(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6355061
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】二点間の波動伝播時間の推定方法
(51)【国際特許分類】
G01V 1/30 20060101AFI20180702BHJP
G01H 5/00 20060101ALI20180702BHJP
G01N 29/50 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
G01V1/30
G01H5/00
G01N29/50
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-213201(P2017-213201)
(22)【出願日】2017年11月2日
【審査請求日】2017年11月2日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593100330
【氏名又は名称】株式会社システムアンドデータリサーチ
(72)【発明者】
【氏名】中村 豊
【審査官】
北川 創
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−035284(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/175692(WO,A1)
【文献】
特許第6024012(JP,B2)
【文献】
特開2011−133410(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/141129(WO,A1)
【文献】
特開平11−201812(JP,A)
【文献】
特表2008−544260(JP,A)
【文献】
特開2006−003311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00 − 1/52
G01H 5/00
G01H 17/00
G01N 29/00 − 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二点間の波動伝播時間の推定方法において、
空間的に離れた二点間を波動が伝播する場合に、
おのおのの点において該波動を時系列の振動波形として計測し、
一方の点において計測された時系列の振動波形について一定サンプリング時間をさかのぼった時系列の振動波形と、
他方の点において計測された時系列の振動波形と、
の相対誤差関数を、
各測定時点について複数の該一定サンプリング時間をさかのぼって連続的に算出したものを第一の相対誤差関数群とし、
また、
一方の点において計測された時系列の振動波形と、
他方の点において計測された時系列の振動波形について一定サンプリング時間をさかのぼった時系列の振動波形と、
の相対誤差関数を、
各測定時点について複数の該一定サンプリング時間をさかのぼって連続的に算出したものを第二の相対誤差関数群とし、
該第一の相対誤差関数群と該第二の相対誤差関数群との中で、
相対誤差関数の絶対値が最小になる該一定サンプリング時間のさかのぼり量を測定時点ごとにリアルタイムに算出し、
算出された相対誤差の絶対値が最小になる一定サンプリング時間の該さかのぼり量を、
該測定時点における該二点間の波動伝播時間とする、
ことを特徴とする、
二点間の波動伝播時間の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波動を伝播する媒質の二点間の波動伝播時間の推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波動の伝播時間を推定する方法としては、媒質中の二点で波動を観測し、他方の波動からもう一点で観測した波動を推定し、その差が最小になるサンプリング時間を波動の伝播時間とする方法(例えば特許文献1)や、地震波の伝播時間を推定するNIOM法(例えば非特許文献1)、ダムの波動伝播時間の推定方法(例えば、非特許文献2参照)が知られている。
【0003】
まず特許文献1による方法であるが、この方法では媒質内の波動場が大きく乱された場合に誤差が大きくなり、例えば地盤などに適用する場合には液状化の影響を受けやすいという特徴がある。
【0004】
また、非特許文献1のNIOM法は、波動を2点で観測し、それらの観測データに対して一定の時間間隔を取出しフーリエ変換を行い、その結果からその2点間の伝達関数を求めておき、入力波形と出力波形の関係をこの伝達関数から求めることで、波動の伝播時間を求めるものである。
【0005】
しかし、この方法によると一定の測定区間を用いてフーリエ変換を行うためデータ処理に遅れが生じ、また処理そのものも複雑になる。
【0006】
さらに、非特許文献2の大町ほかによるダムの波動伝播速度の算出方法は、波動に含まれるある振動数が2点間を伝播する場合に位相が遅れることに着目したもので、フーリエ位相スペクトルを用いて振動数と位相差の関係を求めて、そこから伝播速度を算出する。
【0007】
しかし、この方法の場合でも一定の測定区間を用いてフーリエ変換を行うためデータ処理に遅れが生じ、また処理そのものも複雑になる。さらに、この方法を双方向の伝播波動がほぼ等しい建物に適用した場合は、その建物内の上下2点では位相差が見かけ上なくなり、波動伝播時間の算定ができなくなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6024012号特許公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kawakami, H. and Haddadi, H. R.: Modeling wave propagation by using Normalized Input-Output Minimization (NIOM), Soil Dyn. Earthq. Engng., 17, pp.117-126, 1998.
【0010】
【非特許文献2】大町達夫他:直下地震の観測記録に基づくロックフィルダムの非線形地震応答特性,第54回地盤工学シンポジウム 平成21年度論文集,pp.243-250,2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本件発明が解決しようとする課題は、物性の変化や構造物などの劣化を評価するために波動伝播時間を求めようとする際に、用いるデータ個数に制限なくリアルタイム処理ができないことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
二点間を波動が伝播することを考える。それぞれの位置をx、yとすると、ある時点jにおいてそれぞれの点で観測された波形はf(x,j)、f(y,j)とあらわされる。このとき、ある時点jに対して二つの波形の差が時間iあるときに、これら二つの波形の相違の二乗誤差Err(i,j)は以下のように算定することができる。
【0013】
Err(i,j)=[(f(x,j)−f(y,j−
i))
2]
【0014】
ここで、演算子[G(x)]はG(x)のある時間にわたる平均演算を意味する。また、
Rx(j)=[f(x、j)
2]
とすると、相対誤差関数RE(j)は次のようにあらわされる。
【0015】
【数1】
なお、数1において、Rx(j)×Ry(j)の項は基準化のための項であり、この項によらず他の方法によっても本発明の方法を実現することができる。
【0016】
数1は位置xにおけるある時点jの波形を基準として、この波形と位置yにおけるある時点jから時間iさかのぼった波形との相対誤差関数を算定するものである。この時間iをサンプル時間間隔を単位として変動させ、相対誤差関数の絶対値が最大になる場合の時間iが、ある時点jにおける波動伝播時間となる。
【0017】
実際に処理を行うにあたっては、前述の位置xにおける波形を基準にした場合と、位置yにおける波形を基準にした場合の相対誤差係数を、それぞれ時間iをサンプル時間を単位として複数さかのぼって算出する。この処理を行うことでリアルタイムかつ時間遅れなく位置xと位置yの間の波動伝播時間を算出することができる。
【0018】
また、時系列の振動波形において、連続するサンプリングデータを補間することで、サンプリング間隔よりも短い時間差の波動伝播時間を推定することができる。なお、補間の方法は、たとえば直線的に二つのサンプリングデータ間を補間するなど、その方法に限定はない。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法によれば、二点間を伝わる波動を測定することで、その二点間の波動伝播時間をリアルタイムに時間遅れなく推定することができる。このため、従来の方法では二点で観測を行い、限られたデータ長の波形を回収し、オフラインで複雑な処理を行う必要があったものを、非常に長いデータ長の観測波形であっても観測された波動を逐次処理し、リアルタイムかつ連続的に波動伝播時間を算出することができる。
【0020】
また、波動場が乱された場合であっても波動伝播時間を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の手法により求めた波動伝播時間を、特許文献1で求めた波動伝播時間と比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を示す。
【実施例】
【0023】
本発明の手法を、東北大学工学部の人間・環境系研究棟で観測された東北地方太平洋沖地震の観測波形に適用した実施例を示す。
【0024】
本発明の手法によると、
図1に示すような波動伝播時間の時系列の変動をリアルタイムに得ることができる。なお、
図1は特許文献1の方法により求められた波動伝播時間に、本発明の手法により求めた波動伝播時間を重ね書きしたものである。この図から、本発明の手法による波動伝播時間は特許文献1の方法による波動伝播時間とよく一致しており、本発明の手法の有効性を示している。
【0025】
なお、本発明の実施例に用いた地震観測波形は独立行政法人建築研究所により提供された強震波形である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
二点間の波動伝播時間をリアルタイムに推定することができるので、例えば波動が伝播する媒質の物性の変化や、具体的には構造物の地震時の被害状況を、リアルタイムに把握することなどに資することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 波動伝播時間を示す軸(単位:1/100秒)
2 時間軸(単位:秒)
11 本発明の手法による波形伝播時間
12 特許文献1の手法による波形伝播時間
【要約】 (修正有)
【課題】波動を伝播する媒質の二点間の波動伝播時間の推定方法を提供する。
【解決手段】二点間を波動が伝播することを考える。それぞれの位置をx、yして、それぞれの点で観測された波形の相互相関関数を算定する。位置xにおけるある時点jの波形を基準として、この波形と位置yにおけるある時点jから時間iさかのぼった波形との相対誤差関数を時間iをサンプル時間間隔を単位として変動させ、相対誤差関数の絶対値が最小になる場合の時間iが、ある時点jにおける波動伝播時間となる。実際に処理を行うにあたっては、前述の位置xにおける波形を基準にした場合と、位置yにおける波形を基準にした場合の相対誤差関数を、それぞれ時間差iをサンプル時間を単位として複数さかのぼって算出する。
【選択図】
図1