(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロッドの半径rと前記主シールリップの最小半径R1との差に対する、前記ロッドの半径rと前記主ダストリップの最小半径R2との差((r−R2)/(r−R1))が、1.2以上2.5以下であることを特徴とする、請求項1記載のシール装置。
前記シール部は、前記ロッドの軸方向に関して前記主シールリップよりも外部側に配置され、前記主シールリップよりも大きい最小半径R1’(R1’>R1)を有し、且つ前記ロッドと当接して密封対象をシールする副シールリップと、前記ロッドの軸方向に関して前記主ダストリップよりも密封対象側に配置され、前記主ダストリップよりも大きい最小半径R2’(R2’>R2)を有し、且つ前記ロッドと圧接して外部側から密封対象側への異物の進入を防止する副ダストリップとを更に備えることを特徴とする、請求項1又は2記載のシール装置。
前記ロッドの半径rと前記副ダストリップの最小半径R2’との差(r−R2’)が、前記ロッドの半径rと前記副シールリップの最小半径R1’との差(r−R1’)よりも大きいことを特徴とする、請求項3記載のシール装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のシール装置100では、その縦断面視において、メインリップ103の先端部における半径をR1、ダストリップ104の先端部における半径をR2としたとき、ダストリップ104の半径R2は、メインリップ103の半径R1とほぼ同一となっている。このような寸法で構成することにより、メインリップ103による密封対象のシール性能と、ダストリップ104によるダストの除去性能の両立を可能としている。しかしながら、近年、往復動するロッドとダストリップ104との間から泥水やダストが内部に侵入するのを確実に防止するべく、ダストリップ104における除去性能の更なる向上が求められている。
【0006】
本発明の目的は、密封対象の良好なシール性能を維持しつつ、耐泥水性、耐ダスト性を向上することができるシール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のシール装置は、金属環と、前記金属環に保持されたエラストマー製のシール部とを備えるシール装置であって、前記シール部は、被着体であるロッドと当接して密封対象をシールする主シールリップと、前記ロッドの軸方向に関して前記主シールリップの外部側に配置され、前記ロッドと圧接して外部側から密封対象側への異物の進入を防止する主ダストリップとを備え、前記主シールリップの最小半径をR1、前記主ダストリップの最小半径をR2、前記ロッドの半径をrとしたとき、前記ロッドの半径rと前記主ダストリップの最小半径R2との差(r−R2)が、前記ロッドの半径rと前記主シールリップの最小半径R1との差(r−R1)よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
前記ロッドの半径rと前記主シールリップの最小半径R1との差に対する、前記ロッドの半径rと前記主ダストリップの最小半径R2との差((r−R2)/(r−R1))が、1.2以上2.5以下であることが好ましい。
【0009】
また、前記シール部は、前記ロッドの軸方向に関して前記主シールリップよりも外部側に配置され、前記主シールリップよりも大きい最小半径R1’(R1’>R1)を有し、且つ前記ロッドと当接して密封対象をシールする副シールリップと、前記ロッドの軸方向に関して前記主ダストリップよりも密封対象側に配置され、前記主ダストリップよりも大きい最小半径R2’(R2’>R2)を有し、且つ前記ロッドと圧接して外部側から密封対象側への異物の進入を防止する副ダストリップとを更に備える。
【0010】
前記ロッドの半径rと前記副ダストリップの最小半径R2’との差(r−R2’)が、前記ロッドの半径rと前記副シールリップの最小半径R1’との差(r−R1’)よりも大きいことが好ましい。
【0011】
また、前記主ダストリップは、前記金属環の近傍に配置された基部と、前記基部から内方且つ外部側に延出する延出部とを有し、前記延出部は、その先端が前記ロッドに圧接する位置よりも外部側に設けられ、且つ外部側に開口する切り欠きを有する。
【0012】
また、前記シール装置は、車両用シリンダーダンパーのロッドに取り付けられることが好ましい。
【0013】
さらに、前記シール装置は、自動車のサスペンションを構成するシリンダーダンパーに取り付けられることがより好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、主シールリップが、被着体であるロッドと当接して密封対象をシールすると共に、主ダストリップが、ロッドと圧接して外部側から密封対象側への異物の進入を防止する。そして、ロッドの半径rと主ダストリップの最小半径R2との差(r−R2)が、ロッドの半径rと主シールリップの最小半径R1との差(r−R1)よりも大きい。換言すれば、ロッドに対する主ダストリップの締め代は、主シールリップの締め代よりも大きい。これにより、シール装置をロッドに取り付ける際、主ダストリップは、主シールリップよりも大きく弾性変形し、主ダストリップは、主シールリップよりも大きな復元力でロッドに押し付けられる。したがって、ロッドに対する主ダストリップの押し付け力を高めることができる。この結果、主シールリップによる密封対象の良好なシール性能を維持しつつ、主ダストリップの耐泥水性、耐ダスト性を向上することができる。
【0015】
また、ロッドの半径rと主シールリップの最小半径R1との差に対する、ロッドの半径rと主ダストリップの最小半径R2との差((r−R2)/(r−R1))が、1.2以上2.5以下である。すなわち、主ダストリップの締め代は、主シールリップの締め代の1.2倍以上2.5倍以下である。このため、ロッドに対する主ダストリップの押し付け力が高まる一方で、ロッドの往復動時に過度の摺動抵抗が生じない。よって、主ダストリップの耐泥水性、耐ダスト性を向上しつつ、ロッドの往復動に対する主ダストリップの摺動抵抗に大きな影響を与えることなく、ロッドを滑らかに往復動させることができる。
【0016】
また、主シールリップよりも大きい最小半径R1’を有する副シールリップが、ロッドと当接して密封対象をシールし、主ダストリップによりも大きい最小半径R2’を有する副ダストリップが、ロッドと圧接して外部側から密封対象側への異物の進入を防止する。このように2つのダストリップ及び2つのシールリップが設けられることで、密封対象のシール性を向上しつつ、耐泥水性、耐ダスト性を更に向上することができる。更に、ロッドの半径rと副ダストリップの最小半径R2’との差(r−R2’)が、ロッドの半径rと副シールリップの最小半径R1’との差(r−R1’)よりも大きい。すなわち、副ダストリップの締め代は、副シールリップの締め代よりも大きい。これにより、主ダストリップと同様、ロッドに対する副ダストリップの押し付け力を高めることができ、副ダストリップの耐泥水性、耐ダスト性を更に向上することができる。
【0017】
さらに、主ダストリップは、金属環の近傍に配置された基部と、基部から内方且つ外部側に延出する延出部とを有し、延出部は、その先端がロッドに圧接する位置よりも外部側に設けられ、且つ外部側に開口する切り欠きを有する。シール装置がロッドに取り付けられた状態では、この切り欠きとロッドの外周面との間に、当該ロッドの軸に沿ってくさび状の溝が形成される。これにより、当該ロッドの外周面に付着して掻き出される密封対象としての作動油を切り欠き内に溜めることができ、ロッドが外部側から密封対象側に移動する際、切り欠き内に溜められた密封対象が、外部側から密封対象側に戻り易くなる。これにより、シール装置が取り付けられる被取付体の本来の機能を長期的に維持することができる。
【0018】
特に、上記のようなシール装置を、自動車のサスペンションを構成するシリンダーダンパーに取り付けることにより、上記効果を確実に奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るシール装置が取り付けられるシリンダーダンパーの構成を示す縦断面図である。本発明のシール装置は、各種車両、特に自動車に使用され、シリンダーダンパー内に充填される作動油等の作動油組成物(以下、密封対象という)をシールすることを目的としてロッドに装着される。以下、複筒式のシリンダーダンパーを例に挙げて説明する。
【0022】
図1において、シリンダーダンパー1は、互いに略同心で配置された内筒2a及び外筒2bを有するシリンダ2と、外筒2bの開口端近傍の内周に挿入されるとともに内筒2aの開口端に取り付けられたロッドガイド3と、ロッドガイド3の中心孔に挿通され、内筒2a内を軸方向(
図1の上下方向)に往復動するロッド4と、ロッド4の下端に取り付けられ、内筒2aの内周面を軸方向に摺動するピストン5と、ロッドガイド3よりも軸方向外側であって且つ外筒2bの軸方向端部に配置されるシール装置10とを備える。
【0023】
シリンダ2の内筒2a内には密封対象6が充填され、内筒2a及び外筒2bによって形成されるリザーバ室2c内には密封対象6及びガス7が充填されている。また、内筒2aの下端には、内筒2a及びリザーバ室2c間で密封対象6を連通可能にする連通路2dが形成されている。
【0024】
ロッドガイド3は、ロッド4の往復動に伴って当該ロッド4の外周面4aを介して内筒2a内から流出した密封対象6を、リザーバ室2cへ戻すための連通路3aを有している。
【0025】
ピストン5は、密封対象6が充填された内筒2a内に、上室2e及び下室2fを画定する。ピストン5は、密封対象6を上室2e及び下室2f間で連通可能にするバルブ部5aを有する。
【0026】
シリンダーダンパー1において、例えば、ロッド4が外部側(ロッド4がシリンダ2から抜き出される方向)へ移動すると、ピストン5が上方へ移動し、上室2eの容積が減少すると共に、下室2fの容積が増加する。このとき、上室2e内の圧力が増加し、下室2f内の圧力が減少する。上室2e及び下室2fの圧力変動に伴って、上室2e内の密封対象6は、ピストン5のバルブ部5aを通って下室2fへ流入し、これと同時に、リザーバ室2c内の密封対象6は、内筒2の連通路2dを通って下室2fへ流入する。本動作において、密封対象6がピストン2のバルブ部5aを通流する際に流体抵抗が生じ、この流体抵抗により、ロッド4の往復動に対する減衰力を発生させている。また、下室2fに保持された密封対象6でのキャビテーション(気泡発生)を防ぐため、下室2fには、リザーバ室2cから迅速に密封対象6を補充する必要がある。このため、リザーバ室2c内の密封流体6にガス7により常時圧力を加えておくとともに、連通路2dは密封対象6の流れを極力妨げないように構成されている。
【0027】
一方、ロッド4が内部側(ロッド4がシリンダ2内に挿入される方向)へ移動すると、ピストン5が下方へ移動し、上室2eの容積が増加すると共に、下室2fの容積が減少する。このとき、上室2e内の圧力が減少し、下室2f内の圧力が増加する。上室2e及び下室2fの圧力変動に伴って、下室2f内の密封対象6は、内筒2aの下端に設けられた不図示のバルブ部を通ってリザーバ室2cへ流入し、これと同時に、下室2f内の密封対象6は、ピストン5に設けられた不図示の連通路を通って上室2e内にも流入する。本動作においても、密封対象6が内筒2aの不図示のバルブ部を通流する際の流体抵抗により、ロッド4の往復動に対する減衰力を発生させている。また、ピストン5に設けられた不図示の連通路は密封対象6の流れを極力妨げないように構成されている。
【0028】
図2は、
図1におけるシール装置10の構成を概略的に示す縦断面図である。なお、
図2のシール装置は、その一例を示すものであり、本発明に係るシール装置の構成は、
図1のものに限られないものとする。
【0029】
図2に示すように、シール装置10は、金属環20と、該金属環20に保持されたエラストマー製のシール部30と、該シール部30に嵌着されたガータースプリング40とを備える。シール装置10は略円環状の部材であり、その環状空間内に被着体であるロッド4が挿通されると、ガータースプリング40の復元力により、シール部30の内周部がロッド4の外周面4aに圧接される。
【0030】
金属環20は、ロッド4と略同心で配置され、外筒2bの一端に固定されている。金属環20の外周部20aは、その上面20bに外筒2bの内向きフランジ2b’によって圧縮力が加えられた状態で、外筒2bに固定されている。金属環20を固定する場合、例えば、シール装置10を外筒2b内の所定位置まで圧入した後、外部A側に延在する外筒2bの上端部を径方向内方(ロッド4に向かう方向)に曲げ加工して内向きフランジ2b’を形成する。金属環20の下方にはロッドガイド3が配置されており(
図1)、金属環20の下面20cに加硫接着された後述の嵌入部が、ロッドガイド3に圧接している。また、金属環20には、シール部30が加硫接着されている。
【0031】
シール部30は、金属環20の径方向内側に配置され、且つロッド4の軸方向に関して金属環20よりも密封対象B側に設けられるシールリップ部31と、金属環20の径方向内側に配置され、且つロッド4の軸方向に関して金属環20よりも外部A側に設けられるダストリップ部32とを備える。また、シール部30は、金属環20の下面20cに設けられ、且つその外周部から密封対象B側に向かって延出する嵌入部33を備える。嵌入部33は、径方向外側に延出する突起33aを有しており、突起33aの最大半径は、外筒2bの半径よりも大きい。したがって、シール装置10が外筒2bに圧入されると、突起33aが外筒2bの内周面に圧接し、嵌入部33が、径方向内方に撓んだ状態で保持される。シール部30は、合成ゴムなどのエラストマーで成形されており、例えばNBR又はHNBRからなる。
【0032】
シールリップ部31は、金属環20の径方向内側近傍で且つ密封対象B側に配置された基部31aと、基部31aから径方向内方且つ密封対象B側に延出する延出部31bとを備える。延出部31bの径方向内側には後述する主シールリップ及び副シールリップが形成されている。また、延出部31bの径方向外側には、ガータースプリング40を収容する収容溝31cが形成されている。シールリップ部31は、延出部31bの径方向内側に形成され、延出部31bから内方に突出する主シールリップ34と、基部31aの径方向内側に形成され、延出部31bから内方に突出する副シールリップ35とを備える。
【0033】
主シールリップ34は、金属環20の近傍に配置された副シールリップ35よりも密封対象B側に配置されており、軸方向に往復動するロッド4と摺接して密封対象6をシールする。この主シールリップ34は、径方向断面略V字型であり、その頂部34aがロッド4の外周面4aに摺動可能に圧接する。具体的には、主シールリップ34は、ロッド4の外周面4aに圧接する頂部34aと、該頂部34aから外部A側に形成された傾斜部34bと、頂部34aから密封対象B側に形成された傾斜部34cとを備える。外部A側の傾斜部34bは、頂部34aに関して密封対象B側の傾斜部34cの反対側に形成されている。また、外部A側の傾斜部34bとロッド4の外周面4aとのなす角度は、密封対象B側の傾斜部34cとロッド4の外周面4aとのなす角度よりも小さい。これにより、ロッド4が往復動する際に密封対象6は外部A側から密封対象B側へ移動し易くなり、主シールリップ34における密封対象B側から外部A側への、密封対象6の漏出が防止される。
【0034】
副シールリップ35は、軸方向に往復動するロッド4と当接して密封対象6をシールする。副シールリップ35は、主シールリップ34と同様、径方向断面略V字型であり、その頂部35aがロッド4の外周面4aに摺動可能に当接する。さらに、副シールリップ35は、ロッド4の外周面4aに当接する頂部35aと、該頂部から外部A側に形成された傾斜部35bと、頂部35aから密封対象B側に形成された傾斜部35cとを備える。外部A側の傾斜部35bとロッド4の外周面4aとのなす角度は、密封対象B側の傾斜部35cとロッド4の外周面4aとのなす角度よりも小さい。このような構成により、副シールリップ35における密封対象B側から外部A側への、密封対象6の漏出が防止される。
【0035】
また、副シールリップ35は、ロッド4の軸方向に関して主シールリップ34よりも外部A側、すなわち金属環20側に配置されている。したがって、副シールリップ35の径方向剛性をより高めることができる。このように、副シールリップ35の径方向剛性が高くなるため、ロッド4が偏心を伴って往復動する場合であっても、副シールリップ35の変形が抑制され、副シールリップ35とロッド4との接触を維持することができる。結果として、副シールリップ35による密封対象6のシール性能を向上することができる。
【0036】
ダストリップ部32は、金属環20の径方向内側近傍で且つ外部A側に配置された基部32aと、基部32aから径方向内方且つ外部A側に延出する延出部32bとを備える。ダストリップ部32は、延出部32bの径方向内側に形成され、延出部32bから内方に突出する主ダストリップ36と、基部32aの径方向内側に形成され、延出部32bから内方に突出する副ダストリップ37とを備える。主ダストリップ36は、金属環20の近傍に配置された副ダストリップ37よりも外部A側に配置されている。主ダストリップ36は、軸方向に往復動するロッド4と摺接して外部A側から密封対象B側への異物の進入を防止する。また、ロッド4と摺接する主ダストリップ36の先端部36aは、径方向内方に凸状湾曲に形成されている。よって、この先端部36aがロッド4の外周面4aにより大きな接触面を持って圧接するので、主ダストリップ36の耐泥水性、耐ダスト性を更に向上することができる。
【0037】
また、基部32aの延出方向Xと延出部32bの延出方向Yとは異なっており、延出部32bの延出方向Yとロッド4の外周面4aとのなす角度は、基部32aの延出方向Xとロッド4の外周面4aとのなす角度よりも大きい。このような構成により、主ダストリップ36とロッド4の外周面4aとの接触圧を高くすることができ、且つ主ダストリップ36の径方向剛性を高めることができる。よって、ロッド4が偏心を伴って往復動する場合であっても、主ダストリップ36の変形が抑制され、上記接触圧を維持することができる。
【0038】
副ダストリップ37は、軸方向に往復動するロッド4と摺接して外部A側から密封対象B側への異物の進入を防止する。また、ロッド4と摺接する副ダストリップ37の先端部37aは、径方向内方に凸状湾曲に形成されている。具体的には、先端部37aは、主ダストリップ36の先端部36aよりも大きい曲率を有する。よって、この先端部37aはロッド4の外周面4aに、より大きな接触面を持って圧接するので、副ダストリップ37とロッド4の外周面4aとの接触圧を適度に弱めて摺動抵抗を低減しつつ、ダストリップ部32の耐泥水性、耐ダスト性を更に向上することができる。
【0039】
また、副ダストリップ37は、ロッド4の軸方向に関して主ダストリップ36よりも密封対象B側、すなわち金属環20側に配置されている。したがって、副ダストリップ37の径方向剛性をより高めることができる。このように、副ダストリップ37の径方向剛性が高くなるため、ロッド4が偏心を伴って往復動する場合であっても、副ダストリップ37の変形が抑制され、副ダストリップ37とロッド4との接触圧を維持することができる。
【0040】
上記のように構成されるシール部30では、
図3に示すように、主シールリップ34の最小半径(頂部34aの半径)をR1、主ダストリップ36の最小半径(先端部36aの半径)をR2、ロッド4の半径をrとしたとき、ロッド4の半径rと主ダストリップ36の最小半径R2との差(r−R2)が、ロッド4の半径rと主シールリップ34の最小半径R1との差(r−R1)よりも大きい。すなわち、ロッド4に対する主ダストリップ36の締め代は、主シールリップ34の締め代よりも大きい。これにより、シール装置10をロッド4に取り付ける際、主ダストリップ36は、主シールシップ34よりも大きく弾性変形し、主ダストリップ36は、主シールリップ34よりも大きな復元力でロッド4に押し付けられる。
【0041】
具体的には、ロッド4の半径rと主シールリップ34の最小半径R1との差に対する、ロッド4の半径rと主ダストリップ36の最小半径R2との差((r−R2)/(r−R1))が、1.2以上2.5以下である。すなわち、主ダストリップ36の締め代は、主シールリップ34の締め代の1.2倍以上2.5倍以下である。より具体的には、主シールリップ34の締め代(r−R1)を0.5mm、主ダストリップ36の締め代(r−R2)を1.0mmとすることが好ましい。また、主シールリップ34の締め代(r−R1)を0.5mm、主ダストリップ36の締め代(r−R2)を0.7mmとしてもよい。結果として、ロッド4に対する主ダストリップ36の押し付け力が高まる一方で、ロッド4の往復動時に過度の摺動抵抗が生じない。
【0042】
また、副シールリップ35は、主シールリップ34の最小半径(頂部34aの半径)R1よりも大きな最小半径(頂部35aの半径)R1’を有する。副ダストリップ37は、主ダストリップ36の最小半径(先端部36aの半径)R2よりも大きな最小半径(先端部37aの半径)R2’を有する。そして、ロッド4の半径rと副ダストリップ37の最小半径R2’との差(r−R2’)が、ロッド4の半径rと副シールリップ35の最小半径R1’との差(r−R1’)よりも大きい。すなわち、副ダストリップ37の締め代は、副シールリップ35の締め代よりも大きい。具体的には、副ダストリップ37の締め代(r−R2’)を0.25mm、副シールリップ35の締め代(r−R1’)を0mmとすることが好ましい。これにより、主ダストリップ36と同様、副ダストリップ37は、副シールリップ35よりも大きな復元力でロッド4に押し付けられる。
【0043】
上述したように、本実施形態によれば、主シールリップ34が、被着体であるロッド4と圧接して密封対象6をシールすると共に、主ダストリップ36が、ロッド4と圧接して外部A側から密封対象B側への異物の進入を防止する。そして、ロッド4の半径rと主ダストリップ36の最小半径(先端部36aの半径)R2との差(r−R2)が、ロッド4の半径rと主シールリップ34の最小半径(頂部34aの半径)R1との差(r−R1)よりも大きい。これにより、ロッド4に対する主ダストリップ36の押し付け力を高めることができ、主シールリップ34による密封対象6の良好なシール性能を維持しつつ、主ダストリップ36の耐泥水性、耐ダスト性を向上することができる。
【0044】
また、ロッド4の半径rと主シールリップ34の最小半径R1との差に対する、ロッド4の半径rと主ダストリップ36の最小半径R2との差((r−R2)/(r−R1))が、1.2以上2.5以下である。このため、主ダストリップ36の耐泥水性、耐ダスト性を向上しつつ、ロッド4の往復動に対する主ダストリップ36の摺動抵抗に大きな影響を与えることなく、ロッド4を滑らかに往復動させることができる。
【0045】
また、主シールリップ34よりも大きい最小半径(頂部35aの半径)R1’を有する副シールリップ35が、ロッド4と当接して密封対象6をシールし、主ダストリップ36よりも大きい最小半径(先端部37aの半径)R2’を有する副ダストリップ37が、ロッド4と圧接して外部A側から密封対象B側への異物の進入を防止する。これにより、密封対象6のシール性を向上しつつ、耐泥水性、耐ダスト性を更に向上することができる。更に、ロッド4の半径rと副ダストリップ37の最小半径R2’との差(r−R2’)が、ロッド4の半径rと副シールリップ35の最小半径R1’との差(r−R1’)よりも大きい。これにより、主ダストリップ36と同様、ロッド4に対する副ダストリップ37の押し付け力を高めることができ、副ダストリップ37の耐泥水性、耐ダスト性を更に向上することができる。
【0046】
図4及び
図5は、
図2のシール装置の変形例を示す縦断面図である。
図2のシール装置と比較して
図4及び
図5のシール装置は、主ダストリップの先端部の形状が異なっており、これ以外の部分については
図2のシール装置10と基本的に同じであるので、共通する部分の説明を省略し、以下に異なる部分を説明する。
【0047】
図4において、シール装置10aのダストリップ部32は、シール装置10と同様に、金属環20の径方向内側近傍で且つ外部A側に配置された基部32aと、基部32aから径方向内方且つ外部A側に延出する延出部32bとを備える。この延出部32bは、その先端がロッド4に圧接する圧接位置よりも外部A側に設けられ、且つ外部A側に開口する切り欠き38を備える(
図5)。この切り欠き38は、延出部32bの外部A側の端面32b’から略垂直方向に延びる延在面38aと、この延在面38aの密封対象B側の端部から主ダストリップ36の先端部36a(ロッド4との当接部)まで連続して設けられる凸状湾曲面38bとによって形成される。
【0048】
シール装置10aがロッド4に取り付けられた状態では、切り欠き38とロッド4の外周面4aとの間に環状溝が形成される。具体的には、延在面38aとロッド4の外周面4aとの間にオイル貯留用の溝が形成され、凸状湾曲面38bとロッド4の外周面4bとの間には、オイル戻し用のくさび状の溝が形成される。
【0049】
ここで、ロッド4の往復動に伴ってロッド4が外部A側から密封対象B側に移動する際、ロッド4の外周面4aに付着した作動油の一部は、ロッド4と主ダストリップ36とが摺接することによって密封対象B側に戻れず外部A側に残ってしまうことがある。このため、長期間の使用により、密封対象6の量が使用開始時よりも減少し、シリンダーダンパーとしての機能を低下させる要因となる。また、作動油がロッド4の外周面4aに付着するため、外観上あるいはメンテナンス作業上も好ましくない。
【0050】
そこで本発明では、上述のように、ダストリップ部32の切り欠き38とロッド4の外周面4aとの間に、当該ロッド4の軸に沿ってくさび状の溝が形成される。これにより、当該ロッド4の外周面4aに付着して掻き出される作動油を切り欠き38内に溜めることができ、ロッド4が外部A側から密封対象B側に移動する際、切り欠き38内に溜められた密封対象6が、密封対象B側に戻り易くなる。よって、シール装置10aが取り付けられる被取付体の本来の機能を長期的に維持することができる。
【0051】
特に、自動車のサスペンションを構成するシリンダーダンパーには、未舗装路などの悪路走行時に多量の泥水やダストが飛着する場合がある。このような使用環境において、本発明のシール装置をシリンダーダンパー1のロッド4に取り付けることにより、上記効果を確実に奏することができる。
【0052】
以上、上記実施形態に係るシール装置について述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0053】
例えば、
図6に示すように、
図6の切り欠き38’は、延出部32bの外部A側の端面32b’から略垂直方向に延びる延在面38aと、この延在面38aの密封対象B側の端部から主ダストリップ36の先端部36a’まで連続して設けられる平面38b’によって形成されていてもよい。本構成においても、平面38b’とロッド4の外周面4aとの間に、当該ロッド4の軸に沿ってくさび状の溝が形成される。これにより、当該ロッド4の外周面4aに付着して掻き出される作動油を切り欠き38’内に溜めることができ、また、切り欠き38’内に溜められた密封対象6を密封対象B側に戻すことができる。
【0054】
また、上記実施形態では、主ダストリップ36に設けられた切り欠き38、38’は凸状湾曲面38b又は平面38b’によって形成されているが、これに限らず、切り欠き38、38’とロッド4の外周面4aとの間に、当該ロッド4の軸に沿ってくさび状の溝が形成される構成であれば、他の形状を有する切り欠きであってもよい。また、シール装置10aがロッド4に取り付けられた際に延在面38aとロッド4の外周面4aとの間にくさび状の溝が形成される構成であればよく、また、オイル貯留用の溝が形成されない構成であってもよい。
【0055】
また、ガータースプリング40は、シールリップ部31の延出部31bの径方向外側に形成された収容溝31cに配置されているが、これに加えて、ガータースプリングとそれが収容される収容溝が、ダストリップ部32の延出部32bの径方向外側に形成されてもよい。これにより、主シールリップ34及び主ダストリップ36を、ガータースプリング40を用いてロッド4に押し付けることができる。また、収容溝31cやガータースプリング40が設けられてなくてもよい。
【0056】
また、
図2に示すシール装置10は、副ダストリップ37を備えているが、
図4のシール装置10aのように、副ダストリップを備えていなくてもよい。
【0057】
図2に示すシール装置10では、嵌入部33は、金属環20の下面20cに設けられ、その外周部から密封対象B側に向かって延出するが、
図4のシール装置10aのように、嵌入部33は、金属環20の上面20bに設けられ、その外周部から外部A側に向かって延出してもよい。
【0058】
図2に示すシール装置10では、ダストリップ部32の基部32aの延出方向Xと延出部32bの延出方向Yとは異なっているが、これに限らず、
図4から
図6のシール装置10aのように、延出方向Xと延出方向Yとは同じであってもよい。
【0059】
主シールリップ34は、径方向断面略V字型に限らず、ロッド4の外周面4aに摺動可能に当接する端部を有していれば、他の形状であってもよい。
【0060】
また、シール装置が、金属環20の下面20c近傍(密封対象B側)に、ロッド4の外周面4aを介して内筒2a内から流出した密封対象6を、リザーバ室2cへ戻す方向にだけ通流させる逆止弁を備えていてもよい。