特許第6355002号(P6355002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355002
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】RFエネルギー捕集器
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20180702BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20180702BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20180702BHJP
   H01P 1/212 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   H01Q13/08
   H02J50/20
   H01Q1/38
   H01P1/212
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-112566(P2017-112566)
(22)【出願日】2017年6月7日
(62)【分割の表示】特願2016-532740(P2016-532740)の分割
【原出願日】2014年8月8日
(65)【公開番号】特開2017-200205(P2017-200205A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2017年6月8日
(31)【優先権主張番号】1314307.8
(32)【優先日】2013年8月9日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515045673
【氏名又は名称】ドレイソン テクノロジーズ (ヨーロッパ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ミチェソン, ポール デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ルシジン, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】レンジェル, マニュエル ピニュエラ
(72)【発明者】
【氏名】イエーツ, デイヴィッド クリストファー
【審査官】 桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−278887(JP,A)
【文献】 特開2011−82985(JP,A)
【文献】 特開2007−116515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 − 50/90
H01Q 13/08
H01P 1/212
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境無線周波数(RF)エネルギーの捕集に使用するためのアンテナ装置であって、
電気を生成するためにRFエネルギーを受け取るように構成された一つ以上のRFアンテナ素子を備え、前記一つ以上のRFアンテナ素子は、複数の周波数フィルタリング素子を備え、前記周波数フィルタリング素子の各々は、受け取った前記RFエネルギーの、当該周波数フィルタリング素子に対応する周波数帯域をフィルタリングするように構成されており、前記一つ以上のRFアンテナ素子の少なくとも一つは放射パッチであり、前記複数の周波数フィルタリング素子の少なくとも一つは、前記放射パッチ内または前記放射パッチ上に形成されている、アンテナ装置。
【請求項2】
前記複数の周波数フィルタリング素子は、前記一つ以上のRFアンテナ素子の一部分を成している、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記複数の周波数フィルタリング素子は、前記一つ以上のRFアンテナ素子内または前記一つ以上のRFアンテナ素子上に形成された構造であり、該構造のフィルタリング特性は、該構造の寸法に従って定まり、前記構造は、前記構造が形成された前記一つ以上のRFアンテナ素子の一つ以上の共振周波数に対応した位置において、前記一つ以上のRFアンテナ素子内または前記一つ以上のRFアンテナ素子上に形成されている、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記複数の周波数フィルタリング素子がフィルタリングする前記対応する周波数帯域は、一つ以上の既知の電磁波周波数帯域であり、前記一つ以上の既知の電磁波周波数帯域は、GSM900、GSM1800、3G、および4Gの一つ以上を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記一つ以上のRFアンテナ素子の一つは、第1の周波数範囲を受けるように構成された円形放射パッチである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記複数の周波数フィルタリング素子のうち第1の周波数フィルタリング素子は、前記円形放射パッチ内または前記円形放射パッチ上に同心状に形成された湾曲構造であり、前記第1の周波数フィルタリング素子は、前記第1の周波数範囲内の一つ以上の周波数を取り除くように構成されている、請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1の周波数フィルタリング素子は、
前記円形放射パッチの中心からλg/16〜λg/12の距離に位置しており、
λg/15〜λg/6の長さを有し、
λg/24.2〜λg/18.5の幅を有し、
ここでλgは、前記周波数フィルタリング素子に対応する前記周波数帯域の中心周波数における波長である、請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記複数の周波数フィルタリング素子のうち第2の周波数フィルタリング素子は、前記第1の周波数範囲内の一つ以上の周波数を取り除くように構成された前記円形放射パッチ内または該円形放射パッチ上に同心状に形成された湾曲構造であり、前記第2の周波数フィルタリング素子によってフィルタリングされる前記一つ以上の周波数は、前記第1の周波数フィルタリング素子によってフィルタリングされる前記一つ以上の周波数とは異なる、請求項6または7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第2の周波数フィルタリング素子は、
前記円形放射パッチの中心からλg/24〜λg/12の距離に位置しており、
λg/5.7〜λg/4.5の長さを有し、
λg/24.2〜λg/18.5の幅を有し、
ここでλgは、前記周波数フィルタリング素子に対応する前記周波数帯域の中心周波数における波長である、請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記一つ以上のRFアンテナ素子の一つは、前記アンテナ装置の放射パターンを定めるように構成された接地面である、請求項5〜9のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記複数の周波数フィルタリング素子の一つは、第2の周波数範囲内の一つ以上の周波数を取り除くために前記接地面内または前記接地面上に形成された構造である、請求項10に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記接地面内または前記接地面上に形成された前記構造はU字状である、請求項11に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
前記接地面内または前記接地面上に形成された前記構造は、
前記円形放射パッチの最も近い縁からλg/8.1〜λg/5.4の距離に位置しており、
λg/10.5〜λg/7.4の長さを有し、
λg/24.2〜λg/15.2の幅を有し、
ここでλgは、前記周波数フィルタリング素子に対応する前記周波数帯域の中心周波数における波長である、請求項11または12に記載のアンテナ装置。
【請求項14】
前記円形放射パッチおよび前記接地面が形成された基板を備えるRFアンテナ構成を有する請求項10〜13のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項15】
前記基板は可撓性を有する、請求項14に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RFエネルギーを捕集するための装置に関する。より具体的には、環境RFエネルギーを受け取るためのアンテナを開示する(ただし、これ以外を除外するものではない)。さらに、RFエネルギー捕集システムの一部を構成する整流器、およびその整流器と電力管理モジュールの一体化についても開示する。
【背景技術】
【0002】
多くの電気装置、特にポータブル電気装置またはリモート電気装置は、バッテリによって駆動される。電気装置の継続的な動作のためには、通常、バッテリの定期的な再充電または交換が必要となる。しかしながら、再充電のために装置を主電源に接続することが常に望ましいか若しくは可能であるとは限らず、また、バッテリを交換するために装置へアクセスすることが容易であるとは限らない。さらに、長期間にわたって、および/または非常に厳しい動作/環境の条件下で、100%信頼できるバッテリ性能を見込むことができないかもしれない。したがって、装置を給電/充電するための他の手法が模索されている。
【0003】
電気装置用の電気エネルギーを獲得するための我々の提案は、電気装置におけるエネルギー捕集(エネルギー収穫、energy harvesting)を用いることである。エネルギー捕集は、クリーンで自由に利用可能なエネルギー源からのエネルギーを電気エネルギーに変換することを含み、環境にやさしい解決策(ソリューション)の代表である。電気装置に給電するために一般的に用いられる自由エネルギーソリューションには、太陽光エネルギー源、熱エネルギー源、および振動エネルギー源が含まれる。たとえば、ソーラーパネルやソーラーレクテナのような実用的なソーラー捕集器は、光電効果によって光子を電力に変換する光起電力セルを利用する。しかしながら、ソーラー捕集器のようなソリューションは、多くのリモート電気装置には適さず、また、多くの地理的位置で使用するには理想的ではない。
【0004】
代替案は、電力のワイヤレス供給である。たとえば、RF電力を受電装置に特定の周波数帯域で供給するために、高電力RFエネルギー源を使用することができる。受電装置は、RFエネルギーを受け取り、それを装置の駆動に使用可能な電気の形態に変換する。そのようなシステムは、特定の環境で効率よく動作できる。しかし、そのようなシステムは、高エネルギーRF送信機の存在に依存する。この結果、インフラストラクチャーの導入が必要なため、システムの全体的な魅力が低下してしまい、したがって、当該技術を使用可能な用途の数を制限してしまう。
【0005】
近年の移動体通信産業の拡大、およびそれに対応した環境RFエネルギーの増加によって、そのような環境RFエネルギーを捕集できるか否かに着目した研究が行われるようになった。そのようなエネルギーが豊富であるにもかかわらず、環境RFエネルギーを捕集するための実用的なエネルギー収集ソリューションは、現在ほとんど報告されていない。RFエネルギーの捕集に関する重要な課題の一つは、非常に小さいRF電力(10nWにもなりうる)の収集である。現時点では、RFエネルギーの捕集は、有力な選択肢とはみられていない。
【0006】
したがって、リモート装置用の代替的な電力源が依然として要望されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一側面では、環境無線周波数(RF)エネルギーの捕集に使用するためのアンテナ装置が提供される。この装置は、電気を生成するためにRFエネルギーを受け取るように構成された一つ以上のRFアンテナ素子を備える。この一つ以上のRFアンテナ素子は、複数の周波数フィルタリング素子を備え、これらの周波数フィルタリング素子の各々は、受け取ったRFエネルギーの、当該周波数フィルタリング素子に対応する周波数帯域をフィルタリングするように構成されている。
【0008】
周波数フィルタリング素子は、一つ以上のRFアンテナ素子の一部分を成していてもよい。周波数フィルタリング素子は、一つ以上のRFアンテナ素子内または一つ以上のRFアンテナ素子上に形成された構造であってもよい。該構造のフィルタリング特性は、該構造の寸法に従って定まってもよい。この構造は、該構造が形成された一つ以上のRFアンテナの一つ以上の共振周波数に対応した位置において、一つ以上のアンテナ素子内または一つ以上のRFアンテナ上に形成されていてもよい。
【0009】
複数の周波数フィルタリング素子がフィルタリングする、対応する周波数帯域は、一つ以上の既知の電磁波周波数帯域であってもよい。一つ以上の既知の電磁波周波数帯域は、GSM(登録商標)900、GSM1800、3G、および4Gの一つ以上を含んでもよい。
【0010】
一つ以上のRFアンテナ素子の一つは、第1の周波数範囲を受けるように構成された円形放射パッチであってもよい。複数の周波数フィルタリング素子のうち第1の周波数フィルタリング素子は、円形放射パッチ内または円形放射パッチ上に同心状に形成された湾曲構造であってもよい。第1の周波数フィルタリング素子は、第1の周波数範囲内の一つ以上の周波数を取り除くように構成されていてもよい。
【0011】
第1の周波数フィルタリング素子は、円形放射パッチの中心からλg/16〜λg/12の距離に位置し、λg/15〜λg/6の長さを有し、λg/24.2〜λg/18.5の幅を有し、ここでλgは、周波数フィルタリング素子に対応する周波数帯域の中心周波数における波長であってもよい。
【0012】
複数の周波数フィルタリング素子のうち第2の周波数フィルタリング素子は、第1の周波数範囲内の一つ以上の周波数を取り除くように構成された円形放射パッチ内または円形放射パッチ上に、同心状に形成された湾曲構造であってもよい。第2の周波数フィルタリング素子によってフィルタリングされる一つ以上の周波数は、第1の周波数フィルタリング素子によってフィルタリングされる一つ以上の周波数と異なっていてもよい。
【0013】
第2の周波数フィルタリング素子は、円形放射パッチの中心からλg/24〜λg/12の距離に位置しており、λg/5.7〜λg/4.5の長さを有し、λg/24.2〜λg/18.5の幅を有していてもよい。
【0014】
一つ以上のRFアンテナ素子の一つは、アンテナの放射パターンを定めるように構成された接地面であってもよい。
【0015】
複数の周波数フィルタリング素子の一つは、第2の周波数範囲内の一つ以上の周波数を取り除くために接地面内または接地面上に形成された構造であってもよい。接地面内または接地面上に形成された構造はU字状であってもよい。
【0016】
接地面内または接地面上に形成された構造は、円形放射パッチの最も近い縁からλg/8.1〜λg/5.4の距離に位置しており、λg/10.5〜λg/7.4の長さを有し、λg/24.2〜λg/15.2の幅を有していてもよい。
【0017】
RFアンテナ装置は、円形放射パッチおよび接地面が形成される基板を備えるRFアンテナ構成を有してもよい。RFアンテナ構成は、円形放射パッチおよび接地面を捕集回路に接続するための接続部分を基板の一端に備えてもよい。円形放射パッチは、細長い給電線を介して接続部分に接続されてもよい。細長い給電線の長さは、円形放射パッチと接地面との間の距離がアンテナの出力インピーダンスを定めるように設定されていてもよい。円形放射パッチと接地面との間の距離は、λg/4.8であってもよい。基板は、可撓性を有してもよい。
【0018】
周波数フィルタリング素子は、一つ以上の、ノッチ、溝、または突起であってもよい。
【0019】
本発明の別の側面では、対応するアンテナから入力端子で受けた変動電気信号を、電気エネルギー貯蔵ユニットに供給するための直流電気信号に変換するように構成された整流回路を備える装置が提供される。ここで、アンテナは、環境無線周波数(RF)エネルギーの捕集に使用されるアンテナである。装置は、直流電気信号を受ける入力端子を有し、電気エネルギー貯蔵ユニットへの直流電気信号の供給を制御する電力管理モジュールも備える。整流回路は複数の伝送線路を備え、整流回路の入力端子と電力管理モジュールの入力端子とは、複数の伝送線路を介して接続されている。電力管理モジュールは、複数の伝送線路によって定められる境界線の内側に少なくとも部分的に配置されている。
【0020】
複数の伝送線路は、第1および第2の腕状部を成していてもよい。第1の腕状部は、順方向にバイアスされた整流デバイスを介して、整流回路の入力端子を電力管理モジュールの入力端子へ接続してもよい。第2の腕状部は、逆方向にバイアスされた整流デバイスを介して、整流回路の入力端子を電力管理モジュールの入力端子へ接続してもよい。第1の腕状部は、整流回路の入力端子を順方向にバイアスされた整流デバイスに接続する第1の伝送線路と、順方向にバイアスされた整流デバイスを電力管理モジュールの入力端子に接続する第2の伝送線路とを備えてもよい。第1の伝送線路は、整流器を対応するアンテナとインピーダンス整合するように設けられており、第2の伝送線路は、整流回路を電力管理モジュールとインピーダンス整合するように設けられていてもよい。第1の伝送線路は、λg/8.1〜λg/6.8の長さを有してもよく、ここでλgは、関連するアンテナが受ける周波数帯域の中心周波数における波長である。フィルタリング回路が第2の伝送線路に接続されていてもよい。フィルタリング回路は4分の1波長スタブであってもよい。
【0021】
第2の伝送線路は、連結用伝送線路およびインピーダンス整合用伝送線路を備えてもよい。連結用伝送線路は、整流デバイスとフィルタリング回路との間に設けられていてもよい。連結用伝送線路は、整流デバイスに伴う容量リアクタンスを吸収するように設けられていてもよい。インピーダンス整合用伝送線路は、フィルタリング回路と電力管理モジュールとの間に設けられていてもよい。連結用伝送線路は、λg/5.6〜λg/4.3の長さを有してもよい。インピーダンス整合用伝送線路は、λg/4.4〜λg/3.8の長さを有してもよい。
【0022】
電力管理モジュールは、以下の特徴を有する整流装置内に配置されていてもよい。すなわち、電力管理モジュールは、第1端で、整流回路の出力端子に接続されていてもよい。電力管理モジュールの第2端と整流回路の入力端との間の距離は、λg/5〜λg/2.5に設定されていてもよい。電力管理モジュールの第1の側と第1の腕状部の縁との間の距離は、λg/12〜λg/6.5に設定されていてもよい。電力管理モジュールの第2の側と第2の腕状部の縁との間の距離は、λg/16.4〜λg/9に設定されていてもよい。
【0023】
本発明の更に別の側面では、ここで述べたアンテナと、ここで述べた装置とを備えるRFエネルギー捕集システムが提供される。このRFエネルギー捕集システムは、装置の電力管理モジュールから電気エネルギーを受け取って蓄積するように構成された電気エネルギー貯蔵ユニットを更に備えてもよい。
【0024】
3μW未満の電力レベルで環境RFエネルギーを捕集するためのレクテナが開示される。レクテナは、GSM900、GSM1800および3GのRF周波数帯域にわたって使用可能な超広帯域平面モノポールアンテナを備えてもよい。レクテナは、差動電圧出力および3μW未満の動作入力電力を有する全波整流器も備えてよい。
【0025】
3μW未満の入力RF電力レベルで45%を上回る効率を達成することが可能な環境RF捕集器が提供される。この効率を達成するために、単一のマルチバンドアンテナおよび全波検出器が設けられてもよい。そのような捕集器は、エネルギー貯蔵ユニットを迅速に充電するだけでなく、より多くの場所での動作、および/または、空間的な方向性においてより大きな柔軟性を伴った動作が可能である。
【0026】
全波整流器が、差動出力、および高調波除去フィルタを伴う改良無指向性ディスクモノポールアンテナとともに、開示される。この新規な捕集器の設計は、より小さなRF電力が入手可能な場所において45%の効率で動作できる可能性もある。
【0027】
トライバンドRFエネルギー捕集器が、UWBアンテナおよび組込み高調波帯域除去とともに開示される。4個またはN個の要素からなる捕集器アレイを提供してもよい。
【0028】
好適には、最大で1mWを要求する用途のために11%よりも大きいデューティサイクルを提供可能な捕集器が提供される。
【0029】
高調波の再放射を避けることで効率を改善し且つ検出を最小限に抑える捕集器が開示される。これは、高次高調波がアンテナによって放射されないようにそれらの高調波を捕集器が取り除くことによって達成されてもよい。結果として、変換動作が要求されているときに専用の受信器が捕集器の存在を検出することは困難になる。
【0030】
更に、高次高調波からのDC負荷の分離を提供する捕集器が開示される。捕集器は、高周波フィルタリング回路を使用することによってこれを達成してもよい。たとえば、4分の1波長スタブが、そのようなフィルタリングを実行するための整流器の部分を形成してもよい。そのようなスタブは、基本周波数では短絡回路として動作するので、出力からRF信号を取り除く。また、そのようなフィルタリング機能を実行するために、LC同調回路などの共振構造を使用してもよい。
【0031】
全ての受信帯域について3次高調波除去が可能な捕集器が開示される。半波整流機能が電流波形中に奇数高調波を生成し、全波整流機能が電流波形中に偶数高調波を生成するので、これらの高次高調波を出力において、4分の1波長スタブによって、およびアンテナに形成されたノッチによって、取り除いてもよい。
【0032】
アンテナは、アンテナ基板の厚さの10倍の曲げ半径を有する基板上に形成されてもよい。最小の曲げ半径は、8.6mmであってもよい。基板の厚さは、790μmであってもよい。基板上に形成された金属アンテナは、35μmの厚さであってもよい。この金属は、任意の適切な導電材料から構成されていてもよい。たとえば、金属アンテナは銅から構成されていてもよい。基板の誘電特性のうち比誘電率εrは2.33であってもよく、誘電正接tanδは0.0012であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の例示的な実施形態が以下の図面を参照しつつ説明される。
【0034】
図1図1は、RFエネルギー捕集システムを示す。
図2図2は、図1のシステムで使用される単一のマルチバンドアンテナを示す。
図3図3は、図1のシステムで使用される、差動出力を有するマイクロストリップ全波整流器を示す。
図4図4は、内側にPMM回路が配置された図3の整流器を示す。
図5図5は、パイプの表面と同形のアンテナを示す。
図6図6は、パイプの表面と同形のアンテナのアレイを示す。
【0035】
本明細書および図面において、同様の部分には同様の参照符号を附している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
RFエネルギー捕集システムの概略を、図1を参照して説明する。
【0037】
レクテナ100は、環境RFエネルギーを受け取るように構成されたアンテナ101を含むものとして示される。このアンテナは、広い周波数範囲にわたって環境RFエネルギーを受け取るように設計されるので、アンテナ101の電気的出力は、その受信周波数範囲にわたって大きく変動する電力プロファイルを伴う。アンテナ101の出力端子(これは、変動する電気信号を供給する)は、インピーダンス整合回路102を介して整流器103に接続されている。インピーダンス整合回路102は、レクテナの部品間のインピーダンス不整合による損失を最小限にするために設けられる。整流器は、受け取った時変電気信号を直流(DC)電気信号に変換する。整流器の出力は、平滑化/フィルタリング回路104において平滑化およびフィルタリングされる。この平滑化された直流エネルギーは、有用な調整済み電圧を提供して貯蔵ユニット106(この例では、貯蔵コンデンサCstorage)を充電するために、電力管理モジュール(PMM)内に供給される。貯蔵ユニット106への電流の伝送、およびその貯蔵ユニット106での蓄電は、電力管理モジュール(PMM)105によって制御される。PMMは、昇圧器として動作することに加えて、最大電力点追従機能も提供する。PMMの最大電力追従機能は、広範な入力RF電力レベルにわたって理想的な負荷があることを保証し、負荷への伝送電力をシステムが最大化できるようにする。したがって、PMMは、アンテナとの良好なインピーダンス整合を提供することにも役立つ。PMMは、貯蔵ユニット106に蓄えられている電気エネルギーを負荷(この例では、説明を簡単にするためにLED)に接続するためのスイッチ108を制御するようにも構成されている。ただし、実際は、PMMが、貯蔵ユニット106からデバイス(すなわち、電力供給される負荷)への電力の供給を制御する。
【0038】
レクテナ100は、アンテナ101が受け取る環境RFエネルギーを最大にするとともに、受け取ったエネルギーを貯蔵ユニット106に蓄えるのに適したエネルギーに変換する際の損失を最小にするように設計される。そこで、レクテナ100のさまざまな構成要素の詳細について説明することとする。
【0039】
レクテナによって捕集される電力を最大にし、かつ、捕集器のサイズを小さくするため、アンテナ101は、図2から分かるように、単一のマルチバンドアンテナである。
【0040】
アンテナ101は、基板を備える平面アンテナ構造であり、その基板の上には、アンテナの受信素子が形成されている。アンテナ101は、円形放射パッチ110、給電線111および矩形接地面112を含む複数の受信素子を備えた変形マイクロストリップディスクモノポールアンテナである。円形放射パッチ110および給電線111は、基板の一方の側に配置され、接地面112は、基板の他方の側に配置されている。このアンテナはマイクロストリップ型の給電線を備えるものとして示されているが、他の構成では、コプレーナ導波路給電線が設けられ、あるいはマイクロストリップ型給電線とコプレーナ導波路給電線の双方が組み合わされる。基板は、任意の低損失の部材、たとえばガラス、セラミック、FR4から作られていてもよい。アンテナが平面形状であるという特徴により、アンテナを捕集システムの他の部分と同じ基板上に形成することが可能になる。
【0041】
アンテナ101は、受け取るRF放射を最大にするために、実質的に無指向性とされる。アンテナの構成要素は、可能性のある様々なエネルギー源からのRFエネルギーの受け取りを最大にするように配置される。環境RFエネルギーのほとんどが移動体通信によるものなので、アンテナ101は、GSM900、GSM1800、3G、WiFiおよび4Gの複数の帯域をカバーする超広帯域にわたって動作するように構成されている。要望があれば、ラジオ、TVおよび他のISM帯域をカバーするように上述の周波数より高い、または低い他の周波数帯域を受けるように、他のアンテナ構成を採用することができる。円形放射パッチ110は、全帯域を受けるように最初に配置され、一方で、接地面112は、整流処理によって発生した特定の3G帯域および4G帯域の3次高調波の除去を促進するように調整される。これらの異なる周波数帯域を受けるための放射パッチ110および接地面112の配置をいまから詳細に説明する。
【0042】
放射パッチ110は、円形状であり、基板の上側部分に配置されている。マイクロストリップ伝送線路の形態の細長い給電線111は、円形放射パッチ110から基板の端面への接続を部位111aにおいて提供する。アンテナ100がエネルギー捕集システムの次の段へ接続可能なのは、この部位においてである。細長い線路111は、レクテナの他の部分を放射パッチ110に接続するように機能するだけでなく、後述のようにインピーダンス整合も提供する。ディスク(円板)の半径は、アンテナが受けることになっている最も低い周波数(たとえばGSM900用の945MHz)の4分の1波長である。
【0043】
接地面112は、矩形状であり、アンテナ基板の底から、アンテナ基板の長手方向の途中の部分まで延在している。他の構成では、接地面は異なる形状であってよい。接地面の形状は、インピーダンスおよび放射パターンを定める。基板の端面において電気的な接続を行うことにより、細長い線路をエネルギー捕集システムの他の部分に電気的に接続できるようになる。円形放射パッチ、給電線および接地面は、銅などの導電性部材からなる。
【0044】
アンテナのインピーダンスは、アンテナ給電線の幅と、円形放射パッチおよび接地面間の距離とを変えることによって、整流器のインピーダンスに共役整合するように変更することができる。とくに、円形放射パッチ110の底部と接地面112の頂部との間の距離を利用することで、インピーダンスを50Ω(あるいは任意に選択した基準インピーダンス)に調整し、また、所望の無指向性パターンを最適化することができる。接地面の形状、および接地面と円板との重なりは、円板から到来する力線の反射による放射パターンを決定する。これは、結果として、アンテナの利得を定め、その利得は2.3〜4.8dBiの間となりうる。この距離は、アンテナが受信することになっている波長にも依存する。実際は、円形放射パッチの底部と接地面の頂部との間の距離が、λg/20〜λg/12.5に設定される。ここで、λgは、選択された周波数帯域の中心周波数における信号の導波波長である。λgおよびλoは、λgが導波構造での波長であり、真空中の波長とは異なることを強調するために区別して用いている。
【0045】
アンテナ101は、該アンテナ上に形成された複数の周波数フィルタリング構造を有する。これらの周波数フィルタリング構造は、アンテナの周波数応答特性を変更する。とくに、これらのフィルタは、アンテナが受信する選択された帯域、たとえばGSM900、GSM1800および3Gといった帯域の各々において全波整流によって発生した3次高調波を取り除くように構成されている。アンテナが半波整流器とともに用いられるときは、3次高調波フィルタではなく2次高調波フィルタが必要である。
【0046】
第1および第2のフィルタリングノッチ110aおよび110bが、円形放射パッチ上に設けられ、一方で、更なるノッチ112aが接地面112上に設けられる。第1および第2のノッチ110a、110bは、湾曲しており、円形放射パッチ上に同心状に配置されている。第1のフィルタリングノッチ110aは、λg/7.5〜λg/6の長さを有する。第1のフィルタリングノッチは、円形放射パッチの中心からλg/16〜λg/12の位置に放射状に配置されている。第1のフィルタリングノッチの幅はλg/24.2〜λg/18.5であり、この幅は、ノッチの反射減衰量および帯域幅を最適化する。第2のフィルタリングノッチ110bは、λg/5.7〜λg/4.5の長さ、およびλg/24.2〜λg/18.5の幅を有しており、このノッチは、円形放射パッチの中心からλg/24〜λg/12の位置に放射状に配置されている。ノッチの位置および幅を変更することで、反射減衰量を増加させることができ、また、全ての目的周波数を含むように帯域幅を調整できる。これらのノッチによって提供されるフィルタリングの反射減衰量および帯域幅を定めるのは、これらのノッチの位置および幾何学形状によって生成される共振である。
【0047】
接地面112に形成されるノッチ112aはU字状であり、U字の基部が下向きとなっている。接地面112におけるノッチの中央部分は、円形放射パッチの下縁からλg/8.1〜λg/5.4に位置しており、ノッチ112aは、λg/10.5〜λg/7.4の長さ、およびλg/24.2〜λg/15.2の幅を有する。
【0048】
要するに、第1および第2のノッチの長さは、3次高調波の約3分の1波長であり、幅は、フィルタの帯域幅特性に比例する。U字状のノッチ112aは、3G整流器によって発生した高調波を取り除くために組み込まれる。各帯域について異なる整流回路が存在し、また各整流器がそれらの動作周波数に対応する3次高調波を発生するので、アンテナの構成要素ごとに、異なるフィルタまたはノッチが必要となる。
【0049】
他の構成では、追加のノッチを構造に付加することができ、特に、円形放射パッチ内に追加することができる。追加のノッチは、4GまたはWiFiのような他の帯域でも捕集が要望される場合に使用することができる。ただし、高調波除去は、−2dB未満になるだろう。換言すると、追加のフィルタは、所望の除去特性を達成することができず、高調波の電力の約50%が除去されない可能性がある。
【0050】
図3は、図1の整流回路103を示す。整流回路103は、差動出力を有するマイクロストリップ全波整流回路である。図3に示される整流回路は、インピーダンス整合部202と、整流器203と、図1の概略図に示されるフィルタリング素子104とを含む。整流回路は、従来の全波整流(4ダイオード)整流器で生じるダイオード電圧降下を低減するように、できるだけ損失のないように設計される。これは主に、回路全体にわたる的確なインピーダンス整合を保証することによって達成される。整流器203は、その整流器がアンテナ101から受けようとする周波数範囲の周波数向けに調整されている。アンテナ101が複数帯域を受けるように構成されている場合、複数の整流器203が帯域ごとに設けられる。ただし、説明を容易にするため、図面には単一の整流器のみを示して説明する。
【0051】
アンテナ101からの出力は、マイクロストリップ伝送線路の給電点201で受け取られる。この給電点で、マイクロストリップ伝送線路は2つの腕状部(アーム部)に分岐する。第1の腕状部は、順方向にバイアスされた整流素子203を介して、整流器の入力端子を出力端子へ接続する。第2の腕状部は、逆方向にバイアスされた第2の整流素子204を介して、整流器の入力端子を出力端子へ接続する。
【0052】
このように、マイクロストリップ線路202の腕状部は、入力端子201から左右に真っ直ぐに延在する。このマイクロストリップ線路の線幅は、回路の所望の特性インピーダンスに応じて設定される。線幅は、整流回路のアンテナへのインピーダンス整合を簡素化するために設定することもできる。インピーダンス整合用マイクロストリップ伝送線路202の各端で、更なる平行線路が、インピーダンス整合マイクロストリップ伝送線路202と垂直に短距離だけ延在しており、各々が整流素子203、204のそれぞれの第1端子に接続されている。インピーダンス整合用マイクロストリップ伝送線路202の長さは、アンテナ101のインピーダンス(この例では50Ω)に整合するように設定されている。この長さは、好ましくはλg/8.1〜λg/6.8である。したがって、インピーダンス整合用マイクロストリップ伝送線路は、図1のインピーダンス変成器102の機能を果たしている。入力端子と整流素子との間のマイクロストリップ伝送線路の幅および長さは、整流器の入力インピーダンスを調整するために用いられる。
【0053】
これらの整流素子はショットキーダイオード203、204であり、第1のダイオード203は順方向にバイアスされており、第2のダイオード204は逆方向にバイアスされている。他の構成では、トランジスタ型の整流装置を設けてもよい。たとえば、複数のFETを、整流機能を発揮するように修正してもよい。
【0054】
更なるマイクロストリップ線路が、ダイオード203、204の各々の第2の端子からそれぞれ別の短距離部205、206だけ延在する。マイクロストリップ線路のこの部分の長さおよび幅は誘導リアクタンスを定めるので、その長さおよび幅は、ダイオードの容量リアクタンスを吸収するように設定される。加えて、マイクロストリップ線路のこの部分の長さおよび幅は、整流回路の入力インピーダンスを調整するために利用することができる。更なるマイクロストリップ線路205、206の長さは、好ましくはλg/5.6〜λg/4.3である。ここで、4分の1波長(λ/4)スタブ207、208が、マイクロストリップ伝送線路205、206の端から垂直に延在する。4分の1波長スタブ207、208は、図1のフィルタリング機能104を果たす。スタブは、出力から基本波を取り除くために用いられ、出力において直流(DC)を提供する。λg/4スタブは、基本波および高次の高調波を確実に−45dBm未満にする。
【0055】
その後、マイクロストリップ伝送線路は、マイクロストリップ伝送線路の2つの腕状部が2つの出力端子で再び一直線となり向かい合うように垂直に延在するまで、スタブを超えてさらに長い距離209、210だけ進む。この区間は、好ましくはλg/4.4〜λg/3.8の長さである。この区間は、ある範囲の周波数および入力電力レベルの全体にわたって、負荷とこの整流装置の残りの部分とがアンテナの入力インピーダンスの共役整合を有するように、インピーダンス変成器として機能する。
【0056】
動作中、ダイオード203は受信信号の正の部分を整流し、ダイオード204は受信信号の負の部分を整流する。4分の1波長スタブは、出力から基本波を取り除き、出力端子で直流(DC)が得られるようにする。その出力接続は接地されていないので、ダイオード204から来る負電圧が、他のシステムブロック(PMMのコールドスタート電圧(330mV)に至るために、より高い電圧を供給する)に対する基準電圧となる。
【0057】
出力は差動出力である。これにより、システムがより高い出力電圧VPMMを供給することが可能となり、入力電力レベルが3μW(−25dBm)未満でも、電力管理モジュール(PMM)によって要求される最小電圧330mVに到達できるようになる。さらに、差動出力を使用することで、接地ビアを避けつつ、損失を低減し、シミュレーションと実測とのより良好な整合を達成することを助け、また、製造を簡素化する。
【0058】
単一の全波整流器は、−26dBmの入力電力で12%の効率を達成することができ、−10dBmでは46%に至る。反射減衰量は、選択された動作帯域のほぼすべてにおいて保証している−10dBという上限よりも小さい。比帯域幅は、動作周波数によって2〜6.2%変動する。上述した入力電力範囲用の捕集器の出力は、75〜550mVである。
【0059】
RFエネルギー捕集器全体のフットプリントを最小化するため、図4に示されるように、PMM回路300が、全波整流器の伝送線路によって定められる境界線の内側に配置される。このことは、整流器の周囲の外側においてPMM300を整流器に直列に配置する既知のシステムとは対照的である。ただし、整流用の構造と小型化されたPMM回路300との結合を避けるために熟慮を要する。PMM回路300および全波整流器間の電磁相互作用を最小限とするために、PMM回路300の縁と、整流器のマイクロストリップ伝送線路との間の距離は、次のように設定される。PMM回路300は、差動出力端子に直接接続される。したがって、差動出力端子で接続されるPMM回路300とマイクロストリップ伝送線路211、212との間の距離は無視できる。そして、差動出力端子と合流する側とは反対側のPMM回路300の他端と、整流回路の入力端子との間の距離を、λg/5〜λg/2.5に設定する。PMM回路300の第1の側を、第1上縁部210からλg/12〜λg/6.5に設定する。マイクロストリップ伝送線路の第2下縁部からの距離についても同じである。PMM300と差動出力端子との間の距離は、λg/16.4〜λg/9に設定する。
【0060】
図4に示される配置では、PMM300は、伝送線路によって定められる境界線の実質的に内側に設けられている。他の配置では、PMMが伝送線路の境界線の内側に部分的に設けられるだけでもよく、その場合でも、依然としてエネルギー捕集システム全体に対して、いくらかの省スペース化をもたらす。
【0061】
PMM回路の位置に加えて、図4に示される配置は、ビアの使用を回避しつつ、整流器の差動出力および「接地された」PMM出力端子に対する接続をもたらす。
【0062】
図5は、どのようにアンテナが(結果としてレクテナも)表面と同形になることができるかを示す。この例では、アンテナ100が形成された基板が、可撓性の材料で作られている。従って、アンテナ100は、パイプ500を取り巻くように曲げられている。この共形アンテナ設計では、パイプ500は、以下の特性を有するPVC水管である。すなわち、半径が5〜10cm、比誘電率εrが2.88、そして誘電正接tanδが0.089である。パイプを取り巻くようにアンテナを曲げることによる反射減衰量の悪化は無い。
【0063】
他の構成では、複数のアンテナを配列して設けてよい。たとえば、図6は、パイプ500と合致した形状の複数のアンテナ100の配列(アレイ)を示す。複数のレクテナを使用することで、捕集電力の総量が増加する。各捕集器間の距離は、λo/4.8にできるだけ近い距離とすることができる。λoは、アンテナの一次共振波長である。
【0064】
アンテナをパイプと同形とするこれらの例は、任意の円柱状物に適用可能である。
【0065】
ボウタイおよび四角形パッチのような他の種類のモノポールアンテナや平面アンテナに同様のノッチが設けられた他の構成を提供することができる。接地面は、アンテナの放射パターンを変更するために延長することができる。これにより、アンテナの利得も変化する。
【0066】
他の構成では、複数のフィルタリング素子が共に一つのフィルタリング装置として形成される。換言すると、単一のフィルタリング装置が複数のフィルタリング素子を有するように設けられるので、各フィルタリング素子は、特定の周波数帯域用のフィルタリングを実行する等の特定のフィルタリング機能を果たすように構成される。
【0067】
ここで説明した捕集器は、電子ペーパディスプレイ、低電力ディスプレイ、工業用センサ(たとえば、歪みゲージや、温度、圧力、傾斜、流量、近接、煙、ガス、COx、NOxセンサ)、LEDへの給電、および貯蔵ユニットの充電などのさまざまな用途に使用できる。
【0068】
また、アンテナのポートインピーダンスがそのまま整流器のインピーダンスに整合するように設計されていれば、インピーダンス整合回路を省略できる。
【0069】
整流回路がマイクロストリップ型回路である必要はない。たとえば、他の構成では、ストリップ線路、コプレーナストリップ導波構造またはCPW導波構造が用いられる。更に別の構成では、集中定数素子または半集中定数部品が用いられてもよい。
【0070】
他の構成では、全波整流器は、任意の所望の周波数帯域の周波数によって、そのサイズを大きく、または小さくすることができる。
【0071】
他の構成では、アンテナは、ボウタイアンテナ、変形四角形パッチアンテナ、デュアルモノポールアンテナ、対数周期アンテナ、3次元アンテナ、または、ヘリカルアンテナ若しくはダブルヘリカルアンテナなどの非平面アンテナの少なくとも一つである。
【0072】
他のフィルタリング構造(例えば突起)が、ここで説明したノッチフィルタと同様の帯域フィルタリング応答を達成しうる。さらに、円形放射パッチに形成されたノッチは同心状に図示されているが、ノッチを同心状とする必要はない。ただし、同心状のノッチを使用することによって、より良い性能を得ることができる。
【0073】
異なる帯域のためのフィルタリング構造が、アンテナ構造の両側に設けられてもよい。ただし、接地面でU字ノッチを使用することによって、低周波数に対してよりも、高周波数に対して優れた性能を達成できる。
【0074】
上述のレクテナは、環境RFエネルギーを捕集するために使用することについて主に説明したものである。ただし、レクテナを、特定の電力源からのRFエネルギーを受け取るため、あるいは環境RFエネルギーの捕集と同様に、特定の電力源からのRFエネルギーの一部を受け取るために使用することもできる。
【0075】
ここで説明した整流器は、単一の周波数帯域で使用するために構成されている。アンテナが複数の周波数帯域を受けるように構成されるときには、各帯域にそれぞれ対応する整流器が使用される。
【0076】
システムの構成要素が、特定の方位(例えば上方や下方)を定めるように図示または説明される場合、その方位は、重要なものではなく、システムの構成要素同士の相対的な位置を示すに過ぎない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6