特許第6354868号(P6354868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6354868
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】水熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/16 20060101AFI20180702BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   F28D7/16 E
   F28F3/08 311
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-4639(P2017-4639)
(22)【出願日】2017年1月13日
【審査請求日】2018年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 豊
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/203514(WO,A1)
【文献】 特開昭53−129701(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/008464(WO,A1)
【文献】 特開2011−196620(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0084120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/00− 7/02,99/00
F28D 1/00−13/00
F25B 31/00−31/02,39/00−41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体としての水が流れる第1流路(11)が複数列形成された第1層(10)と、第2流体としての冷媒が流れる第2流路(21)が複数列形成された第2層(20)と、が積層されることによって構成されており、前記第1流体と前記第2流体との熱交換を行う水熱交換器において、
前記第1流路が、前記第1及び第2層の積層方向に沿って前記第1層を見た際に、前記第1流路の配列方向に交差する方向に沿って前記第1層の一端部から他端部まで延びており、
前記第2流路が、前記積層方向に沿って前記第2層を見た際に、前記第2流路の配列方向に交差する方向に沿って前記第2層の一端部から他端部まで延びており、
前記第2流体によって前記第1流体を加熱する場合において、前記第1流路が、前記第1流体の出口近傍に位置する第1流体出口近傍部(11a)における流路断面積が前記第1流体出口近傍部よりも上流側の部分(11b)における流路断面積よりも大きくなるように形成されている、
水熱交換器(1)。
【請求項2】
前記第1流路が、前記第1流体出口近傍部における流路数が前記第1流体出口近傍部よりも上流側の部分における流路数よりも少なくなるように合流している、
請求項1に記載の水熱交換器。
【請求項3】
前記第2流体によって前記第1流体を冷却する場合において、前記第2流路が、前記第2流体の出口近傍に位置する第2流体出口近傍部(21a)における流路断面積が前記第2流体出口近傍部よりも上流側の部分(21b)における流路断面積よりも大きくなるように形成されている、
請求項1又は2に記載の水熱交換器。
【請求項4】
前記第2流路が、前記第2流体出口近傍部における流路数が前記第2流体出口近傍部よりも上流側の部分における流路数よりも少なくなるように合流している、
請求項に記載の水熱交換器。
【請求項5】
前記第2流路が、前記第2流体出口近傍部における流路数が前記第2流体出口近傍部よりも上流側の部分における流路数よりも多くなるように分岐している、
請求項に記載の水熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水熱交換器、特に、第1流体としての水が流れる第1流路が複数列形成された第1層と、第2流体としての冷媒が流れる第2流路が複数列形成された第2層と、が積層されることによって構成されており、第1流体と第2流体との熱交換を行う水熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒートポンプ式冷暖房機やヒートポンプ式給湯機等において、第1流体としての水と、第2流体としての冷媒(フロン冷媒、自然冷媒、ブライン等)との熱交換を行う水熱交換器が使用されている。このような水熱交換器として、特許文献1(特開2010−117102号公報)に示すように、第1流体が流れる第1流路が複数列形成された第1層と、第2流体が流れる第2流路が複数列形成された第2層と、が積層されることによって構成されたものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の水熱交換器では、第1流路や第2流路の流路断面積を小さくすることによって高性能化及びコンパクト化を図ることができる。
【0004】
しかし、第1流路や第2流路の流路断面積を小さくし過ぎると、圧力損失の増大や流路の詰まり等の懸念がある。このため、圧力損失の増大や流路の詰まり等を抑えることができる流路形状の工夫等が必要になってきている。
【0005】
本発明の課題は、第1流体としての水が流れる第1流路が複数列形成された第1層と、第2流体としての冷媒が流れる第2流路が複数列形成された第2層と、が積層されることによって構成されており、第1流体と第2流体との熱交換を行う水熱交換器において、流路形状の工夫によって、圧力損失の増大や流路の詰まりを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点にかかる水熱交換器は、第1流体としての水が流れる第1流路が複数列形成された第1層と、第2流体としての冷媒が流れる第2流路が複数列形成された第2層と、が積層されることによって構成されており、第1流体と第2流体との熱交換を行う。第1流路は、第1及び第2層の積層方向に沿って第1層を見た際に、第1流路の配列方向に交差する方向に沿って第1層の一端部から他端部まで延びている。第2流路は、積層方向に沿って第2層を見た際に、第2流路の配列方向に交差する方向に沿って第2層の一端部から他端部まで延びている。そして、ここでは、第2流体によって第1流体を加熱する場合に、第1流路が、第1流体の出口近傍に位置する第1流体出口近傍部おける流路断面積が第1流体出口近傍部よりも上流側の部分における流路断面積よりも大きくなるように形成されている。
【0007】
ここでは、上記のように、第1流路について、第1流体出口近傍部おける流路断面積をその上流側の部分よりも大きくしているため、第1流路における第1流体の流速低下による熱伝達率の低下を第1流体出口近傍部だけに限定しつつ、第1流体が加熱される際に析出するスケールを第1流体出口近傍部に詰まりにくくすることができる。このように、ここでは、熱伝達率の低下を最小限に抑えつつ、水熱交換器における第1流路の詰まりを抑えることができる。
【0008】
第2の観点にかかる水熱交換器は、第1の観点にかかる水熱交換器において、第1流路が、第1流体出口近傍部における流路数が第1流体出口近傍部よりも上流側の部分における流路数よりも少なくなるように合流している。
【0009】
ここでは、上記のように、第1流体出口近傍部における流路数がその上流側の部分よりも少なくなるように第1流路を合流させることによって、第1流体出口近傍部おける流路断面積をその上流側の部分よりも大きくすることができる。
【0010】
第3の観点にかかる水熱交換器は、第1流体としての水が流れる第1流路が複数列形成された第1層と、第2流体としての冷媒が流れる第2流路が複数列形成された第2層と、が積層されることによって構成されており、第1流体と第2流体との熱交換を行う。第1流路は、第1及び第2層の積層方向に沿って第1層を見た際に、第1流路の配列方向に交差する方向に沿って第1層の一端部から他端部まで延びている。第2流路は、積層方向に沿って第2層を見た際に、第2流路の配列方向に交差する方向に沿って第2層の一端部から他端部まで延びている。そして、ここでは、第2流体によって第1流体を冷却する場合に、第2流路が、第2流体の出口近傍に位置する第2流体出口近傍部おける流路断面積が第2流体出口近傍部よりも上流側の部分における流路断面積よりも大きくなるように形成されている。
【0011】
ここでは、上記のように、第2流路について、第2流体出口近傍部おける流路断面積をその上流側の部分よりも大きくしているため、第2流路における第2流体の流速低下による熱伝達率の低下を第2流体出口近傍部だけに限定しつつ、蒸発に伴って増加するガス成分を多く含む第2流体を第2流体出口近傍部にスムーズに流すことができる。このように、ここでは、熱伝達率の低下を最小限に抑えつつ、水熱交換器における第2流路の圧力損失の増大を抑えることができる。
【0012】
第4の観点にかかる水熱交換器は、第3の観点にかかる水熱交換器において、第2流路が、第2流体出口近傍部における流路数が第2流体出口近傍部よりも上流側の部分における流路数よりも少なくなるように合流している。
【0013】
ここでは、上記のように、第2流体出口近傍部における流路数がその上流側の部分よりも少なくなるように合流させることによって、第2流体出口近傍部おける流路断面積をその上流側の部分よりも大きくすることができる。
【0014】
第5の観点にかかる水熱交換器は、第3の観点にかかる水熱交換器において、第2流路が、第2流体出口近傍部における流路数が第2流体出口近傍部よりも上流側の部分における流路数よりも多くなるように分岐している。
【0015】
ここでは、上記のように、第2流体出口近傍部における流路数がその上流側の部分よりも多くなるように分岐させることによって、第2流体出口近傍部おける流路断面積をその上流側の部分よりも大きくすることができる。しかも、これにより、ここでは、第2流体の入口近傍における流路数が少なくなるため、第2流体の第2流路における分配性能を良好に保つことができる。
【0016】
第6の観点にかかる水熱交換器は、第1又は第2の観点にかかる水熱交換器において、第2流体によって第1流体を冷却する場合に、第2流路が、第2流体の出口近傍に位置する第2流体出口近傍部おける流路断面積が第2流体出口近傍部よりも上流側の部分における流路断面積よりも大きくなるように形成されている。
【0017】
ここでは、上記のように、第2流路について、第2流体出口近傍部おける流路断面積をその上流側の部分よりも大きくしているため、第2流路における第2流体の流速低下による熱伝達率の低下を第2流体出口近傍部だけに限定しつつ、蒸発に伴って増加するガス成分を多く含む第2流体を第2流体出口近傍部にスムーズに流すことができる。このように、ここでは、熱伝達率の低下を最小限に抑えつつ、水熱交換器における第2流路の圧力損失の増大を抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、第1流路における第1流体の流速低下による熱伝達率の低下を第1流体出口近傍部だけに限定しつつ、第1流体が加熱される際に析出するスケールが第1流体出口近傍部に詰まりにくくすることができるため、熱伝達率の低下を最小限に抑えつつ、水熱交換器における第1流路の詰まりを抑えることができる。また、本発明によれば、第2流路における第2流体の流速低下による熱伝達率の低下を第2流体出口近傍部だけに限定しつつ、蒸発に伴って増加するガス成分を多く含む第2流体を第2流体出口近傍部にスムーズに流すことができるため、熱伝達率の低下を最小限に抑えつつ、水熱交換器における第2流路の圧力損失の増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態にかかる水熱交換器の外観を示す図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる水熱交換器の第1流路を示す図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる水熱交換器の第2流路を示す図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる水熱交換器の第1流路及び第2流路の積層状態を示す斜視図である。
図5】本発明の変形例1にかかる水熱交換器の第1流路を示す図(図2に対応)である。
図6】本発明の変形例1にかかる水熱交換器の第2流路を示す図(図3に対応)である。
図7】本発明の変形例2にかかる水熱交換器の外観を示す図である。
図8】本発明の変形例2にかかる水熱交換器の第2流路を示す図(図3に対応)である。
図9】本発明の変形例3にかかる水熱交換器の第2流路を示す図(図3に対応)である。
図10】本発明の変形例3にかかる水熱交換器の第2流路を示す図(図3に対応)である。
図11】本発明の変形例4にかかる水熱交換器の第1流路を示す図(図2に対応)である。
図12】本発明の変形例5にかかる水熱交換器の第2流路を示す図(図3に対応)である。
図13】本発明の変形例5にかかる水熱交換器の第2流路を示す図(図3に対応)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる水熱交換器の実施形態及びその変形例について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる水熱交換器の具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0021】
(1)構成及び特徴
図1〜4は、本発明の一実施形態にかかる水熱交換器1を示す図である。
【0022】
水熱交換器1は、ヒートポンプ式冷暖房機やヒートポンプ式給湯機等において、第1流体としての水と、第2流体としての冷媒との熱交換を行う熱交換器である。以下の説明では、図1〜3に示された水熱交換器1の紙面手前側の面を基準として、「上」、「下」、「左」、「右」、「縦」、「横」などの方向を示す表現を使用するが、これらの表現は、説明の便宜上の表現であって、水熱交換器1及びその構成部分の実際の配置を意味するものではない。
【0023】
水熱交換器1は、主として、第1流体と第2流体との熱交換を行う熱交換部3が設けられたケーシング2と、第1流体の出入口となる第1出入口管4a、4bと、第2流体の出入口となる第2出入口管5a、5bと、を有している。
【0024】
熱交換部3は、第1流体が流れる第1流路11が複数列形成された第1層10と、第2流体が流れる第2流路21が複数列形成された第2層20と、が積層されることによって構成されている。ここで、第1層10と第2層20とが積層される方向(ここでは、図1〜3の紙面手前側から紙面奥側の方向)を積層方向とする。また、複数の第1流路11が並ぶ方向(ここでは、図2の紙面左右方向)を第1流路11の配列方向とし、複数の第2流路21が並ぶ方向(ここでは、図3の紙面上下方向)を第2流路21の配列方向とする。そして、第1流路11は、第1及び第2層10、20の積層方向に沿って第1層10を見た際に、第1流路11の配列方向に交差する方向(ここでは、図2の紙面上下方向、縦方向)に沿って第1層10の一端部(図2における第1層10の上端部)から他端部(図2における第1層10の下端部)まで延びている。また、第2流路21は、第1及び第2層10、20の積層方向に沿って第2層20を見た際に、第2流路21の配列方向に交差する方向(ここでは、図3の紙面左右方向、横方向)に沿って第2層20の一端部(図3-における第2層20の左端部)から他端部(図3における第2層20の右端部)まで延びている。このように、ここでは、第1流路11と第2流路20とが直交流をなすように配置されている。
【0025】
そして、ここでは、第1層10及び第2層20の積層構造を有する熱交換部3は、第1流路11をなす溝が片面に形成された第1板材12と、第2流路21をなす溝が片面に形成された第2板材22と、が交互に積層されることによって構成されている。第1及び第2板材12、22は、金属製の素材で形成されている。第1流路11や第2流路21をなす溝は、例えば、第1及び第2板材12、22に機械加工やエッチング加工を施すことによって形成されている。そして、このような溝加工がなされた第1及び第2板材12、22を所定数積層した後に、例えば、拡散接合等の接合処理を用いて第1及び第2板材12、22間を接合することによって、第1層10及び第2層20の積層構造を有する熱交換部3が得られている。尚、ここでは、第1及び第2板材12、22の両方の片面に流路11、21をなす溝が形成されているが、これに限定されるものではなく、第1及び第2板材12、22のいずれか一方の両面に流路11、21をなす溝が形成されていてもよいし、第1及び第2板材12、22の両方の両面に流路11、21をなす溝が形成されていてもよい。
【0026】
第1出入口管4a、4bは、ここでは、ケーシング2の上部及び下部に設けられている。ケーシング2には、その上部に第1流路11の上端部間を合流させる空間が形成された第1ヘッダ部6と、その下部に第1流路11の下端部間を合流させる空間が形成された第1ヘッダ部7と、が設けられている。そして、第1出入口管4aは、第1ヘッダ部6を介して第1流路11の上端部に連通しており、第1出入口管4bは、第1ヘッダ部7を介して第1流路11の下端部に連通している。第2出入口管5a、5bは、ここでは、ケーシング2の左部及び右部に設けられている。ケーシング2には、その左部に第2流路21の左端部間を合流させる空間が形成された第2ヘッダ部8と、その右部に第2流路21の右端部間を合流させる空間が形成された第2ヘッダ部9と、が設けられている。そして、第2出入口管5aは、第2ヘッダ部8を介して第2流路21の左端部に連通しており、第2出入口管5bは、第2ヘッダ部9を介して第2流路21の右端部に連通している。
【0027】
このような構成を有する水熱交換器1では、例えば、第2流体によって第1流体を加熱する場合に、第1出入口管4bを第1流体の入口とし、第1出入口管4aを第1流体の出口とし、第2出入口管5bを第2流体の入口とし、第2出入口管5aを第2流体の出口とすることができる。そして、この場合には、水熱交換器1は、第1流体が第1流路11を下から上に向かって流れるとともに加熱され、第2流体が第2流路21を右から左に向かって流れるとともに冷却される熱交換器として機能することになる。また、水熱交換器1では、例えば、第2流体によって第1流体を冷却する場合に、第1出入口管4bを第1流体の入口とし、第1出入口管4aを第1流体の出口とし、第2出入口管5aを第2流体の入口とし、第2出入口管5bを第2流体の出口とすることができる。そして、この場合には、水熱交換器1は、第1流体が第1流路11を下から上に向かって流れるとともに冷却され、第2流体が第2流路21を左から右に向かって流れるとともに加熱される熱交換器として機能することになる。
【0028】
そして、ここでは、第2流体によって第1流体としての水を加熱する場合に、第1流路11について、第1流体の出口近傍に位置する第1流体出口近傍部11aおける流路断面積S11aが、第1流体出口近傍部11aよりも上流側の部分11bにおける流路断面積S11bよりも大きくなるように形成している。具体的には、第1流体出口近傍部11aにおける第1流路11の流路幅W11aを第1流体出口近傍部11aよりも上流側の部分11bにおける流路幅W11bよりも大きくなるように形成することによって、流路断面積S11aを流路断面積S11bよりも大きくなるようにしている。また、第1流体出口近傍部11aとは、第1流路11の入口側(ここでは、第1出入口管4b側の端部)から出口側(ここでは、第1出入口管4a側の端部)に至るまでの流路長のうち出口側寄りの20〜50%の流路長を有する部分をいう。
【0029】
また、ここでは、第2流体としての冷媒によって第1流体を冷却する場合に、第2流路21について、第2流体の出口近傍に位置する第2流体出口近傍部21aおける流路断面積S21aが、第2流体出口近傍部21aよりも上流側の部分21bにおける流路断面積S21bよりも大きくなるように形成している。具体的には、第2流体出口近傍部21aにおける第2流路21の流路幅W21aを第2流体出口近傍部21aよりも上流側の部分21bにおける流路幅W21bよりも大きくなるように形成することによって、流路断面積S21aを流路断面積S21bよりも大きくなるようにしている。また、第2流体出口近傍部21aとは、第2流路21の入口側(ここでは、第2出入口管5a側の端部)から出口側(ここでは、第2出入口管5b側の端部)に至るまでの流路長のうち出口側寄りの20〜50%の流路長を有する部分をいう。
【0030】
このような水熱交換器1では、上記のように、第2流体によって第1流体としての水を加熱する場合に、第1流路11について、第1流体出口近傍部11aおける流路断面積S11aをその上流側の部分11bよりも大きくしているため、第1流路11における第1流体の流速低下による熱伝達率の低下を第1流体出口近傍部11aだけに限定しつつ、第1流体が加熱される際に析出するスケールを第1流体出口近傍部11aに詰まりにくくすることができる。このように、ここでは、熱伝達率の低下を最小限に抑えつつ、水熱交換器1における第1流路11の詰まりを抑えることができる。
【0031】
また、このような水熱交換器1では、上記のように、第2流体としての冷媒によって第1流体を冷却する場合に、第2流路21について、第2流体出口近傍部21aおける流路断面積S21aをその上流側の部分21bよりも大きくしているため、第2流路21における第2流体の流速低下による熱伝達率の低下を第2流体出口近傍部21aだけに限定しつつ、蒸発に伴って増加するガス成分を多く含む第2流体を第2流体出口近傍部21aにスムーズに流すことができる。このように、ここでは、熱伝達率の低下を最小限に抑えつつ、水熱交換器1における第2流路21の圧力損失の増大を抑えることができる。
【0032】
(2)変形例1
上記実施形態の水熱交換器1では、第2流体によって第1流体としての水を加熱する場合に、第1流路11について、第1流体出口近傍部11aおける流路断面積S11aをその上流側の部分11bよりも大きくしている。しかも、上記実施形態の水熱交換器1では、第2流体としての冷媒によって第1流体を冷却する場合に、第2流路21について、第2流体出口近傍部21aおける流路断面積S21aをその上流側の部分21bよりも大きくしている。しかし、これに限定されるものではなく、第1流路11又は第2流路21だけに、流体出口近傍部おける流路断面積をその上流側の部分よりも大きくする構成を適用してもよい。
【0033】
例えば、第2流体としての冷媒によって第1流体を冷却する場合に、第2流路21については、図3に示すように、第2流体出口近傍部21aおける流路断面積S21aをその上流側の部分21bよりも大きくし、第1流路11については、図5に示すように、流路断面積(ここでは、流路幅)が第1流路11の入口側から出口側にわたって変化しない構成を適用してもよい。
【0034】
また、例えば、第2流体によって第1流体としての水を加熱する場合に、第1流路11については、図2に示すように、第1流体出口近傍部11aおける流路断面積S11aをその上流側の部分11bよりも大きくし、第2流路21については、図6に示すように、流路断面積(ここでは、流路幅)が第2流路21の入口側から出口側にわたって変化しない構成を適用してもよい。
【0035】
本変形例の構成においても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0036】
(3)変形例2
上記実施形態及び変形例1の水熱交換器1では、第1流路11と第2流路21とが直交流をなすように配置されているが、これに限定されるものではない。
【0037】
例えば、横方向に沿って第2層20の一端部(図3における第2層20の左端部)から他端部(図3における第2層20の右端部)まで延びていた第2流路21を、図7、8に示すように、縦方向に沿って第2層20の一端部(図8における第2層20の下端部)から他端部(図8における第2層20の上端部)まで延びるようにして、第1流路11と第2流路21とが対向流(又は並行流)をなすように配置してもよい。この場合には、第2出入口管5a、5b及び第2ヘッダ8、9をケーシング2の下部及び上部に設けることになる。この構成では、第2流体によって第1流体を加熱する場合に、第1流体が第1流路11を下から上に向かって流れるとともに加熱され、第2流体が第2流路21を上から下に向かって流れるとともに冷却される熱交換器として機能することになる。また、この構成では、第2流体によって第1流体を冷却する場合に、第1流体が第1流路11を下から上に向かって流れるとともに冷却され、第2流体が第2流路21を下から上に向かって流れるとともに加熱される熱交換器として機能することになる。
【0038】
本変形例の構成においても、上記実施形態及び変形例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
(4)変形例3
上記実施形態及び変形例1の水熱交換器1では、第1流路11と第2流路21とが直交流をなすように配置されているが、これに限定されるものではない。
【0040】
例えば、第2流路21を複数の流路群に区分するとともに、これらの流路群が直列に接続されるようにして、第1流路11と第2流路21とが直交対向流(又は直交並行流)をなすように配置してもよい。具体的には、図9に示す構成では、第2流路21を第2流路21の配列方向(ここでは、図9の紙面上下方向)に3つの流路群21A、21B、21Cに区分している。そして、第2ヘッダ9に仕切部材を設ける等によって、第2ヘッダ9内の空間を、第2出入口管5b及び流路群21Aを構成する第2流路21の右端部に連通する空間9aと、流路群21B、21Cを構成する第2流路21の右端部に連通する空間9bと、に区分している。また、第2ヘッダ8に仕切部材を設ける等によって、第2ヘッダ8内の空間を、第2出入口管5a及び流路群21Cを構成する第2流路21の左端部に連通する空間8aと、流路群21A、21Bを構成する第2流路21の左端部に連通する空間8bと、に区分している。これにより、第2流路21の流路群21A、21B、21Cが、第2ヘッダ8、9を介して直列に接続され、第1流路11と第2流路21とが直交対向流(又は直交並行流)をなすように配置されている。この構成では、第2流体によって第1流体を加熱する場合に、第1流体が第1流路11を下から上に向かって流れるとともに加熱され、第2流体が第2流路21を流路群21A、21B、21Cの順に左右に折り返しながら上から下に向かって流れるとともに冷却される熱交換器として機能することになる。また、この構成では、第2流体によって第1流体を冷却する場合に、第1流体が第1流路11を下から上に向かって流れるとともに冷却され、第2流体が第2流路21を流路群21C、21B、21Aの順に左右に折り返しながら下から上に向かって流れるとともに加熱される熱交換器として機能することになる。そして、この場合には、第2流体の出口近傍に位置する流路群21Aを第2流体出口近傍部21aとし、流路群21B、21Cを第2流体出口近傍部21aよりも上流側の部分21bとして、流路群21Aを構成する流路群21Aを構成する第2流路21の流路幅W21aを流路群21B、21Cを構成する第2流路21の流路幅W21bよりも大きくなるように形成している。これにより、第2流体としての冷媒によって第1流体を冷却する場合に、第2流体出口近傍部21aおける流路断面積S21aが、第2流体出口近傍部21aよりも上流側の部分21bにおける流路断面積S21bよりも大きくなるように形成することができる。
【0041】
尚、図9に示す構成では、第2ヘッダ8、9内の空間を、流路群21A、21B、21Cが直列に接続されるように空間8a、8b、9a、9bに区分しているが、これに限定されるものではない。例えば、図10に示すように、第2流路21の左端部や右端部に空間8b、9bと同じ機能を有する接続流路29a、29bを形成してもよい。すなわち、流路群21A、21Bを構成する第2流路21の左端部間を連通させる接続流路29a、及び、流路群21B、21Cを構成する第2流路21の右端部間を連通させる接続流路29bを第2層20に形成するのである。ここでは、第2板材22に接続流路29a、29bをなす溝を形成することができる。この場合には、第2ヘッダ8を図9の空間8aに対応する空間だけを有するものにし、第2ヘッダ9を図9の空間9aに対応する空間だけを有するものにすることができる。
【0042】
本変形例の構成においても、上記実施形態及び変形例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
(5)変形例4
上記実施形態及び変形例1〜3の水熱交換器1では、第2流体によって第1流体としての水を加熱する場合に、第1流路11について、第1流体の出口近傍に位置する第1流体出口近傍部11aにおける第1流路11の流路幅W11aを第1流体出口近傍部11aよりも上流側の部分11bにおける流路幅W11bよりも大きくなるように形成している。そして、これにより、第2流体によって第1流体としての水を加熱する場合に、第1流体出口近傍部11aおける流路断面積S11aが、第1流体出口近傍部11aよりも上流側の部分11bにおける流路断面積S11bよりも大きくなるようにし、スケール析出による第1流路11の出口近傍の部分の詰まりを抑えるようにしている。
【0044】
しかし、第2流体によって第1流体としての水を加熱する場合に、第1流路11について、第1流体出口近傍部11aおける流路断面積S11aが、第1流体出口近傍部11aよりも上流側の部分11bにおける流路断面積S11bよりも大きくなるように形成するための構成は、これに限定されるものではない。
【0045】
具体的には、第2流体によって第1流体としての水を加熱する場合に、第1流路11について、第1流体出口近傍部11aにおける流路数が、第1流体出口近傍部11aよりも上流側の部分における流路数よりも少なくなるように第1流路11を合流させるようにしてもよい。例えば、図11に示すように、第1流路11の配列方向に隣り合う2本の第1流路11を第1流体出口近傍部11aにて合流させて1本にすることで、合流後の第1流体出口近傍部11aにおける流路幅W11aを、合流前の第1流体出口近傍部11aよりも上流側の部分11bにおける流路幅W11bの合計よりも大きくなるように形成してもよい。これにより、第2流体によって第1流体としての水を加熱する場合に、第1流路11について、合流後の第1流体出口近傍部11aにおける流路断面積S11aが、合流前の第1流体出口近傍部11aよりも上流側の部分11bにおける流路断面積S11bの合計よりも大きくすることができる。
【0046】
(6)変形例5
上記実施形態及び変形例1〜4の水熱交換器1では、第2流体としての冷媒によって第1流体を冷却する場合に、第2流路21について、第2流体の出口近傍に位置する第2流体出口近傍部21aにおける第2流路21の流路幅W21aを第2流体出口近傍部21aよりも上流側の部分21bにおける流路幅W21bよりも大きくなるように形成している。そして、これにより、第2流体としての冷媒によって第1流体を冷却する場合に、第2流体出口近傍部21aおける流路断面積S21aが、第2流体出口近傍部21aよりも上流側の部分21bにおける流路断面積S21bよりも大きくなるようにし、第2流体の蒸発に伴って第2流路21を流れるガス成分が多くなることによる第2流路21の圧力損失の増大を抑えるようにしている。
【0047】
しかし、第2流体としての冷媒によって第1流体を冷却する場合に、第2流路21について、第2流体出口近傍部21aおける流路断面積S21aが、第2流体出口近傍部21aよりも上流側の部分21bにおける流路断面積S21bよりも大きくなるように形成するための構成は、これに限定されるものではない。
【0048】
具体的には、第2流体としての冷媒によって第1流体を冷却する場合に、第2流路21について、第2流体出口近傍部21aにおける流路数が、第2流体出口近傍部21aよりも上流側の部分における流路数よりも少なくなるように第2流路21を合流させるようにしてもよい。例えば、図12に示すように、第2流路21の配列方向に隣り合う2本の第2流路21を第2流体出口近傍部21aにて合流させて1本にすることで、合流後の第2流体出口近傍部21aにおける流路幅W21aを、合流前の第2流体出口近傍部21aよりも上流側の部分21bにおける流路幅W21bの合計よりも大きくなるように形成してもよい。これにより、合流後の第2流体出口近傍部21aにおける流路断面積S21aが、合流前の第2流体出口近傍部21aよりも上流側の部分21bにおける流路断面積S21bの合計よりも大きくすることができる。
【0049】
また、図12に示される第2流路21を第2流体出口近傍部21aにおいて合流させることによって流路断面積S21aを流路断面積S21bの合計よりも大きくする構成とは逆に、第2流体出口近傍部21aにおける流路数を第2流体出口近傍部21aよりも上流側の部分21bにおける流路数よりも多くなるように分岐させることによって流路断面積S21aの合計を流路断面積S21bの合計よりも大きくしてもよい。例えば、上記変形例3のような第2流路21を複数の流路群21A、21B、21Cに区分するとともにこれらの流路群21A、21B、21Cが直列に接続された構成において、図13に示すように、第2流体の出口近傍に位置する流路群21Aを第2流体出口近傍部21aとし、流路群21B、21Cを第2流体出口近傍部21aよりも上流側の部分21bとして、流路群21Aを構成する第2流路21の流路数N21aを流路群21B、21Cにおける流路数N21bよりも多くなるようにすればよい。尚、ここでは、各第2流路21の流路幅W21a、W21b(流路断面積S21a、S21b)は同じであり、流路数を変えることによって流路群21Aにおける流路断面積S21aと流路群21B、21Cにおける流路断面積S21bの合計を変えるようにしている。このように、第2流体出口近傍部21aおける流路数N21aをその上流側の部分21bにおける流路数N21aを多くした構成では、水熱交換器1における第2流路21の圧力損失の増大を抑えるだけでなく、第2流体の入口近傍における流路数が少なくなることで、第2流体の第2流路21における分配性能を良好に保つことができる。特に、流路群21Aにおける流路数N21aをそれより上流側の流路群21B、21Cにおける流路数N21bよりも多くするだけでなく、流路群21A、21B、21Cの順、すなわち、第2流体の入口近傍に近づくにつれて、流路数が少なくすると、第2流体の第2流路21における分配性能に有効に寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、第1流体としての水が流れる第1流路が複数列形成された第1層と、第2流体としての冷媒が流れる第2流路が複数列形成された第2層と、が積層されることによって構成されており、第1流体と第2流体との熱交換を行う水熱交換器に対して、広く適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 水熱交換器
10 第1層
11 第1流路
11a 第1流体出口近傍部
11b 第1流体出口近傍部よりも上流側の部分
20 第2層
21 第2流路
21a 第2流体出口近傍部
21b 第2流体出口近傍部よりも上流側の部分
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2010−117102号公報
【要約】
【課題】第1流体としての水が流れる第1流路が複数列形成された第1層と、第2流体としての冷媒が流れる第2流路が複数列形成された第2層と、が積層されることによって構成されており、第1流体と第2流体との熱交換を行う水熱交換器において、流路形状の工夫によって、圧力損失の増大や流路の詰まりを抑える。
【解決手段】第1流路(11)は、第2流体によって第1流体を加熱する場合に、第1流体の出口近傍に位置する第1流体出口近傍部(11a)おける流路断面積がその上流側の部分(11b)における流路断面積よりも大きくなるように形成されている。また、第2流路(21)は、第2流体によって第1流体を冷却する場合に、第2流体の出口近傍に位置する第2流体出口近傍部(21a)おける流路断面積がその上流側の部分(21b)における流路断面積よりも大きくなるように形成されている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13