(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
染色用基体に付着された昇華性の染料を電磁波によって加熱し、前記染料を樹脂体に向けて昇華させることで前記樹脂体を染色する染色工程において使用される前記染色用基体であって、
シート状に形成された金属製のベースと、
少なくとも前記染料が付着される側の面の反対側に形成され、前記ベースに比べて高い電磁波吸収率を有する電磁波吸収層と
を備えたことを特徴とする染色用基体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<染色システムの概略構成>
以下、典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。以下では、樹脂体の1つであるプラスチックレンズ8を気相転写染色法で染色し、染色プラスチックレンズを製造する場合を例示して説明を行う。しかし、以下で例示する技術は、プラスチックレンズ8以外の樹脂体(例えば、携帯電話のカバー、ライト用のカバー、アクセサリー、玩具等)を気相転写染色法で染色して染色樹脂体を製造する場合にも適用できる。
【0012】
なお、本実施形態によると、例えば、ポリカーボネート系樹脂(例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート重合体(CR−39))、ポリウレタン系樹脂、アリル系樹脂(例えば、アリルジグリコールカーボネート及びその共重合体、ジアリルフタレート及びその共重合体)、フマル酸系樹脂(例えば、ベンジルフマレート共重合体)、スチレン系樹脂、ポリメチルアクリレート系樹脂、繊維系樹脂(例えば、セルロースプロピオネート)、チオウレタン系またはチオエポキシ等の高屈折材料等を材質としたプラスチックレンズ8を染色することもできる。
【0013】
まず、
図1を参照して、本実施形態における染色システム100の概略構成について説明する。本実施形態の染色システム100は、染料付着部10、蒸着部30、および染料定着部50を備える。
【0014】
[染料付着部]
染料付着部10は、後にプラスチックレンズ8に蒸着される昇華性の染料を、染色用基体1に付着させることで、染料層6(
図2参照)を形成する。染色用基体1は、プラスチックレンズ8の染色に用いられる染料を一旦保持する媒体である。染色用基体1の詳細な説明については後述する。
【0015】
本実施形態の染料付着部10は、一例として、昇華性の染料が含有された液体のインクを、インクジェットプリンタ11を用いて染色用基体1に付着(本実施形態では印刷)させる。従って、染料付着部10は、作業者が所望する色合いの染料を、より正確に染色用基体1に付着させることができる。つまり、染色用基体1に付着させる染料の分量、色相、グラデーションの程度等の正確性が向上する。また、作業者は、染料を容易に取り扱うことができる。さらに、インクジェットプリンタ11を用いることで、使用する染料が削減される。本実施形態では、インクジェットプリンタ11によって印刷されたインクを乾燥させる工程が行われることで、染料がさらに強固に保持される。
【0016】
本実施形態では、インクジェットプリンタ11の駆動制御に用いられる印刷データは、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)12によって作成される。作業者は、例えば、PC12にインストールされたドローソフト等を用いることで、染色用基体1に付着させる染料(インク)の色相、彩度、明度、グラデーションの有無および程度等を容易に調整することができる。作業者は、PC12のメモリ、インクジェットプリンタ11のメモリ、USBメモリ等に印刷データ保存させることで、インクを同一の色合いで複数の染色用基体1に繰り返し付着させることもできる。また、作業者は、メーカー等によって予め作成された複数の印刷データの中から1つを選択し、インクジェットプリンタ11に印刷を実行させることも可能である。
【0017】
なお、インクジェットプリンタ11を用いずに染料を染色用基体1に付着させることも可能である。例えば、染料付着部10は、ディスペンサー(液体定量塗布装置)、ローラ等を駆動することでインクを染色用基体1に付着させてもよい。スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等を使用することも可能である。また、染料付着部10を用いずに、作業者自身が筆またはローラ等を用いてインクを染色用基体1に付着させてもよい。
【0018】
また、本実施形態では、少なくとも赤、青、黄の3色の染料が、インクジェットプリンタ11によって染色用基体1に付着される。染料は、昇華性を有し、且つ昇華時の熱に耐え得る必要がある。一例として、本実施期待では、キノフタロン系昇華性染料またはアントラキノン系昇華性染料が用いられる。
【0019】
[蒸着部]
蒸着部30は、染色用基体1に付着された染料を電磁波によって加熱することで、染料をプラスチックレンズ8に向けて昇華させる。その結果、染料がプラスチックレンズ8に蒸着される。なお、プラスチックレンズ8には、後述する定着工程による染料の定着を容易にするための受容膜等、各種の層が形成されていてもよい。本実施形態の蒸着部30は、電磁波発生部31、蒸着用治具32、ポンプ36、およびバルブ37を備える。
【0020】
電磁波発生部31は、染色用基体1の電磁波吸収層4(
図2参照:後述する)によって吸収される電磁波を発生させる。一例として、本実施形態では、赤外線を発生させるハロゲンランプが電磁波発生部31として使用されている。しかし、電磁波発生部31は、後述の電磁波吸収層4によって吸収され易い電磁波を発生させるものであればよい。従って、ハロゲンランプの代わりに、紫外線、マイクロ波等の他の波長の電磁波を発生させる構成を使用してもよい。蒸着部30は、電磁波を染色用基体1に照射することで、短時間で染料の温度を上昇させることができる。また、染色用基体1の染料を昇華させる場合、高熱となった鉄板等を染色用基体1に接触させることで染料を加熱することも考えられる。しかし、染色用基体1と鉄板等とを均一に(例えば、隙間無く)接触させることは難しい。接触状態が均一でなければ、染料が均一に加熱されずに色ムラ等が生じる可能性がある。これに対し、本実施形態の蒸着部30は、染色用基体1から離間した電磁波発生部31からの電磁波によって、染料を均一に加熱させることができる。
【0021】
蒸着用治具32は、染色用基体1とプラスチックレンズ8を保持する。本実施形態の蒸着用治具32は、レンズ支持部33および基体支持部34を備える。レンズ支持部33は、円筒状の基部と、基部の内側に配置された載置台とを備える。プラスチックレンズ8は、基部に囲まれた状態で、レンズ支持部33の載置台によって支持される。基体支持部34は、円筒状の基部の上端に位置し、プラスチックレンズ8よりも上方で染色用基体1を支持する。詳細は図示しないが、染色用基体1の外周縁部が基体支持部34上に載置されると、環状の基体押さえ部材が染色用基体1の外周縁部の上から載置される。その結果、染色用基体1の位置が固定される。なお、従来では、蒸着部30の汚れを抑制するために、基体支持部34に保持された染色用基体1の上面に、さらに板状のガラスを載置することで、昇華した染料が染色用基体1の裏側に抜けて広がることを防止することもあった。しかし、詳細は後述するが、本実施形態では、昇華した染料は、染色用基体1の裏側に抜けにくい。従って、ガラスを用いなくても汚れにくい。
【0022】
染色用基体1は、染料が付着した面がプラスチックレンズ8に対向するように配置される。本実施形態では、プラスチックレンズ8の上方で染色用基体1が支持されるので、染色用基体1は、染料付着面が下方を向くように基体支持部34に載置される。なお、染色用基体1の染料付着面とプラスチックレンズ8の間の距離が狭すぎると、染料の昇華が十分に行われず、色ムラ等が生じる傾向がある。染色用基体1とプラスチックレンズ8が接触して色ムラ等が生じる場合もある。また、染色用基体1の染料付着面とプラスチックレンズ8の間の距離が広すぎると、昇華した染料が再度集結して色ムラが生じる可能性があり、蒸着される染料の濃度も薄くなる。従って、染色用基体1とプラスチックレンズ8の間の距離を適切な距離(例えば、2mm〜30mm)とすることが望ましい。
【0023】
ポンプ36は、蒸着部30の内部の気体を外部に排出し、蒸着部30の内部の気圧を低下させる。蒸着時における蒸着部30の内部の気圧は、例えば、30Pa〜10KPa、より望ましくは、50Pa〜500Pa程度とすればよい。バルブ37は、蒸着部30の内部空間の開放および閉鎖を切り替える。
【0024】
[染料定着部]
染料定着部50は、染料が蒸着されたプラスチックレンズ8を加熱することで、染料をプラスチックレンズ8に定着させる。本実施形態では、オーブンが染料定着部50として用いられる。オーブン(特に、送風式定温恒温器)を用いると、プラスチックレンズ8の温度が長い時間をかけて徐々に上昇するので、温度差が発生し難い。よって、染料が均等にプラスチックレンズ8に定着し易い。
【0025】
なお、染料定着部50の構成を変更することも可能である。例えば、染料定着部50は、レーザをプラスチックレンズ8上で走査させることで、プレスチックレンズ8を加熱してもよい。この場合、染料定着部50は、プラスチックレンズ8の部位に応じて意図的に温度差を生じさせることも可能である。例えば、染料定着部50は、グラデーションのある染色を施す場合等に、目的とするグラデーションの状態に応じてレーザの走査を制御してもよい。染料定着部50は、プラスチックレンズ8の各部位の温度が望ましい温度となるように、プラスチックレンズ8の厚み等に応じてレーザの走査を制御してもよい。また、染料定着部50は、電磁波をプラスチックレンズ8に直接照射することでプラスチックレンズを加熱してもよい。
【0026】
また、染料付着部10、蒸着部30、および染料定着部50の各々で行われる工程のうちの2以上が、1つの装置によって実行されてもよい。例えば、蒸着部30によって行われる蒸着工程と、染料定着部50によって行われる定着工程とを共に実行する染色装置が用いられてもよい。この場合、例えば、蒸着工程における染色用基体1の加熱と、定着工程におけるプラスチックレンズ8の加熱とを、同一の加熱手段(例えば赤外線ヒータ等)が実行してもよい。また、染色装置は、複数の工程(例えば、蒸着工程から定着工程まで)を一連の流れで自動的に行ってもよい。
【0027】
<染色用基体>
図2を参照して、本実施形態における染色用基体1について説明する。
図2の上側が正面図、下側が平面図である。なお、
図2の正面図では、各層を分かり易く示すために、染色用基体1の厚み方向(平面図における上下方向)の長さを、実際の長さよりも長くしている。
図2に例示した染色用基体1では、既に染料が付着されて染料層6が形成されている。しかし、本開示で用いる「染色用基体1」の用語の範囲には、染料層6が未だ形成されていない状態の染色用基体1も含まれる。本実施形態の染色用基体1は、ベース2、電磁波吸収層4、染料保持層5、および染料層6を備える。
【0028】
[ベース]
ベース2は、他の層(電磁波吸収層4等)を保持する基材となる。ベース2は金属製であり、シート状(例えば、変形可能な板状、剛性を有する板状等)に形成されている。ベース2を金属製とすることで、昇華された染料がベース2の裏面側(
図2の正面図における上側)へ抜けることが防止される。また、ベース2を形成する金属の材質を、熱伝導性が高い材質とすれば、蒸着工程において染料の温度上昇に要する時間が短縮される。本実施形態では、熱伝導性が高く、重量が軽く、且つコストが低いアルミニウムが、ベース2の材質として用いられている。しかし、他の金属(鉄等)をベース2の材質として選択してもよい。
【0029】
ベース2の厚みd(
図2の正面図における上下方向の幅)が1μm未満であると、ベース2の強度が低下する。この場合、作業者は染色用基体1を取り扱い難くなる。一方で、ベースの2の厚みdが1000μmより大きいと、コストが高くなり、廃棄も面倒となる。染料の加熱に要するエネルギー(例えば、加熱時間および出力)も増加する。特に、染色用基体1をディスポーザブルにする場合には、厚みdが薄い方が望ましい。また、本実施形態では、インクジェットプリンタ11によって染料がベース2に付着される。この場合、ベース2の厚みdが1μm以上1000μm以下であれば、ベース2が紙と同様にインクジェットプリンタ11によって処理される。以上のように、ベース2の厚みdは1μm以上1000μm以下であるのが望ましい。一例として、本実施形態では、厚みdが11μmのアルミ箔がベース2に使用される。この場合、染色用基体1の取り扱いおよび廃棄が容易である。ディスポーザブルとする場合でもコストは低い。さらに、厚みdが小さいので、電磁波吸収層4から染料層6(後述する)に短時間で効率良く熱が伝わる。ただし、ベース2の厚みdを変更することも可能である。例えば、複数回の染色工程において染色用基体1を使用できるように(つまり、染色用基体1をリユースできるように)、厚みdを1000μmよりも大きくしてもよい。この場合、作業者は、前回の染色工程終了後に染料が染色用基体1に残存していれば、残存している染料を除去した後に、次の染色工程を行うことが望ましい。
【0030】
[電磁波吸収層]
電磁波吸収層4は、少なくとも染色用基体1において染料が付着される側の面の反対側(
図2の正面図における上側)に形成される層である。電磁波吸収層4は、ベース2に比べて高い電磁波吸収率を有する。詳細には、電磁波吸収層4は、少なくとも電磁波発生部31が発生させる波長の電磁波を、ベース2よりも高い吸収率で吸収できればよい。本実施形態では、可視域から近赤外の電磁波を発生させるハロゲンランプが電磁波発生部31として用いられている。従って、本実施形態では、可視域から近赤外の電磁波の吸収効率がベース2よりも高い着色層(詳細には、黒または濃色の着色層)が、電磁波吸収層4として用いられている。
【0031】
一例として、本実施形態では、耐熱性樹脂材料(本実施形態ではポリアミドイミド樹脂)と、黒色または濃色(本実施形態では黒色)の顔料とを含有する着色インクの乾燥塗膜によって、電磁波吸収層4が形成されている。この場合、電磁波吸収層4は十分な耐熱性を保持し、且つ、アルミ箔であるベース2に皺が生じることが抑制される。樹脂を溶解する溶媒には、エタノール、トルエン、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド等の少なくともいずれかを用いることができる。着色インクをベース2の面に付着(塗布)させる方法には、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、スプレー、筆、ローラ等を用いる方法等を採用できる。なお、他の材料および方法を用いて電磁波吸収層4を形成することも可能である。例えば、紫外線等の他の波長の電磁波を加熱に使用する場合には、使用する波長の電磁波を吸収する特性を電磁波吸収層4に付与すればよい。
【0032】
図2に示すように、本実施形態の電磁波吸収層4は、染色用基体1における一方の面の一部を占める領域に形成される。従って、両面に電磁波吸収層4が形成される場合、または、一方の面の全てに電磁波吸収層4が形成される場合に比べて、染色用基体1のコストが低下する。また、本実施形態の電磁波吸収層4は、染料層6(詳細は後述する)が形成される領域の裏面側を覆う領域に形成される。本実施形態では、染料層6は、プラスチックレンズ8の形状に略一致する大きさの円形に形成される。従って、電磁波吸収層4は、染料層6の裏側を覆うように、染料層6と同じ大きさ、または染料層6とほぼ同じ大きさの円形に形成される。この場合、電磁波吸収層4が電磁波を吸収することで生じた熱が、効率良く染料層6に伝わる。さらに、染色用基体1のうち、電磁波吸収層4が形成されていない部分は、電磁波を吸収し難いので昇温し難い。従って、作業者は、蒸着工程が終了した直後であっても、染色用基体1を手で扱うのが容易である。
【0033】
なお、紙を材質とするベースに電磁波吸収層を形成する場合を仮定する。この場合、電磁波吸収層は、昇華した染料が裏側に抜けることを抑制する効果も有する。よって、染料の抜けの抑制を重視する場合には、広い範囲で電磁波吸収層が形成されているのが望ましい。しかし、本実施形態では、ベース2が金属製である。従って、電磁波吸収層4による染料の抜けの抑制を考慮することなく、電磁波吸収層4の形成領域を定めることができる。ただし、電磁波吸収層4を形成する部位は適宜変更できる。例えば、染色用基体1における一方の面の全てに電磁波吸収層4を形成することも可能である。ベース2の両面に電磁波吸収層4を形成することも可能である。
【0034】
[染料保持層]
染料保持層5は、ベース2において染料が付着される側の面に形成されている。ベース2が金属製である場合に、染料を含有する液体のインクをベース2の表面に直接付着させても、インクの滲み、広がり等によって、インクに含まれる染料が保持され難い。しかし、染料保持層5の上にインクが付着されると、ベース2の表面にインクが直接付着される場合に比べて、安定した状態でインク内の染料が保持される。
【0035】
染料保持層5の材料には種々の材料を用いることができるが、本実施形態では親水性の高分子材料が用いられている。特に、本実施形態では、後述する評価試験の結果を踏まえて、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレングリコールを含む親水性高分子材料が、染料保持層5の材料として用いられている。この場合、染色用基体1は、インクを強く保持できる。また、染料保持層5を乾燥させると粘着性が低下するので、作業者による染色用基体1の取り扱いはさらに容易になる。染料保持層5に付着したインク内の染料は、加熱されることで十分に昇華される。さらに、染料保持層5が十分な耐熱性を有するので、染料保持層5の材料の昇華等が生じ難い。
【0036】
なお、ポリエチレンオキシドおよびポリエチレングリコール以外の材料を染料保持層5に使用できることも判明している。例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、および、ポリビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体の少なくともいずれかを用いる場合でも、染料は安定した状態で染料保持層5によって保持される。
【0037】
上記の材料以外にも、染料保持層5に使用できる材料は存在する。纏めると、ポリビニルビロリドン、ポリビニルアルコールの如きビニル系高分子;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、澱粉、アルギン酸、アルギン酸塩の如き多糖類系高分子;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールの如きエチレンオキサイド系高分子;絹及びその誘導体、ゼラチンの如きタンパク質系高分子;ポリエチレンイミン塩、ポリビニルアミン塩、ジアリルアミンアクリルアミド共重合体の塩、ポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド]、ポリスチレンの四級アンモニウム塩、ポリ[(メタ)アクリルアミド]、ポリ[N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド]、ポリ[N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド]、ポリ[N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド]、ポリ[N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド]の如きアミン系高分子;ポリアクリル酸、ポリ[メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート]、ポリ[メトキシノナエチレングリコール(メタ)アクリレート]、ポリ[メトキシトリエイコサエチレングリコール(メタ)アクリレート]、スルホン酸ソーダ−2−メチルプロパン−2−アクリルアミドの如き陰イオン性基を有する(メタ)アクリレートの重合体;トリ−ブチル{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}ホスホニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物の如き陽イオン性基を有する(メタ)アクリレートの重合体;2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシエチル琥珀酸、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレートの如きカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートの重合体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの如き水酸基を有する(メタ)アクリレートの重合体;モノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジヒドロジェンホスフェート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルリン酸の如きリン酸基を有する(メタ)アクリレートの重合体;糖(メタ)アクリレート及びアミノ酸の(メタ)アクリレートの重合体;ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートの如き親水基を有する(メタ)アクリレートの重合体、などのアクリル系高分子、などを使用できる。
【0038】
染料保持層5が形成される領域は、少なくとも染料層6が形成される領域を含む領域であればよい。本実施形態では、染料層6の形成領域が予定からずれる場合を想定して、染料保持層5の形成領域は、染料層6の形成領域よりもやや広い領域となっている。しかし、染料保持層5の形成領域は適宜変更できる。例えば、染料保持層5は、ベース2の一方の面の全てに形成されてもよい。また、電磁波吸収層4の機能と染料保持層5の機能とを兼ねる層を、例えばベース2の両面に形成することも可能である。
【0039】
また、本実施形態では、ベース2と染料保持層5の間の層(図示せず)、または、染料保持層5の材料中に、ベース2の色とは異なる着色材料を含む。従って、染料層6は、着色材料の上に形成される。よって、作業者は、金属製のベース2の上に染料層6が形成される場合に比べて、染料の付着の状態を適切に把握することができる。なお、本実施形態では、染料の付着状態の把握をより容易にするために、白色の着色材料が用いられている。しかし、白色以外の着色材料(例えば、乳白色、黒色等)を用いることも可能である。形成する染料層6の色に応じて、着色材料の色を選択してもよい。また、「ベース2の色とは異なる着色材料」には、金属製のベース2の光の反射を単に抑制する(光沢を減少させる)材料も含む。色味が同じでも、光沢が減少することで、染料の付着の状態が容易になる場合もある。
【0040】
[染料層]
染料層6は、昇華性の染料を含む層である。前述したように、本実施形態では、昇華性の染料を含む着色インクが、インクジェットプリンタ11によって染料保持層5上に吐出される。吐出された着色インクが乾燥されることで、染料層6が形成される。
【0041】
<染料層が形成された染色用基体の製造方法>
図2に例示した染色用基体の製造方法の一例について説明する。本実施形態では、染料層6が形成された染色用基体1の製造方法は、電磁波吸収層形成工程、染料保持層形成工程、および染料層形成工程を含む。
【0042】
電磁波吸収層形成工程は、シート状に形成された金属製のベース2の一方の面側に、電磁波吸収層4を形成する工程である。染料保持層形成工程は、電磁波吸収層4が形成される側の反対側に染料保持層5を形成する工程である。電磁波吸収層形成工程と、染料保持層形成工程は、いずれを先に行ってもよい。染料層形成工程は、電磁波吸収層4が形成された面の反対側に染料層6を形成する工程である。染料層形成工程は、電磁波吸収層形成工程および染料保持層形成工程が行われた後で実行される。従って、染料層形成工程が先に行われる場合とは異なり、他の工程が行われる際の熱等の影響で染料の変性、意図しない昇華、治具の汚れ等が生じることが防止される。なお、電磁波吸収層4、染料保持層5、および染料層6の具体的な形成方法は前述した通りである。例えば、染料層6は、インクジェットプリンタ11を使用して形成することも可能である。
【0043】
<染色樹脂体製造工程>
図3を参照して、本実施形態における染色樹脂体の製造工程について説明する。一例として、
図3に示す製造工程は、染料層6が未だ形成されていない染色用基体1を用いて染色樹脂体を製造する場合を例示する。まず、染色用基体1に染料が付着(例えば、インクが塗布および乾燥)されて、染料層6が形成される(S1)。前述したように、本実施形態では、PC12によって作成されたデータに従ってインクジェットプリンタ11が駆動することで、作業者が所望する色合いでインクが染色用基体1に塗布される。インクは、染色用基体1のうち、染料保持層5の上に塗布される。塗布されたインクを乾燥させることで、染料層6が形成される。
【0044】
次いで、蒸着部30の所定位置に、染色用基体1と樹脂体(プラスチックレンズ8)が配置される(S2)。前述したように、本実施形態では、基体支持部34に染色用基体1が配置されると共に、レンズ支持部33にプラスチックレンズ8が配置される。詳細には、染色用基体1は、染料層6がプラスチックレンズ8に対向するように配置される。
【0045】
次いで、蒸着工程が行われる(S3)。本実施形態の蒸着工程では、プラスチックレンズ8および染色用基体1の周辺の気圧が、ポンプ36によって下げられる。次いで、電磁波発生部31が駆動され、染色用基体1の電磁波吸収層4に電磁波が照射される。その結果、電磁波吸収層4の温度が上昇し、熱が染料層6に伝わって、染料が昇華する。昇華した染料は、プラスチックレンズ8のうち、染色用基体1に対向する側の面に蒸着される。真空下または略真空下で蒸着が行われることで、プラスチックレンズ8における色ムラの発生が抑制される。なお、前述したように、プラスチックレンズ8のうち、染料が蒸着される面には、受容膜等が形成されていてもよい。
【0046】
次いで、定着工程が行われる(S4)。本実施形態では、染料定着部50は、大気圧下または略大気圧下(大気圧よりも高い圧力に加圧してもよい)でプラスチックレンズ8を加熱することで、蒸着された染料が再び昇華することを抑制しつつ、染料をプラスチックレンズ8に定着させる。以上の工程によって、染色樹脂体が製造される。
【0047】
なお、以上説明した製造工程は例示に過ぎない。従って、工程の一部を変更することも可能である。例えば、前述したように、蒸着工程(S3)と定着工程(S4)が同一の装置によって行われてもよい。また、製造工程の全てを、同一の作業者が同一の場所で行う必要は無い。例えば、メーカーは、上記S1の工程を行い、染料層6が既に形成された染色用基体1を販売してもよい。この場合、染色用基体1を購入した購入者は、上記S2〜S4の工程を行えばよい。また、染色用基体1を製造するメーカーは、染料層6が形成されていない状態の染色用基体1を販売してもよい。勿論、メーカーは、上記製造工程の全てを自ら行い、製造された染色樹脂体を販売してもよい。
【0048】
<評価試験>
発明者は、染色用基体1に染料保持層5を設けることの効果、および染料保持層5の材料の適否を判定するために、評価試験を行った。この評価試験では、発明者は、6つのプラスチックレンズ8の各々を、染料保持層5(
図2参照)の条件のみをそれぞれ変化させつつ、上記実施形態で示した方法で染色した。以下に、評価試験における各種条件を示す。以下の(2)〜(4)は、6つの試験に共通する条件である。インクジェットプリンタ11による染料(着色インク)の印刷条件(つまり、色合い)も全て共通する。
(1)染料保持層5の条件
・No.1:染料保持層無し
・No.2:PEG(ポリエチレングリコール)1000(水で9.7%希釈)
・No.3:株式会社大力製ND−1(水で47.3%希釈)
・No.4:住友精化株式会社製PEO−1(水で9.9%希釈)
・No.5:住友精化株式会社製PEO−8(水で3.5%希釈)
・No.6(比較例):紙をベースとする従来の染色用基体を使用し、染料保持層無し
(2)プラスチックレンズ8の種類:CR39プラノレンズ
(3)蒸着工程における電磁波の照射時間:20秒
(4)定着工程における温度および加熱時間:140℃で90分
【0049】
なお、PEO−1とPEO−8は共に親水性ポリマー(ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール)であるが、PEO−1の分子量は15万〜40万、PEO−8の分子量は170万〜220万である。ND−1の成分は未開示であった。また、本評価試験では、いずれの染料保持層5も、筆でベース2に塗布された材料を、70℃のオーブンで30分乾燥させることで形成された。
【0050】
図4に、染色前(つまり、蒸着工程の前)における染色用基体1に対する評価結果を示す。発明者は、紙を用いた比較例を除く5つの染色用基体5について、染料保持層5の状態と、インクジェットプリンタ11によって染料保持層5上に付着された染料の状態(つまり、着色インクの状態)とを、目視によって評価した。No.1(保持層無し)では、着色インクが流れてしまい、液が集まった部分ができた。No.2(PEG1000)では、染料保持層5の材料が液つぶになって転々と付着していた。この染料保持層5の上に付着された着色インクは、No.1と同様に流れてしまい、液が集まった部分ができた。No.3(ND−1)では、染料保持層5はきれいに塗布された。ただし、この染料保持層5の上に付着された着色インクの一部は滲んでいた。No.4(PEO−1)では、染料保持層5には白い線ムラが僅かに生じたものの、着色インクのドット形状はほぼ維持されていた。No.5(PEO−8)では、染料保持層5に生じた白い線ムラがNo.4よりも多く、着色インクの滲みもNo.4より大きかった。以上の結果より、染料保持層5の品質は、No.4が最も良好であると言える。
【0051】
次に、発明者は、染料保持層5の品質が良好であったNo.3、No,4、No.5の染色用基体1を用いた染色の品質と、比較例である従来の紙製の染色用基体1を用いた染色の品質を評価した。まず、図示していないが、発明者は蒸着工程後における染色用基体1の染料の状態を目視で確認した。No.4(PEO−1)およびNo.5(PEO−8)の染色用基体1の染料はきれいに昇華していた。No.3(ND−1)の染色用基体1では、黒く変色した物質が残存していた。これは、何らかの物質が炭化したものと思われる。ただし、この変色は、プラスチックレンズ8の染色品質(後述する)には影響を与えていないものと考えられる。
【0052】
図5に、染色後(つまり、蒸着・定着工程後)におけるプラスチックレンズ8に対する評価結果を示す。発明者は、No.3、No.4、No.5、および比較例の染色用基体1の各々によって染色されたプラスチックレンズ8について評価を行った。詳細には、発明者は、4つのプラスチックレンズ8の各々について、Tv(視感透過率)と、L*値、a*値、b*値(CIE表色系)とを測定し、且つ、目視による評価を行った。
【0053】
図5に示すように、金属製(本実施形態ではアルミニウム製)のベース2を用いたNo.3、No.4、No.5のプラスチックレンズ8の濃度は、比較例である従来の紙製の染色用基体1を用いたプラスチックレンズ8の濃度に比べて、約6%程度濃くなった。また、No.3、No.4、No.5の染色工程では、比較例の染色工程とは異なり、染色用基体1の上面(つまり、染料層6の反対側の面)に載置された板状のガラスに染料が付着していなかった。これらの原因は、昇華した染料が裏側(つまり、電磁波吸収層4側)に抜けることを、金属製のベース2が抑制したためである。
【0054】
目視による評価では、いずれのプラスチックレンズ8でも色ムラは確認されなかった。No.3のプラスチックレンズ8では、表面に何らかの物質が付着していたが、アセトンを用いて拭くと物質は除去された。この物質は、染料保持層5の材料中に含まれる物質が昇華されたものと考えられる。また、比較例のプラスチックレンズ8でも、紙に含まれる物質と思われる不純物が表面に若干付着していた。No.4、No.5のプラスチックレンズ8では、表面への物質の付着は確認されなかった。
【0055】
以上の評価試験の結果から、金属製のベース2を用いて染色用基体1を作成しても、染色品質は低下しないことが分かった。むしろ、ベース2の裏側への染料の抜けが抑制されるので、染色濃度が高くなる。さらに、染料の抜けが抑制されることで、色の再現性も向上すると考えられる。また、染料保持層5に用いる材料としては、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレングリコールを含む親水性高分子材料がより好ましいことが分かった。ただし、ND−1でも染色の品質自体は良好であった。
【0056】
<評価試験2>
発明者は、染料保持層5の材質を、<評価試験1>における材質とは異なる材質(ポリビニルアルコール(PVA)またはポリビニルピロリドン(PVP))とした場合の適否を判定するために、評価試験を行った。<評価試験2>では、発明者は、以下の4つの材質のそれぞれを、バーコート法を用いてベース2に塗布し、(1)染料保持層5の状態、(2)インクジェットプリンタ11によって染料保持層5上に付着された染料の状態(つまり、着色インクの状態)、および(3)染色後の品質を評価した。
・No.7:PVA(10wt%、平均重合度=1500、染料保持層5の膜厚=1.5μm&3.5μm)
・No.8:PVP K25(10wt%、粘度平均分子量=25000、染料保持層5の膜厚=2〜3μm)
・No.9:PVP K30(10wt%、粘度平均分子量=40000、染料保持層5の膜厚=2〜3μm)
・No.10:PVP K90(10wt%、粘度平均分子量:630000、染料保持層5の膜厚=2〜3μm&5〜8μm)
【0057】
(1)染料保持層5の状態
No.7〜No.10の全てについて、染料保持層5は良好に形成された。
(2)染料保持層5上に付着された染料の状態
No.8とNo.9については、一部の着色インクがはじかれていたり、滲んでいたりした。一方で、No.7とNo.10については、着色インクは均一に付着されていた。
(3)染色後の品質
蒸着工程後の染料保持層5の状態を確認すると、No.8とNo.9では染料保持層5にクラックが発生していた。染料保持層5にクラックが発生すると、染料と共に不要な物質が昇華し、染色品質の悪化に繋がる。一方で、No.7とNo.10についてはクラックは発生しなかった。
(4)結論
以上の結果から、分子量等の各種条件を適切な条件とすることで、PVAおよびPVPも染料保持層5の材質として採用できることが分かる。
【0058】
<比較>
本実施形態の染色用基体1と従来の染色用基体を比較する。従来の紙製の染色用基体は、取り扱いが容易であり、コストが低く、金属製等に比べて電磁波の吸収効率も良い。しかし、染色用基体の一方の面に付着されていた昇華性の染料が、反対側の面に抜けてしまう可能性がある。この場合、染色品質が一定とならない可能性、および、治具等に汚れが付着する可能性がある。紙に含まれる不純物または線維等が樹脂体に付着し、樹脂体の洗浄または染色品質の低下等が生じる可能性もある。また、無機材料または金属材料を用いた従来の染色用基体では、昇華性の染料が反対側の面に抜ける可能性は低い。不純物によって染色品質が低下する可能性も低い。しかし、電磁波吸収率が低いので、染料を加熱する際の効率を向上させることが難しい。
【0059】
本実施形態の染色用基体1は、シート状に形成された金属製のベース2を備える。ベース2の一方の面には昇華性の染料が付着される。染料が付着される面の反対側の面には、ベース2に比べて高い電磁波吸収率を有する電磁波吸収層4が形成される。この場合、昇華性の染料がベース2の反対側に抜けてしまう可能性が低下する。ベース2の材質に含まれる不純物の影響も生じ難い。さらに、昇華性の染料を加熱する際の効率も向上する。従って、本実施形態によると、気相転写染色の品質および効率が共に向上する。また、本実施形態では、ベース2の厚みが1μm以上1000μm以下である。この場合、作業者は効率良く気相転写染色を行うことができる。
【0060】
金属製のベース2にインク(染料)を直接付着させても、インクの滲み、広がり等が生じやすいので、インクが保持され難い。本実施形態の染色用基体1は、染料保持層5を備えることで、インクを安定して保持しつつ、染色の品質および効率を向上させることができる。
【0061】
本実施形態の染色用基体1は、ベース2と染料保持層5の間、または染料保持層5に、着色材料を含む。この場合、昇華性染料(本実施形態では染料層6)は、着色材料の上または上方に付着する。従って、作業者は、金属製のベース2の色の上に染料が付着された場合に比べて、染料の付着の状態を適切に把握することができる。
【0062】
染料保持層5に用いる親水性の高分子材料は、例えば、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレングリコールを含むことがより望ましい。この場合、染色用基体5は、インクを強く保持できる。インクを乾燥させると粘着性が低下するので、染色用基体1の取り扱いはさらに容易になる(例えば、複数の染色用基体1を重ねることも可能である)。また、染料保持層5に付着したインク内の染料は、加熱されることで十分に昇華される。さらに、染料保持層5が十分な耐熱性を有し、染料保持層5の材料の昇華等も生じ難い。ただし、ポリエチレンオキシドおよびポリエチレングリコール以外の材料を用いることも可能である。例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、および、ポリビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体のうちの少なくともいずれかを、染料保持層5に含めてもよい。つまり、250℃以下であれば分解または反応が生じず、水系のインクが浸透しやすい親水性材料を用いることが可能である。さらに、水系インクが浸透できる隙間(孔)を持つ高分子材料を用いることがより望ましい。水系インクが浸透できる隙間を高分子材料が持っていれば、インクを染料保持層5上に付着させた後、且つ乾燥前であっても染色用基体1を重ねることができ、作業性が向上する。
【0063】
本実施形態における電磁波吸収層4の材料は、黒色または濃色の顔料と、耐熱性樹脂材料とを含む。この場合、剥離および熱変性が生じ難い電磁波吸収層が容易に形成される。特に、本実施形態の染色用基体1では、耐熱性樹脂であるポリアミドイミド樹脂が電磁波吸収層4に用いられている。従って、本実施形態の染色用基体1は、耐熱温度が高く(約275℃)、耐摩擦性および摺動性も高い。
【0064】
本実施形態の電磁波吸収層4が形成される領域は、染色用基体1における一方の面の一部を占める領域であり、且つ、占領が付着される領域(染料層6が形成される領域)の裏面側を覆う領域である。その結果、全面に電磁波吸収層4が形成される場合に比べてコストが低下する。また、電磁波吸収層4が形成されていない部分は昇温し難い。従って、作業者は、加熱直後であっても染色用基体1を手で扱い易い。
【0065】
上記実施形態で開示された内容は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で開示された内容を変更することも可能である。まず、上記実施形態の染色用基体1は、ベース2、電磁波吸収層4、および染料保持層5を備える。しかし、染色用基体1の層の構成を変更することも可能である。例えば、ベース2による染料の保持の安定性が大きな問題とならないような場合には、染料保持層5を省略することも可能である。また、ベース2と電磁波吸収層4は、直接接触している必要は無い。つまり、ベース2と電磁波吸収層4の間に何らかの層が介在していてもよい。同様に、ベース2と染料保持層5の間に何らかの層が介在していてもよい。また、染色用基体1の表面を覆うように(例えば、電磁波吸収層4の表面を覆うように)、何らかの層が設けられていてもよい。
【0066】
上記実施形態では、親水性の高分子材料を含む染料保持層5によって、インクが強固に保持される。しかし、染料保持層5を設ける場合、親水性の高分子材料以外の材料を用いて染料保持層5を形成することも可能である。例えば、金属製のベース2の一方の面に紙を張り合わせることで、紙の層を染料保持層5として用いることも可能である。また、無機物や金属に対してプラズマ処理等を行って親水性としたり、細かい繊維状としたりして、これを染料保持層5として用いることもできる。また、上記実施形態では、電磁波吸収層4の材料は、顔料と耐熱性樹脂材料を含む。しかし、電磁波吸収層4の材料を変更することも可能である。例えば、耐熱性を有するインクを用いた着色スプレーによって電磁波吸収層4が形成されてもよい。