【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成28年度国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/未来を創る新たなネットワーク基盤技術に関する研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記経路生成用パケット受信手段は、前記無線通信装置側パケット送受信手段を介して、経路生成用パケットを受信する際に、前記無線通信装置側パケット送受信手段が検知した電波の受信電力が最低受信電力未満だった場合、当該経路生成用パケットを廃棄し、
前記経路生成用パケット管理手段は、前記移動認識手段が検知した移動状況に応じて、前記最低受信電力を変更する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信装置。
前記経路生成用パケット受信手段が初めて受信した経路生成用パケットの送信元を親ノードとして認識し、自装置で発生した送信データを、前記無線通信装置側パケット送受信手段を介して前記親ノードに送信するデータ送信手段をさらに有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の無線通信装置。
前記経路生成用パケット送信手段は、前記データ受信手段で前回データ受信を行ってから所定時間以上データ受信していない前記無線通信装置が発生した際に、経路生成用パケットを送信することを特徴とする請求項10に記載の無線基地局装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による無線通信装置、無線通信プログラム、無線通信システム、及び無線通信方法の一実施形態を、図面を参照しながら詳述する。以下では、本発明の無線通信装置を移動局に適用した例について説明する。
【0015】
(A−1)実施形態の構成
図2は、この実施形態の無線通信システム1の全体構成の例について示したブロック図である。
【0016】
図1に示すように、無線通信システム1には、ネットワークNを構成する1つの基地局10と、8個の移動局20(20−1〜20−8)が配置されている。なお、無線通信システム1のネットワークNにおいて、基地局10及び移動局20の数については限定されないものである。以下では、無線通信システム1のネットワークNを構成する移動局20(20−1〜20−8)及び基地局10等を、総称して「ノード」とも呼ぶものとする。また、以下では、各ノード(基地局10及び各移動局20)には、それぞれネットワークN上で固有のアドレス(例えば、MACアドレス、ショートアドレス、IPアドレス等)が割り当てられているものとして説明する。
【0017】
以下では、ネットワークNは、基地局10を中心とした無線マルチホップネットワークであるものとして説明する。また、以下では、無線通信システム1において、基地局10と移動局20との間での通信は行われるが、移動局20同士の通信(移動局20同士のユニキャストの通信)は行われないものとして説明する。仮に、移動局20同士の通信が必要な場合は、基地局10を中継して通信を行うようにしてもよい。すなわち、各移動局20は、原則として、基地局10を宛先としたユニキャストのデータパケットの送信は行うが、他の移動局20を宛先としたユニキャストのデータパケットの送信は行わないものとする。
【0018】
基地局10は、固定接地された無線通信装置であり、ネットワークN(無線通信システム1)全体を管理する機能を担っている。
【0019】
移動局20(20−1〜20−8)は、それぞれ移動体(例えば、人間が所持する端末や車両等)に付けられた無線通信装置である。各移動局20は、適宜移動を行う。各移動局20は、それぞれ直接通信可能な他のノード(移動局20又は基地局10)と無線通信(リンク)が可能である。
【0020】
図2では、直接無線通信可能なノード間のリンクを点線で図示している。
【0021】
例えば、
図2では、基地局10は、移動局20−1、20−2、20−3と直接無線通信可能であることを示している。
【0022】
基地局10は「指定されたタイミング」(所定のタイミング)で、全ノード(ネットワークNで直接または間接的に接続可能な全ノード)へ向けてフラッディングを行うものとする。フラッディングとは、パケット(経路生成用パケットとしてのフラッディングパケット)を受信したノードが、一度だけ同じパケット(例えば、同じデータ(例えば、シーケンシャル番号等の識別情報)が設定されたフラッディングパケット)を転送(再度送信)することで、マルチホップネットワークにおいて全てのノードに情報を送ることを意味する。
【0023】
以下では、移動局20は、あるフラッディングパケットを初めて「受信」した時の送信元(直接無線通信によりパケット受信した際の送信元)を親ノードとして認識するものとする。
【0024】
そして、基地局10が、フラッディングによりパケット送信(フラッディングパケットの送信)を行うと、当該パケットを受信した移動局20が、当該パケットを転送(再送信)することにより、ネットワークN内のすべてのノード(移動局20)に、当該パケットが到達することになる。このとき、各移動局20は、当該フラッディングパケットを初めて受信した際の送信元(直接無線通信によりパケット受信した際の送信元)を親ノード(基地局10と通信する際の親ノード)として認識することになる。以上のようにネットワークNでは、基地局10を起点としたフラッディングにより、各移動局20と基地局10との間の転送経路ができあがることになる。各移動局20は基地局10にデータを送る際には親ノード宛に当該データを挿入したパケット(以下、「データパケット」とも呼ぶ)を送信する。そして、第1の移動局20が第2の移動局20から送信されたデータパケットを受信した場合、第1の移動局は、親ノードに受信したデータパケットの転送を行う。これを繰り返すことで、ネットワークNでは、全ての移動局20から送信されたデータパケットが基地局10に到達する。
【0025】
ところで、従来のマルチホップネットワークにおいて、フラッディングを行う際には、フラッディングパケットを受信した各ノードで、パケットを受信してから送信を行うまでの間に遅延を挿入することが一般的に行われる。これは複数のノードが同一のパケットを受信するため、遅延の挿入がない場合には、複数のノードが同時に送信を行うこととなり、パケットの衝突が発生することになるためである。そのため、従来のマルチホップネットワークにおいて、フラッディングを行い際には、フラッディングパケットを受信した各ノードはこの衝突を避けるために遅延時間を挿入する。
【0026】
この実施形態において、上述の通り、各移動局20は、最も早くパケットを受信した送信元を親ノードとして認識するため、パケットを受信してから送信するまでの遅延時間の挿入方法によって形成されるネットワークの形状(トポロジ)が変化する。具体的には、遅延を小さくして早く送信する移動局20は親ノードとして選択される可能性が高くなる。逆に遅延を大きくし、遅く送信する移動局20は他に親ノードがいない限られた移動局20の親ノードとなるだけで、選択される可能性が小さくなる。
【0027】
以上を鑑みると、ネットワークNにおいて、フラッディングを行う場合、フラッディングパケットを受信したノードが、当該フラッディングパケットの転送を行うまでの遅延時間(以下、「パケット転送遅延時間」と呼ぶ)によって大きく特性が変化する。
【0028】
ところで、ネットワークNの各移動局20において、フラッディングパケットの受信とは、当該パケットを受信した全ての場合を指すわけではなく、所定の条件(以下、「パケット受信判定条件」と呼ぶ)(詳細については後述)を満たした受信を行ったときに限られるものとする。すなわち、ネットワークNの各移動局20は、受信判定条件を満たさない状況でフラッディングパケットを受信しても、当該フラッディングパケットを破棄(無視)する(転送等の次のアクションを行わない)ものとする。言い換えると、パケット受信判定条件は、各移動局20においてフラッディングパケットを転送するか否かの判定条件であるともいえる。そして、ネットワークNの各移動局20は、パケット受信判定条件を満たした状況でフラッディングパケットの受信を行うと、当該フラッディングパケットを取得して、転送処理(再送信処理)を行う。
【0029】
したがって、ネットワークNにおいて、フラッディングを行う場合、フラッディングパケットを受信した移動局20が、当該フラッディングパケットを受信したと判断するためのパケット受信判定条件によっても大きく特性が変化することになる。
【0030】
次に、移動局20におけるパケット受信判定条件、及びパケット転送遅延時間の詳細について説明する。
【0031】
ネットワークNにおいて、基地局10を起点としたフラッディングを行う場合、各移動局20で、フラッディングパケットの受信状況を元に、将来の通信可否を判定するものとする。そこで、各移動局20では、フラッディングパケットのデータが読取可能な状態であっても、将来において通信が不可能になる可能性が高いと想定される場合には、受信失敗とみなして(正常に受信できなかったと判定して)当該フラッディングパケットを廃棄(無視)する処理を行う。なお、移動局20は移動を前提としており、移動によって移動局20間及び基地局10と移動局20との間の通信リンクが切断される可能性があり、将来リンクが利用可能か否かを判定するのはより困難になる。
【0032】
また、ネットワークNにおいて、基地局10を起点としたフラッディングにより転送経路(各移動局20から基地局10への転送経路)が形成されたタイミングと、移動局20がデータを送信するタイミングとの時間差が大きくなると、当該転送経路が使えなくなる場合がある。原因としては、通信状態(例えば、ノイズ源の発生等による電波障害)の変動などがあるが、移動局20の移動量が大きい場合には、移動局20の移動に伴う通信経路の状況が変化すること(例えば、移動局20の移動により転送経路間の距離が遠くなること)が最大の原因となる。
【0033】
そこで、この実施形態では、各移動局20は、直近の所定の時間内(例えば、一定時間内)の移動量(以下、「M」とも表す)等の移動状況を認識する手段(以下、「移動認識手段」と呼ぶ)を備えるものとする。移動認識手段は、例えば、GPSや加速度センサ等の種々のデバイスを用いることができる。
【0034】
そして、この実施形態では、移動量Mが所定の閾値(以下、「閾値Th」と表す)以上の移動局20は、将来においても移動量Mが大きいと推定されるため、以下の内1つないし複数を組み合わせた動作を行うものとする。
【0035】
第1に、移動局20は、検知した移動量Mに応じて、パケット受信判定条件を変更する。具体的には、移動局20では、フラッディングパケットを受信したと判定(フラッディングパケットの転送を行うと判定)するためのパケット受信判定条件として、フラッディングパケットを受信した際の最低限の受信電力(受信信号)の強度(以下、「最低受信電力P」と呼ぶ)を設定するものとする。そして、移動局20は、検知した移動量Mに応じて、最低受信電力Pを変更する。具体的には、移動局20は、移動量Mが閾値Th以上の場合、最低受信電力Pを通常時よりも大きく設定する。例えば、各移動局20において、通常時(移動量Mが閾値Th未満の場合;M<Thの場合)の最低受信電力Pをp1とした場合、移動量Mが閾値Th以上の場合の最低受信電力Pをp1に加算値α1を加算したp2(p2=p1+α1)に設定するものとする。なお、加算値α1は、定数としてもよいし、当該移動局20の移動量Mの大きさに応じて変更(例えば、移動量Mが大きいほど加算値α1も大きな値に変更)するようにしてもよい。
【0036】
第2に移動局20は、検知した移動量Mに応じて、パケット転送遅延時間(以下、「D」とも表す)を変更する。具体的には、移動局20は、移動量Mが閾値Th以上の場合、パケット転送遅延時間Dを通常時よりも大きく設定する。例えば、各移動局20において、通常時(移動量Mが閾値Th未満の場合;M<Thの場合)のパケット転送遅延時間Dをd1とした場合、移動量Mが閾値Th以上の場合のパケット転送遅延時間Dを、d1に加算値α2を加算したd2(d2=d1+α2)に設定するものとする。なお、加算値α2は、定数としてもよいし、当該移動局20の移動量Mの大きさに応じて変更(例えば、移動量Mが大きいほど加算値α2も大きな値に変更)するようにしてもよい。
【0037】
以上のように、移動局20は、移動量Mに応じて、パケット受信判定条件(最低受信電力P)及び又は、パケット転送遅延時間Dを変更する。
【0038】
これにより、移動量Mの多い移動局20は、周辺の他の移動局20から親ノードとして選択される可能性が低くなり、周辺の他の移動局20が親ノードとして選択される可能性が高くなる。移動局20では、移動量Mが閾値Th以上の場合、パケット受信判定条件(最低受信電力P)とパケット転送遅延時間Dの両方を変更するようにしてもよいし、何れか一方のみを変更するようにしてもよい。
【0039】
この実施形態では、上述の通り、基地局10はある一定間隔でフラッディングパケットを送信するものとする。
【0040】
次に、各移動局20の内部構成の例について
図1を用いて説明する。
【0041】
この実施形態では、移動局20−1〜20−8は全て、
図2を用いて説明可能な構成であるものとして説明する。
【0042】
図2に示すように各移動局20は、送信手段201、受信手段202、タイマ203、フラッディングパケット生成手段204、データ生成部205、送信先選択手段206、受信判定手段207、フラッディング管理手段208、データ受信手段209、及び移動計測手段210を有している。
【0043】
送信手段201は、無線信号の電波を送出するものである。また、受信手段202は、他のノードから送出された無線信号の電波を受信するものである。移動局20では、送信手段201及び受信手段202により無線信号を送受信する無線インタフェース(パケット送受信手段)が構成されている。
【0044】
移動計測手段210は、自装置の移動状況を認識する処理(以下、「移動認識処理」ともよぶ)を行う移動認識手段である。移動計測手段210は、移動認識処理結果を、フラッディング管理手段208に供給する。この実施形態では、移動計測手段210は、移動認識処理として、一定時間(直近の一定時間)における自装置の移動量M(移動距離)を認識するものとする。移動計測手段210は、例えば、GPSや加速度センサ等の種々のデバイスを用いることができる。
【0045】
データ受信手段209は、受信手段202を介して、他のノードから送信されたデータパケットのデータを受信する機能を担っている。データ受信手段209は、受信処理が終わったデータパケットを送信先選択手段206に供給する。
【0046】
データ生成部205は、他のノード(基地局10)に送信するためのデータを生成する処理を行う。データ生成部205において、送信するデータを送信する契機については限定されないものであり、例えば、図示しない上位層(例えば、図示しないアプリケーション等)で発生したデータを送信するデータとして処理する。
【0047】
送信先選択手段206は、データ生成部205が生成したデータ、又はデータ受信手段209が受信したデータの転送先を選択し、送信手段201を介して選択した転送先に送信する処理を行う。送信先選択手段206は、受信判定手段207でフラッディングパケットを受信したと判定した際(同様のフラッディングパケットを受信した場合には、当該フラッディングパケットについて初めて受信した際)に当該フラッディングパケットの送信元を親ノードとして設定する。そして、送信先選択手段206は、例えば、基地局10向けに送信するデータパケットについては、フラッディングパケットに基づいて決定した親ノードを転送先(直接の転送先)として選択する。
【0048】
フラッディングパケット生成手段204は、フラッディングパケットを生成する処理を行う。フラッディングパケット生成手段204は、受信判定手段207で受信したと判定されたフラッディングパケットについて、転送(再送信)するフラッディングパケットを生成し、タイマ203の制御に応じたタイミング(タイマ203がタイムアウトしたタイミング)で送信手段201を介して送信する。
【0049】
タイマ203は、他のノードからフラッディングパケットを受信してから、当該フラッディングパケットを転送(再送信)するまでの遅延(パケット転送遅延時間D)を管理するためのタイマである。タイマ203は、フラッディング管理手段208の制御に応じて、フラッディング管理手段208にセットされたパケット転送遅延時間Dの計時を行う。そして、タイマ203は、パケット転送遅延時間Dの計時が完了したタイミング(タイムアウトしたタイミング)で、フラッディングパケット生成手段204を制御してフラッディングパケットの転送処理(再送信処理)を実行させる。
【0050】
受信判定手段207は、受信手段202で受信したフラッディングパケットを受信した状況について所定のパケット受信判定条件を満たすか判定する。具体的には、受信判定手段207は、受信手段202で当該フラッディングパケットを受信した際の受信電力が最低受信電力P以上であるか否かを判定し、受信電力が最低受信電力P以上の場合は当該フラッディングパケットを受信した(当該フラッディングパケットを転送する)と判定し、受信電力が最低受信電力P未満の場合は当該フラッディングパケットを破棄(当該フラッディングパケットを転送しない)と判断して処理する。
【0051】
フラッディング管理手段208は、受信判定手段207で受信した(転送する)と判定したフラッディングパケットの転送を管理する処理を行う。フラッディング管理手段208は、移動計測手段210の検知結果に応じて、フラッディングパケットの転送処理を管理する。
【0052】
具体的には、フラッディング管理手段208は、移動計測手段210が検知した移動量Mに応じて、タイマ203に設定するパケット転送遅延時間D(タイムアウト時間)、及び受信判定手段207に設定する最低受信電力Pを変更する。フラッディング管理手段208は、移動量Mが閾値Th未満の場合、最低受信電力Pをp1設定し、移動量Mが閾値Th以上の場合最低受信電力Pをp2(p2=p1+α1)に設定する。また、フラッディング管理手段208は、移動量Mが閾値Th未満の場合、パケット転送遅延時間Dにd1を設定し、移動量Mが閾値Th以上の場合、パケット転送遅延時間Dにd2(d2=d1+α2)を設定する。
【0053】
なお、フラッディング管理手段208は、パケット転送遅延時間D又は最低受信電力Pの一方を管理するようにしてもよい。なお、各移動局20において、フラッディング管理手段208がパケット転送遅延時間Dを変更する場合には、フラッディングパケットの受信判定処理を省略(受信判定手段207を省略)するようにしてもよい。
【0054】
次に、基地局10の内部構成の例について
図3を用いて説明する。
【0055】
基地局10は、送信手段11、受信手段12、及び制御部13を有している。
【0056】
送信手段11は、無線信号の電波を送出するものである。また、受信手段12は、他のノードから送出された無線信号の電波を受信するものである。基地局10では、送信手段11及び受信手段12により無線信号を送受信する無線インタフェース(パケット送受信手段)が構成されている。
【0057】
制御部13は、基地局10全体を制御するものであり、データ送信手段131、フラッディングパケット送信手段132、及びデータ受信手段133を有している。
【0058】
データ送信手段131は、送信手段11を介して他のノード(移動局20)にデータパケットを送信するものである。基地局10において、データパケットを送信する契機については限定されないものであり、例えば、図示しない上位層(例えば、図示しないアプリケーション等)で発生したデータをデータパケットとして送信する処理を行う。
【0059】
フラッディングパケット送信手段132は、フラッディングパケットを生成し、送信手段11を介して当該フラッディングパケットを送出するものである。フラッディングパケット送信手段132がフラッディングパケットを送信するタイミングについては限定されないものである。フラッディングパケット送信手段132は、例えば、一定期間ごとに不フラッディングパケットを送信するようにしてもよい。
【0060】
データ受信手段133は、受信手段12を介して他のノード(移動局20)から送信されたデータパケットを受信するものである。
【0061】
(A−2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する無線通信システム1の動作を説明する。
【0062】
無線通信システム1のネットワークNにおいて、基地局10を起点としたフラッディング(フラッディングパケットの送出)が行われた場合の動作について
図4〜
図7を用いて説明する。
図4〜
図7は、無線通信システム1のネットワークNにおいて、基地局10を起点としたフラッディングが行われる際の各移動局20の動作について示した説明図である。
図4〜
図7では、直接無線通信可能な2つのノード間を点線で結んでいる。また、
図4〜
図7では、各移動局20で、フラッディングパケットを転送した後に設定される転送経路とその方向(親ノードへの方向)を矢印付きの実線(太線)で示している。
図4〜
図7での各矢印は、各移動局20から親ノードの方向に向かって引かれている。
【0063】
まず、
図4〜
図6の例について説明する。
【0064】
図4〜
図6の例では、ネットワークNにおいて、特に移動量Mが閾値Th以上となる移動局20は存在しなかった場合の例について示している。
【0065】
図4〜
図7の例では、移動局20−1、20−2、20−3については、移動量Mは閾値Th以上ではないものとする。したがって、
図4〜
図7では、移動局20−1、20−2、20−3は、最低受信電力P及びパケット転送遅延時間Dは加算されていないものとする。
【0066】
図4は基地局10がフラッディングパケットを送出した後の状態を示している。基地局10が送出したフラッディングパケットは、基地局10と直接無線通信可能な移動局20−1、20−2、20−3により受信される。したがって、この時点で移動局20−1、20−2、20−3では、親ノードとして基地局10(基地局10のアドレス)が設定されることになる。
【0067】
そして、ここでは、移動局20−1、20−2、20−3の順序でフラッディングパケットの転送を行ったものとする。
【0068】
図5は、
図4の状態から移動局20−1が、基地局10からのフラッディングパケット受信に基づいて、フラッディングパケットを転送した後の状態を示している。
【0069】
移動局20−1と直接無線通信可能なノードは、移動局20−2、20−4、20−5であるので、移動局20−1から送出されたフラッディングパケットは移動局20−2、20−4、20−5で読み取り可能である。しかし、移動局20−2は既に基地局10から同じフラッディングパケットを受信しているので、
図5に示すように、親ノードの登録を更新することはしない。一方、移動局20−4、20−5は、当該フラッディングパケットを初めて受信するので、それぞれ移動局20−1を親ノードとして登録することになる。
【0070】
図6は、
図5の状態から移動局20−2、移動局20−3の順序でフラッディングパケットを転送した後の状態を示している。
【0071】
図6では、移動局20−2が先にフラッディングパケットを転送したため、移動局20−6、20−7が、移動局20−2を親ノードとして登録している。また、
図6では、移動局20−3が後にフラッディングパケットを転送したため、移動局20−8のみが移動局20−3を親ノードとして登録している。
【0072】
以上のように、
図4〜
図6の例では、ネットワークN上の全ての移動局20にフラッディングパケットが受信され、それぞれの親ノード(データパケットの転送経路)が設定される。
【0074】
図7では、移動局20−2が、移動局20−1、20−3と比較して移動量が少ない場合におけるフラッディングの結果(各移動局20で設定される転送経路(親ノード))を示している。
図7の例では、移動局20−1〜20−3の中で、移動局20−1、20−3の移動量Mが閾値Thを超えており、移動局20−1、20−3では、最低受信電力P及び又はパケット転送遅延時間Dが多く設定されている。したがって、
図7の例では、移動局20−1、20−3はフラッディングパケットを受信しても転送を行わないか、移動局20−2よりも遅くフラッディングパケットの転送を行うことになる。
【0075】
したがって、
図7の例では、移動局20−1、20−3よりも移動局20−2が先にフラッディングパケットを転送することになる。したがって、
図7の例では、移動局20−4〜20−8が、全て移動局20−2を親ノードとして選択することになる。
【0076】
仮に上述の
図6の状態において、移動局20−1、20−3が遠方に移動した場合、移動局20−4、20−5、20−8については、親ノードと通信ができない状態が発生する。しかし、
図7のような状態であれば、移動局20−1、20−3が遠方に移動したとしても、移動局20−1、20−3に子ノードは存在しないため他の移動局20の通信に影響はない。
【0077】
(A−3)実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0078】
この実施形態の無線通信システム1において、各移動局20は、移動状況(移動量M)を考慮して、パケット受信判定条件(最低受信電力P)及び又はパケット転送遅延時間Dを変更する。これにより、将来移動する蓋然性の高い移動局20について親ノードとして選択される可能性を下げて、通信失敗(各移動局において通信できない親ノードへのパケット送信)を抑制し、ネットワークN全体の通信効率を上げることができる。
【0079】
言い換えると、無線通信システム1のネットワークNでは、各移動局20の移動量Mを考慮して転送経路を構成することで、ネットワークN全体の通信成功率を上げることができる。
【0080】
(B)他の実施形態
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0081】
(B−1)上記の実施形態では、基地局10のフラッディングパケット送信手段132はある一定間隔でフラッディングパケットを送信するものとして説明したが、フラッディングパケット送信手段132はフラッディングパケットを送信する間隔を動的に変更するようにしてもよい。例えば、フラッディングパケット送信手段132は、例えば、それぞれの移動局20から、所定のデータ(例えば、移動量M)を、受信手段12を介して収集(受信)し、その収集状況(受信状況)に応じて、フラッディングパケットを送信する間隔を動的に変更するようにしてもよい。この場合、フラッディングパケット送信手段132は、各移動局20(データ生成部205)に定期的に移動量Mを基地局10に通知する設定がなされていることが必要となる。このとき、基地局10のフラッディングパケット送信手段132は、例えば、所定時間以上移動量Mが通知されない(収集できない)移動局20が発生したタイミングで、フラッディングパケットを送信するようにしてもよい。
【0082】
なお、フラッディングパケット送信手段132が各移動局20から受信するデータ(フラッディングパケットの送信間隔制御に用いるデータ)としては、移動量M以外のデータ(例えば、所定の定形データ)を利用するようにしてもよい。
【0083】
また、例えば、フラッディングパケット送信手段132は、移動量Mが前回と比較して所定以上変動した移動局20が検出された場合に、フラッディングパケットを送信するようにしてもよい。
【解決手段】 本発明は、複数の無線通信装置と、無線基地局装置とを備える無線通信システムに関する。そして、本発明の無線基地局装置は、経路生成用パケットを送信する手段を有する。そして、無線通信装置は、経路生成用パケットを受信する手段と、経路生成用パケットを取得した場合、当該経路生成用パケットに基づいて自装置の通信経路を決定する手段と、経路生成用パケットを取得した場合当該経路生成用パケットを転送する手段と、自装置の移動状況を検知する手段と、検知した移動状況に応じて、自装置における経路生成用パケットの転送を管理する手段とを有する。