特許第6354971号(P6354971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354971
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】遊星ローラ式摩擦伝動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 13/08 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   F16H13/08 F
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-120932(P2013-120932)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-238138(P2014-238138A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】野口 猛
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−245819(JP,A)
【文献】 特開昭63−266263(JP,A)
【文献】 特開2007−327567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 13/08
F16H 1/28− 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽軸と、前記太陽軸と同芯に対向配置された回転軸と、前記太陽軸の同径外周面に接触転動し、軸方向に併設された互いに外径の異なる中空円筒状の第一及び第二の遊星ローラと、前記第一の遊星ローラが内接転動するようにされた固定輪と、前記第二の遊星ローラが内接転動しかつ前記回転軸と同軸一体にされた差動輪と、前記第一及び第二の遊星ローラを一体に保持して前記回転軸から離間しているキャリアと、を有し、前記固定輪及び差動輪、又は前記太陽軸に前記第一及び第二の遊星ローラの軸方向の移動を規制する環状側板又は環状凸部を備え、前記キャリアは、前記第一の遊星ローラが周及び径方向に保持可能に摺接回転される円弧部を備えて内外径方向に開口部を有する第一のポケットと、前記第二の遊星ローラが周及び径方向に保持可能に摺接回転される円弧部を備えて内外径方向に開口部を有する第二のポケットと、前記第一及び第二の遊星ローラの外側端部が端面接触可能にされ前記第一及び第二の遊星ローラの軸方向外側への移動を規制する円環状側板と、を有し、前記第一及び第二のポケットが連接され、かつ前記第一及び第二のポケットの軸心が回転軸回りに同位相とされていて、前記キャリアの外径が前記固定輪及び差動輪の内径より小さくされていることを特徴とする遊星ローラ式摩擦伝動装置。
【請求項2】
前記回転軸は前記太陽軸の先端にラジアル軸受を介して軸回りに回転自在に保持され、前記回転軸の外周に入力又は出力用歯車が形成されていることを特徴とする請求項1記載の遊星ローラ式摩擦伝動装置。
【請求項3】
前記円環状側板を含み前記キャリアの外形の径が同一径にされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊星ローラ式摩擦伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二組の遊星ローラを太陽軸の軸方向に併設した遊星ローラ式摩擦伝動装置の遊星ローラのキャリアの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大きな変速比を得られる遊星ローラ式摩擦伝動装置には、遊星ローラの個数、段数、配置等種々のものがある。その中で、二組の外径が異なる遊星ローラを太陽軸の軸方向に併設した遊星ローラ式摩擦伝動装置が知られている。このものは例えば、特許文献1の図1、2に記載のように、太陽軸と、太陽軸と同芯に対向配置された回転軸と、太陽軸の同径外周面に接触転動し軸方向に併設された互いに外径の異なる第一及び第二の遊星ローラが設けられている。さらに、第一の遊星ローラが内接転動するようにされた固定輪と、第二の遊星ローラが内接転動しかつ回転軸と同軸一体にされた差動輪とを有している。また、第一及び第二の遊星ローラはキャリアで一体に自転及び公転可能に保持されている。
【0003】
キャリアには、太陽軸に回転自在に外装される環状プレートと、この環状プレートの軸方向前後に突出する複数の駆動ピンが設けられている。この駆動ピンにそれぞれ遊星ローラが軸受を介して回転自在に取り付けられ、遊星ローラをキャリアで保持している。
【0004】
また、特許文献2においては、駆動ピンでなく、遊星ローラが周及び径方向に保持可能に摺接回転され内外径方向に開口部を有するポケットとしたキャリア(ポケット式キャリア)が開示されている。さらに、遊星ローラを中空としたものが開示されている。また、遊星ローラの軸方向移動の規制手段として、固定輪に円環状の側壁(板)を設けている。なお、このキャリアは出力軸を兼ねている。一方、特許文献3においては、軸方向に異径部を有する遊星ローラを有し、遊星ローラの異径部をそれぞれ固定輪、差動輪に内接させる遊星ローラ式摩擦伝動装置において、遊星ローラを支持するポケット式キャリアが開示されている。このものは遊星ローラの軸方向移動の規制手段として、太陽軸に環状凸部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−117509号公報
【特許文献2】特開平10−213200号公報
【特許文献3】特開2007−327567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のキャリアでは、軸受による回転抵抗は少ないが、重量が増し、高速時に不利となる。また、構造が複雑で軸方向に長くなるという問題があった。そこで、キャリアを特許文献2、3のようなポケット式キャリアとし、さらには、中空の遊星ローラとすればよい。しかし、特許文献2、3のポケットは外径が一定の遊星ローラ用であって、異径の遊星ローラへの適用については開示されていない。また、回転軸は太陽軸と同軸とされ、ケーシングに回転支持されているので、さらに軸方向に長くなるという問題があった。本発明の課題は、かかる問題点に鑑みて、二組の外径が異なる遊星ローラを太陽軸の軸方向に併設した遊星ローラ式摩擦伝動装置の重量を減じ、構造が簡単で軸方向寸法も短いキャリアを提供し、さらには全体の軸方向長さの短い遊星ローラ式摩擦伝動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、太陽軸と、前記太陽軸と同芯に対向配置された回転軸と、前記太陽軸の同径外周面に接触転動し、軸方向に併設された互いに外径の異なる中空円筒状の第一及び第二の遊星ローラと、前記第一の遊星ローラが内接転動するようにされた固定輪と、前記第二の遊星ローラが内接転動しかつ前記回転軸と同軸一体にされた差動輪と、前記第一及び第二の遊星ローラを一体に保持して前記回転軸から離間しているキャリアと、を有し、前記固定輪及び差動輪、又は前記太陽軸に前記第一及び第二の遊星ローラの軸方向の移動を規制する環状側板又は環状凸部を備え、前記キャリアは、前記第一の遊星ローラが周及び径方向に保持可能に摺接回転される円弧部を備えて内外径方向に開口部を有する第一のポケットと、前記第二の遊星ローラが周及び径方向に保持可能に摺接回転される円弧部を備えて内外径方向に開口部を有する第二のポケットと、前記第一及び第二の遊星ローラの外側端部が端面接触可能にされ前記第一及び第二の遊星ローラの軸方向外側への移動を規制する円環状側板と、を有し、前記第一及び第二のポケットが連接され、かつ前記第一及び第二のポケットの軸心が回転軸回りに同位相とされていて、前記キャリアの外径が前記固定輪及び差動輪の内径より小さくされている遊星ローラ式摩擦伝動装置を提供することにより前述した課題を解決した。
【0008】
即ち、ポケット式キャリアの第一の遊星ローラと第二の遊星ローラの径の異なるポケットを軸方向に連接(両ポケット間に、仕切りや、小径部を設けることなく連続して配置)して設けた。これにより、遊星ローラ間の距離を小さくできる。なお、両ポケット間の径違いにより生じる又は加工のための段部やテーパ面、溝等は連接の範囲である。また、キャリアの外径が固定輪及び差動輪の内径より小さい内外径方向に開口する第一、第二ポケットを有するかご状円筒とした。
【0009】
また、請求項2に記載の発明においては、前記回転軸は前記太陽軸の先端にラジアル軸受を介して軸回りに回転自在に保持され、前記回転軸の外周に入力又は出力用歯車が形成されている遊星ローラ式摩擦伝動装置とした。太陽軸を利用して回転軸の軸とし、回転軸の外周に歯車を設けて入出力可能となった。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明においては、前記円環状側板を含み前記キャリアの外形の径が同一径にされている遊星ローラ式摩擦伝動装置とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、太陽軸と、太陽軸と同芯に対向配置された回転軸と、太陽軸の同径外周面に接触転動し、軸方向に併設された互いに外径の異なる第一及び第二の遊星ローラと、第一の遊星ローラが内接転動するようにされた固定輪と、第二の遊星ローラが内接転動しかつ前記回転軸と同軸一体にされた差動輪と、第一及び第二の遊星ローラを一体に保持するキャリアと、を有し、固定輪及び差動輪、又は太陽軸に第一及び第二の遊星ローラの軸方向の移動を規制する環状側板又は環状凸部を備えた遊星ローラ式摩擦伝動装置のポケット式キャリアの第一の遊星ローラと第二の遊星ローラの径の異なるポケットを軸方向に連接して設け、遊星ローラ間の距離を小さくしたので、軸方向寸法を小さいものとなった。また、キャリアの外径が固定輪及び差動輪の内径より小さい内外径方向に開口する第一、第二ポケットを有するかご状円筒としたので、構造も簡単で重量も軽いものとなった。また、第一及び第二のポケットの軸心は回転軸回りに同位相としたので、加工が容易で精度も高くすることができ、さらには遊星ローラのスキューを少なくできる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明においては、太陽軸を利用して回転軸の軸とし、回転軸の外周に歯車を設けて入出力可能としたので、軸方向に狭い空間に配置することができる。また、請求項3に記載の発明においては、円環状側板を含みキャリアの外形の径を同一径にしたので、取扱も容易で、組み込み、組立が簡単なものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態を示す遊星ローラ式摩擦伝動装置の図2又は図3のC−C線縦断面図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図1のB−B線断面図である。
図4】本発明の実施の形態及び他の実施の形態を示す遊星ローラ式摩擦伝動装置のキャリアの(a)は左側面図、(b)は(a)のD−D線縦断面図である。
図5図4(b)のE−E線断面図である。
図6図4(b)のF−F線断面図である。
図7図4(b)のG−G線断面図である。
図8】本発明の他の実施の形態を示す遊星ローラ式摩擦伝動装置の図9又は図10のH−H線縦断面図である。
図9】図のI−I線断面図である。
図10】図のJ−J線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1乃至図3に示すように、本発明の実施の形態の遊星ローラ式摩擦伝動装置1は、太陽軸2と、太陽軸と同芯に対向配置された回転軸3と、太陽軸の同径外周面2a、2bに接触転動し、軸方向に併設された互いに外径の異なる第一の遊星ローラ4及び第二の遊星ローラ5を有する。太陽軸2はケーシング20aに軸受21を介して回転自在保持される。回転軸3はケーシング20bに軸受22を介して回転自在保持される。第一の遊星ローラ4はケーシング20aに固定された固定輪6の内周6aを内接転動する。第二の遊星ローラ5は回転軸3と同軸一体にされた差動輪7の内周7aを内接転動する。第一及び第二の遊星ローラ4、5はキャリア30に一体に保持される。第一及び第二の遊星ローラ4、5は、中空円筒状である。
【0015】
これにより、太陽軸2と回転軸3とは従来と同様の大きな変速比を有する遊星ローラ式摩擦伝動装置1を形成する。なお、変速比及び変速原理については従来の特許文献1の段落0011乃至0016の記載及び図1と同様であるので説明を省略する。
【0016】
太陽軸2は図示しない外部と嵌合する軸端を有し、軸受21よりケーシング20内に向かって延出しており、環状凸部2c、第一の遊星ローラが接触転動する第一転動面2a、環状凸部2d、第二の遊星ローラが接触転動する第二転動面2b、環状凸部2eが順に形成されている。環状凸部2c乃至4eは環状凸部間で回転する第一及び第二の遊星ローラ4、5の軸方向の移動を規制する。第一の遊星ローラ4が内接する固定輪6はボルト23によりケーシング20aに固定されている。第二の遊星ローラ5が内接する差動輪7は円盤状の回転軸3に設けられた取り付け部8にボルト9にて固定され、回転軸3と一体にされている。回転軸3はケーシング外に伸び図示しない外部と嵌合する軸端を有している。
【0017】
図4乃至図8に示すように、キャリア30は、軸方向に第一及び第二の遊星ローラ4、5を回転可能に保持するためのポケット31、32が太陽軸2回りに等分に4個ずつ配置されている。これにより、第一及び第二の遊星ローラ4、5が太陽軸2回りに等分に4個ずつ配置される。ポケット31、32は内外径方向に開口部31a、31b、32a.32bを有し、遊星ローラ4、5の外周を微少隙間で保持する円弧部31c、32cを有している。第一の遊星ローラ4を保持する第一ポケット31と第二の遊星ローラ5を保持する第二ポケット32の軸心は回転軸回りに同位相とされ、かつ連接して設けられ、段差部33が形成されている。第二ポケット32の端部(図4で見て左端)には円環状側板を形成するキャリア底部34を有し、底部から第一ポケット31方向へ伸びる櫛状部35を有し、櫛状部35の軸直角方向に前述したポケット31、32を形成している。第一ポケット31端に円環状側板を形成する蓋部材36が通しボルト37により螺着固定され、かご状円筒のキャリア30とされている。また、底部、蓋部材、櫛状部の外径は同一である。
【0018】
かかるキャリア30によれば、従来と同様の大きな変速比を得られるとともに、図1に示すように、第一及び第二の遊星ローラ4、5間の距離dを小さくすることができ、軸方向の距離を小さく、加工も容易であり、小型軽量、高速化が可能となった。
【0019】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を参照して説明する。前述した図1の形態では遊星ローラの軸方向の規制機構を太陽軸側に設け、回転軸の外部軸端を太陽軸と反対方向に延出したのに対し、本発明の他の実施の形態の遊星ローラ式摩擦伝動装置は、遊星ローラの軸方向の規制機構を固定軸、作動軸側に設け、回転軸に対し軸直角方向へ伝動できるようにしたものである。なお、前述したと同様の構成については、同符号を付し、説明の一部又は全部を省略する。
【0020】
図8乃至図10に示すように、本発明の他の実施の形態の遊星ローラ式摩擦伝動装置11は、太陽軸12のケーシング40内への延出部側は同径のストレート12aとされている。さらに、先端12bには軸受24の内輪24aが固定されている。一方、ケーシング40aに固定された固定輪16の内周面16aの両側面には鍔(環状側板)16b,16bが設けられている。また、回転軸13と一体にされた差動輪17の内周面17aの両側面には鍔(環状側板)17b,17bが設けられ遊星ローラ4、5の軸方向への移動を規制している。
【0021】
また、回転軸13は太陽軸12の先端に設けられた軸受24の外輪24bに固定され太陽軸に対して回転保持されている。差動輪17が取り付けられた円盤部18の外周には歯車18aが設けられている。ケーシング40bには歯車18aの一部が外部と歯車伝動可能に開口40cが設けられている。これにより、軸と並行に設けられた外部軸に対して歯車伝動が可能になり、軸方向への増大のない遊星ローラ式摩擦伝動装置11を提供するものとなった。
【0022】
なお、キャリア30のポケット31、32の遊星ローラ回転面、円環状側板の遊星ローラ端面摺接面は適宜動圧軸受や潤滑機構を付加するのが好ましいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0023】
1、11 遊星ローラ式摩擦伝動装置。
2、12 太陽軸
2a、2b、12a 太陽軸の外周面
2c、2d、2e 環状凸部
3、13 回転軸
4 第一の遊星ローラ
5 第二の遊星ローラ
6、16 固定輪
7、17 差動輪
16b、17b 環状側板
18a 歯車
24 ラジアル軸受
30 キャリア
31 第一のポケット
31a、32a 内径方向開口部
31b、32b 外径方向開口部
32 第二のポケット
34、36 円環状側板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10