特許第6354904号(P6354904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354904
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】可変容量型過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20180702BHJP
   F01D 17/16 20060101ALI20180702BHJP
   F01D 17/14 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   F02B37/24
   F01D17/16 C
   F01D17/16 A
   F01D17/14 C
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-523578(P2017-523578)
(86)(22)【出願日】2016年5月27日
(86)【国際出願番号】JP2016065797
(87)【国際公開番号】WO2016199600
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2017年6月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-116469(P2015-116469)
(32)【優先日】2015年6月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】淺川 貴男
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 健一
(72)【発明者】
【氏名】小林 高広
(72)【発明者】
【氏名】崎坂 亮太
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和子
(72)【発明者】
【氏名】文野 謙治
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−229908(JP,A)
【文献】 特開2014−169641(JP,A)
【文献】 特開2011−117320(JP,A)
【文献】 特開2002−332862(JP,A)
【文献】 実開平03−092502(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0082539(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F01D 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン翼車と、前記タービン翼車の周囲に配置されるスクロール流路を形成するタービンハウジングと、前記スクロール流路から前記タービン翼車へのガス流入路において前記タービン翼車の周囲に配置された複数の可動のノズルベーンを含む可変ノズルユニットと、を有するタービンと、
前記タービン翼車に回転軸を介して接続され前記タービン翼車と同一の回転軸線周りに回転するコンプレッサ翼車を有するコンプレッサと、を備え、
前記可変ノズルユニットは、
前記タービンハウジングに保持され複数の前記ノズルベーンを回動可能に軸支するユニット本体部と、
前記ユニット本体部に対して前記回転軸線周りに回動し複数の前記ノズルベーンへの駆動力を伝達する駆動リングと、
前記ユニット本体部に固定されると共に前記駆動リングを回動可能に支持するリング支持部材と、を有し、
前記リング支持部材は、
一部材で形成されており、
前記駆動リングの径方向への移動を規制する径方向規制部と、
前記駆動リングの前記コンプレッサ側への前記回転軸線方向の移動を規制するコンプレッサ側規制部と、
前記駆動リングの前記タービン側への前記回転軸線方向の移動を規制するタービン側規制部と、を有し、
前記リング支持部材は、
前記回転軸線を中心とする円周上に配置され前記駆動リングの内周側の縁部に係合する複数のフック部を備え、
前記フック部は、
前記駆動リングの前記内周側の縁部よりも径方向内側に位置する前記径方向規制部と、
前記径方向規制部から径方向外側に延び前記駆動リングの前記コンプレッサ側の端面に対面する前記コンプレッサ側規制部と、を有し、
前記フック部と前記タービン側規制部とは、周方向における互いに異なる位置に設けられている可変容量型過給機。
【請求項3】
前記タービン側規制部は、
前記回転軸線を中心とする円周上に配置され前記コンプレッサ側に突出し前記駆動リングの前記タービン側の端面に対面する複数の突起部を有する請求項1に記載の可変容量型過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変容量型過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載の可変容量型過給機が知られている。この可変容量型過給機は、タービンのノズルを駆動するノズル駆動機構を備えており、このノズル駆動機構では、周方向に複数のローラピンが配置されノズルマウントに固定されている。このローラピンの各々に回転自在のローラが取り付けられており、ドライブリングの内周縁に各ローラが接している。ドライブリングは、ノズルへの駆動力を伝達するための部材であり、上記の複数のローラによって支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006-514191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の可変容量型過給機では、複数のローラピン及び複数のローラをノズルマウントに設置するといったように、比較的複雑な部品群でドライブリングが支持されている。この種の可変容量型過給機においては、製造コストダウンの観点からも、ノズルを駆動する駆動機構の構造をシンプルにして製造容易性を向上することが望まれる。
【0005】
本開示は、ノズルを駆動する機構の構造をシンプルにし製造容易性が向上する可変容量型過給機を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る可変容量型過給機は、タービン翼車と、タービン翼車の周囲に配置されるスクロール流路を形成するタービンハウジングと、スクロール流路からタービン翼車へのガス流入路においてタービン翼車の周囲に配置された複数の可動のノズルベーンを含む可変ノズルユニットと、を有するタービンと、タービン翼車に回転軸を介して接続されタービン翼車と同一の回転軸線周りに回転するコンプレッサ翼車を有するコンプレッサと、を備え、可変ノズルユニットは、タービンハウジングに保持され複数のノズルベーンを回動可能に軸支するユニット本体部と、ユニット本体部に対して回転軸線周りに回動し複数のノズルベーンへの駆動力を伝達する駆動リングと、ユニット本体部に固定されると共に駆動リングを回動可能に支持するリング支持部材と、を有し、リング支持部材は、一部材で形成されており、駆動リングの径方向への移動を規制する径方向規制部と、駆動リングのコンプレッサ側への回転軸線方向の移動を規制するコンプレッサ側規制部と、駆動リングのタービン側への回転軸線方向の移動を規制するタービン側規制部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の可変容量型過給機によれば、ノズルを駆動する機構の構造をシンプルにし製造容易性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る可変容量型過給機の断面図である。
図2】可変ノズルユニットの分解斜視図である。
図3】(a)は駆動リングサポート部材の平面図、(b)は駆動リングの平面図である。
図4】駆動リングサポート部材に駆動リングを取り付けた状態を示す斜視図である。
図5】(a)は、図4におけるフック部を含む断面図、(b)は、突起部を含む断面図、(c)は、突起の近傍を径方向外側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一形態に係る可変容量型過給機は、タービン翼車と、タービン翼車の周囲に配置されるスクロール流路を形成するタービンハウジングと、スクロール流路からタービン翼車へのガス流入路においてタービン翼車の周囲に配置された複数の可動のノズルベーンを含む可変ノズルユニットと、を有するタービンと、タービン翼車に回転軸を介して接続されタービン翼車と同一の回転軸線周りに回転するコンプレッサ翼車を有するコンプレッサと、を備え、可変ノズルユニットは、タービンハウジングに固定され複数のノズルベーンを回動可能に軸支するユニット本体部と、ユニット本体部に対して回転軸線周りに回動し複数のノズルベーンへの駆動力を伝達する駆動リングと、ユニット本体部に固定されると共に駆動リングを回動可能に支持するリング支持部材と、を有し、リング支持部材は、一部材で形成されており、駆動リングの径方向への移動を規制する径方向規制部と、駆動リングのコンプレッサ側への回転軸線方向の移動を規制するコンプレッサ側規制部と、駆動リングのタービン側への回転軸線方向の移動を規制するタービン側規制部と、を有する。
【0010】
この可変容量型過給機の可変ノズルユニットでは、一部材で形成されたリング支持部材によって駆動リングが支持され、駆動リングの径方向、コンプレッサ側、及びタービン側への移動が規制される。駆動リングの支持に必要な径方向への移動規制、コンプレッサ側への移動規制、及びタービン側への移動規制の機能を一部材で実現することで、ノズルを駆動する機構の構造をシンプルにし製造容易性の向上を図ることができる。
【0011】
具体的な構成として、リング支持部材は、回転軸線を中心とする円周上に配置され駆動リングの内周側の縁部に係合する複数のフック部を備え、フック部は、駆動リングの内周側の縁部よりも径方向内側に位置する径方向規制部と、径方向規制部から径方向外側に延び駆動リングのコンプレッサ側の端面に対面するコンプレッサ側規制部と、を有することとしてもよい。
【0012】
また、タービン側規制部は、回転軸線を中心とする円周上に配置されコンプレッサ側に突出し駆動リングのタービン側の端面に対面する複数の突起部を有することとしてもよい。
【0013】
また、フック部とタービン側規制部とは、周方向における互いに異なる位置に設けられていることとしてもよい。
【0014】
以下、図面を参照しながら、本開示の可変容量型過給機の実施形態について説明する。なお、各図面においては、構成要素の特徴を誇張して描写する場合があるため、図面上の各部位の寸法比は必ずしも実物とは一致しない。
【0015】
図1に示される可変容量型過給機1は、例えば、船舶や車両の内燃機関に適用されるものである。図1に示されるように、可変容量型過給機1は、タービン2とコンプレッサ3とを備えている。タービン2は、タービンハウジング4と、タービンハウジング4に収納されたタービン翼車6と、を備えている。タービンハウジング4は、タービン翼車6の周囲において周方向に延びるスクロール流路16を有している。コンプレッサ3は、コンプレッサハウジング5と、コンプレッサハウジング5に収納されたコンプレッサ翼車7と、を備えている。コンプレッサハウジング5は、コンプレッサ翼車7の周囲において周方向に延びるスクロール流路17を有している。
【0016】
タービン翼車6は回転軸14の一端に設けられており、コンプレッサ翼車7は回転軸14の他端に設けられている。タービンハウジング4とコンプレッサハウジング5との間には、軸受ハウジング13が設けられている。回転軸14は、軸受15を介して軸受ハウジング13に回転可能に支持されており、回転軸14、タービン翼車6及びコンプレッサ翼車7が一体の回転体12として回転軸線H周りに回転する。
【0017】
タービンハウジング4には、排気ガス流入口(図示せず)及び排気ガス流出口10が設けられている。内燃機関(図示せず)から排出された排気ガスが、排気ガス流入口を通じてタービンハウジング4内に流入する。そして、排気ガスは、スクロール流路16を通じてタービン翼車6に流入し、タービン翼車6を回転させる。その後、排気ガスは、排気ガス流出口10を通じてタービンハウジング4外に流出する。
【0018】
コンプレッサハウジング5には、吸入口9及び吐出口(図示せず)が設けられている。上記のようにタービン翼車6が回転すると、回転軸14を介してコンプレッサ翼車7が回転する。回転するコンプレッサ翼車7は、吸入口9を通じて外部の空気を吸入し、この空気を圧縮して、スクロール流路17を通じて吐出口から吐出する。吐出口から吐出された圧縮空気は、前述の内燃機関に供給される。
【0019】
続いて、タービン2について更に詳細に説明する。タービン2は可変容量型タービンである。スクロール流路16とタービン翼車6とを接続するガス流入路21には、可動のノズルベーン23が設けられている。複数のノズルベーン23が回転軸線Hを中心とする円周上に配置されている。各々のノズルベーン23は回転軸線Hに平行な軸線周りに回動する。上記のようにノズルベーン23が回動することで、タービン2に導入される排気ガスの流量に応じてガス流路の断面積が最適に調整される。上記のようにノズルベーン23を回動させるための駆動機構として、タービン2は可変ノズルユニット25を備えている。可変ノズルユニット25は、タービンハウジング4の内側に嵌め込まれており、タービンハウジング4と軸受ハウジング13とで挟み込まれて固定される。
【0020】
以下、図1及び図2を参照しながら、可変ノズルユニット25について更に詳細に説明する。以下の説明において、単に「軸線方向」、「径方向」、「周方向」等と言うときには、それぞれ、タービン翼車6の回転軸線H方向、回転径方向、回転周方向を意味するものとする。また、「上流」、「下流」などと言うときには、スクロール流路16における排気ガスの上流、下流を意味するものとする。また、回転軸線H方向において、タービン2に近い側(図2において左側)を単に「タービン側」と言い、コンプレッサ3に近い側(図2において右側)を単に「コンプレッサ側」と言う場合がある。
【0021】
可変ノズルユニット25は、上記の複数(図の例では11個)のノズルベーン23と、第1ノズルリング31と、第2ノズルリング32と、を有している。第1ノズルリング31及び第2ノズルリング32は、ノズルベーン23を軸線方向に挟んで位置している。第1ノズルリング31と第2ノズルリング32とは、それぞれ回転軸線Hを中心とするリング状を成しており、タービン翼車6を周方向に囲むように配置されている。第1ノズルリング31と第2ノズルリング32とで挟まれた領域が前述のガス流入路21を構成する。第2ノズルリング32はスクロール流路16(図1参照)に面しており、第2ノズルリング32がスクロール流路16の内壁の一部を形成している。第1ノズルリング31の軸受孔31aには、各ノズルベーン23の回動軸23aが回転可能に挿通されており、第1ノズルリング31は各ノズルベーン23を片持ちで軸支している。なお、図の例では、ノズルベーン23は円周上に等間隔に配置されているが、ノズルベーン23を等間隔に配置することは必須ではない。
【0022】
第1ノズルリング31のコンプレッサ側には、円環板状のサポートリング41が固定され、更にサポートリング41のコンプレッサ側には、リング状をなす駆動リングサポート部材43が固定されている。第1ノズルリング31、第2ノズルリング32、サポートリング41及び駆動リングサポート部材43には、それぞれ複数(図の例では3つ)ずつのピン孔35aが設けられている。これらの各ピン孔35aに連結ピン35が挿通されることで、第1ノズルリング31、第2ノズルリング32、サポートリング41及び駆動リングサポート部材43が互いに連結される。
【0023】
なお、サポートリング41及び駆動リングサポート部材43は、連結ピン35のコンプレッサ側の部分により、第1ノズルリング31に対して共カシメされる。また、連結ピン35のタービン側の部分には、第1ノズルリング31及び第2ノズルリング32をそれぞれ位置決めするための2つの鍔部が設けられている。2つの鍔部の間の寸法が高精度に作製されることで、ガス流入路21の軸線方向の寸法精度が確保されている。駆動リングサポート部材43に駆動リング28が取り付けられることで、駆動リング28が回転軸線H周りで回動可能に支持される。サポートリング41の外周部分が、タービンハウジング4と軸受ハウジング13とで軸線方向に挟み込まれることにより、可変ノズルユニット25全体がタービンハウジング4及び軸受ハウジング13に対して固定される。すなわち、サポートリング41の外周部分が、タービンハウジング4と軸受ハウジング13とで軸線方向に挟み込まれることにより、可変ノズルユニット25全体がタービンハウジング4及び軸受ハウジング13によって保持される。
【0024】
駆動リング28は、外部から入力されるノズルベーン23への駆動力を伝達する部材であり、例えば金属材料により一部材で形成されている。駆動リング28は、回転軸線Hを中心とする円周上に延在するリング状をなしており、外部からの駆動力を受けて回転軸線H周りに回動する。レバー29は各ノズルベーン23の回動軸23aにそれぞれ取り付けられ、駆動リング28の内側で円周上に等間隔に配置されている。駆動リング28の内周側には、各レバー29に対応する位置に等間隔で溝28aが形成されている。各レバー29の一端は駆動リング28の各溝28aに噛み合っており、各レバー29の他端は各ノズルベーン23の回動軸23aに固定されている。タービン2の外部からの駆動力が駆動リング28に入力されると、駆動リング28が回転軸線H周りに回動する。駆動リング28の回動に伴って、溝28aに噛み合った各レバー29が回動し、回動軸23aを介して各ノズルベーン23が回動する。なお、駆動リング28の内周側には1つの入力溝28bが形成されており、入力溝28bは、1組の溝28a,28a同士の間に配置されている。前述した外部から駆動リング28への駆動力は、当該入力溝28bに対する周方向の外力として入力される。
【0025】
このような可変ノズルユニット25のうち、第1ノズルリング31、第2ノズルリング32、サポートリング41、及び連結ピン35からなる部分が、タービンハウジング4に固定され複数のノズルベーン23を回動可能に軸支するユニット本体部51を構成する。すなわち、このユニット本体部51が、タービンハウジング4に保持され複数のノズルベーン23を回動可能に軸支している。また、駆動リングサポート部材43は、上記ユニット本体部51に固定されると共に駆動リング28を回動可能に支持するリング支持部材を構成する。なお、ユニット本体部51に対する駆動リングサポート部材43の固定方法としては、サポートリング41と一緒に第1ノズルリング31に共カシメされる構成には限定されず、種々の固定方法を採用することができる。
【0026】
続いて、図2図5を参照しながら、駆動リングサポート部材43の構成、及び駆動リングサポート部材43による駆動リング28の支持の態様について説明する。図3(a)は、回転軸線Hに平行な視線でコンプレッサ3側から見た駆動リングサポート部材43の平面図である。図3(b)は、回転軸線Hに平行な視線でコンプレッサ3側から見た駆動リング28の平面図である。図4は、駆動リングサポート部材43に駆動リング28が取り付けられた状態を示す斜視図である。図5(a)は、図4において、フック部45を含み径方向に平行な断面を取った断面図である。図5(b)は、図4において突起部47aを含み径方向に平行な断面を取った断面図である。図5(c)は、突起部47aの近傍を径方向外側から見た図である。
【0027】
駆動リングサポート部材43は、平板リング状をなす部材本体部42と、部材本体部42の外周部からコンプレッサ側に立ち上がった複数のフック部45と、部材本体部42の外周部から径方向外側に延びる複数のタービン側受け部47(第3の部分)と、を備えている。駆動リングサポート部材43は一部材で形成されており、例えば、プレス加工によって作製されている。部材本体部42の外周の直径は、駆動リングの内周の直径よりもやや小さい。駆動リングサポート部材43及び駆動リング28は、例えば、金属製の部材である。フック部45及びタービン側受け部47は、それぞれ、駆動リング28の溝28aが存在せず且つ入力溝28bが存在しない部位に対応する位置に配置されている。また、フック部45及びタービン側受け部47は、回転軸線Hを中心とする円周上において互いに重複しない位置に複数ずつ設けられている。
【0028】
フック部45は、回転軸線Hを中心とする円周上に複数(図の例では6個)配置されており、それぞれ駆動リング28の内周側の縁部に引っ掛けられている。フック部45は、部材本体部42の外周縁部から軸線方向に延びる基端側部分45a(第1の部分)と、基端側部分45aから屈曲して径方向外側に延びる先端側部分45b(第2の部分)とを有している。
【0029】
ここで、フック部45は、後述するように、駆動リング28の回転軸線方向の移動を規制する機能に加えて、駆動リング28の径方向への移動を規制する径方向規制部としての機能を兼ね備えている。可変容量型過給機1が車両などの内燃機関に搭載されるときに、駆動リングサポート部材43及び駆動リング28は、例えば、図3に示される矢印K方向を上として回転軸線Hを水平とする姿勢で配置される。この姿勢において、駆動リングサポート部材43が駆動リング28の自重による移動を規制するため、フック部45の配置を次のようにしてもよい。すなわち、フック部45の一部(図の例では6個のうち3個)が、回転軸線Hよりも上方の180°の範囲内(図中の一点鎖線Jよりも上方の範囲内)に配置されるようにしてもよい。
【0030】
各フック部45の基端側部分45aは、駆動リング28の内周側の縁部よりも径方向内側に位置しており、駆動リング28の内周縁面28dに対面している。基端側部分45aが駆動リング28の内周縁面28dに接触してもよい。この構成により、円周上に配置された複数の基端側部分45aが、駆動リング28の径方向への移動を規制する径方向規制部として機能する。なお、各基端側部分45aを通る仮想円の径は駆動リング28の内周縁面28dを通る仮想円の径よりも僅かに小さい。このため、駆動リングサポート部材43と駆動リング28との間には径方向に僅かなガタつきが生じている。
【0031】
各フック部45の先端側部分45bは、駆動リング28の内周縁面28dの位置を超えて径方向外側に延びており、コンプレッサ側の端面28cに対面している。先端側部分45bはコンプレッサ側の端面28cに接触してもよい。この構成により、先端側部分45bが、駆動リング28のコンプレッサ側への回転軸線H方向の移動を規制するコンプレッサ側規制部として機能する。
【0032】
タービン側受け部47は、回転軸線Hを中心とする円周上に複数(図の例では3個)配置されている。タービン側受け部47は、駆動リング28の内周縁面28dの位置を超えて径方向外側に延びている。各タービン側受け部47は、その先端に設けられコンプレッサ側に突出した突起部47aを有している。突起部47aは、タービン側受け部47の先端部がコンプレッサ側に押し出されるように屈曲されることで形成されている。各突起部47aは、駆動リング28のタービン側の端面28tに対面している。各突起部47aは駆動リング28のタービン側の端面28tに接触してもよい。この構成により、タービン側受け部47が、駆動リング28のタービン側への回転軸線H方向の移動を規制するタービン側規制部として機能する。また、先端側部分45bと突起部47aとの間の軸線方向における隙間は、駆動リング28の厚さよりもやや広く形成されている。このため、駆動リングサポート部材43と駆動リング28との間には軸線方向に僅かなガタつきが生じている。
【0033】
以上の構成により、駆動リングサポート部材43は、駆動リング28の径方向、コンプレッサ側、及びタービン側への移動を規制するように、駆動リング28を支持する。また、駆動リングサポート部材43には、駆動リング28の周方向の移動を規制する部位は形成されていない。このため、駆動リング28は、駆動リングサポート部材43に支持された状態で、回転軸線H周りに回動可能である。
【0034】
なお、フック部45の周方向の配置間隔が、溝28aの配置間隔に対応している。すなわち、駆動リング28を駆動リングサポート部材43に対して回転軸線H方向周りに所定量回転させると、すべてのフック部45の周方向位相が、対応するいずれかの溝28a(図の例では11個のうち、6個)の周方向位相に一致する。また、各フック部45の先端を通る仮想円の径は、溝28aの最深部を通る仮想円の径よりも僅かに小さい。また、先端側部分45bの周方向の幅は溝28aの周方向の幅よりも僅かに小さい。また、フック部45の先端側部分45bの大きさは、溝28aの大きさよりも僅かに小さい。これらの構成により、駆動リング28を駆動リングサポート部材43に取り付ける際には、次のようにすることができる。すなわち、すべてのフック部45が各溝28aを通過するように駆動リング28を所定量回転させて、駆動リング28をコンプレッサ側から駆動リングサポート部材43に挿入することができる。その後さらに、駆動リング28を所定の周方向位相に回転させることで、駆動リング28は上述するように駆動リングサポート部材43に支持された状態となる。
【0035】
上述のような部材本体部42と、フック部45と、タービン側受け部47と、を備えた駆動リングサポート部材43を、一部材で容易に形成するために、フック部45とタービン側受け部47とは、周方向における互いに異なる位置に設けられている。この構成によれば、例えば、金属平板をプレス加工することにより、比較的容易に一部材で駆動リングサポート部材43を作製することができる。
【0036】
続いて、可変容量型過給機1による作用効果について説明する。可変容量型過給機1の可変ノズルユニット25では、一部材で形成された駆動リングサポート部材43によって駆動リング28が支持され、駆動リング28の径方向、コンプレッサ側、及びタービン側への移動が規制される。このように駆動リング28の支持のために必要な径方向への移動規制、コンプレッサ側への移動規制、及びタービン側への移動規制の機能が一部材で実現される。従って、可変ノズルユニット25の構造をシンプルにし製造容易性の向上を図ることができる。ひいては、可変容量型過給機1の製造コストダウンを図ることができる。
【0037】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。例えば、実施形態では、駆動リングサポート部材43に配置するフック部45の数を、タービン側受け部47の数よりも多くする例を説明したが、タービン側受け部47とフック部45は同数でもよく、タービン側受け部47をフック部45よりも多くしても構わない。また同様に,車両などの内燃機関に搭載された状態の姿勢で、フック部45の一部を回転軸線Hよりも上方の180°の範囲内に複数配置する例を説明したが、フック部45とタービン側受け部47とを各々配置する周方向の位相は、任意で構わない。例えば、回転軸線Hよりも上方の180°の範囲内に単数のフック部45を配置してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 可変容量型過給機
2 タービン
3 コンプレッサ
4 タービンハウジング
6 タービン翼車
7 コンプレッサ翼車
14 回転軸
16 スクロール流路
21 ガス流入路
23 ノズルベーン
25 可変ノズルユニット
28 駆動リング
28c コンプレッサ側の端面
28t タービン側の端面
43 駆動リングサポート部材(リング支持部材)
45 フック部
45a 基端側部分(径方向規制部)
45b 先端側部分(コンプレッサ側規制部)
47 タービン側受け部(タービン側規制部)
47a 突起部
51 ユニット本体部
H 回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5