられる。ダイパッド39とインナーパッドは、第2成形工程のプレス加工の際、中間成形品36を押さえて位置決めする。ただし、
図13A〜
図13Bに示す第3実施形態のように、ダイパッドとインナーパッドは備えなくてもよい。
【0069】
図7B、
図9A〜
図9C、
図11A〜
図11C、
図13A及び
図13Bに示すように、第2プレス装置40の第2パンチ33は、プレス成形品37の曲げ部37cを成形するために肩部33aを有する。この肩部33aにつながる一対の面のなす角度は、プレス成形品37の曲げ部37cの内角θ
2と同じである。つまり、肩部33aの角度の外角は、プレス成形品37の曲げ部37cの外角A
2と同じである。また、肩部33aの半径は、プレス成形品37の曲げ部37cの曲げ半径R
2と同じである。
【0070】
一方、
図7A、
図8A、
図8B、
図10A、
図10B、
図12A及び
図12Bに示すように、第1プレス装置30の第1パンチ31は、中間成形品36の曲げ部36cを成形するために肩部31aを有する。この肩部31aにつながる一対の面のなす角度は、プレス成形品37の曲げ部37cの内角θ
2よりも小さくて、中間成形品36の曲げ部36cの内角θ
1と同じである。つまり、肩部31aの角度の外角は、プレス成形品37の曲げ部37cの外角A
2よりも大きくて、中間成形品36の曲げ部36cの外角A
1と同じである。また、肩部31aの半径は、プレス成形品37の曲げ部37cの曲げ半径R
2よりも大きくて、中間成形品36の曲げ部36cの曲げ半径R
1と同じである。
【0071】
そして、中間成形品36の曲げ部36cの曲げ半径R
1及び内角θ
1(外角A
1)、並びにプレス成形品37の曲げ部37cの曲げ半径R
2及び内角θ
2(外角A
2)が、上記の式(1)〜(3)、又は上記の式(1)、(4)及び(5)の条件を満足するように、第1パンチ31の肩部31aの半径及び角度(外角)、並びに第2パンチ33の肩部33aの半径及び角度(外角)は設定されている。
【0072】
本実施形態の製造方法では、このような第1プレス装置30と第2プレス装置40を用いてプレス成形品37が製造される。まず、
図7A、
図8A、
図10A及び
図12Aに示すように、素材準備工程にて、素材となる金属板35を準備する。この金属板35は、上記のとおり、引張強さが590MPa以上の金属板(例:高強度鋼板)である。
【0073】
第1成形工程では、
図7A、
図8A、
図8B、
図10A、
図10B、
図12A及び
図12Bに示すように、第1パンチ31及び第1ダイ32を用い、場合によっては更にダイパッド38とインナーパッドを用い、金属板35にプレス加工が施される。その際、第1パンチ31の肩部31a及び第1ダイ32によって、プレス成形品37の曲げ部37cに対応する部分に曲げ部36cが成形される。これにより、曲げ半径がR
1で内角がθ
1(外角がA
1)の曲げ部36cを有する中間成形品36が成形される。
【0074】
次に、第2成形工程では、
図7B、
図9A〜
図9C、
図11A〜
図11C、
図13A及び
図13Bに示すように、第2パンチ33及び第2ダイ34を用い、場合によっては更にダイパッド39とインナーパッドを用い、中間成形品36にプレス加工が施される。その際、第2パンチ33の肩部33a及び第2ダイ34によって、中間成形品36の曲げ部36cの部分に曲げ部37cが成形される。これにより、曲げ半径がR
2で内角がθ
2(外角がA
2)の曲げ部36cを有するプレス成形品37が成形される。
【0075】
図7B、
図9C、
図11C及び
図13Bに示すプレス成形品37は、例えば、
図3Aに示すハット形断面のプレス成形品20、又は溝形断面のプレス成形品等である。前者の場合、プレス成形品37の曲げ部37cは、例えば、プレス成形品20の上側稜線部22a、22b、及び下側稜線部24a、24bである。プレス成形品37の曲げ部37cにつながる平坦部37a、37bは、例えば、プレス成形品20の天板部21、縦壁部23a、23b、及びフランジ部25a、25bである。
【0076】
本実施形態の製造方法によれば、曲げ部37c周辺の平坦部37a、37bで板厚を減少させ、曲げ部37cの板厚の減少を抑制することができる。これにより、曲げ部37cに生じる表層ひずみの発生領域が拡大し、曲げ部の表層ひずみが小さくなる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、曲げ部での割れの発生を抑制でき、より小さな曲げ半径の曲げ部37cを有するプレス成形品37を製造できる。
【0077】
図14は、曲げ部の外角比「A
1/A
2」と曲げ部の表層ひずみとの関係を示す図である。
図14において、丸印は本発明例の製造方法による場合を示し、三角印は比較例1の製造方法による場合を示し、四角印は比較例2の製造方法による場合を示す。なお、本発明例及び比較例2の場合、1工程目のプレス加工におけるR/tは2.14であり、2工程目のプレス加工におけるR/tは1.07であった。また、比較例1の場合、1工程のみのプレス加工におけるR/tは1.07であった。
【0078】
図14に示すように、外角比「A
1/A
2」が1.05を超えると、曲げ部の表層ひずみが比較例1及び比較例2のいずれよりも小さくなることがわかる。つまり、外角比「A
1/A
2」が1.05を超える条件であれば、割れを抑制しつつ、より小さな曲げ半径の曲げ部を成形できることがわかる。この条件は、上記の式(1)を満たす条件に相当する。
【0079】
図15は、曲げ部の周長比「L
1/L
2」と曲げ部の表層ひずみとの関係を示す図である。
図15において、丸印は本発明例の製造方法による場合を示し、三角印は比較例1の製造方法による場合を示し、四角印は比較例2の製造方法による場合を示す。
【0080】
本発明例、比較例1及び比較例2のいずれの製造方法の場合も、最終的なプレス成形品の曲げ部の曲げ半径R
2は1.5mmとし、その曲げ部の外角A
2を90°とした。比較例1の製造方法では、1工程のみのプレス加工によって曲げ部を成形した。
【0081】
比較例2の製造方法では、2工程に分けられたプレス加工によって曲げ部を成形した。比較例2の場合、1工程目のプレス加工(第1成形工程)によって成形する曲げ部について、外角A
1をプレス成形品の外角A
2と同じに維持しつつ、曲げ半径R
1をプレス成形品の曲げ半径R
2よりも大きい範囲内で種々変更した。
【0082】
本発明例の製造方法では、2工程に分けられたプレス加工によって曲げ部を成形した。本発明例の場合、1工程目のプレス加工(第1成形工程)によって成形する曲げ部について、曲げ半径R
1をプレス成形品の曲げ半径R
2よりも大きい範囲内で種々変更し、更に外角A
1をプレス成形品の外角A
2よりも大きい範囲内で種々変更した。
【0083】
図15から、以下のことが示される。丸印で示す本発明例と三角印で示す比較例1とを比較したとき、周長比「L
1/L
2」が1.0を超え6.0未満であれば、曲げ部の表層ひずみが比較例1よりも小さくなることがわかる。ここで、周長比「L
1/L
2」は上記の式(iii)で表わされる。更に、丸印で示す本発明例は、いずれも曲げ半径比「R
1/R
2」が1.0を超える。したがって、上記の式(3)を満たし、更に式(2)を満たす条件であれば、比較例1よりも表層ひずみが小さくなり、割れに対して本発明例の効果があることがわかる。
【0084】
丸印で示す本発明例と四角印で示す比較例2とを比較したとき、周長比「L
1/L
2」が1.0を超え3.5未満であれば、曲げ部の表層ひずみが比較例2よりも小さくなることがわかる。ここで、周長比「L
1/L
2」は上記の式(iii)で表わされる。更に、丸印で示す本発明例のうち、表層ひずみが比較例2よりも小さいものは、曲げ半径比「R
1/R
2」が1.5を超える。したがって、上記の式(5)を満たし、更に式(3)を満たす条件であれば、比較例2よりも表層ひずみが小さくなり、割れに対して本発明例の効果があることがわかる。
【0085】
図16は、本実施形態の製造方法による成形条件をまとめた図である。
図16において、横軸は曲げ部の曲げ半径比「R
1/R
2」であり、縦軸は曲げ部の周長比「L
1/L
2」である。中間成形品の曲げ半径R
1及び外角A
1、並びにプレス成形品の曲げ半径R
2及び外角A
2が、「A
1/A
2=1.05」の直線と、「R
1/R
2=1.0」の直線と、「A
1/A
2=6.0/(R
1/R
2)」の双曲線とで囲まれる範囲に設定されれば、比較例1よりも割れが抑制される。つまり、上記の式(1)〜(3)の条件を満足すればよい。更に、中間成形品の曲げ半径R
1及び外角A
1、並びにプレス成形品の曲げ半径R
2及び外角A
2が、「A
1/A
2=1.05」の直線と、「R
1/R
2=1.5」の直線と、「A
1/A
2=3.5/(R
1/R
2)」の双曲線とで囲まれる範囲に設定されれば、比較例2よりも割れが抑制される。つまり、より好ましくは、上記の式(1)、(4)及び(5)の条件を満足すればよい。また、
図16より、R
1/R
2は、5.5未満であることが好ましく、より好ましくは3.5未満である。
【実施例】
【0086】
図3Aに示すハット形断面のプレス成形品を成形する解析を行った。この解析では汎用の構造解析ソフトLS−DYNAを用いた。比較例1として、前記
図1Aに示す従来の曲げ加工方法によって、No.1のプレス成形品を成形した。No.1の成形では、1工程のみのプレス加工におけるR/tは1.07とした。
【0087】
比較例2として、前記
図2A及び
図2Bに示す特許文献1の曲げ加工方法によって、No.2、4及び6のプレス成形品を成形した。No.2、4及び6のいずれでも、2工程目のプレス加工におけるR/tは1.07とした。1工程目のプレス加工におけるR/tは、No.2では1.42とし、No.4では2.14とし、No.6では2.85とした。
【0088】
本発明例として、本実施形態の製造方法によって、No.3、5及び7のプレス成形品を成形した。No.3、5及び7のいずれでも、2工程目のプレス加工におけるR/tは、比較例2と同様に1.07とした。1工程目のプレス加工におけるR/tは、No.3では比較例2のNo.2と同様に1.42とし、No.5では比較例2のNo.4と同様に2.14とし、No.7では比較例2のNo.6と同様に2.85とした。No.3、5及び7のいずれでも、外角比「A
1/A
2」は1.33とした。
【0089】
また、No.1〜7のいずれでも、素材である金属板として、引張強さが1180MPa級で板厚が1.4mmの高強度鋼板を用いた。その鋼板の具体的な機械特性は、下記のとおりとした。
・YP(降伏点):801MPa
・TS(引張強さ):1197MPa
・El(伸び):13.6%
【0090】
No.1〜7の各プレス成形品について、曲げ部頂部の外表面の曲げ方向(断面の周方向)における対数ひずみを求めた。結果を
図17に示す。
【0091】
図17に示すように、本発明例(No.3、5及び7)の表層ひずみは、比較例1(No.1)及び比較例2(No.2、4及び6)のいずれの表層ひずみよりも、小さくなった。したがって、本実施形態の製造方法によれば、割れを抑制しつつ、より小さな曲げ半径の曲げ部を有するプレス成形品を製造できることが明らかになった。
【0092】
その他本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることは言うまでもない。