(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
写真用カメラレンズ、放送用カメラレンズ、光ピックアップ装置や半導体装置の対物レンズ、眼鏡レンズ、光学用反射鏡、ローパスフィルタ等の光学基材には、光透過率を向上させることを目的として、反射防止膜が施される。従来、反射防止膜は、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理的方法により形成されてきた。しかしこれらの成膜方法は真空機器を必要とするため装置のコストが高く、形成する膜に機能性を付与する事が出来ないという欠点を有する。
【0003】
単層の反射防止膜は、基材より小さく、かつ空気等の入射媒質より大きい屈折率を有するように設計される。屈折率1.5程度のガラスからなるレンズの反射防止膜は、屈折率1.2〜1.25が理想的であると言われている。しかし、物理的方法により形成できる反射防止膜において、このような理想的な屈折率を有する物質は無いので、屈折率1.38のMgF
2が反射防止膜材料として汎用されている。
【0004】
しかし近年、幅広い波長領域の光線を使用する光学機器も製作されるようになってきており、幅広い波長範囲で優れた光学特性を有する反射防止膜が望まれるようになってきた。しかも光学素子は複数のレンズ群により構成されることが多いので、各レンズ面での反射による透過光量の損失が多くなるのを防ぐために、一般的に多層構成の反射防止膜を設けている。多層反射防止膜は、各界面で生じた反射光と、各層に入射する光線とが干渉によって相殺し合うように設計される。さらに多層構成の反射防止膜は、反射防止性能を向上させる為には、形成する膜数を増やす必要があり、コストが高くなり、製造の難易度も上がるという欠点を有する。
【0005】
そこで、脱水重縮合を用いたゾル−ゲル法を利用した湿式法(ディップコート法、ロールコート法、スピンコート法、フローコート法、スプレーコート法等)により、反射防止膜を形成する方法が提案されている。
【0006】
例えば特開2006-215542号(特許文献1)は、基材の表面に順に形成された緻密層及びシリカエアロゲル多孔質層からなり、屈折率が基材からシリカエアロゲル多孔質層まで順に小さくなっている反射防止膜を提案している。このシリカエアロゲル多孔質層は、(i) ゾル状又はゲル状の酸化珪素を有機修飾剤と反応させて有機修飾ゾル又は有機修飾ゲルとし、(ii) 前記有機修飾ゾル又は前記有機修飾ゲルをゾル状にしたものを緻密層表面にコーティングし、得られた有機修飾シリカゲル層にスプリングバック現象を生じさせ、有機修飾シリカエアロゲル層にし、(iii) 得られた有機修飾シリカエアロゲル層を熱処理して有機修飾基を除去することにより形成する。
【0007】
シリカエアロゲル多孔質層は屈折率が1.20程度と小さく、それを有する反射防止膜は幅広い波長範囲で優れた反射防止特性を有する。しかし、塗工液の製造方法が多段階で操作が多く時間がかかり、ハンドリングが複雑で大量生産に向かずコストパフォーマンスが悪かった。
【0008】
特開2009-237551号(特許文献2)は、膜の屈折率が1.10超〜1.35以下のメソポーラスシリカナノ粒子が集合したメソポーラスシリカ多孔質膜を用いた反射防止膜を提案している。しかし、基板に塗工する際のゾルが水系であるため、成膜時のハンドリングが難しく、かつレベリング性といった均一成膜が一般的なウェットコーティングに較べて劣るという問題があった。また粒子径制御と超低屈折率性を持たせるためにカチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の2種の界面活性剤を用いてメソポーラス構造を有するメソポーラスシリカナノ粒子を作製しており、基板に塗工する際のゾル中のメソポーラスシリカナノ粒子が非イオン性界面活性剤で被覆され、かつカチオン性界面活性剤をメソポーラスシリカナノ粒子の細孔内に有しているため、膜成膜後にこれらの界面活性剤を除去する工程を必要としていた。そのためコストパフォーマンスが悪かった。
【0009】
これまでに、特許文献2にて作製されるメソポーラスシリカナノ粒子分散の水溶液から一般的な有機溶剤や両親媒性の有機溶剤等を用いてメソポーラスシリカナノ粒子のみを有機溶媒中に抽出しようと試みてきた。しかし、メソポーラスシリカナノ粒子を有機溶媒中に添加し混合するとメソポーラスシリカナノ粒子のゾル自体がゲル化したり、2層に分離したりして上手く行かなかった。これは、メソポーラスシリカナノ粒子を外包する非イオン性界面活性剤が大きく影響していると考えられ、有機溶媒中に分散しようとすると水和された非イオン性界面活性剤が、メソポーラスシリカナノ粒子と有機溶媒の間を隔てて分散しにくくする効果があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、超低屈折率を有するメソポーラスシリカ多孔質膜の製造に用いる
塗布液であって、分散溶媒として有機溶媒を使用し、成膜時のハンドリング性、レベリング性及び均一成膜性に優れた
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液の製造方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、かかる
塗布液を用いてメソポーラスシリカ多孔質膜
を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、非イオン性界面活性剤で被覆され、かつ前記カチオン性界面活性剤をメソポーラスシリカナノ粒子の細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子のゾルを調製した後、非イオン性界面活性剤を除去し、分離したメソポーラスシリカナノ粒子を超音波分散法を用いて有機溶媒中に分散させることにより、成膜時のハンドリング性、レベリング性及び均一成膜性に優れた
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液が得られ、さらに非イオン性界面活性剤に加えてカチオン性界面活性剤も除去することにより成膜時の高温焼成が不要となることを見出し、本発明に想到した。
【0014】
すなわち、メソ孔がヘキサゴナル状に配列した構造を有するメソポーラスシリカナノ粒子が有機溶媒中に分散した
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液を製造する本発明の第一の方法は、(i) 溶媒、酸性触媒、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含む混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解・重縮合させ、(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、前記非イオン性界面活性剤で被覆され、かつ前記カチオン性界面活性剤をメソポーラスシリカナノ粒子の細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子のゾルを調製し、(iii) 前記ゾル中のメソポーラスシリカナノ粒子を外包する非イオン性界面活性剤及び前記メソポーラスシリカナノ粒子の細孔内に内包されるカチオン性界面活性剤を除去した後、前記メソポーラスシリカナノ粒子を分離し、(iv) 前記メソポーラスシリカ粒子を超音波分散法を用いて有機溶媒中に分散させることを特徴とする。
【0015】
前記非イオン性界面活性剤及び前記カチオン性界面活性剤の除去過程において、前記メソポーラスシリカナノ粒子から前記非イオン性界面活性剤を抽出除去した後、前記メソポーラスシリカナノ粒子を塩酸/アルコール系混合溶液に添加して撹拌混合し、前記メソポーラスシリカナノ粒子から前記カチオン性界面活性剤を除去するのが好ましい。
【0016】
メソ孔がヘキサゴナル状に配列した構造を有するメソポーラスシリカナノ粒子が有機溶媒中に分散した
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液を製造する本発明の第二の方法は、(i) 溶媒、酸性触媒、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含む混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解・重縮合させ、(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、前記非イオン性界面活性剤で被覆され、かつ前記カチオン性界面活性剤をメソポーラスシリカナノ粒子の細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子のゾルを調製し、(iii) 前記ゾル中のメソポーラスシリカナノ粒子を外包する非イオン性界面活性剤を除去した後、前記メソポーラスシリカナノ粒子を分離し、(iv) 前記メソポーラスシリカ粒子を超音波分散法を用いて有機溶媒中に分散させることを特徴とする。
【0017】
前記非イオン性界面活性剤の除去過程において、前記ゾルをアルコールに添加して撹拌混合し、前記メソポーラスシリカナノ粒子から前記非イオン性界面活性剤を除去するのが好ましい。
【0018】
前記有機溶媒は、ケトン、カルボン酸エステル、アルコール及びグリコールエーテルからなる群より選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
【0019】
非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤の除去過程に用いるアルコールが炭素数1〜4の第1級及び第2級アルコールであるのが好ましいく、カチオン性界面活性剤の除去工程に用いる塩酸/アルコール系混合液の体積比が塩酸(35%):アルコール=1:99〜20:80であるのが好ましい。
【0020】
前記超音波分散法を、発振周波数:10〜30 kHz、照射出力:150〜1200 W及び超音波処理時間:5〜180分の条件下で、氷浴中で行うのが好ましい。
【0021】
前記メソポーラスシリカナノ粒子が表面修飾されていないのが好ましい。
【0022】
前記メソポーラスシリカナノ粒子のメジアン径が200 nm以下であるのが好ましい。
【0023】
本発明のメソポーラスシリカ多孔質膜
の製造方法は、上記方法により
塗布液を製造し、前記塗布液を基板に塗布した後、乾燥すること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の製造方法により得られる
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液は、非イオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を除去したメソポーラスシリカナノ粒子を有機溶媒中に分散させているので、成膜時のハンドリング性、レベリング性及び均一成膜性に優れている。さらに非イオン性界面活性剤に加えてカチオン性界面活性剤も除去することにより成膜時の高温焼成が不要となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[1]
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液の製造方法
本発明の第一の実施態様による
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液の製造方法は、メソ孔がヘキサゴナル状に配列した構造を有するメソポーラスシリカナノ粒子が有機溶媒中に分散した
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液の製造方法において、(i) 溶媒、酸性触媒、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含む混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解・重縮合させ、(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、非イオン性界面活性剤で被覆され、かつカチオン性界面活性剤をメソポーラスシリカナノ粒子の細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子のゾルを調製し、(iii) ゾル中のメソポーラスシリカナノ粒子を外包する非イオン性界面活性剤及びメソポーラスシリカナノ粒子の細孔内に内包されるカチオン性界面活性剤を除去した後、メソポーラスシリカナノ粒子を分離し、(iv) メソポーラスシリカ粒子を超音波分散法を用いて有機溶媒中に分散させることを特徴とする。
【0027】
図1は、メソ孔がヘキサゴナル状に配列した構造を有し、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を除去したメソポーラスシリカナノ粒子の一例を示す。
図1に示すメソポーラスシリカナノ粒子10は、メソ孔10aがヘキサゴナル状に配列した多孔質構造を有するシリカ骨格10bからなる。メソポーラスシリカナノ粒子10は、メソ孔10aがヘキサゴナル状に均一に形成されているので、メソポーラスシリカナノ粒子10が集合してなるメソポーラスシリカ多孔質膜は優れた透明性、耐クラック性を有する。
【0028】
メソポーラスシリカナノ粒子10のメジアン径は、200 nm以下が好ましく、20〜50 nmがより好ましい。ここでメジアン径は、粒子の集合の全体積を100%として累積曲線を求めた時、累積値が50%となる点の粒子径であり、動的光散乱法により求められる。メジアン径が200 nm超だと、膜厚調整が困難であり、薄膜設計のフレキシビリティーが低く、得られるメソポーラスシリカ多孔質膜の反射防止特性及び耐クラック性も低い。
【0029】
図2は、メソポーラスシリカナノ粒子を修飾しているカチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を除去する工程を示す。
図1及び2を用いて、本発明の
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液の製造方法を以下詳細に説明する。
【0030】
(1) 界面活性剤修飾メソポーラスシリカナノ粒子の製造方法
(a) 原料
(a-1) アルコキシシラン
アルコキシシランはモノマーでも、オリゴマーでも良い。アルコキシシランモノマーはアルコキシル基を3つ以上有するのが好ましい。アルコキシル基を3つ以上有するアルコキシシランを出発原料とすることにより、優れた均一性を有するメソポーラスシリカ多孔質膜が得られる。アルコキシシランモノマーの具体例としてはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。アルコキシシランオリゴマーとしては、上述のモノマーの重縮合物が好ましい。アルコキシシランオリゴマーはアルコキシシランモノマーの加水分解・重縮合により得られる。アルコキシシランオリゴマーの具体例として、一般式RSiO
1.5(ただしRは有機官能基を示す。)により表されるシルセスキオキサンが挙げられる。
【0031】
(a-2) 界面活性剤
(i) カチオン性界面活性剤
カチオン性界面活性剤としては4級アンモニウム塩が好ましく、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルトリエチルアンモニウム、ハロゲン化ジアルキルジメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルメチルアンモニウム、ハロゲン化アルコキシトリメチルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウムとして、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウムとして、塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化ジアルキルジメチルアンモニウムとして、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化アルキルメチルアンモニウムとして、塩化セチルメチルアンモニウム、塩化ステアリルメチルアンモニウム、塩化ベンジルメチルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化アルコキシトリメチルアンモニウムとして、塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。また、4級アンモニウム塩においてハロゲンが臭素でも良い。この場合として、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム、臭化テトラヘプチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラ-n-オクチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラオクチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化オクタデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキシルトリメチルアンモニウム
【0032】
(ii) 非イオン性界面活性剤
非イオン性界面活性剤として、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーとして、例えば式:RO(C
2H
4O)
a-(C
3H
6O)
b-(C
2H
4O)
cR(但し、a及びcはそれぞれ10〜120を表し、bは30〜80を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す)で表されるものが挙げられる。このブロックコポリマーの市販品として、例えばPluronic(登録商標、BASF社)が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等が挙げられる。
【0033】
(a-3) 触媒
(i) 酸性触媒
酸性触媒の例として塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸やギ酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。
【0034】
(ii) 塩基性触媒
塩基性触媒の例としてアンモニア、アミン、NaOH及びKOHが挙げられる。好ましいアミンの例としてアルコールアミン及びアルキルアミン(例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン等)が挙げられる。
【0035】
(a-4) 溶媒
溶媒としては純水を用いることができる。
【0036】
(b) 形成方法
(b-1) 酸性条件での加水分解・重縮合
純水に酸性触媒を添加して酸性溶液を調製し、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の混合溶液を調製した後、アルコキシシランを添加し、加水分解・重縮合する。酸性溶液のpHは1〜3とするのが好ましく、約2とするのがより好ましい。アルコキシシランのシラノール基の等電点は約pH2であるので、pH2付近では酸性溶液中でシラノール基が安定的に存在する。溶媒/アルコキシシランのモル比は30〜300にするのが好ましい。このモル比を30未満とすると、アルコキシシランの重合度が高くなり過ぎる。一方300超とすると、アルコキシシランの重合度が低くなり過ぎる。
【0037】
カチオン性界面活性剤/溶媒のモル比は1×10
-4〜3×10
-3とするのが好ましく、これによりメソ細孔の規則性に優れたメソポーラスシリカナノ粒子が得られる。このモル比は、1.5×10
-4〜2×10
-3がより好ましい。
【0038】
カチオン性界面活性剤/アルコキシシランのモル比は1×10
-1〜3×10
-1が好ましい。このモル比を1×10
-1未満とすると、メソポーラスシリカナノ粒子のメソ孔の構造の形成が不十分となる。一方3×10
-1超とすると、メソポーラスシリカナノ粒子の粒径が大きくなり過ぎる。このモル比は、1.5×10
-1〜2.5×10
-1がより好ましい。
【0039】
非イオン性界面活性剤/アルコキシシランのモル比は3.5×10
-3以上〜2.5×10
-2未満である。このモル比を3.5×10
-3未満とすると、メソポーラスシリカナノ粒子の粒子径制御が困難になる。一方2.5×10
-2以上とすると、メソポーラスシリカナノ粒子分散水系ゾルの粘度が高くなりハンドリングが難しくなる。
【0040】
カチオン性界面活性剤/非イオン性界面活性剤のモル比は8超〜60以下とするのが好ましく、これによりメソ細孔の規則性に優れたメソポーラスシリカナノ粒子が得られる。このモル比は、10〜50がより好ましい。
【0041】
アルコキシシランを含む溶液を0.5〜24時間程度エージングする。具体的には、20〜25℃で溶液を速く撹拌する。エージングにより加水分解・重縮合が進行し、シリケート(アルコキシシランを出発物質とするオリゴマー)を含有する酸性ゾルが生成する。
【0042】
(b-2) 塩基性条件での加水分解・重縮合
酸性ゾルに塩基性触媒を添加して溶液を塩基性にし、さらに加水分解・重縮合し、反応を完結させる。これによりメソポーラスシリカナノ粒子を含有する水系ゾルが得られる。溶液のpHは9〜12となるように調整するのが好ましい。
【0043】
塩基性触媒を添加することにより、カチオン性界面活性剤ミセルの周囲にシリケート骨格が形成されて、規則的な六方配列が成長することによりシリカとカチオン性界面活性剤とが複合した粒子が形成される。この複合粒子は成長に伴って表面の有効電荷が減少するので、表面に非イオン性界面活性剤が吸着する。その結果、
図2(1) に示すように、非イオン性界面活性剤30で被覆され、かつカチオン性界面活性剤20をメソポーラスシリカナノ粒子の細孔内に有する界面活性剤修飾メソポーラスシリカナノ粒子10の水系ゾルが得られる[例えば今井宏明、「化学工業」、化学工業社、2005年9月、第56巻、第9号、pp.688-693]。このメソポーラスシリカナノ粒子の形成過程において、非イオン性界面活性剤の吸着により、上記複合粒子の成長が抑制されるので、以上のような二種類の界面活性剤を用いた調製方法により得られるメソポーラスシリカナノ粒子は、平均粒径が200 nm以下で、かつメソ細孔の規則性に優れている。
【0044】
(2) 界面活性剤の除去
(a) 非イオン性界面活性剤の除去
メソポーラスシリカナノ粒子10を外包する非イオン性界面活性剤30を除去する。非イオン性界面活性剤30が修飾されたメソポーラスシリカナノ粒子10を有機溶媒に分散させようとすると、水和された非イオン性界面活性剤30がメソポーラスシリカナノ粒子10と有機溶媒との間を隔てて、メソポーラスシリカナノ粒子10が有機溶媒に分散しにくい。そのため非イオン性界面活性剤30を除去することにより、メソポーラスシリカナノ粒子10の有機溶媒への分散性が向上する。
【0045】
非イオン性界面活性剤30の除去はアルコールを用いて行うのが好ましい。具体的には、メソポーラスシリカナノ粒子を含有する水系ゾルをアルコール中に添加し、攪拌混合した後、メソポーラスシリカナノ粒子と溶液成分とに遠心分離する。遠心分離された上澄みの溶液成分を除去することにより、非イオン性界面活性剤30が除去されたメソポーラスシリカナノ粒子10の湿潤物が得られる(
図2(2))。
【0046】
非イオン性界面活性剤30の除去過程及び後述するカチオン性界面活性剤20の除去過程に用いるアルコールは炭素数1〜4の第1級及び第2級アルコールであるのが好ましい。具体的には、エタノール、メタノール、イソプルピルアルコール等が挙げられる。メソポーラスシリカナノ粒子を含有する水系ゾルとアルコールの体積比は、メソポーラスシリカナノ粒子含有水系ゾル:アルコール=1:1〜1:10であるのが好ましい。得られた湿潤物を再度アルコール中に添加し、上述の撹拌・遠心分離工程を複数回繰り返しても良く、3サイクル以上行うのがより好ましい。
【0047】
(b) カチオン性界面活性剤の除去
非イオン性界面活性剤30が除去されたメソポーラスシリカナノ粒子10の細孔10a内に内包されるカチオン性界面活性剤20を除去する。カチオン性界面活性剤20の除去は塩酸/アルコール系混合溶液を用いて行うのが好ましい。具体的には、メソポーラスシリカナノ粒子10を含有する湿潤ゲルを塩酸/アルコール系混合溶液中に添加し、攪拌することにより、メソポーラスシリカナノ粒子10に内包されるカチオン性界面活性剤20を抽出・除去する。得られた混合溶液を遠心分離した後、その上澄みを除去することにより、メソポーラスシリカナノ粒子10の湿潤ゾルゲルが得られる(
図2(3))。得られた湿潤ゲルをアルコール系溶媒に添加し、撹拌・遠心分離工程を複数回繰り返し洗浄することで、塩酸が洗浄・除去されたメソポーラスシリカナノ粒子10の湿潤ゲルが得られる。
【0048】
カチオン性界面活性剤20の除去工程に用いる塩酸/アルコール系混合液の体積比は塩酸(35%):アルコール=1:99〜20:80であるのが好ましい。これにより、メソポーラスシリカナノ粒子に内包されるカチオン性界面活性剤20を十分に除去することができる。アルコールは非イオン性界面活性剤30の除去に用いたものと同じものを用いることができる。攪拌及び遠心分離の回転数及び時間は非イオン性界面活性剤の除去工程と同じでも良い。
【0049】
このようにアルコールによる洗浄と塩酸/アルコール系混合溶液による洗浄の2つの洗浄工程を行うことにより、メソポーラスシリカナノ粒子10を外包する非イオン性界面活性剤30と、メソポーラスシリカナノ粒子10に内包されるカチオン性界面活性剤20とを除去することができ、表面修飾されていないメソポーラスシリカナノ粒子10を含有する湿潤ゲルが得られる。メソポーラスシリカナノ粒子10に内包されるカチオン性界面活性剤20の除去工程を行う前に、メソポーラスシリカナノ粒子10を外包する非イオン性界面活性剤30の除去工程を行うのが望ましい。カチオン性界面活性剤20を先に除去すると、粒子細孔が壊れる恐れがある。また非イオン性界面活性剤30の除去工程を行い、カチオン性界面活性剤20の除去工程を行った後に、再度非イオン性界面活性剤30の除去工程を行なっても良い。
【0050】
(3) 有機溶媒への分散
得られたメソポーラスシリカナノ粒子10を超音波分散法を用いて有機溶媒中に分散させる。超音波照射は超音波ホモジナイザーを用いて行うことができる。超音波照射法は、発振周波数:10〜30 kHz、照射出力:150〜1200 W及び超音波処理時間:5〜180分の条件下で、攪拌しながら氷浴中で行うのが好ましい。表面修飾されていないメソポーラスシリカナノ粒子は凝集し易く2次粒子を形成し易いという問題があるが、超音波照射を施すことにより、外的力を照射し粒子間のインタラクションを弱めて分散させることができる。メソポーラスシリカナノ粒子が有機溶媒中に分散しやすい理由としては、メソポーラスシリカナノ粒子が持つナノ粒子効果による影響が大きいと考えられる。従って、通常、シリカ粒子といった無機材料を有機溶媒中に分散する際、無機粒子表面にシランカップリング剤等の表面修飾を施し、表面改質をする必要があったが、本発明においては、その表面改質を必要とせず、有機溶媒中に多くのメソポーラスシリカナノ粒子10を分散することができる。
【0051】
有機溶媒は本発明に適用可能なものであれば特に限定されないが、アルコール類、グリコール類、ケトン類、カルボン酸エステル類を使用することができる。具体的には、ハンドリング性、レベリング性及び均一成膜性に優れ、メソポーラスシリカナノ粒子を分散可能なメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜4の第1級及び第2級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン、5-メチル-2-ヘキサノン、5-メチル-3-ヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、エチレングリコールモノメチル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が好ましい。
【0052】
超音波分散法によりメソポーラスシリカナノ粒子10を有機溶媒中に分散させた後、さらに遠心分離を行い、その上澄みを採取して残存する界面活性剤と一部凝集したメソポーラスナノ粒子とコンタミを抽出・除去しても良い。
【0053】
上記第一の実施態様では、メソポーラスシリカナノ粒子10の非イオン性界面活性剤30及びカチオン性界面活性剤20の両方を除去しているが、本発明はこれに限らず、非イオン性界面活性剤30の除去工程のみを行なっても良い。
【0054】
本発明の第二の実施態様による
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液の製造方法は、メソ孔がヘキサゴナル状に配列した構造を有するメソポーラスシリカナノ粒子が有機溶媒中に分散した
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液の製造方法において、(i) 溶媒、酸性触媒、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含む混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解・重縮合させ、(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、非イオン性界面活性剤で被覆され、かつカチオン性界面活性剤をメソポーラスシリカナノ粒子の細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子のゾルを調製し、(iii) ゾル中のメソポーラスシリカナノ粒子を外包する非イオン性界面活性剤を除去した後、メソポーラスシリカナノ粒子を分離し、(iv) メソポーラスシリカ粒子を超音波分散法を用いて有機溶媒中に分散させることを特徴とする。
【0055】
本発明の第二の実施態様による
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液の製造方法は、ゾル中のメソポーラスシリカナノ粒子10を外包する非イオン性界面活性剤30のみを除去し、メソポーラスシリカナノ粒子10の細孔10a内に内包されるカチオン性界面活性剤20を除去しない点で、第一の実施態様と異なる。
【0056】
メソポーラスシリカナノ粒子10を外包する非イオン性界面活性剤30を除去しているため、第一の実施態様と同様に有機溶媒中に分散させることができる。メソポーラスシリカナノ粒子10の細孔10a内にカチオン性界面活性剤20が残留しているため、
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液を基材の表面に塗布・乾燥する工程において、細孔10aが収縮や崩壊するのを防止できる。
【0057】
[2] 塗布液
上記第一及び第二の実施態様により得られた
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液は、超低屈折率を有するメソポーラスシリカ多孔質膜の材料となるメソポーラスシリカナノ粒子が有機溶媒中に均一に分散している。そのため、かかる
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液を用いて作製した塗工液を用いてメソポーラスシリカ多孔質膜の形成を行うと、成膜時の優れたハンドリング性、レベリング性及び均一成膜性が得られる。また非イオン性界面活性剤30及びカチオン性界面活性剤20の両方を除去した第一の実施態様の
塗布液を用いると、基材に塗布液を塗布した後に界面活性剤を除去する必要がなくなるため、成膜時の高温焼成が不要になる。
【0058】
[3] メソポーラスシリカ多孔質膜
図3は、上記塗布液を基材1の表面に塗布及び成膜してなるメソポーラスシリカ多孔質膜2を示す。メソポーラスシリカ多孔質膜2は、メソ孔がヘキサゴナル状に配列した構造を有するメソポーラスシリカナノ粒子が集合してなり、反射防止膜として好適である。かかるメソポーラスシリカ多孔質膜2は、上記塗布液を基板1に塗布した後、乾燥することにより得られる。
【0059】
(3-1) 塗布
メソポーラスシリカ多孔質膜用塗布液を基材1の表面にコーティングする。塗布液のコーティング方法として、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、フローコート法、バーコート法、リバースコート法、フレキソ法、印刷法及びこれらを併用する方法等が挙げられる。得られる多孔質膜の厚さは、例えば、スピンコート法における基材回転速度やディッピング法における引き上げ速度の調整、塗布液の濃度の調整等により制御することができる。スピンコート法における基材回転速度は、例えば約500 rpm〜約10,000 rpmとするのが好ましい。
【0060】
(3-2) 乾燥
塗布したゾルから溶媒を揮発させる。塗布膜の乾燥条件は特に制限されず、基材1の耐熱性等に応じて適宜選択すればよい。自然乾燥してもよいし、50〜200℃の温度で15分〜1時間熱処理して乾燥を促進してもよい。
【0061】
(3-4) 物性
メソポーラスシリカ多孔質膜2の屈折率は空隙率に依存し、大きな空隙率を有するものほど屈折率が小さい。メソポーラスシリカ多孔質膜2の空隙率は10%以上〜75%未満であるのが好ましい。10%以上〜75%未満の空隙率を有するメソポーラスシリカ多孔質膜2の屈折率は、1.10〜1.40であり、好ましくは1.15〜1.30である。空隙率が75%超であると、耐擦傷性、機械的強度及び耐クラック性が小さすぎる。空隙率10%未満であると、屈折率が大きすぎる。この空隙率は30〜65%がより好ましい。
【0062】
図4に示すように、窒素吸着法により求めたメソポーラスシリカ多孔質膜2の孔径分布曲線は二つのピークを有するのが好ましい。詳しくは、メソポーラスシリカ多孔質膜2について求めた窒素の等温脱着曲線からBJH法で解析することにより求めた孔径分布曲線(横軸を細孔直径とし、縦軸をlog微分細孔容積とする)は、二つのピークを有するのが好ましい。BJH法は、例えば「メソ孔の分布を求める方法」(E. P. Barrett,L. G. Joyner, and P. P. Halenda , J.Am. Chem. Soc., 73, 373(1951))に記載されている。log微分細孔容積は、細孔直径Dの対数の差分値d(logD)に対する差分細孔容積dVの変化量であり、dV/d(logD)で表される。小孔径側の第一ピークは粒子内細孔の径を示し、大孔径側の第二ピークは粒子間細孔の径を示す。メソポーラスシリカ多孔質膜2は、粒子内細孔径が2〜10 nmの範囲内にあり、粒子間細孔径が5〜200 nmの範囲内にある分布を有するのが好ましい。粒子内細孔径及び粒子間細孔径が上記範囲であるメソポーラスシリカ多孔質膜2は、1.10超〜1.40以下の適度な屈折率と、優れた反射防止性と耐湿性を有する。
【0063】
粒子内細孔容積V
1と粒子間細孔容積V
2の比は1/2〜1/1であるのが好ましい。この比が上記範囲であるメソポーラスシリカ多孔質膜2は、反射防止性と耐クラック性のバランスに優れている。この比は1/1.9以上1/1.2未満であるのがより好ましい。容積V
1及びV
2は以下の通り求める。
図3において、第一及び第二のピーク間の縦座標の最小値の点Eを通り、横軸と平行な直線をベースラインL
0とし、各々のピークの最大傾斜線(最大傾斜点における接線)L
1〜L
4とベースラインL
0との交点A〜Dにおける横軸座標(D
A〜D
D)を求める。各々BJH法による解析データにより、D
A〜D
Bの範囲の径を有する細孔の合計容積を算出してV
1とし、D
C〜D
Dの範囲の径を有する細孔の合計容積を算出してV
2とする。
【0064】
メソポーラスシリカ多孔質膜2の好ましい物理膜厚は15〜500 nmであり、より好ましくは50〜150 nmである。
【0065】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0066】
実施例1
[メソポーラスシリカナノ粒子分散液(水系ゾル)の作製]
pH2の塩酸(0.01 N)40 gに、塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(関東化学株式会社製、以下「カチオン性界面活性剤」とする。)1.21 g(0.088 mol/L)、及びブロックコポリマー HO(C
2H
4O)
106-(C
3H
6O)70 -(C
2H
4O)
106H(商品名「Pluronic F127」、Sigma-Aldrich社製、以下「非イオン性界面活性剤」とする。)2.14 g(0.004 mol/L)を添加し、25℃で0.5時間撹拌し、テトラエトキシシラン(関東化学株式会社製)4.00 g(0.45 mol/L)を添加し、25℃で6時間撹拌した後、28質量%アンモニア水(和光純薬工業株式会社製)3.94 g(1.51 mol/L)を添加してpHを10.8とし、25℃で0.5時間撹拌し水系ゾルを得た。
【0067】
[メソポーラスシリカナノ粒子分散液の界面活性剤抽出除去]
得られた水系ゾルを20 ml採取し、エタノール(和光純薬工業株式会社製;1級試薬)80 mlと混合して強攪拌することで、水系ゾル中の非イオン性界面活性剤を抽出した。この溶液を遠心分離機(久保田商事株式会社製;テーブルトップ遠心機2410)を用いて4000 rpmで20分間遠心分離し、非イオン性界面活性剤が溶解した上澄みを除去した。この抽出・除去の工程を3サイクル実施し、カチオン性界面活性剤が内包されたメソポーラスシリカナノ粒子の湿潤物を得た。
【0068】
得られたメソポーラスシリカナノ粒子の湿潤物全量を塩酸(和光純薬工業株式会社製「35〜37%水溶液」):エタノール=10 ml:90 mlの混合溶液に添加し、18時間攪拌することで、メソポーラスシリカナノ粒子中に内包されるカチオン性界面活性剤を抽出した。この溶液を4000 rpmで20分間遠心分離し、カチオン性界面活性剤が溶解した上澄みを除去した。上澄みを除去した湿潤物にエタノールを添加し強攪拌することで塩酸を抽出した。この溶液を4000 rpmで20分間遠心分離し、塩酸が溶解した上澄みを除去した。この塩酸の除去工程を3サイクル実施し、界面活性剤が修飾されていないメソポーラスシリカナノ粒子の湿潤物を得た。
【0069】
[メソポーラスシリカナノ粒子分散液の有機溶媒置換]
得られたメソポーラスシリカナノ粒子の湿潤物と4-メチル-2-ペンタノン(和光純薬工業株式会社製;特級)とを混合し、氷浴中で超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製;US-600T)を用いて2時間超音波照射(19.5 kHz,600W)しながら強攪拌することで有機溶媒中に分散した。得られた分散液を遠心分離機を用いて4000 rpmで20分間遠心分離し、その上澄みを採取し、非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤が抽出・除去されたメソポーラスシリカナノ粒子の4-メチル-2-ペンタノン分散液を得た。
【0070】
実施例1で得られたメソポーラスシリカナノ粒子の4-メチル-2-ペンタノン分散液は、粘度が1.03m Pa・sで、メジアン径が63.7 nmで、シリカ固形分濃度が2.3 wt%であった。4-メチル-2-ペンタノン分散液中のメソポーラスシリカナノ粒子のTEM写真を
図4に示す。分散液の粘度及びメジアン径は、株式会社堀場製作所製の動的光散乱式粒度分布測定装置LB-550で測定した。