特許第6355132号(P6355132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355132
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】缶被覆用水性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20180702BHJP
   C09D 151/00 20060101ALI20180702BHJP
   C09D 161/06 20060101ALI20180702BHJP
   C09D 161/20 20060101ALI20180702BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20180702BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20180702BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20180702BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20180702BHJP
   B65D 25/14 20060101ALI20180702BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C09D133/00
   C09D151/00
   C09D161/06
   C09D161/20
   C09D5/02
   C09D7/63
   C09D7/65
   B05D7/14 F
   B65D25/14 A
   B05D7/24 302P
【請求項の数】14
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-254275(P2014-254275)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-113561(P2016-113561A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】日高 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】片岡 泰之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 道知
(72)【発明者】
【氏名】平本 勇也
(72)【発明者】
【氏名】稲田 祐一
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−291343(JP,A)
【文献】 特開平09−067543(JP,A)
【文献】 特開2005−179491(JP,A)
【文献】 特開2000−154204(JP,A)
【文献】 特開2008−001888(JP,A)
【文献】 特開2008−297380(JP,A)
【文献】 特開2005−349684(JP,A)
【文献】 特開2004−059622(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0135651(US,A1)
【文献】 特開2006−176618(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0235108(US,A1)
【文献】 特表2009−532206(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/015827(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 133/00
B05D 7/14
B65D 25/14
C09D 5/02
C09D 161/06
C09D 161/20
C09D 151/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル部及び架橋したコア部からなるコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)、並びにレゾール型フェノール樹脂(C1)及び/又はアミノ樹脂(C2)を含み、ビスフェノールA又はビスフェノールAを含む原料を用いて製造された樹脂を含まない缶被覆用水性塗料組成物であって、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)がノニオン性界面活性剤を用いた重合性不飽和モノマーの乳化重合により製造されたものであり、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)におけるコア部の質量がコア部とシェル部との合計質量を基準として10〜90質量%の範囲内であり、且つ前記シェル部を構成するアクリル樹脂のガラス転移温度が35〜105℃の範囲内であり、且つ前記コア部を構成するアクリル樹脂のガラス転移温度が−10〜25℃の範囲内であり、且つコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量を基準としてレゾール型フェノール樹脂(C1)とアミノ樹脂(C2)との合計質量が0.1〜10質量%の範囲内であり、且つ前記缶被覆用水性塗料組成物の固形分質量を基準として、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量が50〜99.9質量%の範囲内であることを特徴とする缶被覆用水性塗料組成物。
【請求項2】
前記ノニオン性界面活性剤のHLB値が6〜20の範囲内である請求項1に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
【請求項3】
前記ノニオン性界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類及びポリオキシエチレン脂肪酸エステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
【請求項4】
前記ノニオン性界面活性剤が、炭素数10以上の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和脂肪酸エステル基を有するものである請求項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
【請求項5】
前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)が、ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を用いた重合性不飽和モノマーの乳化重合により製造されたものであって、前記ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との質量比が15/85〜99/1の範囲内である請求項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
【請求項6】
前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)が、ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を用いた重合性不飽和モノマーの乳化重合により製造されたものであって、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量を基準として、前記アニオン性界面活性剤の質量が1.0質量%以下の範囲内である請求項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
【請求項7】
前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)における架橋したコア部が、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー、及び/又は相補的に反応して共有結合を生成することが可能な不飽和基以外の官能基をそれぞれが有する重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー混合物を用いた乳化重合により形成されたものである請求項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
【請求項8】
前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)が、該粒子におけるコア部を構成するアクリル樹脂の一部と、シェル部を構成するアクリル樹脂の一部とが化学結合したものである請求項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
【請求項9】
前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)が、架橋反応性官能基を有するものである請求項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
【請求項10】
缶被覆用水性塗料組成物が缶内面被覆用水性塗料組成物である、請求項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
【請求項11】
缶被覆用水性塗料組成物が缶外面被覆用水性塗料組成物である、請求項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物によって被覆されてなる、被覆缶。
【請求項13】
請求項1〜10の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物によって缶の蓋部内面が被覆されてなる、被覆缶。
【請求項14】
請求項1〜11の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物によって缶の蓋部外面が被覆されてなる、被覆缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料の貯蔵安定性に優れ、耐水性、耐食性及び加工性に優れた塗膜を形成することが可能な缶被覆用水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶内面用の塗料としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とフェノール樹脂硬化剤とを含む有機溶剤型塗料が一般に使用されてきたが、この塗料から排出される有機溶剤による地球環境汚染の問題があり、有機溶剤型塗料から水性塗料に置き換えられつつある。
【0003】
水性塗料としては、例えば、塗料にコアシェル微粒子を均一に分散させたことを特徴とするコアシェル微粒子分散塗料が開示されている(特許文献1)。上記特許文献1には、該塗料の具体例として、ドデシルビフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムを乳化剤として用いた乳化重合法により得られたコアシェル型微粒子と、カルボキシル基含有自己乳化性ビスフェノールA型エポキシ樹脂の水性分散体とを含む缶用塗料組成物が挙げられている。そして、特許文献1の明細書の段落[0041]には、「本発明のコアシェル微粒子分散塗料に使用されるコアシェル微粒子の含有量は、固形分換算で0.5〜25重量%であることが好ましく」と記されており、また同文献には、上記カルボキシル基含有自己乳化性ビスフェノールA型エポキシ樹脂の水性分散体に対して、固形分重量比で最大10%になるようにコアシェル微粒子エマルジョンを分散した実施例が開示されている。したがって、特許文献1の発明における缶用塗料組成物は、実質的にカルボキシル基含有自己乳化性ビスフェノールA型エポキシ樹脂の水性分散体を主要成分として含むものである。
【0004】
上記の組成物も含めた、従来からの缶用塗料組成物においては、良好な塗装作業性と塗膜性能を得るために、ビスフェノールAを含む原料を用いて製造されたエポキシ樹脂が一般に使用されている。しかし、近年の地球環境への影響の観点からビスフェノールAを含む原料を用いて製造された樹脂を含まない缶内面用水性塗料が望まれている。そこで、ビスフェノールAを含む原料を用いて製造された樹脂の使用量を減量するために、特許文献1に記載された缶用塗料組成物における前記コアシェル微粒子の含有量を25質量%よりも多くすると、得られる塗膜の機械的性質が低下し、加工性、密着性の改善効果が低くなり、さらに塗膜のフレーバー性及び耐レトルト性が悪化することがあった。
【0005】
ビスフェノールAを原料として使用しない樹脂を用いた塗料組成物として、例えば、塩基性化合物で中和されたカルボキシル基含有アクリル系共重合体を用いてエチレン性不飽和モノマーを乳化重合させて得られる複合樹脂エマルションを含む缶内面被覆用水性塗料組成物が開示されている(特許文献2)。しかし、上記水性塗料は、増膜助剤として有機溶剤を含む場合、製造時に上記樹脂エマルションに起因する凝集体が生じやすく、製造安定性が劣り、さらに得られた塗膜の耐レトルト性に劣ることがあった。
【0006】
また、塩基性化合物で中和されたカルボキシル基含有アクリル系共重合体を用いてエチレン性モノマーを乳化重合させる際にオキシラン官能性含有モノマーを共存させて得られる樹脂エマルションを用いた水性塗料組成物が開示されている(特許文献3)。しかし、この塗料は未反応のオキシラン基に起因すると推定される反応が貯蔵時に進行し、貯蔵時に増粘しやすいという問題があった。
【0007】
さらに、ラジカル反応性不飽和基を有するポリエステルにカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマーをグラフト重合してなるアクリル変性ポリエステル樹脂と、レゾール型フェノール樹脂架橋とを含む缶内面用水性被覆組成物が開示されている(特許文献4)。しかし、上記組成物から得られた被膜は耐レトルト白化性に劣ることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−67543号公報
【特許文献2】特開2005−179491号公報
【特許文献3】WO2006/045017号公報
【特許文献4】特開2002−302639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ビスフェノールA又はビスフェノールAを含む原料を用いて製造された樹脂を含まない缶被覆用水性塗料組成物であって、塗料の製造安定性及び貯蔵安定性、並びに塗膜の耐レトルト白化性及び耐食性に優れた缶被覆用水性塗料組成物、並びに該塗料組成物を塗装してなる被覆缶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、シェル部及び架橋したコア部からなるコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)、並びにレゾール型フェノール樹脂(C1)及び/又はアミノ樹脂(C2)を含み、ビスフェノールA又はビスフェノールAを含む原料を用いて製造された樹脂を含まない缶被覆用水性塗料組成物であって、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)がノニオン性界面活性剤を用いた重合性不飽和モノマーの乳化重合により製造されたものであり、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)におけるコア部の質量がコア部とシェル部との合計質量を基準として10〜90質量%の範囲内であり、且つ前記シェル部を構成するアクリル樹脂のガラス転移温度が35〜105℃の範囲内であり、且つ前記コア部を構成するアクリル樹脂のガラス転移温度が−10〜25℃の範囲内であり、且つコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量を基準としてレゾール型フェノール樹脂(C1)とアミノ樹脂(C2)との合計質量が0.1〜10質量%の範囲内であり、且つ前記缶被覆用水性塗料組成物の固形分質量を基準として、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量が50〜99.9質量%の範囲内であることを特徴とする缶被覆用水性塗料組成物が塗料の製造安定性及び貯蔵安定性、並びに塗膜の耐レトルト白化性及び耐食性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、以下の缶被覆用水性塗料組成物、及び該缶被覆用水性塗料組成物を被塗物に塗装してなる塗装物品を提供するものである。
項1.シェル部及び架橋したコア部からなるコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)、並びにレゾール型フェノール樹脂(C1)及び/又はアミノ樹脂(C2)を含み、ビスフェノールA又はビスフェノールAを含む原料を用いて製造された樹脂を含まない缶被覆用水性塗料組成物であって、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)がノニオン性界面活性剤を用いた重合性不飽和モノマーの乳化重合により製造されたものであり、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)におけるコア部の質量がコア部とシェル部との合計質量を基準として10〜90質量%の範囲内であり、且つ前記シェル部を構成するアクリル樹脂のガラス転移温度が35〜105℃の範囲内であり、且つ前記コア部を構成するアクリル樹脂のガラス転移温度が−10〜25℃の範囲内であり、且つコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量を基準としてレゾール型フェノール樹脂(C1)とアミノ樹脂(C2)との合計質量が0.1〜10質量%の範囲内であり、且つ前記缶被覆用水性塗料組成物の固形分質量を基準として、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量が50〜99.9質量%の範囲内であることを特徴とする缶被覆用水性塗料組成物。
.前記ノニオン性界面活性剤のHLB値が6〜20の範囲内である項1に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
.前記ノニオン性界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類及びポリオキシエチレン脂肪酸エステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種である項1又は2に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
.前記ノニオン性界面活性剤が、炭素数10以上の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和脂肪酸エステル基を有するものである項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
.前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)が、ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を用いた重合性不飽和モノマーの乳化重合により製造されたものであって、前記ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との質量比が15/85〜99/1の範囲内である項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
.前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)が、ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を用いた重合性不飽和モノマーの乳化重合により製造されたものであって、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量を基準として、前記アニオン性界面活性剤の質量が1.0質量%以下の範囲内である項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
.前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)における架橋したコア部が、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー、及び/又は相補的に反応して共有結合を生成することが可能な不飽和基以外の官能基をそれぞれが有する重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー混合物を用いた乳化重合により形成されたものである項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
.前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)が、該粒子におけるコア部を構成するアクリル樹脂の一部と、シェル部を構成するアクリル樹脂の一部とが化学結合したものである項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
.前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)が、架橋反応性官能基を有するものである項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
10.缶被覆用水性塗料組成物が缶内面被覆用水性塗料組成物である、項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
11.缶被覆用水性塗料組成物が缶外面被覆用水性塗料組成物である、項1〜の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物。
12.項1〜11の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物によって被覆されてなる、被覆缶。
13.項1〜10の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物によって缶の蓋部内面が被覆されてなる、被覆缶。
14.項1〜11の何れか一項に記載の缶被覆用水性塗料組成物によって缶の蓋部外面が被覆されてなる、被覆缶。
【発明の効果】
【0012】
本発明の缶被覆用水性塗料組成物は、塗料の製造安定性及び貯蔵安定性、並びに塗膜の耐レトルト白化性及び耐食性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の缶被覆用水性塗料組成物(以下、「塗料組成物」と記すことがある)は、シェル部及び架橋したコア部からなるコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)、並びにレゾール型フェノール樹脂(C1)及び/又はアミノ樹脂(C2)を含む缶被覆用水性塗料組成物であって、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)がノニオン性界面活性剤を用いた重合性不飽和モノマーの乳化重合により製造されたものであり、且つ前記シェル部を構成するアクリル樹脂のガラス転移温度(本明細書において「シェルTg」と記すことがある)が35〜105℃の範囲内であり、且つ前記コア部を構成するアクリル樹脂のガラス転移温度(本明細書において「コアTg」と記すことがある)が−10〜25℃の範囲内であり、且つコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量を基準としてレゾール型フェノール樹脂(C1)とアミノ樹脂(C2)との合計質量が0.1〜10質量%の範囲内であり、且つ前記缶被覆用水性塗料組成物の固形分質量を基準として、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量が50〜99.9質量%の範囲内であることを特徴とする。
【0014】
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)
シェル部及び架橋したコア部からなるコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、重合性不飽和モノマーを用いた従来から公知の多段階の乳化重合により得ることができる。例えば、前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(以下、「多ビニルモノマー」と記すことがある。)、及び/又は相補的に反応して共有結合を生成することが可能な不飽和基以外の官能基をそれぞれが有する重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー混合物(以下、「コアモノマー混合物(a1)」と記すことがある。)を用いて、第1段階の乳化重合を水の存在下で行い、架橋したコア粒子の水分散体を得た後、前記水分散体にシェル部を形成するための重合性不飽和モノマーのモノマー混合物(a2)(以下、「シェルモノマー混合物(a2)」と記すことがある。上記「コアモノマー混合物(a1)」とは含まれるモノマー組成が異なるものである。)を加えて、第2段階の乳化重合を行うことにより得ることができる。
【0015】
前記多ビニルモノマーは、コアモノマー混合物(a1)の質量を基準として0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%の範囲内の量で用いることができる。
【0016】
前記相補的に反応して共有結合を形成する官能基をそれぞれが有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の同種の官能基どうしが相補的に反応して共有結合を形成できるもの、又は(メタ)アクリル酸グリシジルエステルと(メタ)アクリル酸との組合せにおけるグリシジル基とカルボン酸との反応のように、異種の2つの官能基が相補的に反応してエステル結合等の共有結合を形成できるものなどを挙げることができる。コア粒子内の架橋反応は、例えば、前記第1段階の乳化重合においてコア粒子を形成しながら行っても、コア粒子を形成した後に適当な触媒を加えて行っても、又はシェル部を形成した後に適当な触媒を加えて行ってもよい。
【0017】
前記重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−ト等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有するモノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有するモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有するモノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有するモノマー;N置換マレイミド類;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の窒素含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート及びこれらのナトリウム塩又はアンモニウム塩等のスルホン酸基含有モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等のリン酸基を有するモノマー;アクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有モノマー;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアリロキシジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ペンタエリスリトルジアリルエ−テル、ジビニルベンゼン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0018】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0019】
前記第1段階の乳化重合において、コアモノマー混合物(a1)の一部を少量用いた乳化重合によりシード粒子を得た後、該シード粒子の存在下で、残りのコアモノマー混合物(a1)を乳化重合することによりコア粒子の水分散体を得てもよい。
【0020】
前記コア粒子の水分散体にシェルモノマー混合物(a2)を加えて、第2段階の乳化重合を行うことにより、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を得ることができる。その際に、シェル部を形成するための前記第2段階の乳化重合を、2段階以上で行うことにより、シェル部を2層以上有するコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を得てもよい。このとき、シェルモノマー混合物(a2)の配合量やモノマー組成は、各段階で異なっていてもよい。
【0021】
また、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の製造において、重合反応槽にコアモノマー混合物(a1)又はシェルモノマー混合物(a2)を添加する手段については、特に制約はなく、例えば、第1段階の乳化重合において、コアモノマー混合物(a1)を一括で添加しても、連続的に添加しても、又は間欠的に添加してもよい。同様に、第2段階の乳化重合において、シェルモノマー混合物(a2)を一括で添加しても、連続的に添加しても、又は間欠的に添加してもよい。
【0022】
本発明におけるコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、シェルTgが35〜105℃、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは45〜90℃の範囲内であり、コアTgが−10〜25℃、好ましくは−5〜20℃、さらに好ましくは0〜15℃の範囲内である。シェルTgが35℃よりも低いと、得られる塗膜の耐食性が劣ることがあり、シェルTgが105℃よりも高いと、得られる塗膜の加工性が劣ることがある。また、コアTgが−10℃よりも低いと、得られる塗膜の耐食性が劣ることがあり、コアTgが25℃よりも高いと、得られる塗膜の加工性が劣ることがある。
【0023】
ここで、ガラス転移温度(Tg)は、下記の式(1)及び式(2)を用いて算出することができる。
1/Tg(°K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・・式(1)
Tg(°C)=Tg(°K)−273・・・式(2)
式中、W1、W2、・・は、共重合に使用されたモノマーのそれぞれの質量%を表わし、T1、T2、・・は、それぞれ単量体のホモポリマ−のTg(°K)を表わす。なお、T1、T2、・・は、Polymer Hand Book(Second Edition,J.Brandup・E.H.Immergut編)による値である。このハンドブックに記載されてないモノマーによるホモポリマーのガラス転移温度は、重量平均分子量が2万〜5万程度のホモポリマーについての実測値とする。この実測値は、測定カップにとった試料を真空吸引して溶剤等の揮発成分を除去した後、示差走査型熱分析「DSC−50Q型」(商品名、島津製作所社製)を用いて、3℃/分の昇温速度で−50℃〜+150℃の範囲の熱量変化を測定し、低温側の最初のベースラインの変化点を用いる。
【0024】
なお、本明細書において、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)のシェル部が2層以上の多層の場合、シェルTgは、シェルモノマー混合物(a2)に用いたすべてのモノマーを合計した組成に基づいて、上述の各式により計算された値である。また、前記架橋したコア部が多ビニルモノマーを含むコアモノマー混合物(a1)を用いて形成された場合、コアTgは、前記コアモノマー混合物(a1)から多ビニルモノマーを除外した組成に基づいて、上述の各式により計算された値である。
【0025】
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)におけるコア部の質量は、コア部とシェル部との合計質量を基準として10〜90質量%、好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは30〜60質量%の範囲内である。前記コア部の質量が10質量%よりも少ないと、得られる塗膜の加工性が劣ることがあり、90質量%よりも多いと、得られる塗膜の耐食性が低下することがある。
【0026】
本発明の水性塗料組成物のコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、貯蔵安定性の観点から、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の酸基を有していることが好ましい。これらの酸基に由来する酸価は、0.5〜100mgKOH/g、好ましくは20〜90mgKOH/g、さらに好ましくは40〜80mgKOH/gの範囲内である。前記酸価が100mgKOH/gよりも大きいと、得られる塗膜の耐水性が低下することがある。
【0027】
また、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)におけるコア部を構成するアクリル樹脂の一部又は全部と、シェル部を構成するアクリル樹脂の一部又は全部とが化学結合していることにより、得られる塗膜の耐レトルト白化性、耐食性、耐水性等が改善されることがある。そのようなコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、例えば、相補的に反応して共有結合を形成することが可能な官能基を有する2種の重合性不飽和モノマー[モノマー(z1)及びモノマー(z2)と表記]を用いた方法(1)、1分子中にラジカル反応性の異なる2個以上のラジカル反応性不飽和基を有するモノマー[モノマー(z3)と表記]を用いた方法(2)等により製造することができる。
【0028】
前記方法(1)としては、例えば、モノマー(z1)を含むコアモノマー混合物(a1)を用いて第1段階の乳化重合を水の存在下で行い、コア粒子の水分散体を得た後、モノマー(z2)を含むシェルモノマー混合物(a2)を前記水分散体に加えて、第2段階の乳化重合を行うことにより、コア部を構成するアクリル樹脂の一部又は全部と、シェル部を構成するアクリル樹脂の一部又は全部とが化学結合したコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を得る製造方法等を挙げることができる。
【0029】
前記モノマー(z1)及びモノマー(z2)の組合せとしては、例えば、モノマー(z1)としてグリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマーと、モノマー(z2)として(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマーとの組合せを挙げることができる。なお、上記エポキシ基含有モノマーと、カルボキシル基含有モノマーとの組合せにおいては、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の製造時において、上記エポキシ基とカルボキシル基とが反応してエステル結合を形成する。
【0030】
前記方法(2)としては、例えば、モノマー(z3)を含むコアモノマー混合物(a1)を用いて第1段階の乳化重合を水の存在下で行い、コア粒子の水分散体を得た後、シェルモノマー混合物(a2)を前記水分散体に加えて、第2段階の乳化重合を行うことにより、コア部を構成するアクリル樹脂の一部又は全部と、シェル部を構成するアクリル樹脂の一部又は全部とが化学結合したコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を得る製造方法等を挙げることができる。
【0031】
前記モノマー(z3)としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト等の、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、シクロアルケニル基、シンナミル基等の(メタ)アクリロイル基とは異なる構造の何れかの不飽和基と、(メタ)アクリロイル基とを1分子中に有するモノマー等を挙げることができる。
【0032】
また、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)が架橋反応性を有していることにより、得られる塗膜の耐レトルト白化性、耐食性、耐水性等が改善されることがある。上記架橋反応性を有するコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、架橋反応性官能基を有する重合性不飽和モノマーを用いた乳化重合により得ることができる。架橋反応性官能基を有する重合性不飽和モノマーの使用量は、得られる塗膜の加工性、缶蓋部における耐膜残り性等の点から、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の製造に用いる重合性不飽和モノマーの総量に対して20質量%以下、好ましくは15質量%以下である。上記架橋反応性官能基は、同じ架橋反応性官能基どうしで反応して架橋構造を有する塗膜を形成できるもの、本発明の缶被覆用水性塗料組成物に含まれるレゾール型フェノール樹脂(C1)及び/又はアミノ樹脂(C2)との反応によって架橋構造を有する塗膜を形成できるもの、本発明の缶被覆用水性塗料組成物に含まれる他の架橋反応性成分との反応によって架橋構造を有する塗膜を形成できるもの等を挙げることができる。
【0033】
上記架橋反応性官能基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド等の架橋反応性(メタ)アクリルアミド類;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有するモノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマーを挙げることができる。
【0034】
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を得るための乳化重合に用いることのできるラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を挙げることができ、例えば、ジベンゾイルパーオキシド、ジオクタノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキシド、ジステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]の塩(有機酸塩、塩酸塩又は硫酸塩等)、2,2’−アゾビス[2−メチルプロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス[2−メチルプロピオンアミジン]の塩(有機酸塩、塩酸塩又は硫酸塩等)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]の水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]の塩(有機酸塩、塩酸塩又は硫酸塩等)、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)の塩(有機酸塩、塩酸塩又は硫酸塩等)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素等の無機過酸化物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。さらに、前記過酸化物系の重合開始剤は、所望により、アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸類、これらの有機酸の塩類、3級アミン類、糖類、メルカプタン類、ピロ亜燐酸塩類、亜燐酸塩類、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩類、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素等の公知の還元剤を1種又は2種以上添加して、レドックス開始剤として使用してもよい。
【0035】
前記ラジカル重合開始剤は、乳化重合に用いる重合性不飽和モノマーの合計質量を基準として0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%の範囲内の量で用いることができる。前記ラジカル重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、種類、質量等に応じて適宜選択することができ、例えば、あらかじめモノマー混合物又は水に添加してもよく、重合時に一括添加又は滴下してもよい。
【0036】
本発明におけるコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を製造するための前記乳化重合は、ノニオン性界面活性剤を用いて行うことができる。上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0037】
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル類、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類又はポリオキシアルキレンアルケニルエーテル類;前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類又はポリオキシアルキレンアルケニルエーテル類の市販品としては、例えば、「エマルゲン103」、「エマルゲン120」、「エマルゲン220」、「エマルゲン430」、「エマルゲン2025G」、「エマルゲンLS−114」、「ラテムルPD−430」(以上、花王株式会社製)等を挙げることができる。
【0038】
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンフェニルエーテル類;前記ポリオキシエチレンフェニルエーテル類の市販品としては、例えば、「エマルゲンA−90」、「エマルゲンB−66」(以上、花王株式会社製)等を挙げることができる。
【0039】
ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノパルミテート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジオレート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類;前記ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類の市販品としては、例えば、「エマノーン1112」、「エマノーン3299V」(以上、花王株式会社製)等を挙げることができる。
【0040】
ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンヤシ油脂肪酸エステル類等のソルビタン脂肪酸エステル類;前記ソルビタン脂肪酸エステル類の市販品としては、例えば、「NIKKOL SL−10」(以上、日光ケミカルズ社製)等を挙げることができる。
【0041】
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンジラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンジパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンジオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンジイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンヤシ油脂肪酸エステル、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類の市販品としては、例えば、「NIKKOL TS―10V」、「NIKKOL TL―10」(以上、日光ケミカルズ社製)、「レオドールTW−O120V」、「レオドールTW−P120」、「レオドールTW−L120」(以上、花王株式会社製)等を挙げることができる。
【0042】
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、等の脂肪酸エステル化ポリオキシエチレンソルビット類;前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類の市販品としては、例えば、「レオドール440V」、「レオドール460V」(以上、花王株式会社製)等を挙げることができる。
【0043】
グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノパルミテート、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、オレイン酸ポリオキシエチレングリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル類;前記グリセリン脂肪酸エステル類の市販品としては、例えば、「レオドールMS−165V」(以上、花王株式会社製)「NIKKOL MGS−F20V」(以上、日光ケミカルズ社製)等を挙げることができる。
【0044】
モノイソステアリン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、縮合リシノレイン酸ポリグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル類;前記ポリグリセリン脂肪酸エステル類の市販品としては、例えば、「NIKKOL Hexaglynピーアール−15」、「NIKKOL Hexaglyn1−L」、「NIKKOL Hexaglyn1−M」、「NIKKOL Decaglyn1−L」、「NIKKOL Decaglyn1−M」、「NIKKOL Decaglyn1−SV」、「NIKKOL Decaglyn1−50SV」、「NIKKOL Decaglyn1−ISV」、「NIKKOL Decaglyn1−OV」、「NIKKOL Decaglyn1−LN」、「NIKKOL Decaglyn2−SV」、「NIKKOL Decaglyn3−SV」、「NIKKOL Decaglyn3−OV」、「NIKKOL Decaglyn1−LVEX」、「NIKKOL Decaglyn2−ISV」、「NIKKOL Decaglyn7−OV」、「NIKKOL Decaglyn1−ISVEX」、「NIKKOL Decaglyn1−MVEX」、「NIKKOL Decaglyn1−OVEX」、「NIKKOL Decaglyn1−PVEX」、「NIKKOL Decaglyn1−SVEX」(以上、日光ケミカルズ社製)、「サンソフトM−12J」、「サンソフトQ−12S」、「サンソフトQ−14S」、「サンソフトA−181E」、「サンソフト A−121E」(以上、太陽化学社製)、「MS−5S」、「SS−5S」、「TS−5S」、「MCA−150」、「MSW−7S」、「ML−500」、「MCA−750」、「ML−750」(以上、阪本薬品工業社製)、「ポエム J−0021」(理研ビタミン社製)、「リョートーポリグリエステルL−10D」、「リョートーポリグリエステルM−10D」(以上、三菱化学フーズ社製)等を挙げることができる。
【0045】
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類;前記ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類の市販品としては、例えば、「SC−E750」(阪本薬品工業社製)、「NIKKOL TMGS−5V」、「NIKKOL TMGS−15V」、「NIKKOL TMGO−15」(以上、日光ケミカルズ社製)等を挙げることができる。
【0046】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシアルキレン変性ヒマシ油類;前記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類の市販品としては、例えば、「エマーノンCH−80」(花王株式会社製)、「ノイゲンES−169D」(第一工業製薬社製)等を挙げることができる。
【0047】
トリ酢酸テトラステアリン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、ジステアリン酸スクロース、ポリステアリン酸スクロース、ペンタエルカ酸スクロース、ヘキサエルカ酸スクロース、トリベヘン酸スクロース、オレイン酸スクロース、ポリオレイン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ヘキサパルミチン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、ラウリン酸スクロース、ジラウリン酸スクロース、ポリラウリン酸スクロース等のショ糖脂肪酸エステル類;前記ショ糖脂肪酸エステル類の市販品としては、例えば、「S−770」、「S−970」、「S−1170」、「S−1570」「L−1695」、「M−1695」、「O−1570」、「P−1670」(以上、三菱化学フーズ社製)、「コスメライクS−160」、「コスメライクO−150」、「コスメライクP−160」(以上、第一工業製薬社製)等を挙げることができる。
【0048】
α−ヒドロ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、アルコキシポリエチレングリコールメタクリレート、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル等のラジカル反応性ノニオン性界面活性剤;上記ラジカル反応性ノニオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、アデカリアソープER−40(ADEKA社製)、アントックスLMAシリーズ(日本乳化剤社製)、PD−400シリーズ(花王株式会社製)、アクアロンRNシリーズ(第一工業製薬社製)等を挙げることができる。
【0049】
前記以外のノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、ラウリン酸ミスチリン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド等の窒素含有ノニオン性界面活性剤やポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等のポリマータイプのノニオン性界面活性剤を用いてもよい。
【0050】
前記ノニオン性界面活性剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記ノニオン性界面活性剤はコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の製造安定性の観点から、特にポリグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類及びポリオキシエチレン脂肪酸エステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種が好適である。
【0052】
前記ノニオン性界面活性剤のHLB値は本発明の缶被覆用水性塗料組成物の貯蔵安定性の点から、6〜20、好ましくは7〜19、さらに好ましくは8〜17の範囲内である。HLB値が6よりも小さいと、缶被覆用水性塗料組成物の貯蔵安定性が低下することがある。前記ノニオン性界面活性剤はHLB値の異なる2種類以上を併用してもよい。
【0053】
なお、ここでHLB値とは、親水性−親油性バランスの略称で、両親媒性物質の親水性と親油性の比を0〜20の間の数値で表したもので、HLB値が大きいほど親水性は大きくなる。HLB値の計算方法の一例として、質量分率に基づくグリフィン式:
HLB値=20×(MH/M)
(式中、MHは両親媒性物質である化合物中の親水基部分の分子量を示し、Mは化合物そのものの分子量を示す。)によって値を算出することができる。例えばアルキルエーテル型のノニオン性界面活性剤で、その分子中に親水基であるポリオキシエチレン基が80質量%、疎水基であるアルキル基が20質量%を占めるノニオン性界面活性剤ではHLB値=20×0.8=16として算出される。
【0054】
本明細書におけるHLB値は、上記グリフィン式を参考として、便宜上ノニオン性界面活性剤の製造に用いる該ノニオン性界面活性剤の主要原材料に占める親水性原材料の質量%をP%とすると、HLB値=20×P/100として算出した値である。
【0055】
また、前記ノニオン性界面活性剤が有する親油性の基としては、炭素数10以上の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和脂肪酸エステル基を有するものが、本発明の缶被覆用水性塗料組成物の貯蔵安定性の点から好ましい。
【0056】
本発明におけるコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を製造するための乳化重合は、前記ノニオン性界面活性剤を必須成分として用いるが、該ノニオン性界面活性剤の総量は、上記乳化重合に用いる重合性不飽和モノマーの合計質量を基準として0.05〜10質量%の範囲内、より好ましくは0.1〜8質量%の範囲内で用いることが、得られる塗膜の耐レトルト白化性、耐食性の点で好ましい。
【0057】
本発明におけるコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を製造するための乳化重合は、前記ノニオン性界面活性剤を必須成分として用いるが、該ノニオン性界面活性剤以外に、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性とカチオン性との両方の特
性を有する両性イオン性界面活性剤等の従来から公知の界面活性剤から選ばれる少なくとも1種と、前記ノニオン性界面活性剤とを併用してもよい。ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、特にアニオン性界面活性剤を併用すると、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の製造安定性や塗料組成物の貯蔵安定性が向上することがあるため好適である。
【0058】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等の酸基含有化合物のナトリウム塩やアンモニウム塩等、1分子中にアニオン性基と、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基との両方の基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性界面活性剤、1分子中にアニオン性基と重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性界面活性剤等、を挙げることができる。前記両性イオン性界面活性剤としては、例えば、ジメチルアルキルベタイン類、ジメチルアルキルラウリルベタイン類、アルキルグリシン等を挙げることができる。
【0059】
前記反応性アニオン性界面活性剤としては、アリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル反応性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0060】
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)が、前記ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を用いた重合性不飽和モノマーの乳化重合により製造される場合、前記ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との質量比が15/85〜99/1、好ましくは18/82〜90/10、さらに好ましくは22/78〜80/20の範囲内である。前記ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との質量比が15/85よりも小さいと得られる塗膜の耐食性や耐水性が劣ることがあり、該質量比が99/1よりも大きいと、アニオン性界面活性剤を併用する効果が低くなることがある。
【0061】
前記ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤は、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の製造を、例えば、前記「コアモノマー混合物(a1)」の乳化重合の工程及び「シェルモノマー混合物(a2)」の乳化重合の工程の2段階の工程で行う場合、それぞれの工程において任意に分配して用いることができる。具体的には、例えば、アニオン性界面活性剤は「コアモノマー混合物(a1)」の乳化重合において用い、第一段階の乳化重合でコア粒子の水分散体を得た後、前記水分散体モノマー混合物(a2)をノニオン性界面活性剤と一緒に加えて第2段階の乳化重合を行ってもよい。また、上記第一段階の乳化重合と第2段階の乳化重合において、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤を始めから混合して用いてもよい。本発明におけるコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の製造において、上記ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤の分配の仕方や重合系への添加の仕方は、製造安定性等の観点から自由に調整することができる。
【0062】
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の製造においてアニオン性界面活性剤を用いる場合、該アニオン性界面活性剤の総量は、該製造に用いる重合性不飽和モノマーの合計質量を基準として1.0質量%以下、さらには0.8質量%以下の範囲内で用いることが、得られる塗膜の耐水性、耐食性の点で好ましい。
【0063】
本発明の水性塗料組成物のコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の平均粒子径は、80〜500nm、さらには150〜300nmが、貯蔵安定性の観点から好ましい。なお、前記平均粒子径は、サブミクロン粒子アナライザーN4(商品名、ベックマン・コールター株式会社製、粒度分布測定装置)を用いて、脱イオン水にて測定に適した濃度に希釈した試料を、常温(20℃程度)で測定した値である。
【0064】
第1段階及び第2段階以降の乳化重合は、水の存在下、40℃から98℃の重合温度にて1〜20時間程度の重合時間で、行うことができる。
【0065】
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を得るための乳化重合においては、上述の水、重合性不飽和モノマーの混合物、ラジカル重合開始剤、界面活性剤等の成分以外に、所望により、還元剤、有機溶剤、高分子化合物、連鎖移動剤、アミン系化合物、アルカリ性金属化合物等を用いてもよい。
【0066】
レゾール型フェノール樹脂(C1)、アミノ樹脂(C2)
本発明の缶被覆用水性塗料組成物は、レゾール型フェノール樹脂(C1)及び/又はアミノ樹脂(C2)を硬化剤として含む。本発明の缶被覆用水性塗料組成物は、レゾール型フェノール樹脂(C1)及び/又はアミノ樹脂(C2)を含むことによって、得られる塗膜の耐水性、耐食性、加工性等を向上させることが可能である。
【0067】
レゾール型フェノール樹脂(C1)としては、例えば、フェノールやクレゾールなどのフェノール化合物とホルムアルデヒド類を反応触媒の存在下で縮合反応させて、メチロール基を導入してなるフェノール樹脂;及び上記導入されたメチロール基の一部を炭素原子数1〜6個のアルコールでアルキルエーテル化したものが包含される。
【0068】
上記フェノール化合物としては、o−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノールなどの2官能性フェノール化合物;石炭酸、m−クレゾール、m−エチルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフェノールなどの3官能性フェノール化合物;などのフェノール化合物を1種、または2種以上混合して使用することができる。
【0069】
上記ホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はトリオキサンなどが挙げられ、1種で、または2種以上混合して使用することができる。前記メチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルキルエーテル化するのに用いられるアルコールとしては、炭素原子数1〜6個、好ましくは1〜4個の1価アルコールを好適に使用することができる。好適な1価アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどが挙げられる。
【0070】
レゾール型フェノール樹脂(C1)は、数平均分子量が200〜2000、好ましくは300〜1200の範囲内であり、かつベンゼン核1核当たりのメチロール基の平均数が0.3〜3.0個、好ましくは0.5〜3.0個の範囲内であることが適当である。特に、レゾール型フェノール樹脂の中でも、石炭酸とホルムアルデヒドとを縮合反応させて得られる石炭酸ホルムアルデヒド樹脂が、衝撃加工を受けた部分においても良好な耐食性塗膜を得ることができる。
【0071】
アミノ樹脂(C2)としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等のアルデヒド成分との反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。このメチロール化アミノ樹脂のメチロール基を炭素原子数1〜6の低級アルコールによってエーテル化したものも上記アミノ樹脂に包含される。
【0072】
上記アミノ樹脂としては、メチロール化メラミン樹脂もしくはメチロール化ベンゾグアナミン樹脂のメチロール基の一部又は全部を、低級アルコールによってエーテル化した低級アルキルエーテル化メラミン樹脂又は低級アルキルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。上記エーテル化に使用する低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコールが好ましく、これらのアルコールは単独で又は2種以上を混合してエーテル化に使用できる。
【0073】
上記メラミン樹脂の具体例としては、例えばユーバン20SE、同225〔以上、いずれも三井東圧(株)製〕、スーパーベッカミンJ820−60、同L−117−60、同L−109−65、同47−508−60、同L−118−60、同G821−60〔以上、いずれも大日本インキ化学工業(株)製〕等のブチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル300、同303、同325、同327、同350、同730、同736、同738〔いずれも三井サイテック(株)製〕、メラン522、同523〔いずれも日立化成(株)製〕、ニカラックMS001、同MX430、同MX650〔三和ケミカル(株)製〕、スミマールM−55、同M−100、同M−40S〔住友化学(株)製〕、レジミン740、同747〔いずれもモンサント社製〕等のメチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル232、同266、同XV−514、同1130〔いずれも三井サイテック(株)製〕、ニカラックMX500、同MX600、同MS95〔いずれも三和ケミカル(株)製〕、レジミン753、同755〔いずれもモンサント社製〕、スミマールM−66B〔住友化学(株)製〕等のメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂等を挙げることができる。
【0074】
前記ベンゾグアナミン樹脂の具体例としては、三井サイテック(株)製の、サイメル1123(メチルエーテルとエチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、サイメル1123−10(メチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、サイメル1128(ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂)、マイコート102(メチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂)等を挙げることができる。
【0075】
水性重合体(D)
本発明の缶被覆用水性塗料組成物は、さらに水溶性又は水分散性の水性重合体(D)を含んでもよい。水性重合体(D)は、水溶性又は水分散性であり、且つ、ビスフェノールAを原料として使用していない公知の樹脂を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、アクリル樹脂変性ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、ポリオキシアルキレン樹脂及びそれぞれの上記樹脂を公知の方法により変性した樹脂等の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の缶被覆用水性塗料組成物において、水性重合体(D)はコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量を基準として固形分で30質量%以下の範囲内で用いることが得られる塗膜の耐レトルト白化性や耐食性の観点から好ましい。水性重合体(D)を本発明の缶被覆用水性塗料組成物中に含むことにより、得られる塗膜の耐水性、耐食性、加工性等の性能を向上させるなどの調節が可能となることがある。
【0076】
水性重合体(D)の重量平均分子量は、本発明の缶被覆用水性塗料組成物の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐食性の観点から3000〜200000、好ましくは5000〜150000、さらに好ましくは、8000〜120000の範囲内のものを使用することができる。
【0077】
なお、本明細書において重量平均分子量又は数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー株式会社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー株式会社社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0078】
また、水性重合体(D)のガラス転移温度は、得られる塗膜の加工性の観点から−20℃以上、好ましくは−10〜130℃、さらに好ましくは0〜80℃の範囲内のものを使用することができる。本明細書において、ガラス転移温度は、示差走査型熱分析「DSC−50Q型」(商品名、島津製作所社製)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で−60℃〜+150℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側の最初のベースラインの変化点を使用する。
【0079】
本発明の缶被覆用水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から水性重合体(D)は、カルボキシル基含有樹脂が好ましい。水性重合体(D)の酸価は、得られる塗膜の耐水性の観点から20〜250mgKOH/g/g、好ましくは50〜200mgKOH/g/g、さらに好ましくは80〜150mgKOH/g/gの範囲内である。水性重合体(D)のカルボキシル基の一部又は全部は塗料配合前にアミンなどの塩基化合物によりあらかじめ中和しておいてもよいし、塗料配合時にアミンなどの塩基化合物を含む他の塗料成分と混合することにより中和してもよい。
【0080】
水性重合体(D)がビニル系重合体(D1)である場合、ビニル系重合体(D1)は架橋構造を実質的に有しない樹脂であって、例えば、溶液重合、分散重合、乳化重合、バルク重合等の従来から公知のラジカル重合により製造することができる。ビニル系重合体(D1)の製造に用いることのできる不飽和単量体は、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の製造に用いることのできる不飽和単量体として例示したものの中から、適宜複数の不飽和単量体を選択して用いることができる。また、ビニル系重合体(D1)の製造に用いることのできるラジカル重合開始剤は、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の製造に用いることのできるラジカル重合開始剤として例示したものの中から適宜選択して用いることができる。
【0081】
上記溶液重合、分散重合及び乳化重合において用いることのできる溶媒としては、例えば、水、トルエン、ブタノール、メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ等の公知の有機溶剤を挙げることができ、1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
上記溶液重合における重合条件としては、通常、反応温度が室温〜200℃程度で、反応時間が2〜10時間程度である。
【0083】
水性重合体(D)は、得られる塗膜の耐水性の観点から架橋反応性を有していることが好ましい。水性重合体(D)は、水性重合体(D)どうしの架橋反応、水性重合体(D)とコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)との架橋反応、水性重合体(D)と前記レゾール型フェノール樹脂(C1)及び/又はアミノ樹脂(C2)との架橋反応などの何れの架橋反応における架橋反応性を有してもよい。水性重合体(D)がアクリル樹脂である場合、架橋反応性を有する上記アクリル樹脂は、例えば、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の架橋反応性の官能基を有する重合性不飽和単量体と、他の重合性不飽和単量体とを共重合することによって得ることができる。
【0084】
缶被覆用水性塗料組成物
本発明の缶被覆用水性塗料組成物は、シェル部及び架橋したコア部からなるコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)、並びにレゾール型フェノール樹脂(C1)及び/又はアミノ樹脂(C2)を含み、ビスフェノールA又はビスフェノールAを含む原料を用いて製造された樹脂を含まない缶被覆用水性塗料組成物である。
【0085】
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量は、本発明の缶被覆用水性塗料組成物の固形分質量を基準として、50〜99.9質量%、好ましくは70〜99.5質量%、さらに好ましくは80〜99質量%の範囲内である。コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量が50質量%よりも少なかったり、99.9質量%よりも多いと、得られる塗膜の耐レトルト白化性や耐食性が劣ることがある。
【0086】
レゾール型フェノール樹脂(C1)とアミノ樹脂(C2)との合計質量は、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量を基準として、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜9質量%、さらに好ましくは1〜7質量%の範囲内である。レゾール型フェノール樹脂(C1)とアミノ樹脂(C2)との合計質量が0.1質量%よりも少ないと、得られる塗膜の耐レトルト白化性や耐食性が劣ることがあり、10質量%よりも大きいと得られる塗膜の耐レトルト白化性や加工性が劣ることがある。
【0087】
本発明の缶被覆用水性塗料組成物は、所望に応じて水性重合体(D)等を含んでもよい。水性重合体(D)は、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の固形分質量を基準にして20質量%以下の範囲内で用いることができる。水性重合体(D)の使用量が20質量%よりも多いと、得られる塗膜の耐レトルト白化性が低下することがある。
【0088】
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、カルボキシル基等の酸基の一部又は全部を塩基性化合物で中和して用いることができる。また、水性重合体(D)がカルボキシル基やスルホン酸基等の酸基を有する場合は、酸基の一部又は全部を塩基性化合物で中和して用いてもよい。
【0089】
前記中和に使用できる塩基性化合物としては、公知の無機塩基および有機塩基を用いることができ、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基化合物;トリメチルアミン、トリエチルアミンもしくはブチルアミンの如きアルキルアミン類、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミンもしくはアミノメチプロパノールの如きアルコールアミン類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の多価アミン、モルホリン等の有機塩基化合物等を挙げることができる。上記塩基性化合物としては、アンモニアや揮発性のアミン類が得られる塗膜の耐水性の観点で好適である。
【0090】
本発明の缶被覆用水性塗料組成物は、さらに必要に応じて、有機溶剤、消泡剤、界面活性剤、潤滑剤、ワックス、顔料等の従来から公知の原料を適宜混合して使用することができる。
【0091】
本発明で用いることができる上記性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、n−ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキシルアルコールの如きアルキルアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールの如きグリコールエーテル類;又はメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートの如きグリコールエーテルエステル類等であり、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコールなどを挙げることができ、これらは2種類以上を併用することができる。
【0092】
上記消泡剤としては、例えば、アクリル系、ビニルエーテル系、ジメチルポリシロキサン系等を挙げることができ、これらは2種類以上を併用することができる。
【0093】
本発明の缶被覆用水性塗料組成物は、種々の基材に適用することができ、例えばアルミニウム板、鋼板、ブリキ板等の無処理の又は表面処理した金属板、及びこれらの金属板にエポキシ系、ビニル系などのプライマーを塗装した金属板等、並びにこれらの金属板を缶などに加工したものを挙げることができる。
【0094】
本発明の缶被覆用水性塗料組成物が塗装される缶の形態は、蓋部および底部と一体化した胴体部との2つの部位で構成される2ピース缶や、蓋部と底部および胴体部の3つの部位からなる3ピース缶、ボトル缶などを挙げることができ、上記各部位に本発明の缶被覆用水性塗料組成物を塗装することができる。本発明の缶被覆用水性塗料組成物から得られる被膜は、加工性と耐食性に優れているため、飲料缶などの製造過程における凹凸状の変化を繰り返し受ける蓋部の塗装に好適である。
【0095】
また、本発明の缶被覆用水性塗料組成物は、缶内面のシーム部(つなぎ目部)の補修塗装、缶蓋の外面やタブ等の缶外面の塗装に用いてもよい。
【0096】
本発明の缶被覆用水性塗料組成物を基材に塗装する方法としては、公知の各種の方法、例えばロールコータ塗装、スプレー塗装、浸漬塗装や電着塗装等が適用できる。なかでもロールコータ塗装もしくはスプレー塗装が好ましい。塗膜厚は用途によって適宜選定すればよいが、乾燥膜厚で通常3〜20μm程度が好ましい。塗装した塗膜の乾燥条件としては、通常、素材到達最高温度が120〜300℃となる条件で10秒〜30分間、好ましくは200〜280℃で15秒間〜10分間の範囲内であることがよい。
【実施例】
【0097】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ここで「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。なお、以下の製造例及び実施例における原材料の質量部は、原材料の有効成分(又は固形分と記すことがある)の質量部を表し、表中の各原材料の使用量の値は、原材料の有効成分(又は固形分と記すことがある)の質量を表す。
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の製造
(製造例1)
コアモノマー混合物(a1−1)の乳化物の調製
脱イオン水27部、「NIKKOL TL−10」0.4部、スチレン9.7部、メチルメタクリレート5部、イソブチルメタクリレート5部、エチルアクリレート10部、2−エチルヘキシルアクリレート14.9部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、メタクリル酸3.9部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.5部、及び過硫酸アンモニウム0.05部を混合攪拌して、コアモノマー混合物(a1−1)の乳化物を得た。
【0098】
シェルモノマー混合物(a2−1)の乳化物の調製
脱イオン水27部、「NIKKOL TL−10」0.5部、スチレン20部、メチルメタクリレート10部、イソブチルメタクリレート5部、エチルアクリレート5部、2−エチルヘキシルアクリレート5.1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、メタクリル酸3.9部、及び過硫酸アンモニウム0.05部を混合攪拌して、シェルモノマー混合物(a2−1)の乳化物を得た。
【0099】
加熱及び冷却装置を備え、撹拌機、温度計、サーモスタット、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置が取り付けられた反応容器に、脱イオン水を95部、「NIKKOL TL−10」を0.1部仕込み、窒素気流下で撹拌混合しながら、内容物を85℃に昇温した。次いで、前記コアモノマー混合物(a1−1)の乳化物の全質量の4%に相当する量及び5%過硫酸アンモニウム水溶液1部を撹拌しながら加え、85℃で15分間保持した。その後、温度を85℃に保ちながら、前記コアモノマー混合物(a1−1)の乳化物の残量全部を2時間かけて滴下し、1時間熟成した。
【0100】
その後、内容物の温度を85℃に保ちながら、前記シェルモノマー混合物(a2−1)の乳化物を2時間かけて滴下し、2時間熟成した後、内容物に2−(ジメチルアミノ)エタノールを5部添加した。以上の工程により、2−(ジメチルアミノ)エタノールによって中和されたコアシェル型アクリル樹脂粒子A−1の分散体を得た。
【0101】
得られたコアシェル型アクリル樹脂粒子A−1は、コア部が架橋したコアシェル型アクリル樹脂粒子であり、平均粒子径が230nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)であり、分散体の固形分濃度が40質量%であった。コアシェル型アクリル樹脂粒子A−1の固形分の酸価は、50mgKOH/gであった。
【0102】
(製造例2〜33、比較製造例1、5〜11)
コアモノマー混合物(a1−1)の乳化物及びシェルモノマー混合物(a2−1)の乳化物の組成を、表1−1〜1−3に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様にして、コアシェル型アクリル樹脂粒子A−2〜34、A−38〜44の分散体を得た。
【0103】
(比較製造例2)
脱イオン水50部、「L−1695」1部、スチレン20部、メチルメタクリレート20部、イソブチルメタクリレート10部、エチルアクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2部、メタクリル酸7.8部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.2部、及び過硫酸アンモニウム0.05部を混合攪拌して、モノマー混合物の乳化物を得た。
【0104】
加熱及び冷却装置を備え、撹拌機、温度計、サーモスタット、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置が取り付けられた反応容器に、脱イオン水を95部、「L−1695」を0.1部仕込み、窒素気流下で撹拌混合しながら、内容物を85℃に昇温した。次いで、前記モノマー混合物の乳化物の全質量の2%に相当する量及び5%過硫酸アンモニウム水溶液1部を撹拌しながら加え、85℃で15分間保持した。その後、温度を85℃に保ちながら、前記モノマー混合物の乳化物の残量全部を4時間かけて滴下し、1時間熟成した。
【0105】
得られた単層型アクリル樹脂粒子A−35は、架橋した単層型アクリル樹脂粒子であり、平均粒子径が200nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)であり、分散体の固形分濃度が40質量%であった。単層型アクリル樹脂粒子A−35の酸価は、50mgKOH/gであった。
【0106】
(比較製造例3)
表1−3に記した配合に変更する以外は比較製造例2と同様にして、単層型アクリル樹脂粒子A−36を得た。
【0107】
(比較製造例4)
表1−3に記した配合に変更する以外は比較製造例2と同様にして、単層型アクリル樹脂粒子A−37を得た。
【0108】
以上の製造例及び比較製造例で得られたコアシェル型アクリル樹脂粒子および単層型アクリル樹脂粒子の樹脂酸価および粒子径、コアシェル型アクリル樹脂粒子のコアTg、シェルTgおよびコア部とシェル部との質量比について表1−1〜1−3に記した。
【0109】
また、それぞれのアクリルエマルション粒子の製造安定性についての評価も表1−1〜1−3に記した。評価基準は下記のとおりである。
【0110】
○:得られたエマルションに凝集やブツ等の異常が目視において認められず、該エマルションを排出後の反応装置のエマルションとの接触部に、反応装置の洗浄において問題となる汚れはない。
【0111】
○△:得られたエマルションに凝集やブツ等の異常が目視において認められないが、該エマルションを排出後の反応装置のエマルションとの接触部に、若干の凝集物が見られるため反応装置の洗浄時間が長くなる。工業的に実施可能な範囲である。
【0112】
×:得られたエマルションに凝集やブツ等の異常が目視において認められる、及び/又は該エマルションを排出後の反応装置のエマルションとの接触部に凝集物が見られ、反応装置の洗浄時間が長くなる。工業的実施には問題があると判断される。
【0113】
なお、表1−1〜1−3における(注1)〜(注13)は、下記説明のとおりである。
(注1)NIKKOL TL−10:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、HLB値:約16.9、日光ケミカルズ社製
(注2)S−770:ショ糖ステアリン酸エステル、HLB値:約7、三菱化学フーズ社製
(注3)S−970:ショ糖ステアリン酸エステル、HLB値:約9、三菱化学フーズ社製
(注4)L−1695:ショ糖ラウリン酸エステル、HLB値:約16、三菱化学フーズ社製
(注5)ポエムJ−0021:デカグリセリンラウリン酸エステル、HLB値:約15.5、理研ビタミン社製
(注6)Decaglyn2−SV:ポリグリセリンジステアリン酸エステル、HLB値:約9.5、日光ケミカルズ社製
(注7)アデカリアソープER−40:ラジカル反応性ノニオン性界面活性剤、HLB値:約17.2、ADEKA社製
(注8)ニューコール714−SF:ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩(アニオン性界面活性剤)、日本乳化剤社製
(注9)DDBSAアンモニウム:ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム(アニオン性界面活性剤)
(注10)ネオペレックス G−15:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(アニオン性界面活性剤)、花王社製
(注11)アントックス MS−2N:2−ソジウムスルホエチルメタクリレート、日本乳化剤社製
(注12)VA−086:2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](水溶性アゾ重合開始剤)、和光純薬社製
(注13)製造に使用した界面活性剤の全質量を基準としたノニオン界面活性剤の質量%
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
水性重合体(D−1)の製造
(製造例45)
加熱及び冷却装置を備え、撹拌機、温度計、サーモスタット、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置が取り付けられた反応容器に、プロピレングリコールn−プロピルエーテルを130部仕込み、窒素気流中で撹拌混合しながら、内容物を100℃に昇温した。その後、ラジカル重合性不飽和モノマー混合物(メチルメタクリレート30部、ブチルメタクリレート13部、スチレン10部、エチルアクリレート17部、メタクリル酸20部及びN−ブトキシメチルアクリルアミド10部)と、重合開始剤溶液(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2部及びプロピレングリコールnプロピルエーテル20部の混合液)とを混合した混合物を、4時間かけて定量ポンプで反応器内に滴下し、滴下終了後、0.5時間熟成した。続いて、重合開始剤溶液(t-ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5部及びプロピレングリコールn−プロピルエーテル20部の混合液)を0.5時間かけて滴下し、滴下終了後、2時間熟成した。その後、N,N−ジメチルアミノエタノールを13部加えて、攪拌した。そして、室温まで冷却し、固形分40質量%のアクリル系水性樹脂(D−1)の溶液を得た。アクリル系水性樹脂(D−1)は、ガラス転移温度が30℃、酸価が130mgKOH/g、重量平均分子量が3万であった。
【0118】
水性塗料組成物(E−1〜53)
(実施例1)
製造例1で得た固形分40質量%のコアシェル型アクリル樹脂粒子A−1の分散体を250部(固形分100部)と、固形分50質量%の「CKS−3898」(商品名、昭和電工社製、レゾール型フェノール樹脂、ノルマルブタノール溶液)を10部(表2−1には固形分5部の「5」と表示)と、ブチルセロソルブを15部と、をディスパーで攪拌しながら混合し、脱イオン水を加えて固形分を調整し、固形分20質量%の水性塗料組成物E−1を得た。
【0119】
(実施例2〜40、比較例1〜13)
実施例1と同様にして、下記表2−1〜2−4に示す各々の配合に従って各成分、及びブチルセロソルブを攪拌しながら混合し、該混合した混合物に脱イオン水を加えて固形分を調整し、固形分20質量%の水性塗料組成物E−2〜53をそれぞれ作製した。なお、表における各成分の配合量は、固形分量または有効成分量に基づくものである。また、表中の硬化剤「サイメル303」は、三井化学社製のメチルエーテル化メラミン樹脂である。
【0120】
なお、表中の(注14)は「71ADDITIVE」(製品名、ポリエーテル変性シリコーン系消泡剤、東レ・ダウコーニング社製)である。
【0121】
試験用塗装板の作製
前記実施例及び比較例で得た各水性塗料組成物を、リン酸クロメート処理が施された厚さ0.25mmの#5021アルミニウム板に、乾燥塗膜厚が5μmとなるようにバーコーター塗装し、200℃で1分間の焼付けにより硬化させて、試験用塗装板とした。性能試験は、下記の試験方法に従って行った。表2−1〜2−4に試験結果の評価を記した。評価において◎、○、○△の範囲にあるものを実用可能、△、×の範囲にあるものを不合格と判断した。
【0122】
[貯蔵安定性]
実施例及び比較例の水性塗料を45℃で2ヶ月貯蔵した後の塗料状態を、下記の基準で評価した。
◎:異常のないもの
○:倍率100倍の透過型顕微鏡で観察してわずかに油滴が認められるもの
△:目視で油滴が認められるもの
×:著しく油滴が発生しているもの
[Tベンド折り曲げ加工性]
試験用塗装板を圧延方向に5cm、垂直方向に4cm切断した後、下部を短辺と平行に2つ折りにした。20℃の室内にて、この試験用塗装板の試験片の折曲げ部の間に、厚さ0.26mmのアルミニウム板を2枚挟み、特殊ハゼ折り型デュポン衝撃試験器にセットした。50cmの高さから接触面が平らな重さ1kgの鉄のおもりを落下させて、前記折曲げ部に衝撃を与えた後、折曲げ先端部に印加電圧6.5Vで6秒間通電し、前記折曲げ先端部の20mm幅の電流値(mA)を測定し、下記の基準で評価した。
◎ :10mA未満
○ :10mA以上、且つ20mA未満
○△:20mA以上、且つ40mA未満
△ :40mA以上、且つ80mA未満
× :80mA以上
[耐レトルト白化性(本明細書で「耐水性」と記すことがある)]
試験用塗装板を水に浸漬し、オートクレーブ中において125℃で30分間処理した後、塗膜の白化状態を目視にて観察し、下記の基準により評価した。
【0123】
◎ :全く白化が認められない
○ :部分的な白化がわずかに認められる
○△:全体的にわずかな白化が認められる
△ :かなり白化が認められる
× :著しく白化が認められる
[耐食性]
試験用塗装板を、クエン酸、リンゴ酸、塩化ナトリウムを各3%溶解した混合水溶液に浸漬し、45℃で4週間貯蔵した後、塗面状態を目視にて観察し、下記の基準により評価した。
◎ :ツヤビケ、腐食が認められない
○ :ツヤビケがあるが、腐食が認められない
○△:腐食がわずかに認められる
△ :腐食がかなり認められる
× :腐食が著しい
[耐フェザリング性(耐膜残り性)]
試験用塗装板を、製蓋プレス機を用いて製蓋加工し、内面側に塗膜面を有する缶蓋を作製した。作製した缶蓋を、100℃の沸騰水中に10分間浸漬した後、前記塗膜面を下向きにした状態で、その缶蓋の上面に設けられた開口片(タブ)を上方に引き上げて、開口部を開口させた。そして、その開口部の開口端部からの塗膜の剥離幅を測定し、下記の基準により評価した。なお、◎〜○△の評価が実用範囲である。
◎ :塗膜の最大剥離幅が0.2mm未満、
○ :塗膜の最大剥離幅が0.2mm以上で0.4mm未満、
○△:塗膜の最大剥離幅が0.4mm以上で0.5mm未満、
△ :塗膜の最大剥離幅が0.5mm以上で1.0mm未満、
× :塗膜の最大剥離幅が1.0mm以上
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
【表6】
【0127】
【表7】