特許第6354948号(P6354948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354948
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】ロードセル及びロードセルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/16 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   G01L5/16
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-188062(P2014-188062)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-61605(P2016-61605A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003676
【氏名又は名称】ティアック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】特許業務法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 靖匡
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 巧
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−163405(JP,A)
【文献】 特開平07−128167(JP,A)
【文献】 特開平02−163627(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10013059(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/22
G01L 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状が枠形状を有するホルダと、
前記ホルダ内に配置され、被測定物と連結する連結部と、
前記ホルダが前記枠形状を呈する平面を、直交するX軸及びY軸を含むXY平面とした場合に、前記ホルダ内に配置され、前記XY平面において前記X軸方向に延びる第1ビームであって、前記ホルダ及び前記連結部と一体に形成され、かつ、一端が前記ホルダに、他端が前記連結部に接続する第1ビームと、
前記ホルダ内に配置され、前記XY平面において前記Y軸方向に延びる第2ビームであって、前記ホルダ及び前記連結部と一体に形成され、かつ、一端が前記ホルダに他端が前記連結部に接続し、さらに、前記XY平面と直交するZ軸方向において、前記第1ビームと離間した位置に配置された第2ビームと、
前記第1ビームに取り付けられ、前記被測定物から前記連結部に掛かる荷重によって前記第1ビームに発生する、前記Y軸方向の歪み量を測定するための第1歪みセンサと、
前記第2ビームに取り付けられ、前記被測定物から前記連結部に掛かる荷重によって前記第2ビームに発生する、前記X軸方向の歪み量を測定するための第2歪みセンサと、
前記Z軸方向において、前記連結部を、前記第1ビームが接続される第1連結部と、前記第2ビームが接続される第2連結部の2つの部分に分離するために、前記連結部に対して前記XY平面と平行な方向に形成されたスリットとを備えていることを特徴とするロードセル。
【請求項2】
前記第1ビームは、前記X軸方向において前記第1連結部の両端からそれぞれ前記ホルダの内周面に向かって2本ずつ延びる、合計4本のビームで構成され、
前記第2ビームは、前記Y軸方向において前記第2連結部の両端からそれぞれ前記ホルダの内周面に向かって2本ずつ延びる、合計4本のビームで構成されることを特徴とする請求項1に記載のロードセル。
【請求項3】
nを正の整数とした場合に、前記第1歪みセンサ及び第2歪みセンサは、それぞれ4n個で1組の抵抗体のセットで構成されることを特徴とする請求項2に記載のロードセル。
【請求項4】
前記第1ビームを構成する、前記合計4本の各ビームには、前記第1歪みセンサを構成する前記抵抗体が少なくとも1つずつ設けられており、
前記第2ビームを構成する、前記合計4本の各ビームには、前記第2歪みセンサを構成する前記抵抗体が少なくとも1つずつ設けられていることを特徴とする請求項3に記載のロードセル。
【請求項5】
前記第1ビーム及び第2ビームは、それぞれ断面が四角形の四角柱であり、4つの側面のうち2つの側面が前記XY平面と平行で、かつ、他の2つの側面が前記XY平面と直交する向きで配置されており、
前記第1歪みセンサ及び前記第2歪みセンサを構成するそれぞれの前記抵抗体は、前記第1ビーム又は前記第2ビームにおいて、前記XY平面と平行な側面に取り付けられていることを特徴とする請求項3または4に記載のロードセル。
【請求項6】
前記第1ビーム及び前記第2ビームの少なくとも一方において、前記XY平面と直交する側面に、前記Z軸方向の歪み量を測定するための第3歪みセンサが取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載のロードセル。
【請求項7】
前記ホルダは、前記平面形状が円環形状であり、
前記連結部は、前記平面形状が四角形であり、前記円環形状の中心と前記四角形の中心が一致する位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のロードセル。
【請求項8】
前記第1連結部及び前記第2連結部の一方に前記被測定物が連結され、他方には前記被測定をマウントするマウント部が連結されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のロードセル。
【請求項9】
平面形状が枠形状を有するホルダと、
前記ホルダ内に配置され、被測定物と連結する連結部と、
前記ホルダが前記枠形状を呈する平面を、直交するX軸及びY軸を含むXY平面とした場合に、前記ホルダ内に配置され、前記枠内において前記X軸方向に延びる第1ビームであって、端が前記ホルダに、他端が前記連結部に接続する第1ビームと、
前記ホルダ内に配置され、前記XY平面において前記Y軸方向に延びる第2ビームであって、一端が前記ホルダに他端が前記連結部に接続し、さらに、前記XY平面と直交するZ軸方向において、前記第1ビームと離間した位置に配置された第2ビームとが一体に形成された本体部を形成する本体部形成工程と、
前記本体部を形成した後、前記連結部に対して、前記XY平面と平行な方向に前記連結部を貫通するスリットを形成することにより、前記Z軸方向において、前記連結部を、前記第1ビームが接続される第1連結部と、前記第2ビームが接続される第2連結部の2つの部分に分離する連結部分離工程と、
前記第1ビームに、前記被測定物から前記連結部に掛かる荷重によって前記第1ビームに発生する、前記Y軸方向の歪み量を測定するための第1歪みセンサを取り付けて、かつ、前記第2ビームに、前記被測定物から前記連結部に掛かる荷重によって前記第2ビームに発生する、前記X軸方向の歪み量を測定するための第2歪みセンサを取り付ける歪みセンサ取り付け工程とを含むことを特徴とするロードセルの製造方法。
【請求項10】
前記スリットは、ワイヤーカット放電加工またはレーザー加工によって形成されることを特徴とする請求項9に記載のロードセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重を測定するロードセル及びロードセルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歪みセンサを利用して荷重を測定するロードセルが知られている(特許文献1〜3)。特許文献1〜3に記載されているように、従来のロードセルは、1方向に延びるビーム(梁)を有し、ビームに歪みセンサを設けることで、主としてビームに掛かる1方向の荷重を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−95036号公報
【特許文献2】特公平7−104218号公報
【特許文献3】特許登録第2509848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、振動試験のために、ロードセルを利用して被測定物の振動により生じる荷重を測定することを検討している。例えば、自動車のボディに装着されるラジエーターの振動を測定したり、公園などに設置される遊具などに生じる振動を測定するなどである。こうした振動試験においては、被測定物に掛かる荷重は1方向では無いため、複数方向の振動を同時に測定することが要望されている。
【0005】
上記特許文献1〜3に記載されたロードセルは、1方向に延びるビームのみを有し、このビームに歪みセンサが取り付けられているだけであるため、測定方向は主として1方向であり、例えば、X軸方向とY軸方向の2方向の荷重を同時に測定することができない。発明者らは、上記要望に応えるために、測定方向が1方向のロードセルを、それぞれの測定方向が直交する向きに配して、それらを上下に2つ重ねることで、直交する2方向の荷重を同時に測定することを検討している。これら2つのロードセルは、ボルトの締結により連結される。
【0006】
しかしながら、2つのロードセルをボルト締結により連結した連結型ロードセルでは、振動試験に使用すると、振動によりボルトが緩んでしまうという欠点がある。ボルトが緩むと、剛性が低下して測定誤差が大きくなる。高い剛性を確保するためには、締結力を上げるためにボルトの径を太くしたり、本数を多くする方法があるが、そうすると、ロードセルが大型化してしまう。ロードセルの設置スペースが狭い場合には、大型化も難しいため、連結型ロードセルでは必要な剛性を確保することができない。
【0007】
本発明は、小型でも高い剛性を有し、かつ、被測定物に掛かる複数方向の荷重を正確に測定することが可能なロードセル及びロードセルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のロードセルは、ホルダと、連結部と、第1ビームと、第2ビームと、第1歪みセンサと、第2歪みセンサと、スリットとを備えている。ホルダは、平面形状が枠形状を有する。連結部は、ホルダ内に配置され、被測定物と連結する。第1ビームは、ホルダが枠形状を呈する平面を、直交するX軸及びY軸を含むXY平面とした場合に、ホルダ内に配置され、XY平面においてX軸方向に延びる。第1ビームは、ホルダ及び連結部と一体に形成され、かつ、一端がホルダに、他端が連結部に接続する。第2ビームは、ホルダ内に配置され、XY平面においてY軸方向に延びる。第2ビームは、ホルダ及び連結部と一体に形成され、かつ、一端がホルダに他端が連結部に接続し、さらに、XY平面と直交するZ軸方向において、第1ビームと離間した位置に配置されている。第1歪みセンサは、第1ビームに取り付けられ、被測定物から連結部に掛かる荷重によって第1ビームに発生する、Y軸方向の歪み量を測定するためのものである。第2歪みセンサは、第2ビームに取り付けられ、被測定物から連結部に掛かる荷重によって第2ビームに発生する、X軸方向の歪み量を測定するためのものである。スリットは、Z軸方向において、連結部を、第1ビームが接続される第1連結部と、第2ビームが接続される第2連結部の2つの部分に分離するために、連結部に対してXY平面と平行な方向に形成されている。
【0009】
第1ビームは、X軸方向において第1連結部の両端からそれぞれホルダの内周面に向かって2本ずつ延びる、合計4本のビームで構成され、第2ビームは、Y軸方向において第2連結部の両端からそれぞれホルダの内周面に向かって2本ずつ延びる、合計4本のビームで構成されることが好ましい。nを正の整数とした場合に、第1歪みセンサ及び第2歪みセンサは、それぞれ4n個で1組の抵抗体のセットで構成されることが好ましい。第1ビームを構成する、合計4本の各ビームには、第1歪みセンサを構成する抵抗体が少なくとも1つずつ設けられており、第2ビームを構成する、合計4本の各ビームには、第2歪みセンサを構成する抵抗体が少なくとも1つずつ設けられていることが好ましい。
【0010】
第1ビーム及び第2ビームは、それぞれ断面が四角形の四角柱であり、4つの側面のうち2つの側面がXY平面と平行で、かつ、他の2つの側面がXY平面と直交する向きで配置されており、第1歪みセンサ及び第2歪みセンサを構成するそれぞれの抵抗体は、第1ビーム又は第2ビームにおいて、XY平面と直交する側面に取り付けられていることが好ましい。第1ビーム及び第2ビームの少なくとも一方において、XY平面と平行な側面に、Z軸方向の歪み量を測定するための第3歪みセンサが取り付けられていることが好ましい。
【0011】
ホルダは、平面形状が円環形状であり、連結部は、平面形状が四角形であり、円環形状の中心と四角形の中心が一致する位置に配置されていることが好ましい。第1連結部及び第2連結部の一方に被測定物が連結され、他方には被測定をマウントするマウント部が連結されることが好ましい。
【0012】
本発明のロードセルの製造方法は、本体部形成工程と、連結部分離工程と、歪みセンサ取り付け工程とを含む。本体部形成工程では、平面形状が枠形状を有するホルダと、ホルダ内に配置され、被測定物と連結する連結部と、ホルダが枠形状を呈する平面を、直交するX軸及びY軸を含むXY平面とした場合に、ホルダ内に配置され、枠内においてX軸方向に延びる第1ビームであって、一端がホルダに、他端が連結部に接続する第1ビームと、ホルダ内に配置され、XY平面においてY軸方向に延びる第2ビームであって、一端がホルダに他端が連結部に接続し、さらに、XY平面と直交するZ軸方向において、第1ビームと離間した位置に配置された第2ビームとが一体に形成された本体部を形成する。連結部分離工程では、本体部を形成した後、連結部に対して、XY平面と平行な方向に連結部を貫通するスリットを形成することにより、Z軸方向において、連結部を、第1ビームが接続される第1連結部と、第2ビームが接続される第2連結部の2つの部分に分離する。歪みセンサ取り付け工程では、第1ビームに、被測定物から連結部に掛かる荷重によって第1ビームに発生する、Y軸方向の歪み量を測定するための第1歪みセンサを取り付けて、かつ、第2ビームに、被測定物から連結部に掛かる荷重によって第2ビームに発生する、X軸方向の歪み量を測定するための第2歪みセンサを取り付ける。なお、スリットは、ワイヤーカット放電加工またはレーザー加工によって形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ホルダ、連結部、X軸方向に延びる第1ビーム及びY軸方向に延びる第2ビームが一体で形成されているから、小型でも剛性が高い。また、剛性が高いので、第1ビームと第2ビームでそれぞれ測定するX軸方向とY軸方向の荷重を正確に測定できる。
【0014】
また、小型でも高い剛性を確保できるので、Z軸方向の厚みを薄くすることができる。これにより、狭いスペースに設置することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のロードセルの斜視図である。
図2】ロードセルの一部を切り欠いた斜視図である。
図3】ロードセルの平面図である。
図4図3のIV−IV線に沿って切断した縦断面図である。
図5図3のV−V線に沿って切断した縦断面図である。
図6】ロードセルの製造方法を説明する斜視図である。
図7】ロードセルの使用状態を説明する要部断面図である。
図8】本発明の変形例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、ロードセル2は、本体部3と、複数の歪みセンサ4〜7(図2参照)とを備える。本体部3は、例えばステンレスなどの金属で形成され、ホルダ8と、第1及び第2連結部9,10(図2参照)と、第1及び第2ビーム11,12(図2参照)とを有する。ホルダ8は、平面形状が枠形状であり、具体的には、円環形状をしている。ここで、ホルダ8が枠形状を呈する平面を、直交するX軸及びY軸を含むXY平面とし、XY平面と直交するホルダ8の厚み方向はZ軸とする。さらに、X軸及びZ軸を含む平面をXZ平面とし、Y軸及びZ軸を含む平面をYZ平面とする。
【0017】
図2に示すように、ホルダ8の内部空間には、第1及び第2連結部9,10が配置されている。後述するように、第1及び第2連結部9,10は両者一体で形成された後に、Z軸方向において上下に分離されたものである。第1及び第2連結部9,10の間にはスリット13が形成されており、スリット13は、分離加工時に形成される。なお、ホルダ8の一部を貫通して形成された切り込み14は、スリット13を形成するときに同時に形成される。
【0018】
図3図5に示すように、第1及び第2連結部9,10は、XY平面における平面形状が四角形であり、円環形状に形成されたホルダ8と中心が一致する位置に配置されている。第1及び第2連結部9,10は、中心に被測定物を連結するための雌ネジ部9a,10aがそれぞれ形成されている。第1及び第2連結部9,10は、もともと一体であったため、X軸方向及びY軸方向の位置は互いに重なる。なお、雌ネジ部9a,10aの中心は、ホルダ8の中心に一致している。
【0019】
第1ビーム11は、ホルダ8の枠内においてX軸方向に延びて、ホルダ8及び第1連結部9と一体に形成されており、軸方向の一端がホルダ8に他端が第1連結部9に接続する。第1ビーム11は、X軸方向において第1連結部9の両端、すなわち第1連結部9の対向する側面9b,9cからそれぞれホルダ8に向かって2本ずつ延びる合計4本のビーム11a〜11dで構成される。ビーム11a〜11dは、それぞれ断面が四角形の四角柱であり、4つの側面のうち、2つの側面がXY平面と平行で、且つ他の2つの側面がXY平面と直交するXZ平面と平行な向きで配置されている。
【0020】
第2ビーム12は、ホルダ8の枠内においてY軸方向に延びて、ホルダ8及び第2連結部10と一体に形成されており、軸方向の一端がホルダ8に他端が第2連結部10に接続する。さらに、第2ビーム12は、第1ビーム11とはZ軸方向において離間した位置に配される。第2ビーム12は、Y軸方向において第2連結部10の両端、すなわち第2連結部10の対向する側面10b、10cからそれぞれホルダ8に向かって2本ずつ延びる合計4本のビーム12a〜12dで構成される。ビーム12a〜12dは、それぞれ断面が四角形の四角柱であり、4つの側面のうち、2つの側面がXY平面と平行で、且つ他の2つの側面がXY平面と直交するYZ平面と平行な向きで配置されている。ビーム12a〜12dは、ビーム11a〜11dと同じ幅及び長さを有する。
【0021】
被測定物が振動すると第1連結部9及び第2連結部10に荷重が掛かり、その荷重によって第1連結部9に接続された第1ビーム11及び第2連結部10に接続された第2ビーム12には、歪みが発生する。
【0022】
第1及び第2歪みセンサ4,5は、それぞれ4n個(nは正の整数)で1組の抵抗体のセットで構成されることが好ましい。周知のように、歪みセンサは、4個の抵抗体のセットを最小構成とするホイートストンブリッジ回路を利用する場合が多いためである。本実施形態では、第1及び第2歪みセンサ4,5は、4個で1組の抵抗体4a〜4d,5a〜5dのセットで構成される。抵抗体4a〜4d、5a〜5dは、例えば、薄い絶縁体上に金属箔を取り付けたものである。金属箔は、例えば、細長い帯状の箔をつづら折り状に配置することにより、全体として四角形板状に形成される。
【0023】
第1歪みセンサ4は、第1ビーム11に取り付けられ、第1ビーム11に発生する、主としてY軸方向の歪み量を測定する。第1ビーム11はX軸方向に延びており、第1連結部9に対してY軸方向から荷重が掛かると、Y軸方向に歪む。第1ビーム11を構成するビーム11a〜11dには、第1歪みセンサ4を構成する抵抗体4a〜4dが1つずつ設けられている。それぞれの抵抗体4a〜4dは、第1ビーム11において、XY平面と平行な側面に接着により取り付けられている。これにより、抵抗体4a〜4dは、第1ビーム11のY軸方向の歪み量に応じてそれぞれ抵抗値が変化する。
【0024】
第2歪みセンサ5は、第2ビーム12に取り付けられ、第2ビーム12に発生する、主としてX軸方向の歪み量を測定する。第2ビーム12はY軸方向に延びており、第2連結部10に対してX軸方向から荷重が掛かると、X軸方向に歪む。第2ビーム12を構成するビーム12a〜12dには、第2歪みセンサ5を構成する抵抗体5a〜5dが1つずつ設けられている。それぞれの抵抗体5a〜5dは、第2ビーム12において、XY平面と平行な側面に接着により取り付けられている。これにより、抵抗体5a〜5dは、第2ビーム12のX軸方向の歪み量に応じてそれぞれ抵抗値が変化する。なお、第1及び第2歪みセンサ4,5を構成する抵抗体が8個ずつまたはそれ以上の場合は、各ビーム11a〜11d、12a〜12dには、抵抗体が複数個ずつ設けられる。
【0025】
第3歪みセンサ6,7は、第1ビーム11及び第2ビーム12にそれぞれ取り付けられて、第1ビーム11及び第2ビーム12にそれぞれ発生する、主としてZ軸方向の歪み量を測定する。第3歪みセンサ6,7は、第1及び第2歪みセンサ4,5と同様の理由から、それぞれ4n個(nは正の整数)で1組の抵抗体のセットで構成されることが好ましい。本実施形態では、第3歪みセンサ6,7は、4個で1組の抵抗体6a〜6d,7a〜7dのセットで構成される。抵抗体6a〜6d、7a〜7dは、抵抗体4a〜4d、5a〜5dと同じものが使用される。
【0026】
第1ビーム11は、第1連結部9に対してZ軸方向から荷重が掛かると、Z軸方向に歪む。ビーム11a〜11dには、第3歪みセンサ6を構成する抵抗体6a〜6dが1つずつ設けられている。それぞれの抵抗体6a〜6dは、第1ビーム11において、XY平面と直交し、かつ、X軸と平行な側面、すなわちXZ面と平行な側面に接着により取り付けられている。これにより、抵抗体6a〜6dは、第1ビーム11のZ軸方向の歪み量に応じてそれぞれ抵抗値が変化する。
【0027】
第1ビーム11と同様に、第2ビーム12は、第2連結部10に対してZ軸方向から荷重が掛かると、Z軸方向に歪む。ビーム12a〜12dには、第3歪みセンサ7を構成する抵抗体7a〜7dが1つずつ設けられている。それぞれの抵抗体7a〜7dは、第2ビーム12において、XY平面と直交し、かつ、Y軸と平行な側面、すなわちYZ面と平行な側面に接着により取り付けられている。これにより、抵抗体7a〜7dは、第2ビーム12のZ軸方向の歪み量に応じてそれぞれ抵抗値が変化する。
【0028】
なお、第3歪みセンサ6,7を構成する抵抗体が8個ずつまたはそれ以上の場合は、各ビーム11a〜11d、12a〜12dには、抵抗体が複数個ずつ設けられる。また、第3歪みセンサ6,7は、本実施形態では、第1及び第2ビーム11,12にそれぞれ取り付けられているが、これに限らず、第1及び第2ビーム11,12のいずれか一方だけに取り付けられてもよい。
【0029】
各歪みセンサ4〜7は、抵抗体4a〜4d、5a〜5d、6a〜6d、7a〜7dのセットごとに結線され、周知のホイートストンブリッジ回路を形成する。なお、各歪みセンサ4〜7を構成する4個1組の抵抗体が複数組ある場合は、ホイートストンブリッジ回路の各辺で複数の抵抗体を直列に接続したり、あるいは各組ごとに複数のホイートストンブリッジ回路をそれぞれ形成すればよい。
【0030】
各歪みセンサ4〜7から形成されたホイートストンブリッジ回路の出力は、例えば特公平7−104218号公報に記載されているような従来と同様の測定回路に結線され、抵抗値の変化に応じた測定電圧が測定データとして外部に出力される。なお、各歪みセンサ4〜7を結線したケーブル(図示せず)は、ホルダ8に形成された貫通孔15を通して外部に引き出される。
【0031】
上述したように、第1歪みセンサ4を構成する抵抗体4a〜4dは、第1ビーム11のY軸方向の歪み量に応じて抵抗値が変化する。また、第3歪みセンサ6を構成する抵抗体6a〜6dは、第1ビーム11のZ軸方向の歪み量に応じて抵抗値が変化する。そのため、抵抗体4a〜4d及び抵抗体6a〜6dによって構成される、それぞれのホイートストンブリッジ回路の出力から、主としてY軸及びZ軸方向の歪み量を測定することができる。
【0032】
一方、第2歪みセンサ5を構成する抵抗体5a〜5dは、第2ビーム12のX軸方向の歪み量に応じて抵抗値が変化する。また、第3歪みセンサ7を構成する抵抗体7a〜7dは、第2ビーム12のZ軸方向の歪み量に応じて抵抗値が変化する。そのため、抵抗体4a〜4d及び抵抗体6a〜6dによって構成される、それぞれのホイートストンブリッジ回路の出力から、主としてX軸及びZ軸方向の歪み量を測定することができる。
【0033】
次にロードセル2の製造方法について図6を参照しながら説明する。本体部3は、例えば、円柱状のステンレス材を加工して形成される。本体部形成工程では、切削加工、ドリルによる穴あけ加工及びワイヤーカット放電加工などにより、ホルダ8と、第1及び第2ビーム11,12と、連結部20とを有する半製品状態の本体部3を形成する。例えば、本体部3の外形は、切削加工で形成し、その後、切削加工やワイヤーカット放電加工を組み合わせて、ホルダ8と連結部20、各ビーム11,12間の空隙を形成する。
【0034】
これにより、円環状のホルダ8と、ホルダ8の内部空間に配置された連結部20と、ホルダ8の内周面と連結部20の外周面とを接続する第1ビーム11及び第2ビーム12とが、一体に形成された本体部3が形成される。なお、この本体部形成工程で形成される連結部20は、第1及び第2連結部9,10の2つの部分に分離されていない分離前の状態をいう。
【0035】
次に、第1及び第2連結部9,10をワイヤーカット放電加工により分離する連結部分離工程を行う。図6に示すように、この工程では、先ず、ドリルによる穴あけ加工などによって、ホルダ8の外周面8aからホルダ8の内部を通過し、反対側の外周面8aへと貫通する貫通孔21を形成する。この貫通孔21は、Z軸方向において第1及び第2ビーム11,12の間の位置に、かつ、例えば、Y軸と平行に形成される。この貫通孔21にワイヤー電極22を通す。この際、ワイヤー電極22が確実に連結部20を分離できるように、ワイヤー電極22は、連結部20の側面と接する位置に配置することが好ましい。
【0036】
この状態を保持したまま、ワイヤー電極22の軸方向に沿った無限軌道上でワイヤー電極22を移動しながら放電状態にする。本体部3をワイヤー電極22と直交するX軸方向に沿って押圧し、ワイヤー電極22に向かって連結部20を押し込んで移動させると、連結部20を貫通するスリット13を形成することができる。このようにして、スリット13を形成することにより、連結部20を、第1及び第2連結部9,10に分離すると、本体部3が完成する。そして、歪みセンサ取り付け工程において、第1及び第2ビーム11,12に歪みセンサ4〜7を接着により取り付けると、ロードセル2が完成する。
【0037】
図7は、第1実施形態のロードセル2を被測定物に取り付けた一例を示すものである。このロードセル2は、被測定物であるラジエーター31と、自動車のボディに設けられ、ラジエーター31がマウントされるマウント部32との間に取り付けられる。ロードセル2は、ラジエーター31とマウント部32との間に本来取り付けられるゴムブッシュの代わりに取り付けられている。
【0038】
なお、ロードセル2は、ラジエーター31が取り付けられる複数のマウント部32に対してそれぞれ取り付けられて測定が行われることが好ましい。第1連結部9は、ボルト33を雌ネジ部9aに螺合させることによってラジエーター31のステー31aと連結されている。第2連結部10は、ボルト34を雌ネジ部10aに螺合させることによってマウント部32に連結されている。また、各歪みセンサ4〜7は測定回路に結線され、測定電圧が外部に出力される。
【0039】
上記の取り付け状態で自動車を走行させると、ラジエーター31及びマウント部32の振動により第1及び第2連結部9,10に掛かる荷重が第1及び第2ビーム11,12のX、Y,Z軸方向に歪みを生じさせる。そして第1及び第2ビーム11,12の歪み量に応じて各歪みセンサ4〜7の抵抗値が変化し、抵抗値に応じた測定電圧が測定データとして外部に出力される。これにより、第1及び第2連結部9,10に掛かるX、Y,Z軸方向の荷重を測定することができる。
【0040】
以上のように、ロードセル2では、ホルダ8、第1及び第2連結部9,10、第1及び第2ビーム11,12を有する本体部3が一体に形成されているため、高い剛性を有する。このロードセル2は、高い剛性を有していることから、第1及び第2ビーム11,12でそれぞれ測定するY軸方向及びX軸方向の歪み量を正確に測定することができる。第1及び第2連結部9,10がスリット13で分離されているため、互いの動きに干渉することがなく、第1及び第2ビーム11,12はそれぞれ独立した方向に歪むことが可能であり、正確な歪み量に応じた抵抗値の測定を行うことができる。
【0041】
また、本体部3が一体に形成されていることから、高い剛性を確保することができるので、Z軸方向の厚みを薄くすることができる。このため、被測定物とマウント部との間に設けられるゴムブッシュなどが本来配置される隙間に取り付けることが可能である。また、互いのビームを直交させてロードセル同士をボルトで締結する連結ロードセルのように、ボルトが緩むことがない。
【0042】
なお、上記実施形態では、ロードセル2のホルダ8の形状を円環形状に形成したが、ホルダ8の形状は、これに限らず、第1及び第2連結部9,10を内部に配する枠状であればよく、例えば、図8に示すように、四角形の枠状にしてもよい。この場合、ホルダ8の中心に第1及び第2連結部9,10の中心が一致する位置に配置され、さらにホルダ8を構成する4辺8a〜8dが、第1及び第2連結部9,10の側面と平行な位置に配されることが好ましい。また、第1及び第2連結部9,10の形状は、四角形に限らず、被測定物と連結可能な形状であればよく、例えば円柱形状でもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、第1及び第2連結部9,10を分離するスリット13をワイヤーカット放電加工で形成しているが、スリット13を形成する方法はこれに限らず、例えば、レーザー加工により形成してもよい。
【0044】
上記実施形態では、第1連結部9に被測定物が連結されているが、これに限らず、第1及び第2連結部9,10の一方に被測定物が連結され、他方にマウント部が連結されればよい。また、上記実施形態では、第1ビーム11の各ビーム11a〜11dには、抵抗体4a〜4dが1つずつ、抵抗体6a〜6dが1つずつ設けられているが、これに限らず、Y軸方向の歪み量を測定する抵抗体4a〜4dだけでもよい。また、第2ビーム12の各ビーム12a〜12dについても同様に、X軸方向の歪み量を測定する抵抗体5a〜5dだけでもよい。
【0045】
上記実施形態では、本発明のロードセルが取り付けられる被測定物の一例として、自動車のマウント部に取り付けられるラジエーターを上げているが、被測定物としてはこれに限らず、例えば、ラジエーター以外の自動車の部品や、公園などに設置される遊具、貯蔵タンクなどの建築物を被測定物として適用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
2 ロードセル
3 ロードセル本体
4 第1歪みセンサ
5 第2歪みセンサ
6,7 第3歪みセンサ
8 ホルダ
9 第1連結部
10 第2連結部
11 第1ビーム
12 第2ビーム
13 スリット
22 ワイヤー電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8