特許第6354884号(P6354884)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6354884シアネートエステル樹脂組成物およびプリプレグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6354884
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】シアネートエステル樹脂組成物およびプリプレグ
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/04 20060101AFI20180702BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20180702BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20180702BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20180702BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C08L79/04 Z
   C08K3/36
   C08L51/04
   C08L21/00
   C08J5/24CEZ
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-46905(P2017-46905)
(22)【出願日】2017年3月13日
【審査請求日】2018年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】岩田 充宏
(72)【発明者】
【氏名】上村 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友裕
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−210993(JP,A)
【文献】 特開2013−064136(JP,A)
【文献】 特開2009−013254(JP,A)
【文献】 特開昭62−146927(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/060166(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
C08K 3/00 − 13/08
C08G 73/00 − 73/26
C08J 5/04 − 5/10
5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シアネートエステル樹脂、
(B)硬化剤もしくは硬化促進剤、
(C)シリカ微粒子、および
(D)コアシェルゴム粒子を含有し、
前記(A)シアネートエステル樹脂100質量部に対し、前記(C)シリカ微粒子を1〜5質量部および前記(D)コアシェルゴム粒子を2〜10質量部含み、
前記(C)シリカ微粒子と前記(D)コアシェルゴム粒子の質量比が(C)/(D)として1/1〜1/5である、
ことを特徴とするシアネートエステル樹脂組成物。
【請求項2】
平行板にて温度70℃、周波数1Hzで粘弾性測定した際、歪1%のtanδが1未満であり、かつ歪100%のtanδが1以上であることを特徴とする請求項1に記載のシアネートエステル樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシアネートエステル樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアネートエステル樹脂組成物およびプリプレグに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂をマトリックスとした繊維強化複合材料が知られている。例えば特許文献1には、マトリックスとしてのエポキシ樹脂と、粘度調整のための熱可塑性樹脂と、フィラーと、硬化剤とを含有するエポキシ樹脂組成物が開示され、また該組成物と強化繊維とを複合させて得られるプリプレグが開示されている。このようなプリプレグは、軽量性と優れた力学特性から航空機や車両などの構造材料、コンクリート構造物の補強、ゴルフクラブ、テニスラケット、釣り竿などのスポーツ分野などをはじめ幅広い分野で使用されている。
【0003】
かかる用途に用いられるプリプレグに要求される特性の一つとして、耐熱性が挙げられる。そのため、エポキシ樹脂よりも耐熱性の高い樹脂をマトリックスとした繊維強化複合材料が種々検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−99094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エポキシ樹脂の代替となりうる樹脂としては、シアネートエステル樹脂が挙げられる。シアネートエステル樹脂は、エポキシ樹脂よりも耐熱性に優れ、例えば300℃付近までの熱に耐えることができる。
しかし、シアネートエステル樹脂は、粘度調整のための熱可塑性樹脂が溶解しにくく、樹脂組成物の粘度調整が困難であり、室温では高い粘度を有するものの硬化加熱時に低粘度化してしまうという問題点がある。この問題点によって、プリプレグを加熱硬化する時に樹脂組成物が強化繊維から流れ出てしまい、得られた繊維強化複合材料に樹脂欠損が生じ、厚みが不均一となる。硬化時の樹脂流れを抑制するためには、樹脂組成物の粘度をより高くする必要があるが、この場合、室温時の樹脂組成物の粘度が高くなりすぎるため、プリプレグ成型時の作業性が悪化してしまう。
【0006】
したがって本発明の目的は、粘度調整のための熱可塑性樹脂を添加せずとも、加熱硬化時の樹脂フローを抑制でき、樹脂欠損や厚みの不均一を解消し、かつ優れた作業性を有するシアネートエステル樹脂組成物およびこれを用いたプリプレグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、シアネートエステル樹脂に硬化剤もしくは硬化促進剤、シリカ微粒子およびコアシェルゴム粒子を添加し、シアネートエステル樹脂に対するシリカ微粒子およびコアシェルゴム粒子の配合割合を特定化することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0008】
1.(A)シアネートエステル樹脂、(B)硬化剤もしくは硬化促進剤、(C)シリカ微粒子、および(D)コアシェルゴム粒子を含有し、前記(A)シアネートエステル樹脂100質量部に対し、前記(C)シリカ微粒子を1〜5質量部および前記(D)コアシェルゴム粒子を2〜10質量部含み、前記(C)シリカ微粒子と前記(D)コアシェルゴム粒子の質量比が(C)/(D)として1/1〜1/5である、ことを特徴とするシアネートエステル樹脂組成物。
2.平行板にて温度70℃、周波数1Hzで粘弾性測定した際、歪1%のtanδが1未満であり、かつ歪み100%のtanδが1以上であることを特徴とする前記1に記載のシアネートエステル樹脂組成物。
3.前記1または2に記載のシアネートエステル樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、(A)シアネートエステル樹脂に、(B)硬化剤もしくは硬化促進剤、(C)シリカ微粒子および(D)コアシェルゴム粒子を添加し、(A)シアネートエステル樹脂に対する(C)シリカ微粒子および(D)コアシェルゴム粒子の配合割合を特定化しているので、粘度調整のための熱可塑性樹脂を添加せずとも、加熱硬化時の樹脂フローを抑制でき、樹脂欠損や厚みの不均一を解消し、かつ優れた作業性を有するシアネートエステル樹脂組成物を提供することができる。
また、平行板にて温度70℃、周波数1Hzで粘弾性測定した際、歪1%のtanδが1未満であり、かつ歪み100%のtanδが1以上である本発明の前記シアネートエステル樹脂組成物は、加熱硬化時の樹脂フローの抑制性、樹脂欠損や厚みの不均一の解消、並びに作業性にとくに優れたものとなる。
また、前記シアネートエステル樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグは、耐熱性に優れ、また、樹脂欠損や厚みの不均一も抑制されていることから、機械的強度にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0011】
(A)シアネートエステル樹脂
本発明で使用される(A)シアネートエステル樹脂はとくに制限されない。一般的にシアネートエステル樹脂は、下記式で示される。
R−(O−C≡N)n
(式中、Rは芳香環を有する2価以上の有機基を表し、nは2以上の整数を表す。)
このようなシアネートエステル樹脂としては、ノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールE型、ビスフェノールF型のシアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ノボラック型のシアネートエステル樹脂が好ましい。
ノボラック型シアネート樹脂としては、市販されているものを利用でき、例えばロンザジャパン株式会社製、プリマセットPT−30、プリマセットPT−60等が挙げられる。
【0012】
(B)硬化剤もしくは硬化促進剤
本発明で使用される(B)硬化剤もしくは硬化促進剤としては、シアネートエステル樹脂の熱硬化を促進できるものであればとくに制限されないが、例えば、コバルト、銅等の金属錯体、アルコール類、酸、アミン、塩基等が挙げられる。
【0013】
(C)シリカ微粒子
本発明で使用される(C)シリカ微粒子としては、親水性のシリカ微粒子が好ましく、沈殿法シリカ、ゲル法シリカ、熱分解法シリカ、溶融シリカのような非晶質合成シリカ;結晶合成シリカ;天然シリカ等が挙げられる。
(C)シリカ微粒子の平均一次粒子径は、5nm〜100nmが好ましい。
【0014】
(D)コアシェルゴム粒子
本発明で使用される(D)コアシェルゴム粒子は公知であり、例えば架橋されたゴム状ポリマーを主成分とする粒子状コア成分の表面に、コア成分とは異種のシェル成分ポリマーをグラフト重合した粒子であることができる。
コア成分としては、例えばブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、NBR、SBR、IR、EPR等が挙げられる。
シェル成分としては、例えばアクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸エステル系モノマー、芳香族系ビニルモノマー等から選択されたモノマーを重合させた重合体が挙げられる。
(D)コアシェルゴム粒子の平均粒子径は、例えば10nm〜10μmであり、100nm〜500nmが好ましい。
【0015】
(配合割合)
本発明のシアネートエステル樹脂組成物は、(A)シアネートエステル樹脂100質量部に対し、(C)シリカ微粒子を1〜5質量部および(D)コアシェルゴム粒子を2〜10質量部含み、(C)シリカ微粒子と(D)コアシェルゴム粒子の質量比が(C)/(D)として1/1〜1/5であることが必要である。
(C)シリカ微粒子の前記配合割合が1質量部未満または(D)コアシェルゴム粒子の前記配合割合が2質量部未満では、樹脂フローの抑制が不十分であり、本発明の効果を奏することができない。
(C)シリカ微粒子の前記配合割合が5質量部を超える、または(D)コアシェルゴム粒子の前記配合割合が10質量部を超えると、樹脂組成物の粘度が上昇し、作業性が悪化し、また、硬化物の機械的特性(主に弾性率)が低下する。
(C)シリカ微粒子と(D)コアシェルゴム粒子の質量比が(C)/(D)として1/1を超える場合、すなわち(C)成分に対して(D)成分の配合量が少ない場合、樹脂フローの抑制が不十分であり、本発明の効果を奏することができない。
(C)シリカ微粒子と(D)コアシェルゴム粒子の質量比が(C)/(D)として1/5未満の場合、すなわち(C)成分に対して(D)成分の配合量が多すぎる場合、樹脂フロー抑制効果が高くなりすぎるため、プリプレグ成型時の作業性が悪化する。
【0016】
本発明において、(A)シアネートエステル樹脂100質量部に対する(C)シリカ微粒子の配合量は、2〜4質量部がさらに好ましく、(D)コアシェルゴム粒子の配合量は、4〜8質量部がさらに好ましく、(C)シリカ微粒子と(D)コアシェルゴム粒子の質量比は、(C)/(D)として1/1.5〜1/4がさらに好ましい。
【0017】
本発明のシアネートエステル樹脂組成物は、平行板にて温度70℃、周波数1Hzで粘弾性測定した際、歪1%のtanδが1未満であり、かつ歪み100%のtanδが1以上であることにより、加熱硬化時の樹脂フローが抑制され、樹脂欠損や厚みの不均一が生じにくくなり、作業性もとくに優れたものとなる。なお、粘弾性の測定は、ティー・エー・インスツルメント社製、商品名ARES等を用いることにより測定できる。また該粘弾性は、(A)シアネートエステル樹脂に対する(C)シリカ微粒子および(D)コアシェルゴム粒子の配合量を上記のように適切に設定することにより達成できる。
【0018】
本発明のシアネートエステル樹脂組成物は、必要に応じてその他の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、老化防止剤、溶剤、難燃剤、反応遅延剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0019】
本発明のプリプレグは、前記本発明のシアネートエステル樹脂組成物と強化繊維とからなる。
具体的には、本発明のプリプレグは、本発明のシアネートエステル樹脂組成物を強化繊維に含浸させることにより得られるものである。
本発明のプリプレグに使用される強化繊維は、特に制限されず、例えば、従来公知のものが挙げられる。なかでも、強度の観点から、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
繊維は、その形態について特に制限されず、ロービング、ロービングを一方向に引きそろえたもの、織物、不織布、編物、チュールなどが挙げられる。
【0020】
本発明のプリプレグは、その製造方法について特に制限されない。例えば、溶剤を使用するウェット法、無溶剤法であるホットメルト法が挙げられる。溶剤の使用量は、乾燥時間を短縮しうるという観点から、シアネートエステル樹脂組成物の固形分100質量部に対して、80〜200質量部であるのが好ましい。
【0021】
本発明のプリプレグにおいて、シアネートエステル樹脂組成物の含有量は、得られる繊維強化複合材料の機械的性質の観点から、プリプレグ中の30〜60質量%であるのが好ましい。
【0022】
本発明のプリプレグは、その用途について特に制限されない。本発明のプリプレグを硬化させることによって、例えば、従来公知の繊維強化複合材料を得ることができる。具体的には、例えば、フェアリング、フラップ、リーディングエッジ、フロアパネル、プロペラ、胴体などの航空機部品;オートバイフレーム、カウル、フェンダー等の二輪車部品;ドア、ボンネット、テールゲート、サイドフェンダー、側面パネル、フェンダー、エネルギー吸収部材、トランクリッド、ハードップ、サイドミラーカバー、スポイラー、ディフューザー、スキーキャリアー、エンジンシリンダーカバー、エンジンフード、シャシー、エアースポイラー、プロペラシャフト等の自動車部品;先頭車両ノーズ、ルーフ、サイドパネル、ドア、台車カバー、側スカートなどの車輌用外板;荷物棚、座席等の鉄道車輌部品;インテリア、ウイングトラックにおけるウイングのインナーパネル、アウターパネル、ルーフ、フロアー等、自動車や単車に装着するサイドスカートなどのエアロパーツ;ノートパソコン、携帯電話等の筐体用途;X線カセッテ、天板等のメディカル用途;フラットスピーカーパネル、スピーカーコーン等の音響製品用途;ゴルフヘッド、フェースプレート、スノーボード、サーフィンボード、プロテクター等のスポーツ用品用途;板バネ、風車ブレード、エレベーター(籠パネル、ドア)のような一般産業用途が挙げられる。
【0023】
また、本発明のプリプレグと他の部材(例えば、ハニカムコア)とを積層して繊維強化複合材料を作製することができる。本発明のプリプレグと他の部材とを積層して作製することができる繊維強化複合材料としては、例えば、ハニカムサンドイッチパネルが挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0025】
下記例では、以下の材料を使用した。
(A)シアネートエステル樹脂:ロンザジャパン株式会社製、プリマセットPT−30、プリマセットPT−60(ノボラック型のシアネートエステル樹脂)
(B)硬化剤または硬化促進剤:三菱化学株式会社製DICY−15(ジシアンジアミド)
(C)シリカ微粒子:キャボット社製CAB-O-SIL M5(親水性ヒュームドシリカ)
(D)コアシェルゴム粒子:株式会社カネカ製MX−154(エポキシ樹脂/コアシェルゴム粒子マスターバッチ;ブタジエン系コアシェルゴム粒子を40質量%含む)
【0026】
下記表1に示す配合割合(質量部)にしたがい、各材料をニーダーを用いて70℃で混練し、各種シアネートエステル樹脂組成物を調製した。
得られた各種シアネートエステル樹脂組成物に対し、次の測定を行った。
【0027】
粘弾性:ティー・エー・インスツルメント社製、ARESを用い、平行板にて温度70℃、周波数1Hzの条件下、歪1%または100%でのtanδを測定した。
【0028】
プリプレグの成型
シアネートエステル樹脂組成物フィルム(樹脂重量104g/m2)をガラス繊維織物(繊維目付量156g/m2)に含浸させてプリプレグを成型した。成型したプリプレグ中のシアネートエステル樹脂組成物は、40質量%である。
【0029】
樹脂フロー:100mm×100mmに裁断したプリプレグを4枚積層し、温度180℃、圧力3kgf/cm2で30分プレスした後、繊維からはみ出した樹脂硬化物重量を測定し、下式により樹脂フローを算出した。
樹脂フロー(%) = (はみ出した樹脂硬化物重量)/ (プレス前の積層物重量)×100
【0030】
作業性:シアネートエステル樹脂組成物フィルム作製時およびガラス繊維織物への含浸時における作業性を、下記評価基準により評価した。
○:フィルム作製が良好かつガラス繊維織物への含浸性良好
×:フィルム作製が困難のため、プリプレグの成型ができない
【0031】
寸法安定性:300mm×300mmに裁断したプリプレグを10枚積層し、オートクレーブにて180℃にて2時間硬化させて得られた繊維強化複合材料の厚さを測定し、最大厚さと最小厚さの差が最大厚さの5%以下である場合、寸法安定性は良好と判断した。
結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1の結果から、(A)シアネートエステル樹脂に、(B)硬化剤もしくは硬化促進剤、(C)シリカ微粒子および(D)コアシェルゴム粒子を添加し、(A)シアネートエステル樹脂に対する(C)シリカ微粒子および(D)コアシェルゴム粒子の配合割合を本発明で規定する範囲に特定化した各実施例のシアネートエステル樹脂組成物は、粘度調整のための熱可塑性樹脂を添加せずとも、加熱硬化時の樹脂フローを抑制でき、樹脂欠損や厚みの不均一を解消し、かつ優れた作業性を有することが判明した。また、各実施例のシアネートエステル樹脂組成物は、平行板にて温度70℃、周波数1Hzで粘弾性測定した際、歪1%のtanδが1未満であり、かつ歪み100%のtanδが1以上であることから、低歪で固形的(tanδ<1)であり、加熱硬化時の樹脂フローを抑制でき、また高歪で液体的(tanδ≧1)であり、フィルム塗工や含浸時の作業性が良好となる。
これに対し、比較例1は、(D)コアシェルゴム粒子を添加していないので、樹脂フローおよび寸法安定性の結果が悪化した。
比較例2は、(C)シリカ微粒子を添加していないので、樹脂フローおよび寸法安定性の結果が悪化した。
比較例3は、(D)コアシェルゴム粒子の配合量が本発明で規定する下限未満であるので、樹脂フローおよび寸法安定性の結果が悪化した。
比較例4は、(C)シリカ微粒子の配合量および(D)コアシェルゴム粒子の配合量ともに本発明で規定する上限を超えているので、作業性が悪化した。
【要約】
【課題】シアネートエステル樹脂は耐熱性に優れるが、粘度調整のための熱可塑性樹脂が溶解しにくく、樹脂組成物の粘度調整が困難である。この問題点によって、プリプレグ製造時に樹脂組成物が流れ出てしまい、樹脂欠損が生じ、厚みが不均一となり、また作業性も悪化してしまう。
【解決手段】(A)シアネートエステル樹脂、(B)硬化剤もしくは硬化促進剤、(C)シリカ微粒子、および(D)コアシェルゴム粒子を含有し、前記(A)シアネートエステル樹脂100質量部に対し、前記(C)シリカ微粒子を1〜5質量部および前記(D)コアシェルゴム粒子を2〜10質量部含み、前記(C)シリカ微粒子と前記(D)コアシェルゴム粒子の質量比が(C)/(D)として1/1〜1/5であるシアネートエステル樹脂組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし