(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355165
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】避難用シェルター
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20180702BHJP
A63B 17/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
A63B17/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-95834(P2015-95834)
(22)【出願日】2015年5月8日
(65)【公開番号】特開2016-211228(P2016-211228A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】394007403
【氏名又は名称】株式会社米子製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】坂口 孔一
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−103971(JP,A)
【文献】
特開2014−201874(JP,A)
【文献】
実開昭53−005064(JP,U)
【文献】
特開平07−324498(JP,A)
【文献】
実公昭59−031597(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
A63B 17/00
E04H 1/12
B65D 90/00 − 90/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面視山形形状を呈しその内部に空所を有し、設置する場所の広さに応じるために少なくとも複数のユニット部とそれら複数のユニット部の両側に夫々壁部材を有するシェルターであって、前記複数のユニット部は、それら複数のユニット部のそれぞれの頂上である上部と、その上部を境に第1傾斜部と第2傾斜部を有し、前記第1傾斜部あるいは第2傾斜部のいずれか一方または双方に手掛かりとなる複数のホールドを有し、少なくとも一方の前記壁部材に出入り口となる開口部を有し、さらに、前記複数のユニット部のそれぞれの内部にフランジを有し、それらフランジ同士を接合し、前記複数のユニット部の頂上である上部の内部におけるそれぞれのフランジにそれぞれ支持部材を配置したことを特徴とするシェルター。
【請求項2】
側面視山形形状を呈しその内部に空所を有し、設置する場所の広さに応じるために少なくとも複数のユニット部とそれら複数のユニット部の両側に夫々壁部材を有するシェルターであって、前記複数のユニット部は、それら複数のユニット部のそれぞれの頂上である上部と、その上部を境に第1傾斜部と第2傾斜部を有し、前記第1傾斜部あるいは第2傾斜部のいずれか一方に、手掛かりとなる複数のホールドを有し、他方に滑り部を有し、少なくとも一方の前記壁部材に出入り口となる開口部を有し、さらに、前記複数のユニット部のそれぞれの内部にフランジを有し、それらフランジ同士を接合し、前記複数のユニット部の頂上である上部の内部におけるそれぞれのフランジにそれぞれ支持部材を配置したことを特徴とするシェルター。
【請求項3】
前記壁部材にフランジを有し、前記ユニット部におけるフランジと前記壁部材におけるフランジを接合したことを特徴とする請求項1または2記載のシェルター。
【請求項4】
前記複数のユニット部のフランジあるいは壁部材のフランジにカバー部材を配置したことを特徴とする請求項3記載のシェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難用シェルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害から身を守るためにシェルターが利用されている。例えば建物の倒壊に備えるためのあらかじめ建物に組み込まれているもの、あるいは、災害時において落下物から身を守るために利用されるものである。
【0003】
また、シェルターを使用する場合その予測ができないことから、あらかじめ設置する必要が有るものの、平時においては無用のものである。そこで、運搬、組立の容易化を図るとともに、地震発生時などの迅速な逃げ込みを可能にし、しかも、地震時などの倒壊物又は落下物の負荷に十分に耐え得るものとして、特開平9−88373号公報に組立式シェルターが開示されている。
【0004】
これは、固定台1と、その固定台の上に横転して固定された円筒体4とからなる。固定台の上面には、円筒体の互いに反対側において設けられ、円筒体の外側面に当接して固定する固定部材3を有する。円筒体は、円弧角がすべて等しい矩形湾曲板の直辺に外側に屈曲された結合縁を形成してなる複数枚の単位板体40a、40b、40cを、隣接する結合縁同士を平面において突き合わせ、かつ、締結部材により締結してなる。円筒体の内側底部に床部材6を固定して、その床部材の上面と円筒体の上部内壁面との間に退避空間7が形成することを特徴とする組立式耐震シェルターである。
【0005】
しかしながら組み立て容易であるとしても、緊急時に即時使用できなければならないため、組み立て式では間に合わない恐れがある。また、その組立式耐震シェルターの部材をあらかじめ準備する必要があるもののその置場も問題となる。更に、あらかじめシェルターを組み立てておくために一定の広さの場所を確保する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−88373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、緊急時において直ちに使用することができるとともに平時であっても有用なシェルターを提供することを目的とする。また、設置する場所の面積に応じて、その大きさを適宜選択することができるシェルターを提供することを目的とする。
【0008】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、側面視山形形状を呈しその内部に空所を有する1または2以上のユニット部とその両側に夫々壁部材を有するシェルターであって、前記ユニット部は第1傾斜部と第2傾斜部を有し、前記第1傾斜部あるいは第2傾斜部のいずれか一方または双方に手掛かりとなる複数のホールドを有し、少なくとも一方の前記壁部材に出入り口となる開口部を有するという手段を講じたものである。
【0009】
本発明は、1または2以上のユニット部を有するために、設置する面積に応じた大きさのシェルターを設置することができる。設置する面積に応じて1つのユニット部あるいは複数のユニット部を連接することが可能である。また、平時は、少なくとも第1傾斜部と第2傾斜部のいずれか一方あるいは双方に手掛かりとなる複数のホールドを有することから、遊具として使用することができるので、あらかじめ、上記シェルターを組み立ておいても無用となることがない。すなわち、第1傾斜部あるいは、第2傾斜部のいずれか一方あるいは双方にホールドを複数配置していることから、これを手がかりに第1傾斜部あるいは第2傾斜部または双方を登る、いわゆるクライミングが可能であり、特に幼児においては心身の発達に寄与することができるというものである。また、その遊具を使用していた場合において地震などの緊急時には直ちに上記シェルターとして使用することができるので、落下物から身を守ることができる。
【0010】
また、本発明は、側面視山形形状を呈しその内部に空所を有する1または2以上のユニット部とその両側に夫々壁部材を有するシェルターであって、前記ユニット部は第1傾斜部と第2傾斜部を有し、前記第1傾斜部あるいは第2傾斜部のいずれか一方に、手掛かりとなる複数のホールドを有し、他方に滑り部を有し、少なくとも一方の前記壁部材に出入り口となる開口部を有するという手段を講じたものである。前記第1傾斜部と第2傾斜部のいずれか一方に手掛かりとなる複数のホールドを有し、他方に滑り部を有することで、ユニット部は滑り台としての機能を有するものであり、遊具としての好ましいものである。
【0011】
また、本発明は、前記ユニット部にフランジを有し、かつ、前記壁部材にフランジを有し、前記ユニット部におけるフランジと前記壁部材におけるフランジを接合するという手段を講じたものである。ユニット部と壁部材にそれぞれフランジを有するために、一定の強度を有しつつ、組み立て容易なシェルターを提供することができる。
【0012】
また、ユニット部のフランジあるいは壁部材のフランジにカバー部材を配置するという手段を講じたものである。
【0013】
内部にむき出しとなったフランジから、シェルター内部に避難にした者を保護するために配置したものである。
【0014】
また、ユニット部のフランジに支持部材を配置するという手段を講じたものである。支持部材を配置することにより、シェルターとしての強度を確保するものである。特にユニット部の頂上付近を支えるように配置するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように構成され、かつ、作用するものであり、緊急時において直ちに使用することができるとともに、滑り台やクライミングするための機能を有し平時においても有用なシェルターを提供することをできる。また、設置する面積に応じて、ユニット部の数量を適宜選択することができるシェルターを提供することをできる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施例におけるシェルター10は、1以上のユニット部20、20′、20″とその両側を挟み込むように配置された壁部材30、30′を有する。ユニット部20は、側面視山形形状を呈し、内部に、空所21を有するものである。前記空所21は、ユニット部20内において、非常時に逃げ込むことができるスペースを有するものである。また、一方に第1傾斜部22を有し他方に第2傾斜部23を有する滑り台としての機能を有するものである。また、第2傾斜部23は、後述する複数のホールド25を配置することで、クライミングとしての機能を有するものである。なお、ユニット部20、20′、20″の相違は、後述する第2傾斜部23におけるホールド25の配置及びその数量の相違である。もっとも、それらは同一であってもよい。
【0018】
前記第1傾斜部22は、滑り台として滑降するための機能を有し、その表面は滑らかである滑り部を有し、その下部に立ち上がり部24を有する。立ち上がり部24は、滑り部としての第1傾斜部22を滑り降りた場合に、足を付きやすくして、滑り終えた者が立ち上がりやすくするためのものである。また前記第1傾斜部22は、その角度が水平に対し45度以下であり、特に、35度以下に構成することが好ましい。
【0019】
また、前記第2傾斜部23には複数のホールド25、25…を配置している。なお、ホールド25は、第2傾斜部23を上る際の手掛かりとなるものであり、第2傾斜部23におけるホールド25の取り付け位置に、ホールド孔27を設け、その裏面を補強したうえでナット部27aを固定し、ボルトbで固定することができる。なお図示しないがナット部27aに、緩み防止のためのキャップを配置することができる。また、このホールド25の配置及び数量は任意であり、適宜選択することができる。なお、あらかじめ、ホールド孔27およびナット部27aを配置して、必要に応じて、ホールド25を取り付けることも可能である。
【0020】
また上部28は、ユニット部20のほぼ頂上であり、これを境に第1傾斜部22と第2傾斜部23を設けており、上部28の内部において、それぞれのユニット部20、20′におけるフランジ26、26に支持部材40を取り付けることができる。これは、ユニット部20を支えるものである。また、それ以外のフランジ26、26の接合部分にカバー部材50を取り付けることができる(
図7、
図9参照)。
【0021】
このように、本実施例では、前記第1傾斜部22は、滑り台として滑降するための機能を有する滑らかな滑り部を有し、第2傾斜部23は、複数のホールド25を配置することで、ユニット部20は、クライミングすることができる滑り台としての機能を有する。
【0022】
壁部材30は、開口部32を有しており、シェルター10として組み立てた場合に、出入り口となるものである。壁部材30もほぼ側面視山形形状を呈し、ほぼユニット部20に倣った形状を呈している。なお壁部材30におけるほぼ中央に、柵部31を有する。なお、壁部材30と30′は、鏡面対称である。従って、符号を付しその説明は省略する。もっとも、壁部材30あるいは壁部材30′のいずれかに開口部32を構成することもできる。
【0023】
柵部31は、壁部材30における頂点付近に配置され、転落防止のために設けられている。なお柵部31は、壁部材30の一体に成形したものである。なお、壁部材30′における柵部31についても同様である。
【0024】
このような、1以上のユニット部20と壁部材30、30′を組み合わせる。ユニット部20の両側部にはフランジ26、26を有し、連結するためのボルト孔26aを複数配置している。同様に壁部材30、30′においてもフランジ33を有し、連結するためのボルト孔33aを複数配置している。なお、図示しないが、フランジ26とフランジ33との接合部分に、支持部材40を取り付けることができる。
【0025】
また、フランジ26とフランジ33との接合部分の一部に支持部材40を取り付けた場合は、それ以外のフランジ26とフランジ33との接合部分にカバー部材50を取り付けることができる。なお、カバー部材50は、断面コの字状を呈するものである。また、支持部材40は、ユニット部20及びユニット部20′あるいはユニット部20″における夫々のフランジ26同士における複数ボルト孔26a同士を接続するボルト34及びナット35と共締めすることによって配置することができる。フランジ26とフランジ33との接合部に支持部材40を配置する場合も同様である。
【0026】
本実施例の場合に、ユニット部20、ユニット部20′、ユニット部20″を夫々のフランジ26同士における複数ボルト孔26a同士を、ボルト34及びナット35によって接続する。なお、ユニット部20とユニット部20′とユニット部20″は、相違は、第2傾斜部におけるホールドの配置及びその数量の以外はほぼ同一のものであることは上述のとおりであり符号を付してその説明は省略する。
【0027】
設置する場所に応じて、ユニット部20のみを配置するか、ユニット部20とユニット部20′を配置するか、それ以上のユニット部20、20′、20″を配置するかは、その設置する場所に応じて適宜変更することができる。本実施例では、ユニット部20の空所21を壁部材30で、また、ユニット部20″の空所21を、壁部材30′でふさぐように接続する。すなわち、壁部材30、ユニット部20、ユニット部20′、ユニット部20″、壁部材30′の順に配置する。なお壁部材30、ユニット部20、ユニット部20′、ユニット部20″は、難燃性FRPで構成することが好ましい。
【0028】
また、上述のとおりユニット部20、ユニット部20′における夫々のフランジ26同士をボルト34とナット35で接合し、カバー部材50で覆うことができるが、これは、シェルター10を文字通り避難用シェルターとして使用する場合に、空所21内に避難した者を保護するためである。このカバー部材50は柔軟性を有する合成樹脂で構成することができる。なお、ユニット部20′ユニット部20″における夫々のフランジ26についても同様である。
【0029】
また、ユニット部20のフランジ26における複数ボルト孔26aと壁部材30のフランジ33における複数のボルト孔33a同士をボルト34とナット35で接続し、カバー部材50で覆うことも上述のとおりであり、カバー部材50は、フランジ26とフランジ33のほぼ全体を覆うように構成することもできる。
【0030】
このような構成の本実施例におけるシェルター10は、平時においては滑り台としての機能を有するとともに、第2傾斜部23におけるホールド25に手をかけて、クライミングウォールのように登ることができる遊具として使用することができる。一方で非常時においては、シェルターとして機能を有することにより、平時において有効活用でき無用となることのない避難用シェルターを提供することができる。また、設置する場所に応じて、壁部材30、ユニット部20と壁部材30′のみを配置することも可能であり、さらに、壁部材30と、ユニット部20′、ユニット部20′、20″…と連続して接続し、壁部材30′を接続することで、設置する場所の広さに応じて、シェルターの規模を選択することができる。
【0031】
他の実施例に係るシェルター100においても、1以上のユニット部120、120′、120″とその両側を挟み込むように配置された壁部材30、30′を有する。シェルター10におけるユニット部20と他の実施例に係るシェルター100におけるユニット部120の相違点は、第1傾斜部122に複数のホールド25と複数のホールド孔27を配置した点にある。また、ユニット部120、120′、120″のそれぞれの相違点は、第1傾斜部122における複数のホールド25と複数のホールド孔27の数量および配置をそれぞれ任意に変更した点にあるが同一であってもよい。また、第1傾斜部122における複数のホールド25と複数のホールド孔27は、前記第2傾斜部23に複数のホールド25、25及び複数のホールド孔27、27を配置する場合と同様であるので説明を省略する。よって、上記のとおり前記第1傾斜部122または第2傾斜部23の双方においても複数のホールド25を配置することで、シェルター100は、前記第1傾斜部122および第2傾斜部23の双方ともにクライミングとしての機能を有するものである(
図2参照)。なお、上部28にホールド25を配置しないことも可能である。
【符号の説明】
【0032】
10、100、シェルター
20、20′、20″、120、120′、120″、ユニット部
21、空所
22、122、第1傾斜部
23、第2傾斜部
24、立ち上がり部
25、ホールド
26、フランジ
26a、ボルト孔
27、ホールド孔
27a、ナット部
28、上部
30、30′、壁部材
31、柵部
32、開口部
33、フランジ
33a、ボルト孔
34、ボルト
35、ナット
40、支持部材
50、カバー部材