特許第6355018号(P6355018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6355018-開閉表示装置 図000002
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  • 特許6355018-開閉表示装置 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355018
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】開閉表示装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   F16K37/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-84987(P2014-84987)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-197217(P2015-197217A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 義明
(72)【発明者】
【氏名】四方 出
(72)【発明者】
【氏名】稲田 敏之
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−152078(JP,A)
【文献】 特開昭50−137172(JP,A)
【文献】 特表2002−513901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
F15B 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路を有するボディと、ボディに接続され、アクチュエータの外装をなすアクチュエータボディと、アクチュエータボディ内部に構成されたステムと、ステムと一体に構成された駆動部と、ステムを駆動部を介して一方向に付勢する付勢部材とを備えたバルブであって、駆動部と共動するように構成された磁石が設けられ、アクチュエータボディ外部にはバルブ開閉状態を示す開閉表示部材が配置され、当該開閉表示部材に固定された磁性体は前記磁石の磁力により前記磁石と連動して開閉表示部材を駆動させ、前記磁石の位置に合わせ前記磁性体を位置決めする固定部材が構成され、帯状の前記固定部材がアクチュエータボディを密着被覆し、前記固定部材の一部がアクチュエータから遠ざかる方向に曲折し、別の曲折により再度アクチュエータボディに密着し、当該曲折により生じた前記固定部材と前記アクチュエータボディの隙間にアクチュエータボディ外部の他部材が保持されていることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記開閉表示部材に設けられた被ガイド部と、前記アクチュエータボディの外部に構成されたガイド部材のガイド部が係合されたことを特徴とする請求項1のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステムの上下動によって弁の開閉を行なうアクチュエータの、開閉状態を示す開閉表示装置に関する発明である。なお、本願発明は、開閉駆動用流体の圧力をステムの駆動動力に変換するアクチュエータを有した、いわゆる空圧作動式の自動弁や、手動操作によって開閉を行なう手動弁、並びに、電磁石の磁力を開閉駆動動力として利用するいわゆる電磁弁であっても適用可能である。
【背景技術】
【0002】
製造プラント(例えば半導体製造プラント)において、ファシリティの各要所には、流体制御のための、大量のバルブが施工されることが一般的である。これらのバルブは、遠隔一括管理を可能にするために、一部を除き、遠隔開閉操作が可能な自動弁が用いられる場合が一般的である。
【0003】
製造プラント内で使用される流体が高圧かつ大流量である場合、電磁弁を用いて流体制御を行なおうとすると、強力な駆動力を必要とするため、それを得るために巨大な動力、即ち巨大な電磁石をアクチュエータに内包することが必要となり、結果としてバルブが巨大となる。製造プラントにおいて、ファシリティの占有スペースが増加することは好ましくない。
【0004】
上記を解決するために、製造プラント内の流体制御バルブには、バルブが小型であっても高圧かつ大流量の流体制御が可能な空圧作動式の自動弁が採用されることが一般的である。この場合、駆動空圧の供給ラインを別途設けて、駆動空圧供給のON−OFFをもって遠隔一括管理が行われる。
【0005】
ところで、空圧作動式の自動弁は大まかに、流路を有したボディと、導入動力である空圧をバルブの開閉駆動動力に変換するアクチュエータから構成される。アクチュエータは、アクチュエータ内部の空室に気体を圧入・排出し、空圧により内部部品(例えばピストン)を弁開方向、弁閉方向に摺動させ弁開閉をする為、アクチュエータは気密性を保ち密閉状態になる構造でなければならない。
【0006】
そのため、アクチュエータ外観から開閉状態を確認する事は難しい。例えば、ステムをアクチュエータ上部から露出させればバルブの開閉状態を外観から確認することができる。しかし、通常自動弁はON−OFF弁であるため、最大流量を流通させるために必要な最低限のリフト量に構成する。リフト量を大きくすると、より大きな駆動力が必要となるためアクチュエータ内部の空室を巨大化させる必要があり、結果としてバルブの巨大化を招く。
【0007】
即ち、通常リフト量(アクチュエータから露出したステムの稼動量)は最小とされているため、特に薄暗く視界の悪いプラント内では、外観の変化がわかり難いという問題があった。
【0008】
上述の自動弁開閉状態の視認性に関する問題について、空圧式の場合は、駆動空圧供給の有無をもって自動弁の開閉状態を擬似的に把握することができる。しかし、駆動空圧供給ラインのどこかにリーク等の問題が発生している場合、又は自動弁本体に問題があり弁開閉の機能を成していない場合が想定される。
【0009】
従って、製造プラントにおいては、安全性を高めるため自動弁の開閉状態をより確実な方法(例えば、各自動弁毎の直接の開閉確認)により確認する必要がある。
【0010】
以上のように、製造プラントにおいては、自動弁の開閉状態を明確かつ確実に確認する必要がある。従来採用されている解決手段として、例えば、電気的なセンサーが使用される場合がある。当該センサーは、アクチュエータ内部に組込み、ピストンの駆動状態を物理的な接触、又は光学的な方法により感知し、バルブの開閉状態を出力されるものである。
【0011】
しかし、当該センサーは高額であり、バルブ本体の価格と同程度、若しくはそれ以上の価格となる場合がある。前述の通り製造プラントには大量の自動弁が使用されるため、当該センサーを標準的に採用することは現実的ではない。
【0012】
本願発明に係る先行技術として、特許文献1が存在する。特許文献1に係る発明は、ステムの開閉駆動を利用して、バルブ外観から開閉状態を認識することができる発明である。即ち、ステムに揺動体が固定され、当該揺動体がアクチュエータ外部に設けられた開閉表示部材に連結しており、ステムの駆動により、連結している開閉表示部材を揺動させて切り替えることで物理的なバルブ開閉状態を外部から視認できるよう構成している。
【0013】
特許文献1の発明の場合、アクチュエータ内部の揺動体とアクチュエータ外部の開閉表示部材を連結する必要があり、どうしてもその構造が複雑になってしまうという問題があった
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】 特開平10−175662 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は上述の通り、バルブの外観からバルブの開閉状態を明確かつ確実に確認できる装置であって、特に構造が単純で安価な開閉表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る発明は、流体通路を有するボディと、ボディに接続され、アクチュエータの外装をなすアクチュエータボディと、アクチュエータボディ内部に構成されたステムと、ステムと一体に構成された駆動部と、ステムを駆動部を介して一方向に付勢する付勢部材とを備えたバルブであって、駆動部と共動するように構成された磁石が設けられ、アクチュエータボディ外部にはバルブ開閉状態を示す開閉表示部材が配置され、当該開閉表示部材に固定された磁性体は、駆動部に構成された磁石の磁力により、磁石と連動して開閉表示部材を駆動させることを特徴とするバルブに関する。
【0017】
請求項2に係る発明は、開閉表示部材の一部を隠すように開閉表示部材の外部に構成され、開閉表示部材の駆動に追随しないブラインド部材が設けられたことを特徴とする請求項1のバルブに関する。
【0018】
請求項3に係る発明は、開閉表示部材がアクチュエータボディ外部全周を覆うよう構成され、アクチュエータボディ外周全方向から開閉状態を認識できることを特徴とする請求項1乃至請求項2のバルブに関する。
【0019】
請求項4に係る発明は、アクチュエータボディ外部全周を覆った開閉表示部材の一部が間欠していることを特徴とする請求項3のバルブに関する。
【0020】
請求項5に係る発明は、アクチュエータボディ外部の構成部材を保持し、磁石の位置に合わせて磁性体を位置決めする固定部材が構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のバルブに関する。
【0021】
請求項6に係る発明は、帯状の固定部材がアクチュエータボディを密着被覆し、固定部材の一部がアクチュエータから遠ざかる方向に曲折し、別の曲折により再度アクチュエータボディに密着し、当該曲折により生じた固定部材とアクチュエータボディの隙間にアクチュエータボディ外部の他部材が保持されていることを特徴とする請求項5のバルブに関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本願発明に係るアクチュエータの断面を斜視方向から示すものである。特にアクチュエータの内部構造を示す。
図2図2は、本願発明に係るアクチュエータの外観を斜視方向から示すものである。特に、バンド部と開閉表示装置の装着状態を示す。
図3図3は、開閉表示装置の展開図である。開閉表示装置の構成を示す。
図4図4は、開閉表示部材の背面を示す。開閉表示部材と磁性体の装着関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を、図1乃至図4を用いて説明する。
【0024】
図1を用いて、本願発明に係るアクチュエータ(1)の構造を示す(バルブボディについては図示省略)。アクチュエータ(1)は、大きくアクチュエータボディ(2)により構成されている。アクチュエータボディ(2)は、複数の部品(個別図示省略)を溶接部(14)で溶接することによりその形状を成している。
【0025】
アクチュエータボディ(2)には、空室(18)に、バルブ駆動圧を流入させる駆動圧導入部(13)が設けられている。導入された流体は、Oリング(12)により密閉された空室(18)に保持されつつ、駆動部(4)を、付勢部材(5)を圧縮する方向に駆動させる。
【0026】
アクチュエータボディ(2)には、ステム上部先端(19)を露出させる露出部(10)が設けられている。前述の駆動部(4)とステム(3)は、固定部材(15)により固定されているため、駆動部(4)とステム(3)は連動駆動する。即ち、駆動部(4)が駆動圧導入部(13)から導入された流体により駆動すると、ステム(3)のステム上部先端(19)が露出部(10)から露出する。視認性は後に説明する開閉表示機(30)に及びないが、ステム上部先端(19)の露出状態を確認することで、アクチュエータ(1)内部の状態を確認することができる。
【0027】
他に、アクチュエータボディ(2)には、ボディ螺合部(16)と、空気抜け開孔(11)が設けられている。ボディ螺合部(16)はネジが切られており、バルブボディのソケット(図示省略)と螺合することによりアクチュエータ(1)とバルブボディを固定する。空気抜け開孔(11)は、駆動部(4)が付勢部材(5)を圧縮する方向に駆動した際、アクチュエータボディ(2)内部の空気を外部に排出する機能を有する。
【0028】
アクチュエータ(1)内部には、前述のステム(3)が構成されている。ステム(3)は、ステムガイド(17)にガイドされつつ、固定部(15)により、アクチュエータボディ(2)からの脱落を防止されている。ステム(3)には、弁体部(20)が設けられている。ステム(3)に固定された駆動部(4)が付勢手段(5)により付勢され、ステム(3)は下降し、バルブボディの流路(図示省略)を弁体部(20)が遮断することにより弁閉が行われる。また、上記で記載した通り、空室(18)に駆動圧が供給されると駆動部が(4)付勢部材(5)を圧縮する方向へ駆動する。この際、弁体部(20)はバルブボディの流路(図示省略)から離間するため、バルブは弁開となる。
【0029】
アクチュエータ(1)内部には、磁石(6)が構成されている。当該磁石(6)は、駆動部(4)に固定されている。固定方法は、ボルト固定(図示省略)、接着剤による固定、嵌入による固定(図示省略)のいずれであっても良いことはもちろんである。磁石(6)の機能については後述する。
【0030】
図2を用いて、開閉表示機(30)のアクチュエータボディ(2)への固定方法を示す。開閉表示機(30)の詳細については後述する。
【0031】
開閉表示機(30)は、固定バンド(40)に設けられた開閉表示機保持部(42)に保持される形で固定される。固定バンド(40)は、伸縮変形可能な素材であれば良く、例えばシリコン樹脂が選択される。
【0032】
固定バンド(40)は図2で示すごとく、一端に設けられた係合凸部(41)に、もう一端に設けられた係合凹部(43)が係合することによりアクチュエータボディ(2)を締付けつつ固定される。当該係合部は本実施例の場合は2組であるが、1組、若しくは3組以上として良いことはもちろんである。
【0033】
図3を用いて、開閉表示機(30)の構成について示す。開閉表示機(30)は、アクチュエータボディ(2)への装着時、外径側から、ブラインド部材(32)、開閉表示機フレーム(36)、開閉表示部材(37)、磁性体(38)(図4で示す)、及びガイド部材(34)で構成される。
【0034】
開閉表示機フレーム(36)は、開閉表示機(30)の筐体の一部となる。即ち、開閉表示フレームに、ブラインド部材(32)、並びにガイド部材(34)を嵌入、若しくは溶着することにより開閉表示機(30)の筐体が製作される。
【0035】
ブラインド部材(32)は、ブラインド部(33)が、開閉表示部材(37)の開閉表示部(31)の一部、即ちOPEN、若しくはCLOSEの表記のいずれかを遮蔽する機能を有する。開閉表示部材(37)については後述する。
【0036】
ガイド部材(34)に設けられたガイド部(35)が、開閉表示部材(37)の被ガイド部(35a)に係合することにより、開閉表示部材(37)の駆動はより円滑になる。なお、ガイド部材(34)は、磁石(6)と磁性体(38)の間に位置するため、磁石(6)と磁性体(38)の距離を最短にし、必要な吸着力を確保するため、必要に応じて薄板とする必要がある。また、磁石(6)の周辺をヨーク(図示省略)で覆い、必要に応じて磁力を調整することが望ましい。
【0037】
開閉表示部材(37)、ガイド部材(34)、並びに磁性体(38)の関係について、図4を用いて示す。開閉表示部材(37)の背面(39)には、被ガイド部(35a)と磁性体嵌入部(38a)が設けられている。被ガイド部(35a)に、ガイド部材(34)のガイド部(35)が係合する。また、磁性体嵌入部(38a)に、磁性体(38)が嵌入される。
【0038】
本実施例において、開閉表示機(30)1組で、アクチュエータボディ(2)外周の90°を覆うことになる。視認性を向上させるため、アクチュエータボディ(2)全周を覆うよう、開閉表示機(30)は4組、即ち360°を覆うように構成することが望ましい。
【発明の効果】
【0039】
以上の通り、本願発明を用いれば、バルブの開閉状態を物理的に確実かつ明確な方法でバルブ外観から視認できるようになる。また、従来用いられていた方法に比べ、構造が単純であり、安価での製作が可能である。
【符号の説明】
【0040】
(1):アクチュエータ、(2):アクチュエータボディ、(3):ステム、(4):駆動部、(5):付勢部材、(6):磁石、
(10):露出部、(11):空気抜き開孔、(12):Oリング、(13):駆動圧導入部、(14):溶接部、(15):固定部材、(16):ボディ螺合部、(17):ステムガイド、(18):空室、(19):ステム上部先端、(20):弁体部、
(30):開閉表示機、(31):開閉表示部、(32):ブラインド部材、(33):ブラインド部、(34):ガイド部材、(35):ガイド部、(35a):被ガイド部、(36):開閉表示機フレーム、(37):開閉表示部材、(38):磁性体、(38a):磁性体嵌入部、(39):背面、
(40):固定バンド、(41):係合凸部、(42):開閉表示機保持部、(43):係合凹部、
図1
図2
図3
図4