特許第6355001号(P6355001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355001
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】基板ブレーク装置
(51)【国際特許分類】
   B26F 3/08 20060101AFI20180702BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20180702BHJP
   C03B 33/033 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B26F3/08
   B28D5/00 Z
   C03B33/033
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-64684(P2017-64684)
(22)【出願日】2017年3月29日
(62)【分割の表示】特願2015-81696(P2015-81696)の分割
【原出願日】2015年4月13日
(65)【公開番号】特開2017-144551(P2017-144551A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2017年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲ヨウ▼植
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−047024(JP,A)
【文献】 特開2007−099587(JP,A)
【文献】 特開2001−222955(JP,A)
【文献】 特開2001−151525(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0006765(US,A1)
【文献】 国際公開第2004/067243(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 3/08
B28D 5/00
C03B 33/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクライブラインが形成された基板の第1の領域を加熱または冷却する第1の熱伝達素子;及び
前記スクライブライン方向に前記第1の熱伝達素子と隣接するように配置され、前記基板の第2の領域を前記第1の領域とは逆に冷却または加熱する第2の熱伝導素子を含む基板のブレーク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板ブレーク装置及び方法に関し、さらに詳しくは、物理的な方法を利用せずに基板をブレークすることができる基板ブレーク装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガラス基板等の脆性材料基板では、基板を切断加工するために基板上に切断予定線に沿ってスクライブラインを形成した後、ブレーク工程を通じて基板を切断する。基板にスクライブラインを形成する方法には、カッターホイール等による機械的加工やレーザビームの照射による非接触式加工方法がある。
【0003】
基板に切断予定線に沿ってスクライブラインが形成された後には、基板を完全に切断するためにブレーク工程を行うが、基板のブレーク方法には、ローラやプッシャー等を使用して基板に影響を与える接触式方法と、レーザやスチーム等を使用して基板を加熱した後、冷却させる非接触式方法がある。
【0004】
ところで、接触式ブレーク工程は、基板に物理的衝撃を加えることにより、表面不良が発生されたり、誤差発生及び適用不可能な範疇が大きいという問題点がある。
【0005】
また、従来の非接触式ブレーク工程では、基板の熱変化による膨張収縮を利用するが、熱変化による引張力の小さい材料では、効果の少ない問題点がある。
【特許文献1】WO2004/067243
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、前記の問題点を解決するためのものであって、スクライブラインが形成された基板に加熱または冷却を行って、効率的に基板をブレークすることができる基板ブレーク装置及び方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明は、スクライブラインが形成された基板の第1の領域
を加熱または冷却する第1の熱伝達素子;及び前記スクライブライン方向に前記第1の熱伝達素子と隣接するように配置され、前記基板の第2の領域を前記第1の領域とは逆に冷却または加熱する第2の熱伝導素子を含む基板ブレーク装置を提供する。
【0008】
前記第1の熱伝達素子及び前記第2の熱伝達素子は、前記基板を接触支持し、それぞれ接触された前記基板の第1の領域及び第2の領域を加熱または冷却することができる。
【0009】
前記基板ブレーク装置は、前記第1の熱伝達素子及び前記第2の熱伝導素子がそれぞれ前記基板の加熱または冷却を交互に行うように制御する制御部をさらに含むことができる。
【0010】
前記第2の熱伝達素子は、前記スクライブライン方向に前記第1の熱伝達素子と隣接するように前記第1の熱伝達素子の両側に一対が配置され得る。
【0011】
一方、前記目的を達成するための本発明は、スクライブラインが形成された基板の第1の領域を加熱または冷却する段階;及び前記スクライブライン方向に前記第1の領域と隣接する前記基板の第2の領域を前記第1の領域と逆に冷却または加熱する段階を含む基板ブレーク方法を提供する。
【0012】
前記基板の前記第1の領域を加熱または冷却する段階では、前記基板を接触支持する第1の熱伝達素子によって接触された前記基板の第1の領域を加熱または冷却し、前記基板の第2の領域を冷却または加熱する段階では、前記基板を接触支持する第2の熱伝達素子によって接触された前記基板の第2の領域を冷却または加熱することができる。
【0013】
前記基板ブレーク方法は、前記基板の第1の領域と第2の領域に対して、それぞれ加熱または冷却を交互に行うように制御する段階をさらに含むことができる。
【0014】
前記基板の前記第2の領域は、前記スクライブライン方向に前記第1の領域と隣接するように前記第1の領域の両側に形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の基板のブレーク装置及び方法によると、スクライブラインが形成された基板にスクライブライン方向に加熱または冷却を行い、効果的に基板をブレークすることができる。
【0016】
また、基板の加熱または冷却を精密に制御し、効果的に基板をブレークすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例に係り、概略的な構成を示した基板のブレーク装置において、各熱伝達素子が加熱または冷却を交互に行う様子を示した図である。
図2】本発明の一実施例に係り、概略的な構成を示した基板のブレーク装置において、各熱伝達素子が加熱または冷却を交互に行う様子を示した図である。
図3図1及び図2の基板に作用する応力をそれぞれ示した図である。
図4図1の基板に作用する内部応力をより詳細に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施例を添付された図面を参照して詳しく説明する。まず、各図の構成要素に参照符号を付加するに当たり、同一の構成要素に対しては、たとえ他の図上に表示されても、可能な限り同一の符号を有するようにする。また、以下で本発明の好ましい実施例を説明するが、本発明の技術的思想はこれに限定または制限されず、通常の技術者により変形されて様々に実施され得ることは勿論である。
【0019】
図1図2は、それぞれ、本発明の一実施例に係り、概略的な構成を示した基板のブレーク装置において、各熱伝達素子が加熱または冷却を交互に行う様子を示す図である。
【0020】
このような図1及び図2は、本発明を概念的に明確に理解するために、主な特徴部分のみを明確に図示したものであり、その結果、図解の様々な変形が予想され、図に図示された特定の形状により、本発明の範囲が制限される必要はない。
【0021】
図1及び図2を参照してみてみると、本発明の一実施形態に係る基板のブレーク装置(1)
は、スクライブライン(11)が形成された基板(10)のスクライブライン(11)を含む第1の領
域(13)を加熱または冷却する第1の熱伝達素子(100)と、スクライブライン(11)の方向に第1の熱伝達素子(100)と隣接するように配置されて基板(10)の第2の領域(15)を第1の領域(13)と逆に冷却または加熱する第2の熱伝達素子(200)を含む。
【0022】
基板(10)には、基板(10)の切断予定線に沿って、予めスクライブライン(11)が形成される。本実施例において、基板(10)にスクライブライン(11)を形成する方法は、特定の加工方法に限定される必要はなく、ホイールカッターを利用して加工したり、レーザを利用して加工する方式等が全て使用され得る。
【0023】
第1の熱伝達素子(100)は、スクライブライン(11)が含まれた基板(10)の一部の領域(第1の領域(13))を加熱または冷却する。
【0024】
第2の熱伝達素子(200)は、基板(10)のスクライブライン(11)の方向に第1の領域(13)と
隣接する第2の領域(15)に配置され、第1の熱伝達素子(100)と逆に第2の領域(15)を冷却または加熱する。すなわち、第1の熱伝達素子(100)が基板(10)の第1の領域(13)を加熱しているとき、第2の熱伝達素子(200)は基板(10)の第2の領域(15)を冷却し、第1の熱伝達素子(100)が基板(10)の第1の領域(13)を冷却しているとき、第2の熱伝達素子(200)は基板(10)の第2の領域(15)を加熱する。
【0025】
これにより、基板(10)のスクライブライン(11)の方向に沿って基板(10)の水平方向に温度勾配が発生し、基板(10)に作用する応力が第1の領域(13)と第2の領域(15)で互いに異なって発生する。すなわち、図1に示すように、基板(10)の第1の領域(13)が冷却されているときに、第1の領域(13)では基板(10)が熱収縮されてスクライブライン(11)で引張応力が発生し、基板(10)の第2の領域(15)が加熱されているときに、第2の領域(15)は基板(10)が熱膨張してスクライブライン(11)から圧縮応力が発生する。
【0026】
一方、第1の熱伝達素子(100)及び第2の熱伝達素子(200)は、基板(10)を接触支持し、それぞれ接触された基板(10)の第1の領域(13)及び第2の領域(15)を加熱または冷却する。基板(10)が第1の熱伝達素子(100)及び第2の熱伝達素子(200)によって接触されて加熱または冷却されることにより、冷風または温風等を利用した非接触式熱伝達に比べてエネルギー損失が少なく、基板(10)に実際に適用される温度の測定が正確になされる長所がある。
【0027】
また、本実施例の基板のブレーク装置(1)は、第1の熱伝達素子(100)及び第2の熱伝達素子(200)をそれぞれ発熱または冷却状態に交互に制御する制御部(不図示)をさらに含む。図2に示されたように、第1の熱伝達素子(100)及び第2の熱伝達素子(200)は、制御部によって発熱または冷却を交互に行う。これにより、基板(10)の第1の領域(13)及び第2の領域(15)でスクライブライン(11)に沿って作用する内部応力が引張または圧縮応力が交互に示されることにより、基板(10)の分離が効果的になされる。
【0028】
本実施例で、第1の熱伝達素子(100)及び第2の熱伝達素子(200)は、電気的方式により発熱または冷却を行う熱電素子が使用される。制御部は熱電素子で構成された第1の熱伝達素子(100)及び第2の熱伝達素子(200)と電気的に連結され、第1の熱伝達素子(100)及び第2の熱伝達素子(200)の発熱または冷却を制御する。第1の熱伝達素子(100)及び第2の熱伝達素子(200)が電気的に制御されることにより、基板(10)の加熱または冷却を交互に行うことが容易であり、基板(10)の加熱または冷却温度を精密に制御することができる。
【0029】
第1の熱伝達素子(100)及び第2の熱伝達素子(200)の大きさ及び個数は、基板(10)の大きさ及び材質等を考慮して適切に変更することができる。
【0030】
本実施例では、一対の第2の熱伝達素子(200)が基板(10)のスクライブライン(11)の方向に第1の熱伝達素子(100)と隣接するように第1の熱伝達素子(100)の両側に配置される。第1の熱伝達素子(100)を基準として第1の熱伝達素子(100)の両側に互いに異なる温度勾配を形成する第2の熱伝達素子(200)が配置されることによって、より効果的にスクライブライン(11)に沿って分離力を発生させることができる。
【0031】
このような構成を有する基板のブレーク装置(1)の作用について説明すると、次の通りである。
【0032】
図3(a)は、図1の基板(10)に作用する応力を示し、図3(b)は図2の基板(10)に作用する応力を示す。図3(a)(b)を参照すると、基板(10)の第1の領域(13)及び第2の領域(15)でスク
ライブライン(11)に作用する応力が互いに反対方向に発生することにより、基板(10)のスクライブライン(11)に作用する分離力が集中して表示され、結果的にスクライブライン(11)での分離が効果的になされる。
【0033】
また、図3の(a)と(b)のように、基板(10)の第1の領域(13)及び第2の領域(15)でそれぞ
れ加熱と冷却が交互に行われることにより、基板(10)のスクライブライン(11)でクラック(crack)が漸進的に進められ、基板(10)の分離が効果的になされる。
【0034】
図4は、図1の基板(10)に作用する内部応力をより詳細に示した図である。
【0035】
図4を参照すると、基板(10)の加熱または冷却が行われるとき、基板(10)の内部では、加熱膨張または冷却収縮によって内部応力が図4のように示される。この時、基板(10)の第1の領域(13)及び第2の領域(15)は、それぞれ異なる方向の内部応力が作用するようになるため、このような力が複合的に作用してスクライブライン(11)での分離力を増加させ、温度差異が生じる部分で集中されることにより、基板(10)の分離が効果的になされる。
【0036】
このように、本発明の基板のブレーク装置(1)によると、スクライブライン(11)が形成
された基板(10)にスクライブライン(11)の方向に温度勾配を発生させることにより、効果的に基板(10)を分離させることができ、特に線膨張係数が小さい材質の基板(10)でも基板(10)のブレーク工程を効果的に行うことができる。
【0037】
また、基板(10)のブレーク工程を物理的方法ではなく加熱または冷却による基板(10)の膨張または収縮を利用して行うことにより、ブレーク工程時に基板(10)の損傷を防止することができ、従来の物理的なブレーク工程を利用することができない装備にも適用が可能であり、スクライブライン(11)とブレークバーとの間の距離誤差の問題が発生しない等、ブレーク工程を簡単化させることができる効果がある。また、スクライブライン(11)が弱い力で形成された基板(10)に対しても効果的にブレーク工程を行うことができ、ブレーク工程時に基板(10)に不要な負荷を与えないため、断面強度が維持されて断面品質を向上させることができる効果がある。
【0038】
また、接触によって基板(10)を加熱または冷却する熱電素子を使用することにより、熱伝達時のエネルギー損失が少なく、熱伝達物質による汚染の発生等が防止され、工程が簡便になり、基板(10)の加熱または冷却を簡便かつ精密に制御し、効果的に基板(10)をブレークすることができる効果がある。
【0039】
以下では、本発明の一実施例による基板ブレーク方法を説明する。但し、本発明の一実施例に係る基板のブレーク装置(1)で説明したものと同一の構成要素に対しては、その説明を省略する。
【0040】
本発明の一実施例に係る基板ブレーク方法は、スクライブライン(11)が形成された基板(10)のスクライブライン(11)を含む第1の領域(13)を加熱または冷却する段階(S100)と、スクライブライン(11)の方向に第1の領域(13)と隣接する基板(10)の第2の領域(15)を第1の領域(13)と逆に冷却または加熱する段階(S200)と、基板(10)の第1の領域(13)及び第2の領域(15)に対して、それぞれ加熱または冷却を交互に行うように制御する段階(S300)を含む。
【0041】
基板(10)の第1の領域(13)を加熱または冷却する段階(S100)では、基板(10)を接触支持する第1の熱伝達素子(100)によって接触された基板(10)の第1の領域(13)を加熱または冷却し、基板(10)の第2の領域(15)を冷却または加熱する段階(S200)では、基板(10)を接触支持する第2の熱伝達素子(200)によって接触された基板(10)の第2の領域(15)を冷却または加熱する。
【0042】
第1の熱伝達素子(100)及び第2の熱伝達素子(200)に対しては、前述の本発明の一実施例による基板のブレーク装置(1)と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0043】
基板(10)の第1の領域(13)及び第2の領域(15)の大きさや個数は、基板(10)の大きさ及び材質によって適宜変更されることができ、本実施例では、一対の第2の領域(15)がスクライブライン(11)の方向に第1の領域(13)と隣接するように第1の領域(13)の両側に形成されることにより、スクライブライン(11)に形成される分離力をより効果的に発生させることができる。
【0044】
このような構成を有する基板ブレーク方法の作用及び効果に対しては、本発明の一実施例に係る基板のブレーク装置(1)と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0045】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎないものであり、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲内で様々な修正、変更、及び置換が可能であろう。したがって、本発明に開示された実施例及び添付された図面は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、一例として説明するためのものであり、このような実施例及び添付された図によって本発明の権利範囲が限定されるものではない。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0046】
1:基板のブレーク装置
10:基板
11:スクライブライン
13:第1の領域
15:第2の領域
100:第1の熱伝達素子
200:第2の熱伝達素子
図1
図2
図3
図4