(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0021】
最初に、第1実施形態について説明する。
図1において、車両200は乗用車であって、4台のカメラ1〜4を備えている。図中、Fは前方向、Bは後方向、Lは左方向、Rは右方向をそれぞれ表している。前方カメラ1は、車両200の前部中央に取り付けられており、車両200の前方を撮像する。左側方カメラ2は、車両200の左側部の前方寄りに取り付けられており、車両200の左側方を撮像する。右側方カメラ3は、車両200の右側部の前方寄りに取り付けられており、車両200の右側方を撮像する。後方カメラ4は、車両200の後部中央に取り付けられており、車両200の後方を撮像する。
【0022】
前方カメラ1の路面Gからの高さHfは、たとえば50cmである。左側方カメラ2と、右側方カメラ3の路面Gからの高さHsは、たとえば80cmである。後方カメラ4の路面Gからの高さHrは、たとえば80cmである。これらの数値はあくまで一例であって、他の値を採用してもよい。
【0023】
各カメラ1〜4は、3次元の距離情報が取得できる距離画像カメラからなる。距離画像カメラは、投光素子から投射された光が物体で反射して受光素子で受光されるまでの時間を、受光素子の各画素ごとにリアルタイムで測定することにより、距離情報を取得する。距離画像カメラを用いると、物体までの距離や物体の寸法・形状・位置関係など、撮像空間内の3次元の距離情報を、太陽光や照明環境に左右されずに取得することができる。
【0024】
各カメラ1〜4には、
図2に示すような撮像部10が内蔵されている。撮像部10は、ケース13と、このケース13に収納された投光素子11および受光素子12を有している。投光素子11は、たとえば赤外線LEDからなり、赤外線のパルス光を、ケース13の前面13aを通して物体へ向けて投射する。受光素子12は、たとえばCMOSイメージセンサからなり、物体で反射したパルス光を、ケース13の前面13aを通して受光する。
【0025】
受光素子12は、
図3に示すように、n個の画素(ピクセル)Pを有しており、各画素Pごとに、距離情報d1、d2、…dnが取得される。具体的には、たとえば、各画素Pについて、投光パルス信号に対する受光パルス信号の位相遅れを計測することで、距離情報d1、d2、…dnを得る(位相差法)。
【0026】
各カメラ1〜4は、それぞれ
図4に示すような水平方向の視野角Z1〜Z4を有している。前方カメラ1の視野角Z1は、左側方カメラ2の視野角Z2および右側方カメラ3の視野角Z3と一部重なっている。後方カメラ4の視野角Z4も、左側方カメラ2の視野角Z2および右側方カメラ3の視野角Z3と一部重なっている。各カメラ1〜4の垂直方向の視野角については後述する。
【0027】
次に、本発明の車両用撮像装置の構成について、
図5を参照しながら説明する。
図5において、車両用撮像装置100は、
図1の車両200に搭載されている。車両用撮像装置100には、前述の前方カメラ1、左側方カメラ2、右側方カメラ3、および後方カメラ4と、信号処理部20とが備わっている。各カメラ1〜4には、
図2に示した撮像部10と、CPU15と、メモリ16が内蔵されている。CPU15は、カメラの動作を制御する制御部を構成する。メモリ16には、カメラが撮像した画像が一時的に保存される。
【0028】
信号処理部20は、カメラ1〜4が撮像した各方向の画像に対して信号処理を行い、その結果に基づいて所定の信号を生成し、当該信号を車両制御部30へ出力する。信号処理部20には、CPU21と、メモリ22が備わっている。CPU21は、信号処理部20の動作を制御する制御部を構成する。メモリ22には、
図12に示すようなパターン表23があらかじめ記憶されている。このパターン表23については、後で詳しく説明する。
【0029】
車両制御部30は、車両200の各部を制御するコントローラを構成する。たとえば、車両制御部30は、操舵制御ユニット40に指令を与えて、車両200の操舵角を制御し、エンジン制御ユニット50に指令を与えて、エンジンの駆動・停止を制御する。
図5では図示を省略しているが、車両制御部30には、操舵制御ユニット40とエンジン制御ユニット50以外の制御ユニットも接続されている。なお、車両200には自動運転機能が備わっており、自動運転時には、たとえば、前方カメラ1で路上の障害物が検出された際に、信号処理部20から車両制御部30へ出力される自動運転用の信号に基づき、操舵制御ユニット40が障害物を避けるように操舵制御を行う。
【0030】
信号処理部20には、車両200に搭載された車載機器60からの各種信号が入力される。車載機器60は、カーナビゲーション装置(以下「カーナビ装置」と表記)61、ETC(Electronic Toll Collection)装置62、車速センサ63、および通信装置64を含む。実際には、車載機器60には、上記以外の装置も含まれるが、本発明とは直接関係がないので、図示は省略している。
【0031】
以上の構成において、CPU21(またはCPU15)は、本発明における「取得手段」および「選択手段」の一例であり、メモリ22(またはメモリ16)は、本発明における「記憶手段」の一例である。
【0032】
次に、車両用撮像装置100による撮像の詳細について説明する。
図6に示すように、前方カメラ1は、垂直方向の視野角がθであるカメラであって、前方垂直方向にθの撮像範囲を有している。しかし、この撮像範囲の全範囲を撮像した画像を信号処理部20で処理すると、CPU21の負荷が非常に大きくなってしまう。そこで、前方カメラ1の撮像範囲を限定するために、次のような角度条件を設定する。
(a)低方向の角度条件:3m先の路面G上にある物体Z(障害物)を検知できること。
(b)高方向の角度条件:前方の車両201を検知できること。
なお、上記の角度条件は、車両200が高速道路または一般道路を走行する場合を想定したものである(後述の角度条件(c)〜(f)についても同様)。
【0033】
(a)の条件は、次のような根拠に基づいている。
図7に示すように、車両200が緊急時などに、路肩に1m程度幅寄せして停車する場合を想定すると、タイヤの操舵量は最大30°であるのが一般的である。したがって、3m先に障害物がないことが確認できれば、30°の操舵を行うことで、車両200は1m幅寄せした状態で路肩に停車することが可能となる。
【0034】
(b)の条件は、前方を走る車両との車間距離を測定するために必要となる。但し、車両201の全体を検知する必要はなく、少なくともタイヤを検知できればよい。したがって、
図6のように、前方カメラ1の取付高さを50cmとした場合、(b)の条件を満たすには、高さ50cmの水平線aより下の領域(水平線aを含む)を撮像できればよい。
【0035】
以上のことから、上記(a)、(b)の条件を満たす前方カメラ1の撮像領域は、
図6に斜線で示した領域となる。このとき、水平線aに対する下方向の俯角(視野角)θ1は、θ1=9.5°となる。
図6のように撮像領域を設定した場合は、前方の車両がたとえばトラックであって、荷台の下方に大きな空間があったとしても、
図8の画像に示されるように、少なくともタイヤTを撮像できるので、乗用車の場合と同様に車両を検知することができる。なお、
図6の斜線領域は、最小限要求される領域であって、必要に応じて、θ1の角度を9.5°より大きくして、撮像領域を拡大してもよい。また、水平線aより上の所定領域まで撮像領域を拡大してもよい。
【0036】
次に、側方カメラ2、3による撮像の詳細について説明する。以下では、右側方カメラ3を例に挙げるが、左側方カメラ2についても同様である。
図9に示すように、右側方カメラ3は、垂直方向の視野角がθであるカメラであって、右側方垂直方向にθの撮像範囲を有している。この視野角θは、前方カメラ1の視野角θ(
図6)と同じであるが、両者は異なっていてもよい。右側方カメラ3については、撮像範囲を限定するために、次のような角度条件を設定する。
(c)低方向の角度条件:子供の歩行者、オートバイ、および自転車を検知できること。
(d)高方向の角度条件:3mの距離で1.5mの高さまで撮像できること。
【0037】
(c)の条件については、子供Kの身長を80cm以上、オートバイと自転車(図示省略)の高さを80cm以上と想定した場合、路面Gから少なくとも80cm以上の領域を撮像できればよい。したがって、
図9のように、右側方カメラ3の取付高さを80cmとした場合、(c)の条件を満たすには、高さ80cmの水平線bより上の領域(水平線bを含む)を撮像できればよい。
【0038】
(d)の条件は、側方を走るトラック202を確実に検知するために必要となる。
図10のように、トラック202の荷台が高くて、荷台の下方に大きな空間Sが存在する場合、撮像領域が下方に寄り過ぎると、空間Sしか撮像できず、トラック202を検知できないことがある。しかし、右側方カメラ3が、3m離れた場所で1.5mの高さを撮像できれば、
図10のようなトラック202でも検知が可能となる。
【0039】
以上のことから、上記(c)、(d)の条件を満たす右側方カメラ3の撮像領域は、
図9に斜線で示した領域となる。このとき、水平線bに対する上方向の俯角(視野角)θ2は、θ2=13.1°となる。なお、
図9の斜線領域は、最小限要求される領域であって、必要に応じて、θ2の角度を13.1°より大きくして、撮像領域を拡大してもよい。また、水平線bより下の所定領域まで撮像領域を拡大してもよい。
【0040】
次に、後方カメラ4による撮像の詳細について説明する。
図11に示すように、後方カメラ4は、垂直方向の視野角がθであるカメラであって、後方垂直方向にθの撮像範囲を有している。この視野角θは、前方カメラ1の視野角θ(
図6)と同じであるが、両者は異なっていてもよい。後方カメラ4については、撮像範囲を限定するために、次のような角度条件を設定する。
(e)低方向の角度条件:子供の歩行者、オートバイ、および自転車を検知できること。
(f)高方向の角度条件:10mの距離で3mの高さまで撮像できること。
【0041】
(e)の条件については、右側方カメラ3の場合と同様に、子供Kの身長を80cm以上、オートバイと自転車(図示省略)の高さを80cm以上と想定した場合、路面Gから少なくとも80cm以上の領域を撮像できればよい。したがって、
図11のように、後方カメラ4の取付高さを80cmとした場合、(e)の条件を満たすには、高さ80cmの水平線cより上の領域(水平線cを含む)を撮像できればよい。
【0042】
(f)の条件は、後方を走る車両の車種を特定するために、10m後方における高さ3mのトラック204を撮像する必要があることに基づいている。
【0043】
以上のことから、上記(e)、(f)の条件を満たす後方カメラ4の撮像領域は、
図11に斜線で示した領域となる。このとき、水平線cに対する上方向の俯角(視野角)θ3は、θ3=12.4°となる。なお、
図11の斜線領域は、最小限要求される領域であって、必要に応じて、θ3の角度を12.4°より大きくして、撮像領域を拡大してもよい。また、水平線cより下の所定領域まで撮像領域を拡大してもよい。
【0044】
このようにして、カメラ1〜4ごとに、
図6、
図9、
図11で斜線で示したような、所定範囲に限定された視野領域(以下「限定視野領域」という。)が設定され、カメラ1〜4は、この限定視野領域の画像を撮像する。なお、視野領域の限定は、
図3に示した受光素子12における所定の画素Pを選択することにより行われる。この場合、選択された画素Pで構成される領域の画像のみが取得される。
【0045】
各カメラ1〜4に対応する限定視野領域は、
図6、
図9、
図11に示した範囲に固定してもよいが、本実施形態では、
図12のパターン表23に従って、道路種別や道路形状などの車外環境に応じて、最適の限定視野領域を選択できるようにしている。以下、この詳細について説明する。
【0046】
図12において、パターン表23には、車外環境の大項目として、「道路種別」、「道路形状」、および「付加要因」が設定されている。「道路種別」は、さらに、「高速道路」、「一般道路」、「生活道路」、および「駐車」の小項目に分類され、これらの各小項目に対応して、パターンA1〜A4が割り当てられている。「道路形状」は、さらに、「交差点」、「カーブ」、「分岐」、「上り坂/下り坂」の小項目に分類され、これらの各小項目に対応して、パターンB1〜B4が割り当てられている。「付加要因」は、さらに、「渋滞」、「工事/事故」、「緊急車両」の小項目に分類され、これらの各小項目に対応して、パターンC1〜C3が割り当てられている。
【0047】
「道路種別」のパターンA1〜A4に対応して、各カメラごとに「上領域」、「中領域」、「下領域」のいずれかが、限定視野領域として設定されている。つまり、カメラの撮像方向と、カメラの視野角で撮像可能な複数の限定視野領域の1つとが対応付けて記憶されている。
図13は、撮像範囲における上領域Xu、中領域Xm、下領域Xdを模式的に示した図である。前述のように、受光素子12の画素Pを選択することで、上領域Xu、中領域Xm、下領域Xdを指定することができる。
【0048】
前方カメラ1の限定視野領域は、パターンA1、A2では中領域Xmに設定され、パターンA3、A4では下領域Xdに設定されている。側方カメラ2、3の限定視野領域は、パターンA1、A2では中領域Xmに設定され、パターンA3、A4では、下領域Xdに設定されている。後方カメラ4の限定視野領域は、パターンA1では上領域Xuに設定され、パターンA2では中領域Xmに設定され、パターンA3、A4では、下領域Xdに設定されている。
【0049】
図6、
図9、
図11からわかるように、カメラ1〜4は、限定視野領域より広い領域を撮像可能な垂直方向の視野角θを有しているので、視野角θで撮像可能な範囲に、
図13のような垂直方向に並ぶ複数の限定視野領域(上領域Xu、中領域Xm、下領域Xd)が含まれる。なお、上領域Xuと中領域Xm、および中領域Xmと下領域Xdは、一部が重なり合っている。
【0050】
図12に戻り、パターン表23では、「道路形状」のパターンB1〜B4に対応して、各カメラごとに、特定の物体(車両、路面)や特定の方向(カーブ方向、分岐方向、坂方向)が設定されている。また、パターン表23では、「付加要因」のパターンC1〜C3に対応して、各カメラごとに、特定の物体(車両)や特定の方向(工事/事故方向、路肩方向)が設定されている。
【0051】
信号処理部20(
図5)は、車載機器60から取得した情報に基づいて、車両200の車外環境が、パターン表23のどのパターンに該当するかを判別する。たとえば、「道路種別」がパターンA1〜A4のいずれであるかは、カーナビ装置61、ETC装置62、車速センサ63から取得した情報に基づいて判別が可能である。また、「道路形状」がパターンB1〜B4のいずれであるかは、カーナビ装置61から取得した情報に基づいて判別が可能である。また、「付加要因」がパターンC1〜C3のいずれであるかは、カーナビ装置61や通信装置64から取得した情報に基づいて判別が可能である。
【0052】
道路種別のパターンA1〜A4が判別されると、信号処理部20は、そのパターンをカメラ1〜4のそれぞれに通知する。カメラ1〜4は、撮像領域が信号処理部20から通知されたパターンに対応する限定視野領域(上領域、中領域、または下領域)となるように、受光素子12の画素Pを選択することで、限定視野領域を設定し、当該領域を撮像する。
【0053】
たとえば、車両200が高速道路または一般道路を走行している場合(パターンA1、A2)、前方カメラ1は、
図6のような中領域の限定視野領域を撮像するが、車両200が生活道路へ進入した場合(パターンA3)や、駐車する場合(パターンA4)は、前方カメラ1の限定視野領域が中領域から下領域へ切り替わる。このため、前方カメラ1の撮像範囲は下方へシフトする。
【0054】
また、たとえば、車両200が高速道路または一般道路を走行している場合(パターンA1、A2)、側方カメラ2、3は、
図9のような中領域の限定視野領域を撮像するが、車両200が生活道路へ進入した場合(パターンA3)や、駐車する場合(パターンA4)は、側方カメラ2、3の限定視野領域が中領域から下領域へ切り替わる。このため、側方カメラ2、3の撮像範囲は下方へシフトする。
【0055】
また、たとえば、車両200が生活道路を走行している場合(パターンA3)や、駐車する場合(パターンA4)は、後方カメラ4は、下領域の限定視野領域を撮像するが、車両200が一般道路へ進入すると(パターンA2)、後方カメラ4の限定視野領域が、
図11のような中領域に切り替わる。このため、後方カメラ4の撮像範囲は上方へシフトする。また、車両200が高速道路へ進入すると(パターンA1)、後方カメラ4の限定視野領域が上領域へ切り替わり、後方カメラ4の撮像範囲はさらに上方へシフトする。
【0056】
このようにして、道路種別のパターンA1〜A4に応じて、各カメラ1〜4の限定視野領域は自動的に切り替わる。
【0057】
信号処理部20は、道路種別のパターンA1〜A4の選択が終わると、次に、カーナビ装置61から取得した情報に基づいて、道路形状のパターンB1〜B4の判別を行う。パターンB1〜B4が判別されると、信号処理部20は、そのパターンをカメラ1〜4のそれぞれに通知する。カメラ1〜4は、パターンA1〜A4で選択された各カメラの限定視野領域を撮像した画像において、信号処理部20から通知されたパターンB1〜B4に対応する限定視野領域を切り出したり、当該領域の解像度を高くして画像を強調するなどの処理を行う。パターン表23にある通り、パターンB1〜B4に対応する限定視野領域は、物体(車両、路面)や方向(カーブ方向、分岐方向、坂方向)である。
【0058】
具体的には、たとえば、車両200が一般道路を走行中で(パターンA2)、交差点に来た場合(パターンB1)、前方カメラ1は、パターンA2で選択された中領域の撮像画像における、対向車や路面の画像部分を切り出したり強調したりする。側方カメラ2、3と後方カメラ4も、各カメラが撮像した画像における、側方車や後方車の画像部分に対して同様の処理を行う。また、車両200が高速道路を走行中で(パターンA1)、カーブに差し掛かった場合(パターンB2)、各カメラは、パターンA1で選択された限定視野領域の撮像画像における、カーブの画像部分を切り出したり強調したりする。道路形状がパターンB1〜B4のいずれにも該当しない場合は、上記の処理は行われない。
【0059】
信号処理部20は、次に、カーナビ装置61や通信装置64から取得した情報に基づいて、付加要因のパターンC1〜C3の判別を行う。パターンC1〜C3が判別されると、信号処理部20は、そのパターンをカメラ1〜4のそれぞれに通知する。カメラ1〜4は、パターンA1〜A4、パターンB1〜B4で選択された各カメラの限定視野領域を撮像した画像において、信号処理部20から通知されたパターンC1〜C3に対応する限定視野領域を切り出したり、当該領域の解像度を高くして画像を強調するなどの処理を行う。パターン表23にある通り、パターンC1〜C3に対応する限定視野領域は、物体(車両)や方向(工事/事故方向、路肩方向)である。パターンC1〜C3のいずれにも該当しない場合は、上記の処理は行われない。
【0060】
以上のようにして撮像されたカメラ1〜4の画像は、信号処理部20へ渡される。その前に、カメラ1〜4において、撮像画像に対しデータ変換などの前処理を行ってもよい。信号処理部20は、各カメラ1〜4から取得した画像(距離画像)を解析して、物体を認識するための処理を行う。この場合、たとえば、前方カメラ1で撮像した画像において対向車を認識できれば、その後の対向車と自車との位置関係は、自車の走行情報(車速など)を用いて推定できるので、側方カメラ2、3や後方カメラ4による対向車の撮像や画像処理は不要となる。また、自動運転時に、前方カメラ1で撮像した画像から、
図6のような路面上の障害物(物体Z)を認識できれば、先述のように、操舵制御ユニット40の操舵制御によって、障害物を避けることができる。
【0061】
信号処理部20は、物体認識処理の結果得られた物体情報を、出力信号として車両制御部30へ送る。車両制御部30は、信号処理部20から取得した物体情報に基づいて、操舵制御ユニット40、エンジン制御ユニット50、および図示しないその他の制御ユニットへ指令を与え、車両200の各部を制御する。
【0062】
図14は、車両用撮像装置100の動作を表したフローチャートである。ステップS1〜S6、およびS9〜S10は、信号処理部20のCPU21が実行し、ステップS7〜8は、各カメラ1〜4のCPU15が実行する。
【0063】
ステップS1では、信号処理部20が、カーナビ装置61、ETC装置62、車速センサ63から、道路種別情報を取得する。ステップS2では、信号処理部20が、カーナビ装置61から道路形状情報を取得する。ステップS3では、信号処理部20が、カーナビ装置61や通信装置64から、付加要因情報を取得する。ステップS1〜S3の順序は、入れ替わってもよい。
【0064】
信号処理部20は、ステップS4で、メモリ22に格納されているパターン表23を参照し、ステップS5で、ステップS1〜S3において取得した道路種別情報、道路形状情報、および付加要因情報に基づき、パターンA1〜A4、B1〜B4、C1〜C3を選択する。
【0065】
ステップS6では、信号処理部20は、ステップS5で選択したパターンを、前方カメラ1、左側方カメラ2、右側方カメラ3、および後方カメラ4へそれぞれ送信する。
【0066】
ステップS7では、各カメラ1〜4において、信号処理部20から送信されたパターンに基づき、限定視野領域(上領域、中領域、下領域)を選択する。
【0067】
ステップS8では、各カメラ1〜4が、ステップS7で選択した限定視野領域を撮像して、当該領域の距離画像を取得する。取得された距離画像は、カメラに内蔵されたメモリ16に一旦格納され、所定の処理が施された後、信号処理部20へ送られる。
【0068】
ステップS9では、信号処理部20が、各カメラ1〜4から取得した距離画像に基づき、物体認識処理を実行する。
【0069】
ステップS10では、信号処理部20が、物体認識処理により得られた物体情報を、車両制御部30へ送信する。その後は、前述したように、車両制御部30による所定の制御が行われる。
【0070】
上述した第1実施形態によると、カメラ1〜4ごとに限定視野領域が設定され、カメラ1〜4は、この限定視野領域の範囲の画像を撮像する。このため、カメラ1〜4の視野角θの全範囲を撮像した画像を処理する場合に比べて、信号処理部20のCPU21による画像処理の負荷を大幅に低減することができる。
【0071】
また、各カメラ1〜4の限定視野領域は、道路種別・道路形状・付加要因などの車外環境に応じて、自動的に切り替わるので、常に最適の限定視野領域を選択することができる。これにより、データ量を低減しつつ、各方向の必要な画像を取得することが可能となる。
【0072】
図13においては、限定視野領域を、垂直方向に並ぶ上領域Xu、中領域Xm、下領域Xdとしたが、
図15に示したように、限定視野領域を、水平方向に並ぶ左領域YL、中領域Ym、右領域Yrとしてもよい。また、
図13と
図15のそれぞれの限定視野領域を併用してもよい。
【0073】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図16は、第2実施形態を採用した車両300を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。上面図は、
図1(b)と同じであるので、図示を省略している。車両300には、前方カメラ1、左側方カメラ2、右側方カメラ3、および後方カメラ4が装備されている。これらのカメラ1〜4は、視野角を除いて、第1実施形態のカメラ1〜4と同様である。また、
図2〜
図5も第2実施形態に共通している。但し、第2実施形態では、
図5のパターン表23は設けられない。
【0074】
第1実施形態では、カメラ1〜4は、垂直方向の視野角θが広いカメラであり、視野角θの撮像範囲に含まれる複数の限定視野領域(上領域、中領域、下領域)を、道路種別に応じて選択できるようにした。一方、第2実施形態では、カメラ1〜4は、
図16のように、垂直方向の視野角φが狭いカメラであり、カメラごとに予め決められた取付高さHf、Hs、Hr、および取付角度α、β、γで車両300に装備される。
図16では、前方カメラ1の視野角φと、側方カメラ2、3の視野角φと、後方カメラ4の視野角φとが同じであるが、これらの視野角は異なっていてもよい。カメラ1〜4は、視野角φで限定される視野領域の画像を撮像する。
【0075】
第2実施形態では、カメラ1〜4のそれぞれの限定視野領域が、カメラの視野角φと、カメラの取付高さHf、Hs、Hrと、カメラの取付角度α、β、γとによって、予め固定的に決められている。この場合、各方向の限定視野領域をどの範囲にするかは、第1実施形態の場合の角度条件(a)〜(f)に従って決めてもよいし、別の基準に従って決めてもよい。
【0076】
第2実施形態によれば、道路種別に応じて限定視野領域を自動的に切り替えることはできないが、視野角φの狭いカメラ1〜4を用いることで、第1実施形態と同様に、信号処理部20における画像処理の負荷を大幅に低減することができる。また、視野角の狭いカメラは安価であるため、車両用撮像装置100のコストも低減することができる。
【0077】
本発明では、以上述べた実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0078】
前記の実施形態では、4個のカメラ1〜4を設けているが、カメラの個数は4個に限らず、たとえば6個であってもよい。また、第1実施形態の場合は、360°回転可能なカメラを用いれば、カメラは1個で済む。さらに、本発明で用いるカメラは、固定式のものに限らず、可動式のものであってもよい。
【0079】
前記の実施形態では、カメラ1〜4により3次元の距離画像を取得したが、これに限らず、複数のカメラで2次元画像を取得し、視差を測定することで、距離情報を取得するようにしてもよい。
【0080】
図13および
図15では、限定視野領域として2次元の領域を示したが、カメラ1〜4で3次元の距離画像を取得できることを生かして、限定視野領域を、奥行きも考慮した3次元領域としてもよい。
【0081】
図12のパターン表23において、「車両停車中」のパターンを追加し、車両の停車中は、画像の認識モードをジェスチャー認識モードに切り替えてもよい。この場合、たとえば、後方カメラ4が撮像した画像により、車両の後方で運転者や同乗者がリモコン型の電子キーを所持しており、ドアを開ける仕草をしたことを認識することで、ドアのロックが解除される。
【0082】
図12のパターン表23において、「降車中」のパターンを追加し、搭乗者が車両から降車する際に、画像の認識モードを降車モードに切り替えてもよい。この場合、たとえば、車両の停止後に、搭乗者が車内からドアを開けるスイッチを操作したときに、該当ドアの可動範囲およびその前後方向の空間を限定視野領域として選択することで、降車時に開くドアと衝突する可能性のある、隣接車両や障害物、接近車両などを検知することができる。
【0083】
図12のパターン表23において、「道路形状」の小項目として、トンネルなどを追加してもよい。トンネルの判別は、カーナビ装置61や、照度計(図示省略)などから取得した情報に基づいて行うことができる。また、「付加要因」の小項目として、夜、朝日/夕日、雨/雪、霧などを追加してもよい。これらの判別は、カーナビ装置61、時計(図示省略)、雨滴センサ(図示省略)などから取得した情報に基づいて行うことができる。
【0084】
パターン表23の車外環境の項目としては、これまでに述べたものに限らず、将来的に提供が見込まれる緊急車両の現在位置や、走行ルート情報などを含めてもよい。
【0085】
図14のフローチャートのステップS6では、ステップS5で選択されたパターン(A1〜A4、B1〜B4、C1〜C3)を各カメラ1〜4へ送信したが、選択されたパターンに応じた各カメラ1〜4の限定視野領域(上領域、中領域、下領域)を、各カメラ1〜4へ送信してもよい。
【0086】
図12のパターン表23は、カメラ1〜4のメモリ16に記憶させてもよい。この場合、信号処理部20は、車載機器60から取得した車外環境情報をそのままカメラ1〜4へ送信する。カメラ1〜4は、信号処理部20から取得した車外環境情報に基づいてパターンの判別を行い、判別したパターンに応じた限定視野領域を選択し、当該領域を撮像する。
【0087】
前記の各実施形態では、車両用撮像装置100が搭載される車両200、300として、乗用車を例に挙げたが、車両はトラックやバスであってもよい。