(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る一実施形態について図面を参照して説明する。
なお、以下では、所定の構成要素における液晶表示素子の表示面方向(液晶表示素子の視認者の方向)を「表」とし、その反対方向を「裏」として、説明する。
【0010】
1.第1実施形態
図1に示す第1実施形態に係る液晶表示素子100は、パッシブ駆動方式、背景色が黒色であるノーマリブラック(NB)モード、且つセグメント表示型の液晶表示素子であり、屋外での使用(例えば、バイク等の二輪車に搭載される)を想定して構成されている。
液晶表示素子100は、液晶パネル10と、一対の第1偏光フィルタ20及び第2偏光フィルタ30と、反射層40と、を備える。
【0011】
液晶パネル10は、互いに対向する一対の第1基板1F及び第2基板1Rと、それぞれの基板の互いに対向する内面(対向面)に形成された第1電極2F及び第2電極2Rと、これら電極を覆うように形成された第1配向膜3F及び第2配向膜3Rと、第1基板1Fと第2基板1Rを接合するためのシール材4と、第1基板1Fと第2基板1Rとシール材4とによって形成される空間に封入される液晶層5と、液晶層5の厚み(セルギャップ)を一定に保持するためのスペーサ6と、を備える。
【0012】
第1基板1F、第2基板1Rは、各々、例えば、ガラス、プラスチック等から構成される透明基板である。第1基板1Fと第2基板1Rとは、液晶層5を挟んで対向するように、且つ、互いの主面が平行となるように配置されている。第1基板1Fは液晶パネル10の表側に位置し、第2基板1Rは液晶パネル10の裏側に位置する。
【0013】
第1基板1Fの板厚は、例えば、1.1mm程度に設定されている。第2基板1Rの板厚は、第1基板1Fの板厚よりも小さく設定されている。具体的には、第2基板1Rの板厚は、液晶表示素子100がその表示面に表示する所定の意匠を構成するセグメント形状のうち最も細い幅を有するセグメント形状の幅と概ね一致(丁度、一致も含む)するように(具体的には、一例として0.7mm以下の範囲で概ね一致するように)設定されている。さらには、第2基板1Rの板厚は、好ましくは0.15mm以上0.4mm以下の条件を満たすように設定されている。このように設定した理由は後に詳述する。
【0014】
第1電極2F、第2電極2Rは、各々、酸化インジウムを主成分とするITO(Indium Tin Oxide)膜等から構成され、光を透過する透明電極からなる。第1電極2Fは第1基板1Fの裏側の面上に、第2電極2Rは第2基板1Rの表側の面上に、公知の方法(スパッタ、蒸着、エッチング等)により形成される。なお、第1電極2F及び第2電極2Rは、ポリチオフェン等のπ共役系導電性高分子を含む材料により形成されていてもよい。また、必要に応じて、第1電極2F、第2電極2Rの各々を覆う絶縁膜を設けてもよい。
【0015】
第1電極2Fはコモン電極として、第2電極2Rはセグメント電極として構成されている。両電極には、パッシブ駆動方式で電圧が印加される。つまり、液晶パネル10は、セグメント表示型であってパッシブ駆動方式の液晶パネルとして構成されている。なお、第1電極2Fがセグメント電極、第2電極2Rがコモン電極として構成されてもよい。
液晶表示素子100は、基板法線方向における両電極の重なる領域において、記号(文字、数字を含む)、図形、又はこれらの組み合わせを表す所定の意匠を表示する。具体的には、背景色が黒の表示面において、両電極にON電圧が印加された領域に外光等の光を導かせることによって、液晶表示素子100は、所定の意匠を白く表示する(どのように表示するかについては後述する)。
【0016】
表示面に表示される所定の意匠の一例を
図2(a)に示す。同図は、液晶表示素子100が、表示面に「km/l」という意匠50を表示している例を示したものである。この意匠50は、「k」という文字を表すセグメント形状51、「m」という文字を表すセグメント形状52、「/」という記号を表すセグメント形状53、及び「l」という文字を表すセグメント形状54によって構成されている。これらセグメント形状の組み合わせにより、視認者は、表示された意匠50により「km/l」という単位を認識できる。なお、ここでセグメント形状とは、背景領域Bによって囲まれた形状(独立した1の形状)をいう。
【0017】
図1に戻って、第1配向膜3F、第2配向膜3Rは、各々、液晶層5と接し、液晶層5が含む液晶分子の配向状態を規定するためのものであり、例えばポリイミドから、公知の方法(例えば、フレクソ印刷)によって形成される。第1配向膜3Fは第1電極2Fを裏側から覆うように形成されており、第2配向膜3Rは第2電極2Rを表側から覆うように形成されている。
第1配向膜3F及び第2配向膜3Rには、ラビング処理が施されている。第1配向膜3Fのラビング方向と第2配向膜3Rのラビング方向とは略直交(丁度、直交も含む)する。このようにラビング処理が施された両配向膜により、液晶層5が含む液晶分子の配向方向が規定される。なお、第1配向膜3F及び第2配向膜3Rに施される配向処理は、光配向処理、突起配向処理等の他の公知の処理によってもよい。
【0018】
液晶層5は、一対の第1基板1F及び第2基板1Rを接合するためのシール材4と、両基板とによって形成される密閉空間に液晶材が封入されることによって形成される。封入される液晶材は、例えば、屈折率異方性Δnが0.09程度のTN(Twisted Nematic)用のネマティック液晶である。液晶層5の液晶分子は、第1配向膜3F及び第2配向膜3Rの配向規制力により、その長軸の向きが液晶層5の第1基板1F側の端部と第2基板1R側の端部とで90°ねじれるとともに、一方の基板側から他方の基板側にいくにつれて少しずつ回転(旋回)するように配向する(カイラル構造)。このようにして、電圧無印加時における液晶層5は、カイラリティを有する。なお、後に変形例で説明するように、液晶層5はTN型液晶に限られるものではないが、本実施形態では、液晶表示素子100の構成の理解を容易にするため、液晶表示素子100がTN型のものであるとして説明する。
【0019】
スペーサ6は、液晶層5の厚み(セルギャップ)を一定に保持するとともに、振動が与えられても移動しづらい固着型スペーサである。このスペーサ6は、加熱により第1基板1Fと第2基板1Rとの間に固着される。本実施形態では、スペーサ6によりセルギャップが、6.0μm程度に保持されている。固着型スペーサとしては、例えば、積水ファインケミカル社製のSP−2063AC4を用いることができる。
ところで、通常、液晶パネルにおいては、一対の基板の板厚が同じに設定される(例えば、表側基板、裏側基板ともに1.1mm程度)。しかし、本実施形態に係る液晶パネル10では、前述のように、裏側基板である第2基板1Rの板厚が第1基板1Fの板厚よりも小さく設定されている。このように基板が薄くなると、振動によって、
図3に示すような糸状の傷(スペーサ傷S1)が第2基板1Rに生じてしまう。このようにして生じるスペーサ傷S1を低減もしくは抑制するために、本実施形態では、スペーサ6として固着型のスペーサを用いている。これにより、液晶表示素子100が屋外で使用されても(例えば、バイク等の二輪車に搭載され、振動が与えられても)、スペーサ傷S1が生じにくく、表示品位を良好に保つことができる。
なお、スペーサの移動を防止する方法は、固着型スペーサを用いる方法に限られない。スペーサ6は、感光性樹脂材料等からなるフォトスペーサであってもよい。
【0020】
第1,第2偏光フィルタ20,30は、表面側又は裏面側から入射する光を吸収軸に直交する透過軸に沿った直線偏光として出射する偏光板である。第1偏光フィルタ20は第1基板1Fの表側に配置され、第2偏光フィルタ30は第2基板1Rの裏側に第2基板1Rと反射層40との間に位置するように配置されている。第1偏光フィルタ20と第2偏光フィルタ30とは、各々の有する光軸(透過軸又は吸収軸)が互いに略平行(丁度、平行も含む)となるように配置されている(平行ニコル配置)。
【0021】
反射層40は、表側から入射した光を反射し裏側からの光を透過する半反射層であり、アルミ等で形成されたハーフミラーや、反射性フィラーを分散したもの等で構成される。この反射層40は、第2偏光フィルタ30の裏面に直接形成されていることで第2偏光フィルタ30と一体に形成されるものであってもよい。第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率(第2偏光フィルタ30の透過率と反射層40の反射率とで定まる)は、液晶表示素子100がその表示面に表示する所定の意匠を構成するセグメント形状のうち最も細い幅を有するセグメント形状の幅を考慮して設定される。具体的には、第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率は、前記意匠を構成するセグメント形状のうち最も細い幅を有するセグメント形状の幅に第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率を乗算した値が20以上となるように設定される。なお、反射層40の単体反射率を第2偏光フィルタ30を含むものとしたのは、前述のように反射層40が第2偏光フィルタ30と一体に形成される場合は反射層40のみの反射率を得るのが難しいためである。
このように設定した理由は後に詳述する。
【0022】
液晶表示素子100の裏側(つまり、反射層40の裏側)には、図示しないバックライトが配設される。このバックライトは、所定の光を面状に出射して液晶表示素子100を裏側から照らすものであり、例えば、発光ダイオードと導光部材との組合せによって構成される。バックライトは、液晶表示素子100が透過表示を行う際に、使用されるものである。つまり、本実施形態に係る液晶表示素子100は、半透過型(半反射型とも呼ばれる)のものとして構成されている。
【0023】
以上の構成からなる液晶表示素子100は、次のように表示を行う。
【0024】
本実施形態に係る液晶表示素子100は、主に、前記バックライトの照明を用いずに反射表示を行う際の影見えを低減するものであるため、ここでは反射表示について説明する。
(黒表示)
液晶表示素子100では、液晶分子が挙動し始める閾値電圧よりも低い値にOFF電圧が設定されている。すると、OFF電圧を印加しても液晶分子が実質的に基板面と平行なままである。つまり、OFF電圧が印加されている領域においては、液晶層5はカイラリティを有したままである。したがって、この領域においては、液晶表示素子100の表側から入射し、第1偏光フィルタ20を通過することによって直線偏光となった外光は、液晶層5を通過すると液晶層5のカイラリティにより約90°偏光方向が傾く。すると、液晶層5を通過した光は、第1偏光フィルタ20と光軸が略平行である第2偏光フィルタ30を通過できない。このようにして、液晶表示素子100は、背景を黒色に表示する(NBモード)。
(白表示)
一方、ON電圧が印加されている領域においては、液晶層5の液晶分子は、電圧の印加方向(基板法線方向)に沿うように配向し、そのカイラリティが失われるため、第1偏光フィルタ20を通過した直線偏光の偏光方向は、液晶層5を通過することによってもほぼ変化しない。従って、液晶層5を通過した光は、第1偏光フィルタ20と光軸が略平行である第2偏光フィルタ30を通過し、反射層40で反射する。同様の理由により、反射層40で反射した光は、液晶表示素子100の裏側から、第2偏光フィルタ30、液晶層5、第1偏光フィルタ20の順で通過することができる。この反射光が視認者の目に入ることにより所定の意匠を白く表示する。
【0025】
(第2基板1Rの板厚について)
図4(c)に、液晶表示素子100と同様な構成の液晶表示素子であって、第1基板1F及び第2基板1Rの板厚を、共に、1.1mmと設定した比較例の表示面の写真を示す。
この写真からわかるように、比較例の設定では、前述したように影見えが発生してしまう(セグメント形状の形成領域に生じたセグメント影S2参照)。この影見えは、裏側基板である第2基板1Rによる視差(第2基板1Rの板厚ぶんの視差)に起因する。影見えを低減するためには、第2基板1Rをできるだけ薄く設定して、液晶層5と反射層40の間隔を狭めるようにすればよい。ただ、この場合、第2基板1Rの板厚をどのような値で設定すればよいかが問題となる。
【0026】
本願発明者は、第2基板1Rの板厚を、表示面に表示される所定の意匠を構成するセグメント形状のうち最も細い幅を有するセグメント形状の幅近傍の値に設定すれば(好ましくは、最も細い幅を有するセグメント形状の幅と概ね一致(丁度、一致も含む)させれば)、効果的に、影見えを低減できることに想い到った。通常、セグメント表示型の場合、所定の意匠を構成するセグメント形状のうち最も細い幅を有するセグメント形状の幅は、0.4mm程度(例えば、0.2〜0.7mm)に設定されている。というのは、0.4mmよりも細いセグメント形状は、視認上、認識しづらいためである。本願発明者は、第2基板1Rの板厚を、この0.4mm程度の値に設定すれば、視認可能な意匠においてはセグメント形状にセグメント影S2が生じないはずである、と想い到った。
【0027】
ここで具体例を示すと、例えば、
図2(a)に示した表示意匠の一例としての意匠50を構成するセグメント形状51〜54のうち、「/」という記号を表すセグメント形状53が最も細い幅Dを有しており、この幅Dが0.4mmであると仮定する。この場合に、第2基板1Rの板厚をセグメント形状53の幅D=0.4mmの近傍の値に設定する。以下では、所定の意匠を構成するセグメント形状のうち最も細い幅を有するセグメント形状の幅Dをセグメント幅Dと呼ぶことにする。
【0028】
本願発明者は、0.4mm近傍の値である、0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.7mmの板厚の第2基板1Rを複数用意し、各々の板厚の第2基板1Rを備える液晶表示素子100の表示面を目視により観察した。この観察結果を
図4(a)に示す。なお、同図に、第2基板1Rを1.1mmに設定した比較例の観察結果も併記した。また、同図では、第2基板1Rの板厚を「R板厚」と表記している。
【0029】
図4(a)では、目視による観察結果を○、△、×の記号を用いて示した。各記号が示す評価は以下の通りである。
○…影見えが視認されず、見栄えが良好
△…影見えが若干視認されるが、許容できる
×…影見えが目立つ
観察の結果、第2基板1Rの板厚が0.7mm及び0.6mmの場合、影見えが若干視認されるものの表示品位としては許容でき、概ね良好であった。さらに薄い板厚0.4mm、0.2mmの場合、影見えは、ほとんど視認できない程度であり、表示品位がより良好であった。参考として
図4(b)に板厚0.4mmの場合の表示面の写真を示す。この写真からもわかるように影見えは、ほとんど認識できない。一方、前述したが、
図4(c)を参照すると第2基板1Rの板厚が1.1mmの比較例では、影見えが生じ、表示意匠が判読しづらくなっていることがわかる。なお、
図4(b)、(c)では、第1基板1Fを「F板」、第2基板1Rを「R板」と表記している。
【0030】
以上のように目視による観察結果によって、第2基板1Rの板厚を、表示面に表示される所定の意匠を構成するセグメント形状のうち最も細い幅を有するセグメント形状の幅近傍の値に設定する、具体的には、第2基板1Rの板厚を0.7mm以下、さらに好ましくは0.4mm以下の値に設定すれば、影見えを低減できることがわかった。
【0031】
)
次に、本願発明者は、第2基板1Rの板厚を上記のように設定することによる利点を確認するため、セグメント幅Dが0.2mm、0.4mm各々の場合における、第2基板1Rの板厚と液晶表示素子100に対する外光の入射角(外光の出射角と等しい)との関係について考察した。
図5(a)にこの関係についてのグラフを示す。このグラフをどのようにして作成したかは、後に詳述する。
【0032】
所定のセグメント形状が白表示となるためには、液晶表示素子100に表側から入射する外光が所定のセグメント形状の形成領域に入射し、反射層40で反射し、同形成領域から出射されなければならない。以下、
図2(b)を参照して、一具体例について説明する。
【0033】
図2(b)は、ON電圧印加時における液晶表示素子100を
図2(a)に示すセグメント形状53のセグメント幅D方向に沿って切った場合の断面図(A−A線断面図)を模式的に示したものである。同図では、外光入射角(又は出射角)についての理解を容易にするために、第1基板1F、第2基板1R、液晶層5、反射層40以外の構成を省略している。また、断面を表すハッチングも省略した。符号5Wを付した箇所は、表示面を白表示にさせる液晶層5の部分であり、これをセグメント形成領域5Wと呼ぶ。そして、液晶層5におけるその他の部分(つまり、表示面を黒表示にさせる液晶層5の部分)には、符号5Bを付した。同図において、外光Lは、セグメント形成領域5Wに入射して、反射層40で反射し、同形成領域から出射している。このような光路で外光Lが進めば、「/」を表すセグメント形状53が白表示として視認者に視認される。
【0034】
ここで、液晶表示素子100の表示面への外光入射角θ1と第2基板1Rの厚さTとの関係を考察するため、液晶パネル10及び表側の第1偏光フィルタ20が同一屈折率と仮定し(ガラス基板の屈折率1.6とした。この屈折率をn2とする(n2=1.6)。)、第2基板1R以外の厚さを無視するものとする。この場合、外光入射角θ1が、外部(屈折率n1=1.0の空気とする)と表示面との界面(前記仮定では、屈折率n1の物質と屈折率n2の物質の界面)におけるブリュースター角θ
Bに近ければ近いほど、反射損失が少なくなる(つまり、反射効率に優れる)ため、外光入射角θ1は、セグメント形状53を明るく表示させることが可能かどうかの目安になるはずである。
【0035】
上記仮定のもと、液晶層5への入射角をθ2とすれば、外光反射角θ1は、次の(数1)式で表すことができる。
【数1】
【0036】
また、上記仮定のもと、第2基板1Rの板厚をTとすると、θ2は、次の(数2)式で表すことができる。
【数2】
【0037】
また、上記仮定のもと、ブリュースター角θ
Bは、次の(数3)式で表すことができる。
【数3】
この(数3)式により、ブリュースター角θ
Bを算出すると、度表示で、約58°となる。
【0038】
上記(数1)(数2)式により、セグメント幅Dを0.2mm、0.4mmとし、第2基板1Rの板厚Tを0.15〜1.1mmの範囲内で適宜変化させた場合における板厚Tと外光入射角θ1との関係を求めることによって作成されたグラフが
図5(a)である。また、D=0.2mmでのTとθ1の関係を
図5(b)に、D=0.4mmでのTとθ1の関係を
図5(c)に示した。なお、θ1がθ
B=58°を超えると、表示面の表面で光が全反射し、反射率が飽和するため、反射率は同じ値となる。また、板厚Tが0.15mmよりも小さいと、強度上問題があるため、板厚Tの最小値を0.15mmとした。
【0039】
図5(a)〜(c)を参照すると、セグメント幅Dが0.2mmの場合、板厚Tが、このセグメント幅Dの近傍の値である0.15mm、0.2mmに設定されたときに、外光入射角θ1が、ブリュースター角θ
B=58°近傍の値になることがわかる(θ1=63、45)。セグメント幅Dが0.4mmの場合、板厚Tが、このセグメント幅D近傍の値である0.3mm、0.4mmに設定されたときに、外光入射角θ1が、ブリュースター角θ
B=58°近傍の値になることがわかる(θ1=63、45)。
また、セグメント幅Dが0.2mmと0.4mmとのいずれの場合においても、板厚Tが1.1mmよりも、0.7mm、0.4mm、0.3mm、と小さくなるにつれて、外光入射角θ1がブリュースター角θ
B=58°に近づき、反射損失が少なくなることがわかる。
【0040】
以上の考察から、第2基板1Rの板厚Tをセグメント幅D近傍の値に設定すれば、反射損失が少なく、良好な明度でセグメント形状(ないしは表示意匠)を表示できることがわかる。
つまり、第2基板1Rの板厚を、(1)セグメント幅Dと概ね一致(例えば、第2基板1Rの板厚が0.7mm以下の範囲で概ね一致)するように設定するか、(2)さらに好ましくは、0.15mm以上0.4mm以下に設定すれば、影見えを低減できるのみならず、良好な明度でセグメント形状を表示できることがわかった。
【0041】
(第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率について)
前述したように、所定のセグメント形状が白表示となるためには、液晶表示素子100に表側から入射する外光が所定のセグメント形状の形成領域に入射し、反射層40で反射し、同形成領域から出射されなければならない(
図2(b)参照)。しかしながら、セグメント形状の幅が細くなると、セグメント形状に入射する外光も減少し、意匠を構成するセグメント形状が見えにくくなって表示品位が低下する。このことは意匠を構成するセグメント形状のうち最も細い幅を有するセグメント形状において最も顕著である。
【0042】
本願発明者は、第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率を、意匠を構成するセグメント形状のうち最も細い幅を有するセグメント形状の幅(セグメント幅D)に第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率を乗算した値が20以上となるように設定することに思い至った。つまり、第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率を、セグメント幅Dの値をdmm(d≦0.7)とし、第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率の値をf%とした場合に、
d×f≧20
となるように設定すれば、セグメント幅Dを有するセグメント53も視認可能とすることができることに思い至った。
【0043】
本願発明者は、セグメント幅Dの値dmmがそれぞれ0.4mm(d=0.4)、0.55mm(d=0.55)、0.7mm(d=0.7)である3つの液晶表示素子100について、第2偏光フィルタ30を含む単体反射率の値f%が20%(f=20)、30%(f=30)、40%(f=40)、50%(f=50)、60%(f=60)、80%(f=80)である第2偏光フィルタ30が一体に形成された反射層40を複数用意し、第2偏光フィルタ30を含む単体反射率の値f%が40%である反射層40を備える液晶表示素子100の表示面を目視により観察し、さらに、セグメント幅Dを有するセグメント53が暗くて視認できなくなるまで順次第2偏光フィルタ30ごと反射層40を交換して順次第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率の値f%を下げ、また、セグメント53が概ね良好に視認可能となるまで順次第2偏光フィルタ30ごと反射層40を交換して順次第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率の値f%を上げて液晶表示素子100の表示面を目視により観察した。なお、第2基板1Rの板厚はセグメント幅Dと一致させた。この観察結果を
図6(a)、(b)、(c)に示す。なお、同図では、セグメント幅Dを「最細意匠幅」、第2基板1Rの板厚を「R板厚」、第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率を「単体反射率」と表記している。
【0044】
図6(a)、(b)、(c)では、目視による観察結果を○、△、×の記号を用いて示した。各記号が示す評価は以下の通りである。
○…視認可能
△…暗いが視認可能
×…暗くて視認できない
観察の結果、セグメント幅Dの値dが0.4mmである液晶表示素子100においては、
図6(a)に示すように、第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率の値fが40%の場合に、セグメント幅Dを有するセグメント53が暗くて視認できず、50%及び60%の場合は、セグメント53が若干暗いものの視認することができ、80%の場合に、セグメント53が概ね良好に視認できた。また、セグメント幅Dの値dが0.55mmである液晶表示素子100においては、
図6(b)に示すように、第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率の値fが30%の場合に、セグメント幅Dを有するセグメント53が暗くて視認できず、40%の場合は、セグメント53が若干暗いものの視認することができ、50%及び60%の場合に、セグメント53が概ね良好に視認できた。また、セグメント幅Dの値dが0.7mmである液晶表示素子100においては、
図6(b)に示すように、第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率の値fが20%の場合に、セグメント53が暗くて視認できず、30%、40%の場合は、セグメント53が若干暗いものの視認することができ、50%の場合に、セグメント53が概ね良好に視認できた。
図6(d)に、セグメント幅Dの値dmmとセグメント53が視認できる第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率の値f%との関係を示す。これによれば、セグメント幅Dの値dが0.4mmである液晶表示素子100においては、d×f≧20の場合にセグメント53が視認でき、セグメント幅Dの値dが0.55mmである液晶表示素子100においては、d×f≧22の場合にセグメント53が視認でき、セグメント幅Dの値dが0.7mmである液晶表示素子100においては、d×f≧21の場合にセグメント53が視認できることがわかった。つまり、セグメント幅Dの値dmmとセグメント53が視認できなくなる第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率の値f%との関係が、セグメント幅の値dが0.4mm、0.55mm、0.7mmである液晶表示素子100でそれぞれ、d×f=16、16.5、14であることと、数%の単体反射率の違いが見栄えに与える影響が軽微であることを考慮すると、第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率を、セグメント幅Dの値をdmm(d≦0.7)とし、第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率の値をf%とした場合に、
d×f≧20(さらに望ましくはd×f≧22)
となるように設定すれば、セグメント幅Dを有するセグメント53も視認可能とすることができると言える。
なお、以上の説明における反射率は、リング光源を使用し反射色彩計(横河メータ&インスツルメンツ社製)を用いた方法(20°入射/0°測定)で測定したものである(標準白色板反射率を100%とした場合の反射率)。
【0045】
2.第2実施形態
第2実施形態に係る液晶表示素子は、第1実施形態に係る液晶表示素子100に加え、さらに補強部材60を備えた、
図7(a)に示す、液晶表示素子200である。つまり、第2実施形態に係る液晶表示素子200は、液晶パネル10と、一対の第1偏光フィルタ20及び第2偏光フィルタ30と、反射層40と、補強部材60と、を備える。
【0046】
補強部材60は、主に第2基板1Rが撓むのを抑制するためのものであり、反射層40の裏側に配設される(例えば、反射層40の裏面に固着される)。補強部材60は、光透過性のある板状の透明補強板であり、アクリル等の所定の樹脂からなる。このように、補強部材60を設ければ、第2基板1Rを第1基板1Fに比して薄くしたことによる第2基板1Rの強度の低下を補いつつも、液晶層5と反射層40との間隔に影響を与えることはないため、影見えの低減効果を維持することができる。このような液晶表示素子200を、例えば、図示しないアルミ等からなる金属筐体に収納し、所定の外部装置(例えば、バイクの表示計器)の筐体90に、ゴム、エラストマー等からなる弾性部材91を介して挟持させるように取り付ければ、耐振動性のスペーサ6、補強部材60、及び弾性部材91により、振動によって液晶表示素子200に与えられる影響(スペーサ傷S1の発生、第2基板1Rの破損等)を極力抑えることができ、信頼性の高い製品を提供することができる。
【0047】
(補強部材の変形例)
なお、補強部材は、上記のように透明なものでなくともよい。その一例である補強部材60’を
図7(b)に示す。補強部材60’も同様に反射層40の裏側に配設される。この補強部材60’は、表示面のうち所定の意匠が表示される領域である表示エリア101aと表示面の法線方向で重ならないように開口部Hを有した板状のものである。補強部材60’は、例えば、弾性樹脂、金属等から構成される。このような補強部材であってもよい。また、補強部材60と60’とを併用して設けてもよい。例えば、両者を共に反射層40の裏側に設けても良い。また、透明な補強部材60を第1偏光フィルタ20の表側に配設し、開口部Hを有する補強部材60’を反射層40の裏側に配設してもよい。この場合において、透明な補強部材60の表面に、例えばノングレア処理を施せば、補強部材60は、補強機能と外光が反射して表示面が見にくくなることを抑制する機能とを併せ持つことになる。
【0048】
以上に説明したように液晶表示素子100,200によれば、ノーマリブラックモードであっても影見えを低減し、表示品位が良好な液晶表示素子を提供することができる。これは、以下の構成によって実現される。
【0049】
液晶表示素子100,200は、表示面に所定の意匠を表示するセグメント表示型、パッシブ駆動方式、且つ、ノーマリブラックモードの液晶表示素子であって、液晶層5と、液晶層5よりも表示面側に位置する第1基板1Fと、液晶層5を挟んで、第1基板1Fと対向する第2基板1Rと、第1基板1Fと第2基板1Rの各々の液晶層5側に位置し、前記所定の意匠を表示するために設けられた電極(第1電極2F、第2電極2R)と、第2基板1Rの液晶層5側とは反対側に位置し、液晶層5側から入射した光を反射する反射層40と、第2基板1Rと反射層40との間に位置する第2偏光フィルタ30と、を備えている。そして、第2基板1Rの厚さTは、前記意匠を構成するセグメント形状のうち最も細い幅を有するセグメント形状の幅に概ね一致する。なお、第2基板1Rの厚さTを0.7mm以下、より好ましくは0.15mm以上0.4mm以下とすれば、影見えをより低減することが可能であり、また、良好な明度でセグメント形状を表示できる。また、第2基板1Rの厚さは、第1基板1Fの厚さよりも小さくなっている。
【0050】
また、液晶表示素子100,200は、第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率(f%)が、前記意匠を構成するセグメント形状のうち最も細い幅を有するセグメント形状の幅(dmm)に第2偏光フィルタ30を含む反射層40の単体反射率(f%)を乗算した値(d×f)が20以上(d×f≧20)、さらに望ましくは22以上(d×f≧22)となるように設定されている。これにより、前述したように、前記意匠を構成するセグメント形状のうち最も細い幅を有するセグメント形状を視認可能することができるため、良好な表示品位の液晶表示素子を提供することができる。
【0051】
なお、以上の説明では、液晶表示素子100をTN型のものとして説明したが、これに限られない。液晶表示素子100は、NBモードのVA(Vertical Alignment)型、STN(Super-Twisted Nematic)型液晶表示素子であってもよい。
【0052】
また、以上の説明では、液晶表示素子100が半透過型(半反射型)のものとして構成される例を示したが、バックライトを設けず、反射型のものとして構成されてもよい。この場合、反射層40は、裏側からの光を透過させる必要はないため、ハーフミラー等の半反射層である必要はなく、ミラー等の反射板でよい。
【0053】
なお、本発明は上記の実施形態、変形例及び図面によって限定されるものではない。これらに変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。また、以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略した。