(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される過熱保護装置を、車両用表示装置に適用した場合において、ディレーティング手段の動作中(光源への印加電力が減少中)にトンネルなどの暗所に進入した後、暗所を走行したまま光源の温度が低下してディレーティング手段が解除され、これまで抑えられていた光源への印加電力は低減前の印加電力へ復帰し上昇するため、走行中に急に表示が明るくなってしまい、視認性を損ない、場合によっては運転者を眩惑してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、前述した問題を鑑みてなされたものであり、運転者を眩惑させる虞の少ないディレーティング手段を備えた車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用表示装置は、
表示器と、
前記表示器を照明する光源と、
前記表示器の近傍に配設された温度検出手段と、
前記温度検出手段が検出した温度が所定温度まで上昇すると前記光源への印加電力を低減させて、前記光源が発する光を通常輝度よりも低い低減輝度にするディレーティング手段と、
前記表示器を照らす外部からの光量を検出する外光検出手段と、を備え、
前記ディレーティング手段は、前記温度検出手段が検出した温度と前記外光検出手段が検出した光量と、に基づいて、前記光源を前記低減輝度から前記通常輝度へと復帰させ
、
少なくとも車両の走行速度に基づいて、車両の走行状態を判別する判別手段を備え、
前記ディレーティング手段は、前記判別手段の判別結果が車両走行中である場合は第1の低減輝度にし、前記判別手段の判別結果が車両走行中でない場合は前記第1の低減輝度よりも低い第2の低減輝度にする。
【0007】
また、好ましくは、本発明に係る車両用表示装置は、
前記ディレーティング手段が、前記光源が前記
低減輝度としている間において、前記温度検出手段が検出した温度が前記所定温度より低い他の所定温度まで下降し、且つ、前記外光検出手段が検出した光量が所定光量以上である場合に、前記光源を前記低減輝度から前記通常輝度へと復帰させる。
【0008】
また、好ましくは、本発明に係る車両用表示装置
の
前記ディレーティング手段は、前記判別手段の判別結果が前記車両走行中である場合は第1の温度まで上昇すると前記第1の低減輝度にし、前記判別手段の判別結果が前記車両走行中でない場合は前記第1の温度よりも低い第2の温度まで上昇すると第2の低減輝度にする。
【0009】
また、好ましくは、本発明に係る車両用表示装置に、
第1操作手段と、
第2操作手段と、
前記外光検出手段の光量に応じて前記光源への印加電力の基準となる調光値を定める自動調光手段と、前記第2操作手段の操作に応じて前記光源への印加電力の基準となる調光値を定める手動調光手段と、を備え、
前記自動調光手段と前記手動調光手段とは、前記第1操作手段の操作に応じていずれか一方が動作状態となり、
前記ディレーティング手段は、前記手動調光手段が動作状態のときに、前記光源を前記低減輝度から前記通常輝度へと復帰させる
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、運転者を眩惑させる虞の少ないディレーティング手段を備えた車両用表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
【0013】
本発明に係る車両用表示装置1は、自動二輪車両AのハンドルBの間に配設される車両用表示装置1であって、液晶表示装置(表示器)2と、制御手段3と、温度検出手段4と、車内LAN5と、外光検出手段6と、モード切替SW(第1操作手段)7と、調光値増減SW(第2操作手段)8と、を備えた、各種車両情報を液晶表示装置2に表示させる計器である。
【0014】
また、車両用表示装置1は液晶表示装置2の表示輝度を、使用者が定める手動調光モードと、外光の明るさに応じて自動で定める自動調光モードとを、使用者がモード切替SW7を押下する度に切り替え可能に動作して調光する。
また、車両用表示装置1は、自身が手動調光モードで動作しているときに限り、使用者が調光値増減SW8を押下する度に、表示輝度を上下する。
【0015】
液晶表示装置2は、バックライト(光源)20により発せされた光を、液晶素子により部分的に遮光または透過させることにより、画像を表示する。
【0016】
制御手段3は、例えばRAMとROMを備えたCPUからなる演算装置であり、車両の各種制御手段と接続したCAN(Controller Area Network)で構成した車内LAN5から車両の走行速度、エンジン回転数、ギアポジション、残燃料量などの各種車両情報を入力し、計器画像として構成して液晶表示装置2に表示させる計器表示手段を持つ。
【0017】
温度検出手段4は、例えば、温度変化に対して電気抵抗の変化の大きい抵抗体からなるサーミスタからなる。また、温度検出手段4は、バックライト20の周辺温度を検出するために、バックライト20の近傍に配設する。
【0018】
外光検出手段6は、例えば、光照射によって生じた光電流をトランジスタ作用によって増幅して光を検出するフォトトランジスタからなり、車両用表示装置1が受ける外光を受光できる位置に設置する。また、外光検出手段6は、好ましくは、車両用表示装置1のケースより上向きに露出して、外光を直接受光できるようにする位置に配設する。
【0019】
次に、本発明の特徴である液晶表示装置2の表示輝度の調光について
図3および
図4に基づいて説明する。
【0020】
制御手段3は、駐停車判定手段30と、トンネル判定手段31と、調光値設定手段32と、ディレーティング手段33と、調光手段34を備え、バックライト20の発光輝度を可変させることで、液晶表示装置2の表示輝度を調光する。
【0021】
駐停車判定手段30は、車内LAN5から車両の走行速度とギアポジションを入力し、駐車または停車状態であるか否かを判定し、その結果を後述するディレーティング手段33へ出力する。
なお、駐停車判定手段30は、駐車または停車状態であるか否かの判定を、例えば、車両の走行速度が所定速度(例えば、時速1キロメートル)未満で、且つ、ギアポジションがP(パーキング)またはN(ニュートラル)となってから所定時間(例えば、5秒)経過した時点から、車両の走行速度が他の所定速度(例えば、持続5キロメートル)以上となった時点までを駐車または停車状態であるとみなすものとする。
【0022】
トンネル判定手段31は、駐停車判定手段30から駐車または停車状態であるか否かの判定結果すると共に、外光検出手段6から検知した外光の光量を入力し、その時点でトンネル内を走行しているか否かを判定し、その結果を後述するディレーティング手段33へ出力する。
なお、トンネル判定手段31は、トンネル内を走行しているか否かの判定を、例えば、駐車または停車状態でなく、且つ、外光の光量が所定光値Th1(例えば20ルクス)以上から未満となってから所定時間(例えば1秒)経過した時点から、他の所定光量Th2(例えば30ルクス)以上となった時点までをトンネル内を走行しているとみなすものとする。
【0023】
調光値設定手段32は、外光検出手段6から検知した外光の光量を入力すると共に、モード切替SW7および調光値増減SW8からの操作を入力し、これらに応じてバックライト20の発光輝度の基準となる調光値を設定し、ディレーティング手段33へ出力する。
また、調光値設定手段32は、該調光値を、外光の明るさに対応して調光値を定める自動設定手段320と、使用者の調光値増減SW8の押下に応じて増減して定める手動設定手段321を持ち、前者の自動設定手段320は前述した自動調光モードに対応し、後者の手動設定手段321は前述した手動調光モードに対応する。
なお、調光値設定手段32は、自動設定手段320と手動設定手段321とを、モード切替SW7から押下操作を入力される度に、どちらが有効となるかを切り替える。
【0024】
ディレーティング手段33は、温度検出手段4から温度を、駐停車判定手段30から駐車または停車状態であるか否かの判定を、トンネル判定手段31からトンネル内を走行しているか否かの判定を入力し、これらの入力から判定した特定の条件下において、所定のディレーティング条件を満たす場合に、バックライト20が故障または劣化しないように調光値設定手段32から入力した調光値を低減する補正(ディレーティング)を行って、調光手段34へ出力する。
【0025】
調光手段34は、ディレーティング手段33から入力した調光値に対応じた電力をバックライト20に印加することで、バックライト20を光輝させる。つまり、入力される調光値が低くなることで、バックライト20の輝度が下がり、入力される調光値が高くなることで、バックライト20の輝度が上がる。
【0026】
次に、本発明の特徴であるディレーティング手段33のディレーティングについて詳細に説明する。
以降、調光値設定手段32からディレーティング手段33に入力した調光値に対応した電力で印加されて光輝したバックライト20の輝度を通常輝度と定義すると共に、調光値設定手段32からディレーティング手段33に入力した調光値をディレーティング手段33によって低減する補正後の調光値に対応した電力で印加されて光輝したバックライト20の輝度を低減輝度と定義して説明する。
【0027】
ディレーティング手段33は、駐車または停車状態である場合に動作する駐停車時ディレーティング手段330と、駐車または停車状態でない(走行中である)場合に動作する走行時ディレーティング手段331と、走行時ディレーティング手段331が動作中にトンネル内に進入して走行している場合に動作する例外ディレーティング手段332と、を備える。
【0028】
駐停車時ディレーティング手段330は、温度検出手段4から入力した温度が、所定温度(例えば75℃)以上となってから、他の所定温度(例えば72℃)以下となるまでの間をディレーティング条件として、該ディレーティング条件を満たすときに、調光値設定手段32から入力された調光値を所定割合(例えば60%)となるようにディレーティングを行って調光手段34に出力することで、バックライト20の輝度を通常輝度から通常輝度より低い低減輝度へ低減させる。
また、ディレーティング条件を満たさなくなると、ディレーティングを止め、調光値設定手段32から入力された調光値をそのまま調光手段34に出力することで、バックライト20の輝度を低減輝度から通常輝度へ復帰させる。
【0029】
走行時ディレーティング手段331は、温度検出手段4から入力した温度が、所定温度Th3(例えば80℃)以上となってから他の所定温度Th4(例えば77℃)以下となるまでの間をディレーティング条件として、該ディレーティング条件を満たすときに、調光値設定手段32から入力された調光値を所定割合(例えば80%)となるようにディレーティングを行って調光手段34に出力することで、バックライト20の輝度を通常輝度から低減輝度へ低減させる。
また、ディレーティング条件を満たさなくなると、ディレーティングを止め、調光値設定手段32から入力された調光値をそのまま調光手段34に出力することで、バックライト20の輝度を低減輝度から通常輝度へ復帰させる。
なお、走行時ディレーティング手段331は、駐停車時ディレーティング手段330よりも温度条件が厳しく減少割合を低く設定しており、駐停車時は表示輝度が低くなる代わりに走行時に比べ早い冷却効果を得る。一方、走行時は駐停車時に比べ表示要求が高いため、冷却効果よりも視認性よく表示することを優先させている。
【0030】
例外ディレーティング手段332は、トンネル判定手段31からトンネル内を走行しているとの判定結果が入力されている間、走行時ディレーティング手段331がディレーティングを止めることを保留する。
【0031】
このように構成することで、車両用表示装置1の液晶表示装置2を照明するバックライト20の調光において、走行時ディレーティング手段331によって通常輝度から低減輝度に低減されてからトンネルなどの暗所に進入し、走行時ディレーティング手段331のディレーティング条件を満たさなくなって低減輝度から通常輝度に復帰して、暗所で急に表示が明るくなるということを防ぎ、視認性の低下および運転者を眩惑させる虞がない。
【0032】
具体的な例を
図4に基づいて説明する。
図4は、運転者(使用者)によって手動調光モードとされている車両用表示装置1を搭載した車両が、走行ディレーティング手段332を動作中にトンネル内に進入した際の、温度検出手段4が検出した温度と、光検出手段6が検出した光量と、調光手段34がバックライト20に対し印加した電力の時刻Tにおける各値を示している。また、
図4における34aは、車両用表示装置1に例外ディレーティング手段332が動作させなかった場合であり、翻って、34bは、本発明の特徴である例外ディレーティング手段332が動作した場合における調光手段34がバックライト20に対し印加した電力の推移を示している。
【0033】
時刻T1に至るまで、車両はトンネル進入前であって光検出手段6が検出した光量は所定光値Th1よりも高くなっている。また、車両用表示装置1は、外光やバックライト20の発光によって、温度検出手段4が検出した温度が所定温度Th3よりも高く上昇している。
【0034】
次に、時刻T1において、ディレーティング手段33は走行ディレーティング手段331を動作させることにより、調光値を所定割合となるように低減させる補正を行い、バックライト20の発光輝度を通常輝度から低減輝度に低減させる。これにより、バックライト20の自己発熱量は抑えられるため、温度検出手段4が検出した温度は緩やかに低下していく。
【0035】
また、時刻T2において、車両はトンネル進入して所定時間経過することによって、トンネル判定手段31はトンネル内を走行しているとの判定結果をディレーティング手段331へ出力する。
【0036】
次に、時刻T3において、温度検出手段4が検出した温度は、他の所定温度Th4以下となり、時刻T3から所定時間経過した時刻T4において、走行時ディレーティング手段331のディレーティング条件を満たさなくなる。
【0037】
また、時刻T4においては、トンネル判定手段31はトンネル内を走行しているとの判定結果をディレーティング手段331へ出力しているため、ディレーティング手段33は、例外ディレーティング手段332によって、走行時ディレーティング手段331のディレーティングを止めることを保留する。
つまり、例外ディレーティング手段332がない場合、
図4の34aのように、調光手段34はバックライト20の発光輝度を上昇させてしまうので、トンネル内の暗所走行時に液晶表示装置2が急に明るくなり、視認性を損ない運転者を眩惑してしまう虞がある。翻って、本発明に係る車両用表示装置1は、例外ディレーティング手段332によって、
図4の34bのように、運転者を眩惑してしまう虞がない。
【0038】
本発明は、特に、自バイザー等で覆われて外光が直接照射が少ない自動四輪車両などに搭載される車両用表示装置に比べ、外光の直接照射の機会が多く、防水や粉塵対策のために気密性の高いケースで覆われるため熱が籠り易くい環境下において外光下でも視認可能とするために表示装置の発光輝度を高くする必要がある自動二輪車両へ適用効果が高い。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本願の発明は、温度検出手段4を車両用表示装置1のケース内に配設して、ケース内の雰囲気温度からバックライト20の温度を推定するものであってもよい。
【0040】
また、温度検出手段4をバックライト20の周辺だけでなく、車両用表示装置1の内部雰囲気温度を検出する位置にも備え、複数の温度検出手段4が検出した温度を複合してディレーティング条件を定めてもよい。
【0041】
また、モード切替SW7と調光値増減SW8は、操作性を向上させるために、走行中にハンドルBから手を離すことなく操作できるハンドルBの位置に配設してもよい。
【0042】
また、モード切替SW7と調光値増減SW8は、例えば同一タッチパネル上の押下位置、または、押下された点の数、あるいは、押下軌跡の違いによって、互いを識別してモード切替SW7が操作された、あるいは、調光値増減SW8が操作されたと制御手段3で解釈して制御するものであってもよい。
【0043】
また、トンネル判定手段31における各種光量条件は、天候や時刻、地点情報を複合して定めてもよい。
【0044】
また、トンネル判定手段31は、例えば、木陰や立体駐車場、建物によって一時的に光が遮られて暗所となっている環境に進入した場合において、例外ディレーティング手段331を動作させるものとし、走行時に一時的に木陰や立体駐車場内に進入した際に、ディレーティング手段がバックライト20の発光輝度を低減輝度から通常輝度に復帰させることを保留して、液晶表示装置2が急に明るくなることを防ぐものであってもよい。